眠気予測装置
【課題】移動経路を構成する道路の形態等も参照することにより、ドライバの眠気の状態を良好に予測することのできる眠気予測装置の提供。
【解決手段】データベースには、図7に例示するように、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)が対応付けられたデータセットが各組み合わせ毎に記憶されている。各種センサ及びナビゲーション装置から前記天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無に係る現在情報を取得し、その現在情報に対応するデータセットを抽出し、そのデータセットを用いて眠気誘発エリアを予測してナビゲーション装置の画面に表示する。
【解決手段】データベースには、図7に例示するように、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)が対応付けられたデータセットが各組み合わせ毎に記憶されている。各種センサ及びナビゲーション装置から前記天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無に係る現在情報を取得し、その現在情報に対応するデータセットを抽出し、そのデータセットを用いて眠気誘発エリアを予測してナビゲーション装置の画面に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転中のドライバの眠気を予測する眠気予測装置に関し、詳しくは、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を移動中に検出されたドライバの眠気レベルの現在値に基づいてそれ以降のドライバの眠気を予測する眠気予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの心拍数や顔の表情等に基づいて、ドライバの眠気レベル(眠気が強くなるほど大きな値をとる)を検出する技術が種々提案されている。そして、そのような技術を用いて検出された眠気レベルの応用法として、目的地までの車両の移動経路を案内するいわゆるカーナビゲーション装置において、ドライバの眠気レベルが高めになると予測される車両の到達位置を眠気注意エリアとして提示することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−140358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術では、随時検出されるドライバの眠気レベルが時系列に沿って同様の割合で増加することを前提としている。しかしながら、実際の眠気レベルは運転時間のみに依存して増加するものではなく、高速道路走行中と一般道走行中とで増加率が異なったり、渋滞の有無によって増加率が異なったりする。従って、特許文献1に記載の技術では、円滑に走行していた車両が渋滞箇所に入ったことによってドライバの眠気レベルが急激に増加したり、高速道路から一般道に下りたことによってドライバが覚醒して眠気レベルが低下したりすることを予測することができない。そこで、本発明は、移動経路を構成する道路の形態等も参照することにより、ドライバの眠気の状態を良好に予測することのできる眠気予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達するためになされた本発明の眠気予測装置は、眠気が強くなるほど大きな値をとる眠気レベルのその時点における値を眠気レベル現在値として、道路の形態とドライバの前記眠気レベル現在値との組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶したデータベースと、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する道路形態取得手段と、ドライバの前記眠気レベル現在値を検出する眠気レベル検出手段と、前記車両の位置を検出する位置検出手段と、前記眠気レベル検出手段が前記眠気レベル現在値を検出したときに前記位置検出手段が検出した位置を眠気検出位置として、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るものと、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値とに対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する眠気予測手段と、を備えている。
【0006】
このように構成された本発明の眠気予測装置では、データベースは、道路の形態とドライバの眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶している。そして、道路形態取得手段は、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する。また、眠気レベル検出手段は、ドライバの眠気レベル現在値を検出し、位置検出手段は、車両の位置を検出する。
【0007】
そこで、眠気予測手段は、道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち、眠気検出位置(眠気レベル検出手段が眠気レベル現在値を検出したときの車両の位置)以降の道路に係るものと、前記検出された眠気レベル現在値とに対応したパラメータを、データベースから取得する。そして、そのパラメータを取得することにより、眠気予測手段は、眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する。ドライバが催す眠気は、車両の移動経路を構成する道路の形態(例えば、当該道路が高速道路であるか一般道であるかなど)に応じて大きく変化する。そこで、本発明では、眠気予測手段が眠気検出位置以降の移動経路を構成する各道路の形態を参照してそれに対応したパラメータから当該移動経路を移動中の眠気を予測している。このため、本発明では、ドライバの眠気レベルが眠気レベル現在値からどのように変化するかを良好に予測することができる。
【0008】
なお、前記パラメータとしては種々の形態が考えられるが、前記パラメータは、当該形態の道路をどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが当該眠気レベル現在値から上昇するかを表す数値であってもよく、その場合、前記眠気予測手段は、前記移動経路に沿ってどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが上昇するかを予測してもよい。
【0009】
また、本発明において更に、気温、または天候、または時刻、または前記眠気検出位置以降の前記移動経路上の道路に係る渋滞情報の、少なくともいずれか1つを含む外的環境を取得する外的環境取得手段と、ドライバの体調の現在値をドライバ情報として検出するドライバ情報検出手段と、を備え、前記データベースは、前記外的環境と前記ドライバ情報と前記道路の形態と前記眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、前記パラメータを対応付けて記憶し、前記眠気予測手段は、前記外的環境取得手段に取得された外的環境、前記ドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るもの、及び、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値に対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測してもよい。この場合、眠気予測手段は、外的環境取得手段に取得された外的環境及びドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報(すなわち、ドライバの体調の現在値)を、前述の道路の形態と合わせて参照し、それらの組み合わせに対応したパラメータをデータベースから取得する。このため、眠気予測手段は、当該取得したパラメータに基づいて、一層正確にドライバの眠気を予測することができる。
【0010】
また、前記眠気予測手段は、前記眠気レベルが上昇すると予測される前記移動経路上の位置を予測してもよい。そして、その場合、前記移動経路を、前記眠気予測手段が予測した前記位置と共に地図上に表示する表示手段を、更に備えてもよい。その場合、眠気レベルが上昇すると予測される移動経路上の位置が、表示手段によって当該移動経路と共に地図上に視覚的に表示されるので、ドライバに一層良好に注意喚起を促すことができ、ドライバは覚醒状態を維持するための対策が立てやすくなる。
【0011】
また、前述のように眠気レベルが上昇すると予測される位置を眠気予測手段が予測する場合、前記眠気予測手段が前記位置を予測してから、前記位置検出手段が検出する位置と前記眠気予測手段が予測した位置とが一致するまでの間に、前記眠気レベル検出手段が検出する眠気レベル現在値が上昇しなかった場合、その旨をドライバに告知する眠気克服告知手段を、更に備えてもよい。この場合、眠気予測手段が前記位置でドライバの眠気レベルが上昇すると予測したにも拘わらず、その位置まで車両が走行して位置検出手段が検出する位置がその位置と一致しても眠気レベルの上昇がなかった場合に、眠気克服告知手段による告知がなされる。従って、この場合、ドライバは眠気を克服した達成感を得ることができ、眠気予防の動機付けを促すことが可能となる。
【0012】
また、前記道路形態取得手段は、前記移動経路を構成する各道路を予め設定された複数のセグメントに分割してセグメント毎に前記形態を取得し、前記眠気予測手段は、前記移動経路を構成する道路の各セグメントの形態に対応した前記パラメータを前記データベースからそれぞれ取得することにより、前記眠気を予測してもよい。この場合、移動経路を構成する各道路がセグメントに分割され、各セグメント毎に前記形態の取得及びパラメータの取得がなされるので、眠気予測手段は一層正確にドライバの眠気の状態を予測することができる。
【0013】
また、前記道路の形態は、当該道路が高速道路若しくは自動車専用道路であるか否か、当該道路の曲率半径、当該道路におけるトンネルの有無、当該道路におけるトンネルの長さ、当該道路におけるトンネルの数、当該道路における右左折箇所の数、当該道路における信号機の数、当該道路が都市部にあるか地方部にあるか、または、当該道路が平地部にあるか山地部にあるかの、いずれか1つ、または、いずれか複数の組み合わせによって定義されるものであってもよい。
【0014】
また、道路の位置及び形態に関する道路データを記憶し、目的地が指示されたときに前記道路データに基づいて前記目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を、更に備え、前記道路形態取得手段は、前記経路設定手段によって車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を前記道路データに基づいて取得してもよい。本発明の眠気予測装置は、装置外で設定された車両の移動経路に対して前記処理を実行してもよいが、目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を備えてその経路設定手段に設定された移動経路に対して前記処理を実行する場合、移動経路の設定から眠気の予測までの一連の処理が一括して行える。
【0015】
また、本発明は、更に、前記車両の運転中に、その車両が走行している道路の形態を検出する道路形態検出手段と、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが前回上昇した時点または前記車両が走行を開始した時点を起点とし、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが更に上昇した時点を上昇点とし、前記起点から前記上昇点までの間に前記位置検出手段が検出した位置の変化に対応する前記車両の走行距離に基づいて、前記パラメータを算出し、当該パラメータを前記起点から前記上昇点までの間に前記道路形態検出手段が検出した形態及び前記起点から前記上昇点までの間に前記眠気レベル検出手段が検出していた眠気レベルと対応付けて前記データベースに記憶するデータベース更新手段と、を備えてもよい。この場合、実際の運転中に眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルの上昇に応じたパラメータが算出され、そのパラメータによって、データベースがデータベース更新手段によって更新される。このように算出されたパラメータは、ドライバ特有の事情を良好に反映しており、眠気予測手段は、このように更新されたパラメータに基づいて、一層正確にドライバの眠気を予測することができる。
【0016】
そして、その場合、前記データベースは、前記各形態及び前記眠気レベル現在値に対応する前記パラメータとして予め初期値を記憶しており、前記データベース更新手段によって当該パラメータの値が順次更新されてもよい。その場合、例えば高速道路を車両で走行したことがないドライバなどのように、当該ドライバが車両で走行したことのない形態の道路が前記移動経路に含まれている場合でも、予め記憶された前記パラメータの初期値を用いることで、眠気予測手段は良好にドライバの眠気を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された眠気予測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】眠気予測装置が実行するナビゲート処理を表すフローチャートである。
【図3】ナビゲート処理の全道路パターン記憶処理を表すフローチャートである。
【図4】ナビゲート処理の現在情報取得処理を表すフローチャートである。
【図5】現在情報取得処理の外的環境情報取得処理を表すフローチャートである。
【図6】ナビゲート処理の眠気誘発エリア予測処理を表すフローチャートである。
【図7】眠気誘発エリア予測処理で使用されるデータベースを表す説明図である。
【図8】ナビゲート処理の眠気誘発エリア提示処理を表すフローチャートである。
【図9】眠気誘発エリア提示処理の眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。
【図10】眠気誘発エリアの他の表示例を表す説明図である。
【図11】眠気予測装置が実行するデータベース更新処理を表すフローチャートである。
【図12】眠気予測装置が実行する眠気克服ポイント表示処理を表すフローチャートである。
【図13】その眠気克服ポイント表示処理の表示例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[眠気予測装置の全体構成]
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された眠気予測装置10の構成をその周辺機器と共に表すブロック図である。なお、周辺機器も含めた全体がシステムとして一体化された眠気予測装置を構成してもよい。眠気予測装置10は、CPU,ROM,RAM等を備えた車両に搭載される処理装置として構成され、図1に示すように、通行予定経路上の眠気誘発エリアを予測する眠気誘発エリア予測部11と、その予測に使われるデータベース等の各種データを記憶したハードディスク等からなる記憶部12とを備えている。
【0019】
また、眠気予測装置10には、当該車両に搭載されたナビゲーション装置(ナビ)1が接続され、眠気誘発エリア予測部11に情報を入力可能に構成されている。なお、このナビゲーション装置1は、道路の位置(経緯度)や形状をセグメント(例えば、等間隔距離のセグメントやいわゆるVICSリンク(登録商標)等)単位で記憶しており、目的地が指示されたときにその目的地までの車両の移動経路を検索し、自身が備えたGPS受信機にて当該車両の位置を検出しながら案内を行う。
【0020】
また、眠気予測装置10には、ステアリングやシートに設置されたセンサ,サーモカメラ等、ドライバの心拍数,体温等の各種生体情報を検出する各種生体センサ2が、体調判定部3を介して接続され、ステアリングコラム(図示省略)に設置されて車両走行中のドライバの顔画像を撮影するカメラ4も、眠気レベル判定部5を介して接続されている。体調判定部3は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、各種生体センサ2が検出した各種生体情報に基づき、ドライバの体調を良好,普通,不調の3段階で判定する。また、眠気レベル判定部5は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、カメラ4を介して撮影されたドライバの顔画像に基づき、ドライバの眠気レベルを0〜5の6段階(数値が大きいほど眠気が強い)で判定する。
【0021】
更に、眠気予測装置10には、外的環境を取得する外的環境センサ6が、外的環境判定部7を介して接続されている。外的環境センサ6は、車載されたレインセンサ,温湿度センサ,時計等、複数のセンサによって構成される。外的環境判定部7は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、外的環境センサ6を介して降雨状態や外気温湿度、時刻等を計測し、その結果から外的環境を判定する。
【0022】
[ナビゲート処理の詳細]
次に、眠気誘発エリア予測部11がナビゲーション装置1と協働して実行するナビゲート処理について説明する。図2は、そのナビゲート処理のメインルーチンを表すフローチャートである。なお、この処理は、ドライバが車両に乗り込んで、ナビゲーション装置1に対して眠気誘発エリア予測モードの経路案内を指示したときに、眠気誘発エリア予測部11を構成するCPUによってROMに記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0023】
図2に示すように、この処理では、S1(Sはステップを表す:以下同様)にてナビゲーション装置1に信号を送ることによってその画面に対してドライバに目的地を入力させるメッセージを表示する処理がなされる。そのメッセージに対してドライバが目的地を音声または表示されたボタンで入力すると、ナビゲーション装置1に備えられたCPU,ROM,RAMを備えた処理部によって周知の経路検索が実行され、ドライバによって通行予定経路(移動経路)が決定されると、その通行予定経路のデータが眠気誘発エリア予測部11へ返送される。眠気誘発エリア予測部11は、S1に続くS2でその通行予定経路のデータを受信することにより、次の全道路パターン記憶処理(S3)を実行する。
【0024】
図3は、S3の全道路パターン記憶処理を詳細に表すフローチャートである。この処理は、S2にて決定結果が受信された通行予定経路について、等間隔距離(セグメント)毎に道路パターンを判定し、通行予定経路上の全セグメントの道路パターンと、道路パターンの切り替わり部に立てたフラグを記憶部12に記憶する処理である。
【0025】
図3に示すように、この処理では、先ずS31にて、S2で決定された通行予定経路を、等間隔距離(セグメント)毎に道路区分(例えば、高速自動車国道または自動車専用道路であるかその他の道路であるかと、地方部であるか都市部であるかとの組合わせ)がナビ情報(ナビゲーション装置1のデータベースに記憶された情報)から取得される。次にS32では、S31で道路区分を取得したセグメント毎に、地形(例えば、平地部であるか山地部であるか)がナビ情報から取得される。次にS33では、S31で道路区分を取得したセグメント毎に、道路形状(例えば、直線であるかカーブであるトンネルであるか)がナビ情報から取得される。なお、道路形状がカーブである場合は、その曲率半径も取得される。続くS34では、S31〜S33において取得された、道路区分・地形・道路形状情報のセットが、各セグメントの道路パターンとして、記憶部12に記憶される。
【0026】
S35では、S34で記憶された道路パターンの切り替わり部にフラグが立てられ、前述の通行予定経路のデータ及び道路パターンと共に、全フラグが記憶部12に記憶されて、処理は図2のS4へ移行する。
【0027】
S4では、現在情報、すなわち、現在のドライバの体調と眠気レベル、現在の道路パターンの取得、及び、現在の外的環境情報の取得処理が実行される。図4は、この現在情報取得処理を詳細に表すフローチャートである。図4に示すように、この処理では、先ず、S41にて、前述の各種生体情報センサ2に動作が指示されることにより、ドライバの体温や心拍などの生体情報が取得される。続くS42では、生体情報センサ2が取得した生体情報をもとに体調判定部3が判定したドライバの体調(良好,普通,または不調)が読み込まれる。
【0028】
S43では、カメラ4に動作が指示されることにより、ドライバの顔画像がカメラ4によって取得される。続くS44では、カメラ4が撮影(取得)したドライバの顔画像をもとに眠気レベル判定部5が6段階で判定したドライバの現在の眠気レベルが読み込まれる。なお、眠気レベルの判定には、ドライバの表情の変化や、瞼の開度、瞬き回数などを用いる周知の方法が適用できる。また、S41で取得されたドライバの生体情報と、S43で取得されたドライバの顔画像との両方の情報を用いて、眠気レベルを判定してもよい。眠気レベルは、覚醒状態から居眠り状態までを等間隔に複数レベル(例えば6レベル)に分類するものとする。なお、眠気レベルは2レベルに分類されてもよいが、少なくとも3レベル以上に分類されるのが望ましい。
【0029】
S45では、ナビゲーション装置1が備えたGPS受信機を介して車両の現在地が取得され、S2にて決定結果が受信された通行予定経路における現在走行中のセグメントの道路パターンが、S3で記憶部12に記憶された道路パターンの中から呼び出される。続くS46では、外的環境センサ6を介して、降雨状態や外気温湿度、時刻等の外的環境情報を取得する外的環境情報取得処理が実行される。図5はこの外的環境情報取得処理を詳細に表すフローチャートである。
【0030】
図5に示すように、この処理では、S461にて、外的環境センサ6に動作が指示されることにより、現在の降雨状態や外気温湿度が取得される。続くS462では、S461で取得された降雨状態や外気温湿度の情報から、外的環境判定部7を介して現在の天候(例えば、晴れ,曇り,雨,雪等)が判定される。S463では、外的環境センサ6の1つである時計から現在の時刻が取得される。なお、S463では、ナビゲーション装置1から時刻が取得されてもよい。
【0031】
続くS464では、S463で取得された時刻から、現在の時間帯(例えば、8時〜12時/12時〜16時など)が判定される。S465では、現在の通行予定経路上の渋滞情報がナビゲーション装置1の道路交通情報処理部(例えば、VICS(登録商標)に関する処理部)から取得される。S466では、S462にて判定された現在の天候、S464にて判定された現在の時間帯の情報、及びS465にて取得された渋滞情報のセットが、現在の外的環境情報として記憶部12に記憶され、処理は図4のS47へ移行する。
【0032】
S47では、S42で判定されたドライバの体調、S44で判定されたドライバの現在の眠気レベル、S45で呼び出された現在の道路パターン、及びS46で記憶された現在の外的環境情報が、「現在情報」のデータセットとして、記憶部12に記憶され、処理は図2のS5へ移行する。なお、現在の外的環境情報としては、車両が継続して走行している継続走行距離(または時間)を追加して用いてもよい。
【0033】
S5では、次のように眠気誘発エリア予測処理が実行され、更にその予測結果に基づいて、S6にて眠気誘発エリア提示処理が実行される。図6は、S5の眠気誘発エリア予測処理を詳細に表すフローチャートである。
【0034】
図6に示すように、この処理では、S51にて、記憶部12に、既に前述のS47にて「現在情報」が記憶されているか否かが判定される。記憶部12に既に「現在情報」が記憶されている場合、すなわち、車両が走行中である場合には(S51:Y)、処理はS52へ移行し、新たに記憶された「現在情報」と、既存の「現在情報」とが比較される。この際、眠気レベル、道路パターンの各項目(例えば、道路区分,地形、道路形状)、外的環境情報の各項目(例えば、天候,時間帯,渋滞状況)のそれぞれについて、比較するものとする。
【0035】
続くS53では、S52で比較された各項目のうち、少なくとも1つ以上の項目について相違があるか否かが判定される。少なくとも1つ以上の項目に相違がある場合(S53:Y)、処理はS54へ移行し、ドライバの眠気レベル、走行中の道路パターン、または外的環境情報について、直前の情報から変化があるとして、フラグfが1にセットされる。一方、いずれの項目にも相違がない場合には(S53:N)、処理はS55へ移行し、ドライバの眠気レベル、走行中の道路パターン、及び外的環境情報について、直前の情報から変化がないものとして、フラグfが0にリセットされた後、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。また、前述のS51にて既存の「現在情報」が存在しないと判定された場合(S51:N)、すなわち、車両が発車直後である場合には、処理はS51からS54へ直接移行する。
【0036】
S54にてフラグfが1にセットされた場合、続くS56では、S3において記憶部12に記憶された道路パターンの切り替わりフラグのうち、通行予定経路における車両の進行方向に存在し、かつ車両の現在地から最も近いフラグと現在地との間に、渋滞があるか否かが判定される。なお、渋滞の有無は、前述のS465と同様に、ナビゲーション装置1の道路交通情報処理部から最新の情報を読み込んで判定される。続くS57では、予め記憶部12に記憶されているデータベースの中から、「現在情報」及びS56で判定された渋滞の有無情報と一致するデータセットが抽出される。
【0037】
すなわち、予め記憶部12に記憶されているデータベースには、例えば図7に例示するように、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)が対応付けられたデータセットが各組み合わせ毎に記憶されている。S57では、このデータベースの各種組み合わせのうち、最も新しい「現在情報」及びS56で判定された渋滞の有無情報と、遷移前の眠気レベルも含めて一致するものが抽出されるのである。
【0038】
なお、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の各項目としては、次の表1に示すような項目が用意されている。また、継続距離及び眠気レベル遷移は、後述のデータベース更新処理によって車両の走行中にデータが更新されるが、各組み合わせに対して初期値として適宜の値が設定されている。更に、表1の道路パターンにおいて、地方部/都市部は地形よりも景色を重視した分類であり、平地部/山地部は起伏等の地形を重視した分類である。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、S57では、「現在情報」とS56の判定結果とで渋滞の項目が異なる場合、例えば、「現在情報」が「渋滞:無」となっていても、S56で「渋滞:有」と判定されていれば、「渋滞:有」と「渋滞:無」の両方のデータセットが抽出される。続くS58では、S57にて抽出されたデータセットについて、現在の眠気レベルから眠気レベルが所定のレベル(例えば1段階)だけ上昇する(眠くなる)までのデータセットのみが抽出される。S59では、S58において抽出されたデータセットについて、継続距離の平均値(平均距離)が算出される。渋滞の項目が異なるデータセットが複数ある場合には、渋滞の項目(有/無)別に平均距離が算出される。また、S58にて抽出されたデータセット数が1セットである場合も同様に平均値算出処理(S59)が実行される。
【0041】
続くS510では、S59にて算出された平均距離と、進行方向に存在し、かつ現在地から最も近い道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離が比較される。S59にて算出された平均距離の方が、進行方向にあり現在地から最も近い道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離よりも長い場合には、この眠気誘発エリア予測処理(S5)は終了し、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。
【0042】
一方、S59にて算出された平均距離の方が、現在地から最も近く、進行方向にある道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離よりも短い場合には(S510:Y)、処理はS511へ移行する。S511では、S59にて算出された平均距離が、連続走行距離閾値として記憶部12に記憶され、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。
【0043】
なお、S59にて平均距離を算出するに当たり、「現在情報」では「渋滞:無」であってもS56で「渋滞:有」と判定されている場合には、データベースに記憶された継続距離の平均値の比較によって算出した渋滞係数(k)を乗じて、平均距離を算出してもよい。
【0044】
図8は、S6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)を詳細に表すフローチャートである。なお、この処理は、以下に説明するように、通行予定経路上の眠気誘発エリアを、ナビゲーション装置1の画面上に提示する処理である。図8に示すように、この処理では、先ず、S61にて、記憶部12に記憶されているフラグfが1にセットされているか否かが判定される。f=0の場合は(S61:N)、この眠気誘発エリア提示処理はそのまま終了して処理はS7(図2参照)へ移行し、f=1の場合は(S61:Y)、処理は続くS62へ移行する。
【0045】
S62では、ナビゲーション装置1に表示されている通行予定経路上に、既に眠気誘発エリアが表示されているか否かが判定される。既に眠気誘発エリアが表示されている場合には(S62:Y)、S63にて当該眠気誘発エリアの表示が消去された後、まだ眠気誘発エリアが表示されていない場合にはそのまま(S62:N)、処理はS64へ移行する。なお、S63では、表示を消去せずに、表示色を透過色にしたり、色の変更を行ったりしてもよい。また、過去の眠気誘発エリアの表示個数については、ドライバが自由に選択できるようにしてもよい。
【0046】
S64では、眠気誘発エリアが表示されることが、音声によってアナウンスされる。なお、このアナウンス内容は、眠気誘発エリアが提示された回数によって変更してもよい。例えば、走行開始後初めて眠気誘発エリアが提示される場合には、「眠気誘発エリアが表示されました」、既提示の眠気誘発エリアが変更される場合には、「眠気誘発エリアが変更されました」などとしてもよい。また、アナウンスは、音声の他、音や音楽を用いてもよい。
【0047】
続くS65では、現在地を基点としたときに、S511で記憶部12に記憶した連続走行距離閾値が含まれるセグメントが、ナビゲーション装置1の画面上に表示されている通行予定経路上に眠気誘発エリアとして表示される。S66では、眠気誘発エリアとして表示されたセグメントに関する記憶部12内のセグメント情報に、眠気誘発エリアとされた履歴が記憶されて、処理はS7(図2参照)へ移行する。なお、このようにセグメント情報を記憶しておくことにより(S66)、前述のアナウンス(S64)において、眠気誘発エリアが変化したか否か、その変化の大きさや方向を反映したアナウンスを行うことができる。また、S66は省略してもよい。
【0048】
図9は、S65で実行される眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。図9に示す例では、車両がセグメントをA,B,…,Zと移動する間に道路パターンがI,II,III と変化している。現在、ドライバの眠気レベルが1の状態で道路パターンIIの1番目のセグメントを車両が走行しており、連続走行距離閾値が含まれるセグメントが道路パターンIIの4番目のセグメントから3番目のセグメントに変わると(S61:Y)、4番目のセグメントに対する強調表示(図示省略)が消去され、3番目のセグメントが眠気誘発エリアとして強調表示される。
【0049】
また、図10は、前述の渋滞係数(k)を使用した場合の眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。なお、図10において、太線で示した箇所で渋滞が発生しているものとする。このように、予定通行経路の途中で渋滞状況が変化(例えば、渋滞有に変化)している場合、記憶部12に記憶された「現在情報」と前述のS56の判定結果とで渋滞の項目が異なる場合がある。そのような場合には、図10に示すように、「渋滞:無」に対応する連続走行距離閾値Lと、「渋滞:有」に対応する連続走行距離閾値Mとを、渋滞係数(k)を用いて演算することにより、連続走行距離閾値をM+k×(L−M)として、その連続走行距離閾値が含まれるセグメントが眠気誘発エリアとして強調表示される。なお、渋滞係数(k)は、データベース内で渋滞情報以外が同一のデータセット群において、渋滞の有無によってデータを2分割し、それぞれの平均継続距離を比較することで決定すればよい。
【0050】
図2に戻って、S6の眠気誘発エリア提示処理が終了すると、S7にて、車両が走行中であるか否かが判定される。車両が走行中である場合には(S7:Y)、処理は前述のS4へ移行して、S4〜S7の処理が所定の時間間隔で繰り返し実行される。なお、車両が走行中であるか否かは、車載された車速センサ、加速度センサ、ステアリングやペダルの操作情報などを用いるものとする。一方、車両が走行中でない、すなわち、車両が停車した場合には(S7:N)、処理はS8へ移行する。S8では、記憶部12に記憶された「現在情報」が消去されて、このナビゲート処理が全て終了する。
【0051】
なお、S7における判定は、目的地に到着したか否かをナビゲーション装置1を介して判定することによってなされてもよい。その場合、目的地までの経路上では停車した場合にもS7にて肯定判断され、S4〜S7の処理が所定の時間間隔で繰り返し実行される。そして、目的地に到着した場合に(S7:N)、処理がS8へ移行する。
【0052】
[データベース更新処理]
次に、記憶部12の前述のデータベースを車両の走行中に更新するデータベース更新処理について説明する。図11は、データベース更新処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、前述のナビゲート処理による案内であるか否かに関わらず、ナビゲーション装置1による案内がなされている間に、眠気誘発エリア予測部11のCPUがROMに記憶されたプログラムに基づいて実行する処理である。
【0053】
図11に示すように、この処理では、先ず、S81にて、カメラ4に対して走行中のドライバの顔画像撮影が指示され、続くS82にて、カメラ4が撮影したドライバの顔画像をもとに眠気レベル判定部5が6段階で判定したドライバの眠気レベルが読み込まれる。続くS83では、直前の眠気レベルと比較して、現在の眠気レベルに変化があるか否かが判定され、変化がない場合には(S83:N)、処理は前述のS81へ移行する。
【0054】
一方、ドライバの眠気レベルに変化がある場合には(S83:Y)、処理はS84へ移行する。S84では、ドライバの眠気レベルが変化するまでの間に車両が走行したセグメントの道路パターンのうち、最も出現率の多かった道路パターンがナビゲーション装置1から取得される。そして、その道路パターン、並びに、ナビゲーション装置1から取得されるその道路パターンの連続走行距離及び走行中の渋滞の有無、並びに、走行中に生体センサ2,外的環境センサ6等を介して取得されたドライバの体調,外的環境,及び時間帯が、当該眠気レベルの遷移情報とセットにして記憶部12のデータベースに記憶される。続くS85では車両が走行中であるか否かが判定され、走行中の場合は(S85:Y)、処理は前述のS81へ移行し、走行中でない場合は(S85:N)、この処理が一旦終了する。
【0055】
なお、S84では、次にS83で肯定判断されてS84へ移行した場合に備えて、少なくともその処理がなされた時点における車両の位置が記憶される。また、前述のように記憶部12のデータベースには天候,道路パターン等の各種組み合わせに対して継続距離と眠気レベル遷移とが対応付けて記憶されているが、最初にS84にてデータセットが作成された場合は、当該S84にて作成されたデータセットが初期値としてのデータセットに上書きされる。道路パターン等が同一の組み合わせに対して2回目以降にデータセットが作成された場合は、そのデータセットは上書きされてもよいし、タイムスタンプと共に前記データベースに追加記入されてもよい。後者の場合、前述のS59では、平均をとるのではなく、タイムスタンプの最も新しいデータセットを抽出するようにしてもよい。
【0056】
[実施の形態の効果及びその変形例]
以上説明したように、前記実施の形態では、記憶部12は、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)を対応付けてデータセットとして記憶したデータベースを備えている。そして、そのデータベースを用いて、眠気誘発エリア予測部11が眠気誘発エリアを予測するので、天候や時間帯やドライバの体調や道路パターンや渋滞の有無等を反映して、眠気誘発エリアを良好に予測することができる。しかも、その予測結果は、ナビゲーション装置1の画面に図9に例示したように表示されるので、ドライバに一層良好に注意喚起を促すことができ、ドライバは覚醒状態を維持するための対策が立てやすくなる。
【0057】
また、記憶部12のデータベースに記憶されたデータセットは、図11のデータベース更新処理によってそのドライバに応じたデータに順次更新されるので、更に一層正確に眠気誘発エリアを予測することができる。なお、データベースの項目には、道路パターンとして右左折箇所の数や信号機の数を含めてもよく、その場合、更に一層正確に眠気誘発エリアを予測することができる。
【0058】
なお、前記実施の形態において、記憶部12のデータベースがデータベースに、ナビゲーション装置1が経路設定手段に、それぞれ相当する。また、眠気誘発エリア予測部11が実行する処理のうち、S3が道路形態取得手段に、S43,S44が眠気レベル検出手段に、S45の処理のうちナビゲーション装置1のGPS受信機を介して車両の現在地を取得する処理が位置検出手段に、S5,S6が眠気予測手段に、S46が外的環境取得手段に、S41,S42がドライバ情報検出手段に、S65が表示手段に、S84の処理のうち道路パターンを取得する処理が道路形態検出手段に、S84の処理のうちのそれ以外の処理がデータベース更新手段に、それぞれ相当する。
【0059】
また、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、前述の眠気誘発エリアの表示(S65)に代えて、またはその表示と並行して、現在地が眠気誘発エリアから所定の距離以内に近づいた場合、ドライバに警告をしてもよい。
【0060】
また、眠気誘発エリアに到達した際、ドライバの眠気レベルが増加していない場合には、ドライバが自助努力によって眠気を克服した(眠気の増加を抑えた)と考えられるため、「眠気克服ポイント」をドライバに付与してもよい。その場合、眠気克服ポイントはナビゲーション装置1の画面などに表示してドライバに告知される。その表示によって、ドライバに達成感を与えることができ、眠気予防の動機付けを促すことが可能となる。
【0061】
図12は、そのような処理を可能にする眠気克服ポイント表示処理(眠気克服告知手段に相当)を表すフローチャートである。なお、この処理は、前述のナビゲート処理と並行して、眠気誘発エリア予測部11を構成するCPUによってROMに記憶されたプログラムに基づいて実行され、所定の時間間隔で(または1セグメント分車両が走行する毎に)繰り返される。
【0062】
図12に示すように、この処理では、先ず、S91にて、現在地のセグメント情報が記憶部12から取得される。すなわち、現在地のセグメントが過去にS66で眠気誘発エリアとして記憶されたことのあるセグメントであるか否かの情報が取得される。続くS92では、S91で取得されたセグメント情報に、眠気誘発エリアとして表示された履歴の有無が判定され、現在地のセグメントに眠気誘発エリアとして表示された履歴がある場合には(S92:Y)、処理はS93へ移行する。なお、この履歴はS1で目的地設定を実施し、走行開始した時点からの経履歴に限るものとする。
【0063】
S93では、現在の眠気レベルが所定のレベル以下であるか否かが判定される。現在の眠気レベルが所定のレベル以下である場合には(S93:Y)、処理はS94へ移行し、眠気克服ポイントがナビゲーション装置1の画面上等に表示されて、処理が終了する。
【0064】
例えば、図13(A)に例示するように、前述の図10の例と同様に道路パターンIIの1番目のセグメントを車両が走行しており、道路パターンIIの3番目のセグメントが眠気誘発エリアとして表示されていたとする。そして、図13(B)に例示するように、眠気誘発エリアとして表示されていたセグメントに達したときに眠気レベルが0になっていたとすると(S92:Y,S93:Y)、眠気克服ポイントとして例えば1ptが表示されるのである(S94)。眠気克服ポイントは、例えば、このように一箇所の眠気誘発エリア毎に眠気を克服すると1pt(ポイント)のように加算していくものであってもよい。
【0065】
一方、現在地のセグメントが過去に眠気誘発エリアとして表示された履歴のないセグメントである場合や(S92:N)、現在の眠気レベルが所定のレベル以下でない場合には(S93:N)、この眠気克服ポイント表示処理はそのまま終了する。
【0066】
また、前記実施の形態では、眠気誘発エリアを表示することによって注意喚起を行っているが、注意喚起のみではなく、より眠くならない安全性の高いルートを走行中にナビゲーション装置1を介してドライバに提案してもよい。更に、前記実施の形態では、パラメータとして継続距離をデータベースに記憶しているが、パラメータとしてはそれ以外にも種々の形態が考えられる。例えば、1km走行する毎に蓄積される疲労度(数十段階に分類した眠気レベルであってもよい)をパラメータとしてデータベースに記憶し、その疲労度を積算することによって眠気誘発エリアを推定してもよい。その場合、道路パターンが変化しても前記疲労度は徐々に蓄積され、眠気を予測することができる。従って、道路パターン切り替わりフラグの先の眠気誘発エリアも予測することが可能となる。
【0067】
更に、前記実施の形態では、眠気予測装置10が当初からナビゲーション装置1に接続されているが、一般のナビゲーション装置に後付けしてもよい。その場合、後付であるが故にナビゲーション装置の画面に対して働きかけができない可能性もあるが、その場合でも、スピーカ等を備えておくことによって次のような制御を行えば当該後付装置内で処理が完結する。例えば、眠気誘発エリアの手前に車両が達した時点で「そろそろ休憩しませんか?」などといった休憩を促すメッセージを発声するなどの制御が考えられる。
【0068】
また更に、本発明で参照される車両の移動経路は、必ずしもナビゲーション装置によって検索されたものでなくてもよい。例えば、「1.○○交差点を右折、2.××交差点を左折、…」といった具合にマニュアルで移動経路が設定されてもよい。その場合でも、眠気予測装置がナビ情報を備えていれば、前記実施の形態と同様に眠気予測を行うことができる。また、図11のデータベース更新処理は、ナビゲーション装置1から道路パターンを取得しているが、ステアリング操作量,アクセル操作量と速度,ETC車載器の情報等からから道路パターンを取得してもよい。更に、移動経路を構成する道路はVICSリンクのように細分化しなくてもよく、例えば、道路の形態が高速道路,主要地方道,それ以外の一般道といったような大分類のみである場合は、前記移動経路の当該道路への合流点から離脱点までを1つの単位としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ナビゲーション装置 2…生体センサ 3…体調判定部
4…カメラ 5…眠気レベル判定部 6…外的環境センサ
7…外的環境判定部 10…眠気予測装置 11…眠気誘発エリア予測部
12…記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転中のドライバの眠気を予測する眠気予測装置に関し、詳しくは、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を移動中に検出されたドライバの眠気レベルの現在値に基づいてそれ以降のドライバの眠気を予測する眠気予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライバの心拍数や顔の表情等に基づいて、ドライバの眠気レベル(眠気が強くなるほど大きな値をとる)を検出する技術が種々提案されている。そして、そのような技術を用いて検出された眠気レベルの応用法として、目的地までの車両の移動経路を案内するいわゆるカーナビゲーション装置において、ドライバの眠気レベルが高めになると予測される車両の到達位置を眠気注意エリアとして提示することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−140358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術では、随時検出されるドライバの眠気レベルが時系列に沿って同様の割合で増加することを前提としている。しかしながら、実際の眠気レベルは運転時間のみに依存して増加するものではなく、高速道路走行中と一般道走行中とで増加率が異なったり、渋滞の有無によって増加率が異なったりする。従って、特許文献1に記載の技術では、円滑に走行していた車両が渋滞箇所に入ったことによってドライバの眠気レベルが急激に増加したり、高速道路から一般道に下りたことによってドライバが覚醒して眠気レベルが低下したりすることを予測することができない。そこで、本発明は、移動経路を構成する道路の形態等も参照することにより、ドライバの眠気の状態を良好に予測することのできる眠気予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達するためになされた本発明の眠気予測装置は、眠気が強くなるほど大きな値をとる眠気レベルのその時点における値を眠気レベル現在値として、道路の形態とドライバの前記眠気レベル現在値との組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶したデータベースと、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する道路形態取得手段と、ドライバの前記眠気レベル現在値を検出する眠気レベル検出手段と、前記車両の位置を検出する位置検出手段と、前記眠気レベル検出手段が前記眠気レベル現在値を検出したときに前記位置検出手段が検出した位置を眠気検出位置として、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るものと、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値とに対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する眠気予測手段と、を備えている。
【0006】
このように構成された本発明の眠気予測装置では、データベースは、道路の形態とドライバの眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶している。そして、道路形態取得手段は、車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する。また、眠気レベル検出手段は、ドライバの眠気レベル現在値を検出し、位置検出手段は、車両の位置を検出する。
【0007】
そこで、眠気予測手段は、道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち、眠気検出位置(眠気レベル検出手段が眠気レベル現在値を検出したときの車両の位置)以降の道路に係るものと、前記検出された眠気レベル現在値とに対応したパラメータを、データベースから取得する。そして、そのパラメータを取得することにより、眠気予測手段は、眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する。ドライバが催す眠気は、車両の移動経路を構成する道路の形態(例えば、当該道路が高速道路であるか一般道であるかなど)に応じて大きく変化する。そこで、本発明では、眠気予測手段が眠気検出位置以降の移動経路を構成する各道路の形態を参照してそれに対応したパラメータから当該移動経路を移動中の眠気を予測している。このため、本発明では、ドライバの眠気レベルが眠気レベル現在値からどのように変化するかを良好に予測することができる。
【0008】
なお、前記パラメータとしては種々の形態が考えられるが、前記パラメータは、当該形態の道路をどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが当該眠気レベル現在値から上昇するかを表す数値であってもよく、その場合、前記眠気予測手段は、前記移動経路に沿ってどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが上昇するかを予測してもよい。
【0009】
また、本発明において更に、気温、または天候、または時刻、または前記眠気検出位置以降の前記移動経路上の道路に係る渋滞情報の、少なくともいずれか1つを含む外的環境を取得する外的環境取得手段と、ドライバの体調の現在値をドライバ情報として検出するドライバ情報検出手段と、を備え、前記データベースは、前記外的環境と前記ドライバ情報と前記道路の形態と前記眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、前記パラメータを対応付けて記憶し、前記眠気予測手段は、前記外的環境取得手段に取得された外的環境、前記ドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るもの、及び、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値に対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測してもよい。この場合、眠気予測手段は、外的環境取得手段に取得された外的環境及びドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報(すなわち、ドライバの体調の現在値)を、前述の道路の形態と合わせて参照し、それらの組み合わせに対応したパラメータをデータベースから取得する。このため、眠気予測手段は、当該取得したパラメータに基づいて、一層正確にドライバの眠気を予測することができる。
【0010】
また、前記眠気予測手段は、前記眠気レベルが上昇すると予測される前記移動経路上の位置を予測してもよい。そして、その場合、前記移動経路を、前記眠気予測手段が予測した前記位置と共に地図上に表示する表示手段を、更に備えてもよい。その場合、眠気レベルが上昇すると予測される移動経路上の位置が、表示手段によって当該移動経路と共に地図上に視覚的に表示されるので、ドライバに一層良好に注意喚起を促すことができ、ドライバは覚醒状態を維持するための対策が立てやすくなる。
【0011】
また、前述のように眠気レベルが上昇すると予測される位置を眠気予測手段が予測する場合、前記眠気予測手段が前記位置を予測してから、前記位置検出手段が検出する位置と前記眠気予測手段が予測した位置とが一致するまでの間に、前記眠気レベル検出手段が検出する眠気レベル現在値が上昇しなかった場合、その旨をドライバに告知する眠気克服告知手段を、更に備えてもよい。この場合、眠気予測手段が前記位置でドライバの眠気レベルが上昇すると予測したにも拘わらず、その位置まで車両が走行して位置検出手段が検出する位置がその位置と一致しても眠気レベルの上昇がなかった場合に、眠気克服告知手段による告知がなされる。従って、この場合、ドライバは眠気を克服した達成感を得ることができ、眠気予防の動機付けを促すことが可能となる。
【0012】
また、前記道路形態取得手段は、前記移動経路を構成する各道路を予め設定された複数のセグメントに分割してセグメント毎に前記形態を取得し、前記眠気予測手段は、前記移動経路を構成する道路の各セグメントの形態に対応した前記パラメータを前記データベースからそれぞれ取得することにより、前記眠気を予測してもよい。この場合、移動経路を構成する各道路がセグメントに分割され、各セグメント毎に前記形態の取得及びパラメータの取得がなされるので、眠気予測手段は一層正確にドライバの眠気の状態を予測することができる。
【0013】
また、前記道路の形態は、当該道路が高速道路若しくは自動車専用道路であるか否か、当該道路の曲率半径、当該道路におけるトンネルの有無、当該道路におけるトンネルの長さ、当該道路におけるトンネルの数、当該道路における右左折箇所の数、当該道路における信号機の数、当該道路が都市部にあるか地方部にあるか、または、当該道路が平地部にあるか山地部にあるかの、いずれか1つ、または、いずれか複数の組み合わせによって定義されるものであってもよい。
【0014】
また、道路の位置及び形態に関する道路データを記憶し、目的地が指示されたときに前記道路データに基づいて前記目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を、更に備え、前記道路形態取得手段は、前記経路設定手段によって車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を前記道路データに基づいて取得してもよい。本発明の眠気予測装置は、装置外で設定された車両の移動経路に対して前記処理を実行してもよいが、目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を備えてその経路設定手段に設定された移動経路に対して前記処理を実行する場合、移動経路の設定から眠気の予測までの一連の処理が一括して行える。
【0015】
また、本発明は、更に、前記車両の運転中に、その車両が走行している道路の形態を検出する道路形態検出手段と、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが前回上昇した時点または前記車両が走行を開始した時点を起点とし、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが更に上昇した時点を上昇点とし、前記起点から前記上昇点までの間に前記位置検出手段が検出した位置の変化に対応する前記車両の走行距離に基づいて、前記パラメータを算出し、当該パラメータを前記起点から前記上昇点までの間に前記道路形態検出手段が検出した形態及び前記起点から前記上昇点までの間に前記眠気レベル検出手段が検出していた眠気レベルと対応付けて前記データベースに記憶するデータベース更新手段と、を備えてもよい。この場合、実際の運転中に眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルの上昇に応じたパラメータが算出され、そのパラメータによって、データベースがデータベース更新手段によって更新される。このように算出されたパラメータは、ドライバ特有の事情を良好に反映しており、眠気予測手段は、このように更新されたパラメータに基づいて、一層正確にドライバの眠気を予測することができる。
【0016】
そして、その場合、前記データベースは、前記各形態及び前記眠気レベル現在値に対応する前記パラメータとして予め初期値を記憶しており、前記データベース更新手段によって当該パラメータの値が順次更新されてもよい。その場合、例えば高速道路を車両で走行したことがないドライバなどのように、当該ドライバが車両で走行したことのない形態の道路が前記移動経路に含まれている場合でも、予め記憶された前記パラメータの初期値を用いることで、眠気予測手段は良好にドライバの眠気を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された眠気予測装置の構成を表すブロック図である。
【図2】眠気予測装置が実行するナビゲート処理を表すフローチャートである。
【図3】ナビゲート処理の全道路パターン記憶処理を表すフローチャートである。
【図4】ナビゲート処理の現在情報取得処理を表すフローチャートである。
【図5】現在情報取得処理の外的環境情報取得処理を表すフローチャートである。
【図6】ナビゲート処理の眠気誘発エリア予測処理を表すフローチャートである。
【図7】眠気誘発エリア予測処理で使用されるデータベースを表す説明図である。
【図8】ナビゲート処理の眠気誘発エリア提示処理を表すフローチャートである。
【図9】眠気誘発エリア提示処理の眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。
【図10】眠気誘発エリアの他の表示例を表す説明図である。
【図11】眠気予測装置が実行するデータベース更新処理を表すフローチャートである。
【図12】眠気予測装置が実行する眠気克服ポイント表示処理を表すフローチャートである。
【図13】その眠気克服ポイント表示処理の表示例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[眠気予測装置の全体構成]
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された眠気予測装置10の構成をその周辺機器と共に表すブロック図である。なお、周辺機器も含めた全体がシステムとして一体化された眠気予測装置を構成してもよい。眠気予測装置10は、CPU,ROM,RAM等を備えた車両に搭載される処理装置として構成され、図1に示すように、通行予定経路上の眠気誘発エリアを予測する眠気誘発エリア予測部11と、その予測に使われるデータベース等の各種データを記憶したハードディスク等からなる記憶部12とを備えている。
【0019】
また、眠気予測装置10には、当該車両に搭載されたナビゲーション装置(ナビ)1が接続され、眠気誘発エリア予測部11に情報を入力可能に構成されている。なお、このナビゲーション装置1は、道路の位置(経緯度)や形状をセグメント(例えば、等間隔距離のセグメントやいわゆるVICSリンク(登録商標)等)単位で記憶しており、目的地が指示されたときにその目的地までの車両の移動経路を検索し、自身が備えたGPS受信機にて当該車両の位置を検出しながら案内を行う。
【0020】
また、眠気予測装置10には、ステアリングやシートに設置されたセンサ,サーモカメラ等、ドライバの心拍数,体温等の各種生体情報を検出する各種生体センサ2が、体調判定部3を介して接続され、ステアリングコラム(図示省略)に設置されて車両走行中のドライバの顔画像を撮影するカメラ4も、眠気レベル判定部5を介して接続されている。体調判定部3は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、各種生体センサ2が検出した各種生体情報に基づき、ドライバの体調を良好,普通,不調の3段階で判定する。また、眠気レベル判定部5は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、カメラ4を介して撮影されたドライバの顔画像に基づき、ドライバの眠気レベルを0〜5の6段階(数値が大きいほど眠気が強い)で判定する。
【0021】
更に、眠気予測装置10には、外的環境を取得する外的環境センサ6が、外的環境判定部7を介して接続されている。外的環境センサ6は、車載されたレインセンサ,温湿度センサ,時計等、複数のセンサによって構成される。外的環境判定部7は、CPU,ROM,RAMを備えた処理装置として構成され、外的環境センサ6を介して降雨状態や外気温湿度、時刻等を計測し、その結果から外的環境を判定する。
【0022】
[ナビゲート処理の詳細]
次に、眠気誘発エリア予測部11がナビゲーション装置1と協働して実行するナビゲート処理について説明する。図2は、そのナビゲート処理のメインルーチンを表すフローチャートである。なお、この処理は、ドライバが車両に乗り込んで、ナビゲーション装置1に対して眠気誘発エリア予測モードの経路案内を指示したときに、眠気誘発エリア予測部11を構成するCPUによってROMに記憶されたプログラムに基づいて実行される。
【0023】
図2に示すように、この処理では、S1(Sはステップを表す:以下同様)にてナビゲーション装置1に信号を送ることによってその画面に対してドライバに目的地を入力させるメッセージを表示する処理がなされる。そのメッセージに対してドライバが目的地を音声または表示されたボタンで入力すると、ナビゲーション装置1に備えられたCPU,ROM,RAMを備えた処理部によって周知の経路検索が実行され、ドライバによって通行予定経路(移動経路)が決定されると、その通行予定経路のデータが眠気誘発エリア予測部11へ返送される。眠気誘発エリア予測部11は、S1に続くS2でその通行予定経路のデータを受信することにより、次の全道路パターン記憶処理(S3)を実行する。
【0024】
図3は、S3の全道路パターン記憶処理を詳細に表すフローチャートである。この処理は、S2にて決定結果が受信された通行予定経路について、等間隔距離(セグメント)毎に道路パターンを判定し、通行予定経路上の全セグメントの道路パターンと、道路パターンの切り替わり部に立てたフラグを記憶部12に記憶する処理である。
【0025】
図3に示すように、この処理では、先ずS31にて、S2で決定された通行予定経路を、等間隔距離(セグメント)毎に道路区分(例えば、高速自動車国道または自動車専用道路であるかその他の道路であるかと、地方部であるか都市部であるかとの組合わせ)がナビ情報(ナビゲーション装置1のデータベースに記憶された情報)から取得される。次にS32では、S31で道路区分を取得したセグメント毎に、地形(例えば、平地部であるか山地部であるか)がナビ情報から取得される。次にS33では、S31で道路区分を取得したセグメント毎に、道路形状(例えば、直線であるかカーブであるトンネルであるか)がナビ情報から取得される。なお、道路形状がカーブである場合は、その曲率半径も取得される。続くS34では、S31〜S33において取得された、道路区分・地形・道路形状情報のセットが、各セグメントの道路パターンとして、記憶部12に記憶される。
【0026】
S35では、S34で記憶された道路パターンの切り替わり部にフラグが立てられ、前述の通行予定経路のデータ及び道路パターンと共に、全フラグが記憶部12に記憶されて、処理は図2のS4へ移行する。
【0027】
S4では、現在情報、すなわち、現在のドライバの体調と眠気レベル、現在の道路パターンの取得、及び、現在の外的環境情報の取得処理が実行される。図4は、この現在情報取得処理を詳細に表すフローチャートである。図4に示すように、この処理では、先ず、S41にて、前述の各種生体情報センサ2に動作が指示されることにより、ドライバの体温や心拍などの生体情報が取得される。続くS42では、生体情報センサ2が取得した生体情報をもとに体調判定部3が判定したドライバの体調(良好,普通,または不調)が読み込まれる。
【0028】
S43では、カメラ4に動作が指示されることにより、ドライバの顔画像がカメラ4によって取得される。続くS44では、カメラ4が撮影(取得)したドライバの顔画像をもとに眠気レベル判定部5が6段階で判定したドライバの現在の眠気レベルが読み込まれる。なお、眠気レベルの判定には、ドライバの表情の変化や、瞼の開度、瞬き回数などを用いる周知の方法が適用できる。また、S41で取得されたドライバの生体情報と、S43で取得されたドライバの顔画像との両方の情報を用いて、眠気レベルを判定してもよい。眠気レベルは、覚醒状態から居眠り状態までを等間隔に複数レベル(例えば6レベル)に分類するものとする。なお、眠気レベルは2レベルに分類されてもよいが、少なくとも3レベル以上に分類されるのが望ましい。
【0029】
S45では、ナビゲーション装置1が備えたGPS受信機を介して車両の現在地が取得され、S2にて決定結果が受信された通行予定経路における現在走行中のセグメントの道路パターンが、S3で記憶部12に記憶された道路パターンの中から呼び出される。続くS46では、外的環境センサ6を介して、降雨状態や外気温湿度、時刻等の外的環境情報を取得する外的環境情報取得処理が実行される。図5はこの外的環境情報取得処理を詳細に表すフローチャートである。
【0030】
図5に示すように、この処理では、S461にて、外的環境センサ6に動作が指示されることにより、現在の降雨状態や外気温湿度が取得される。続くS462では、S461で取得された降雨状態や外気温湿度の情報から、外的環境判定部7を介して現在の天候(例えば、晴れ,曇り,雨,雪等)が判定される。S463では、外的環境センサ6の1つである時計から現在の時刻が取得される。なお、S463では、ナビゲーション装置1から時刻が取得されてもよい。
【0031】
続くS464では、S463で取得された時刻から、現在の時間帯(例えば、8時〜12時/12時〜16時など)が判定される。S465では、現在の通行予定経路上の渋滞情報がナビゲーション装置1の道路交通情報処理部(例えば、VICS(登録商標)に関する処理部)から取得される。S466では、S462にて判定された現在の天候、S464にて判定された現在の時間帯の情報、及びS465にて取得された渋滞情報のセットが、現在の外的環境情報として記憶部12に記憶され、処理は図4のS47へ移行する。
【0032】
S47では、S42で判定されたドライバの体調、S44で判定されたドライバの現在の眠気レベル、S45で呼び出された現在の道路パターン、及びS46で記憶された現在の外的環境情報が、「現在情報」のデータセットとして、記憶部12に記憶され、処理は図2のS5へ移行する。なお、現在の外的環境情報としては、車両が継続して走行している継続走行距離(または時間)を追加して用いてもよい。
【0033】
S5では、次のように眠気誘発エリア予測処理が実行され、更にその予測結果に基づいて、S6にて眠気誘発エリア提示処理が実行される。図6は、S5の眠気誘発エリア予測処理を詳細に表すフローチャートである。
【0034】
図6に示すように、この処理では、S51にて、記憶部12に、既に前述のS47にて「現在情報」が記憶されているか否かが判定される。記憶部12に既に「現在情報」が記憶されている場合、すなわち、車両が走行中である場合には(S51:Y)、処理はS52へ移行し、新たに記憶された「現在情報」と、既存の「現在情報」とが比較される。この際、眠気レベル、道路パターンの各項目(例えば、道路区分,地形、道路形状)、外的環境情報の各項目(例えば、天候,時間帯,渋滞状況)のそれぞれについて、比較するものとする。
【0035】
続くS53では、S52で比較された各項目のうち、少なくとも1つ以上の項目について相違があるか否かが判定される。少なくとも1つ以上の項目に相違がある場合(S53:Y)、処理はS54へ移行し、ドライバの眠気レベル、走行中の道路パターン、または外的環境情報について、直前の情報から変化があるとして、フラグfが1にセットされる。一方、いずれの項目にも相違がない場合には(S53:N)、処理はS55へ移行し、ドライバの眠気レベル、走行中の道路パターン、及び外的環境情報について、直前の情報から変化がないものとして、フラグfが0にリセットされた後、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。また、前述のS51にて既存の「現在情報」が存在しないと判定された場合(S51:N)、すなわち、車両が発車直後である場合には、処理はS51からS54へ直接移行する。
【0036】
S54にてフラグfが1にセットされた場合、続くS56では、S3において記憶部12に記憶された道路パターンの切り替わりフラグのうち、通行予定経路における車両の進行方向に存在し、かつ車両の現在地から最も近いフラグと現在地との間に、渋滞があるか否かが判定される。なお、渋滞の有無は、前述のS465と同様に、ナビゲーション装置1の道路交通情報処理部から最新の情報を読み込んで判定される。続くS57では、予め記憶部12に記憶されているデータベースの中から、「現在情報」及びS56で判定された渋滞の有無情報と一致するデータセットが抽出される。
【0037】
すなわち、予め記憶部12に記憶されているデータベースには、例えば図7に例示するように、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)が対応付けられたデータセットが各組み合わせ毎に記憶されている。S57では、このデータベースの各種組み合わせのうち、最も新しい「現在情報」及びS56で判定された渋滞の有無情報と、遷移前の眠気レベルも含めて一致するものが抽出されるのである。
【0038】
なお、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の各項目としては、次の表1に示すような項目が用意されている。また、継続距離及び眠気レベル遷移は、後述のデータベース更新処理によって車両の走行中にデータが更新されるが、各組み合わせに対して初期値として適宜の値が設定されている。更に、表1の道路パターンにおいて、地方部/都市部は地形よりも景色を重視した分類であり、平地部/山地部は起伏等の地形を重視した分類である。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、S57では、「現在情報」とS56の判定結果とで渋滞の項目が異なる場合、例えば、「現在情報」が「渋滞:無」となっていても、S56で「渋滞:有」と判定されていれば、「渋滞:有」と「渋滞:無」の両方のデータセットが抽出される。続くS58では、S57にて抽出されたデータセットについて、現在の眠気レベルから眠気レベルが所定のレベル(例えば1段階)だけ上昇する(眠くなる)までのデータセットのみが抽出される。S59では、S58において抽出されたデータセットについて、継続距離の平均値(平均距離)が算出される。渋滞の項目が異なるデータセットが複数ある場合には、渋滞の項目(有/無)別に平均距離が算出される。また、S58にて抽出されたデータセット数が1セットである場合も同様に平均値算出処理(S59)が実行される。
【0041】
続くS510では、S59にて算出された平均距離と、進行方向に存在し、かつ現在地から最も近い道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離が比較される。S59にて算出された平均距離の方が、進行方向にあり現在地から最も近い道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離よりも長い場合には、この眠気誘発エリア予測処理(S5)は終了し、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。
【0042】
一方、S59にて算出された平均距離の方が、現在地から最も近く、進行方向にある道路パターン切り替わりフラグと現在地間の距離よりも短い場合には(S510:Y)、処理はS511へ移行する。S511では、S59にて算出された平均距離が、連続走行距離閾値として記憶部12に記憶され、処理はS6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)へ移行する。
【0043】
なお、S59にて平均距離を算出するに当たり、「現在情報」では「渋滞:無」であってもS56で「渋滞:有」と判定されている場合には、データベースに記憶された継続距離の平均値の比較によって算出した渋滞係数(k)を乗じて、平均距離を算出してもよい。
【0044】
図8は、S6の眠気誘発エリア提示処理(図2参照)を詳細に表すフローチャートである。なお、この処理は、以下に説明するように、通行予定経路上の眠気誘発エリアを、ナビゲーション装置1の画面上に提示する処理である。図8に示すように、この処理では、先ず、S61にて、記憶部12に記憶されているフラグfが1にセットされているか否かが判定される。f=0の場合は(S61:N)、この眠気誘発エリア提示処理はそのまま終了して処理はS7(図2参照)へ移行し、f=1の場合は(S61:Y)、処理は続くS62へ移行する。
【0045】
S62では、ナビゲーション装置1に表示されている通行予定経路上に、既に眠気誘発エリアが表示されているか否かが判定される。既に眠気誘発エリアが表示されている場合には(S62:Y)、S63にて当該眠気誘発エリアの表示が消去された後、まだ眠気誘発エリアが表示されていない場合にはそのまま(S62:N)、処理はS64へ移行する。なお、S63では、表示を消去せずに、表示色を透過色にしたり、色の変更を行ったりしてもよい。また、過去の眠気誘発エリアの表示個数については、ドライバが自由に選択できるようにしてもよい。
【0046】
S64では、眠気誘発エリアが表示されることが、音声によってアナウンスされる。なお、このアナウンス内容は、眠気誘発エリアが提示された回数によって変更してもよい。例えば、走行開始後初めて眠気誘発エリアが提示される場合には、「眠気誘発エリアが表示されました」、既提示の眠気誘発エリアが変更される場合には、「眠気誘発エリアが変更されました」などとしてもよい。また、アナウンスは、音声の他、音や音楽を用いてもよい。
【0047】
続くS65では、現在地を基点としたときに、S511で記憶部12に記憶した連続走行距離閾値が含まれるセグメントが、ナビゲーション装置1の画面上に表示されている通行予定経路上に眠気誘発エリアとして表示される。S66では、眠気誘発エリアとして表示されたセグメントに関する記憶部12内のセグメント情報に、眠気誘発エリアとされた履歴が記憶されて、処理はS7(図2参照)へ移行する。なお、このようにセグメント情報を記憶しておくことにより(S66)、前述のアナウンス(S64)において、眠気誘発エリアが変化したか否か、その変化の大きさや方向を反映したアナウンスを行うことができる。また、S66は省略してもよい。
【0048】
図9は、S65で実行される眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。図9に示す例では、車両がセグメントをA,B,…,Zと移動する間に道路パターンがI,II,III と変化している。現在、ドライバの眠気レベルが1の状態で道路パターンIIの1番目のセグメントを車両が走行しており、連続走行距離閾値が含まれるセグメントが道路パターンIIの4番目のセグメントから3番目のセグメントに変わると(S61:Y)、4番目のセグメントに対する強調表示(図示省略)が消去され、3番目のセグメントが眠気誘発エリアとして強調表示される。
【0049】
また、図10は、前述の渋滞係数(k)を使用した場合の眠気誘発エリアの表示例を表す説明図である。なお、図10において、太線で示した箇所で渋滞が発生しているものとする。このように、予定通行経路の途中で渋滞状況が変化(例えば、渋滞有に変化)している場合、記憶部12に記憶された「現在情報」と前述のS56の判定結果とで渋滞の項目が異なる場合がある。そのような場合には、図10に示すように、「渋滞:無」に対応する連続走行距離閾値Lと、「渋滞:有」に対応する連続走行距離閾値Mとを、渋滞係数(k)を用いて演算することにより、連続走行距離閾値をM+k×(L−M)として、その連続走行距離閾値が含まれるセグメントが眠気誘発エリアとして強調表示される。なお、渋滞係数(k)は、データベース内で渋滞情報以外が同一のデータセット群において、渋滞の有無によってデータを2分割し、それぞれの平均継続距離を比較することで決定すればよい。
【0050】
図2に戻って、S6の眠気誘発エリア提示処理が終了すると、S7にて、車両が走行中であるか否かが判定される。車両が走行中である場合には(S7:Y)、処理は前述のS4へ移行して、S4〜S7の処理が所定の時間間隔で繰り返し実行される。なお、車両が走行中であるか否かは、車載された車速センサ、加速度センサ、ステアリングやペダルの操作情報などを用いるものとする。一方、車両が走行中でない、すなわち、車両が停車した場合には(S7:N)、処理はS8へ移行する。S8では、記憶部12に記憶された「現在情報」が消去されて、このナビゲート処理が全て終了する。
【0051】
なお、S7における判定は、目的地に到着したか否かをナビゲーション装置1を介して判定することによってなされてもよい。その場合、目的地までの経路上では停車した場合にもS7にて肯定判断され、S4〜S7の処理が所定の時間間隔で繰り返し実行される。そして、目的地に到着した場合に(S7:N)、処理がS8へ移行する。
【0052】
[データベース更新処理]
次に、記憶部12の前述のデータベースを車両の走行中に更新するデータベース更新処理について説明する。図11は、データベース更新処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、前述のナビゲート処理による案内であるか否かに関わらず、ナビゲーション装置1による案内がなされている間に、眠気誘発エリア予測部11のCPUがROMに記憶されたプログラムに基づいて実行する処理である。
【0053】
図11に示すように、この処理では、先ず、S81にて、カメラ4に対して走行中のドライバの顔画像撮影が指示され、続くS82にて、カメラ4が撮影したドライバの顔画像をもとに眠気レベル判定部5が6段階で判定したドライバの眠気レベルが読み込まれる。続くS83では、直前の眠気レベルと比較して、現在の眠気レベルに変化があるか否かが判定され、変化がない場合には(S83:N)、処理は前述のS81へ移行する。
【0054】
一方、ドライバの眠気レベルに変化がある場合には(S83:Y)、処理はS84へ移行する。S84では、ドライバの眠気レベルが変化するまでの間に車両が走行したセグメントの道路パターンのうち、最も出現率の多かった道路パターンがナビゲーション装置1から取得される。そして、その道路パターン、並びに、ナビゲーション装置1から取得されるその道路パターンの連続走行距離及び走行中の渋滞の有無、並びに、走行中に生体センサ2,外的環境センサ6等を介して取得されたドライバの体調,外的環境,及び時間帯が、当該眠気レベルの遷移情報とセットにして記憶部12のデータベースに記憶される。続くS85では車両が走行中であるか否かが判定され、走行中の場合は(S85:Y)、処理は前述のS81へ移行し、走行中でない場合は(S85:N)、この処理が一旦終了する。
【0055】
なお、S84では、次にS83で肯定判断されてS84へ移行した場合に備えて、少なくともその処理がなされた時点における車両の位置が記憶される。また、前述のように記憶部12のデータベースには天候,道路パターン等の各種組み合わせに対して継続距離と眠気レベル遷移とが対応付けて記憶されているが、最初にS84にてデータセットが作成された場合は、当該S84にて作成されたデータセットが初期値としてのデータセットに上書きされる。道路パターン等が同一の組み合わせに対して2回目以降にデータセットが作成された場合は、そのデータセットは上書きされてもよいし、タイムスタンプと共に前記データベースに追加記入されてもよい。後者の場合、前述のS59では、平均をとるのではなく、タイムスタンプの最も新しいデータセットを抽出するようにしてもよい。
【0056】
[実施の形態の効果及びその変形例]
以上説明したように、前記実施の形態では、記憶部12は、天候・時間帯・体調・道路パターン・渋滞の有無の組み合わせに対して、どれだけ継続して走行したら(継続距離)眠気レベルがどう遷移するか(眠気レベル遷移)を対応付けてデータセットとして記憶したデータベースを備えている。そして、そのデータベースを用いて、眠気誘発エリア予測部11が眠気誘発エリアを予測するので、天候や時間帯やドライバの体調や道路パターンや渋滞の有無等を反映して、眠気誘発エリアを良好に予測することができる。しかも、その予測結果は、ナビゲーション装置1の画面に図9に例示したように表示されるので、ドライバに一層良好に注意喚起を促すことができ、ドライバは覚醒状態を維持するための対策が立てやすくなる。
【0057】
また、記憶部12のデータベースに記憶されたデータセットは、図11のデータベース更新処理によってそのドライバに応じたデータに順次更新されるので、更に一層正確に眠気誘発エリアを予測することができる。なお、データベースの項目には、道路パターンとして右左折箇所の数や信号機の数を含めてもよく、その場合、更に一層正確に眠気誘発エリアを予測することができる。
【0058】
なお、前記実施の形態において、記憶部12のデータベースがデータベースに、ナビゲーション装置1が経路設定手段に、それぞれ相当する。また、眠気誘発エリア予測部11が実行する処理のうち、S3が道路形態取得手段に、S43,S44が眠気レベル検出手段に、S45の処理のうちナビゲーション装置1のGPS受信機を介して車両の現在地を取得する処理が位置検出手段に、S5,S6が眠気予測手段に、S46が外的環境取得手段に、S41,S42がドライバ情報検出手段に、S65が表示手段に、S84の処理のうち道路パターンを取得する処理が道路形態検出手段に、S84の処理のうちのそれ以外の処理がデータベース更新手段に、それぞれ相当する。
【0059】
また、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、前述の眠気誘発エリアの表示(S65)に代えて、またはその表示と並行して、現在地が眠気誘発エリアから所定の距離以内に近づいた場合、ドライバに警告をしてもよい。
【0060】
また、眠気誘発エリアに到達した際、ドライバの眠気レベルが増加していない場合には、ドライバが自助努力によって眠気を克服した(眠気の増加を抑えた)と考えられるため、「眠気克服ポイント」をドライバに付与してもよい。その場合、眠気克服ポイントはナビゲーション装置1の画面などに表示してドライバに告知される。その表示によって、ドライバに達成感を与えることができ、眠気予防の動機付けを促すことが可能となる。
【0061】
図12は、そのような処理を可能にする眠気克服ポイント表示処理(眠気克服告知手段に相当)を表すフローチャートである。なお、この処理は、前述のナビゲート処理と並行して、眠気誘発エリア予測部11を構成するCPUによってROMに記憶されたプログラムに基づいて実行され、所定の時間間隔で(または1セグメント分車両が走行する毎に)繰り返される。
【0062】
図12に示すように、この処理では、先ず、S91にて、現在地のセグメント情報が記憶部12から取得される。すなわち、現在地のセグメントが過去にS66で眠気誘発エリアとして記憶されたことのあるセグメントであるか否かの情報が取得される。続くS92では、S91で取得されたセグメント情報に、眠気誘発エリアとして表示された履歴の有無が判定され、現在地のセグメントに眠気誘発エリアとして表示された履歴がある場合には(S92:Y)、処理はS93へ移行する。なお、この履歴はS1で目的地設定を実施し、走行開始した時点からの経履歴に限るものとする。
【0063】
S93では、現在の眠気レベルが所定のレベル以下であるか否かが判定される。現在の眠気レベルが所定のレベル以下である場合には(S93:Y)、処理はS94へ移行し、眠気克服ポイントがナビゲーション装置1の画面上等に表示されて、処理が終了する。
【0064】
例えば、図13(A)に例示するように、前述の図10の例と同様に道路パターンIIの1番目のセグメントを車両が走行しており、道路パターンIIの3番目のセグメントが眠気誘発エリアとして表示されていたとする。そして、図13(B)に例示するように、眠気誘発エリアとして表示されていたセグメントに達したときに眠気レベルが0になっていたとすると(S92:Y,S93:Y)、眠気克服ポイントとして例えば1ptが表示されるのである(S94)。眠気克服ポイントは、例えば、このように一箇所の眠気誘発エリア毎に眠気を克服すると1pt(ポイント)のように加算していくものであってもよい。
【0065】
一方、現在地のセグメントが過去に眠気誘発エリアとして表示された履歴のないセグメントである場合や(S92:N)、現在の眠気レベルが所定のレベル以下でない場合には(S93:N)、この眠気克服ポイント表示処理はそのまま終了する。
【0066】
また、前記実施の形態では、眠気誘発エリアを表示することによって注意喚起を行っているが、注意喚起のみではなく、より眠くならない安全性の高いルートを走行中にナビゲーション装置1を介してドライバに提案してもよい。更に、前記実施の形態では、パラメータとして継続距離をデータベースに記憶しているが、パラメータとしてはそれ以外にも種々の形態が考えられる。例えば、1km走行する毎に蓄積される疲労度(数十段階に分類した眠気レベルであってもよい)をパラメータとしてデータベースに記憶し、その疲労度を積算することによって眠気誘発エリアを推定してもよい。その場合、道路パターンが変化しても前記疲労度は徐々に蓄積され、眠気を予測することができる。従って、道路パターン切り替わりフラグの先の眠気誘発エリアも予測することが可能となる。
【0067】
更に、前記実施の形態では、眠気予測装置10が当初からナビゲーション装置1に接続されているが、一般のナビゲーション装置に後付けしてもよい。その場合、後付であるが故にナビゲーション装置の画面に対して働きかけができない可能性もあるが、その場合でも、スピーカ等を備えておくことによって次のような制御を行えば当該後付装置内で処理が完結する。例えば、眠気誘発エリアの手前に車両が達した時点で「そろそろ休憩しませんか?」などといった休憩を促すメッセージを発声するなどの制御が考えられる。
【0068】
また更に、本発明で参照される車両の移動経路は、必ずしもナビゲーション装置によって検索されたものでなくてもよい。例えば、「1.○○交差点を右折、2.××交差点を左折、…」といった具合にマニュアルで移動経路が設定されてもよい。その場合でも、眠気予測装置がナビ情報を備えていれば、前記実施の形態と同様に眠気予測を行うことができる。また、図11のデータベース更新処理は、ナビゲーション装置1から道路パターンを取得しているが、ステアリング操作量,アクセル操作量と速度,ETC車載器の情報等からから道路パターンを取得してもよい。更に、移動経路を構成する道路はVICSリンクのように細分化しなくてもよく、例えば、道路の形態が高速道路,主要地方道,それ以外の一般道といったような大分類のみである場合は、前記移動経路の当該道路への合流点から離脱点までを1つの単位としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ナビゲーション装置 2…生体センサ 3…体調判定部
4…カメラ 5…眠気レベル判定部 6…外的環境センサ
7…外的環境判定部 10…眠気予測装置 11…眠気誘発エリア予測部
12…記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眠気が強くなるほど大きな値をとる眠気レベルのその時点における値を眠気レベル現在値として、道路の形態とドライバの眠気レベル現在値との組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶したデータベースと、
車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する道路形態取得手段と、
ドライバの前記眠気レベル現在値を検出する眠気レベル検出手段と、
前記車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記眠気レベル検出手段が前記眠気レベル現在値を検出したときに前記位置検出手段が検出した位置を眠気検出位置として、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るものと、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値とに対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する眠気予測手段と、
を備えたことを特徴とする眠気予測装置。
【請求項2】
前記パラメータは、当該形態の道路をどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが当該眠気レベル現在値から上昇するかを表す数値であり、
前記眠気予測手段は、前記移動経路に沿ってどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが上昇するかを予測することを特徴とする請求項1に記載の眠気予測装置。
【請求項3】
更に、
気温、または天候、または時刻、または前記眠気検出位置以降の前記移動経路上の道路に係る渋滞情報の、少なくともいずれか1つを含む外的環境を取得する外的環境取得手段と、
ドライバの体調の現在値をドライバ情報として検出するドライバ情報検出手段と、
を備え、
前記データベースは、前記外的環境と前記ドライバ情報と前記道路の形態と前記眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、前記パラメータを対応付けて記憶し、
前記眠気予測手段は、前記外的環境取得手段に取得された外的環境、前記ドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るもの、及び、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値に対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の眠気予測装置。
【請求項4】
前記眠気予測手段は、前記眠気レベルが上昇すると予測される前記移動経路上の位置を予測することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項5】
前記移動経路を、前記眠気予測手段が予測した前記位置と共に地図上に表示する表示手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の眠気予測装置。
【請求項6】
前記眠気予測手段が前記位置を予測してから、前記位置検出手段が検出する位置と前記眠気予測手段が予測した位置とが一致するまでの間に、前記眠気レベル検出手段が検出する眠気レベル現在値が上昇しなかった場合、その旨をドライバに告知する眠気克服告知手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の眠気予測装置。
【請求項7】
前記道路形態取得手段は、前記移動経路を構成する各道路を予め設定された複数のセグメントに分割してセグメント毎に前記形態を取得し、
前記眠気予測手段は、前記移動経路を構成する道路の各セグメントの形態に対応した前記パラメータを前記データベースからそれぞれ取得することにより、前記眠気を予測することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項8】
前記道路の形態は、当該道路が高速道路若しくは自動車専用道路であるか否か、当該道路の曲率半径、当該道路におけるトンネルの有無、当該道路におけるトンネルの長さ、当該道路におけるトンネルの数、当該道路における右左折箇所の数、当該道路における信号機の数、当該道路が都市部にあるか地方部にあるか、または、当該道路が平地部にあるか山地部にあるかの、いずれか1つ、または、いずれか複数の組み合わせによって定義されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項9】
道路の位置及び形態に関する道路データを記憶し、目的地が指示されたときに前記道路データに基づいて前記目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を、
更に備え、
前記道路形態取得手段は、前記経路設定手段によって車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を前記道路データに基づいて取得することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項10】
更に、
前記車両の運転中に、その車両が走行している道路の形態を検出する道路形態検出手段と、
前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが前回上昇した時点または前記車両が走行を開始した時点を起点とし、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが更に上昇した時点を上昇点とし、前記起点から前記上昇点までの間に前記位置検出手段が検出した位置の変化に対応する前記車両の走行距離に基づいて、前記パラメータを算出し、当該パラメータを前記起点から前記上昇点までの間に前記道路形態検出手段が検出した形態及び前記起点から前記上昇点までの間に前記眠気レベル検出手段が検出していた眠気レベルと対応付けて前記データベースに記憶するデータベース更新手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項11】
前記データベースは、前記各形態及び前記眠気レベル現在値に対応する前記パラメータとして予め初期値を記憶しており、前記データベース更新手段によって当該パラメータの値が順次更新されることを特徴とする請求項10に記載の眠気予測装置。
【請求項1】
眠気が強くなるほど大きな値をとる眠気レベルのその時点における値を眠気レベル現在値として、道路の形態とドライバの眠気レベル現在値との組み合わせに対して、ドライバの眠気レベルの予測値に関するパラメータを対応付けて記憶したデータベースと、
車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を取得する道路形態取得手段と、
ドライバの前記眠気レベル現在値を検出する眠気レベル検出手段と、
前記車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記眠気レベル検出手段が前記眠気レベル現在値を検出したときに前記位置検出手段が検出した位置を眠気検出位置として、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るものと、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値とに対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記眠気検出位置以降の前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測する眠気予測手段と、
を備えたことを特徴とする眠気予測装置。
【請求項2】
前記パラメータは、当該形態の道路をどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが当該眠気レベル現在値から上昇するかを表す数値であり、
前記眠気予測手段は、前記移動経路に沿ってどれだけの距離走行し続けるとドライバの眠気レベルが上昇するかを予測することを特徴とする請求項1に記載の眠気予測装置。
【請求項3】
更に、
気温、または天候、または時刻、または前記眠気検出位置以降の前記移動経路上の道路に係る渋滞情報の、少なくともいずれか1つを含む外的環境を取得する外的環境取得手段と、
ドライバの体調の現在値をドライバ情報として検出するドライバ情報検出手段と、
を備え、
前記データベースは、前記外的環境と前記ドライバ情報と前記道路の形態と前記眠気レベル現在値との各組み合わせに対して、前記パラメータを対応付けて記憶し、
前記眠気予測手段は、前記外的環境取得手段に取得された外的環境、前記ドライバ情報検出手段に検出されたドライバ情報、前記道路形態取得手段が取得した前記道路の形態のうち前記眠気検出位置以降の道路に係るもの、及び、前記眠気レベル検出手段が検出した前記ドライバの眠気レベル現在値に対応した前記パラメータを、前記データベースから取得することにより、前記移動経路を移動中のドライバの眠気を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の眠気予測装置。
【請求項4】
前記眠気予測手段は、前記眠気レベルが上昇すると予測される前記移動経路上の位置を予測することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項5】
前記移動経路を、前記眠気予測手段が予測した前記位置と共に地図上に表示する表示手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の眠気予測装置。
【請求項6】
前記眠気予測手段が前記位置を予測してから、前記位置検出手段が検出する位置と前記眠気予測手段が予測した位置とが一致するまでの間に、前記眠気レベル検出手段が検出する眠気レベル現在値が上昇しなかった場合、その旨をドライバに告知する眠気克服告知手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の眠気予測装置。
【請求項7】
前記道路形態取得手段は、前記移動経路を構成する各道路を予め設定された複数のセグメントに分割してセグメント毎に前記形態を取得し、
前記眠気予測手段は、前記移動経路を構成する道路の各セグメントの形態に対応した前記パラメータを前記データベースからそれぞれ取得することにより、前記眠気を予測することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項8】
前記道路の形態は、当該道路が高速道路若しくは自動車専用道路であるか否か、当該道路の曲率半径、当該道路におけるトンネルの有無、当該道路におけるトンネルの長さ、当該道路におけるトンネルの数、当該道路における右左折箇所の数、当該道路における信号機の数、当該道路が都市部にあるか地方部にあるか、または、当該道路が平地部にあるか山地部にあるかの、いずれか1つ、または、いずれか複数の組み合わせによって定義されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項9】
道路の位置及び形態に関する道路データを記憶し、目的地が指示されたときに前記道路データに基づいて前記目的地までの車両の移動経路を設定する経路設定手段を、
更に備え、
前記道路形態取得手段は、前記経路設定手段によって車両の移動経路が設定されたとき、その移動経路を構成する各道路の形態を前記道路データに基づいて取得することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項10】
更に、
前記車両の運転中に、その車両が走行している道路の形態を検出する道路形態検出手段と、
前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが前回上昇した時点または前記車両が走行を開始した時点を起点とし、前記眠気レベル検出手段が検出した眠気レベルが更に上昇した時点を上昇点とし、前記起点から前記上昇点までの間に前記位置検出手段が検出した位置の変化に対応する前記車両の走行距離に基づいて、前記パラメータを算出し、当該パラメータを前記起点から前記上昇点までの間に前記道路形態検出手段が検出した形態及び前記起点から前記上昇点までの間に前記眠気レベル検出手段が検出していた眠気レベルと対応付けて前記データベースに記憶するデータベース更新手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の眠気予測装置。
【請求項11】
前記データベースは、前記各形態及び前記眠気レベル現在値に対応する前記パラメータとして予め初期値を記憶しており、前記データベース更新手段によって当該パラメータの値が順次更新されることを特徴とする請求項10に記載の眠気予測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図9】
【図10】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図9】
【図10】
【図13】
【公開番号】特開2013−69152(P2013−69152A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207765(P2011−207765)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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