説明

眼、耳および鼻治療用の抗生物質組成物

【課題】ピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)に付随する眼感染の感染を治療に強力な新しい局所用医薬組成物を提供する。
【解決手段】本願発明は、抗微生物有効量のモキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩、および医薬上、許容されるビヒクルを含有する、ピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)に付随する眼感染の治療または予防用の局所用医薬組成物である。
この組成物は、眼組織等に対する手術またはその他の外傷の後に、または、手術治療中に被患組織に投与することができ、これにより手術後感染を予防または軽減することができる。この組成物に眼等の感染に付随する炎症を治療するために、1種または2種以上の抗炎症薬を含有させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼、耳または鼻の感染、特に細菌感染を治療するための局所用抗生物質医薬組成物、およびこれらの組成物を被患組織に施用することによる眼、耳または鼻感染の治療方法を提供することに関する。本発明による組成物および方法は、新しい種類の抗生物質の使用に基づいている。本発明による組成物はまた、1種または2種以上の抗炎症薬を含有することができる。
【背景技術】
【0002】
感染の治療におけるキノロン(quinolone)抗生物質の使用は、眼用医薬組成物および治療方法の分野における現在の技術状態を代表するものである。一例として、キノロン シプロフロキサシン(ciprofloxacin)を含有する眼用局所組成物は、アルコン ラボラトリー社(Alcon Laboratories,Inc.)によりシロキサン(CILOXAN)(登録商品名)(シプロフロキサシン0.3%)オフタルミック ソリュウション[(Ophthalmic Solution)(眼科用溶液)]の商品名で市販されている。下記のキノロン類がまた、眼用抗生物質組成物に使用されている:
キノロン 製品 製造業者
オフロキサシン オクフロックス(登録商品名) アレルガン
(Ofloxacin) (OCUFLOX) (Allergan)
ノルフロキサシン チブロキシン(登録商品名) メルク
(Norfloxacin) (CHIBROXIN) (Merck)
ロメフロキサシン ロメフロックス(登録商品名) センジュ
(Lomefloxacin) (LOMEFLOX) (Senju)
【0003】
上記キノロン抗生物質組成物は一般に、眼感染の治療に有効であり、また従来の眼用抗生物質組成物、特に比較的制限された抗微生物活性スペクトルを有するもの、例えば主としてグラム陰性病原体に対して有用なネオマイシン(neomycin)、ポリミキシンB(polymyxin B)、ゲンタマイシン(gentamicin)およびトブラマイシン(tobramycin)、ならびに主としてグラム陽性病原体に対して活性であるバシトラシン(bacitracin)、グラミシジン(gramicidin)およびエリスロマイシン(erythromycin)に比較して格別の利点を有する。しかしながら、現在利用できる眼用キノロン治療の一般的有効性にもかかわらず、鍵となる眼病原体に対する現存する抗生物質に比較してより有効であり、またこれらの病原体による耐性の発現が少ない傾向のある抗生物質を使用することに基づく改良された組成物および治療方法が求められている。
【0004】
眼、耳または鼻の感染、特に細菌感染を治療するのに効果的な局所用組成物および方法に対するさらに大きなニーズが存在している。子供における耳感染の治療に経口抗生物質を使用することには、効力に制限があり、また経口投与された抗生物質に対する病原体耐性の重大な危険性が生じる。
眼、耳または鼻の感染は、多くの場合、感染した眼、耳または鼻の組織および多分、周辺組織の炎症を伴う。同様に、眼、耳または鼻の手術処置はまたしばしば微生物感染の危険を生じさせ、被患した組織の炎症の原因となる。従って、単一組成物中に1種または2種以上の抗生物質が、1種または2種以上のステロイド系または非ステロイド系薬剤の抗炎症活性剤と組み合わされている眼、耳または鼻用医薬組成物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、眼、耳または鼻感染を治療するために、強力で新しい種類の抗生物質を使用すること、および眼、耳または鼻組織に対する手術またはその他の外傷の後にこれらの抗生物質を予防的に使用することに基づいている。本発明による組成物はまた、眼、耳または鼻組織に対する手術治療中に被患組織に投与することができ、これにより手術後感染を予防または軽減することができる。
この組成物はまた、眼、耳または鼻組織の感染に付随する炎症を治療するために、1種または2種以上の抗炎症薬をまた含有すると好ましい。本組成物の抗炎症成分はまた、手術処置から生じる炎症を包含する眼、耳または鼻組織に対する物理的外傷に付随する炎症の治療にも有用である。従って、本発明による組成物は、眼、耳または鼻組織に対する外傷に付随する炎症(感染しているか、またはこの外傷から感染のおそれがある)の治療に特に有用である。
【0006】
本発明による組成物により治療することができる眼症状の例には、結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫および角膜潰瘍が包含される。本発明による組成物はまた、感染の危険が生じる種々の眼手術処置に関連して、予防的に使用することもできる。
本発明による組成物により治療することができる耳症状の例には、外耳炎および中耳炎が包含される。中耳炎の治療に関連して、本発明による組成物は、鼓膜が破裂した場合または鼓膜穿刺管が移植されている場合に、主として有用である。本組成物はまた、鼓膜切開手術などの耳外科手術に付随する感染の治療、またはこのような感染の予防に使用することもできる。
本発明による組成物は、眼、耳および鼻組織に局所施用するように特別に調剤される。本組成物は好ましくは、無菌であり、また前から存在する疾病、損傷、手術またはその他の物理的状態の結果として弱体化された組織を包含する眼、耳および鼻組織に施用するのに特に適する物理的性質(例えば、浸透圧およびpH)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明の組成物および方法に用いられる抗生物質は下記式を有する化合物およびそれらの医薬として有用な水和物および塩である:
【化1】

【0008】
式中、
Aは、CH、CF、CCl、C−OCH3またはNであり;
1は、H、ハロゲン、NH2またはCH3であり;
1は、C1〜C3アルキル、FCH2CH2、シクロプロピルまたはフェニルであり、この基は1個、2個または3個のハロゲンにより置換されていてもよく、もしくはAとR1とは一緒になって、式C−O−CH2−CH(CH3)で表わされる架橋を形成していてもよく;
2は、H、C1〜C3アルキル(この基は、OH、ハロゲンまたはNH2により置換されていてもよい)、または5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルであり;および
Bは、下記群から選択される基である:
【0009】
【化2】

【0010】
(各式中、
Yは、OまたはCH2であり;
3は、C2〜C5アルコキシル、CH2−CO−C65、CH2CH2CO2R´、R´O2C−CH=C−CO2R´、CH=CH−CO2R´またはCH2CH2−CNであり、ここでR´は、HまたはC1〜C3アルキルであり;
4は、H、C1〜C3アルキル、C2〜C5アルコキシル、CH2−CO−C65、CH2CH2CO2R´、R´O2C−CH=C−CO2R´、CH=CH−CO2R´、CH2CH2−CNまたは5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルであり、ここでR´は、HまたはC1〜C3アルキルである)。
【0011】
化合物モキシフロキサシン(Moxifloxacin)は、最も好適である。モキシフロキサシンは、下記構造を有する:
【化3】

【0012】
モキシフロキサシンおよびその他の式(I)で表わされる化合物の構造、製造および物理的性質に関するさらに詳細な説明は、米国特許第 5,607,942号に提供されている。
本発明の組成物中の式(I)で表わされる抗生物質の濃度は、組成物の意図する用途(例えば、既に存在する炎症を治療する場合、または手術後の感染を予防する場合)および選択された特定の抗生物質の関連する抗微生物活性に応じて変えられる。抗生物質の抗微生物活性は一般に、特定の病原体の成長を阻止するのに要する最小濃度として表わされる。この濃度はまた、「最小阻止濃度」または「MIC」と称される。「MIC90」の用語は、特定種の九十パーセント(90%)の成長を阻止するのに要する抗生物質の最小濃度を表わす。特定の細菌を全体的に殺滅するのに要する抗生物質の濃度は、「最小細菌殺滅濃度」または「MBC」と称される。眼、耳および鼻感染が通常的に付随する数種の細菌に対するモキシフロキサシンの最小阻止濃度を下表に示す:
【0013】
微生物 MIC90
エス・アウレウス(S.aureus)/メチシリン感受性 0.13
エス・アウレウス/メチシリン耐性 4.0
エス・アウレウス/キノロン耐性 4.0
エス・エピデルミジス(S.epidermidis) /メチシリン 0.25
感受性
エス・エピデルミジス/メチシリン耐性 4.0
エス・ペニュウモニアエ(S.pneumoniae)/ペニシリン 0.25
感受性
エス・ペニュウモニアエ/ペニシリン耐性 0.25
ピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa) 8.0
エイチ・インフルエンザエ(H.influenzae)/ 0.06
β−ラクタマーゼ陽性
エイチ・インフルエンザエ/β−ラクタマーゼ 0.06
陰性
【0014】
前記濃度は全部がミクログラム/ミリリットル(「mcg/ml」)で表わされている。
眼用組成物に適する抗生物質濃度は一般に、眼感染が通常的に付随するグラム陰性およびグラム陽性生物に対する選択された抗生物質(1種または2種以上)のMIC90レベルに等しいか、またはこのレベルよりも多い濃度を、眼の房水および涙液に付与するのに充分な量の1種または2種以上の式(I)で表わされる抗生物質の濃度である。耳用および鼻用組成物に適当な濃度は一般に、耳または鼻感染が通常的に付随するグラム陰性およびグラム陽性生物に対する選択された抗生物質(1種または2種以上)のMIC90レベルに等しいか、またはこのレベルよりも多い濃度を、感染した組織に付与するのに充分な量の1種または2種以上の式(I)で表わされる抗生物質の濃度である。本明細書において、このような量を「抗微生物有効量」の用語で表わす。本発明の組成物は代表的に、1種または2種以上の式(I)で表わされる化合物を、組成物の約0.1〜約1.0重量パーセント(「wt%」)の濃度で含有する。
【0015】
本発明の組成物はまた、1種または2種以上の抗炎症薬を含有することができる。本発明で用いられる抗炎症薬は、ステロイド系または非ステロイド系に広く分類される。好適ステロイド系抗炎症薬は、グルココルチコイド類(glucocorticoids)である。
眼および耳用に好適なグルココルチコイドには、デキサメタソン(dexamethasone)、ロテプレドノール(lotepredonol)、リメキソロン(rimexolone)、プレドニソロン(prednisolone)、フルオロメトロン(fluorometholone)およびハイドロコルチゾン(hydrocortisone)が包含される。鼻用に好適なグルココルチコイドには、モメタゾン(mometasone)、フルチカゾン(fluticasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロン(triamcinolone)およびブデソニド(budesonide)が包含される。
【0016】
米国特許第 5,223,493号(Boltralik)に記載されているデキサメタソン誘導体はまた、特に眼炎症治療用の組成物に好適なステロイド系抗炎症薬である。下記の化合物は、特に好適である:
【化4】

【0017】
本明細書において、これらの化合物を、「デキサメタソンの21−エーテル誘導体」の用語で表わす。21−ベンジルエーテル誘導体(すなわち、化合物AL−2512)は特に好適である。
好適非ステロイド系抗炎症薬には、シクロオキシゲナーゼタイプIおよびタイプII抑制薬と称されるプロスタグランジンH(prostaglandine H)シンターゼ抑制薬(CoxIまたはCoxII)[例えば、ジクロフェナック(diclofenac)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、ケトロラック(ketorolac)、スプロフェン(suprofen)、ネパフェナック(nepafenac)、アムフェナック(amfenac)、インドメタシン(indomethacin)、ナプロキセン(naproxen)、イブプロフェン(ibuprofen)、ブロムフェナック(bromfenac)、ケトプロフェン(ketoprofen)、メクロフェナメート(meclofenamate)、ピロキシカム(piroxicam)、サリンダック(sulindac)、メファナミン酸(mefanamic acid)、ジフルシナル(diflusinal)、オキサプロジン(oxaprozin)、トルメチン(tolmetin)、フェノプロフェン(fenoprofen)、ベノキサプロフェン(benoxaprofen)、ナブメトム(nabumetome)、エトドラック(etodolac)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、アスピリン(aspirin)、オキシフェンブタゾン(oxyphenbutazone)、NCX-4016、HCT-1026、NCX-284、NCX-456、テノキシカム(tenoxicam)およびカプロフェン(caprofen)];
【0018】
シクロオキシゲナーゼタイプII選択的抑制薬[例えば、NS-398、ビオス(vioxx)、セレコキシブ(celecoxib)、P54、エトドラック(etodolac)、L-804600およびS-3351];PAF拮抗薬[例えば、SR-27417、A-137491、ABT-299、アパファント(apafant)、ベパファント(bepafant)、ミノパファント(minopafant)、E-6123、BN-50727、ヌパファント(nupafant)およびモジパファント(modipafant)];PDE IV抑制薬[例えば、アリフロ(ariflo)、トルバフィリン(torbafylline)、ロリプラム(rolipram)、フィラミナスト(filaminast)、ピクラミラスト(piclamilast)、シパムフィリン(cipamfylline)、CG-1088、V-11294A、CT-2820、PD-168787、CP-293121、DWP-205297、CP-220629、SH-636、BAY-19-8004およびロフルミラスト(roflumilast)];サイトキン産生の抑制薬[例えば、NFkB転写因子抑制薬];または当業者に公知のその他の抗炎症薬がある。
【0019】
本発明の組成物に含有される抗炎症薬の濃度は、選択される1種または2種以上の薬剤および治療される炎症のタイプに基づいて変化する。この濃度は、本組成物を標的の眼、耳または鼻組織に局所施用した後、これらの組織の炎症の軽減に充分な濃度である。このような量は、ここでは「抗炎症有効量」と称される。本発明による組成物は代表的に、1種または2種以上の抗炎症薬を、約0.01〜約1.0wt%の量で含有する。
本組成物は代表的に、1〜4滴の無菌溶液または懸濁液、もしくは相当する量の軟膏、ゲルまたはその他の固形または半固体製剤を、一日1〜4回、局所施用することによって被患している眼、耳または鼻組織に投与される。しかしながら、本組成物はまた、手術処置中に被患している眼、耳または鼻組織に施用される洗浄溶液として調剤することもできる。
【0020】
本発明による眼、耳または鼻用組成物は、1種または2種以上の式(I)で表わされる化合物および好ましくは1種または2種以上の抗炎症薬を、医薬上で許容されるビヒクル中に含有する。本組成物は代表的に、4.5〜8.0の範囲のpHを有する。眼用組成物はまた、眼の房水および眼組織に相当する浸透圧値を有するように調剤しなければならない。このような浸透圧値は一般に、約200〜約400ミリオスモル/キログラム(「mOsm/kg」)の範囲であるが、好ましくは約300mOsm/kgである。
眼、耳または鼻用医薬製剤は代表的に、多回用量形態に包装する。従って、使用中における微生物汚染を防止するために、保存剤を要する。適当な保存剤には、ポリクアテルミウム−1(polyquaternium-1)、ベンザルコニウムクロライド(benzalkonium chloride)、チメロザール(thimerosal)、クロロブタノール(chlorobutanol)、メチルパラベン(methyl paraben)、プロピルパラベン(propyl paraben)、フェニルエチルアルコール、エデテート二ナトリウム(edetate disodium)、または当業者に公知のその他の保存剤が包含される。抗微生物保存剤としてポリクアテルミウム−1を使用すると好ましい。代表的に、このような保存剤は、0.001重量%〜1.0重量%のレベルで使用する。
【0021】
本発明による組成物の成分の溶解性は、組成物中の界面活性剤またはその他の適当な補助溶剤により増強させることができる。このような補助溶剤には、ポリソルベート(polysorbate)−20、60および80、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン界面活性剤[例えば、プルロニック(Pluronic)F-68、F-84およびP-103]、シクロデキストリン、または当業者に公知のその他の界面活性剤が包含される。代表的に、このような補助溶剤は、0.01重量%〜2重量%のレベルで使用する。
単純水性溶液の粘度よりも大きい粘度を有する本発明による組成物を得るために、粘度増強剤を使用し、標的組織による活性化合物の眼吸収を増加させ、または眼、耳または鼻における保持時間を増加させることが望ましい。このような粘度増強剤には、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者に公知のその他の助剤が包含される。このような助剤は代表的に、0.01重量%〜2重量%のレベルで使用する。
【0022】
下記例は、本発明による眼、耳または鼻用組成物をさらに説明するために示されている。
例1
眼/耳/鼻用溶液
成分 量(wt%)
モキシフロキサシン 0.35
酢酸ナトリウム 0.03
酢酸 0.04
マンニトール 4.60
EDTA 0.05
ベンザルコニウムクロライド 0.006
水 全量を100にする適量
【0023】
例2
眼/耳/鼻用懸濁液
成分 量(wt%)
モキシフロキサシン 0.3
デキサメタゾン、微粉砕USP 0.10
ベンザルコニウムクロライド 0.01
エデテート二ナトリウム、USP 0.01
塩化ナトリウム、USP 0.3
硫酸ナトリウム、USP 1.2
チロキサポール、USP 0.05
(Tyloxapol)
ヒドロキシエチルセルロース 0.25
硫酸および/または
水酸化ナトリウム、NF pHを5.5に調節する適量
精製水、USP 全量を100にする適量
【0024】
例3
眼用軟膏
成分 量(wt%)
モキシフロキサシン 0.35
鉱油、USP 2.0
白色ペトロラタム、USP 全量を100にする適量
(White petrolatium)
【0025】
例4
眼用軟膏
成分 量(wt%)
モキシフロキサシン 0.3
フルオロメトロン酢酸塩、USP 0.1
(Fluorometholone)
クロロブタノール、無水、NF 0.5
鉱油、USP 5
白色ペトロラタム、USP 全量を100にする適量
【0026】
本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1. 抗微生物有効量の1種または2種以上の下記式Iで表わされる化合物、それらの医薬として有効な水和物および塩、および医薬上で許容されるビヒクルを含有する眼、耳および鼻用の局所用医薬組成物:
【化5】


式中、
Aは、CH、CF、CCl、C−OCH3またはNであり;
1は、H、ハロゲン、NH2またはCH3であり;
1は、C1〜C3アルキル、FCH2CH2、シクロプロピルまたはフェニルであり、この基は1個、2個または3個のハロゲンにより置換されていてもよく、もしくはAとR1とは一緒になって、式C−O−CH2−CH(CH3)で表わされる架橋を形成していてもよく;
2は、H、C1〜C3アルキル(この基は、OH、ハロゲンまたはNH2により置換されていてもよい)、または5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルであり;および
Bは、下記群から選択される基である:
【化6】


(各式中、
Yは、OまたはCH2であり;
3は、C2〜C5アルコキシル、CH2−CO−C65、CH2CH2CO2R´、R´O2C−CH=C−CO2R´、CH=CH−CO2R´またはCH2CH2−CNであり、ここでR´は、HまたはC1〜C3アルキルであり;
4は、H、C1〜C3アルキル、C2〜C5アルコキシル、CH2−CO−C65、CH2CH2CO2R´、R´O2C−CH=C−CO2R´、CH=CH−CO2R´、CH2CH2−CNまたは5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル−メチルであり、ここでR´は、HまたはC1〜C3アルキルである)。
2. 組成物が、抗炎症有効量のステロイド系または非ステロイド系抗炎症薬をさらに含有する、1に記載の局所用組成物。
3. 抗炎症薬が、グルココルチコイドを包含する、2に記載の局所用組成物。
4. グルココルチコイドが、デキサメタソン(dexamethasone)、リメキソロン(rimexolone)、プレドニソロン(prednisolone)、フルオロメトロン(fluorometholone)、ハイドロコルチゾン(hydrocortisone)、モメタゾン(mometasone)、フルチカゾン(fluticasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロン(triamcinolone)およびブデソニド(budesonide)からなる群から選択される、3に記載の局所用組成物。
5. 抗炎症薬が、プロスタグランジンH(prostaglandin H)、シンターゼ抑制薬、PAF拮抗薬およびPDE IV抑制薬からなる群から選択される非ステロイド系薬を包含する、2に記載の局所用組成物。
6. 式Iで表される化合物が、モキシフロキサシン(moxifloxacin)を包含する、2に記載の局所用組成物。
7. 抗炎症薬が、デキサメタソン(dexamethasone)を包含する、6に記載の局所用組成物。
8. 眼、耳または鼻感染の治療または予防方法であって、治療有効量の1に記載の組成物を、被患している眼、耳または鼻組織に局所施用することを包含する、上記方法。
9. 眼、耳または鼻感染および予測される感染の治療または予防方法であって、治療有効量の2に記載の組成物を、被患している眼、耳または鼻組織に局所施用することを包含する、上記方法。
10. 眼、耳または鼻感染および予測される感染の治療または予防方法であって、治療有効量の6に記載の組成物を、被患している眼、耳または鼻組織に局所施用することを包含する、上記方法。
【0027】
また、本発明の好ましい態様は下記のようなものである。
1. モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩、および医薬上、許容されるビヒクルを含有する、眼、耳または鼻感染の治療または予防用の局所用医薬組成物。
2. モキシフロキサシンあるいは水和物または塩の濃度が0.1−1.0重量%である、1に記載の組成物。
3. ステロイド系抗炎症薬または非ステロイド系抗炎症薬をさらに含む、1または2に記載の医薬組成物。
4. ステロイド系抗炎症薬をさらに含む、1または2に記載の医薬組成物。
5. ステロイド系抗炎症薬がグルココルチコイドを含む、4に記載の医薬組成物。
6. グルココルチコイドが、デキサメタソン(dexamethasone)、リメキソロン(rimexolone)、プレドニソロン(prednisolone)、フルオロメトロン(fluorometholone)、ハイドロコルチゾン(hydrocortisone)、モメタゾン(mometasone)、フルチカゾン(fluticasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ブデソニド(budesonide)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、5に記載の医薬組成物。
7. グルココルチコイドがデキサメタソンまたはデキサメタソンの誘導体を含む、6に記載の医薬組成物。
8. デキサメタソンの誘導体が、デキサメタソンの21−エーテル誘導体である、7に記載の医薬組成物。
9. デキサメタソンの21−エーテル誘導体が、デキサメタソンの21−ベンジルエーテル誘導体である、8に記載の医薬組成物。
10. 非ステロイド系抗炎症薬をさらに含む、1または2に記載の医薬組成物。
11. 非ステロイド系抗炎症薬が、プロスタグランジンH(prostaglandin H)シンターゼ抑制薬、シクロオキシゲナーゼII選択的抑制薬、PAF拮抗薬およびPDE IV抑制薬、サイトカイン産生の抑制薬およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、10に記載の医薬組成物。
12. 非ステロイド系抗炎症薬が、プロスタグランジンH(prostaglandin H)シンターゼ抑制薬を含む、11に記載の医薬組成物。
13. プロスタグランジンH(prostaglandin H)シンターゼ抑制薬がネパフェナック(nepafenac)、ケトロラック(ketorolac)またはジクロフェナック(diclofenac)を含む、12に記載の医薬組成物。
14. 非ステロイド系抗炎症薬が、シクロオキシゲナーゼII選択的抑制薬を含む、11に記載の医薬組成物。
15. モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩の濃度が0.35−1.0重量%の濃度である、1−14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
16. 組成物が液体であり、さらに塩化ナトリウムを含む1−15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
17. さらに粘度増強剤及び界面活性剤を含む、16に記載の医薬組成物。
18. 組成物が4.5〜8.0の範囲のpHを有する、1−17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
19. 組成物が5.5〜8.0の範囲のpHを有する、1−17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
20. 組成物が約200〜約400ミリオスモル/キログラムの浸透圧値を有する、1−19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
21. 組成物が約300ミリオスモル/キログラムの浸透圧値を有する、1−20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
22. さらに抗微生物保存剤を0.001重量%〜1.0重量%の濃度で含む、1−21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
23. 組成物は多回用量形態の無菌の溶液である、1−22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
24. 眼感染の治療または予防のために局所施用するように調剤された形態である、1−23のいずれ一項に記載の医薬組成物。
25. 眼感染が結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、角膜潰瘍及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、24に記載の医薬組成物。
26. 眼感染が結膜炎である、25に記載の医薬組成物。
27. 眼感染が角膜炎である、25に記載の医薬組成物。
28. 組成物がエス・アウレウス(S.aureus)、エス・エピデルミジス(S.epidermidis)、エス・ペニュウモニアエ(S.pneumoniae)及びエイチ・インフルエンザエ(H.influenzae)からなる群から選択される少なくとも1つの病原体の成長を阻害するために適している、24−27のいずれ一項に記載の医薬組成物。
29. 組成物がエス・アウレウス(S.aureus)の成長を阻害し、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩を、眼の房水および涙液に少なくとも約0.13mcg/mlの濃度を付与するのに充分な量で含む、28に記載の医薬組成物。
30. 組成物がエス・エピデルミジス(S.epidermidis)の成長を阻害し、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩を、眼の房水および涙液に少なくとも約0.25mcg/mlの濃度を付与するのに充分な量で含む、28に記載の医薬組成物。
31. 組成物がエス・ペニュウモニアエ(S.pneumoniae)の成長を阻害し、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩を、眼の房水および涙液に少なくとも約0.25mcg/mlの濃度を付与するのに充分な量で含む、28に記載の医薬組成物。
32. 組成物がエイチ・インフルエンザエ(H.influenzae)の成長を阻害し、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩を、眼の房水および涙液に少なくとも約0.06mcg/mlの濃度を付与するのに充分な量で含む、28に記載の医薬組成物。
33. 組成物がピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)の成長を阻害するために適している、24−27のいずれ一項に記載の医薬組成物。
34. 組成物がピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)の成長を阻害し、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩を、眼の房水および涙液に少なくとも約8mcg/mlの濃度を付与するのに充分な量で含む、33に記載の医薬組成物。
35. モキシフロキサシンあるいは水和物または塩を含む、眼、耳または鼻感染の治療または予防用の局所用医薬組成物を製造するための、モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩の使用。
36. モキシフロキサシンあるいは水和物または塩の濃度が0.1〜1.0重量%である、35に記載の使用。
37. モキシフロキサシンあるいは水和物または塩の濃度が0.35〜1.0重量%である、35に記載の使用。
38. 組成物が眼感染の治療または予防用の組成物である、35−37のいずれか一項に記載の使用。
【0028】
本明細書において、本発明は或る好適態様を引用して説明されている。しかしながら、これらの明白な変更は、当業者に明白であることから、本発明はこれらに制限されるものと見做されるべきではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、眼、耳または鼻の感染、特に細菌感染を治療するのに効果的な局所用組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物のピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)に付随する眼感染の局所的な治療または予防用のための利用。
【請求項2】
抗微生物有効量のモキシフロキサシンあるいはその医薬として有効な水和物または塩、および医薬上、許容されるビヒクルを含有する、ピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)に付随する眼感染の治療または予防用の局所用医薬組成物。
【請求項3】
モキシフロキサシンあるいは水和物または塩の濃度が0.1〜1.0重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ピー・アエルギノーサ(P.aeruginosa)に付随する眼感染の治療または予防が治療上有効な量の組成物を感染した眼組織に局所的に適用することを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、抗炎症有効量のステロイド系または非ステロイド系抗炎症薬をさらに含有する、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
抗炎症薬がグルココルチコイドを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
グルココルチコイドが、デキサメタソン(dexamethasone)、リメキソロン(rimexolone)、プレドニソロン(prednisolone)、フルオロメトロン(fluorometholone)、ハイドロコルチゾン(hydrocortisone)、モメタゾン(mometasone)、フルチカゾン(fluticasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルニソリド(flunisolide)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ブデソニド(budesonide)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
非ステロイド系抗炎症薬が、プロスタグランジンH(prostaglandin H)シンターゼ抑制薬、PAF拮抗薬およびPDE IV抑制薬からなる群から選択される非ステロイド薬を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
抗炎症薬がデキサメタソン(dexamethasone)を含む請求項5記載の組成物。


【公開番号】特開2013−18799(P2013−18799A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242519(P2012−242519)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2008−213954(P2008−213954)の分割
【原出願日】平成11年9月29日(1999.9.29)
【出願人】(500276345)アルコン ラボラトリーズ,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】