説明

眼周囲または結膜下投与のための眼用デポー製剤

【課題】眼周囲に、例えば球後またはテノン鞘下(sub−tenonly)に、あるいは結膜下に投与され得る眼用デポー製剤の提供。
【解決手段】封入ポリマーマトリックスにおいて、薬理学的に許容される生体適合性ポリマーに包埋された、または脂質封入剤に包埋された活性剤を含んでなるマイクロ−またはナノパーティクル製剤のような眼用デポー製剤であって、該活性剤のマイクロパーティクルは1〜200ミクロンの粒子サイズを有するアモルファスまたは結晶の形態である。ポリマー性マイクロパーティクルのポリマーマトリックスは、合成または天然ポリマーであり、該ポリマーは、生分解性または非生分解性のいずれかであるか、あるいは生分解性と非生分解性ポリマーの組合せであり、好ましくは生分解性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患の処置、特に網膜および脈絡膜疾患の処置のための眼用デポー製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患は目への活性剤の導入として処置することが困難であり、そしてそれの治療上有効濃度を維持することが困難である。
【0003】
活性剤の経口投与または目以外の部位への活性剤の非経口投与は、活性剤を全身に提供する。有効な眼内濃度を達成するために、全身投与は、しばしば、許容されないほど高いレベルの活性剤の投与を必要とし得る。
【0004】
活性剤を含んでなる組成物の目への投与は、活性剤が洗い流されるか、または目の内部から全身循環に奪われ、その結果、反復投与、例えば米国特許第5,632,984号において記載されているように3〜42日において3回の投与が必要となるので効果的でない場合もある。
【0005】
例えば米国特許第4,853,224号において記載されたような目の前部または後部への、例えば米国特許第5,164,188号において記載されたような目の脈絡膜上腔または扁平部への、または例えば脈絡膜上腔、目の無血管領域を含んでなる硝子体の外部への、または米国特許第5,824,072号において記載されたような外科的に誘導された無血管領域への、注射または外科的方法、例えばレーザー切除、光凝固、凍結療法、熱凝固などによる目への徐放性組成物、すなわちインプラントの導入は、非常に痛く、そして患者にとってストレスが多い。治療が終了したかまたは効果がない場合には、インプラントを除去しなければならない場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人は、活性剤を含んでなる眼用デポー製剤が眼周囲に、例えば球後またはテノン鞘下(sub−tenonly)に、あるいは結膜下に投与され得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、1つの態様において、本発明は、例えば眼周囲、例えば球後またはテノン鞘下、あるいは結膜下投与のための、活性剤を含んでなる眼用デポー製剤を提供する。
【0008】
例えば封入ポリマーマトリックスにおいて、例えば薬理学的に許容される生体適合性ポリマーに包埋された、または脂質封入剤に包埋された活性剤を含んでなるマイクロ−またはナノパーティクル(以後、本明細書においてマイクロパーティクルと呼ぶ。)製剤のような眼用デポー製剤が特に適当であることが見出された。該眼用デポー製剤は、また、本質的に純粋な活性剤のマイクロパーティクル、例えば活性剤からなるマイクロパーティクルを含み得る。
【0009】
これらのマイクロパーティクルは、大きい接触表面を有する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、本質的に純粋な活性剤のマイクロパーティクルを含んでなる眼用デポー製剤を提供する。
【0011】
本質的に純粋な活性剤のマイクロパーティクル、例えば活性剤からなるマイクロパーティクルは、例えば1〜200ミクロンの粒子サイズを有するアモルファスまたは結晶の形態であり得る。
【0012】
別の態様において、本発明は、例えば薬理学的に許容される生体適合性ポリマーまたは脂質封入剤に包埋された、活性剤を含んでなるマイクロパーティクルのような眼用デポー製剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデポー製剤、例えば特にマイクロパーティクル製剤は、長期間、例えば6ヶ月までの数週間にわたって、すべてのまたは実質的にすべての活性物を放出するように適合される。マトリックス、例えばポリマーまたは存在する場合には脂質マトリックスは、すべてのまたは実質的にすべての活性剤の放出後1〜6ヶ月以内に、十分に分解されて投与部位から輸送されるように適合される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリマー性マイクロパーティクルのポリマーマトリックスは、合成または天然ポリマーであり得る。該ポリマーは、生分解性または非生分解性のいずれかであるか、あるいは生分解性と非生分解性ポリマーの組合せであり得、好ましくは生分解性であり得る。
【0015】
適当なポリマーとしては、
(a)ポリオール部分、例えばグルコースから放散する直鎖である、直鎖または分枝鎖ポリエステル、
(b)D−、L−またはラセミのポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンオキサレート、Krebの回路、例えばクエン酸回路の酸のポリアルキレングリコールエステルなど、およびそれらの組合せ、
(c)有機エーテル、無水物、アミド、およびオルトエステルのポリマー
(d)有機エステル、エーテル、無水物、アミドおよびオルトエステルだけでのコポリマー、または他のモノマーと組み合わせたコポリマー
(e)ポリビニルアルコール
が挙げられる。
【0016】
該ポリマーは、通常5%以下、典型的には1%未満で、架橋されているかまたは非架橋であり得る。
【0017】
ポリマーの分解の所望の速度および活性剤の所望の放出プロフィールは、モノマーの種類、ホモポリマーまたはコポリマーが使用されているか否か、あるいはポリマーの混合物が使用されているか否かに依存して変動し得る。
【0018】
本発明の好適なポリマーは、直鎖のポリエステル、および分枝鎖のポリエステルである。直鎖のポリエステルは、α−ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸およびグリコール酸から、ラクトンダイマーの縮合により製造され得る。例えば米国特許第3,773,919号参照。
【0019】
慣用的に好適に使用される直鎖のポリラクチド−コ−グリコライド(PLG)は、25,000〜100,000の間の分子量および例えば1.2〜2の間の多分散性M/Mを有する。
【0020】
本発明に従って好適に使用される分枝鎖のポリエステルは、開始剤としてポリヒドロキシ化合物、例えばポリオール、例えばグルコースまたはマンニトールを用いて製造され得る。ポリオールのこれらのエステルは既知であり、そして英国特許第2,145,422B号において記載されている。当該ポリオールは少なくとも3つのヒドロキシ基を含有し、そして20,000までの分子量を有し、該ポリオールのヒドロキシ基の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、例えば平均3つのヒドロキシ基は、ポリ−ラクチドまたはコ−ポリ−ラクチド鎖を含有するエステル基の形態である。典型的には、0.2%グルコースを使用してポリマー化を開始させる。分枝鎖ポリエステル(Glu−PLG)は、放射状の直鎖ポリラクチド鎖を有する中心グルコース部分を有し、例えばそれらは星型構造を有する。本発明に従って好適に使用される直鎖および星型ポリマー化合物における好適なポリエステルは、アルファカルボン酸部分、乳酸およびグリコール酸の、またはラクトンダイマーのコポリマーである。ラクチド:グリコライドのモル比は、約75:25から25:75、例えば60:40から40:60、55:45から45:55であり、例えば55:45から50:50がもっとも好ましい。
【0021】
放射状の直鎖ポリラクチド鎖を有する中心グルコース部分を有する分枝鎖ポリエステル(Glu−PLG)は、ポリオールを、開環ポリマー化反応を容易にする触媒の存在下で上昇した温度にてラクチドとおよび好ましくはグリコライドとも反応させることにより製造され得る。
【0022】
放射状の直鎖ポリラクチド鎖を有する中心グルコース部分を有する分枝鎖ポリエステル(Glu−PLG)は、好ましくは約10,000〜200,000、好ましくは25,000〜100,000、とりわけ35,000〜60,000の範囲の平均分子量Mおよび例えば1.7〜3.0、例えば2.0〜2.5の多分散性を有する。M35,000およびM60,000の星型ポリマーの固有の粘度は、クロロホルム中でそれぞれ0.36および0.51 dl/gである。M52,000の星型ポリマーは、クロロホルム中で0.475 dl/gの粘度を有する。
【0023】
脂質マイクロパーティクルに適した脂質封入剤としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスファチジルエタノールアミン(PE)のようなホスファチジル化合物、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、ステロイド、例えばコレステロールなどが挙げられる。
【0024】
マイクロスフェア、マイクロカプセルおよびマイクパーティクルなる用語は、本発明に関して交換可能であるとみなされ、そしてポリマーによる活性剤の封入を示し、好ましくは該活性剤は該ポリマー全体に分配され、これは結局、活性剤のためのマトリックスとなる。その場合において、好ましくはマイクロスフェアまたはさらに一般的にはマイクロパーティクルなる用語が使用される。
【0025】
マイクロパーティクル、例えばマイクロスフェアまたはマイクロカプセルは、数サブミクロンから数ミリメートル、例えば約0.01ミクロンから約2mm、例えば約0.1ミクロンから約500ミクロンの直径を有し得る。医薬マイクロパーティクルのために、最大約250ミクロン、例えば10〜200ミクロン、好ましくは10〜130ミクロン、さらに好ましくは10〜90ミクロン、いっそうさらに好ましくは10〜60ミクロンの直径を、例えば注射針を通過しやすくするために、意図される。
【0026】
典型的には、活性剤は、ポリマー性マイクロパーティクルの約1〜80、さらに通常10〜75重量%、および脂質マイクロパーティクルの1〜20重量%である。
【0027】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容されるポリマーおよび溶解または分散した活性剤を含んでなる液体製剤を提供する。注射後、該ポリマーは注射部位において、例えばゲル化または沈澱によりデポーを形成する。
【0028】
本発明のデポー製剤、特にマイクロパーティクル製剤は、多様な水溶性または疎水性活性剤の混和に適している。
【0029】
特に重要な活性剤として、
i)抗緑内障薬、例えばβ−ブロッカー、例えばマレイン酸チモロール、ベタキソロール、カルテオロールおよびメチプラノロール;エピネフリンおよびプロドラッグ;例えばジピベフリン;炭酸脱水素酵素インヒビター;例えばドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、ジクロフェナミドおよびメタゾラミド;ドパミン作動薬、プロスタグランジン類、ドコサノイド、α2アゴニスト;アンギオテンシンIIアンタゴニスト;α1アンタゴニスト;カンナビノイド;エンドセリンアンタゴニスト;
ii)縮瞳薬、例えばピロカルピン、塩化アセチルコリン、イソフルロフェイト、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオパート、フォスフォリンアイオダイド、カルバコール、およびフィゾスチグミン;
iii)黄斑変性症処置薬、例えばインターフェロン、特にα−インターフェロン;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えばTGF−β;
iv)抗白内障薬および抗増殖性糖尿病網膜症(PDR)薬、例えばアルドースレダクターゼインヒビター:例えばトルレスタット(tolrestat)、またはアンギオテンシン変換酵素インヒビター、例えばリシノプリル、エナラプリル;
v)加齢性滲出黄斑変性症(AMD)処置薬、例えば眼新生血管疾患、例えばスタウロスポリン類、フタラジン誘導体;
vi)抗凝固剤、例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、およびストレプトキナーゼ;
vii)コルチコステロイドのような眼炎症疾患の処置薬;例えばプレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロンなど、非ステロイド性抗炎症薬、例えばケトロラックトロメタミン、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、フルビプロフェンナトリウム、およびスプロフェン;
viii)抗生物質、例えばロリジン(セファロリジン)、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、メチシリン、リンコマイシン、オキサシリン、ペニシリン、アムホテリシンB、ポリミキシンB、セファロスポリンファミリー、アンピシリン、バシトラシン、カルベニシリン、セファロチン、コリスチン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、スルファセタミド、バンコマイシン、硝酸銀、スルフイソキサゾールジオラミン、キノロン、およびテトラサイクリン;
ix)抗真菌剤または抗ウイルス剤、例えばミコナゾール、ケトコナゾール、イドクスウリジン、トリフルリジン、ビダラビン(アデニンアラビノシド)、アシクロビル(アシクログアノジン)、ガンシクロビル、ホスカルネットナトリウム、シドフォビル、バラシクロビル、ファムシクロビルトリサルファピリミジン−2、ナイスタチン、フルシトシン、ナタマイシン、芳香族ジアミジン、例えばジヒドロキシスチルバミジンおよびピペラジン誘導体、例えばジエチルカルバミン;
x)毛様筋調節薬および散瞳薬、例えばアトロピン、シクロペントラート、スコポラミン、ホマトロピン トロピカミドおよびフェニレフリン;
xi)イソプロピルウノプロストン、グルタミン酸レセプターアンタゴニストのような眼神経変性疾患の処置薬、例えばメマンチン、カスパーゼインヒビター、カルシウム拮抗薬、ナトリウムチャンネルブロッカー、NOS−2インヒビターまたは神経栄養因子、例えばグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)または毛様体神経栄養因子(CNTF);
xii)カルシトニン、リプレシンもしくはソマトスタチンまたはそれらのアナログのようなペプチド薬;
xiii)抗VEGF薬;
xiv)ホスホジエステラーゼインヒビター;
xv)ホミビルセンナトリウムのようなアンチセンス薬;
xvi)免疫抑制剤;例えばアザチオプリン、シクロスポリンA、メトトレキサート、コルヒチン;
xvii)眼血管形成の処置薬、例えば血管形成ステロイド、PKCインヒビター、VEGFアンタゴニスト、COX2インヒビター、ACEインヒビターまたはアンギオテンシンIIアンタゴニスト;
xviii)フリーラジカル捕捉剤、例えばアルファトコフェロール、カロテノイド、スルフヒドリル含有化合物
が挙げられる。
【0030】
好ましくは、活性剤は、眼窩領域および眼付属器の処置のための、ならびに加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、緑内障、炎症、例えば眼内炎、および細菌、真菌またはウイルス感染を含む(が、これらに限定されるわけではない)網膜および脈絡膜疾患の処置のための医薬である。いっそうさらに好ましくは、当該活性剤は、式(I)のスタウロスポリン、式(II)のフタラジンまたは眼科的に許容されるそれらの塩である。Rがベンゾイルである式(I)のスタウロスポリン(本明細書において、以後「化合物A」)、ならびにZが4−ピリジルであり、Xがイミノであり、nが0であり、そしてYが4−クロロフェニル(本明細書において、以後「化合物B」)である式(II)のフタラジンがいっそうさらに好ましい。
【化1】

【0031】
別の態様において、本発明は、例えば眼周囲、例えば球後もしくはテノン鞘下、または結膜下投与のための、例えば薬理学的に許容される生体適合性ポリマー中に包埋された、式(I)のスタウロスポリン、式(II)のフタラジンまたは眼科的に許容されるそれらの塩を含んでなるデポー製剤およびマイクロパーティクルを提供する。
【0032】
本発明のマイクロパーティクルは、任意の慣用的技術、例えば溶媒蒸発、有機相分離、スプレー乾燥、低温溶媒抽出またはエマルジョン法、例えばトリプルエマルジョン法により製造され得る。相分離またはエマルジョン技術を用いて、該ポリマーを薬物とともに沈澱させ、続いて得られた生成物を硬化させる。
【0033】
別の態様において、本発明は、マイクロパーティクルの製造方法であって、
a)ポリマーまたは脂質封入剤および活性成分を有機溶媒、例えば塩化メチレン中に溶解させる工程、
b)例えばスタティックミキサー(static mixer)を用いて、a)の溶液をポリビニルアルコールの水溶液(例えば0.5%)と混合する工程、
c)生成したマイクロパーティクルを、例えば沈降、濾過によりまたはサイクロンを用いて回収する工程、
d)所望により、例えばpH3.0〜8.0の緩衝溶液または蒸留水中で、マイクロパーティクルを洗浄する工程、および
e)真空下で、例えば20℃〜40℃の温度にて乾燥する工程
を含んでなる方法を提供する。
【0034】
本発明は、また、該方法により製造されたマイクロパーティクルにも関する。
【0035】
本発明のマイクロパーティクルおよびデポー製剤は、本明細書に記載の特定の活性剤の既知の眼科的適応症の処置に有用である。本発明の製剤の有用性は、標準的動物試験および臨床試験において観察され得る。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、眼疾患の処置方法であって、
i)例えば薬理学的に許容される生体適合性ポリマーまたは脂質封入剤中に包埋された活性剤を含んでなる、デポー製剤、例えばマイクロパーティクル製剤を提供すること、および
ii)眼周囲に、例えば球後もしくはテノン鞘下に、または結膜下に、当該デポー製剤、例えばマイクロパーティクル製剤を投与すること
を含んでなる方法を提供する。
【0037】
本発明は、デポー製剤、例えばマイクロパーティクル製剤から、眼疾患の部位、例えば脈絡膜、視神経、網膜または硝子体への活性剤の拡散を可能にする。好ましくは、活性剤は当該眼疾患の部位において当該眼疾患についての有効量を、長期間、例えば6ヶ月までの数週間維持する。
【0038】
デポー製剤、例えばマイクロパーティクル製剤は、注射、トロカールなどを含むさまざまな方法で眼周囲に、例えば球後もしくはテノン鞘下に、または結膜下に投与され得る。好ましくは、活性剤の粒子またはマイクロパーティクルを、適当な液体担体中に懸濁させる。
【0039】
ポリマー中に包埋された活性剤の正確な量、すなわち投与されるべきデポー製剤、例えばマイクロパーティクル製剤の正確な量は、数多くのファクター、例えば処置されるべき病状、所望の処置期間、活性剤の放出速度およびポリマー性マトリックスの分解性に依存する。必要とされる活性剤の量は、既知のインビトロまたはインビボ技術に基づいて決定され得る。本発明のデポー製剤の反復投与は、ポリマー性マトリックスが十分に分解する場合に行われ得る。
【0040】
大量の活性剤、例えば300mgまでの活性剤、例えば懸濁液の形態のものは、単回投与、例えば1回の注射で投与され得る。投与の頻度は、症候群の重症度に依存して変動する。重症の場合には、1ヶ月に1回投与され得る。疾患状態が改善の兆候を示す場合には、頻度を減らす。その場合には、4または5ヶ月ぐらいに1回の頻度で投与され得る。
【0041】
充填は、デポー製剤の滅菌前または後に行われ得る。本発明の製剤および一次パッケージの滅菌は、例えば25kGyのエネルギーのガンマ線照射により、活性剤および/またはマイクロパーティクルが分解することなく行われ得る。
【0042】
下記のものは、本発明のデポー製剤の単なる例示による記載である。
【実施例】
【0043】
実施例1〜3:マイクロパーティクルの製造
【表1】

【0044】
化合物AおよびポリマーGlu−PLGを塩化メチレンに溶かす。得られた溶液を、ポリビニルアルコールの1.5%溶液とともにスタティックミキサーを介してポリビニルアルコールの撹拌水溶液(0.5%)にポンプ注入する。得られた懸濁液を撹拌しながら42〜48℃に加熱し(60分以内)、そしてさらに30分間その温度にて維持し、その後、混合液を約22℃まで冷却する(50分以内)。懸濁液を約10分間沈降させる。ポリビニルの水溶液を真空下で減少させる。マイクロパーティクルを水で約5分間洗浄する。約10分間の沈降後、溶液を除去し、そしてマイクロパーティクルを、Ultiporフィルターを通して濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼周囲または結膜下投与のための活性成分を含んでなる、眼用デポー製剤。
【請求項2】
本質的に純粋な活性剤のマイクロパーティクルを含んでなる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
活性剤が薬理学的に許容される生体適合性ポリマーまたは脂質封入剤中に包埋されている、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
ポリマーがポリオールのポリラクチド−コ−グリコライドエステルである、請求項1または3に記載の製剤。
【請求項5】
ポリマーがポリオールの40/60から60/40ポリラクチド−コ−グリコライドエステルである、請求項1、3または4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
マイクロパーティクルを含んでなる、請求項1および3〜5のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
マイクロパーティクルの外部表面が実質的に活性成分を含まない、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
溶解した薬学的に許容されるポリマーおよび溶解または分散した活性成分を含んでなる液体製剤であって、注射後に注射部位でデポーを形成する製剤。
【請求項9】
活性剤が、単回投与について300mgまでの量で存在する、請求項1〜8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
活性剤が式(I)のスタウロスポリン、式(II)のフタラジンまたは眼科的に許容されるそれらの塩である、請求項1〜9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
眼疾患の処置方法であって:
i)活性剤を含んでなるデポー製剤を提供すること、および
ii)該デポー製剤を眼周囲または結膜下に導入すること
を含んでなる方法。
【請求項12】
活性剤が薬理学的に許容される生体適合性ポリマーまたは脂質封入剤中に包埋されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
活性剤がデポー製剤から眼疾患の部位へと拡散する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
活性剤が、眼疾患の部位において、該眼疾患についての有効量で長期間維持される、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
活性剤が3ヶ月まで有効量にて維持される、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
薬理学的に許容される生体適合性ポリマーまたは脂質封入剤中に包埋された、式(I)のスタウロスポリン、式(II)のフタラジンまたは眼科的に許容されるそれらの塩を含んでなる、マイクロパーティクル。

【公開番号】特開2011−26338(P2011−26338A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224231(P2010−224231)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2003−528517(P2003−528517)の分割
【原出願日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】