説明

眼の炎症性障害を処置するための治療組成物

本発明は、炎症性サイトカインIL-17の機能を阻害する手段を有する組成物、およびIL-17媒介性の眼の炎症性障害を処置するために該組成物を用いる方法を含む。本発明はまた、この組成物を眼に送達するための装置も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その内容物の全体が参照により本明細書に組み入れられる、2008年1月9日に提出された米国特許仮出願第61/010,566号の優先権による恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に眼科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
眼の炎症性障害は、視覚障害の主な原因の1つである。乾性角結膜炎としても知られるドライアイ症候群(DES)は、主要な眼表面の炎症性障害である。眼表面の炎症性障害の病因および発病に関する現在の知識は未だ不十分であり、現在の処置は、一時的かつ不完全な症状軽減を提供するに過ぎない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、IL-17受容体または前炎症性シグナル伝達経路の他の要素に対する炎症性IL-17サイトカインの結合などの炎症性インターロイキン-17の活性を阻害する組成物を対象の眼に局所投与することによって、IL-17媒介性眼表面炎症性障害の重症度を抑えるまたは低下させるための方法を含む。特許請求される組成物および方法は、IL-17媒介性眼表面炎症性障害を処置するための必要性を満たし、これは、この状態の症状に完全に対処するのみならず、基礎となる生理的機序に影響を及ぼす。本明細書において記述される方法が、眼表面の炎症性障害に至る分子シグナル伝達経路を標的にできることは、一般的ではあるが複雑でもあるこれらの状態を処置するための長期にわたる解決策を提供する。
【0005】
好ましい態様において、特許請求される本発明の組成物は、IL-17AまたはIL-17Fの活性を阻害する。または、特許請求される本発明の組成物は、IL-17AおよびIL-17Fの活性を阻害する。もう1つの好ましい態様において、特許請求される本発明の組成物は、IL-17RAまたはIL-17RCの活性を阻害する。または、特許請求される本発明の組成物は、IL-17RAの活性を阻害する。本発明のIL-17媒介性眼表面炎症性障害は、全層角膜移植、角膜移植、層状または部分層移植、選択的内皮移植、角膜新生血管形成、人工角膜移植術、角膜の眼表面炎症状態、結膜瘢痕障害、自己免疫状態、類天疱瘡症候群、スティーヴンズ・ジョンソン症候群、アレルギー、重度アレルギー性(アトピー性)眼疾患、結膜炎、および微生物性角膜炎を含む。IL-17媒介性眼表面炎症性障害は、重度のアレルギー性(アトピー性)眼疾患を含む。好ましくはIL-17媒介性眼表面炎症性障害は、ブドウ膜炎、眼内状態、または眼の内部組織の炎症を含まない。
【0006】
本発明の1つの好ましい態様において、IL-17媒介性眼表面炎症性障害は、ドライアイ症候群(DES)である。DESの同義語および関連障害には、乾性角結膜炎(KCS)、シェーグレン症候群(SS)、シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、非シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼球乾燥症、涙液膜障害、涙液産生減少、水性涙液(aqueous tear)欠乏症(ATD)、マイボーム腺機能障害(MGD)、および蒸発による喪失が含まれるがこれらに限定されるわけではない。対象は、眼の乾燥、引掻くような痛み(scratching)、刺すような痛み(stinging)、痒み、焼けるような痛み(burning)、刺激、痛み、発赤、炎症、分泌物、および過剰な流涙からなる群より選択される徴候または症状を検出することによって、DESまたは関連障害に罹っているとして同定される。または、対象は、その涙液組成が正しい眼組織の潤滑にとって不十分である場合にDESまたは関連障害に罹っていると同定される。治療法は、少なくとも1つの上記徴候または症状の重症度を抑えるまたは低下させるものである。
【0007】
ドライアイは、涙液および眼表面の多因性障害であり、それによって不快感、視覚障害、および涙液膜不安定の症状が起こり、眼表面に損傷が起こる可能性がある。これは、涙液膜の浸透圧の増加および眼表面の炎症を伴う(ドライアイの臨床試験におけるemp MA. Report of the National Eye Institute/Industry Workshop、CLAO J 1995;21:221-2)。より詳細な定義に関しては、参照により本明細書に組み入れられる、The definition and classification of dry eye disease: report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop. Ocular Surface. 2007 Apr;5(2):75-92を参照されたい。治療法は、少なくとも1つの上記徴候または症状の重症度を抑えるまたは低下させるものである。
【0008】
本方法は、炎症性IL-17サイトカインのIL-17受容体複合体に対する結合を阻害する化合物の投与を含む。好ましい製剤は、固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル、ミスト、ポリマー、コンタクトレンズ、薄膜、乳剤、または懸濁剤の形態である。製剤は局所的に投与される、たとえば、組成物は眼に送達されて眼に直接接触する。組成物は、0.01〜50%(重量/体積)の濃度で存在する。たとえば、阻害組成物は、1%(重量/体積)、10%(重量/体積)、20%(重量/体積)、25%(重量/体積)、30%(重量/体積)、40%(重量/体積)、50%(重量/体積)、またはそのあいだの任意の百分率の濃度で存在する。本方法は、組成物の全身投与も、非眼組織への組成物の計画的な実質的拡散も伴わない。
【0009】
任意で、組成物はさらに、薬学的に許容される担体を含有する。例示的な薬学的担体には、生理学的に許容される塩、カーボポールを有するポロキサマー類似体、カーボポール/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カーボポール-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油が含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、粘液溶解剤は、N-アセチルシステインである。
【0010】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは全て、精製および/または単離される。本明細書において用いられるように、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、他の細胞材料、組み換え技術によって産生された場合には培養培地、または化学合成された場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の関心対象化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の関心対象化合物である。純度は任意の適切な標準的な方法によって測定され、たとえばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0011】
ドライアイ症候群の重症度を抑えるまたは低下させるための方法はまた、炎症性インターロイキン-17サイトカインまたはIL-17受容体複合体の任意の成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む組成物を対象の眼に局所投与することによって行われる。
【0012】
本組成物は、IL-17および/または受容体複合体に対する中和抗体または機能遮断抗体を含んでもよい。IL-17に対する中和抗体または機能遮断抗体は、ヒトIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、ヒトIL-17アロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171A、R&D Systems)、ヒトIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF317、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号MAB3171、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41809)(カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヒトIL-17フィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171P、R&D Systems)、マウスIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-421-NA、R&D Systems)、マウスIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF421、R&D Systems)、マウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50101)(カタログ番号MAB721、R&D Systems)、またはマウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50104)(カタログ番号MAB421、R&D Systems)の再構成(reformulated)誘導体もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはこれらのエピトープに結合してもよい。好ましくはIL-17に対する中和抗体または機能遮断抗体は、モノクローナル抗ヒトIL-17抗体(クローン41809、カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヤギにおいて作製したポリクローナルの抗ヒトIL-17抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、または組み換え型ヒトIL-17 R/Fcキメラ(カタログ番号177-IR、R&D Systems)の再構成誘導体もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはこれらのエピトープに結合してもよい。
【0013】
IL-17受容体(IL-17R)に対する中和抗体または機能遮断抗体は、ヒトIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rアロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177A、R&D Systems)、ヒトIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフルオレセインモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177F、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号MAB177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133621)(カタログ番号MAB1771、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177P、R&D Systems)、マウスIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF448A、R&D Systems)、マウスIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF448、R&D Systems)、またはマウスIL-17Rモノクローナル抗体(クローン105828)(カタログ番号MAB448、R&D Systems)の再構成誘導体もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはこれらのエピトープに結合してもよい。
【0014】
IL-17に対する中和抗体または機能遮断抗体は、1つまたは複数の型のマウス抗IL-17A(7172、7173、7175、7177、8171、7371、7971、および7370が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)またはマウス抗IL-17F(7471および8471が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)の再構成誘導体もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはこれらのエピトープに結合してもよい。IL-17に対する中和抗体または機能遮断抗体は、1つまたは複数の型のヒト抗IL-17A(7178、7179、8179、7176、7976、および7876が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、または8479が含まれるがこれらに限定されるわけではないヒト抗IL-17F SKU番号、eBioscience)の再構成誘導体またはヒト化誘導体であってもよい。好ましくはIL-17に対する中和抗体または機能遮断抗体は、機能的等級の精製抗ヒトIL-17A抗体(クローン:eBio64CAP17、カタログ番号16-7178、eBioscience)の再構成誘導体もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはこれらのエピトープに結合してもよい。
【0015】
または、本組成物は、IL-17受容体複合体またはIL-17もしくはIL-17受容体複合体の任意の合成中間体に結合するイントラボディを含んでもよい。本組成物は、代替的にまたは追加的に、IL-17に結合するIL-17受容体複合体の可溶性断片を含んでもよい。
【0016】
例示的なポリペプチドには、IL-17機能を破壊することができる融合体および/またはキメラタンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。本組成物はさらに、遺伝子発現を沈黙化させるために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
【0017】
IL-17サイトカインまたはIL-17受容体に対して標的化される企図される機能遮断抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。企図される抗体は、IL-17またはIL-17受容体ポリペプチド内の1つまたは複数の配列に結合する。または抗体はイントラボディである。いくつかの態様において、抗体は、一本鎖抗体、ヒト化抗体、組み換え抗体、またはキメラ抗体を含む。1つまたは複数の化合物はこの抗体に直接または間接的に結合する。
【0018】
IL-17および/またはその受容体複合体のアンタゴニストは、以下の1つまたは複数を含む第二の組成物と共に同時または連続的に投与される:抗生物質、免疫抑制組成物、抗炎症組成物、増殖因子、ステロイド、ケモカイン、またはケモカイン受容体。
【0019】
本組成物は、遺伝子発現を沈黙化するために、眼組織または付属器組織に対する局所投与のために適応されたマイクロRNA分子を含む。ヒトIL-17Rに結合する例示的なmiRNAには、miR-24(SEQ ID NO:33)、miR-378(SEQ ID NO:34)、およびlet-7g(SEQ ID NO:35)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0020】
低分子は有機低分子または無機低分子である。例示的な有機低分子には、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、有機酸、エステル、単糖類および二糖類、芳香族炭化水素、アミノ酸、および脂質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。例示的な無機低分子は微量の無機質、イオン、フリーラジカル、および代謝物を含む。または、低分子阻害剤を合成により操作して、酵素の結合ポケットを満たすための断片、小さい部分、またはより長いアミノ酸鎖からなるようにすることができる。典型的に、低分子は1キロダルトン未満である。
【0021】
本発明の1つの態様において、組成物は、IL-17機能のアンタゴニストと併用して用いられる1つまたは複数の抗生物質組成物を含む。抗生物質およびIL-17アンタゴニスト組成物は、同時または連続的に投与される。IL-17機能のアンタゴニストとの併用治療のために用いられる例示的な抗生物質組成物には、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロザシリン、ジクロキサシリン、フルコザシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフラザシン、トロバフロキサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、テトラサイクリン、トリメトプリム、コトリモキサゾール、デメクロサイクリン、ソキシサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、またはテトラサイクリンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0022】
組成物は、第二の免疫抑制組成物と同時または連続的に投与されるIL-17サイトカインまたはIL-17受容体複合体のアンタゴニストを含む。IL-17またはIL-17Rアンタゴニストを含む組成物は局所に投与される。第二の免疫抑制組成物は局所的または全身的に投与される。
【0023】
免疫抑制化合物は、濃度0.05〜4.0%(mg/ml)のシクロスポリンAまたはその類似体を含む。代替的にまたは追加的に、免疫抑制組成物は、グルココルチコイド、細胞抑制物質、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード/シクロホスファミド、ニトロソウレア、白金化合物)、抗代謝剤(メトトレキサート、任意の葉酸類似体、アザチオプリン、メルカプトプリン、任意のプリン類似体、任意のピリミジン類似体、タンパク質合成の任意の阻害剤)、細胞障害性抗生物質(ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミスラマイシン)、ポリクローナル抗体(Atgam(登録商標)、Thympglobuline(登録商標)、抗リンパ球または抗胸腺細胞抗原に対する任意の抗体)、モノクローナル抗体(OKT3(登録商標)、T細胞受容体に対する任意の抗体、IL-2に対する任意の抗体、バシリキシマブ/Simulect(登録商標)、デクリズマブ/Zenapax(登録商標)、タクロリムス/Prograf(商標)/FK506、シロリムス/Rapamune(商標)/ラパマイシン、インターフェロンβ、インターフェロンγ、オピオイド、TNFα結合タンパク質、ミコフェノール酸塩、またはFTY720を含む。
【0024】
組成物は、薬学的に適切な担体と共に局所投与される、IL-17またはIL-17Rに結合するまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む。ポリヌクレオチド組成物の送達法には、リポソーム、受容体媒介性送達システム、裸のDNA、および中でもヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの工学操作されたウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリヌクレオチド組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば水溶性または部分的に水溶性である液体担体と共に局所投与される。または、組成物内のポリヌクレオチド配列は、リポソーム(たとえば、陽イオンリポソームまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0025】
短いDNA配列またはRNA配列を細胞に送達するために多数の方法が開発されており;たとえばポリヌクレオチド分子、または所望の細胞タイプを特異的に標的とするように設計された改変ポリヌクレオチド分子を、組織部位に直接接触させることができる(たとえば、標的細胞表面上で発現された受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結された配列)。
【0026】
好ましいアプローチは、短いポリヌクレオチド配列が強いポリメラーゼIIIまたはポリメラーゼIIプロモーターの制御下に置かれる組み換え型DNA構築物を用いる。そのような構築物を用いることによって、本発明の核酸の内因性の転写物と相補的塩基対を形成して、それによって内因性のmRNA転写物の翻訳を防止するであろうポリヌクレオチドの十分量の転写が起こるであろう。本発明は、鋳型として相補鎖を用いる短いポリヌクレオチドの構築物を包含する。たとえば、細胞に取り込まれて、干渉RNAまたは前駆体の二本鎖RNA分子への転写を指示するように、ベクターをインビボで導入することができる。または、短いポリヌクレオチド転写物の鋳型は、細胞タイプ特異的プロモーターまたは他の調節エレメントの転写制御下に置かれる。このように、局所投与された組成物が、意図された眼標的組織を超えて拡散するかまたは吸収されることは、有害なまたは全身性の副作用を引き起こすものではない。ベクターは、それが望ましいポリヌクレオチドを産生するように転写されうる限り、エピソームに留まるかまたは染色体に組み込まれるようになる。
【0027】
ベクターは、当技術分野において標準的な組み換え型DNA技術法によって構築される。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のために用いられる、プラスミド、ウイルス、または当技術分野において公知の他のベクターでありうる。短いポリヌクレオチドをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用することが当技術分野において公知である任意のプロモーターの制御下に置かれうる。プロモーターは誘導型または構成的である。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Bernoist et al., Nature 290:304, 1981);ラウス肉腫ウイルスの3'末端反復配列に含有されるプロモーター(Yamamoto et al., Cell, 22:787-797, 1988);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 1441 , 1981);またはメタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature, 296:39, 1988)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0028】
形質膜を超えての輸送を可能にするために、ポリペプチド組成物を、単独でまたは受容体媒介性送達システムと組み合わせて、リポソームに会合させる。ポリペプチド組成物は可溶性または膜結合型である。例示的な受容体媒介性送達システムは、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症およびHCV媒介性薬物送達法について観察されるように、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)に対する、低密度または超低密度のリポタンパク質含有粒子または小胞の融合を伴う。
【0029】
組成物は、イントラボディとも呼ばれる、IL-17またはIL-17受容体複合体に対して作製された1つまたは複数の細胞外抗体または細胞内抗体を含む。細胞外抗体は、薬理学的に適切な水性または非水性の担体と共に局所投与される。細胞内抗体をコードする配列は、ウイルスまたは哺乳動物発現ベクターにサブクローニングされて、形質膜を通しての輸送を容易にするために脂肪親和性装置に充填されて、薬理学的に適切な水性または非水性の担体と共に眼組織に局所投与される。形質膜内部に入ると、宿主細胞機構は、IL-17またはIL-17受容体複合体に対して標的化される細胞内機能遮断抗体を生成するようにイントラボディコードを転写、翻訳、およびプロセシングする。分泌型分子の場合、細胞内抗体は、標的タンパク質の翻訳後修飾または分泌を防止する。膜結合分子の場合、細胞内抗体は、IL-17サイトカインによる受容体係合時の細胞内シグナル伝達事象を防止する。
【0030】
組成物は、他の阻害エレメントと共に、IL-17および/またはIL-17受容体複合体機能のアンタゴニストを含む。IL-17および/またはIL-17受容体複合体および他の阻害エレメントのアンタゴニストは、同時または連続的に投与される。1つの態様において、組成物は、IL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニストおよび腫瘍壊死因子α(TNFα)のアンタゴニストを含む。TNFαの例示的な機能的遮断剤には、組み換え型および/または可溶性のTNFα受容体、モノクローナル抗体、ならびに低分子アンタゴニストおよび/または逆アゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つまたは複数の市販のTNFα遮断剤が、本態様における局所投与のために再構成される。再構成のために用いられる例示的な市販のTNFα遮断剤には、エタネルセプト/Embrel、インフリキシマブ/Remicade、およびアダリムマブ/Humiraが含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、組成物は、IL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニストおよび1つまたは複数のインターロイキンサイトカインのアンタゴニストを含む。例示的なサイトカインには、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-12、IL-18、およびIL-23が含まれるがこれらに限定されるわけではない。もう1つの態様において、組成物は、IL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニスト、ならびに増殖因子および受容体(VEGFR)で構成される血管上皮細胞増殖因子(VEGF)ファミリーの1つまたは複数のメンバーのアンタゴニストを含む。例示的なメンバーには、VEGF-A、VEGF-C、VEGFR-2、およびVEGFR-3が含まれるがこれらに限定されるわけではない。もう1つの態様において、組成物は、IL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニストおよびインターフェロン-γのアンタゴニストを含む。もう1つの態様において、組成物は、IL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニストと、1つまたは複数のケモカインおよびその受容体のアンタゴニストとを含む。本態様の組成物によって含まれる例示的なケモカインおよび受容体には、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体1(CCR1)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体2(CCR2)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5(CCR5)、ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体7(CCR7)、およびケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体3(CXCR3)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0031】
組成物がIL-17および/またはIL-17受容体機能のアンタゴニストおよび第二の組成物を含む態様において、第二の組成物に対するIL-17アンタゴニストの各々の用量は1:10〜10:1(質量/重量)の比である。または、比は、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、または9:1である。
【0032】
本発明はまた、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物および薬学的に適合するポリマーからなるコンタクトレンズ装置も含む。この組成物はまた、IL-17またはIL-17受容体複合体のアンタゴニストのみならず、第二の組成物の併用を含む。たとえば、組成物はレンズ内に組み入れられるかまたはレンズ上にコーティングされる。組成物は、コンタクトレンズポリマーに化学的に結合されるか、または物理的に捕捉される。コンタクトレンズは、疎水性または親水性のいずれかである。
【0033】
本発明は、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物および薬学的に適合するポリマーからなる薬物送達装置を含む。この組成物はまた、IL-17またはIL-17受容体機能のアンタゴニストならびに第二の組成物の併用も含む。たとえば、組成物は、ポリマー内に組み入れられるかまたはポリマー上にコーティングされる。組成物は、ポリマーに化学結合されるか、またはポリマーに物理的に捕捉される。ポリマーは、疎水性または親水性のいずれかである。ポリマー装置は、多数の物理的配列を含む。例示的な物理型のポリマー装置には、薄膜、足場、チャンバー、球体、ミクロスフェア、ステント、または他の構造が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリマー装置は内部および外部表面を有する。装置は1つまたは複数の内部チャンバーを有する。これらのチャンバーは1つまたは複数の組成物を含有する。装置は1つまたは複数の化学的に区別可能なモノマーのポリマーを含有する。装置のサブユニットまたはモノマーはインビトロまたはインビボで重合する。
【0034】
本発明は、ポリマーと、ポリマー内部または表面に組み入れられた生理活性組成物とを備えた装置を含み、該生理活性組成物は炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害し、かつ該装置は、眼表面組織、眼表面組織に接触した付属器組織、液体が充填された眼腔もしくは付属器腔、または眼腔もしくは付属器腔に移植または注入される。
【0035】
そこから装置が形成される例示的な粘液接着性の多価陰イオン性の天然または半合成ポリマーには、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルキチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、およびメソグリカンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。1つの態様において、装置は、任意で全体または部分的に生体分解性であってもよい生体適合性のポリマーマトリクスを含む。ハイドロゲルは、適したポリマーマトリクス材料の一例である。ハイドロゲルを形成することができる材料の例には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギン酸塩およびアルギン酸塩誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成多糖類、ポリペプチドなどのポリアミノ酸、特にポリ(リジン)、ポリヒドロキシブチレートおよびポリ-ε-カプロラクトンなどのポリエステル、ポリアンヒドリド、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキサイド)、特にポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)などの改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびグラフトコポリマーが含まれる上記のコポリマーが含まれる。もう1つの態様において、足場は、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンに富むゲルなどの、しかしこれらに限定されない、多様な合成ポリマーおよび天然に存在するポリマーから加工されてもよい。
【0036】
ハイドロゲルの1つの好ましい材料は、アルギン酸塩または改変アルギン酸塩材料である。アルギン酸分子は、ポリマー鎖に沿って比率および連続分布が変動する、(1-4)連結β-D-マンヌロン酸(M単位)とαL-グルロン酸(G単位)のモノマーを含む。アルギン酸塩多糖類は、二価の陽イオン(たとえば、Ca2+、Mg2+、Ba2+)に対して強い親和性を有し、これらの分子に曝露されると安定なハイドロゲルを形成する多価電解質系である。Martinsen A., et al., Biotech. & Bioeng., 33 (1989)79-89を参照されたい。
【0037】
本発明の態様は、アルギン酸塩または、好ましくは解離後にヒトによるクリアランスのための腎閾値となるサイズを有する、他のより低分子の多糖類を利用する。ポリマー装置は局所または非常に浅い皮下に存在し、ポリマー装置に化学的に結合したもしくは物理的に捕捉された組成物または装置自体は分解されて、体から消失しなければならない。生体分解性のポリマー装置の場合、アルギン酸塩または多糖類は、分子量1000〜80,000ダルトン、より好ましくは1000〜60,000ダルトンまで、特に好ましくは1000〜50,000ダルトンまで低下させることが好ましい。同様に、マンヌロン酸塩単位とは対照的に、グルクロン酸塩単位はポリマーをゲル化するために二価の陽イオンを通してイオン性クロスリンクのための部位を提供することから、高いグルロン酸塩含有量のアルギン酸塩材料を用いることが有用である。
【0038】
内部および外部の表面は任意で孔を含有する。孔は、対象への投与前に作製されるか、または対象への投与時に表面を穿孔する孔形成物質を装置内に含めることによってもたらされる。例示的な孔形成物質には、無機塩および糖などの水溶性化合物が含まれるがこれらに限定されるわけではない。孔形成物質は、微粒子として添加されて、1〜30%(重量/ポリマーの重量)を含む。孔の大きさは、タンパク質の拡散にとって十分であるが、装置の内部または外部に細胞が遊走するほど大きくない。
【0039】
装置は、局所、結膜下、または強膜外隙、皮下、または管内投与される。具体的に、装置は、眼組織の表面上にまたは表面のすぐ下に置かれる。または、装置は涙管または涙腺内部に配置される。ポリマーの内部または上に組み入れられた組成物は、装置から放出または拡散される。
【0040】
本発明は、可変の物理的および化学的な組成物を含むが、組成物は局所投与されて、眼に直接接触する。組成物は、固体、パスタ剤、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル、ミスト、ポリマー、薄膜、乳剤、または懸濁剤として投与される。さらに、組成物は、コンタクトレンズまたは薬物送達装置の中に組み入れられるかまたはそれらの上にコーティングされて、そこから1つまたは複数の分子がレンズもしくは装置から拡散するか、または時間依存的に放出される。本態様において、たとえばレンズが視力矯正のために必要である場合にはコンタクトレンズ組成物は眼表面に留まり、あるいはコンタクトレンズは、隣接する組織に組成物を同時に放出しながら、時間と共に溶解する。同様に、薬物送達装置は様々な態様において、任意で生体分解性または持続性である。
【0041】
1つの好ましい態様において、本発明は、IL-17の転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または受容体結合を阻害する手段を有する組成物を含む。1つの好ましい態様において、組成物は、IL-17 mRNA転写物またはIL-17ポリペプチドの1つまたは複数の領域に結合することができる。または、組成物は、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、およびIL-17Fからなる群より選択されるIL-17 mRNA転写物またはIL-17ポリペプチドの1つまたは複数の領域に結合することができる。もう1つの好ましい態様において、組成物は、IL-17A mRNA転写物またはIL-17Fポリペプチドの1つまたは複数の領域に結合することができる。
【0042】
組成物は、IL-17の受容体のアンタゴニストまたは逆アゴニストを含む。IL-17受容体は、IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REを含む。好ましくは、IL-17RAおよびIL-17RCは、アンタゴニストまたは逆アゴニストによって標的化される。この態様において、アンタゴニストは、受容体に対するその結合を遮断することによって、アゴニストであるIL-17の機能を阻害するIL-17Rの結合パートナーもしくはリガンド、または逆アゴニストとして定義される。逆アゴニストとは、アゴニストと同じ、例えばIL-17と同じIL-17R結合部位に結合するが反対の薬理学的効果を発揮する分子として定義される。組成物は、IL-17R mRNAまたはポリペプチドの領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含有する。
【0043】
もう1つの好ましい態様において、組成物は、ヒト組み換え型IL-17Rアンタゴニストを純粋な型でまたは混合物の成分として含む。ヒト組み換え型IL-17Rアンタゴニストは、組成物を眼表面に接触させる前に、緩衝生理食塩液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、もしくはヒアルロン酸(HA)、または他のビヒクルと混和される。これらの混合物において、ヒト組み換え型IL-17Rアンタゴニストは、投与される全体積の少なくとも0.1%、2.0%、2.5%、5%、10%または多くて50%を含む。精製されたとは、無関係なポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞オルガネラ、または脂質が存在しないアンタゴニストとして定義される。精製されたとは、ヒト対象に投与するために安全な、たとえば感染性または毒性物質のない程度の滅菌性を定義する。
【0044】
本発明は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階、調節性T細胞媒介性免疫抑制を回復または増強する段階を含む、IL-17媒介性眼疾患を有する対象における調節性T細胞媒介性免疫抑制を回復または増強する方法を提供する。代替的にまたは追加的に、本発明はまた、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与して、それによって調節性T細胞媒介性免疫抑制を回復または増強する段階を含む、ドライアイを有する対象における調節性T細胞媒介性免疫抑制を回復または増強する方法も提供する。または対象は眼障害を有する。
【0045】
さらに、本発明は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織におけるTh17細胞量を低減させる方法を提供する。たとえば、ドライアイを有する対象の眼組織または付属器組織におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子の分泌を減少または阻害する方法は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与して、それによってリンパ脈管新生を阻害することによって行われる。本発明の一定の態様において、リンパ脈管新生特異的増殖因子は、VEGF-C、VEGF-D、VEGF受容体、またはその組み合わせである。さらに本発明は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与して、それによってリンパ脈管新生を阻害する段階を含む、IL-17媒介性眼疾患を有する対象の眼組織または付属器組織におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子の分泌を減少または阻害する方法を提供する。
【0046】
さらに、本発明は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織におけるマクロファージおよび単球細胞の量または濃度を低下させる方法を提供する。
【0047】
それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織における病原性免疫細胞の量を低減させる方法は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む。本明細書において用いられるように、「病原性免疫細胞」という用語は、眼疾患の徴候または症状を悪化させる、誘導する、発症までの時間を低減する、またはその出現を延長する任意の免疫細胞を説明することを意味する。この状況における病原性免疫細胞は、本発明の組成物のIL-17阻害活性に拮抗するかまたは阻害活性を減少させる。
【0048】
対象の眼組織または付属器組織における病原性リンパ管の増殖は、炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与することによって阻害または低減される。病原性リンパ管の増殖は、眼疾患の徴候または症状を悪化させる、誘導する、発症までの時間を低減する、出現を延長するリンパ管の増殖を包含する。さらに、病原性リンパ管の増殖は、本発明の組成物のIL-17阻害活性に拮抗するまたは阻害活性を減少させる。代替的にまたは追加的に、病原性リンパ管の増殖は、IL-17媒介性眼疾患の症状発現前、症状発現と同時、または症状発現後に起こる。病原性リンパ管の増殖とは、リンパ管が角膜組織の内部で拡大できるもしくは内部に侵入できることを含むか、あるいは、角膜組織内部もしくは非角膜組織(隣接する辺縁などの)から角膜組織へのいずれかでのリンパ管の潜在的および/または実際の増殖、拡大、産生、分裂、またはリモデリングを説明するものである。代替的にまたは追加的に、病原性リンパ管の増殖は、免疫細胞の輸送を容認または誘導するが、輸送とは、角膜組織と、非角膜組織、好ましくはリンパ節またはリンパ系区画における他の部位とのあいだの免疫細胞の単方向性または双方向性の運動または沈着を包含する。例示的な免疫細胞には、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0049】
本発明はまた、以下の段階を含む、それを必要とする対象における角膜神経損傷を低減させるための方法を提供する:(a)角膜神経損傷を有する対象を同定する段階、および(b)炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象の角膜に局所投与して、それによって、角膜神経再生を向上させ、神経形態異常の発生を低減させ、かつ角膜神経損傷を低減させる段階。
【0050】
上記の方法の一定の態様において、対象は、先天性の欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。代替的にまたは追加的に、対象は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状ヘルペス角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩または頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正技法、光学的角膜屈折矯正手術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(laser in situ keratomileusis;LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼障害、非眼科的技法、末梢神経障害、または糖尿病性神経障害に起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。
【0051】
本発明は、以下の段階を含む、それを必要とする対象における角膜神経損傷を予防するための方法を提供する:(a)角膜神経損傷を受けるリスクを有する対象を同定する段階;および(b)角膜神経損傷を受ける前に炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象の角膜に局所投与して、それによって神経変性を減少させ、神経形態異常の発生を低減させ、かつ角膜神経損傷を予防する段階。
【0052】
たとえば、対象は、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる角膜損傷または喪失を受けるリスクを有すると同定される。代替的にまたは追加的に、対象は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状ヘルペス角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩または頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正技法、光学的角膜屈折矯正手術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼障害、非眼科的技法、末梢神経障害、または糖尿病性神経障害に起因しうる角膜神経損傷または喪失を受けるリスクを有すると同定される。
【0053】
上記の方法はさらに、角膜神経損傷または喪失の徴候または症状を有する対象を同定する段階を含む。たとえば、角膜神経損傷または喪失の徴候は、角膜神経支配もしくは知覚の低下、角膜を神経支配する神経線維もしくは神経束の数の低下、角膜を支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経成長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射(tearing reflex)、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行性、ビーズ様神経形成の増加、神経線維束の薄化、または神経線維束の肥厚化である。たとえば、角膜神経損傷または喪失の徴候は、異常な涙液産生または涙液乾燥、異常な瞬き、および焦点を合わせることが難しいもしくはできないこと、視力の減少もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である。
【0054】
角膜損傷または異常な神経形態の徴候または症状は、中心角膜のインビボ共焦点顕微鏡(IVCM)または角膜神経損傷を検出することができる他の撮像もしくは診断装置を用いて検出、分析、検査、および評価される。IVCMに関する例示的な装置には、Heidelberg Retina Tomograph 3 with the Rostock Cornea Module(HRT3/RCM)(Heidelberg Engineering GMBH)およびConfoscan 4 Confocal Microscope(Nidek, Inc.)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。上記の方法の一定の態様において、IVCMは様々な角膜層における神経線維の型および数を検出、分析、検査、および評価するためのみならず、平行に走る、二叉する、分岐する、および相互接続する神経線維束を識別するために用いられる。代替的にまたは追加的に、IVCMは、神経の総数、神経の長さの変化、神経密度、異常な神経発芽の有無、異常な神経線維蛇行の有無、ビーズ様神経形成の数または形態の変化、および神経線維束の肥厚化に対する薄化を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。本発明の方法の1つの局面において、IVCMは神経再生を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。代替的にまたは追加的に、IVCMは神経変性を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。例として、IVCMは、健康な個体における基底下領域内の画像あたりの代表値6〜8個の角膜神経束を示すために、および光受容器角膜切除の結果として神経損傷を経験した患者における神経再生を示すために用いられている。
【0055】
一定の好ましい態様において、上記の方法は、角膜組織について行われる。
【0056】
刊行物、米国特許および出願、Genbank/NCBIアクセッション番号、および本明細書において引用された他の全ての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
(表1)本発明に含まれるmRNA、そのヒト標的遺伝子、アミノ酸配列、およびその配列番号の要約である。
【図1】正常なマウスと比較したDESを有するマウスの流入領域リンパ節におけるIL-17産生CD4+ T細胞の頻度の増加を証明するフローサイトメトリードットを描写する一連のグラフである(p=0.03)。
【図2】正常対DESマウスにおけるIL-17発現の変化倍率を示すグラフである。DESを有するマウスの結膜は、正常マウスの結膜と比較しておよそ2.5〜3倍のIL-17 mRNA量増加を示す。
【図3】図3A〜BはIL-17RAが正常マウスのみならずDESマウスの双方の(A)角膜および(B)結膜の上皮において構成的に発現されることを示す、1対の免疫蛍光写真である。
【図4A】図4B、4Cおよび4Dの実験設計の概略図である。
【図4B】対照またはIL-17 Ab処置角膜の1〜5日目でのCFSスコアを示すグラフである。対照抗体で処置したマウスと比較して抗IL-17抗体によって処置したマウスにおいて、疾患の誘導相のみならず進行相の際に、DES-臨床スコアにおいて50%を上回る低下が観察された。
【図4C】対照抗体処置群の流入領域リンパ節と比較して抗IL-17抗体処置群の流入領域リンパ節において、IL-17+ CD4+ T細胞の頻度の減少が観察されたことを証明するフローサイトメトリードットを描写する一連のグラフである。
【図4D】正常対IL-17または対照Ab処置群の結膜におけるIL-17 mRNA発現の変化倍率のグラフである。抗IL-17抗体によって処置したマウスの結膜は、対照抗体によって処置したマウスの結膜より少ないIL-17 mRNA発現を示した。
【図5】角膜および結膜の染色を等級付けするためのOxford schemaである(実施例4を参照されたい)。
【図6】眼表面疾患指数(OSDI)の12項目の質問票である。
【図7】CD3刺激プライミングT細胞(ドライアイマウスのLNから単離された)およびTreg(抗IL-17またはアイソタイプ抗体によって処置したマウスのLNから単離された)を用いるインビトロ調節性T細胞(Treg)抑制アッセイの結果を示すグラフである。データは、アイソタイプ抗体処置群から単離されたTregと比較して抗IL-17抗体(i.p.)によって処置したマウスに限ってTregのサプレッサー能が有意に回復することを示している(p=0.029)。異なる群から単離されたTregのサプレッサー能を、100%と設定した正常マウスのTregの抑制能に関連して算出する。データは、抗IL-17治療によって調節性T細胞(Treg)サプレッサー機能が逆転することを示唆している。
【図8A】臨床徴候に対する抗IL-17抗体またはアイソタイプ抗体の局所適用を用いるインビボIL-17遮断の効果を試験するための実験設計の概略図である。
【図8B】4日(ベースライン)から10日の抗IL-17抗体処置、アイソタイプ抗体処置、および無処置群におけるドライアイの主な臨床徴候の読み出しである角膜フルオレセイン染色(CFS)スコアを示すグラフである。
【図8C】異なる群におけるベースラインCFSスコア(4日目)からの10日目でのCFSスコアの変化百分率を示すグラフである。CFSスコアは、アイソタイプ抗体処置および無処置群と比較して抗IL-17抗体処置マウスにおいて有意に低い。
【図9】抗IL-17抗体の局所適用が、結膜(Conj)(左)および流入領域リンパ節(LN)(右)の双方において病原性Th17細胞の頻度を低下させることを示す1対のグラフである。結膜および流入領域リンパ節を、抗IL-17抗体およびアイソタイプ抗体処置マウスから10日目に採収した(図8に示される)。IL-17(Th17細胞)およびFoxp3(Treg細胞)のmRNA発現量を分析するために、リアルタイムPCRを行った。破線は正常な対照におけるmRNA量を表す。
【図10A】抗IL-17抗体の局所適用が、ドライアイ角膜におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子、特にVEGF-Cおよび-Dの分泌低下によってドライアイ誘導性角膜リンパ管を阻害することを示す、一連の顕微鏡写真である。ドライアイ角膜における新しいリンパ管の誘導は、常在性の角膜抗原提示細胞の流入領域リンパ節への遊走を容易にして、これが次に、眼表面に対する適応免疫の発生を誘導する。異なる群におけるリンパ管(LV)および血管(BV)を示す角膜全体標本の代表的な顕微鏡写真。
【図10B】抗IL-17抗体の局所適用が、ドライアイ角膜におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子、特にVEGF-Cおよび-Dの分泌低下によってドライアイ誘導性角膜リンパ管を阻害することを示すグラフである。ドライアイ角膜における新規リンパ管の誘導は、常在性の角膜抗原提示細胞の流入領域リンパ節への遊走を容易にして、これが次に眼表面に対する適応免疫の発生を誘導する。インターロイキン-1(IL1)β、IL1-α、およびリンパ管特異的増殖因子VEGF-CおよびVEGF-D、ならびにその同源の受容体VEGFR-3のmRNA量を示す角膜全体のリアルタイムPCR分析。破線は、正常な対照の角膜におけるmRNA量を表す。
【図11】抗IL-17抗体の局所適用が、角膜におけるCD11b+細胞の正常な表現型を維持することを示す一連の顕微鏡写真および関連する記号表である。異なる群の角膜におけるCD11b染色を示す代表的な顕微鏡写真。抗IL-17抗体処置群の角膜は、正常角膜と同様に、CD11b+細胞の大部分が常在樹状細胞の表現型を有することを示している。しかし、アイソタイプ抗体処置群の角膜は、CD11b+細胞の大部分の表現型が浸潤性の病原性マクロファージ/単球と類似であることを示している。
【図12】抗IL-17抗体の局所適用が角膜神経変性を予防することを示す一連の顕微鏡写真である。異なる群における上皮および上皮下神経(チューブリン-III、赤色)を示す角膜全体の標本の代表的な顕微鏡写真。抗IL17抗体処置群の角膜における神経のパターンは、正常角膜のパターンと類似性を示すが、アイソタイプ抗体処置群の角膜は上皮神経の喪失を示す。
【図13】神経損傷に対する上皮疾患の悪循環の概略の説明である。IL-17は角膜上皮細胞および神経の損傷を媒介する。神経の損傷は次に、上皮細胞の健康にとって必要な栄養因子の提供をより低減させることによって上皮疾患を悪化させうる。これによる炎症レベルの増加およびIL-17過剰発現によって、角膜へのリンパ管浸潤または増殖および免疫細胞の活性化も起こり、それによって免疫細胞が角膜からリンパ系区画に容易にアクセスすることができ、そこで自己免疫が生じて慢性疾患が持続する。
【図14A】図14Bのデータを作製するために行われる実験の概略図である。
【図14B】ヒト-r-IL-17(5 ng/ml)で処置したヒト角膜上皮細胞におけるVEGF-A、VEGF-C、およびVEGF-Dなどのリンパ脈管新生増殖因子のmRNA量の変化倍率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
眼表面の炎症性障害
DESは、主要な眼表面の炎症性障害であるが、他の障害が企図される。例として企図される眼表面の炎症性障害には、全層角膜移植(角膜移植)、角膜新生血管形成、アレルギー、結膜炎、および微生物性結膜炎が含まれるがこれらに限定されるわけではない。企図される障害は、自己免疫機序、骨髄移植、手術(一般的な眼の手術、角膜移植、屈折矯正手術、LASIK)、アレルギー、感染症、外傷、損傷、薬物の使用、涙液膜の異常、コンタクトレンズの使用、新生血管形成、腫瘍の形成または増殖、空中浮遊刺激物質または液体刺激物質に対する曝露、ホルモンの変動、必須脂肪酸の枯渇、および遺伝的素因によって引き起こされうる。
【0059】
ドライアイ症候群(DES)
DESおよび関連疾患は、自己免疫および環境条件のみならず、瞬き回数を減少させる何らかの活動によって引き起こされうる。または、DESおよび関連疾患は、それによって眼の不適切な潤滑が起こる涙液産生の減少または涙液組成の変化によって引き起こされる。コンタクトレンズの使用、眼の手術、および眼の損傷はDESを引き起こしうる。最後に、DESは、加齢およびホルモンの変化の結果として起こることが多い。
【0060】
ドライアイは、不快感、視覚障害、および涙液膜の不安定性の症状を生じる涙液および眼表面の多因性疾患であり、それによって眼表面に損傷が起こる可能性がある。これは涙液膜の浸透圧の増加および眼表面の炎症を伴う(ドライアイにおける臨床試験に関するemp MA. Report of the National Eye Institute/Industry Workshop、CLAO J 1995;21:221-2)。より詳細な定義に関しては、参照により本明細書に組み入れられる、The definition and classification of dry eye disease: report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye Workshop. Ocular Surface. 2007 Apr;5(2):75-92を参照されたい。治療法は、少なくとも1つの上記徴候または症状の重症度を抑えるまたは低下させるものである。
【0061】
DESの同義語および関連疾患には、乾性角結膜炎(KCS)、シェーグレン症候群(SS)、シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、非シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼球乾燥症、涙液膜障害、涙液産生減少、水性涙液欠乏(ATD)、マイボーム腺機能障害、および蒸発による喪失が含まれるがこれらに限定されるわけではない。対象は、眼の乾燥、引掻くような痛み、刺すような痛み、痒み、焼けるような痛み、刺激、痛み、発赤、炎症、分泌物、および過剰な流涙からなる群より選択される徴候または症状を検出することによって、DESまたは関連障害に罹っているとして同定される。または、対象は、その涙液組成が眼組織の正しい潤滑にとって不十分である場合にDESまたは関連障害に罹っていると同定される。治療法は、少なくとも1つの上記徴候または症状の重症度を抑えるまたは低下させるものである。
【0062】
Th17細胞
Tリンパ球は細胞性免疫において中心的な役割を果たす、循環中の小さな白血球である。エフェクターT細胞としても知られるTヘルパー細胞(Th)は、Tリンパ球の1つのサブグループである。Th17細胞は、インターロイキン-17(IL-17)を産生し、自己免疫状態に関与することが示されている、最近同定されたTヘルパー細胞集団である。重要なことに、これらの細胞はこれまで、DESに関係するとみなされていなかった。
【0063】
IL-17媒介性眼表面炎症の判定
眼表面の炎症の発生および重症度を判定するために用いられる例示的な試験には、以下が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0064】
眼表面疾患指数(OSDI)
眼表面疾患指数(OSDI)は、DESを含む眼表面の炎症性障害に一致する眼の刺激の症状および視覚関連機能に及ぼすその影響の迅速な査定を提供する12項目の質問票である(図6)。OSDI質問票の12項目は、0から4までの尺度で等級付けされ、0は全くない;1はときどきある;2は多少ある;3はほとんど常にある;および4は常にあることを示す。次に全OSDIスコアを以下の式に基づいて算出する:OSDI=[(回答があった全ての質問に関するスコアの合計)×100]/[(質問回答総数)×4]。このように、OSDIは0から100までの尺度で採点され、スコアが高くなるほど、より大きな障害を表す。ベースラインからの負の変化は、視覚関連機能および本明細書において記述される眼の炎症性障害の改善を示している。本明細書において記述される治療法に関して、処置は、OSDIのベースラインからの平均変化(減少)が対照と比較して>10単位で示される場合、対照(ビヒクル)より有効であると見なされる。
【0065】
治療的処置は、眼表面疾患指数(OSDI)に関する代表値スコア(0〜100)のベースラインからの平均変化がビヒクルより>10単位良好であると示される場合に、ビヒクルより有効であると見なされる。
【0066】
角膜および結膜の染色
角膜染色は、中でもDESなどの眼表面の炎症性障害の場合に典型的に認められる上皮疾患の評価基準であるか、または眼表面の上皮障壁の破壊の評価基準である。重要なことに、後部眼瞼炎などの有意な眼瞼疾患が存在する場合、角膜染色は臨床的に明白なドライアイがなくても存在しうる。角膜染色は、全てではないが多くの患者において眼の不快感に高度に相関しており;一般的に角膜染色は、先に記述したようにOSDIの高いスコアに関連している。角膜フルオレセイン染色のために、生理食塩液で湿らせたフルオレセイン小片または1%フルオレセインナトリウム溶液を用いて涙液膜を染色する。次に角膜全体を、黄色の障壁フィルター(#12 Wratten)とコバルトブルーの照射による細隙灯評価を用いて検査する(染色は、黄色のフィルターを用いて認められた場合に、より強度である)。染色をOxford Schema(図5)に従って等級付けする。
【0067】
結膜染色は、中でもDESなどの眼表面の炎症性障害の場合に典型的に認められる、上皮疾患または眼表面の上皮障壁の破壊の評価基準である。重要なことに、結膜染色は、角膜染色と同様に、後部眼瞼炎などの有意な眼瞼疾患が存在する場合、臨床的に明確なドライアイがなくても存在しうる。結膜染色はまた、先に記述された眼の刺激感の症状および高いOSDIスコアと相関しうる。結膜染色は、リサミングリーンを用いて細隙灯下で行う。生理食塩液に湿らせた小片または1%リサミングリーン溶液を用いて涙液膜を染色して、瞼板間結膜染色を、30秒間後を超えるが2分後未満に、評価する。中等度の強度の白色光を用いて、鼻側および側頭側の結膜染色の瞼板間領域のみをOxford Schema(図5)を用いて等級付けする。本明細書において記述した処置は、ビヒクル単独を用いて観察されたスコアを超えた眼の染色スコアの減少をもたらす。
【0068】
治療的処置は、角膜および結膜の染色に関する代表値スコア(0〜5の尺度)のベースラインからの平均変化が、たとえばOxford Schemaを用いて検出した場合にビヒクルより>1単位良好であることによって示される場合に、ビヒクルより有効であると見なされる。
【0069】
シルマー試験
シルマー試験は、細い濾紙片(Whatman #41濾紙の5×35 mm片)を下結膜嚢に置くことによって麻酔の存在下および非存在下で行われる。この試験は、かすかな光の部屋で行われる。患者は軽く眼を閉じて、5分が経過すると小片を取り出す。眼から取り出した後も涙液の先端は数ミリメートル進行し続けることから、正確に5分で涙液の先端にボールペンで印をつける。水性涙液産生を、小片が5分間のあいだに湿った長さ(ミリメートル)によって測定する。非麻酔下でのシルマー試験に関しては10 mmまたはそれ未満、および麻酔下でのシルマー試験に関しては5 mmまたはそれ未満という結果が、異常であると見なされる。ベースラインからの正の変化は、本明細書に記載された眼の炎症性障害の1つまたは複数の症状の改善を示している。
【0070】
結膜充血
眼球結膜充血は以下のように等級付けされる:
なし(0) :なし
軽度(1) :軽度の充血の局在
中等度(2) :ピンク色、瞼板または眼球結膜に限定
重度(3) :瞼板および/または眼球結膜の赤み
非常に重度(4):瞼板および/または眼球結膜の顕著な暗色の赤み
瞼板の乳頭状肥大の有無も記入する。
【0071】
インプレッションサイトロジー
濾紙または他の収集装置を用いて、IL-17サイトカイン、IL-17受容体、および/またはTh17細胞の存在および/または量に関して試験される眼表面、涙管、またはマイボーム腺から細胞および液体試料を採取する。IL-17サイトカインまたはIL-17受容体に関連するRNA、DNA、またはタンパク質の存在および/または量を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、ゲル電気泳動、プローブハイブリダイゼーション、抗体検出、インサイチューハイブリダイゼーション、ウェスタンブロット、ノザンブロット、サザンブロット、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫沈降、遺伝子チップ分析、タンパク質チップ分析、細胞培養法、および細胞ソーティングが含まれるがこれらに限定されるわけではない標準的な方法によって決定する(参照により本明細書に組み入れられる、Gulati A, Saccheti M, Bonini S, Dana R. Chemokine Receptor CCR5 Expression in Conjunctival Epithelium of Patients with Dry Eye Syndrome. Arch Ophthalmol 2006;124:710-716;Argueso P, Balaram M, Spurr-Michaud S, Keutmann HT, Dana MR, Gipson IK. Decreased levels of goblet cell mucin MUC5AC in tears of Sjogren's syndrome patients. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002;43:1004-1011. Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)を参照されたい)。
【0072】
角膜構造
角膜は、虹彩、瞳孔、および前眼房を覆う眼の透明な前面部分である。水晶体と共に、角膜が光を屈折して、その結果、眼が焦点を合わせるのを支援し、これは眼の全体的な屈折力のおよそ3分の2を説明するものである。角膜は、接触、温度、および化学物質に感受性の無髄神経終末を有し;角膜に触れると眼瞼を閉じるように不随意反射を引き起こす。透明性が最も重要であることから、角膜は血管を有さず;角膜は、外部での涙液および内部での房水の拡散によって、かつまた角膜を神経支配する神経線維により供給される神経栄養の拡散によって、栄養を受けとる。ヒトにおいて、角膜は直径約11.5 mmならびに中心部で0.5〜0.6 mmおよび辺縁部で0.6〜0.8 mmの厚さを有する。
【0073】
透明性、無血管性、非常に未成熟な常在免疫細胞の存在、および免疫学的特権により、角膜は独自の組織となっている。免疫上の特権とは、炎症性免疫応答を誘発することなく抗原の導入を認容することができる、体内の特定部位を説明するものである。角膜は血液供給を有しないが、むしろ角膜は空気およびそれが浴する涙液を通して酸素を直接得る。ヒトの角膜は、他の霊長類の角膜と同様に、5層を有する。前方から後方に、それらは角膜上皮、ボーマン層、角膜間質、デスメー膜、および角膜内皮である。角膜上皮は、涙液によって湿った状態で維持される連続的に再生する細胞の層状の鱗状上皮である、薄い上皮多細胞組織層である。角膜上皮の不規則性または浮腫によって、眼の全屈折力の最も重要な構成要素である空気-涙液膜界面のなめらかさが破壊され、それによって視力が低下する。前境界膜としても知られるボーマン層は、厚さが約8〜14ミクロンの、角膜間質を保護する不規則に並んだコラーゲンの濃縮層である。固有層としても知られる角膜間質は、ケラチノサイトがまばらに存在する規則的に整列したコラーゲン線維からなる厚い透明な中間層である。角膜間質は、およそ200層のI型コラーゲン細線維からなる。角膜の厚さの90%は間質からなる。後境界膜としても知られるデスメー膜は、角膜内皮の改変基底膜として役立つ薄い無細胞層である。角膜内皮は、水層と角膜間質区画のあいだの液体および溶質の輸送の調節を担う、ミトコンドリアに富む細胞の単純な鱗状のまたは低い立方体様の単層である。角膜内皮は、血液でもリンパ液でもなく房水に浴されて、血管内皮とは非常に異なる起源、機能、および外観を有する。角膜上皮とは異なり、内皮の細胞は再生しない。代わりに、角膜内皮細胞は拡大または伸展して死細胞を代償するが、このことは内皮の全体的な細胞密度を低下させて、液体調節に影響を及ぼす。
【0074】
角膜は、体の最も感受性が高い組織の1つであり、これは70〜80個の長短の毛様体神経のために三叉神経眼分岐による知覚神経線維によって密に神経支配されている。神経は、強膜、上強膜、および結膜という3つのレベルを介して角膜に入る。神経束のほとんどはさらに分裂して、間質のネットワークを形成し、そこから線維は角膜の異なる領域を供給する。例示的な3つのネットワークは、間質中央、上皮下/ボーマン層、および上皮である。上皮下層の角膜神経は、角膜の頂部付近で集束して終止する。
【0075】
角膜神経支配
角膜は、体における最も密度の高い神経支配組織の1つであり、異なるタイプの神経線維が豊富に供給されている。ウサギの試験から、角膜上皮の神経密度は、皮膚の神経密度の約300〜600倍および歯髄の神経密度の20〜40倍であることが判明した。ヒト角膜上皮にはおよそ7000個/mm2の知覚受容体が存在すると推定され、これにより、痛みの認識を生じるためには個々の上皮細胞に対する損傷でも適当でありうることが暗示される(Exp Eye Res 2003;76:521-42)。
【0076】
大部分の角膜神経線維は知覚神経起源であり、三叉神経眼分岐に由来する。神経束は末梢の間質中央の角膜に、角膜表面に対して平行に放射状に入る。角膜内に入った直後に、主要な間質神経束は繰り返しかつ二叉に分岐してより小さな束となり、間質の連続的により表層性となる層へと上る。最終的に間質神経線維は急に90°曲がり、ボーマン層を貫通して、角膜表面に向かって進行する。ボーマン層を貫通した後、神経束は分裂して、ボーマン層と基底上皮のあいだの角膜表面に平行に走り、基底下神経叢を形成する。基底下上皮神経叢における神経の密度および数は、残りの角膜層における神経の密度および数より有意に大きい。基底下線維はその後分岐を形成して、これは上向きに曲がって基底細胞のあいだの角膜上皮に入って、翼状細胞に達し、ここで終止する(Invest Ophthalmol Vis Sci 1996;37:476-88)。
【0077】
角膜神経線維は、知覚を媒介するのみならず、角膜上皮において重要な栄養的影響を発揮して、健康な眼表面の保存に対して極めて重要な役割を果たす。角膜の知覚は、瞬目反射および流涙反射を通して損傷を予防するための重要な機序である。上皮細胞増殖の増強は、角膜神経終末から放出された神経伝達物質および神経成長因子によって媒介される(Acta Ophthalmol Suppl 1989;192:115-34)。角膜神経支配の機能障害は神経栄養性角膜炎として知られる変性状態を生じ、したがってこれにより角膜表面が不顕性損傷に対して易損性となり、確立された角膜上皮損傷の治癒が遅れる。神経栄養性角膜炎のほとんどの臨床症例は、単純ヘルペスまたは帯状ヘルペス角膜炎、真性糖尿病によって引き起こされるか、または眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、もしくは頭蓋内神経疾患に関連する三叉神経損傷によって引き起こされる。角膜知覚の非存在または低下は先天性起源であってもよい。光学的角膜屈折矯正手術(PRK)またはレーザー角膜内切削形成術(LASIK)などの角膜屈折矯正技法は、間質および基底下角膜神経叢を切断して、一過性の軽度から重度の神経栄養性ドライアイを生じうる。
【0078】
無傷の角膜の神経支配はまた、流涙反射にとっても必須である。正常な生理的条件下では、角膜における知覚神経により、求心性刺激シグナルが脳幹へと伝達され、次に、一連の介在ニューロンの後、遠心性シグナルが、涙腺を支配しかつ涙液産生および分泌を駆動する副交感神経および交感神経を介して、涙腺へと伝達される(Ocul Surf 2004;2:76-91)。この神経回路に対する損傷は、涙腺分泌の正常な調節を中断して、ドライアイ疾患を引き起こす。角膜からの神経動因(neural drive)の低減は、2つの様式、すなわち第一に、反射誘導涙液分泌を減少させること、および、瞬目回数を低下させ、その結果蒸発による喪失を増加させることによって;第二に、上皮層に対する栄養因子を減少させることによって、ドライアイ関連性眼表面疾患の発症を助ける。屈折矯正手術および通常の加齢の結果としての眼表面、特に角膜の知覚神経に対する損傷は、涙腺に対する正常な反射弓を妨害し、それによって涙液分泌の減少およびドライアイ症候群が起こりうる。この機序に関する証拠は、角膜屈折矯正手術後にドライアイ症候群がしばしば起こるという臨床での知見に由来する。臨床試験によって、涙液産生および分泌がLASIK手術後に低減することが確認された(Ophthalmology 2001;108:1230-5)。ドライアイにおける涙液の分泌過少によって、角膜神経の病的変化および角膜感受性の低下が起こる可能性があり、これはその後のドライアイ状態を持続させる(Cornea 1996; 15:235-9)。
【0079】
角膜の病理学
ドライアイ、露出性角膜症、および他の眼表面の疾患などの角膜上皮に影響を及ぼす眼疾患は、角膜神経変性を引き起こす。一方、正常な神経動因は、角膜上皮が治癒してその恒常性を維持するための本質的な必要条件である。ゆえに、主な理由としての(屈折矯正手術)、または単に乾燥および他の角膜上皮もしくは眼表面の疾患の転帰としての角膜神経の変化は、角膜上皮の恒常性に対して重大な効果を有し、したがって上皮疾患と神経損傷という悪循環の増加に巧妙に関与する。
【0080】
角膜上皮疾患と角膜神経損傷の関係
ドライアイ、露出性角膜症、および他の眼表面の疾患などの角膜上皮に影響を及ぼす眼疾患は、角膜神経変性を引き起こす。一方、正常な神経動因および機能は、角膜上皮が治癒してその恒常性を維持するための本質的な必要条件である。ゆえに、主な理由としての(屈折矯正手術、ヘルペス性眼疾患、糖尿病、または三叉神経損傷、たとえば第5脳神経損傷によって負った)、または乾燥および他の角膜上皮もしくは眼表面の疾患の二次転帰としての角膜神経損傷は、角膜上皮に対してさらなる損傷を引き起こし、したがって上皮疾患と神経損傷という悪循環の増加に巧妙に関与する。加えて、IL-1および角膜上皮疾患は、角膜においてリンパ管形成を誘導する。これらのリンパ管は、常在性および浸潤性の抗原提示細胞、ならびに他の免疫細胞の遊走、流入領域リンパ節が含まれるリンパ系区画への角膜抗原のドレナージ、ならびに眼表面の適応免疫の誘導にとって非常に重要であり、最終的に持続的で慢性的な眼表面の疾患が起こる(図13を参照されたい)。
【0081】
角膜リンパ管と炎症の関係
正常なヒト角膜はリンパ管を有しない。しかし、角膜上皮疾患などの病的条件下では、IL-17は角膜においてリンパ管形成を誘導する。これらのリンパ管は、常在性および浸潤性の抗原提示細胞、ならびに他の免疫細胞の遊走、流入領域リンパ節が含まれるリンパ系区画への角膜抗原のドレナージ、ならびに眼表面の適応免疫の誘導にとって非常に重要であり、最終的に持続的で慢性的な眼表面の疾患をもたらす(図13を参照されたい)。加えて、角膜リンパ管は、移植における角膜移植片に対する同種異系免疫応答の誘導において重要な役割を果たす。角膜リンパ管が存在することにより、移植の拒絶率が増大する。したがって、角膜リンパ管の治療的阻害は、高リスクおよび低リスクレシピエントの双方において角膜移植物の生存を向上させる可能性がある。
【0082】
インターロイキン-17(IL-17)
インターロイキン-17(IL-17)は、新しいCD4+ T細胞(Th17)系列によって産生される強力な前炎症性サイトカインである。IL-17はIL-17RAおよびIL-17RCで構成されるヘテロマー受容体複合体を通してシグナルを伝達する。IL-17はいくつかの免疫および非免疫細胞に対して多面発現的効果を有し、T細胞活性化と炎症応答のあいだの関連性を提供する。さらに、IL-17は、TNFα、IL1β、またはIL6などの他の前炎症性サイトカインと相加的または相乗的に協調作用して、炎症プロセスの増幅をもたらす。IL-17Aとしても知られるIL-17はまた、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、およびIL-17Fと呼ばれる6個のサイトカインを含むより大きいファミリーの一部である。このファミリーのメンバーは全て共通のタンパク質構造を共有する。これらのファミリーメンバーの中でも、IL-17AおよびIL-17Fは免疫細胞において最も頻繁に発現される。本発明の代替的態様において、これらのファミリーメンバーの1つまたは複数が、その活性を阻害または改変するために、アンタゴニストによって標的化される。
【0083】
本発明は、このタンパク質のIL-17受容体に対する結合能として定義される、ヒトIL-17の活性を阻害または改変する手段を有する組成物を含む。ヒトIL-17機能の阻害剤を含む組成物は、IL-17受容体の活性に拮抗する。組成物は、ヒトIL-17をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変する手段を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、低分子、またはその断片を含む。好ましい態様において、阻害性組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2によって含まれるIL-17の1つまたは複数の領域/断片に結合する。
【0084】
これらの配列および本明細書において提供される他の全ての配列における断片は、全体より小さな全体の一部であるとして定義される。さらに、断片の大きさは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列内での1ヌクレオチドまたは1アミノ酸から、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列全体より1ヌクレオチドまたは1アミノ酸少ない配列までの範囲である。最後に、断片は、先に定義された極値のあいだの中間である、完全なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の任意の一部として定義される。
【0085】
ヒトIL-17は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_002190、またはIL-17AおよびSEQ ID NO:1と呼ばれる)によってコードされる:(本出願に組み入れられる全てのmRNA転写物に関して、コード領域の開始を描写するために、コドン「atg」によってコードされる開始メチオニンを太字および大文字で示す)。

【0086】
ヒトIL-17は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_002190、またはIL-17AおよびSEQ ID NO: 2と呼ばれる)。

【0087】
ヒトIL-17Bは以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_014443およびSEQ ID NO:3)。

【0088】
ヒトIL-17Bは以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_014443およびSEQ ID NO:4)。

【0089】
ヒトIL-17Cは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_013278およびSEQ ID NO:5)。

【0090】
ヒトIL-17Cは、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_013278およびSEQ ID NO:6)。

【0091】
ヒトIL-17Dは以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_138284およびSEQ ID NO:7)。

【0092】
ヒトIL-17Dは以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_138284およびSEQ ID NO:8)。

【0093】
ヒトIL-17Eは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号AF305200およびSEQ ID NO:9)。

【0094】
ヒトIL-17Eは、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号AF305200およびSEQ ID NO:10)。

【0095】
ヒトIL-17Fは、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_052872およびSEQ ID NO:11)。

【0096】
ヒトIL-17Fは、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_052872およびSEQ ID NO:12)。

【0097】
インターロイキン-17受容体:
本発明の組成物は、IL-17受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変する手段を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、低分子、またはその断片を含む。1つの企図されるIL-17ヘテロマー受容体複合体は、IL-17RAおよびIL-17RCを含む。本発明の組成物は、この受容体複合体のエレメント、IL-17RAまたはIL-17RCのいずれかに標的化される化合物を含む。IL-17RCは、転写物1〜3からなる3つの異なる型で存在する。しかし、追加のIL-17受容体が企図される。代わりの態様において、IL-17RB、IL-17RD、およびIL-17REは、IL-17機能のアンタゴニストによって単独でまたは併用して標的化される。本発明は、IL-17受容体IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REの1つまたは複数のアンタゴニストを含む。
【0098】
IL-17RAは以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_014339およびSEQ ID NO:13)。

【0099】
IL-17RAは、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_14339およびSEQ ID NO:14)。

【0100】
IL-17RBは以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_018725およびSEQ ID NO:15)。

【0101】
IL-17RBは、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_018725およびSEQ ID NO:16)。

【0102】
IL-17RCの転写物変種1は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153461およびSEQ ID NO:17)。

【0103】
IL-17RCの転写物変種1は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153461およびSEQ ID NO:18)。

【0104】
IL-17RCの転写物変種2は以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153460およびSEQ ID NO:19)。

【0105】
IL-17RCの転写物変種2は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153460およびSEQ ID NO:20)。

【0106】
IL-17RCの転写物変種3は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_032732およびSEQ ID NO:21)。

【0107】
IL-17RCの転写物変種3は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_032732およびSEQ ID NO:22)。

【0108】
IL-17RDの転写物1は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_001080973およびSEQ ID NO:23)。



【0109】
IL-17RDの転写物1は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_001080973およびSEQ ID NO:24)。

【0110】
IL-17RDの転写物2は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_017563およびSEQ ID NO:25、この配列はヌクレオチド208〜210位からの代わりの開始コドンを含有することに注意されたい)。



【0111】
IL-17RDの転写物2は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_017563、およびSEQ ID NO:26)。

【0112】
IL-17REの転写物変種1は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153480およびSEQ ID NO:27)。

【0113】
IL-17REの転写物変種1は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153480およびSEQ ID NO:28)。

【0114】
IL-17REの転写物変種2は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153481およびSEQ ID NO:29)。

【0115】
IL-17REの転写物変種2は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153481およびSEQ ID NO:30)。

【0116】
IL-17REの転写物変種5は、以下のmRNA配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153483およびSEQ ID NO:31)。

【0117】
IL-17REの転写物変種5は、以下のアミノ酸配列によってコードされる(NCBIアクセッション番号NM_153483およびSEQ ID NO:32)。

【0118】
マイクロRNAによる発現の沈黙化
本発明は、マイクロRNA(miRNA)分子を適切な薬学的担体と共に眼組織または付属器組織に送達することによって、IL-17またはIL-17Rの活性を阻害する手段を有する組成物を含む。IL-17またはIL-17Rのいずれかに標的化されるmiRNAを含む組成物は、IL-17R機能に拮抗する。組成物は、IL-17またはIL-17Rの1つまたは複数の領域に結合する1つまたは複数のmiRNAを含む。以下の表は、ヒトIL-17またはIL-17Rの発現を部分的または完全に沈黙化することが示されている例示的なmiRNAを含有する。
【0119】
(表1)miRNA、そのヒト標的遺伝子、ヌクレオチド配列、およびその配列番号の要約

【0120】
薬学的に適切な担体
眼組織または付属器組織への局所組成物の経皮送達を容易にしかつ促進するために組み入れられる例示的な化合物には、アルコール(エタノール、プロパノール、およびノナノール)、脂肪アルコール(ラウリルアルコール)、脂肪酸(吉草酸、カプロン酸、およびカプリン酸)、脂肪酸エステル(イソプロピルミリステートおよびイソプロピルn-ヘキサノエート)、アルキルエステル(酢酸エチルおよび酢酸ブチル)、ポリオール(プロピレングリコール、プロパンジオン、およびヘキサントリオール)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシド)、アミド(ウレア、ジメチルアセトアミド、およびピロリドン誘導体)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポロキサマー、span、tween、胆汁酸塩およびレシチン)、テルペン(d-リモネン、α-テルペノール、1,8-シネオール、およびメントン)、およびアルカノン(N-ヘプタンおよびN-ノナン)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。さらに、局所投与される組成物は、カドヘリンアンタゴニスト、セレクチンアンタゴニスト、およびインテグリンアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない表面接着分子改変物質を含む。
【0121】
任意で、組成物はさらに、生理学的に許容される塩、カーボポールを有するポロキサマー類似体、カーボポール/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カーボポール-メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物を含有する。
【0122】
コンタクトレンズによる薬物送達
本発明は、コンタクトレンズおよび炎症性のインターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を含む。たとえば組成物は、レンズ内に組み入れられるか、またはレンズ上にコーティングされる。組成物は、コンタクトレンズポリマーに化学的に結合するか、または物理的に捕捉される。または、着色添加剤の強度の変化によってポリマー内に結合または捕捉されたままである治療薬組成物の量または用量の変化が示されるように、治療薬組成物と同じ速度で放出される着色添加剤を、ポリマー組成物に化学的に結合させるかまたは物理的に捕捉させる。代替的にまたは追加的に、紫外線(UV)吸収剤をコンタクトレンズポリマーに化学的に結合させるか、または物理的に捕捉させる。コンタクトレンズは疎水性または親水性のいずれかである。
【0123】
本発明の組成物を送達する手段を有する疎水性レンズを加工するために用いられる例示的な材料には、アメフォコンA、アムシルフォコンA、アキラフォコンA、アルフォコンA、カブフォコンA、カブフォコンB、カルボシルフォコンA、クリルフォコンA、クリルフォコンB、ジメフォコンA、エンフルフォコンA、エンフロフォコンB、エリフォコンA、フルロフォコンA、フルシルフォコンA、フルシルフォコンB、フルシルフォコンC、フルシルフォコンD、フルシルフォコンE、ヘキサフォコンA、ホフォコンA、ヒブフォコンA、イタビスフルオロフォコンA、イタフルオロフォコンA、イタフォコンA、イタフォコンB、コルフォコンA、コルフォコンB、コルフォコンC、コルフォコンD、ロチフォコンA、ロチフォコンB、ロチフォコンC、メラフォコンA、ミガフォコンA、ネフォコンA、ネフォコンB、ネフォコンC、オンシフォコンA、オプリフォコンA、オキシフルフロコンA、パフルフォコンB、パフルフォコンC、パフルフォコンD、パフルフォコンE、パフルフォコンF、パシフォコンA、パシフォコンB、パシフォコンC、パシフォコンD、パシフォコンE、ペムフォコンA、ポロフォコンA、ポロフォコンB、ロフルフォコンA、ロフルフォコンB、ロフルフォコンC、ロフルフォコンD、ロフルフォコンE、ロシルフォコンA、サタフォコンA、シフルフォコンA、シラフォコンA、ステラフォコンA、スルフォコンA、スルフォコンB、テラフォコンA、チシルフォコンA、トロフォコンA、トリフォコンA、ユニフォコンA、ビナフォコンA、およびウィロフォコンAが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0124】
本発明の組成物を送達する手段を有する親水性レンズを加工するために用いられる例示的な材料には、アバフィルコンA、アコフィルコンA、アコフィルコンB、アクアフィルコンA、アロフィルコンA、アルファフィルコンA、アムフィルコンA、アスチフィルコンA、アトラフィルコンA、バラフィルコンA、ビスフィルコンA、ブフィルコンA、コムフィルコンA、クロフィルコンA、シクロフィルコンA、ダルフィルコンA、デルタフィルコンA、デルタフィルコンB、ジメフィルコンA、ドロクスフィルコンA、エラストフィルコンA、イプシルフィルコンA、エステリフィルコンA、エタフィルコンA、フォコフィルコンA、ガリフィルコンA、ゲンフィルコンA、ゴバフィルコンA、ヘフィルコンA、ヘフィルコンB、ヘフィルコンC、ヒラフィルコンA、ヒラフィルコンB、ヒオキシフィルコンA、ヒオキシフィルコンB、ヒオキシフィルコンC、ヒドロフィルコンA、レネフィルコンA、リクリフィルコンA、リクリフィルコンB、リドフィルコンA、リドフィルコンB、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、マフィルコンA、メサフィルコンA、メタフィルコンB、ミパフィルコンA、ネルフィルコンA、ネトラフィルコンA、オクフィルコンA、オクフィルコンB、C、オクフィルコンD、オクフィルコンE、オフィルコンA、オマフィルコンA、オキシフィルコンA、ペンタフィルコンA、ペルフィルコンA、ペバフィルコンA、フェムフィルコンA、ポリマコン、セノフィルコンA、シラフィルコンA、シロキシフィルコンA、スルフィルコンA、テフィルコンA、テトラフィルコンA、トリフィルコンA、ビフィルコンA、ビフィルコンB、およびキシロフィルコンAが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0125】
抗体組成物
特許請求される本発明の組成物は、少なくとも1つの抗体を含む。この抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。特許請求される抗体は、細胞内または細胞外のIL-17サイトカインまたはIL-17受容体、好ましくはIL-17AもしくはFサイトカインまたはIL-17RAもしくはIL-17RC受容体を標的とする。この抗体は、IL-17サイトカインまたはIL-17受容体の少なくとも1つの細胞内もしくは細胞外の配列またはエピトープに結合する。一定の態様において、特許請求される抗体は、一本鎖抗体である。または、抗体はヒト化抗体、組み換え抗体、またはキメラ抗体である。この抗体は任意で、インビトロまたはインビボ使用のために設計された市販の抗体に由来する。特許請求される抗体は、IL-17サイトカインまたはIL-17受容体の活性を阻害または改変する1つまたは複数の化合物に直接または間接的に結合する。または特許請求される抗体は、細胞内抗体またはイントラボディである。
【0126】
特許請求される抗体は、IL-17サイトカインの1つまたは複数の領域に結合する。特許請求される抗体が結合する例示的な領域には、細胞内ドメイン、細胞外ドメイン、触媒ドメイン、タンパク質結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、足場ドメイン、シグナルペプチド、未成熟サイトカインのドメイン、前駆体ドメイン、フィブロネクチンドメイン、リンカー領域、調節ドメイン、オリゴマー形成ドメイン、またはシグナル伝達ドメインが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0127】
実施例1:DESのマウスモデルにおけるCD4+ IL-17+ T細胞の量
スコポラミンを皮下注射しかつ制御環境のチャンバーに入れることにより、マウスにおいてドライアイ症候群(DES)を誘導した。DESの誘導および潜伏期間の後、流入領域リンパ節におけるCD4+ IL-17+ T細胞の量をフローサイトメトリーを用いて測定した。実施例1〜4に関して、用いたモノクローナル抗マウスIL-17抗体は、R&D Systems, Inc.(クローン:50104、カタログ番号MAB421)から得た。図1は、DESを有するマウスの流入領域リンパ節におけるIL-17産生CD4+ T細胞の量が健康な対照の量と比較して増加していることを示している。
【0128】
実施例2:DESマウスの結膜におけるIL-17 mRNA発現
DES対正常マウスの結膜において発現されたIL-17 mRNA転写物を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて定量した。結膜は、眼の外部表面を覆う薄く透明な組織である。この構造は角膜の外端で始まり、強膜の可視部分を覆い、眼瞼の内部を裏打ちする。DESマウスは、図2において示されるように、健康な対照と比較して、この構造におけるIL-17 mRNA転写物の量が3倍増加したことを実証した。
【0129】
実施例3:眼表面におけるIL-17RA発現
眼表面上のIL-17受容体発現を、免疫蛍光顕微鏡を用いて分析した。DESマウスの結膜におけるIL-17mRNAの劇的なアップレギュレーションとは対照的に、図3は、IL-17RAタンパク質が、DESおよび対照群の双方の角膜のみならず結膜上皮においても構成的に発現されたことを示している。
【0130】
実施例4:DESマウスにおけるIL-17のインビボ遮断
抗IL-17中和抗体を健常およびDESマウスの腹腔内に注射し、IL-17活性の遮断がDESの誘導および進行の双方に及ぼす効果を判定した。結果は、対照抗体処置群と比較した抗IL-17抗体処置群において、疾患の誘導期のみならず進行期の際もDESの臨床徴候の強度(角膜フルオレセイン染色(CFS)等級付けによって測定)の有意な低下を示した(図4、パネルaおよびbにおいて示される)。さらに、抗IL-17抗体処置群のリンパ節および結膜はそれぞれ、対照抗体処置群と比較してTh17細胞量およびIL-17 mRNAの発現の低下を示した(図4、パネルcおよびdにおいて示される)。
【0131】
図5は、本実施例において臨床重症度を採点するために用いられる角膜および結膜の染色を等級付けするためのOxford schemaを示す。
【0132】
実施例5:抗IL-17治療による調節性T細胞(Treg)サプレッサー機能の回復
CD3刺激プライミングT細胞(ドライアイマウスのLNから単離)およびTreg(抗IL-17またはアイソタイプ抗体によって処置したマウスのLNから単離)を用いるインビトロTreg抑制アッセイは、アイソタイプ抗体処置群から単離された細胞と比較して、抗IL-17抗体(i.p.)によって処置したマウスに限ってTregのサプレッサー能が有意に回復することを示す(p=0.029)。異なる群から単離されたTregのサプレッサー能は、100%として見なされる正常マウスのTregの抑制能に対して算出される(図7)。
【0133】
ドライアイ疾患では、Treg抑制の約50%が有意に機能的に失われている。抗IL-17抗体処置は、Treg機能を促進して、Treg媒介性免疫抑制を回復および/または増強する。
【0134】
実施例6:ドライアイ疾患を改善する、抗IL-17抗体の局所適用
図8Aは、抗IL-17抗体またはアイソタイプ抗体の局所適用を用いたインビボIL-17遮断が臨床徴候に及ぼす効果を試験するための実験設計の概略図を示す。CFSは、アイソタイプ抗体処置および無処置群と比較して、抗IL-17抗体処置マウスにおいて有意に低い(図8Bおよび8C)。
【0135】
実施例7:結膜および流入領域リンパ節の双方における病原性Th17細胞の頻度を低下させる、抗IL-17抗体の局所適用
結膜および流入領域リンパ節を、抗IL-17抗体処置マウスおよびアイソタイプ抗体処置マウスから10日目に採収した(図8に示す)。リアルタイムPCRを行ってIL-17(Th17細胞)およびFoxp3(Treg細胞)のmRNA発現量を分析した。図9Aおよび9Bは、抗IL-17抗体による処置が結膜およびリンパ節のTh17細胞におけるIL-17の発現を特異的に減少させることを示す。
【0136】
実施例8:ドライアイ角膜におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子、特にVEGF-CおよびDの分泌低下によってドライアイ誘導性角膜リンパ管を阻害する、抗IL-17抗体の局所適用
ドライアイ角膜における新しいリンパ管の誘導により、流入領域リンパ節への常在性の角膜抗原提示細胞の遊走が促進され、これが次に、眼表面への適応免疫の発生を誘導する。無処置および対照Ab処置のドライアイ群は、正常角膜と比較して、角膜へのリンパ管の浸潤を示す(図10A)。抗IL-17抗体による処置により、角膜へのリンパ管の浸潤は減少する(図10A)。抗IL-17抗体処置は、VEGF-C、VEGF-D、およびVEGFR-3などの公知の脈管新生分子のmRNA発現を減少させる(図10B)。
【0137】
実施例9:角膜におけるCD11b+細胞の正常な表現型を維持する、抗IL-17抗体の局所適用
抗IL-17抗体処置群の角膜は、正常角膜と同様に、CD11b+細胞の大部分が常在樹状細胞の表現型を有することを示している。しかし、アイソタイプ抗体処置群の角膜は、CD11b+細胞の大部分の表現型が浸潤性の病原性マクロファージ/単球と類似であることを示している(図11)。
【0138】
実施例10:角膜神経変性を防止する、抗IL-17抗体の局所適用
図12は、異なる群における上皮および上皮下神経(チューブリン-III、赤色)を描写する角膜全体の標本の代表的な顕微鏡写真を示す。抗IL-17抗体処置群の角膜における神経パターンは、正常角膜における神経パターンと類似性を示すが、アイソタイプ抗体処置群の角膜は上皮神経の喪失を示す。
【0139】
実施例11:リンパ脈管新生特異的増殖因子の分泌の増加によりIL-17サイトカインに応答する、ヒト角膜上皮細胞
ドライアイマウス(図4において示す)の角膜におけるIL-17媒介性リンパ脈管新生の機序を詳細に説明するために、およびIL-17がヒト角膜に対して類似の効果を有することを確実にするために、初代培養ヒト角膜上皮細胞をIL-17の存在下で24時間培養して、異なるVEGF種の遺伝子発現量を正常な無処置細胞と比較した(図14A)。リアルタイムPCR分析は、IL-17処置ヒト角膜上皮細胞が、無処置細胞よりも多い量でリンパ脈管新生特異的増殖因子、特にVEGF-D(4倍)およびVEGF-C(1.8倍)を発現することを示している(図14B)。
【0140】
実施例12:角膜神経再生を向上させる、抗IL-17抗体の局所適用
抗IL-17抗体処置を、実施例10のアイソタイプ抗体処置群または無処置群のマウスに適用する。角膜を実施例10に関して先に記述したように処置する。抗IL-17抗体処置は神経再生を向上させ、その結果、損傷を受けた角膜に関連する神経線維の量は、無処置またはアイソタイプ処置角膜と比較して増加する。
【0141】
他の態様
本発明は、その詳細な説明に関連して記述してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明することを意図しており、制限を意図するものではない。他の局面、長所、および改変は添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0142】
本明細書において参照された特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書において引用された全ての米国特許および公表または非公表の米国特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された公表された外国の特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されたアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された他の全ての公表された参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0143】
本発明は、その好ましい態様を参照して詳細に示し、記述してきたが、型および詳細において様々な改変を生じてもよく、それらも添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲に含まれることは、当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象の眼に局所投与する段階を含む、IL-17媒介性眼表面炎症性障害の重症度を低下させるための方法。
【請求項2】
IL-17媒介性眼表面炎症性障害が、全層角膜移植、角膜移植、層状または部分層移植、選択的内皮移植、角膜新生血管形成、人工角膜移植手術、角膜の眼表面炎症状態、結膜瘢痕障害、自己免疫状態、類天疱瘡症候群、スティーヴンズ・ジョンソン症候群、アレルギー、重度アレルギー性(アトピー性)眼疾患、結膜炎、および微生物性角膜炎からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象の眼に局所投与する段階を含む、ドライアイ症候群の重症度を低下させるための方法。
【請求項4】
上記活性が、IL-17受容体に対する炎症性IL-17サイトカインの結合を含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
ドライアイ症候群に罹っているとして特徴付けられる対象を同定する段階をさらに含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項6】
上記同定段階が、眼の乾燥、引掻くような痛み(scratching)、刺すような痛み(stinging)、痒み、焼けるような痛み(burning)、刺激、痛み、発赤、炎症、分泌物、および過剰な流涙からなる群より選択される徴候または症状の検出を含み、かつ上記方法が、少なくとも1つの該徴候または症状の重症度を抑えるまたは低下させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ドライアイ症候群が、乾性角結膜炎(KCS)、シェーグレン症候群(SS)、シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、非シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼球乾燥症、涙液膜障害、涙液産生減少、水性涙液(aqueous tear)欠乏症(ATD)、マイボーム腺機能障害、および蒸発による喪失を含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項8】
炎症性IL-17サイトカインのIL-17受容体に対する結合を阻害する組成物と第二の組成物とを連続的に投与することまたは同時に投与することを含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項9】
上記組成物の形態が、固体、軟膏、ゲル、液剤、エアロゾル、ミスト、ポリマー、コンタクトレンズ、薄膜、乳剤、または懸濁剤である、請求項1または3記載の方法。
【請求項10】
上記組成物が局所投与される、請求項1または3記載の方法。
【請求項11】
全身投与も非眼組織への実質的な拡散も含まない、請求項1または3記載の方法。
【請求項12】
上記組成物が、生理学的に許容される塩、カープール(carpool)を有するポールアックス(poleaxe)類似体、カープール/HPMC、カープール-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項13】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を含む組成物であって、固体、パスタ剤、液剤、軟膏、ゲル、エアロゾル、ミスト、ポリマー、コンタクトレンズ、薄膜、乳剤、または懸濁剤の形態であり、かつ0.01〜50%(重量/体積)の濃度で存在する、組成物。
【請求項14】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を含むコンタクトレンズであって、該組成物がレンズ内に組み入れられるか、またはレンズ上にコーティングされている、コンタクトレンズ。
【請求項15】
炎症性インターロイキン-17サイトカインまたはIL-17受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの、転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変する組成物を、対象の眼に局所投与する段階を含む、眼表面の炎症性疾患の重症度を低下させるための方法。
【請求項16】
炎症性インターロイキン-17サイトカインまたはIL-17受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの、転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変する組成物を、対象の眼に局所投与する段階を含む、ドライアイ症候群の重症度を低下させるための方法。
【請求項17】
ドライアイ症候群が、乾性角結膜炎(KCS)、シェーグレン症候群(SS)、シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、非シェーグレン症候群に関連する乾性角結膜炎、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼球乾燥症、涙液膜障害、涙液産生減少、水性涙液欠乏症(ATD)、液体産生の欠乏、および蒸発による喪失を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
上記組成物が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
上記組成物が局所投与される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
ポリマーと、該ポリマーの内部または表面に組み入れられた生理活性組成物とを備えた装置であって、該生理活性組成物が炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害し、かつ該装置が眼組織の内部または表面に組み入れられる、装置。
【請求項21】
ポリマーと、該ポリマーの内部または表面に組み入れられた生理活性組成物とを備えた装置であって、該生理活性組成物が炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害し、かつ該装置が眼組織内または液体腔(fluid cavity)に埋め込まれるまたは注入される、装置。
【請求項22】
IL-17受容体に対する炎症性IL-17サイトカインの結合を阻害する組成物と、1種または複数種の炎症性アンタゴニストを含む第二の組成物との双方の投与を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
上記組成物が以下を含む、請求項1、3、13、14、15、16、20、または21のいずれか一項記載の方法:
(a)モノクローナルもしくはポリクローナル抗体;
(b)細胞内もしくは細胞外IL-17サイトカインまたはIL-17受容体を標的とする抗体;
(c)IL-17サイトカインもしくはIL-17受容体の、少なくとも1つの細胞内配列もしくは細胞外配列に結合する抗体;
(d)一本鎖抗体;
(e)ヒト化抗体、組み換え抗体、もしくはキメラ抗体;または
(f)IL-17サイトカインもしくはIL-17受容体の活性を阻害もしくは改変する化合物が、直接もしくは間接的に結合した抗体。
【請求項24】
上記組成物が、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、およびIL-17Fからなる群より選択される炎症性サイトカインの活性を阻害する、請求項1、3、13、14、15、16、20、または21のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
上記組成物が、IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、およびIL-17REからなる群より選択される炎症性サイトカイン受容体の活性を阻害する、請求項1、3、13、14、15、16、20、または21のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与して、それによって調節性T細胞媒介性免疫抑制を増強する段階を含む、眼の障害を有する対象における調節性T細胞媒介性免疫抑制を増強する方法。
【請求項27】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織におけるTh17細胞量を低減させる方法。
【請求項28】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与して、それによってリンパ脈管新生を阻害する段階を含む、ドライアイを有する対象の眼組織または付属器組織におけるリンパ脈管新生特異的増殖因子の分泌を減少させる方法。
【請求項29】
リンパ脈管新生特異的増殖因子がVEGF-C、VEGF-D、VEGF受容体、またはそれらの組み合わせである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織におけるマクロファージおよび単球細胞の量を低減させる方法。
【請求項31】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織、付属器組織、またはリンパ組織における病原性免疫細胞の量を低減させる方法。
【請求項32】
炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を対象に投与する段階を含む、それを必要とする対象の眼組織または付属器組織における病原性リンパ管の増殖を低減させる方法。
【請求項33】
以下の段階を含む、それを必要とする対象における角膜神経損傷を低減させるための方法:
(a)角膜神経損傷を有する対象を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を前記対象の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を向上させて角膜神経損傷を低減させる段階。
【請求項34】
以下の段階を含む、それを必要とする対象における角膜神経損傷を防止するための方法:
(a)角膜神経損傷を受けるリスクを有する対象を同定する段階;および
(b)角膜神経損傷を受ける前に炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を前記対象の角膜に局所投与して、それによって神経変性を減少させて、角膜神経損傷を防止する段階。
【請求項35】
対象が先天性欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する角膜神経損傷または喪失を有していると同定される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
対象が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状ヘルペス角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩または頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正技法、光学的角膜屈折矯正手術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(laser in situ keratomileusis;LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼障害、非眼科的技法、末梢神経障害、または糖尿病性神経障害に起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される、請求項33記載の方法。
【請求項37】
対象が、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる角膜神経損傷または喪失を受けるリスクを有すると同定される、請求項34記載の方法。
【請求項38】
対象が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状ヘルペス角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩または頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正技法、光学的角膜屈折矯正手術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼障害、非眼科的技法、末梢神経障害、または糖尿病性神経障害に起因しうる角膜神経損傷または喪失を受けるリスクを有すると同定される、請求項34記載の方法。
【請求項39】
角膜神経損傷または喪失の徴候または症状を有する対象を同定する段階をさらに含む、請求項33または34記載の方法。
【請求項40】
角膜神経損傷または喪失の徴候が、角膜神経支配もしくは知覚の低下、角膜を神経支配する神経線維もしくは神経束の数の低下、角膜を神経支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経成長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射(tearing reflex)、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行、増加したビーズ様神経形成、神経線維束の薄化、または神経線維束の肥厚化である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
角膜神経損傷または喪失の症状が、異常な涙液産生もしくは涙液乾燥、異常な瞬き、および、焦点を合わせることが難しいもしくはできないこと、視力の低下もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
角膜組織において行われる、請求項26、27、28、30、31、または32のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
粘液溶解剤がN-アセチルシステインである、請求項12記載の方法。
【請求項44】
対象がドライアイを有する、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−517659(P2011−517659A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542274(P2010−542274)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/000114
【国際公開番号】WO2009/089036
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(502144235)ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】