説明

真贋判定方法および同装置

情報提示物質が付与された対象物に対する真贋判断の高い信頼性を確保する。特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、それぞれが放射する個別蛍光スペクトルを予め記憶しておく。真贋判定を行う対象物90に特定の波長領域の電磁波を照射し、放射される対象物蛍光スペクトルを検出する。こうして検出した対象物蛍光スペクトルを、予め記憶された有限種類の真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現し、再現できなければ、当該対象物90を偽物と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブランド品や食品、工業製品等、種々の対象物について、その真贋を判定する真贋判定方法および同装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の対象物に情報提示物質を付与しておき、これが放射する蛍光を検出することによって、情報提示物質の種類等に予め関連付けた情報を読み取る方法が提案されている(下記特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2002−332414号公報
【特許文献2】特開2002−336798号公報
【特許文献3】WO03/058549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、蛍光を放射する物質が多種存在することから、第三者がこれらを組み合わせることにより、真正な情報提示物質による蛍光スペクトルに近似した蛍光スペクトルを偽造されるおそれがあり、それを偽物と判断することが困難であった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、信頼性を確保することができる真贋判定方法および同装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の手段を提供する。
【0006】
[1]情報提示物質が付与された対象物の真贋を判定する真贋判定方法であって、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶しておき、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射して当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出し、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試み、
前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物の真偽を判定することを特徴とする真贋判定方法。
【0007】
[2]前記対象物蛍光スペクトルの再現は、所定の波長領域のすべてにおいて、前記対象物蛍光スペクトルと一致する、前記個別蛍光スペクトルの組み合わせを探索することによることを特徴とする前項1に記載の真贋判定方法。
【0008】
[3]前記有限種類の真正な情報提示物質を組み合わせる際の相対的な配合比率のうち、有限種類の真正な配合比率を予め記憶しておき、
前記対象物蛍光スペクトルの再現は、前記個別蛍光スペクトルを前記真正な配合比率で組み合わせることにより行うことを特徴とする前項1または2に記載の真贋判定方法。
【0009】
[4]前記有限種類の真正な情報提示物質のうち、1または複数の種類、およびそれらを組み合わせる際の相対的な配合比率に対応づけて各対象物に関する情報を記憶しておき、
前記対象物蛍光スペクトルが、前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できた場合、この再現できた際の情報提示物質の種類および配合比率に対応づけて記憶された対象物に関する情報を出力することを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の真贋判定方法。
【0010】
[5]情報提示物質が付与された対象物の真贋を判定する真贋判定装置であって、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶する個別蛍光スペクトル記憶手段と、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試みるスペクトル再現手段と、
前記スペクトル再現手段によって、前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物を真偽を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする真贋判定装置。
【0011】
[6]情報提示物質が付与された対象物の近傍にある検出装置端末と、この検出装置端末とネットワーク回線を介して情報の送受が可能なサーバとを含む真贋判定システムであって、
前記検出装置端末は、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
前記対象物蛍光スペクトルに関する情報を前記サーバに送信する送信手段と、
前記サーバから所定の応動動作指令を受信する受信手段と、
を備え、
前記サーバは、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶する個別蛍光スペクトル記憶手段と、
前記検出装置端末から前記対象物蛍光スペクトルに関する情報を受信する受信手段と、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試みるスペクトル再現手段と、
前記スペクトル再現手段によって、前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物を真偽を判定する判定手段と、
この判定結果に応じた所定の応動動作指令を前記検出装置端末に送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする真贋判定システム。
【0012】
[7]情報提示物質が付与された対象物の近傍にあり、ネットワーク回線を介してサーバと情報の送受が可能な検出装置端末であって、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶しているサーバに対し、前記対象物蛍光スペクトルに関する情報をネットワーク回線を介して送信する送信手段と、
前記対象物蛍光スペクトルが個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから当該対象物を真偽が判定され、その判定結果に応じて決定される所定の応動動作指令を前記サーバから受信する受信手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置端末。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、検出された対象物蛍光スペクトルが、予め設定された有限種類の真正な情報提示物質が呈する個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現されるか否かから対象物の真贋を判定するため、仮に第三者によって真正品に近似した蛍光スペクトルを呈する偽物が作製されても、これを識別することができ、真贋判断の高い信頼性を確保することができる。
【0014】
また、有限種類の真正な情報提示物質の組み合わせに検討範囲を限定できるため、真贋判定に要する計算負荷を小さくすることができる。
【0015】
なお、第三者によって対象物から蛍光スペクトルが検出されたとしても、蛍光を放射する物質には無限に近い種類があるため、検出された蛍光スペクトルを構成している真正な情報提示物質を特定することは事実上不可能である。
【0016】
また、真正な情報提示物質の相対的な配合比率も有限種類にすると、情報提示物質の組み合わせ検討範囲をさらに限定できるため、真贋判定の計算負荷をさらに小さくすることができる。
【0017】
また、情報提示物質の組み合わせに対応づけられた対象物に関する情報を出力するようにすると、対象物の真贋判定結果に加えて、その対象物に関する情報も得ることができる。
【0018】
また、対象物の真贋判定を行う真贋判定システムを、対象物から蛍光スペクトルを検出する検出装置端末と、この蛍光スペクトルから対象物の真贋判定を行うサーバとを含む構成にすると、真正な情報提示物質に関する情報をサーバにおいて一元管理することができ、これにより真正な情報提示物質に関する情報の秘匿性を高めて偽造のおそれをさらに軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[図1]図1は、この発明の一実施形態にかかる真贋判定システムの全体構成図である。
[図2]図2は、対象物蛍光スペクトル検出手段の構成図である。
[図3]図3は、ある対象物から検出された対象物蛍光スペクトルの波形の一例である。
[図4]図4は、予め記憶された真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルの例である。
[図5]図5は、予め記憶された真正な配合比率の例である。
[図6]図6は、対象物に関する情報の例である。
[図7]図7は、真贋判定処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
10 真贋判定システム
20 検出装置端末
21 対象物蛍光スペクトル検出手段
22 対象物情報出力手段
23 送信手段
24 受信手段
30 サーバ
31 個別蛍光スペクトル記憶手段
32 配合比率記憶手段
33 スペクトル再現手段
34 判定手段
35 対象物情報記憶手段
36 対象物情報検索手段
37 受信手段
38 送信手段
40 ネットワーク回線
90 対象物
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、この発明の実施形態について説明する。
【0022】
[対象物]
本発明にかかる真贋判定では、真贋判定が求められるものであれば種々の物を真贋判定の対象物とすることができる。
【0023】
真贋判定の対象物としては、たとえば、家電製品、服飾品、装身具、鞄、靴、アクセサリー、時計、指輪、衣服、文房具、食器、インテリア製品、絵画、掛け軸、食料加工品および医薬品など、市場において流通する各種の製品を挙げることができる。また、真贋判定の対象物は、各種製品等に用いられる材料自体であってもよい。具体的には、各種プラスチック材料や、塗料、インク、紙、繊維、あるいは金属などを挙げることができる。また、真贋判定の対象物は、天然物であってもよい。具体的には、食肉、野菜、山菜、魚介類、飲料水等を挙げることができる。また、真贋判定の対象物は、社会一般において公信力または一定の信頼関係の下に流通もしくは受け渡しされている証書、証券、証明書、紙幣、硬貨、パスポート、運転免許証、健康保険証、小切手、あるいは株券などであってもよい。また、真贋判定の対象物は、製品等の包装材料(内箱、外箱、説明書、包装紙、包装袋、段ボール、発泡スチロール、プラスチック容器等)や、製品等に付されるラベルやタグであってもよい。
【0024】
本発明の真贋判定の対象物には、情報提示物質が付与されている。
【0025】
[情報提示物質]
情報提示物質は、特定の波長領域の電磁波(たとえば所定波長領域の紫外線)の照射に対して、所定の蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質からなる。この蛍光は、外部からの電磁波の照射によって、情報提示物質のイオンが基底準位からエネルギーの高い準位に励起され、その後エネルギーの低い準位に遷移することによって放射される。情報提示物質は、その種類により特有の蛍光のスペクトル分布を放射する。
【0026】
情報提示物質は、各種プラスチック、塗料、インク、紙、繊維または金属など、汎用の各種材料に対して一般に含有されていない元素または化合物(酸化物、硫化物、有機錯体など)を含むものであることが好ましい。汎用の各種材料に対して一般に含有されていない元素としては、原子番号31から原子番号88までの元素、好ましくはランタノイド系元素、さらに好ましくはセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)を挙げることができる。
これらの元素は、スペクトル分析による測定が容易であり、さらに経済的かつ衛生的で、酸化物等としての入手も容易であるため、情報提示物質としては、これら元素の一種または二種以上が組み合せたものが好適である。なお、情報提示物質としては、同じ元素を含むものであっても組み合わせられる他の元素の種類や、組み合わせの比率が異なれば、別の情報提示物質として扱うことができる。
【0027】
また、情報提示物質は、赤外光から紫外光までの蛍光を利用する場合は、不完全3d殻を有する遷移元素および/または不完全4f殻を有する遷移元素が添加された単結晶や、不完全3d殻を有する遷移元素および/または不完全4f殻を有する遷移元素が添加されたガラスや、不完全3d殻を有する遷移元素および/または不完全4f殻を有する遷移元素を中心とした錯体などが、高い蛍光強度が得られるため、好適である。
【0028】
また、情報提示物質は、ユーロピウム(Eu3+)を含む酸化イットリウム(Y)のように、所定の母体物質に対して遷移元素を付与したものであってもよい。この母体物質は、酸化物、硫化物、窒化物、水酸化物、ハロゲン化物、混晶、さらにはアモルファス物質、ガラスなども含まれる。たとえば、遷移元素がキレート化合物のように化学結合の形で含まれているもの、結晶格子を構成する他の原子またはイオンを置換したもの、結晶格子の中に割り込んで含まれるもの、あるいはガラスの中の隙間に含まれるものなどが挙げられる。
【0029】
特に無機酸化物を母体材料として情報提示物質を作製すると、非常に安定になり、例えば1000℃の高温にされても破壊されず、対象物中に残存する。従って、対象物が焼却処分されたり、さらには焼却後に不法投棄されても、情報提示物質の蛍光を検出することができる。また、対象物が水性溶媒や有機溶媒の溶液あるいは濁色液などの液体からなる場合であっても、情報提示物質は化学変化を受けることがなく、情報提示物質の蛍光を検出することができる。従って、たとえば、工場から排出される廃液等をも対象物として情報提示物質を付与することができる。
【0030】
また、情報提示物質は、平均粒径が1nm〜20μm、好ましくは10nm〜10μmの微粒子がよく、その粒子は、二量体あるいは三量体などの多量体を形成してもよい。情報提示物質の粒径を小さくすれば、作製履歴の違いによる情報提示物質の蛍光の変化が生じやすくなるため、情報提示物質の種類を実質的に増加させて、真正な情報提示物質の秘匿性を高めることができるという利点がある。このような微粒子を作るには、化学反応法、ゾル・ゲル法、コロイド法、気体凝固法、気体反応法、ガス中蒸発法、スパッタリング法、ガラス結晶化法、沈殿法、スプレー法など様々な方法を利用することができる。
【0031】
また、情報提示物質は、その表面が重水素、有機物などの表面修飾剤で修飾されたものや、母体材料以外の物質で周囲を被覆されたものとしてもよい。このようにすると、粒径や構造を固定化させることができ、かつ発光効率を向上させることができるとともに、特定の溶媒に解けやすくなり、周囲の物質とよりなじむことができる。
【0032】
このような情報提示物質を真贋判定される対象物に付与する方法は、対象物の表面あるいは内部に情報提示物質を含ませることができる方法であれば、種々の方法を採用することができ、たとえば、噴射、吹き付け、塗布、吸着、注入、充填、貼付、浸透、混合、添加、あるいは化学結合(重合、架橋、イオン結合等)を挙げることができる。
【0033】
具体的には、対象物がプラスチック材料の場合、ドラムタンブラー等によりドライブレンドした後に直接成形する方法、エクストルーダーによりコンパウンド加工する方法、インターナルミキサーあるいは加熱ロールによるコンパウンドあるいは成形を実施する方法などが挙げられる。また、マスターバッチ化した上での使用を実施してもよい。なお、対象物中に情報提示物質の均一な分布と分散を確保するために、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩、あるいは脂肪酸エステルを滑剤として使用してもよい。
【0034】
また、対象物に付与する情報提示物質の量は、対象物の外観や物性への影響を与えない微量の範囲にすることが好ましい。具体的には、対象物の種類などにより様々に変動するが、対象物中に含有させる場合には、対象物に対して0.1ppm以上、1000ppm以下の範囲が好適である。0.1ppm以上とすれば、情報提示物質が呈する蛍光を確実に検出することができ、1000ppm以下とすれば、多くの対象物においてその外観や物性に影響を与えることがない。さらに0.5ppm以上とすれば、情報提示物質が呈する蛍光の検出について測定の信頼性を十分に確保することができる。また、200ppm以下とすれば、ほとんどの対象物においてその外観や物性に影響を与えることがなく、また、対象物に情報提示物質を付与する経済的負担も低く抑えることができる。
【0035】
本発明にかかる真贋判定では、上述した蛍光を放射する種々の情報提示物質のうち、予め有限種類の情報提示物質が真正な情報提示物質として選定されている。そして、本発明にかかる真贋判定の真正な対象物には、この有限種類の真正な情報提示物質のうち、1種類または複数種類が組み合わされて付与されている。
【0036】
また、本発明にかかる真贋判定では、有限種類の真正な情報提示物質を組み合わせる際の相対的な配合比率について、予め有限種類の真正な配合比率が選定されている。そして、本発明にかかる真贋判定の真正な対象物には、真正な情報提示物質が、真正な配合比率で組み合わせられて付与されている。
【0037】
なお、真正な情報提示物質の種類(組成、構造、作製履歴、粒径等を含む)、真正な情報提示物質がそれぞれ呈する蛍光スペクトル、および真正な情報提示物質の真正な配合比率は、本発明にかかる真贋判定方法の運営者によって秘匿される機密情報である。
【0038】
[真贋判定システム]
次に、このような情報提示物質が付与された対象物の真贋判定を行う真贋判定システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、真贋判定システムの全体構成図である。図1に示すように、この真贋判定システム10は、対象物90の近傍にある検出装置端末20と、この検出装置端末20とインターネット等のネットワーク回線40を介して情報の送受が可能なサーバ30とを備えている。
【0040】
<検出装置端末>
検出装置端末20は、対象物90から情報提示物質91によって放射される蛍光スペクトルを検出するものである。検出装置端末20は、ハードウェア的には、CPU、RAM、ROM、ハードディスク装置等の記憶手段、情報通信装置、外部入出力装置等を備えたコンピュータを備えており、対象物から蛍光スペクトルを検出する処理やサーバ30と種々の情報を送受する処理等の情報処理機能が、このコンピュータ上に構成されている。検出装置端末20は、機能的に、対象物蛍光スペクトル検出手段21と、対象物情報出力手段22と、送信手段23と、受信手段24とを備えている。
【0041】
対象物蛍光スペクトル検出手段21は、対象物90に対して所定の波長領域の電磁波を照射し、その照射に応じて情報提示物質91から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出するものである。
【0042】
図2は、対象物蛍光スペクトル検出手段21の構成図である。図2に示すように、対象物蛍光スペクトル検出手段21は、所定の波長領域の電磁波(励起光)を発する励起光源211と、この励起光を対象物90の情報提示物質91が含まれる部位に集光する集光光学系212と、この励起光を受けて情報提示物質91から放射される蛍光を受光する受光光学系213と、受光光学系213に導かれた蛍光を分光処理する分光器214とを備えている。
【0043】
図3は、この対象物蛍光スペクトル検出手段21により、ある対象物90から検出された対象物蛍光スペクトルの波形の一例である。対象物90には、1種類または複数種類の情報提示物質91が付与されており、複数種類の場合、対象物90から検出される対象物蛍光スペクトルは、各情報提示物質91が呈する蛍光スペクトル(個別蛍光スペクトル)を重ね合わせたものとなっている。
【0044】
なお、この対象物蛍光スペクトル検出手段21は、対象物90から対象物蛍光スペクトルを検出するのに先立って、対象物90を検出位置に置かずに測定環境における蛍光灯等による外乱光を予め検出することが好ましい。こうして検出された外乱光のスペクトルは、対象物蛍光スペクトルの正確な照合に利用することができる。
【0045】
対象物情報出力手段22は、サーバ30において行われた当該対象物90の真贋判定の結果と、当該対象物90が真正品であった場合には、その対象物90に関する情報とを表示出力するものである。対象物情報出力手段22は、たとえば液晶ディスプレイから構成されている。
【0046】
送信手段23は、サーバ30に対し、前記対象物蛍光スペクトル検出手段21によって検出した対象物蛍光スペクトルの情報を送信するものである。なお、送信する対象物蛍光スペクトルの情報は、対象物蛍光スペクトル検出手段21によって検出した情報のすべてとしても、予め設定された一部分としてもよい。
【0047】
この送信手段23は、予め測定環境における外乱光のスペクトルが検出されている場合には、対象物蛍光スペクトルの情報とともに、この外乱光のスペクトルに関する情報もサーバ30に送信することが好ましい。
【0048】
受信手段24は、サーバ30から、所定の応動動作指令を受信するものである。具体的には、サーバ30において行われた当該対象物90の真贋判定の結果と、当該対象物90が真正品であった場合には、その対象物90に関する情報とを前記対象物情報出力手段22に表示出力する指令等を受信する。
【0049】
<サーバ>
サーバ30は、検出装置端末20によって検出された対象物蛍光スペクトルに基づいて、当該対象物の真贋を判定するものである。サーバ30は、ハードウェア的には、CPU、RAM、ROM、ハードディスク装置等の記憶手段、情報通信装置、外部入出力装置等を備えたコンピュータから構成されており、対象物の真贋を判定する処理等の情報処理機能が、このコンピュータ上に構成されている。なお、サーバ30は、複数台のコンピュータに分散して構成してもよい。サーバ30は、機能的に、個別蛍光スペクトル記憶手段31と、配合比率記憶手段32と、スペクトル再現手段33と、判定手段34と、対象物情報記憶手段35と、対象物情報検索手段36と、受信手段37と、送信手段38とを備えている。
【0050】
個別蛍光スペクトル記憶手段31は、予め選定された有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対して、それぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして記憶しておくものである。
【0051】
図4は、この個別蛍光スペクトル記憶手段31に記憶されている真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルの例である。この例では、真正な情報提示物質としてNo.1〜No.6の6種類が予め選定されている。
【0052】
個別蛍光スペクトル記憶手段31は、各真正な情報提示物質について個別蛍光スペクトルを記憶していれば、真正な情報提示物質の名前や組成等、情報提示物質を作成する手がかりとなる情報を合わせて記憶していなくてもよい。
【0053】
配合比率記憶手段32は、有限種類の真正な情報提示物質を組み合わせる際の相対的な配合比率のうち、有限種類の真正な配合比率を予め記憶するものである。
【0054】
図5は、この配合比率記憶手段32に記憶されている真正な配合比率の例である。この例では、真正な配合比率としてNo.1〜No.5の5種類が予め選定されている。たとえば、No.1の配合比率は、2種類の真正な情報提示物質を1:3の比率で組み合わせることを示している。
【0055】
スペクトル再現手段33は、前記個別蛍光スペクトル記憶手段31に予め記憶された有限種類の真正な情報提示物質が放射する個別蛍光スペクトルを、前記配合比率記憶手段32に予め記憶された有限種類の真正な配合比率で組み合わせることにより、対象物90から検出した対象物蛍光スペクトルの再現を試みるものである。この再現は、所定の波長範囲の全てで、対象物蛍光スペクトルと一致するような、個別蛍光スペクトルの組み合わせを探索することによる。この所定の波長範囲は、個別蛍光スペクトルの特徴の一部または全部が現れる波長範囲を任意に適宜設定しておけばよい。また、スペクトルが一致するとは、対比されるスペクトル間の差異が、ノイズ等の影響を踏まえた所定の許容範囲内に収まっている場合等を含む。
【0056】
この再現は、組み合わせるべき情報提示物質の種類と、組み合わせる際の配合比率が予め有限種類しかなく、情報提示物質の組み合わせ検討範囲を限定できるため、計算負荷を小さくすることができる。
【0057】
この再現は、有限種類の組み合わせを順に確認しても、任意の効率的な探索アルゴリズムを採用してもよい。たとえば、検出された対象物蛍光スペクトルから、当該対象物90が真正品であれば確実に含まれるはずの情報提示物質を特定して探索範囲をさらに限定したり、含まれる可能性の高い情報提示物質の組み合わせを優先的に探索する手法等を採用することができる。
【0058】
スペクトル再現手段33においては、対象物の測定環境における外乱光のスペクトルが予め検出されている場合には、この外乱光のスペクトルも個別蛍光スペクトルと同様に扱って、対象物蛍光スペクトルを再現するようにすることが好ましい。このようにすると、測定環境における蛍光灯の種類等により外乱光の条件が変化するような場合であっても、この変化に対応して、より適切かつ正確に対象物蛍光スペクトルの再現を行うことができる。また、個別蛍光スペクトルを組み合わせるというスペクトル再現手段33が行う処理手順の中に外乱光の変化への対応を組み込むことができる。よって、別途の対応手段を要せず、簡素な構成を実現することができる。
【0059】
判定手段34は、前記スペクトル再現手段33によって、当該対象物90から検出した対象物蛍光スペクトルが再現できたか否かから、当該対象物90の真偽判定を行うものである。対象物90が真正品であれば、真正な情報提示物質が放射する個別蛍光スペクトルの真正な配合比率で組み合わせて再現できるはずであり、再現できなければ当該対象物90は偽物と判定することができる。
【0060】
仮に第三者によって真正品90の対象物蛍光スペクトルが検出されたとしても、蛍光を放射する物質(情報提示物質)には無限に近い種類があるため、検出された対象物蛍光スペクトルを構成している真正な情報提示物質を特定することは事実上不可能である。したがって、仮に第三者によって真正品に近似した蛍光スペクトルを呈する偽物が作製されても、それは真正な情報提示物質を組み合わせて作製されたものであるとは事実上想定できない。そして、情報提示物質がそれぞれ呈する蛍光スペクトルは所定の波長範囲を見れば異なるものであるから、偽の情報提示物質を組み合わせて得られる偽物の蛍光スペクトルは、真正な情報提示物質を組み合わせて再現した蛍光スペクトルと、所定の波長範囲のすべてで一致することはない。したがって、偽造された対象物90を識別することができ、真贋判断の高い信頼性を確保することができる。
【0061】
対象物情報記憶手段35は、対象物に関する情報を記憶するものである。
【0062】
図6は、この対象物情報記憶手段35に記憶されている対象物に関する情報の例である。この対象物に関する情報は、有限種類の真正な情報提示物質のうち、1または複数の種類と、それらを組み合わせる際の相対的な配合比率に対応づけて記憶されている。この例では、図4に示すNo.1の情報提示物質と、同じく図4に示すNo.3の情報提示物質とが、図5に示すNo.3の配合比率、すなわち1:12の割合の組み合わせに対して、A社の商品名B、ロット番号xxという対象物に関する情報が対応づけられている。
【0063】
対象物情報検索手段36は、前記判定手段34によって対象物90が真正品であると判定された場合に、当該対象物90に関する情報を特定するものである。前記判定手段34によって対象物90が真正品であると判定された場合、前記スペクトル再現手段33によって対象物蛍光スペクトルを再現するのに用いた真正な情報提示物質の種類および配合比率は判明している。対象物情報検索手段36は、この情報提示物質の種類および配合比率に基づいて前記対象物情報記憶手段35を検索し、当該対象物90に関する情報を抽出する。
【0064】
受信手段37は、検出装置端末20から、対象物蛍光スペクトル検出手段21によって検出された対象物蛍光スペクトルの情報を受信するものである。
【0065】
送信手段38は、検出装置端末20に対し、対象物90に対する真贋判定に応じた所定の応動動作指令を送信するものである。具体的には、サーバ30において行われた当該対象物90の真贋判定の結果と、当該対象物90が真正品であった場合には、その対象物90に関する情報とを表示出力する指令等を送信する。
【0066】
このように、この真贋判定システム10では、検出装置端末20において、対象物90の真贋判定結果だけでなく、対象物90に関する情報も出力するため、より適正に対象物90を取り扱うことができる。
【0067】
また、対象物90の真贋判定に用いられる真正な情報提示物質の種類や蛍光スペクトル、さらにそれらの真正な配合比率を対象物90のある現場から離れたサーバ30で一元的に管理するため、これにより真正な情報提示物質に関する情報の秘匿性を高め、偽造のおそれを特に軽減することができる。
【0068】
また、対象物90の真贋判定処理をサーバ30側で行うため、検出装置端末20に求められる性能負担を軽減し、検出装置端末21の小型化や可搬化を図ることができる。
【0069】
<真贋判定処理の手順>
次に、この真贋判定システム10における真贋判定処理の手順について図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0070】
この真贋判定処理では、まず、検出装置装置端末20において、所定の位置に置かれた対象物90に対して、対象物蛍光スペクトル検出手段21によって対象物90に付与された情報提示物質91が放射する対象物蛍光スペクトルが検出される(ステップS10)。
【0071】
こうして読み取られた対象物蛍光スペクトルの情報は、検出装置端末20からサーバ30に送信される(ステップS12)。
【0072】
対象物蛍光スペクトルの情報を受信したサーバ30では(ステップS14)、スペクトル再現手段33により、真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルを真正な配合比率で組み合わせることで、対象物90から検出された対象物蛍光スペクトルの再現を試みる(ステップS16)。
【0073】
再現できなければ(ステップS18でNO)、当該対象物90は偽物であると判定し(ステップS20)、その真贋判定結果(偽物)を検出装置端末20に送信する(ステップS22)。これを受信した検出装置端末20では(ステップS24)、対象物情報出力手段22が真贋判定結果(偽物)を表示出力し(ステップS26)、一連の真贋判定処理を終了する。
【0074】
一方、真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルを真正な配合比率で組み合わせることで、対象物90から検出された対象物蛍光スペクトルが再現できれば(ステップS18でYES)、当該対象物90は真正品であると判定する(ステップS28)。そして、この再現に用いられた情報提示物質の種類と配合比率から当該真正な対象物90に関する情報を対象物情報記憶手段35から抽出し(ステップS30)、真贋判定結果(真正品)と当該対象物90に関する情報を検出装置端末20に送信する(ステップS32)。これを受信した検出装置端末20では(ステップS34)、対象物情報出力手段22が真贋判定結果(真正品)と当該対象物90に関する情報を表示出力し(ステップS36)、一連の真贋判定処理を終了する。
【0075】
[その他の実施形態]
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように構成してもよい。
【0076】
(1)上記実施形態では、対象物の真贋判定をネットワーク回線40を介して接続された検出装置端末20とサーバ30とを含む真贋判定システム10によって行うようにしたが、これらの機能を備えた単体の真贋判定装置を構成してもよい。
【0077】
(2)検出装置端末20とサーバ30との間での種々の情報の送受は、両者において解読可能な暗号化を施した状態で行うようにしてもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、対象物として工業製品を想定した対象物に関する情報(図6)を例示したが、これに限定されるものではない。たとえば、対象物90がクレジットカードやキャッシュカードの場合は、それに関する情報としてユーザに関する情報や識別番号などの情報が挙げられる。また、対象物90が、小切手、有価証券あるいは紙幣の場合は、それに関する情報として識別番号や識別記号などのような情報が挙げられる。また、対象物90が食品に付されたラベル等の場合は、それに関する情報として食品の生産地や生産時期などの情報が挙げられる。また、対象物90が病院用IDカードの場合は、カルテ情報や薬情報などの情報が挙げられる。また、対象物90が住民管理用IDカード等の場合は、住民票や印鑑証明に記載される情報等が挙げられる。
【0079】
(4)上記実施形態では、対象物90の真贋判定を単に表示出力するように構成したが、対象物90の種類や真贋判定システム10の利用目的等に応じて、真贋判定を行った結果を種々の応動動作に用いるようにしてもよい。たとえば、対象物に関する情報の表示出力に代えて、あるいは表示出力とともに、音声出力したり、プリント出力するようにしてもよい。また、対象物90が入室管理用IDカードの場合は、その真贋に応じてドアを開閉したり、対象物に関する情報として予め設定された特定番号のドアを開けたりするようにしてもよい。また、対象物90が工業製品材料の場合は、その種類に応じて分別するようにしてもよい。また、対象物90が電子マネーやプリペイドカードの場合は、その真贋と種類に応じて電子式キャッシュレジスタ等を動作させるようにしてもよい。
【0080】
(5)対象物から検出する対象物蛍光スペクトルや各情報提示物質の個別蛍光スペクトルを、電磁波の照射からの複数の時間における蛍光スペクトルの組み合わせとして扱い、蛍光スペクトルを時間減衰特性等で区別するようにしてもよい。
【0081】
(6)上記実施形態では、スペクトル再現手段33によって対象物蛍光スペクトルが再現できたか否か、すなわち真正な情報提示物質の個別蛍光スペクトルを真正な配合比率で組み合わせることで対象物蛍光スペクトルを再現できるか否かによって、判定手段34が対象物の真偽を判別するようにしたが、対象物蛍光スペクトルが個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できたか否かの判定に加え、さらに、この再現できた際の情報提示物質の種類及び配合比率に対応づけて記憶された対象物に関する情報が存在するか否かによって、対象物の真偽を判別するようにしてもよい。
【0082】
具体的には、対象物情報検索手段36が、対象物蛍光スペクトルを再現するのに用いた情報提示物質の種類および配合比率に基づいて対象物情報記憶手段35を検索するが、この検索において情報提示物質の種類および配合比率に対応づけられた対象物に関する情報が存在しなければこの対象物90を偽物と判定し、対応づけられた情報が存在する場合に限ってこの対象物を真正と判別するようにすればよい。
【0083】
このようにすると、真正な対象物については必ず何らかの対象物に関する情報を予め登録しておくという運用を行うことにより、対象物蛍光スペクトルが真正な情報提示物質の真正な配合比率によるものであるかという判断基準に加えて、その組み合わせが予め登録された特定の組み合わせであるかという判断基準を二重に備えることとなり、さらに確実に対象物の真偽判断を行うことが可能となる。
【0084】
本願は、2003年12月1日付で出願された日本国特許出願の特願2003−401291号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【0085】
ここで用いられた用語および説明は、この発明に係る実施形態を説明するために用いられたものであって、この発明はこれに限定されるものではない。この発明は請求の範囲であれば、その精神を逸脱するものではない限り、いかなる設計的変更も許容するものである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように本発明によれば、ブランド品や食品、工業製品等、種々の対象物について、その真贋を判定する真贋判定方法および同装置を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報提示物質が付与された対象物の真贋を判定する真贋判定方法であって、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶しておき、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射して当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出し、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試み、
前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物の真偽を判定することを特徴とする真贋判定方法。
【請求項2】
前記対象物蛍光スペクトルの再現は、所定の波長領域のすべてにおいて、前記対象物蛍光スペクトルと一致する、前記個別蛍光スペクトルの組み合わせを探索することによることを特徴とする請求項1に記載の真贋判定方法。
【請求項3】
前記有限種類の真正な情報提示物質を組み合わせる際の相対的な配合比率のうち、有限種類の真正な配合比率を予め記憶しておき、
前記対象物蛍光スペクトルの再現は、前記個別蛍光スペクトルを前記真正な配合比率で組み合わせることにより行うことを特徴とする請求項1または2に記載の真贋判定方法。
【請求項4】
前記有限種類の真正な情報提示物質のうち、1または複数の種類、およびそれらを組み合わせる際の相対的な配合比率に対応づけて各対象物に関する情報を記憶しておき、
前記対象物蛍光スペクトルが、前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できた場合、この再現できた際の情報提示物質の種類および配合比率に対応づけて記憶された対象物に関する情報を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真贋判定方法。
【請求項5】
情報提示物質が付与された対象物の真贋を判定する真贋判定装置であって、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶する個別蛍光スペクトル記憶手段と、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試みるスペクトル再現手段と、
前記スペクトル再現手段によって、前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物を真偽を判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする真贋判定装置。
【請求項6】
情報提示物質が付与された対象物の近傍にある検出装置端末と、この検出装置端末とネットワーク回線を介して情報の送受が可能なサーバとを含む真贋判定システムであって、
前記検出装置端末は、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
前記対象物蛍光スペクトルに関する情報を前記サーバに送信する送信手段と、
前記サーバから所定の応動動作指令を受信する受信手段と、
を備え、
前記サーバは、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶する個別蛍光スペクトル記憶手段と、
前記検出装置端末から前記対象物蛍光スペクトルに関する情報を受信する受信手段と、
前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって前記対象物蛍光スペクトルの再現を試みるスペクトル再現手段と、
前記スペクトル再現手段によって、前記対象物蛍光スペクトルが前記個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから、当該対象物を真偽を判定する判定手段と、
この判定結果に応じた所定の応動動作指令を前記検出装置端末に送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とする真贋判定システム。
【請求項7】
情報提示物質が付与された対象物の近傍にあり、ネットワーク回線を介してサーバと情報の送受が可能な検出装置端末であって、
前記対象物に特定の波長領域の電磁波を照射し、当該対象物から放射される蛍光スペクトルを対象物蛍光スペクトルとして検出する対象物蛍光スペクトル検出手段と、
特定の波長領域の電磁波の照射に対して蛍光を放射する一種もしくは二種以上の元素、二種以上の元素の化合物、またはそれらの元素もしくは化合物を含む物質である情報提示物質のうち、有限種類の真正な情報提示物質について、特定の波長領域の電磁波の照射に対してそれぞれが放射する蛍光スペクトルを個別蛍光スペクトルとして予め記憶しているサーバに対し、前記対象物蛍光スペクトルに関する情報をネットワーク回線を介して送信する送信手段と、
前記対象物蛍光スペクトルが個別蛍光スペクトルの組み合わせによって再現できるか否かから当該対象物を真偽が判定され、その判定結果に応じて決定される所定の応動動作指令を前記サーバから受信する受信手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置端末。

【国際公開番号】WO2005/055154
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515932(P2005−515932)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017794
【国際出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(503284198)プラゲノム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】