真贋がチェックされる検査対象物、固有情報登録装置、及び真贋判定装置
【課題】検査対象物の表面の微細なランダムパターンを用いてその検査対象物の真贋を判定するシステムにおいて、摩擦等によるランダムパターンの劣化を低減する。
【解決手段】検査対象物であるカード110bには、微細阻止の混入により、表面に微細なランダムパターンが形成されている。その表面の所定の位置に対し、所定サイズ所定形状の保護枠120bをエンボス加工により凸状に形成する。この保護枠120bの内部の固有情報領域100bは、保護枠120bより凹んでいるので、カード110bの読み取りその他の際に摩擦があっても、固有情報領域100bに傷が付く可能性はかなり低くなる。この固有情報領域100bの微細なランダムパターンを読み取って、真贋判定の基礎情報として用いる。
【解決手段】検査対象物であるカード110bには、微細阻止の混入により、表面に微細なランダムパターンが形成されている。その表面の所定の位置に対し、所定サイズ所定形状の保護枠120bをエンボス加工により凸状に形成する。この保護枠120bの内部の固有情報領域100bは、保護枠120bより凹んでいるので、カード110bの読み取りその他の際に摩擦があっても、固有情報領域100bに傷が付く可能性はかなり低くなる。この固有情報領域100bの微細なランダムパターンを読み取って、真贋判定の基礎情報として用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の表面に分布しているランダム性を有する機械読み取り可能な特徴に基づいて固体の真贋を判定する真贋判定に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真贋判定の対象となるカードや有価証券等の被検出物として、非蛍光材料の基材に蛍光ポリマー素子がランダムに混入されたものが示される。蛍光ポリマー素子は、高分子材料からなる本体と、本体に含有された蛍光顔料の粉体と、コーティング層などからなる。この被検出物の表面の特定領域を読み取ったランダムパターンをシステムに登録しておく。チェックの際にはその被検出物の表面の特定領域のランダムパターンを読み取り、これがシステムに登録されたランダムパターンと一致すれば、その被検出物が真正なものであると判定し、そうでなければ贋物と判断する。
【0003】
この被検出物は、その表面の一部乃至全面が、蛍光顔料の励起光および発光光の一部または全部を透過する保護層で覆われているため、折曲げるなどしても素子が被検出物の表面に突出したり折れたりするなどの不具合を生じることがなく、素子の分布パターンが変化するなどの不具合も少ない。
【0004】
また、特許文献2には、紙のように微細なランダムパターンを有する固体を、そのランダムパターンを利用して真贋判定する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−271895号公報
【特許文献2】特開2005−038389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、被検出物のチェックのためには光学的に素子分布パターンを読み取る必要があり、この読み取りの際に摩擦などで表面に傷が生じる場合がある。このような傷により素子分布パターンが変化したり、その傷自体がノイズとなったりすることにより、被検出物から読み取られるパターンに変化が生じ、真正性の誤認識の原因となる可能性がある。
【0007】
特許文献2の技術では、摩擦等によるランダムパターンの劣化について特段の考慮を払っていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面では、表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、前記所定位置の固有情報領域の周囲に凸状の保護部が形成されていることを特徴とする検査対象物を提供する。
【0009】
本発明の別の側面では、表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、前記所定位置の固有情報領域が、その周囲よりも凹んだ状態となるように加工されていることを特徴とする検査対象物を提供する。
【0010】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、数字又は文字のうちランダムパターンの保護に適した形状を持つ数字又は文字と、その文字又は数字に対する固有情報領域の相対位置を記憶する保護文字記憶部と、検査対象物を読み取って得た画像の中から、文字認識により数字又は文字の画像を認識し、認識した数字又は文字のうち保護文字記憶部に記憶された数字又は文字を検出し、検出した数字又は文字を含む画像の中から前記相対位置の情報に基づき固有情報領域を特定する固有情報領域特定部と、特定された固有情報領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0011】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字の列を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物を読み取って得た画像の中から、前記数字又は文字の列の中で所定の順番にある隣接する数字又は文字同士の間隔の領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0012】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物の表面上の所定位置に凸状の保護部を形成する保護部形成部と、保護部により少なくとも部分的に囲まれた領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0013】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物の表面上の所定位置の固有情報領域がその周囲よりも凹んだ状態となるように加工する保護加工部と、保護加工部により加工された固有情報領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0014】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定を行う装置であって、検査対象物に対し印刷又は電子的書込により書き込まれたID情報を読み取るID読み取り部と、読み取られたID情報に対応する登録固有情報と、検査対象物の表面上での固有情報領域の位置の情報とを所定の固有情報データベースから取得する固有情報取得部と、検査対象物の表面を光学的に読み取り、前記固有情報領域の画像を切り出し、この画像から固有情報を求める固有情報読み取り部と、固有情報取得部が取得した登録固有情報と、固有情報読み取り部が検査対象物から読み取った固有情報とを比較することにより検査対象物の真贋を判定する判定部と、を備える真贋判定装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下「実施形態」と呼ぶ)について説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る検査対象物について説明する。本実施形態の検査対象物は、表面にランダムパターンをなす微細構造を持つ固体である。抄紙過程等で繊維がランダムに絡まって構成される紙がその一例である。また別の例としては、微細な素子がランダムに混入されたプラスティックのカード(例えばクレジットカードやキャッシュカード又はその双方を兼ねるカード)などがある。検査対象物は、板状やカード状、或いはシート状のものが典型的であるが、これに限定されるものではない。
【0017】
検査対象物は表面に微細なランダム構造を有するので、その表面からの反射光を光学的に読み取ったり、その検査対象物を透過した透過光を光学的に読み取ったりすることで、ランダムなパターンを得ることができる。ランダム構造をなす繊維や素子のサイズや、読み取り光学系の解像度にもよるが、検査対象物表面の十分に広い面積を読み取れば、その対象物を一意に特定するランダムパターンの情報が得られる。このランダムパターンが検査対象物の識別情報として用いられる。
【0018】
なお、このように表面にランダムな微細構造を持つカードや紙などの検査対象物は、従来から様々なものが知られている。以下に示す本実施形態の方法及びシステムは、それら従来の様々な検査対象物に適用可能である。
【0019】
本実施形態の検査対象物の一例としてのクレジットカード又はキャッシュカード等のカードを、図1Aを参照して説明する。図1Aに示すカード110aは、表面にランダムな微細構造を持っている。このカード110の表面の一部の領域を、そのカード110aの固有情報領域100aとし、その固有情報領域100aを光学的に読み取って得たランダムパターンをそのカード110aの固有の情報として、真贋判定に利用する。本実施形態のカード110aでは、エンボス加工で凸状に形成された数字「0」を保護枠120aとして用い、その保護枠120aの内部の領域を、固有情報領域100aとして用いている。この例では、固有情報領域100aは、凸状の保護枠120aで囲まれた凹部に位置するので、カード110aが読み取り機で読み取られる際など様々な場面で出会う摩擦から固有情報領域100aは保護される。
【0020】
図1Aの例では、エンボス加工により凸状に形成された数字「0」を固有情報領域100aの保護枠120aとしたが、これは一例に過ぎない。「6」や「9」や「8」などのような閉ループを有する他の数字の閉ループを保護枠120aとし、その内部を固有情報領域100aとしてもよい。また、数字に限らず、他の文字(例えばアルファベット)のエンボスの凸部がなす閉ループを保護枠120aとしてもよい。
【0021】
また、更にいえば、保護枠120aは閉ループを形成している必要はない。隣り合う2つの凸部の間の凹部は、それら凸部の存在により摩擦からある程度は守られる。隣り合う2つの凸部の間隔が狭いほど、その間の凹部が摩擦から守られる確率は高くなる。例えば凸部の高さが200μm〜1000μm程度であれば、隣接する凸部同士の間隔が約2〜3mmかそれ以下であれば、カード110aが他の物と擦れ合っても、それら凸部同士の間の領域は摩擦から守られる。例えば、エンボス加工された「2」、「3」、「5」等の数字で部分的に囲まれた内部を固有情報領域100aとしてもよい。また、カード番号の数字列の中の隣り合う数字同士の間隔や、カード名義人の名前の文字列の中の隣り合う文字通しの間隔を、固有情報領域100aとして利用してもよい。この場合、エンボス加工で盛り上がった隣り合う数字や文字が保護枠120aとして機能することになる。
【0022】
以上に説明した例は、従来のクレジットカードやキャッシュカード等のカード類にすでに存在するエンボス加工の数字や文字を保護枠120aとして利用する例であった。これに対し、図1Bに示す例では、カード110b表面上の予め定められた場所にある固有情報領域100bを囲むように、保護枠120bをエンボス加工で凸状に形成した例である。このように専用の保護枠120bを形成する場合、ランダムな微細構造は、少なくともその固有情報領域100bの部分にあればよい。
【0023】
以上に示した図1A及び図1Bの例は、いずれもプラスティック等の材料からなるカード上のエンボス加工で形成された凸部により固有情報領域100a又は100bを保護するものであった。しかし、エンボス加工による保護は、紙などのような可塑性の期待できない材料からなっている検査対象物には適用できない。そのような検査対象物には、保護枠を貼付する方法を用いればよい。このように貼付する保護枠の例を図2に示す。
【0024】
図2に示す保護枠130は、ある厚みを持って、ある面積を囲むことができる枠である。保護枠130の高さは概略200μm〜1000μmの範囲である。保護枠130は、その内部に3〜6mm2の面積の固有情報領域を囲める程度のサイズが望ましい。この程度の面積があれば、固有情報領域が呈するランダムパターンは実用上十分な一意性を持つことになる。図2の例では、保護枠130は円形の形状をしているが、これは一例に過ぎず、例えば多角形の形状であってもよい。また、保護枠130の材料はクレジットカードやキャッシュカードなどと同等のプラスチックであってもよい。保護枠130の底面は、クレジットカードやキャッシュカード、或いは金券や有価証券、契約書等の紙類などの検査対象物に対して接着するための接着剤層が形成されている。
【0025】
図3Aは、貼付式の保護枠130を貼付したカード110cの例を示す図である。カード110cのうち、貼付された保護枠130で囲まれた領域が、そのカード110c固有のランダム情報の読み取り領域である固有情報領域100cとなる。
【0026】
図3Bは、紙の金券140に保護枠130を貼付した例を示す。この金券140には、金券自体のID(識別情報)を含んだディジタルコード150(図示例ではQRコード(登録商標))が印刷されており、更に券面の所定の位置に保護枠130が貼付されている。その保護枠130の内部の固有情報領域100dの紙紋(紙の繊維、又は紙表面の微細な凹凸、が構成する微細パターン)が、その金券140の固有情報となる。
【0027】
以上では、固有情報領域100a〜100dを、その領域の周囲を部分的に又は完全に取り囲む、凸状に形成された保護枠120a,120b,130で保護した。しかし、このような保護の仕方は一例に過ぎない。このほかにも、例えば検査対象物の表面に、固有情報の領域として十分な面積(例えば概略3〜6mm2)を持つ凹部を形成し、その凹部を固有情報領域として用いてもよい。例えば、プラスティックのカードであれば、そのカードの表面の一部の固有情報領域として必要な所定の面積をエンボス加工等により凹ませればよい。その凹部の底面は、周囲の面より低いので、カードが他の物と擦れても、摩擦から守られやすい。
【0028】
以上のような検査対象物を発行する際には、その検査対象物の固有情報領域のランダムパターンを読み取って、そのランダムパターンを示す情報を真贋判定の基礎情報として登録する必要がある。このような固有情報登録のための固有情報登録装置200の例を、図4を参照して説明する。図4の例は、図1Aのように、検査対象物に元々存在する保護枠(エンボス加工された数字など)で保護された領域を固有情報領域100aとして用いる場合の例である。
【0029】
まず、カードや有価証券などの検査対象物を対象物入力部202から投入すると、ID情報入力部204にその旨が通知され、ID情報入力部204からその検査対象物のID情報が入力される。このID情報は、例えば検査対象物の識別情報であり、例えばクレジットカードやキャッシュカードであればカード番号、金券であれば通し番号などである。ID情報は、例えば、ID情報の発行を管理するID管理部(図示省略。固有情報登録装置内にあってもよいし、固有情報登録装置とネットワークを介して接続されていてもよい)から受け取ればよい。ID情報入力部204から入力されたID情報は、コード生成部206と固有情報DB(データベース)216とに渡される。コード生成部206は、入力されたID情報を、検査対象物に書き込むのに好適なコード情報へと変換する。例えば検査対象物が磁気ストライプ式やICチップ内蔵のカードであれば、そのID情報をそれら磁気ストライプ又はICチップに記録されるデータ形式に変換(例えば暗号化など)する。また、検査対象物が有価証券等の紙類の場合は、ID情報をQRコード等の画像コードへと変換する。コード書込部208は、コード生成部206が生成したコード情報を検査対象物に書き込む。カード類であれば、そのコード情報を磁気ストライプ又はICチップに書き込む。紙類であれば、コード生成部206が生成した画像コードをその紙類の表面の所定位置に印刷する。
【0030】
一方、特徴画像読取部210は、検査対象物の表面を光学的に読み取る。読み取る領域は、表面全面でもよいし、固有情報領域100aが含まれる可能性の高い範囲のみであってもよい。例えば、カード番号又は名義人の文字列の中に固有情報領域100aを設定することが決まっているのであれば、カード番号と名義人の領域を読み取ればよい。特徴画像切り出し部212は、読み取られた画像の中から固有情報領域100aの画像を特徴画像として切り出す。ここで、特徴画像切り出し部212は、検査対象物の表面の中から固有情報領域100aを決定する必要がある。このためには、決定ルールを定めておけばよい。例えば、カード番号の数字列の並び順で最初に現れる「0」、「4」、「6」、「8」、又は「9」の閉ループ内の所定の形状及びサイズを持つ領域(例えば1.8mm四方の正方形など)を固有情報領域100aとする、等のルールである。閉ループを要件としなければ、「1」と「7」以外の数字であれば、保護枠として機能するので、そのような数字の中で最初に現れるものを保護枠とし、その保護枠で囲まれる部分(数字の形状は既知なので、数字ごとに予め定めておくことができる)を固有情報領域100aとすればよい。なお、それら各数字は、文字認識(OCR)技術により求めることができる。いずれにしても、固有情報登録装置200は、数字又は文字のうち固有情報領域の保護に適した形状を持つものと、その数字又は文字に対する固有情報領域の相対位置の情報を保持している。相対位置の情報は、例えば「0」に対して「その内部」というように定性的な情報でもよいし、数字、文字の特定位置(例えば左上点や中心など)を基準とした場合の固有情報領域の位置(例えば矩形なら左上隅と右下隅の座標)のように相対位置を座標等で示してもよい。
【0031】
このようにして固有情報領域100aを決めると、特徴画像切り出し部212は、特徴画像読取部210が読み取った画像の中から、その固有情報領域100aの画像を切り出す。固有情報生成部214は、その固有情報領域100aの画像を、所定データ形式の固有情報へと変換する。固有情報生成部214は、固有情報領域100aの画像信号をディジタルデータに変換して出力する信号処理回路を備えており、その画像を所定の解像度(例えば400dpi)かつ所定の階調(例えば8ビットグレイスケール)のディジタルデータに変換する。例えば、読み取り解像度400dpiで32×32ドットの矩形領域(約2mm×2mm)を、1ドットあたり8ビットのグレースケールで読み取ったとすると、1つの固有情報のデータ量は1024バイトとなる。変換されたディジタルデータはさらに暗号化されてもよい。暗号化には、公開鍵暗号方式の秘密鍵(固有情報登録装置のもの)を用いることができる。この暗号化は、固有情報登録装置の署名と捉えることもできる。
【0032】
このような画像からの固有情報の生成には、従来の方法を用いることができる。例えば上記特許文献2に示された方法がその一例である。このようにして生成された固有情報は、固有情報DB216に登録される。また、固有情報DB216には、特徴画像切り出し部212が決定した固有情報領域100aの位置(例えば座標情報)が登録される。このように固有情報領域100aの位置をDB216に登録するのは、検査対象物の真贋検査を行う装置が、固有情報領域100aの場所を特定できるようにするためである。また、固有情報DB216には、これらのデータの他に、検査対象物の分類データ(クレジットカードなのかキャッシュカードなのかなど)、固有情報をスキャンした日時、この固有情報登録装置のシリアルナンバーなどの情報を併せて登録してもよい。
【0033】
固有情報DB216には、図5に示すように、ID情報入力部204から入力されたID情報と、固有情報生成部214から入力された固有情報(図示例では、固有情報のファイルの識別情報(ファイル名)が登録される)と、及びその固有情報を取り出した固有情報領域100aの位置(この例では、矩形の固有情報領域の左上隅と右下隅の座標で示される)とが、1つの検査対象物についての1組の情報として登録されている。固有情報DB216は、固有情報登録装置200内にあってもよいし、固有情報登録装置200にネットワークを介して接続された外部のデータベースであってもよい。
【0034】
このようにしてID情報の書込と、かつ固有情報の抽出とが完了した検査対象物は、対象物排出部218から排出される。
【0035】
以上、検査対象物の固有情報を登録するための装置を説明した。以上の例では、カード番号乃至名義人を示す数字又は文字の中に固有情報領域100aを設定したが、別の例として、カード番号又は名義人の数字列又は文字列の中の隣接する数字又は文字の間隔を固有情報領域100aとして設定してもよい。数字や文字の中には固有情報領域100aの保護枠として機能しにくいもの(例えば「1」など)があったが、数字や文字の間隔の場合、どの間隔であっても基本的には保護枠として機能するので、例えば「カード番号の数字列の(左から)1番目と2番目の数字の間」というように、数字列や文字列のカード面上での位置が既知の場合に、その列の中の特定の順番にある数字や文字同士の間隔を固有情報領域100aとしてシステム内で取り決めておくこともできる。この場合、固有情報領域の位置情報を固有情報DB216に登録する必要はなくなる。
【0036】
図4の例は、既存のエンボスされた凸部を利用して固有情報領域100aを保護する場合の例であった、これに対し、専用の保護枠120bをエンボス加工したり、貼付式の保護枠130を貼付したりする場合には、固有情報登録装置200にはそれら加工のための手段が必要となる。この例を、図6を参照して説明する。
【0037】
図6において、図4に示した構成要素と同一又は類似の機能を果たす構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図6の固有情報登録装置200は、保護枠形成部209を備えている点が図4の装置と異なる。保護枠形成部209は、図1Bのようにエンボス加工で保護枠120bを形成するか、又は図3A又は図3Bのように保護枠130を検査対象物に貼付する。検査対象物表面上で保護枠を形成する場所は、システム内で予め取り決められている。したがって、特徴画像読み取り部210はその場所を含む限られた領域の画像を読み取ればよく、特徴画像切り出し部212はその場所の画像を切り出せばよい。また固有情報DB216に固有情報領域の位置情報を登録する必要はない。したがって、固有情報DB216には、図7に示すように、ID情報と固有情報のペアを登録すればよい。
【0039】
次に、図8を参照して、図6の保護枠形成部を備える固有情報登録装置300のハードウエア的機構を説明する。
【0040】
この装置300において、駆動ローラ301aと301bは、検査対象物を装置内部へと送り込む。ガイドローラ302aと302bは対象物の送りをガイドする。このほか、検査対象物を装置内の搬送経路に沿って搬送するためのローラその他の機構が存在するが、これらは従来技術に属するものなので省略する。コード書込部306は、検査対象物のID情報を示すコードを検査対象物に対して書き込む。クレジットカードやキャッシュカードなどのカード類を対象とする場合、コード書込部306は、磁気ストライプにディジタルコードを記録する磁気ヘッド、又はICチップにディジタルコードを書き込む書込装置である。検査対象物が有価証券等の紙類である場合には、コード書込部306は、紙類の表面にQRコード(登録商標)などの画像コードを印刷する印刷ヘッドである。
【0041】
保護枠形成部308は、検査対象物表面の所定の場所に、エンボス加工により保護枠120aを形成するか、又は貼付式の保護枠130を貼付する。この場合、保護枠130は保護枠形成部308の内部に蓄えられており、一つずつ対象物に定着される。
【0042】
光源303は、検査対象物の表面を照明する光源であり、結像光学系304は光源303に照明された検査対象物からの反射光を撮像デバイス305上に結像させる。撮像デバイス305は、検査対象物からの反射光を電気信号に変換するラインセンサである。撮像デバイス305としてはCCDやCMOSなど、様々な方式のデバイスを用いることができる。ラインセンサの場合、検査対象物の移動に伴って刻々と各ラインからの反射光を読み取っていく。撮像デバイス305から出力された画像信号は、画像処理回路(図示せず)によってディジタル化され、公知の画像処理が施され、バス等のデータ伝送路を介してコンピュータ(例えば図11に示すパーソナルコンピュータ)に入力される。このコンピュータは、図8に示したハードウエアを制御すると共に、図6に示したID情報入力部204やコード生成部206、特徴画像切り出し部212、固有情報生成部214の機能を果たす。これら各部の機能は、プログラムに記述されており、コンピュータはそのプログラムを実行する。
【0043】
例えば、検査対象物をこの固有情報登録装置300に挿入すると自動送り装置(図示せず)とそのガイド(図示せず)沿って内部に送られ、駆動ローラ301aとガイドローラ302a及びガイド(図示せず)によって図8の構成の左側から右側に一定の速度で送られる。一方、コンピュータにおいて、予め自動的に生成した対象物のID情報がディジタルコードに変換され、バスを介して固有情報登録装置300に送られている。そして、コード書込部306が、そのディジタルコードを検査対象物に書き込む。
【0044】
さらに検査対象物は移動し、光源303によって表面を照射される。撮像デバイス305は、検査対象物からの反射光を読み取って画像信号を生成する。コンピュータは、その画像信号の中から、固有情報領域の画像を切り出して処理することで固有情報を生成する。32×32ドットの正方形の固有情報領域を、1ドットあたり8ビットのグレースケールで読み取った時に得られる固有情報を可視化した例(ただし、人間の視覚で識別子やすいように合わせるため、コントラスト補正している)を図9に示す。このようにして生成された固有情報は、検査対象物のID情報と対応づけて、例えば当該固有情報登録装置内又はネットワーク上にある固有情報DB216に蓄積される。これらの情報は、フロッピーディスク(登録商標)、CD-R、DVD-R、リムーバブルHDDなどのような可搬型の記録媒体に記録してもよい。また、その記録媒体を介して、ネットワーク上にある固有情報登録DBを管理するサーバにそれらの情報を登録するようにしてもよい。
【0045】
以上の例では、移動している検査対象物上の画像データを取り込むために、撮像デバイス305としてラインセンサを用いたが、対象物の移動速度、結像レンズの明るさ、シャッタースピード等の撮像条件によっては、ラインセンサに代えてエリアセンサを用いてもよい。また、検査対象物が静止した状態で画像データを取り込んでもよく、その場合、結像レンズの明るさやシャッタースピードの条件が緩和される。
【0046】
また、以上の例では、対象物がカードの場合には磁気ストライプ又はICチップにID情報を記録するとしたが、QRコードなどのディジタルコードとしてプラスチックの表面に印刷できるインクでカードの表面に印刷してもよいし、別のシート状のシールなどにディジタルコードを印刷してカードの表面に定着してもよい。
【0047】
以上、検査対象物の発行の際に用いられる固有情報登録装置について説明した。次に、発行された検査対象物の真贋を検査するための装置について説明する。この真贋検査装置の機能ブロック図を図10に示す。
【0048】
この装置の対象物入力部402から入力された検査対象物は、コード読み取り部404及び特徴画像読み取り部414に送られる。コード読み取り部404は、検査対象物から、ID情報のコード情報を読み取る。検査対象物がカード類であれば、磁気ストライプやICチップからコード情報を読み取る。検査対象物が証券等の紙類であれば、印刷された画像コードを読み取る。特徴画像読み取り部414は、検査対象物を照明し、その反射光を読み取る。検査対象物の固有画像の存在範囲が既知の場合は、その範囲を含んだ領域のみを読み取ればよい。コード読み取り部404と特徴画像読み取り部の読み取りは、いずれを先に行ってもよい。また、機械的な配置構成を工夫すれば、それら両者を同時に行うこともできる。
【0049】
デコード部406は、コード読み取り部404が読み取ったコード情報をデコードすることで、ID情報を求める。固有情報読み出し部408は、そのID情報に該当するレコードを固有情報DB216から検索する。この固有情報DB216は、図4または図6に示した固有情報DB216と同じものか、或いはその複製である。検索されるレコードには、読み取った検査対象物についての、登録された固有情報が含まれる。固有情報変換部410は、登録された固有情報が暗号化されている場合に、それを復号する。ここで秘密鍵で暗号化されている場合は、その対となる公開鍵を用いて復号する。得られた固有情報は、バッファ部412に一時的に保持される。
【0050】
一方、特徴画像読み取り部414が読み取った画像は、特徴画像切り出し部416に渡される。特徴画像切り出し部416は、その画像から、固有情報領域の部分を切り出す。ここで、固有情報領域の位置が固定である場合は、その固有情報領域の固定位置を基準に、固有情報領域より少し広めの領域を切り出す。広めの領域を切り出すのは、読み取り等による位置誤差を考慮するためである。固有情報領域の位置が固定である場合には、例えば、図1Bや図3A、図3Bのように専用の保護枠を形成する場合と、エンボスされた数字や文字同士の間隔のうち所定の位置の部分を固有情報領域として用いる場合などがある。また、図1Aの例のように、カード番号や名義人氏名の文字列の中から保護枠として適切なものを選択するシステムでは、特徴画像切り出し部416は、固有情報DB216から、その検査対象物のID情報(これはデコード部406により得られる)に対応する固有情報領域の位置情報(図5参照)を得て、その位置情報が示す領域より少し広め領域の画像を切り出す。固有情報変換部418は、切り出された領域の画像信号をディジタルデータに変換して出力する信号処理回路を備えており、その画像を所定の解像度(例えば400dpi)かつ所定の階調(例えば8ビットグレイスケール)のディジタルデータに変換する。求められたディジタルデータは、バッファ部420に一時的に保持される。
【0051】
照合部422は、バッファ部412に保持された固有情報のパターン(すなわち検査対象物のID情報に対応づけて登録された固有情報)と、バッファ部420に保持されたデータ(すなわち検査対象物の固有情報領域を含む領域から実際に読み出されたパターン)とを照合する。後者の方が範囲が広いので、前者のパターンの位置を後者のパターン上で少しずつずらしながら、各位置での両者の相関値を求め、それを判定部424に渡す。判定部424は、それら各位置についての相関値の中に、所定の閾値以上のものがあれば、対象物入力部402から入力された検査対象物が真正なものであると判定する。それ以外の場合は、その検査対象物は贋物であると判定する。なお、この照合及び判定の手法は、特許文献2に示されるものと同じ手法を用いることができる。
【0052】
この真贋検査装置の読み取り機構は、図8に示した固有情報登録装置300の機械的機構と同様のものでよい。
【0053】
この真贋検査装置は、店舗や役所、オフィスなど、カード類や有価証券類、金券類を取り扱う施設に設置する。カード類等の検査対象物をその装置に投入すると、その装置が上述の機構によりその検査対象物の真贋を判定し、真正なものと判定した場合は、その判定結果を装置のディスプレイに表示したり、或いはクレジット決済のための次の処理に移行したりする。贋物と判定した場合は、その旨をディスプレイ表示などでオペレータに知らせる。
【0054】
なお、ID情報が画像コードとして印刷されている紙の検査対象物を取り扱う真贋検査装置としては、図12に示すようなディジタル複合機を利用することもできる。この場合、ディジタル複合機のプラテン上にその検査対象物をセットし、それをスキャンする。ディジタル複合機に搭載された画像処理機構(ソフトウエア及びハードウエア)は、スキャンにより得られた画像上の所定の位置にある画像コードを解析して検査対象物のID情報を復元すると共に、別の所定位置にある固有情報領域の画像を切り出して固有情報を求め、これをID情報に対応づけて登録された固有情報と比較することで、その検査対象物の真贋を判定する。以上、複合機を例に取ったが、同様のことは、図13に示すようなフラットベッドスキャナと図11に示すようなコンピュータとの組合せでも実現できる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、周囲より凹んだ部分を固有情報領域とすることで、固有情報領域の表面に摩擦など傷ができる可能性を減らすことができ、ひいては、真正性を誤認識する可能性を少なくすることができる。また、検査対象物がクレジットカード等のカード類である場合、エンボス加工された数字や文字の凸部を保護部として利用し、その凸部に囲まれた領域や隣り合う凸部に挟まれた領域を固有情報領域として用いることができるので、既存・既発行のカード類に対しても、固有情報の登録を行うだけで、本実施形態の方式を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】エンボス加工された数字に囲まれた領域を固有情報領域としたクレジットカードを模式的に示す図である。
【図1B】固有情報領域を保護する保護枠をエンボス加工で形成したクレジットカードを模式的に示す図である。
【図2】貼付式の保護枠の例を示す図である。
【図3A】保護枠を貼付したカードの例を示す図である。
【図3B】保護枠を貼付した証券類の例を示す図である。
【図4】固有情報登録装置の一例を示す図である。
【図5】固有情報DBのデータ内容の例を示す図である。
【図6】固有情報登録装置の別の例を示す図である。
【図7】固有情報DBのデータ内容の別の例を示す図である。
【図8】固有情報登録装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図9】固有情報を模式的に示す図である。
【図10】真贋検査装置の機能ブロック図である。
【図11】コンピュータの外観を示す図である。
【図12】複合機の外観を示す図である。
【図13】フラットベッドスキャナの外観を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100a,100b 固有情報領域、110a,110b カード、120a,120b 保護枠。
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の表面に分布しているランダム性を有する機械読み取り可能な特徴に基づいて固体の真贋を判定する真贋判定に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真贋判定の対象となるカードや有価証券等の被検出物として、非蛍光材料の基材に蛍光ポリマー素子がランダムに混入されたものが示される。蛍光ポリマー素子は、高分子材料からなる本体と、本体に含有された蛍光顔料の粉体と、コーティング層などからなる。この被検出物の表面の特定領域を読み取ったランダムパターンをシステムに登録しておく。チェックの際にはその被検出物の表面の特定領域のランダムパターンを読み取り、これがシステムに登録されたランダムパターンと一致すれば、その被検出物が真正なものであると判定し、そうでなければ贋物と判断する。
【0003】
この被検出物は、その表面の一部乃至全面が、蛍光顔料の励起光および発光光の一部または全部を透過する保護層で覆われているため、折曲げるなどしても素子が被検出物の表面に突出したり折れたりするなどの不具合を生じることがなく、素子の分布パターンが変化するなどの不具合も少ない。
【0004】
また、特許文献2には、紙のように微細なランダムパターンを有する固体を、そのランダムパターンを利用して真贋判定する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−271895号公報
【特許文献2】特開2005−038389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、被検出物のチェックのためには光学的に素子分布パターンを読み取る必要があり、この読み取りの際に摩擦などで表面に傷が生じる場合がある。このような傷により素子分布パターンが変化したり、その傷自体がノイズとなったりすることにより、被検出物から読み取られるパターンに変化が生じ、真正性の誤認識の原因となる可能性がある。
【0007】
特許文献2の技術では、摩擦等によるランダムパターンの劣化について特段の考慮を払っていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面では、表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、前記所定位置の固有情報領域の周囲に凸状の保護部が形成されていることを特徴とする検査対象物を提供する。
【0009】
本発明の別の側面では、表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、前記所定位置の固有情報領域が、その周囲よりも凹んだ状態となるように加工されていることを特徴とする検査対象物を提供する。
【0010】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、数字又は文字のうちランダムパターンの保護に適した形状を持つ数字又は文字と、その文字又は数字に対する固有情報領域の相対位置を記憶する保護文字記憶部と、検査対象物を読み取って得た画像の中から、文字認識により数字又は文字の画像を認識し、認識した数字又は文字のうち保護文字記憶部に記憶された数字又は文字を検出し、検出した数字又は文字を含む画像の中から前記相対位置の情報に基づき固有情報領域を特定する固有情報領域特定部と、特定された固有情報領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0011】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字の列を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物を読み取って得た画像の中から、前記数字又は文字の列の中で所定の順番にある隣接する数字又は文字同士の間隔の領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0012】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物の表面上の所定位置に凸状の保護部を形成する保護部形成部と、保護部により少なくとも部分的に囲まれた領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0013】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、検査対象物の表面上の所定位置の固有情報領域がその周囲よりも凹んだ状態となるように加工する保護加工部と、保護加工部により加工された固有情報領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、を備える固有情報登録装置を提供する。
【0014】
本発明の別の側面では、表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定を行う装置であって、検査対象物に対し印刷又は電子的書込により書き込まれたID情報を読み取るID読み取り部と、読み取られたID情報に対応する登録固有情報と、検査対象物の表面上での固有情報領域の位置の情報とを所定の固有情報データベースから取得する固有情報取得部と、検査対象物の表面を光学的に読み取り、前記固有情報領域の画像を切り出し、この画像から固有情報を求める固有情報読み取り部と、固有情報取得部が取得した登録固有情報と、固有情報読み取り部が検査対象物から読み取った固有情報とを比較することにより検査対象物の真贋を判定する判定部と、を備える真贋判定装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下「実施形態」と呼ぶ)について説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る検査対象物について説明する。本実施形態の検査対象物は、表面にランダムパターンをなす微細構造を持つ固体である。抄紙過程等で繊維がランダムに絡まって構成される紙がその一例である。また別の例としては、微細な素子がランダムに混入されたプラスティックのカード(例えばクレジットカードやキャッシュカード又はその双方を兼ねるカード)などがある。検査対象物は、板状やカード状、或いはシート状のものが典型的であるが、これに限定されるものではない。
【0017】
検査対象物は表面に微細なランダム構造を有するので、その表面からの反射光を光学的に読み取ったり、その検査対象物を透過した透過光を光学的に読み取ったりすることで、ランダムなパターンを得ることができる。ランダム構造をなす繊維や素子のサイズや、読み取り光学系の解像度にもよるが、検査対象物表面の十分に広い面積を読み取れば、その対象物を一意に特定するランダムパターンの情報が得られる。このランダムパターンが検査対象物の識別情報として用いられる。
【0018】
なお、このように表面にランダムな微細構造を持つカードや紙などの検査対象物は、従来から様々なものが知られている。以下に示す本実施形態の方法及びシステムは、それら従来の様々な検査対象物に適用可能である。
【0019】
本実施形態の検査対象物の一例としてのクレジットカード又はキャッシュカード等のカードを、図1Aを参照して説明する。図1Aに示すカード110aは、表面にランダムな微細構造を持っている。このカード110の表面の一部の領域を、そのカード110aの固有情報領域100aとし、その固有情報領域100aを光学的に読み取って得たランダムパターンをそのカード110aの固有の情報として、真贋判定に利用する。本実施形態のカード110aでは、エンボス加工で凸状に形成された数字「0」を保護枠120aとして用い、その保護枠120aの内部の領域を、固有情報領域100aとして用いている。この例では、固有情報領域100aは、凸状の保護枠120aで囲まれた凹部に位置するので、カード110aが読み取り機で読み取られる際など様々な場面で出会う摩擦から固有情報領域100aは保護される。
【0020】
図1Aの例では、エンボス加工により凸状に形成された数字「0」を固有情報領域100aの保護枠120aとしたが、これは一例に過ぎない。「6」や「9」や「8」などのような閉ループを有する他の数字の閉ループを保護枠120aとし、その内部を固有情報領域100aとしてもよい。また、数字に限らず、他の文字(例えばアルファベット)のエンボスの凸部がなす閉ループを保護枠120aとしてもよい。
【0021】
また、更にいえば、保護枠120aは閉ループを形成している必要はない。隣り合う2つの凸部の間の凹部は、それら凸部の存在により摩擦からある程度は守られる。隣り合う2つの凸部の間隔が狭いほど、その間の凹部が摩擦から守られる確率は高くなる。例えば凸部の高さが200μm〜1000μm程度であれば、隣接する凸部同士の間隔が約2〜3mmかそれ以下であれば、カード110aが他の物と擦れ合っても、それら凸部同士の間の領域は摩擦から守られる。例えば、エンボス加工された「2」、「3」、「5」等の数字で部分的に囲まれた内部を固有情報領域100aとしてもよい。また、カード番号の数字列の中の隣り合う数字同士の間隔や、カード名義人の名前の文字列の中の隣り合う文字通しの間隔を、固有情報領域100aとして利用してもよい。この場合、エンボス加工で盛り上がった隣り合う数字や文字が保護枠120aとして機能することになる。
【0022】
以上に説明した例は、従来のクレジットカードやキャッシュカード等のカード類にすでに存在するエンボス加工の数字や文字を保護枠120aとして利用する例であった。これに対し、図1Bに示す例では、カード110b表面上の予め定められた場所にある固有情報領域100bを囲むように、保護枠120bをエンボス加工で凸状に形成した例である。このように専用の保護枠120bを形成する場合、ランダムな微細構造は、少なくともその固有情報領域100bの部分にあればよい。
【0023】
以上に示した図1A及び図1Bの例は、いずれもプラスティック等の材料からなるカード上のエンボス加工で形成された凸部により固有情報領域100a又は100bを保護するものであった。しかし、エンボス加工による保護は、紙などのような可塑性の期待できない材料からなっている検査対象物には適用できない。そのような検査対象物には、保護枠を貼付する方法を用いればよい。このように貼付する保護枠の例を図2に示す。
【0024】
図2に示す保護枠130は、ある厚みを持って、ある面積を囲むことができる枠である。保護枠130の高さは概略200μm〜1000μmの範囲である。保護枠130は、その内部に3〜6mm2の面積の固有情報領域を囲める程度のサイズが望ましい。この程度の面積があれば、固有情報領域が呈するランダムパターンは実用上十分な一意性を持つことになる。図2の例では、保護枠130は円形の形状をしているが、これは一例に過ぎず、例えば多角形の形状であってもよい。また、保護枠130の材料はクレジットカードやキャッシュカードなどと同等のプラスチックであってもよい。保護枠130の底面は、クレジットカードやキャッシュカード、或いは金券や有価証券、契約書等の紙類などの検査対象物に対して接着するための接着剤層が形成されている。
【0025】
図3Aは、貼付式の保護枠130を貼付したカード110cの例を示す図である。カード110cのうち、貼付された保護枠130で囲まれた領域が、そのカード110c固有のランダム情報の読み取り領域である固有情報領域100cとなる。
【0026】
図3Bは、紙の金券140に保護枠130を貼付した例を示す。この金券140には、金券自体のID(識別情報)を含んだディジタルコード150(図示例ではQRコード(登録商標))が印刷されており、更に券面の所定の位置に保護枠130が貼付されている。その保護枠130の内部の固有情報領域100dの紙紋(紙の繊維、又は紙表面の微細な凹凸、が構成する微細パターン)が、その金券140の固有情報となる。
【0027】
以上では、固有情報領域100a〜100dを、その領域の周囲を部分的に又は完全に取り囲む、凸状に形成された保護枠120a,120b,130で保護した。しかし、このような保護の仕方は一例に過ぎない。このほかにも、例えば検査対象物の表面に、固有情報の領域として十分な面積(例えば概略3〜6mm2)を持つ凹部を形成し、その凹部を固有情報領域として用いてもよい。例えば、プラスティックのカードであれば、そのカードの表面の一部の固有情報領域として必要な所定の面積をエンボス加工等により凹ませればよい。その凹部の底面は、周囲の面より低いので、カードが他の物と擦れても、摩擦から守られやすい。
【0028】
以上のような検査対象物を発行する際には、その検査対象物の固有情報領域のランダムパターンを読み取って、そのランダムパターンを示す情報を真贋判定の基礎情報として登録する必要がある。このような固有情報登録のための固有情報登録装置200の例を、図4を参照して説明する。図4の例は、図1Aのように、検査対象物に元々存在する保護枠(エンボス加工された数字など)で保護された領域を固有情報領域100aとして用いる場合の例である。
【0029】
まず、カードや有価証券などの検査対象物を対象物入力部202から投入すると、ID情報入力部204にその旨が通知され、ID情報入力部204からその検査対象物のID情報が入力される。このID情報は、例えば検査対象物の識別情報であり、例えばクレジットカードやキャッシュカードであればカード番号、金券であれば通し番号などである。ID情報は、例えば、ID情報の発行を管理するID管理部(図示省略。固有情報登録装置内にあってもよいし、固有情報登録装置とネットワークを介して接続されていてもよい)から受け取ればよい。ID情報入力部204から入力されたID情報は、コード生成部206と固有情報DB(データベース)216とに渡される。コード生成部206は、入力されたID情報を、検査対象物に書き込むのに好適なコード情報へと変換する。例えば検査対象物が磁気ストライプ式やICチップ内蔵のカードであれば、そのID情報をそれら磁気ストライプ又はICチップに記録されるデータ形式に変換(例えば暗号化など)する。また、検査対象物が有価証券等の紙類の場合は、ID情報をQRコード等の画像コードへと変換する。コード書込部208は、コード生成部206が生成したコード情報を検査対象物に書き込む。カード類であれば、そのコード情報を磁気ストライプ又はICチップに書き込む。紙類であれば、コード生成部206が生成した画像コードをその紙類の表面の所定位置に印刷する。
【0030】
一方、特徴画像読取部210は、検査対象物の表面を光学的に読み取る。読み取る領域は、表面全面でもよいし、固有情報領域100aが含まれる可能性の高い範囲のみであってもよい。例えば、カード番号又は名義人の文字列の中に固有情報領域100aを設定することが決まっているのであれば、カード番号と名義人の領域を読み取ればよい。特徴画像切り出し部212は、読み取られた画像の中から固有情報領域100aの画像を特徴画像として切り出す。ここで、特徴画像切り出し部212は、検査対象物の表面の中から固有情報領域100aを決定する必要がある。このためには、決定ルールを定めておけばよい。例えば、カード番号の数字列の並び順で最初に現れる「0」、「4」、「6」、「8」、又は「9」の閉ループ内の所定の形状及びサイズを持つ領域(例えば1.8mm四方の正方形など)を固有情報領域100aとする、等のルールである。閉ループを要件としなければ、「1」と「7」以外の数字であれば、保護枠として機能するので、そのような数字の中で最初に現れるものを保護枠とし、その保護枠で囲まれる部分(数字の形状は既知なので、数字ごとに予め定めておくことができる)を固有情報領域100aとすればよい。なお、それら各数字は、文字認識(OCR)技術により求めることができる。いずれにしても、固有情報登録装置200は、数字又は文字のうち固有情報領域の保護に適した形状を持つものと、その数字又は文字に対する固有情報領域の相対位置の情報を保持している。相対位置の情報は、例えば「0」に対して「その内部」というように定性的な情報でもよいし、数字、文字の特定位置(例えば左上点や中心など)を基準とした場合の固有情報領域の位置(例えば矩形なら左上隅と右下隅の座標)のように相対位置を座標等で示してもよい。
【0031】
このようにして固有情報領域100aを決めると、特徴画像切り出し部212は、特徴画像読取部210が読み取った画像の中から、その固有情報領域100aの画像を切り出す。固有情報生成部214は、その固有情報領域100aの画像を、所定データ形式の固有情報へと変換する。固有情報生成部214は、固有情報領域100aの画像信号をディジタルデータに変換して出力する信号処理回路を備えており、その画像を所定の解像度(例えば400dpi)かつ所定の階調(例えば8ビットグレイスケール)のディジタルデータに変換する。例えば、読み取り解像度400dpiで32×32ドットの矩形領域(約2mm×2mm)を、1ドットあたり8ビットのグレースケールで読み取ったとすると、1つの固有情報のデータ量は1024バイトとなる。変換されたディジタルデータはさらに暗号化されてもよい。暗号化には、公開鍵暗号方式の秘密鍵(固有情報登録装置のもの)を用いることができる。この暗号化は、固有情報登録装置の署名と捉えることもできる。
【0032】
このような画像からの固有情報の生成には、従来の方法を用いることができる。例えば上記特許文献2に示された方法がその一例である。このようにして生成された固有情報は、固有情報DB216に登録される。また、固有情報DB216には、特徴画像切り出し部212が決定した固有情報領域100aの位置(例えば座標情報)が登録される。このように固有情報領域100aの位置をDB216に登録するのは、検査対象物の真贋検査を行う装置が、固有情報領域100aの場所を特定できるようにするためである。また、固有情報DB216には、これらのデータの他に、検査対象物の分類データ(クレジットカードなのかキャッシュカードなのかなど)、固有情報をスキャンした日時、この固有情報登録装置のシリアルナンバーなどの情報を併せて登録してもよい。
【0033】
固有情報DB216には、図5に示すように、ID情報入力部204から入力されたID情報と、固有情報生成部214から入力された固有情報(図示例では、固有情報のファイルの識別情報(ファイル名)が登録される)と、及びその固有情報を取り出した固有情報領域100aの位置(この例では、矩形の固有情報領域の左上隅と右下隅の座標で示される)とが、1つの検査対象物についての1組の情報として登録されている。固有情報DB216は、固有情報登録装置200内にあってもよいし、固有情報登録装置200にネットワークを介して接続された外部のデータベースであってもよい。
【0034】
このようにしてID情報の書込と、かつ固有情報の抽出とが完了した検査対象物は、対象物排出部218から排出される。
【0035】
以上、検査対象物の固有情報を登録するための装置を説明した。以上の例では、カード番号乃至名義人を示す数字又は文字の中に固有情報領域100aを設定したが、別の例として、カード番号又は名義人の数字列又は文字列の中の隣接する数字又は文字の間隔を固有情報領域100aとして設定してもよい。数字や文字の中には固有情報領域100aの保護枠として機能しにくいもの(例えば「1」など)があったが、数字や文字の間隔の場合、どの間隔であっても基本的には保護枠として機能するので、例えば「カード番号の数字列の(左から)1番目と2番目の数字の間」というように、数字列や文字列のカード面上での位置が既知の場合に、その列の中の特定の順番にある数字や文字同士の間隔を固有情報領域100aとしてシステム内で取り決めておくこともできる。この場合、固有情報領域の位置情報を固有情報DB216に登録する必要はなくなる。
【0036】
図4の例は、既存のエンボスされた凸部を利用して固有情報領域100aを保護する場合の例であった、これに対し、専用の保護枠120bをエンボス加工したり、貼付式の保護枠130を貼付したりする場合には、固有情報登録装置200にはそれら加工のための手段が必要となる。この例を、図6を参照して説明する。
【0037】
図6において、図4に示した構成要素と同一又は類似の機能を果たす構成要素には同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図6の固有情報登録装置200は、保護枠形成部209を備えている点が図4の装置と異なる。保護枠形成部209は、図1Bのようにエンボス加工で保護枠120bを形成するか、又は図3A又は図3Bのように保護枠130を検査対象物に貼付する。検査対象物表面上で保護枠を形成する場所は、システム内で予め取り決められている。したがって、特徴画像読み取り部210はその場所を含む限られた領域の画像を読み取ればよく、特徴画像切り出し部212はその場所の画像を切り出せばよい。また固有情報DB216に固有情報領域の位置情報を登録する必要はない。したがって、固有情報DB216には、図7に示すように、ID情報と固有情報のペアを登録すればよい。
【0039】
次に、図8を参照して、図6の保護枠形成部を備える固有情報登録装置300のハードウエア的機構を説明する。
【0040】
この装置300において、駆動ローラ301aと301bは、検査対象物を装置内部へと送り込む。ガイドローラ302aと302bは対象物の送りをガイドする。このほか、検査対象物を装置内の搬送経路に沿って搬送するためのローラその他の機構が存在するが、これらは従来技術に属するものなので省略する。コード書込部306は、検査対象物のID情報を示すコードを検査対象物に対して書き込む。クレジットカードやキャッシュカードなどのカード類を対象とする場合、コード書込部306は、磁気ストライプにディジタルコードを記録する磁気ヘッド、又はICチップにディジタルコードを書き込む書込装置である。検査対象物が有価証券等の紙類である場合には、コード書込部306は、紙類の表面にQRコード(登録商標)などの画像コードを印刷する印刷ヘッドである。
【0041】
保護枠形成部308は、検査対象物表面の所定の場所に、エンボス加工により保護枠120aを形成するか、又は貼付式の保護枠130を貼付する。この場合、保護枠130は保護枠形成部308の内部に蓄えられており、一つずつ対象物に定着される。
【0042】
光源303は、検査対象物の表面を照明する光源であり、結像光学系304は光源303に照明された検査対象物からの反射光を撮像デバイス305上に結像させる。撮像デバイス305は、検査対象物からの反射光を電気信号に変換するラインセンサである。撮像デバイス305としてはCCDやCMOSなど、様々な方式のデバイスを用いることができる。ラインセンサの場合、検査対象物の移動に伴って刻々と各ラインからの反射光を読み取っていく。撮像デバイス305から出力された画像信号は、画像処理回路(図示せず)によってディジタル化され、公知の画像処理が施され、バス等のデータ伝送路を介してコンピュータ(例えば図11に示すパーソナルコンピュータ)に入力される。このコンピュータは、図8に示したハードウエアを制御すると共に、図6に示したID情報入力部204やコード生成部206、特徴画像切り出し部212、固有情報生成部214の機能を果たす。これら各部の機能は、プログラムに記述されており、コンピュータはそのプログラムを実行する。
【0043】
例えば、検査対象物をこの固有情報登録装置300に挿入すると自動送り装置(図示せず)とそのガイド(図示せず)沿って内部に送られ、駆動ローラ301aとガイドローラ302a及びガイド(図示せず)によって図8の構成の左側から右側に一定の速度で送られる。一方、コンピュータにおいて、予め自動的に生成した対象物のID情報がディジタルコードに変換され、バスを介して固有情報登録装置300に送られている。そして、コード書込部306が、そのディジタルコードを検査対象物に書き込む。
【0044】
さらに検査対象物は移動し、光源303によって表面を照射される。撮像デバイス305は、検査対象物からの反射光を読み取って画像信号を生成する。コンピュータは、その画像信号の中から、固有情報領域の画像を切り出して処理することで固有情報を生成する。32×32ドットの正方形の固有情報領域を、1ドットあたり8ビットのグレースケールで読み取った時に得られる固有情報を可視化した例(ただし、人間の視覚で識別子やすいように合わせるため、コントラスト補正している)を図9に示す。このようにして生成された固有情報は、検査対象物のID情報と対応づけて、例えば当該固有情報登録装置内又はネットワーク上にある固有情報DB216に蓄積される。これらの情報は、フロッピーディスク(登録商標)、CD-R、DVD-R、リムーバブルHDDなどのような可搬型の記録媒体に記録してもよい。また、その記録媒体を介して、ネットワーク上にある固有情報登録DBを管理するサーバにそれらの情報を登録するようにしてもよい。
【0045】
以上の例では、移動している検査対象物上の画像データを取り込むために、撮像デバイス305としてラインセンサを用いたが、対象物の移動速度、結像レンズの明るさ、シャッタースピード等の撮像条件によっては、ラインセンサに代えてエリアセンサを用いてもよい。また、検査対象物が静止した状態で画像データを取り込んでもよく、その場合、結像レンズの明るさやシャッタースピードの条件が緩和される。
【0046】
また、以上の例では、対象物がカードの場合には磁気ストライプ又はICチップにID情報を記録するとしたが、QRコードなどのディジタルコードとしてプラスチックの表面に印刷できるインクでカードの表面に印刷してもよいし、別のシート状のシールなどにディジタルコードを印刷してカードの表面に定着してもよい。
【0047】
以上、検査対象物の発行の際に用いられる固有情報登録装置について説明した。次に、発行された検査対象物の真贋を検査するための装置について説明する。この真贋検査装置の機能ブロック図を図10に示す。
【0048】
この装置の対象物入力部402から入力された検査対象物は、コード読み取り部404及び特徴画像読み取り部414に送られる。コード読み取り部404は、検査対象物から、ID情報のコード情報を読み取る。検査対象物がカード類であれば、磁気ストライプやICチップからコード情報を読み取る。検査対象物が証券等の紙類であれば、印刷された画像コードを読み取る。特徴画像読み取り部414は、検査対象物を照明し、その反射光を読み取る。検査対象物の固有画像の存在範囲が既知の場合は、その範囲を含んだ領域のみを読み取ればよい。コード読み取り部404と特徴画像読み取り部の読み取りは、いずれを先に行ってもよい。また、機械的な配置構成を工夫すれば、それら両者を同時に行うこともできる。
【0049】
デコード部406は、コード読み取り部404が読み取ったコード情報をデコードすることで、ID情報を求める。固有情報読み出し部408は、そのID情報に該当するレコードを固有情報DB216から検索する。この固有情報DB216は、図4または図6に示した固有情報DB216と同じものか、或いはその複製である。検索されるレコードには、読み取った検査対象物についての、登録された固有情報が含まれる。固有情報変換部410は、登録された固有情報が暗号化されている場合に、それを復号する。ここで秘密鍵で暗号化されている場合は、その対となる公開鍵を用いて復号する。得られた固有情報は、バッファ部412に一時的に保持される。
【0050】
一方、特徴画像読み取り部414が読み取った画像は、特徴画像切り出し部416に渡される。特徴画像切り出し部416は、その画像から、固有情報領域の部分を切り出す。ここで、固有情報領域の位置が固定である場合は、その固有情報領域の固定位置を基準に、固有情報領域より少し広めの領域を切り出す。広めの領域を切り出すのは、読み取り等による位置誤差を考慮するためである。固有情報領域の位置が固定である場合には、例えば、図1Bや図3A、図3Bのように専用の保護枠を形成する場合と、エンボスされた数字や文字同士の間隔のうち所定の位置の部分を固有情報領域として用いる場合などがある。また、図1Aの例のように、カード番号や名義人氏名の文字列の中から保護枠として適切なものを選択するシステムでは、特徴画像切り出し部416は、固有情報DB216から、その検査対象物のID情報(これはデコード部406により得られる)に対応する固有情報領域の位置情報(図5参照)を得て、その位置情報が示す領域より少し広め領域の画像を切り出す。固有情報変換部418は、切り出された領域の画像信号をディジタルデータに変換して出力する信号処理回路を備えており、その画像を所定の解像度(例えば400dpi)かつ所定の階調(例えば8ビットグレイスケール)のディジタルデータに変換する。求められたディジタルデータは、バッファ部420に一時的に保持される。
【0051】
照合部422は、バッファ部412に保持された固有情報のパターン(すなわち検査対象物のID情報に対応づけて登録された固有情報)と、バッファ部420に保持されたデータ(すなわち検査対象物の固有情報領域を含む領域から実際に読み出されたパターン)とを照合する。後者の方が範囲が広いので、前者のパターンの位置を後者のパターン上で少しずつずらしながら、各位置での両者の相関値を求め、それを判定部424に渡す。判定部424は、それら各位置についての相関値の中に、所定の閾値以上のものがあれば、対象物入力部402から入力された検査対象物が真正なものであると判定する。それ以外の場合は、その検査対象物は贋物であると判定する。なお、この照合及び判定の手法は、特許文献2に示されるものと同じ手法を用いることができる。
【0052】
この真贋検査装置の読み取り機構は、図8に示した固有情報登録装置300の機械的機構と同様のものでよい。
【0053】
この真贋検査装置は、店舗や役所、オフィスなど、カード類や有価証券類、金券類を取り扱う施設に設置する。カード類等の検査対象物をその装置に投入すると、その装置が上述の機構によりその検査対象物の真贋を判定し、真正なものと判定した場合は、その判定結果を装置のディスプレイに表示したり、或いはクレジット決済のための次の処理に移行したりする。贋物と判定した場合は、その旨をディスプレイ表示などでオペレータに知らせる。
【0054】
なお、ID情報が画像コードとして印刷されている紙の検査対象物を取り扱う真贋検査装置としては、図12に示すようなディジタル複合機を利用することもできる。この場合、ディジタル複合機のプラテン上にその検査対象物をセットし、それをスキャンする。ディジタル複合機に搭載された画像処理機構(ソフトウエア及びハードウエア)は、スキャンにより得られた画像上の所定の位置にある画像コードを解析して検査対象物のID情報を復元すると共に、別の所定位置にある固有情報領域の画像を切り出して固有情報を求め、これをID情報に対応づけて登録された固有情報と比較することで、その検査対象物の真贋を判定する。以上、複合機を例に取ったが、同様のことは、図13に示すようなフラットベッドスキャナと図11に示すようなコンピュータとの組合せでも実現できる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、周囲より凹んだ部分を固有情報領域とすることで、固有情報領域の表面に摩擦など傷ができる可能性を減らすことができ、ひいては、真正性を誤認識する可能性を少なくすることができる。また、検査対象物がクレジットカード等のカード類である場合、エンボス加工された数字や文字の凸部を保護部として利用し、その凸部に囲まれた領域や隣り合う凸部に挟まれた領域を固有情報領域として用いることができるので、既存・既発行のカード類に対しても、固有情報の登録を行うだけで、本実施形態の方式を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】エンボス加工された数字に囲まれた領域を固有情報領域としたクレジットカードを模式的に示す図である。
【図1B】固有情報領域を保護する保護枠をエンボス加工で形成したクレジットカードを模式的に示す図である。
【図2】貼付式の保護枠の例を示す図である。
【図3A】保護枠を貼付したカードの例を示す図である。
【図3B】保護枠を貼付した証券類の例を示す図である。
【図4】固有情報登録装置の一例を示す図である。
【図5】固有情報DBのデータ内容の例を示す図である。
【図6】固有情報登録装置の別の例を示す図である。
【図7】固有情報DBのデータ内容の別の例を示す図である。
【図8】固有情報登録装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【図9】固有情報を模式的に示す図である。
【図10】真贋検査装置の機能ブロック図である。
【図11】コンピュータの外観を示す図である。
【図12】複合機の外観を示す図である。
【図13】フラットベッドスキャナの外観を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100a,100b 固有情報領域、110a,110b カード、120a,120b 保護枠。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、
前記所定位置の固有情報領域の周囲に凸状の保護部が形成されていることを特徴とする検査対象物。
【請求項2】
請求項1記載の検査対象物であって、前記保護部は、エンボス加工により形成されることを特徴とする検査対象物。
【請求項3】
請求項1記載の検査対象物であって、前記保護部は、前記固有情報領域の周囲に貼付されることを特徴とする検査対象物。
【請求項4】
表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、
前記所定位置の固有情報領域が、その周囲よりも凹んだ状態となるように加工されていることを特徴とする検査対象物。
【請求項5】
請求項1又は4記載の検査対象物であって、前記検査対象物はクレジットカード又はキャッシュカード又はその双方を兼ねるカードであることを特徴とする、検査対象物。
【請求項6】
表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
数字又は文字のうちランダムパターンの保護に適した形状を持つ数字又は文字と、その文字又は数字に対する固有情報領域の相対位置を記憶する保護文字記憶部と、
検査対象物を読み取って得た画像の中から、文字認識により数字又は文字の画像を認識し、認識した数字又は文字のうち保護文字記憶部に記憶された数字又は文字を検出し、検出した数字又は文字を含む画像の中から前記相対位置の情報に基づき固有情報領域を特定する固有情報領域特定部と、
特定された固有情報領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項7】
表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字の列を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物を読み取って得た画像の中から、前記数字又は文字の列の中で所定の順番にある隣接する数字又は文字同士の間隔の領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項8】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物の表面上の所定位置に凸状の保護部を形成する保護部形成部と、
保護部により少なくとも部分的に囲まれた領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項9】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物の表面上の所定位置の固有情報領域がその周囲よりも凹んだ状態となるように加工する保護加工部と、
保護加工部により加工された固有情報領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項10】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定を行う装置であって、
検査対象物に対し印刷又は電子的書込により書き込まれたID情報を読み取るID読み取り部と、
読み取られたID情報に対応する登録固有情報と、検査対象物の表面上での固有情報領域の位置の情報とを所定の固有情報データベースから取得する固有情報取得部と、
検査対象物の表面を光学的に読み取り、前記固有情報領域の画像を切り出し、この画像から固有情報を求める固有情報読み取り部と、
固有情報取得部が取得した登録固有情報と、固有情報読み取り部が検査対象物から読み取った固有情報とを比較することにより検査対象物の真贋を判定する判定部と、
を備える真贋判定装置。
【請求項1】
表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、
前記所定位置の固有情報領域の周囲に凸状の保護部が形成されていることを特徴とする検査対象物。
【請求項2】
請求項1記載の検査対象物であって、前記保護部は、エンボス加工により形成されることを特徴とする検査対象物。
【請求項3】
請求項1記載の検査対象物であって、前記保護部は、前記固有情報領域の周囲に貼付されることを特徴とする検査対象物。
【請求項4】
表面上の所定位置の固有情報領域内にある微細なランダムパターンを用いて真贋がチェックされる検査対象物であって、
前記所定位置の固有情報領域が、その周囲よりも凹んだ状態となるように加工されていることを特徴とする検査対象物。
【請求項5】
請求項1又は4記載の検査対象物であって、前記検査対象物はクレジットカード又はキャッシュカード又はその双方を兼ねるカードであることを特徴とする、検査対象物。
【請求項6】
表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
数字又は文字のうちランダムパターンの保護に適した形状を持つ数字又は文字と、その文字又は数字に対する固有情報領域の相対位置を記憶する保護文字記憶部と、
検査対象物を読み取って得た画像の中から、文字認識により数字又は文字の画像を認識し、認識した数字又は文字のうち保護文字記憶部に記憶された数字又は文字を検出し、検出した数字又は文字を含む画像の中から前記相対位置の情報に基づき固有情報領域を特定する固有情報領域特定部と、
特定された固有情報領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項7】
表面上に微細なランダムパターンを持つとともにエンボス加工により凸状に形成された数字又は文字の列を備える検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物を読み取って得た画像の中から、前記数字又は文字の列の中で所定の順番にある隣接する数字又は文字同士の間隔の領域の画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項8】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物の表面上の所定位置に凸状の保護部を形成する保護部形成部と、
保護部により少なくとも部分的に囲まれた領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項9】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定に用いる固有情報を登録するための装置であって、
検査対象物の表面上の所定位置の固有情報領域がその周囲よりも凹んだ状態となるように加工する保護加工部と、
保護加工部により加工された固有情報領域の画像を読み取り、その画像から真贋判定に用いる固有情報を求める固有情報取得部と、
求められた固有情報を、当該検査対象物のID情報と対応づけて、所定の固有情報データベースに登録する固有情報登録部と、
を備える固有情報登録装置。
【請求項10】
表面上に微細なランダムパターンを持つ検査対象物の真贋判定を行う装置であって、
検査対象物に対し印刷又は電子的書込により書き込まれたID情報を読み取るID読み取り部と、
読み取られたID情報に対応する登録固有情報と、検査対象物の表面上での固有情報領域の位置の情報とを所定の固有情報データベースから取得する固有情報取得部と、
検査対象物の表面を光学的に読み取り、前記固有情報領域の画像を切り出し、この画像から固有情報を求める固有情報読み取り部と、
固有情報取得部が取得した登録固有情報と、固有情報読み取り部が検査対象物から読み取った固有情報とを比較することにより検査対象物の真贋を判定する判定部と、
を備える真贋判定装置。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−272541(P2007−272541A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97052(P2006−97052)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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