説明

真空針刺し付属具のための端部キャップ

真空の援助を受ける針刺し装置のための端部キャップは、皮膚表面に押しつけられるように置かれるための皮膚接触表面を有する。皮膚接触表面は、端部キャップの皮膚接触エッジから内側壁に向かって徐々に厚くなるように形状づけられている。皮膚接触エッジにおける皮膚接触表面の径は、内側壁における皮膚接触表面の径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体として皮膚に針を刺す装置に関する。より詳細には、本発明は、より効果的に針を刺し且つより効率よく真空を形成できるような改良された端部キャップを有する、皮膚に針を刺す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
針刺し装置(ランシング・デバイス)は、人体の部位から毛細管血を得るために用いられる。針刺し装置の典型的な使用者は、糖尿病の治療のため血糖値を自己監視するプログラム下にある者である。かかる使用者は、選択された針刺し部位にて針刺し装置の端部キャップを押し、針刺し装置が該部位の皮膚に穴をあけるようにし、テストのための毛細管血を吸引する。穴をあけることによる不快感を最小にするため、針刺し装置は典型的には穴の深さを制御したり、いったん穴をあけたら迅速に皮膚から針を引き抜いたり、針が逆戻りして穴に再突入すること又は新たに穴をあけてしまうことを防止したりするようになされている。
【0003】
いったん穴があけられたら、針刺し装置は該部位にとどまり、真空状態が形成されて皮膚を針刺し装置の端部キャップ内に部分的に引き込む。これにより、穴をあけられた部位の皮膚上に少量の血液が形成される。それから真空状態が解除され、針刺し装置は皮膚から取り外される。それから、穴をあけられた部位における皮膚表面上の血液の滴がテストセンサに適用される。
【0004】
針刺し装置の中には、針が針刺し行程を通して移動するときに針刺し装置内で往復動する針に連結されるガスケットを含むものがある。このガスケットは針刺し装置の内側と気密接触しており、ガスケットが針刺し装置内をスライドするときに空気が追いやられて真空状態が形成されるようになされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
針刺し装置はできるだけ使い心地の良いものであることが望ましい。さらに針刺し装置は、針刺しの位置や穴の深さを正確に制御することによって、一回の針刺し作業だけで適量の血液を収集でき、二回目の針刺し作業を必要とする可能性を小さくするか、あるいは、なくすことが望ましい。またさらに、針刺し装置は、収集すべき予測される量の血液の滴を得るために十分な真空状態を作り出しかつ維持することが望まれる。本発明は、改良された針刺し装置用端部キャップに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様による端部キャップは、皮膚を端部キャップ内に引き込みやすくするように輪郭形状づけられた皮膚接触表面を備えている。
本発明による端部キャップの輪郭形状は、望ましくは、だんだんと狭くなる皮膚受け入れ領域を含む。このような皮膚受け入れ領域によって、皮膚は該領域内で膨らみ、所望の深さの穴を針によりあけられるよう皮膚が準備されることになる。
【0007】
本発明のある実施態様による針刺し装置用端部キャップと皮膚との間には増大した接触面が存在するため、真空キャビティ内における真空形成の効率および持続性は向上されたものになる。
【発明を実施するための実施の形態】
【0008】
本発明のさらなる特徴については、図面を参照した説明により、理解を深めることができよう。
本発明はさまざまな実施例や変形例を有するものであるが、ここに特別な実施態様を例として図示し、詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの特別な実施態様に限定されるものではない。むしろ本発明は、特許請求の範囲によって画定される本発明の概念および範囲内に属する、その他のすべての変形例、均等物および代替構成物を含むものである。
【0009】
図1を参照する。真空による支援を受ける針刺し装置10が、本発明の一実施形態として示されている。針刺し装置10内に設けたダイアフラムのような真空部材(図示せず)が作動されるのは、プランジャ12が使用者によって押されて針刺し装置10の開口端部14に向かって移動するときである。プランジャ12が押されると、針刺し装置10のハウジング16内の反発バネ(図示せず)が拡張し、ダイアフラム(図示せず)が端部キャップ18に向かって移動する。
【0010】
プランジャ12が大きく押されると、消毒針のような針20が、針刺し装置10の開口端部14を越えて迅速に伸長する。針刺し装置10内でダイアフラムが移動することにより、針刺し作業に続いて、真空キャビティ22内に真空が形成される。真空キャビティ22は、端部キャップ18の内側面と、端部キャップ18が位置づけられるところの皮膚の表面23とによって境界づけられている。本発明のいくつかの実施形態による針刺し装置の作動の詳細は、米国特許明細書第6,152,942号を参照することにより、より深く理解できよう。米国特許明細書第6,152,942号は、参照することによりその全体を本明細書に取り入れるものとする。別の実施形態によれば、端部キャップと皮膚表面23との間に、穴開けを開始するのに十分な圧力が作用するようになったとき、穴明け工程が始まる。本発明による端部キャップ18は、針刺し装置10の効率を改善する特徴を備えている。図2は、本発明の一実施形態による端部キャップ18の側断面図である。端部キャップ18は、該端部キャップ18の第1の部分26にて円筒のキャビティ壁24を備えている。端部キャップの第1の部分26は、針刺し装置のハウジング16に取り付けられる(図1参照)。端部キャップ18の第1の部分26は、種々の態様で針刺し装置のハウジング16に取り付けられることができる(例えば、摩擦嵌合、スナップ嵌合、ネジ止め結合)。端部キャップ18は、真空が端部キャップの内側容積部内に維持されることができるよう態様にて、ハウジングに取り付けられる。例えばOリングを、端部キャップと、針刺し装置のハウジング16における端部キャップ対向面との間に配置して、実質的な気密結合状態を確立および維持し、端部キャップの内側容積部内に真空を形成できるようにしてもよい。端部キャップ18とハウジング16との間の相互対向面は、穴明け深さの調節ができるようになっていることが好ましい。
【0011】
端部キャップ18の第2の部分28は、端部キャップ18の第1の部分26よりも細く狭い。皮膚接触面30が、外側壁32から、鈍角の皮膚接触エッジ34に沿って内側に傾斜している。皮膚接触面30が、皮膚接触エッジ34において最も広く、針刺し装置の開口端部14から内側壁36へと向かうにつれて徐々に狭くなっている。本発明の一実施形態によれば、皮膚接触面30は、皮膚接触エッジ34から直線的な内側壁36まで放物線状の輪郭形状をしている。しかしながら、皮膚接触面30を形成するのに、他の輪郭形状、例えば円形の輪郭形状などを用いてもよい。図2に示した実施形態においては、皮膚接触面は、約3.89mmの半径Rを有する円の円弧に近似する断面を有している。別の実施形態においては、半径Rは約1.5mmから約6mmまでのいずれかとすることができる。
【0012】
図2に示すように、端部キャップ18の第1の部分26の内側容積部は直径d1を有しており、端部キャップの第2の部分28の内側容積部は直径d2を有している。本発明の一つの実施形態によれば、端部キャップの第1の部分26の内側容積部の直径d1は約19mmであり、端部キャップの第2の部分28の内側容積部の直径d2は約7mmである。皮膚接触面30は、皮膚接触エッジ34における最大の直径dwから中間の直径diを経て、端部キャップの第2の部分28の内側壁36における最小の直径dnに至るまで、徐々に狭く小さくなってゆく。本発明の一実施形態によれば、最も大きな径dwは約13mm、中間の大きさの径diは約10mm、最も小さい径dnは約7mmである。もちろん、他の実施形態においては、これらよりも大きい径または小さい径を採用することができる。例えば図2におけるような、より小さい径は、実施形態によっては好ましい。なぜなら、径が小さいと、指先にも針刺しができるからである。前腕のような他の部位以外にも、指先のような狭い部位に針刺しができることは有利である。最小の径dnは、約10mmないし13mmと、比較的大きくてもいいし、例えば約5mmというように、比較的小さくてもよい。いくつかの実施形態においては、約7mmないし約10mmの最小径dnが採用される。
【0013】
図3aないし3dを参照することにより、本発明の端部キャップがどのように機能するかが、より詳細に理解されよう。図3aないし3dは、穴明け作用を時間経過にしたがって示している。図3aにおいて、端部キャップ18が皮膚表面23に押し付けられるようにして置かれる。その結果、皮膚表面23上への押圧力によってできた膨らみ38が生じる。皮膚接触表面30の輪郭形状は、皮膚表面23を端部キャップ18の開口端部14内で寄せ集めて丸くさせるようになっている。それによって、皮膚表面23は、針20によって針刺しされるように位置づけられることになる。針20、図3aの状態ではまだ皮膚表面23に向けて押されていない。
【0014】
次に図3bを参照すると、針20は既に穴明け部位40にて皮膚表面23の下まで押しやられている。穴明け部位40においては、端部キャップ18の真空キャビティ22内に皮膚のかなりの厚さ部分が入り込んでいる。皮膚接触表面30の輪郭形状は、真空キャビティ22内で皮膚を予期できる態様で、また再現可能な態様で膨らませることができるようになされている。結果として、皮膚表面23の下に押しやられる針20による穴明け深さは、針刺し作業を繰り返し行ってもほぼ同じ深さに制御され維持される。穴明け深さは、その部位における痛みや傷つけ具合を減少するように制御される。いくつかの実施形態によれば、穴明け深さは約1mmないし2mmが好ましいとされる。
【0015】
図3cにおいては、針20が皮膚表面23から既に引き抜かれ、真空キャビティ22内には真空状態が形成されている。その結果として、皮膚表面23の膨らみ38は増大し、血液サンプル42が穴明け部位40に集まり始めている。皮膚接触表面30の輪郭形状は、膨らみ38を形成している皮膚表面23の輪郭形状とほぼ一致しているので、真空キャビティ22内に形成された真空状態には、皮膚表面23との接触面積がより小さい端部キャップを使用した場合の真空状態よりも、より低い圧力(高い真空度)、より高い信頼性、より長い真空状態維持が与えられることになろう。最後に図3dを参照すると、真空キャビティ22内に真空状態は維持されており、針20を引き込めるにつれ血液サンプル42は大きくなり続けている。この工程を通して、皮膚接触エッジ34が丸められていることにより、より鋭い角度を有する端部キャップを使用した場合と比べ、使用者はより大きな快適さを享受することができる。このことは、端部キャップ内に真空状態を形成し且つそれを維持するために皮膚上に圧力を作用させる実施形態の場合、重要である。
【0016】
本発明による端部キャップは、−10mmHgの真空圧力を6秒またはそれ以上の時間にわたり維持することができる。さらに、穴明け深さを制御できることにより、穴明けに伴う痛さや傷つけの程度は制限されたものとなり、その一方で、十分な量の血液サンプルを得ることができる。痛みや傷つけの程度が減じられると、テストも厭わずやるようになり、その結果として、血糖のコントロールもよりよい方向に向かうであろう。
【0017】
本発明による端部キャップは、種々の材料で作ることができる。本発明による端部キャップは、透明にすることが好ましい。使用者が血液サンプル42の集まり具合を目視することができ、十分な量の血液が集まったなら端部キャップを皮膚から引っ張って離すことができるからです。本発明による端部キャップ使い捨てとし、針刺し装置に対して簡単に着脱できることが好ましい。
【0018】
ここまで本発明をいくつかの実施形態を例として説明してきたが、本発明の技術的思想の範囲を超えることなく、多くの変形例が考えられることを当業者は理解するであろう。これらの変形例もまた、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による針刺し装置の側面図。
【図2】本発明の一実施形態による針刺し装置用端部キャップの側断面図。
【図3】図3aないし図3dは、本発明の一実施形態による端部キャップを有する針刺し装置の使用状態を時間の経過とともに示したイメージ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空の援助を受ける針刺し装置のための端部キャップであって、
皮膚表面上に押しつけられるように置かれるための、輪郭形状づけられた皮膚接触表面を備え、該皮膚接触表面は、皮膚接触エッジから端部キャップの内側壁に向けて徐々に厚くなるように輪郭形状づけられており、前記皮膚接触エッジにおける前記皮膚接触表面の径は、端部キャップの前記内側壁における前記皮膚接触表面の径よりも大きいようになされている、端部キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載の端部キャップにおいて、
第1および第2の部分を備え、該第1の部分は該第2の部分よりも大きな径を有しており、該第1の部分は、前記真空の援助を受ける針刺し装置のハウジングに結合されるようになされており、前記皮膚接触表面は前記第2の部分に設けられている、端部キャップ。
【請求項3】
請求項1に記載の端部キャップにおいて、
前記皮膚接触表面の輪郭形状が円弧の輪郭形状である、端部キャップ。
【請求項4】
請求項3に記載の端部キャップにおいて、
前記円弧の半径が約1.5mmないし約6mmの間である、端部キャップ。
【請求項5】
請求項1に記載の端部キャップにおいて、
前記皮膚接触表面の輪郭形状が放物線状の輪郭形状である、端部キャップ。
【請求項6】
請求項1に記載の端部キャップにおいて、
前記皮膚接触表面の輪郭形状が、該皮膚接触表面が皮膚表面に押しつけられたときに皮膚を制御された態様で膨らませることができるようになされている、端部キャップ。
【請求項7】
請求項1に記載の端部キャップにおいて、
透明である、端部キャップ。
【請求項8】
請求項2に記載の端部キャップにおいて、
前記第2の部分の内径が約5mmないし約13mmの間である、端部キャップ。
【請求項9】
テストのための血液サンプルを収集する方法であって、
針および端部キャップを有する、真空の援助を受ける針刺し装置を用意し、前記端部キャップは、皮膚接触エッジにおける第1の径から内側壁における第2の径まで徐々に厚くなるよう輪郭形状づけられた皮膚接触表面を有しており、前記第1の径は前記第2の径よりも大きく、前記皮膚接触表面は前記端部キャップの開口端部を取り囲んでおり、前記端部キャップが真空キャビティの少なくとも一部を画成しており、
前記端部キャップの前記開口端部を皮膚表面に押しつけ、
前記皮膚接触表面と前記皮膚表面との間の相互作用によって前記皮膚表面上に膨らみを形成し、
前記膨らみの穴明け部位にて前記針により前記皮膚表面に穴を明け、
前記真空キャビティ内に真空状態を形成し、それによって血液サンプルが前記穴明け部位にて収集されるようにした、
血液サンプルを収集する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
記載された順番に各ステップが行われる、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記端部キャップの前記皮膚接触表面が、前記第1の径の部分から前記第2の径の部分まで徐々に厚くなるような円弧の輪郭形状を有している、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記円弧は、約1.5ないし約6mmの半径を有している、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、
前記端部キャップの前記皮膚接触表面が、前記第1の径の部分から前記第2の径の部分まで徐々に厚くなるような放物線状の輪郭形状を有している、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、
前記端部キャップは、前記真空の援助を受ける針刺し装置に取り付けるための第1の部分と、皮膚に接触するための第2の部分とを有している、方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法において、
前記真空状態を約−10mmHgの圧力で少なくとも約6秒間維持することをさらに含む、方法。
【請求項16】
真空の援助を受ける針刺し装置であって、
ハウジングと、
針と、
実質的に気密な接触面にて前記ハウジングと結合する端部キャップと、
を備え、
該端部キャップは、前記ハウジングと結合するための第1の部分と、皮膚と接触するための第2の部分とを有しており、前記端部キャップの前記第2の部分は、内側壁と皮膚接触表面とを有しており、該皮膚接触表面は、前記端部キャップの前記開口端部における第1の径の部分から、前記皮膚接触表面が前記内側壁へと連続するところの第2の径の部分まで、徐々に厚くなるような輪郭形状を有している、真空の援助を受ける針刺し装置。
【請求項17】
請求項16に記載の真空の援助を受ける針刺し装置において、
前記皮膚接触表面の前記輪郭形状が円弧である、針刺し装置。
【請求項18】
請求項17に記載の真空の援助を受ける針刺し装置において、
前記円弧の半径が約1.5mmないし約6mmである、針刺し装置。
【請求項19】
請求項16に記載の真空の援助を受ける針刺し装置において、
前記皮膚接触表面の前記輪郭形状が放物線である、針刺し装置。
【請求項20】
請求項16に記載の真空の援助を受ける針刺し装置において、
前記端部キャップが、該真空の援助を受ける針刺し装置を使用している間の少なくとも6秒間にわたり約−10mmHgの真空状態を維持するようになされている、針刺し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2007−531584(P2007−531584A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506353(P2007−506353)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/011340
【国際公開番号】WO2005/096942
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】