説明

眼圧降下剤としてのスクシンイミド誘導体

本発明は、眼圧の上昇に関連した眼疾患を治療する方法を提供し、同方法は、スクシンイミド誘導体を含む有効量の製薬組成物を投与する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼疾患に関し、より詳細には、緑内障のような眼圧の上昇に関連した眼疾患を治療するための抗てんかん薬スクシンイミド誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、てんかんの小発作(欠神発作)及び緑内障の病態生理学における類似性に注目している。両疾患は房水分泌速度及び/又は房水流出不全における変化を示し、局所組織の電解作用、イオン及び浸透圧の不均衡を生じ、症状の特徴的な連鎖をきたす。
【0003】
緑内障は一群の眼疾患であり、典型的には視神経及び視野の損傷を伴う眼圧上昇(IOP)により特徴付けられるが、多くの例外的事項が存在する。IOPのレベルは、前房隅角に配置された小柱網と称される環状の篩構造を介して、目からの流出を引いた産生量の最終的な結果である。眼圧上昇を伴う緑内障の大部分は、小柱網の流出に対する抵抗性が増大することに起因しているが、内科的治療の大部分は流入を減少させることに着目している。(非特許文献1を参照されたい)。毎分約1.8乃至4.2μlの房水が産生され、非色素性の毛様体上皮により眼の後眼房に分泌される。その過程はあまり理解されてはいないが、能動的な限外ろ過と受動的な輸送との組み合わせが関与していると考えられている。分泌速度は、例えば、日周的な曲線、pH、年齢、炭酸脱水酵素(CA)のような酵素並びに血管性疾患のような複数の要因により影響を受ける。複数の抗緑内障治療薬群は房水の流れの種々の段階に影響を与える。それらの抗緑内障治療薬としては、ほんの数例を挙げると、β−アドレナリン受容体拮抗薬(チモロール、ベタキソロール)、全身性及び局所性のCA阻害薬(アセタゾラミド、ドルゾラミド、非特許文献2を参照)、α−アドレナリン受容体拮抗薬(ブリモニジン、アプラクロニジン)及びプロスタグランジン類似体(ラタノプロスト、ビマトプロスト)等である。大部分の薬物群は、房水の産生及び分泌を、プロスタグランジンの「非従来的な」幾らかの流出添加効果を伴って、50%まで減少するために相乗的に作用する。房水の動力学における研究は、分泌過程における幾らかの主要な成分を誘導した。ウサギの後眼房において重炭酸塩が血漿濃度よりも高いことが見出されているが(CAが関与する直接の結果によるものであろう)、塩化物が主要なアニオンとして提案されてきたヒトにおいては当てはまらない。
【0004】
ヒトの身体における半透過性/選択性の組織膜を横切る流体の分泌メカニズムは殆どの器官組織において類似性を有する。細胞膜中の幾らかの点にて、「水の分離」が起こっており、プロトンは(電気的中性を維持するために)アニオンに従い、一方の側に到達する一方、ヒドロキシル基は通常、ナトリウム又は別の正電荷の成分と結合し、細胞膜の反対の側方側に到達する。この水分離に使用される基質は二酸化炭素であり、水和して、(弱)炭酸を形成し、結果として、そのプロトン及び重炭酸塩は細胞膜により分離される。この過程は、電解質を伴い、電気的平衡及び浸透圧的平衡のいずれも維持しながら、受動的な水の分泌を発生する。この反応はCAにより触媒化される。
【0005】
房水は、非色素性の毛様体上皮により眼の後眼房に産生及び分泌され(緑内障)、脈絡膜の網状組織により形成され、脳室の底部を横切って分泌される、脳脊髄液(CSF)に類似する。基底外側の塩化物/重炭酸塩−アニオン交換体が両者の間を切り替え、スクシンイミドが、T−カルシウムチャネルを最初に崩壊し、次いでアニオン平衡を崩壊することにより、房水の産生を崩壊し、眼圧を低減すると考えられている。
【0006】
小児における典型的な欠神てんかんは、頻繁に起こる「欠神」、双方向同期する3/s棘波及び徐波性脳波により特徴付けられる非痙攣性のてんかんであり、「棘徐波発射(SWD)」としばしば称される。欠神発作は突発性であり、発病する年齢に従って、小児欠神てんかん(CAE又はピクノレプシー)、若年欠神てんかん(JAE)及び若年ミオクロニーてんかん(JME又は衝動的小発作てんかん)に分類されている。これら全ての症状はSWDパターンに関連しており、数秒間乃至数分間続く発作は時として一日に数百回起こることもある。発症のメカニズムは依然として解明されていない。複数の研究では、てんかんは、細胞外イオンの恒常性を破壊する過程、エネルギー代謝を変更する過程、受容体の機能を変える過程又は伝達物質の取り込みを変更する過程に起因していると、提唱されている。最近の研究では、視床皮質反響神経回路がSWD発作の元となっていることが提唱されている(非特許文献3を参照されたい)。エトスクシミド及びそのメトスクシミド代謝物は、おそらくはT型カルシウム電流を遮断することによる視床細胞の興奮性の変化によりそれらの作用に影響を及ぼす一方でテトラメチル誘導体は痙攣を引き起こす(非特許文献4)。Tチャンネルの遮断は重要ではあるが、抗欠神薬物の唯一のメカニズムではない。欠神発作を緩和するベンゾジアゼピン系のクロナゼパムの効果は、GABA受容体系が、神経系の広いネットワークと並んで重要であることを提唱している。その他の理論では、CAE又はJAEのいくらか、特に遺伝型のものが、CLCN−2(塩化物チャネル蛋白質2)の欠失によるものであると提唱している。
【非特許文献1】シールズ エム.ビー.(Shields M.B.)、「Textbook of Glaucoma」、第4版、Williams & Wilkins社(ボルチモア所在)刊、1998年
【非特許文献2】シャリル エム.(Sharir M.)、「Novel Thiadiazole Sulfonamide Carbonic Anhydrase Inhibitors as Topically Effective Ocular Hypotensive Agents、ルイビル大学(アメリカ合衆国、ケンタッキー州、ルイビル所在)の博士論文、1990年5月
【非特許文献3】ヒューゲナルド ジェイ.アール.(Huguenard J.R.)、Neuronal Circuitry of Thalamocortical Epilepsy and Mechanism of Anti−absence Drug Action.:In: Jasper’s Basic Mechanism of the Epilepsies,第3版、Advances in Neurology、第79巻、第67章、エイ.ブイ.デルガド−エスクータ(A.V.Delgado−Escueta)ら、Lippincott Williams & Wilkins(フィラデルフィア)、1999年)
【非特許文献4】コールター ディ.エイ.(Coulter D.A.)、ヒューゲナルド ジェイ.アール.(Huguenard J.R.)、プリンス ディ.エイ.(Prince D.A.):Characterization of Ethosuximide reduction of low−threshold calcium current in thalamic neurons、Ann.Nuerol.、第25巻、582−593頁、1989年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、緑内障のような眼圧の上昇に関連した眼疾患を治療するための方法及び製薬組成物を提供することであり、それは、抗てんかん薬であるスクシンイミド系化合物の眼圧降下剤としての新規な用途に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、緑内障を治療するための方法が提供され、同方法は、活性成分としてスクシンイミド誘導体を含有する製薬組成物の有効量をそのような治療を必要とする被検体に投与する工程を含む。好ましくは、スクシンイミド誘導体は構造式I:
【0009】
【化1】

[上記構造式Iにおいて、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、R及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
又は構造式II:
【0010】
【化2】

[上記構造式IIにおいて、XはO又はCHRであり、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
である、抗てんかん化合物である。Xが酸素原子である場合、同化合物は、オキザロリジンジオン及びオキザロリジンジオン誘導体として知られている。
【0011】
好ましくは、製薬組成物は被検体の眼に局所投与される。しかしながら、投与は局部投与又は全身投与であり得る。
本発明の別の態様は、緑内障治療のための局所眼用製薬組成物であり、同組成物は活性成分としてのスクシンイミド誘導体と、局所送達に適した担体とを含む。本発明の局所製薬組成物は、液剤、懸濁剤、ゲル剤、及び点眼剤又は軟膏として適用される乳剤として処方化され、活性成分及び担体以外に、例えば安定化剤、保存剤、キレート剤、粘度改質剤、緩衝剤及び/又はpH調整剤のようなその他の製薬的に許容される試薬及び賦形剤を含み得る。付随的に、同組成物は抗菌剤、鎮静促進剤、抗酸化剤のようなその他の眼科用活性剤を含み得る。同組成物は更に放出制御手段も含み得る。
【0012】
本発明の更なる態様は、眼圧上昇に関連した眼疾患の治療にスクシンイミド誘導体を使用すること、及び眼圧上昇に関連した眼疾患の治療のための眼科用製薬組成物の製造においてそれらを使用することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
スクシンイミド環は、種々の用途を備えた多くの新たな化合物に次々に組み込まれている。製薬の分野のみにおいて、スクシンイミド由来の薬物は、近年、抗癌剤、オキシトシン拮抗剤、抗HIV薬、抗精神薬、鎮痛剤及びアルドース還元酵素阻害剤として評価を受けている(ランキン ジー.オー.(Rankin G.O.):Nephrotoxicity induced by C− and N−Arylsuccinimides、J.Toxicol.Envirom.Health、Part B、第7巻、399−416頁、2004年)。本発明は、例えばエトスクシミド、フェンスクシミド、メトスクシミド及びモルスクシミドのようなスクシンイミド系の抗緑内障特性、特に、抗てんかん活性及び/又は抗けいれん作用を示すスクシンイミド系、より詳細には、欠神発作に有用なスクシンイミド系に着目した。しかしながら、本発明は上記した特定のスクシンイミド又は既に抗てんかん作用が明らかにされているスクシンイミドに制限されるものではなく、まだ発見されていない新たな抗てんかん薬又はその他のスクシンイミド由来の薬物も包含するものである。本発明に従って、スクシンイミド型の抗てんかん薬が、イオンチャネルを調整することにより、眼の非色素性の毛様体からの房水の産生及び分泌の速度を制御することにより、眼圧降下の効果を有することが提唱される。従って、本発明は、眼圧上昇に関連した眼疾患、特に緑内障の治療のための抗てんかん薬、特に、スクシンイミド系に属する抗てんかん化合物の新規な使用法を提供する。
【0014】
好ましくは、本発明のスクシンイミド由来の化合物は式I:
【0015】
【化3】

[上記式Iにおいて、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、R及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
又は式II:
【0016】
【化4】

[上記式IIにおいて、XはO又はCHRであり、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
である。Xが酸素原子である場合、同化合物は、オキザロリジンジオン及びオキザロリジンジオン誘導体として知られている。
【0017】
抗てんかん薬として既に使用されている構造式Iのスクシンイミド誘導体の特殊な例は、エトスクシミド(R=H、R=エチル、R=メチル)、フェンスクシミド(R=メチル、R=H、R=フェニル)、メトスクシミド(R=メチル、R=メチル、R=フェニル)及モルスクシミド(R=メチルモルホリン、R=H、R=フェニル)である。構造式Iのその他のスクシンイミド誘導体もまた、抗けいれん作用を示すことが明らかになっている。例えば、米国特許第4188398号明細書は、α−/パラ−イソプロピルオキシフェニル/スクシンイミド(R=H、R=H、R=フェニルオキシイソプロピル)の抗てんかん活性を示唆している。米国特許第4981867号明細書は、震えを低減するために式IIのスクシンイミドの使用を開示している。しかしながら、本発明は、抗てんかん作用及び抗けいれん作用が既に示されているこれらの特定の抗スクシンイミド誘導体に制限されるものではない。
【0018】
従って、本発明は眼圧の上昇を伴う疾患を治療する、特に緑内障を治療するための方法を提供し、同方法は、活性成分としての抗てんかんスクシンイミド由来の化合物と製薬的に許容される担体とを含む有効量の製薬組成物を投与することによるものである。
【0019】
好ましくは、本発明の製薬組成物は薬物の眼内での有効レベルを上昇させ、かつその他の器官における薬物の不必要なレベルを阻止するために、患者の眼に局所的に投与される。そのような非全身性、即ち部位特異性の投与は薬物に付随する副作用を低減する。しかしながら、眼圧を低減するのに有効な用量を経口投与或いは全身投与することも可能である。例えば、組成物は、徐放性にて放出させるために皮膚パッチにより投与され得る。
【0020】
局所的に投与される場合、スクシンイミド誘導体を含む製薬組成物は局所投与に適した種々の治療用剤型、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤及びゲル剤等の剤型に製剤化され得る。これらの製剤における担体は、例えば、生理食塩水、緩衝生理食塩水、カーボポールゲル、鉱油等のような任意の製薬的に許容される担体であり得る。製剤は、眼科用製剤の調製における公知の方法に従って調製され得る。好ましくは、製薬組成物中のスクシンイミド誘導体の濃度は50乃至2500mg/mlの範囲であり、製剤は好ましくは1乃至4回の投与回数にて適用され、各投与量は、スクシンイミド誘導体の10乃至500mgを含んでいる。
【0021】
局所用製薬組成物は、眼に注入することにより適用される点眼剤の形態であり得るか、或いは眼の表面に提供される種々の軟膏、ゲル又はクリームの形態であり得、長期間にわたって持続性の放出を容易にするために放出制御手段を含み得る。
【0022】
組成物は更に、安定化剤、保存剤、キレート剤、粘度改質剤、緩衝剤及び/又はpH調整剤のような製薬的に許容される非毒性の補助物質を含み得る。付随的に、同組成物は抗菌剤、鎮静促進剤、抗酸化剤のようなその他の眼科用活性剤を含み得る。
【0023】
その他の実施形態に従って、スクシンイミド誘導体は、患者の眼内に挿入される、又は移植される薬物送達装置内に装填され得る。同装置では、薬物を溶解、拡散又は滲出し、よって治療上の有効濃度を長期間にわたり維持することにより、同薬物を制御された連続的な速度にて放出可能となる。薬物送達装置は、例えば、下側のまぶたの下に挿入される、活性成分が装填された生体分解性の薄いフィルムであり得る。
【0024】
実験
眼での薬力学的な予備試験が、テルアビブ大学の動物施設にて実施され、エトスクシミドの投与前と投与後のIOPを測定することにより、ラットの眼圧に対するエトスクシミドの効果を調べた。IOPの測定は、トノペン(tonopen)装置により実施した。エトスクシミドはPetnidan(登録商標)カプセル(Desitin、ドイツ連邦共和国ハンブルグ所在)から得られた粘性溶液として適用された。アルコンリサーチラボラトリー(Alcon Research laboratory)での最近の研究では、ラットは緑内障の研究に適した動物モデルであることが示されている(パン アイエイチ(Pang IH)、ワン ダブリュエイチ(Wang WH)、クラーク エイエフ(Clark AF):Acute effects of glaucoma medications on rat intraocular pressure、Exp Eye Res、2005年2月、第80(2)巻、207−14頁)。ケーシーアイ研究所(Casey Eye Institute)における別の研究では、正常なラットの眼においてIOPを測定するのに、トノペンは正確な機器として使用可能であることが示されている(ムーア シージー(Moore CG)、ミルネ エスティ(Milne ST)、モリソン ジェイシー(Morrison JC)、Noninvasive measurements of rat intraocular pressure with the TONO−Pen、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、1993年2月、第34(2)巻、363−9頁)。
【0025】
6匹のDark−Agouti(DA)系有色ラット(体重250乃至300g)を、1.5−2mg(0.15−0.2ml)のキシラジンの腹腔内投与にて僅かに鎮静状態にした。各ラットの一方の眼を無作為に選択し、250mg/0.2mlのエトスクシミド溶液(Petnidanカプセルの内容物)の50μlを局所投与した。2番目の眼(対照の眼)には、活性成分を含まない粘弾性の溶液(スイス国所在のNovartisにて製造されたViscotears(登録商標))の50μlを投与した。t=0(投与直前)並びに投与後30、60及び120分において、局所麻酔ベノキシネートを両眼に適用し、眼圧(IOP)をTono−Pen XL眼圧計(Medtronics社製)により測定した。変動を最小限にするために、6乃至10回の連続した測定の平均値としてIOP値を記録した。IOP測定を実施した技術者は、コード、即ち、両眼のうちのいずれの眼が処置されているか、は知らされていなかった。一匹のラットは、過剰な鎮静作用により1時間後に死亡した。5匹のラットは実験を完了した。薬物を投与された6つの眼のうちの2つ(対、粘弾性のビヒクルが投与された6つの眼のうちの1つ)において、軽度から中程度の輪部血管のうっ血が認められ、それは60分では正常なレベルとなる傾向にあった。
【0026】
実験の終了時において、コードは破棄され、対照及び処置された眼におけるIOP値は統計的な分析により比較された。結果を以下の表1に要約する。
【0027】
【表1】

表1に見られるように、投与後30及び60分後において、IOPの適度な減少が示され(それぞれ、0.5mmHg(66.7Pa)及び0.4mmHg(53.3Pa))、それは臨床学的にも、統計学的にも有意なものではなかった。しかしながら、120分において、対照に対する処置された眼にて2.6mmHg(346.64Pa)の低減が認められた。この臨床上有意な効果はまた統計的にも有意なものであった(p<0.05、一組のデータに対して両側スチューデントt検定を使用した)。ANOVA分析を使用した場合もまた統計学的に有意であった。
【0028】
予備試験の結果は、眼圧降下剤としてのエトスクシミド及びその他のスクシンイミド誘導体の可能性並びに、抗緑内障治療薬の調製、特に局所投与用の眼科用製薬組成物の調製におけるそれらの使用の可能性を明らかに示している。
【0029】
本発明は具体的に示されたもの、及び上述の記載に制限されるものではないことを当業者は理解できるであろう。むしろ、本発明の範囲は以下に記載の請求の範囲により定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼圧の上昇を伴う眼疾患を治療する方法であって、前記方法は、スクシンイミド誘導体を含む有効量の製薬組成物を、同治療を必要とする被検体に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記眼疾患は緑内障である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スクシンイミド誘導体は抗てんかん薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗てんかん薬は欠神発作に対して有効である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記スクシンイミド誘導体は以下の式:
【化1】

[ここで、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、かつR及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、低級アルキルアリール及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スクシンイミド誘導体は以下の式:
【化2】

[ここで、XはO又はCHRであり、RはH、アルキル、アルキルアリール、アルキル−ヘテロアリール、アルキル−シクロアルキル及びアルキル−シクロテヘロアルキルからなる群より選択され、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、低級アルキルアリール及びアリールオキシアルキルからなる群より選択される]
である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スクシンイミド誘導体は、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド及びモルスクシミドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記製薬組成物は前記被検体の眼に局所投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記製薬組成物は、一日当たり1乃至4回の投与にて適用され、各投与量は10乃至500mgのスクシンイミド誘導体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スクシンイミド誘導体は、前記被検体の眼に挿入される薬物送達装置により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
眼圧の上昇に関連した眼疾患の治療のための局所眼科用製薬組成物であって、前記組成物は抗てんかんスクシンイミド誘導体と、眼への局所投与のための製薬的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項12】
点眼溶液の形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
軟膏、懸濁剤、ゲル剤又はクリームの形態である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記スクシンイミド誘導体は、請求項5又は6にて定義される式のものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記スクシンイミド誘導体は、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド及びモルスクシミドからなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗てんかんスクシンイミド誘導体の濃度は、50乃至2500mg/mlの範囲である、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも一つの製薬的に許容される薬剤を更に含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも一つの製薬的に許容される薬剤は、安定化剤、保存剤、キレート剤、粘度改質剤、緩衝剤又はpH調整剤のうちの一つ以上である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
付随的な眼科用活性剤を更に含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
前記付随的な眼科用活性剤は、抗菌剤、鎮静促進剤、又は抗酸化剤である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記眼疾患は緑内障である、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
眼圧上昇に関連した眼疾患の治療において、スクシンイミド誘導体を使用する方法。
【請求項23】
眼圧上昇に関連した眼疾患の治療のための眼科用製薬組成物の製造においてスクシンイミド誘導体を使用する方法。

【公表番号】特表2009−516677(P2009−516677A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540786(P2008−540786)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001315
【国際公開番号】WO2007/057889
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(508151091)
【氏名又は名称原語表記】SHARIR,Mordechai
【Fターム(参考)】