説明

眼内レンズ挿入システム

【課題】 未使用時に眼内レンズの保管状態を安定して維持し、簡単な操作で眼内レンズの規制を解除する眼内レンズ挿入システムを提供する。
【解決手段】 眼内レンズ挿入システムは、軟性の眼内レンズを折り畳むためのインジェクターと、インジェクターを固定保持するホルダを備える。インジェクターは眼内レンズを折り畳む内壁を有し,眼球の切開創から折り畳まれた前記眼内レンズを挿入する挿入部と、挿入部が先端に設けられた筒部本体であって,押出軸上に置かれた眼内レンズを押し出すための押出手段が軸方向に進退移動可能に設けられた筒部本体と,筒部本体に設けられ,眼内レンズを保管する保管位置から押出手段による眼内レンズの押出を行うための押出位置に眼内レンズを移動させるためのレンズ移動部とを備え、ホルダにはレンズ移動部の押出方向への移動を規制する規制部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用の眼内レンズ挿入器具を固定保持するためのホルダを有し、ホルダによる固定保持が解除された眼内レンズ挿入器具を用いて眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術で摘出された水晶体の代替として使用される折り曲げ可能な軟性の眼内レンズは、インジェクターと呼ばれる眼内レンズ挿入器具を用いて、小さく折り畳まれた状態で眼内に注入される。インジェクターとしては、使用時に眼内レンズが外部からセットされる構成の他、眼内レンズが内部に予めセットされた状態で保管、搬送されるプリセットタイプのものが知られている。
【0003】
例えば、プリセットタイプのインジェクターとしては、保管時に規制手段によって押出軸外で保管された状態の眼内レンズを押出軸上へと押し込むことで、規制状態を解除して眼内レンズを使用状態にするものが知られている(特許文献1参照)。また、プリセットタイプのインジェクターにおいて、搬送時などに生じる衝撃で眼内レンズに破損等の不具合を生じさせないように、保管時にインジェクター本体がホルダ(包装材)で固定保持される眼内レンズ挿入システムが知られている(特許文献2参照)。例えば、特許文献2の眼内レンズ挿入システムでは、インジェクターをホルダから取外す操作に連動して眼内レンズの固定が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐197994号公報
【特許文献2】特開2007‐089915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、眼内レンズ挿入システムでは、保管状態が安定して維持されると共に、使用時に出来るだけ少ない手順で保管状態が解除されることが好ましい。例えば、特許文献1に示される構成のインジェクターでは、保管時に規制手段による規制が誤って解除されることなく、より簡単な操作で使用状態とされることが求められる。
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、未使用時に眼内レンズの保管状態が安定して維持されると共に、簡単な操作で眼内レンズの規制が解除される眼内レンズ挿入システムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 軟性の眼内レンズを折り畳むための眼内レンズ挿入器具と,該眼内レンズ挿入器具を固定保持するためのホルダとを備える眼内レンズ挿入システムにおいて、前記眼内レンズ挿入器具は、軟性の眼内レンズを折り畳むための内壁を有し眼球の切開創から折り畳まれた前記眼内レンズを挿入するための挿入部と、該挿入部が先端に設けられた筒部本体であって,押出軸上に置かれた前記眼内レンズを押し出すための押出手段が軸方向に進退移動可能に設けられている筒部本体と,該筒部本体に設けられ,前記眼内レンズを保管する保管位置から前記押出手段による前記眼内レンズの押し出しを行うための押出位置に前記眼内レンズを移動させるためのレンズ移動部と、を備え、前記ホルダには、前記レンズ移動部の前記押出位置方向への移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする。
(2) (1)の眼内レンズ挿入システムにおいて、前記ホルダから前記眼内レンズ挿入器具が取り外される動作に連動して前記規制部材による前記レンズ移動部の前記押出位置方向への移動規制が解除されることを特徴とする。
(3) (2)の眼内レンズ挿入システムにおいて、前記レンズ移動部は、前記眼内レンズを押出軸外で保管するための保管部と、該保管部によって保管された前記眼内レンズに押圧を加えて押出位置へと移動させるために,前記保管部に対して移動可能に取り付けられた解除部と、を備えることを特徴とする。
(4) (3)の眼内レンズ挿入システムにおいて、前記レンズ移動部は、保管時に前記眼内レンズから加えられる応力では変形されずに前記眼内レンズの移動を規制し,前記眼内レンズが押出位置に移動される際に加えられる応力でその押し込み方向に変形されて前記眼内レンズの移動規制を解除するための変形可能な先端部を有し、前記規制部材は、前記先端部の変形方向に位置されて前記先端部の押し込み方向への変形を抑える支持部を有し、前記眼内レンズ挿入器具の保管時に前記支持部との接触により前記先端部の変形が規制され、前記ホルダから前記眼内レンズ挿入器具が取り外される動作に連動して前記支持部が前記先端部から離れることで前記先端部の規制が解除されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、未使用時に眼内レンズの保管状態が安定して維持されると共に、簡単な操作で眼内レンズの規制が解除される眼内レンズ挿入システムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は未使用時の眼内レンズ挿入システム1の斜視図である。図2は眼内レンズ挿入システム1の各構成要素の斜視図であり、眼内レンズ挿入器具1a(以下、インジェクター1aと記す)と、包装材1b(以下、ホルダ1bと記す)とを分けて示している。図3は眼内レンズ挿入システム1の断面図であり、図1の眼内レンズ挿入システム1を矢印A−Aで切断して見た断面図が示されている。なお、図3(a)は保管状態の眼内レンズ挿入システム1の断面図、図3(b)は使用状態の眼内レンズ挿入システム1の断面図である。図4はプランジャーの構成の説明図、図5は眼内レンズ移動部100(以下、レンズ移動部100と記す)の構成の説明図である。
【0011】
図1において、眼内レンズ挿入システム1は、眼内レンズ2を眼内に挿入するための挿入器具本体であるインジェクター1aと、インジェクター1aを固定保持するためのホルダ1bとから構成される。
インジェクター1aは、筒部本体(以下、本体と記す)30、押出部材(以下、プランジャーと記す)40、レンズ移動部100から構成されており、本体30は挿入部10、載置部20を備える。また、本体(筒部30)の外側にはインジェクター1aの使用時に術者が把持するための把持部31が形成されている。なお、インジェクター1aは樹脂材料等を用いたモールド成型、樹脂の削り出しによる切削加工などで形成される。
【0012】
ここでは、レンズ移動部100に保管される眼内レンズ2は、光学部2aと一対の支持部2bとが柔軟な素材で一体成形されたワンピースタイプの眼内レンズとする(図5参照)。ワンピースタイプの眼内レンズは、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の単体や、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料等、従来から知られている折り曲げ可能な軟性の眼内レンズ材料で形成される。これ以外にも、眼内レンズとしてはインジェクター1aを用いて折り曲げ可能な周知のものが使用される。例えば、光学部と一対の支持部とを別部材で形成した後一体化される3ピースタイプの眼内レンズ、プレートタイプの眼内レンズ等であっても良い。
【0013】
本体30の挿入部10はその先端11に向かい通路の内径が徐々に小さく(細く)なる領域(内壁形状)を有する中空の筒形状をしており、先端11には眼内レンズ2が外部に送出された際の開放方向を定める切欠き(ベベル)が形成されている。眼内レンズ2は挿入部10を通過することでその内壁に沿って小さく折り畳まれ、先端11から外部に送出される。
【0014】
本体30の載置部20は挿入部10の基端に形成され、レンズ移動部100による保管が解除された眼内レンズ2が置かれる載置面及び空間(隙間)を形成する。また、載置部20の裏面側(ホルダ1bに対向する側)には、ホルダ1bの一部を通過させるための貫通孔(図示を略す)が形成されており、貫通孔を通過したホルダ1bの一部によって、レンズ移動部100による眼内レンズ2の規制が好適に保持されるようにしている。なお、ホルダ1bにて眼内レンズ2の保管状態を維持する構成の詳細な説明は後述する。
【0015】
レンズ移動部100は、予め眼内レンズ2が保管された状態で、載置部20の開口(図番号を略す)を塞ぐ蓋部材として用いられる他、インジェクター1aの保管・搬送時に押出軸L外の位置で応力を加えずに眼内レンズ2の移動を規制する規制手段を有する。また、インジェクター1aの使用時に押出軸L外での眼内レンズ2の規制を解除して押出軸L上に移動させる解除手段を有する。
【0016】
プランジャー40は、挿入部10内で眼内レンズ2を押して小さく折り畳み、先端11から眼内へと押出すための部材である。図4に示されるように、プランジャー40は術者に押圧される押圧部41、押圧部41に接続される軸基部42、軸基部42に接続される押出棒43、押出棒43の先端に接続されて眼内レンズ2の押出時に光学部2aに当接される先端44から構成される。このような構成によりプランジャー40は、本体30から挿入部20の先端まで繋がる通路を軸方向に進退可能に挿通される。そして、使用時に載置面に置かれた眼内レンズ2がプランジャー40の先端44で押されることで、眼内レンズ2が挿入部10の内壁に沿って小さく折り畳まれる。
【0017】
図5の斜視図において、レンズ移動部100は未使用の眼内レンズ2に応力をかけないで保管(規制)するための保管部110と、保管部110による眼内レンズ2の規制を解除して使用状態にする解除部120との組み合わせで構成されている。なお、眼内レンズ2に応力がかけられていない状態とは、眼内レンズ2が長期間保管されたときに、意図しない変形を生じさせない程度の応力が加えられている状態も含まれる。
【0018】
保管部110は、基台111と、基台111上に置かれた眼内レンズ2の移動を規制する規制部112,113、解除手段120の一部を挿通させるために基台111の一部を刳り貫くことで形成された複数の貫通孔115等から構成される。
基台111は載置部20の開口に閉じ合う大きさ及び形状で形成される。規制部112,113は、レンズ移動部100が載置部20の開口に閉じ合わされた状態で、基台111から本体30の内側に向けて垂直に延びる柱状に形成されている。規制部112は、眼内レンズ2の光学部2aの外周形状に沿う(接する)位置に設けられており基台111に対する眼内レンズ2の水平方向への移動及び回転を抑える。規制部113は、基台111に置かれた光学部2aの外縁よりも僅かに外側の位置に設けられており、基台111に対して垂直方向に延びる柱状部113aと、柱状部113aの先端を内側(光学部2aの中心)に折り曲げて水平方向に所定量伸びる長さに形成した先端部113bとから構成される。なお、先端部113bの長さは、少なくとも基台111に置かれた光学部2aに接触可能な範囲まで伸びる長さに形成されていれば良い。
以上のような柱状部113aによって、光学部2aの基台111に対する左右方向(水平方向)の移動が抑えられる。また、先端部113bによって解除手段120による押込み方向に対して光学部2aが支持されるようになる。
【0019】
なお、先端部113bは、眼内レンズ2の重量又は動き(微動)で生じる力では変形されず、解除手段120から加えられる押力で変形される所定の柔軟性と強度を備える肉厚で形成される。これにより、解除手段120からの押圧で、柱状部113aと先端部113bの接続位置(折り曲げ位置)を基準として先端部113bが押し込み方向に沿って変形され、先端部113による規制が解除されるようになる。
【0020】
解除部120の一部が通過する貫通孔115は、保管時に基台111上に置かれる眼内レンズ2の各部位(光学部2a、支持部2b)に対応する位置と、プランジャー40の軸出部124に対応する位置に形成される。これにより、貫通孔115を通過した解除部120から加えられる押圧で眼内レンズ2全体が均一に(バランスよく)押されるようになる。また、軸出部124によってプランジャー40の前後方向の移動が安定される。
【0021】
また、本実施形態では光学部2aと柱状部113aの間の隙間に形成された貫通孔115aを通過する解除部120の一部によって、先端113bが押されて変形されるようになっている。これにより、眼内レンズ2は先端113bに接触されることなく押出軸L上へと移動されるようになる。
【0022】
解除手段120は、保管部110による眼内レンズ2の規制を解除する際に、術者が押圧を加える押込部121、押圧部121の押圧によって規制部112、113による規制を解除すると共に眼内レンズ2を押出軸L上へと移動させる複数の当接部123、プランジャー40の軸ぶれを抑える軸出部124を備える。
【0023】
押込部121は、術者による押込み操作がしやすいように所定の面積と、保管時にホルダ1bに形成された規制部材210(後述する)に接触される接触領域121a〜121dを有する。ここでは押込部121の幅(押出軸に対して垂直方向の長さ)の少なくとも一部を本体30(載置部20)の幅よりも広く形成することで、ホルダ1bにインジェクター1aが保持された状態で、後述する規制部材210に当接される接触領域121a〜121dを形成している。これによりインジェクター1aがホルダ1bで保持されているときに、押込部121に押圧が加えられたとしても、押込部121(接触領域121a〜121d)と規制部材210との接触により、押込部121の押込み方向への移動が抑えられる。これにより、保管時に眼内レンズ2が誤って使用状態とされることが防止される。
【0024】
複数の当接部123は、貫通孔115を通過可能なようにその先端形状が対応する貫通孔115の開口の形状と略等しく(僅かに小さく)形成される。当接部123の長さは、押込部121の押し込み時に眼内レンズ2の各部位に当接される長さであると共に、解除部120が完全に押し込まれたときに眼内レンズ2を押出軸L上に押し込む長さに決定される。
また、解除部120が完全に押し込まれたときに当接部123の先端が眼内レンズ2の載置面として用いられるようにする。これにより、解除部120が完全に押し込まれた状態で、解除部120を取り外すことなく、プランジャー40による眼内レンズ2の押し出し操作が行われるようになる。
【0025】
なお、複数の当接部123のうち、貫通孔115aの位置に合わせて形成された当接部123aは、押込部121の押し込みに伴い貫通孔115aを通過して先端113bに当接されるようになる。そして先端123aから加えられる応力で先端113bが外側に向けて押し広げられるようになり、先端113bによる眼内レンズ2の規制が解除される。
【0026】
当接部124の上面にはプランジャー40の外形に略一致される形状の溝124aが形成されている。解除手段120が完全に押し込まれたときに、溝124aがプランジャー40の押出軸Lの位置に一致され、プランジャー40の押出し機構として用いられる。なお、本実施形態では支持部2bに対応する当接部123の先端(上面)にも、プランジャー40の押出軸43の外形形状に略一致されると共に、眼内レンズ2の前後方向(押出軸方向)に延びる溝125が形成されており、同様にプランジャー40の軸出し機構として用いられる。
【0027】
以上のような構成により、眼内レンズ2は保管部110の複数の規制部112、113によって応力が加えられない状態で保管される。また、インジェクター1aの保管時に、ホルダ1b(規制部材210)によって解除部120の位置が固定保持されることで、保管状態が安定して維持されるようになる。一方、使用時には、ホルダ1bからインジェクター1aが取外されることで、解除部120が規制部材210から離れることに連動して容易にその規制が解除される。また、規制が解除された状態で、術者によって解除部120が押されるだけで簡単に眼内レンズ2が保管位置(押出軸外)からプランジャー40による押出位置(押出軸上)へと移動されるようになる。
【0028】
図1〜図3において、ホルダ1bはインジェクター1aの周囲を取り囲む壁202と、インジェクター1aの前後方向(軸方向)への移動を規制するための位置ずれ防止機構と、壁202の内側でレンズ移動部100の位置固定を行うための規制部材210とから構成される。
【0029】
壁202は、その前後方向の距離d1がインジェクター1aの全長D1よりも長く形成されており、左右方向の距離d2がインジェクター本体30の幅D2よりも広く形成されている。また、壁202の深さh1はインジェクター1aの最大高さH1と同程度又は深く形成されている。これによりホルダ1bによってインジェクター1a全体が取り囲まれるようになり、保管時に外部から加えられる応力(衝撃)がインジェクター1a本体に直接加えられることが防止される。
【0030】
位置ずれ防止機構は、壁202上と壁202の内側の複数箇所設けられており、ここでは、壁202の一部を深さ方向に切り欠くことで形成された溝203、204と、ホルダ1bの内側に設けられた狭持部205、206から構成される。
【0031】
溝203は、保管時にインジェクター1aの把持部31が置かれる位置に合わせて形成されており、溝203の間隔d3は把持部31の厚さD3と略等しく(又は若干広く)形成されている。これにより溝203に把持部31が位置されることで、ホルダ1b内での本体30の前後(軸)方向の移動が抑えられる。
【0032】
溝204は、保管時にインジェクター1aのプランジャー40の押圧部41が置かれる位置に合わせて形成されており、溝204の間隔d4は押圧部41の厚さD4と略等しく(又は若干広く)形成されている。これにより溝204に押圧部41が位置されることで、ホルダ1b内でのプランジャー40の前後方向の移動が抑えられる。
【0033】
狭持部205は、深さ方向に伸びる柱状に形成されており、押圧部41と軸基部42との接続位置に対応する壁202の内側に形成されている。一対の狭持部205の間隔d5は幅D5の軸基部42が狭持される間隔に形成されている。これにより、狭持部205によって軸基部42が狭持されることで、ホルダ1b内でプランジャー40が左右方向に移動すること(ずれること)が抑えられる。
【0034】
狭持部206は、ホルダ1bの前方の位置で挿入部10に対応する左右位置に設けられており、一対の狭持部206の間隔d6はその位置での挿入部10径D6と略等しく形成されている。これにより、テーパー形状の挿入部10がホルダ1b内で先端11方向へと移動することが抑えられる。
【0035】
規制部材210は、レンズ移動部100を規制するためにレンズ移動部100の取り付け位置に合わせて壁202の内側に形成されている。本実施形態の規制部材210は、柱状の規制部211a〜211dと、柱状の支持部215とから構成されている。
【0036】
規制部211a〜211dは、ホルダ1b内でインジェクター1aが固定保持されているときに、レンズ移動部100の接触領域121a〜121dが置かれる位置に合わせて形成されている。また、ここでは対向する規制部211aと211b、規制部211cと211dの間隔が、載置部20を狭持する距離に形成されており、ホルダ1b内で載置部20(インジェクター1a本体)が左右方向に移動する(ずれる)ことが抑えられている。
【0037】
柱状の規制部211a〜211dの高さは、保管時の押圧部121の各接触領域121a〜121d(ホルダ1bに対向する側)にそれぞれ当接される高さに形成される。本実施形態では保管時の押圧部121が先端11から基端に向けて押出軸Lから離れる斜面に形成されている為、先端11側にある解除手段121a〜121bの押出軸Lから押圧部121までの距離に対して、基端側の解除手段121c〜121dの押出軸Lから押圧部121までの距離が長く形成されている。そのため、先端11側の規制部211aと規制部211bの高さに比べて、基端側の規制部211cと規制部211cの高さが高く形成される。
これにより、保管時には、解除部120の押圧部121に対して各規制部211a〜211dが均一に当接(接触)されるようになり、レンズ移動部100の押出軸L方向への移動が規制部211a〜211dによって一様に抑えられる(規制される)ようになる。
【0038】
支持部215は、ホルダ1bでインジェクター1aが保持されているときに、上述した挿入部20の貫通孔に対応するホルダ1bの底面の位置に形成される。支持部215は貫通孔を通過可能な先端形状を有する柱状に形成されて折り、支持部215の高さ(長さ)は、眼内レンズ2を保管している規制部113bに当接される長さに形成される。以上のような構成により、ホルダ1bでインジェクター1aが保持されているときに、眼内レンズ2の挙動によって規制部113bが外側に開く方向の応力が加えられたとしても、その規制部113の挙動が支持部215によって抑えられるようになる。これにより眼内レンズ2の保管状態が好適に維持されるようになる。
【0039】
以上のように、ホルダ1bでインジェクター1aが保持された状態で、レンズ移動部100の移動が規制されることで、保管時に誤って眼内レンズ2の位置固定が解除されることが防止される。また、規制部材210に接触させるだけの簡単な構成でレンズ移動部の規制が行われ、使用時にはホルダ1bからインジェクター1aを取外す操作だけで、規制部材210の規制が簡単に解除されるようになる。
【0040】
次に、以上のような構成を備える眼内レンズ挿入システムを用いて眼内レンズを眼内に取り付ける際の動作を説明する。
まず、図1に示すインジェクター1a(眼内レンズ2)の保管時には、ホルダ1bの位置ずれ防止機構に対して、インジェクター1aの各構成がそれぞれ取り付けられ、ホルダ1b内でのインジェクター1aの前後左右方向の移動が抑えられている。また、レンズ移動部100の押圧部121の接触領域121a〜121dに各規制部211a〜211dが接触された状態となり、押圧部121の押し込み方向への移動が規制される。また、支持部215が載置部20の貫通孔を通過して先端部113bに当接することで、眼内レンズ2の押出軸L方向の移動が規制され、保管状態が安定して維持される。なお、ここでの図示は省略するが、以上のような保管時の眼内レンズ挿入システム1は、ケース、袋などに入れられて密封及び滅菌処理がされる。
【0041】
インジェクター1a内では、蓋部材であるレンズ移動部100によって載置部20の開口が塞がれて、インジェクター1内で眼内レンズ2が保管されている。この時、眼内レンズ2は、保持部112、113によって応力が加えられない状態で、基台111上での水平及び垂直方向への移動が規制されている。また、上述したように本実施形態では先端113bに支持部215が当接されることで、規制部113による眼内レンズ2の保持が安定して行われている。
【0042】
以上のような保管状態を解除してインジェクター1aを使用状態とするために、まず図示を略すケース、袋などから眼内レンズ挿入システム1を取り出す。そして、図3(b)に示すように、術者はホルダ1bからインジェクター1aを離れる方向(矢印B方向)に持ち上げる。
【0043】
この動作に連動して、位置ずれ防止機構である溝203から把持部31が、溝204から押圧部41が外れ、プランジャー40による前後方向への移動が可能になる。また、押圧部121の各接触領域121a〜121dがホルダ1bの各規制部211a〜211dから離れることで、押圧部121の規制が解除される。また、支持部215が先端部113bから離れることで、先端部113bの規制が解除されるようになる。
【0044】
次に、術者はレンズ移動部100による眼内レンズ2の保管状態を解除する。図6はホルダ1bから取外された後のインジェクター1aの断面図であり、図6(a)にレンズ移動部100に眼内レンズ2が保管されている状態、図6(b)にレンズ移動部100の保管状態が解除されて眼内レンズ2が押出軸L上に移動された状態が示されている。
【0045】
なお本実施形態では、レンズ移動部100の一部が眼内レンズ2の載置面として用いられるため、図6では図3(b)に示す向きのインジェクター1aの上下を逆にして、レンズ移動部100が下側に位置された状態が示されている。
【0046】
先ず、図6(a)に示す保管状態から、保管部110による眼内レンズ2の規制を解除するために解除部120の押圧部121が押されると、貫通孔115dを通過した当接部123dが先端113bに当接されるようになり、押込部121から加えられる押圧によって、先端113bが次第に外方向に向けて変形されるようになる。そして、更に押込部121が押されることで各貫通孔115を通過した各当接部123が眼内レンズ2に接触されるようになる。
【0047】
そして図6(b)に示されるように、解除手段120が完全に押し込まれると、眼内レンズ2は載置面(当接部123の先端)に置かれた状態となる。この時、眼内レンズ2と載置面との間に生じる隙間の発生が抑えられるので、プランジャー40が光学部2a上に乗り上げる又は潜り込むことで眼内レンズ2に傷などの不具合が付いてしまうことが抑えられる。また眼内レンズ2は、解除手段120の押込みによっては折り曲げられずに水平な状態で載置面に置かれる。また、貫通孔(図示を略す)を通過した溝125、軸出部124によってプランジャー40の前後方向の移動をガイドするための軸出し機構が形成されるようになる。
【0048】
眼内レンズ2が載置面に置かれた状態で、術者はインジェクター1aの向きを先端11のベベルの向きに合わせて回転させ、図示を略す開口又は先端11から周知の粘弾性物質を挿入部10内に注入する。
【0049】
術者によって押込部41が押されると、プランジャー40は上述の軸出し機構である溝124a、125に沿って軸方向に移動されるため、プランジャー40の前後方向の移動が安定される。そして、先端44が光学部2aの周縁(コバ)に当接された状態から、更に押込部41が押されると、眼内レンズ2が先端11側に移動されながら、挿入部10の内壁に沿って次第に折り曲げられる(丸められる)ようになる。
【0050】
そして、更に押込部41が押されると、眼内レンズ2が折り曲げられながら先端11から眼内へと送出され、嚢内で次第に開放されるようになる。そして、一対の支持部2bが嚢に沿って配置されることで、光学部2aが眼内から加えられる応力で保持されるようになる。
【0051】
なお、本発明は以上の構成に限られるものではない。例えば、図7の変用例に示されるように、規制部材210はホルダ1bに直接(一体)形成されても良い。一方、規制部材210の形状が複雑な場合等には、ホルダ1bと規制部材210とを個別に形成しておき、ホルダ1bに規制部材210を接着、溶接、凹凸による嵌めこみ等によって組み付けるようにしても良い。なお図7のように、ホルダ1bをインジェクター1aの把持部13及び押圧部41を含めた全体を取り囲む形状に形成することで、インジェクター1aへの衝撃がより好適に防止されることが期待される。
【0052】
また、ホルダ1bに規制部材210を組み込まずに、インジェクター1aに規制部材210が直接取り付けられる構成にしてもよい。この場合にも規制部材210によって、レンズ移動部100の保管状態が好適に規制されるようになる。また、規制部材210が取り外されるだけで簡単にレンズ移動部100の規制が解除されるようになる。
【0053】
また、規制部材210とホルダ1bに互いに勘合する凹凸を設け、ホルダ1bからインジェクター1a本体が取外されたときに、インジェクター1a本体に規制部材210が残される構成にしても良い。この場合、術者はインジェクター1aの使用直前に規制部材210による規制を解除できるようになる。
【0054】
また上記の説明では、眼内レンズ2が押出軸L外で保管される例を説明した。これ以外にも、眼内レンズ2が押出軸L上の位置で保管される構成のインジェクターの場合にも、レンズ移動部の移動方向に規制部材を設けることで、眼内レンズ2の保管状態と使用状態とが好適に区分けできるようになる。
【0055】
例えば、インジェクター1a内部の押出軸L上の所定位置に眼内レンズ2を置き、眼内レンズ2の移動方向(先端11側)に眼内レンズ2の移動を規制するための規制部を設けることで、眼内レンズ2が軸上で保管されるようにする。なお、ここでの規制部は押出軸方向から加えられる押圧で本体30の外側に向けて変形される構成となっており、規制部の変形によって、眼内レンズ2の規制が解除されて先端11側に移動できるようになっている。一方、保管時の眼内レンズ2の後方側には、規制部に押圧を加えるために本体30内を進退移動可能に設けられたスライド部と、スライド部を前後方向に移動させるために,本体30の側部に形成された溝を介してスライド部に取り付けられた把持部から構成されるレンズ移動部が設けられている。なお、本実施形態のインジェクター1aの詳細な構成は、例えば特開2006‐181269号公報を参照されたい。
【0056】
以上のような構成のインジェクター1aにおいて、インジェクター1aを保持するホルダ1bに、把持部に当接され、把持部の軸方向(先端11側)の移動を規制するための規制部材を設ける。これにより保管時に誤って把持部が軸方向(レンズの規制が解除される方向)に押されたとしても、規制部材によって把持部の移動が規制されるようになり、眼内レンズ2の保管状態が維持されるようになる。
【0057】
一方、インジェクター1aの使用時には、ホルダ1bからインジェクター1bが取外される動作に連動して、規制部材から把持部が離れるようにすることで、レンズ移動部の規制が容易に解除される。そしてレンズ移動部の規制が解除された状態で、把持部が先端11側に向けて押される(スライドされる)ことで、規制部による眼内レンズ2の移動規制が解除された後、眼内レンズ2を先端11に向けて押し出せるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】未使用時の眼内レンズ挿入システム1の斜視図である。
【図2】眼内レンズ挿入システムの各構成要素の斜視図である。
【図3】眼内レンズ挿入システムの断面図である。
【図4】プランジャーの構成の説明図である。
【図5】レンズ移動部の構成の説明図である。
【図6】ホルダから取外されて使用状態とされたインジェクターの断面図である。
【図7】眼内レンズ挿入システムの構成の変用例である。
【符号の説明】
【0059】
1 眼内レンズ挿入システム
1a インジェクター
1b ホルダ
30 本体
40 プランジャー
100 レンズ移動部
112、113 規制部
113b 先端部
121a〜121d 接触領域
210 規制部材
211a〜211d 規制部
215 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟性の眼内レンズを折り畳むための眼内レンズ挿入器具と,該眼内レンズ挿入器具を固定保持するためのホルダとを備える眼内レンズ挿入システムにおいて、
前記眼内レンズ挿入器具は、
軟性の眼内レンズを折り畳むための内壁を有し眼球の切開創から折り畳まれた前記眼内レンズを挿入するための挿入部と、
該挿入部が先端に設けられた筒部本体であって,押出軸上に置かれた前記眼内レンズを押し出すための押出手段が軸方向に進退移動可能に設けられている筒部本体と,
該筒部本体に設けられ,前記眼内レンズを保管する保管位置から前記押出手段による前記眼内レンズの押し出しを行うための押出位置に前記眼内レンズを移動させるためのレンズ移動部と、を備え、
前記ホルダには、前記レンズ移動部の前記押出位置方向への移動を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする眼内レンズ挿入システム。
【請求項2】
請求項1の眼内レンズ挿入システムにおいて、
前記ホルダから前記眼内レンズ挿入器具が取り外される動作に連動して前記規制部材による前記レンズ移動部の前記押出位置方向への移動規制が解除されることを特徴とする眼内レンズ挿入システム。
【請求項3】
請求項2の眼内レンズ挿入システムにおいて、
前記レンズ移動部は、
前記眼内レンズを押出軸外で保管するための保管部と、
該保管部によって保管された前記眼内レンズに押圧を加えて押出位置へと移動させるために,前記保管部に対して移動可能に取り付けられた解除部と、
を備えることを特徴とする眼内レンズ挿入システム。
【請求項4】
請求項3の眼内レンズ挿入システムにおいて、
前記レンズ移動部は、保管時に前記眼内レンズから加えられる応力では変形されずに前記眼内レンズの移動を規制し,前記眼内レンズが押出位置に移動される際に加えられる応力でその押し込み方向に変形されて前記眼内レンズの移動規制を解除するための変形可能な先端部を有し、
前記規制部材は、前記先端部の変形方向に位置されて前記先端部の押し込み方向への変形を抑える支持部を有し、
前記眼内レンズ挿入器具の保管時に前記支持部との接触により前記先端部の変形が規制され、前記ホルダから前記眼内レンズ挿入器具が取り外される動作に連動して前記支持部が前記先端部から離れることで前記先端部の規制が解除されることを特徴とする眼内レンズ挿入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111282(P2013−111282A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260879(P2011−260879)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】