説明

眼帯

【課題】 長時間装着したまま日常生活を行うことができ、必要に応じて装着した状態で点眼を行うことができる眼帯を課題とする。
【解決手段】 本眼帯は、眼帯本体2と、該眼帯本体に設けられる点眼孔3と、該眼帯本体に一端を固定され且つ該点眼孔を開閉可能に設けられる点眼孔蓋5と、を備えることを特徴とする。また、眼帯本体は、上記点眼孔の周囲に点眼ノズル固定部4を更に備えることができる。このような眼帯によれば、眼帯を装着した状態で適宜点眼を行うことができる。また、眼帯に大きな付属物を具備していないために身体を動かすための支障になることがなく、眼帯を装着した状態で日常生活をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼帯を装着した状態で点眼を行うことができる眼帯に関する。更に詳しくは、長時間装着したまま日常生活を行うことができ、必要に応じて装着した状態で点眼を行うことができる眼帯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白内障等の眼の手術をおこなっても入院を行わずに、眼帯を装着して帰宅し、日常生活を行いつつ翌日以降に通院することが増えてきている。また、手術後は、眼の洗浄や常在菌等の殺菌は頻繁に行うのが好ましいが、眼帯を装着したままでは点眼等を行うことができない。更に、眼帯を外して点眼をおこなうことは、周辺の菌等が眼に侵入することとなるため好ましくない。
このため、一度眼帯を装着して帰宅すると、次に通院したときまで点眼等を行うことができず、菌等が増殖して炎症等を起きやすくなる。このため、従来は眼帯装着時に抗生物質、ステロイド剤及び抗炎症剤等の点眼薬の点眼量を多くすることで対処している。
【0003】
一方、このような頻繁に点眼を行うための装置として、眼帯に点眼孔を設けて点眼液を供給するチューブを接続し、その点眼孔から連続して点眼を行うことができる点眼装置が提案されている(特許文献1を参照)。また、アイマスクの内側に保水剤を設け、保水剤中の水分を蒸発させて眼に潤いを与えるアイマスクが提案されている(特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−289916号公報
【特許文献2】特開2000−5209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記点眼装置は、ベッド等の上で安静にした状態で連続点眼を行うことを目的としたものであり、点眼液供給用チューブや排液用チューブ等を接続しておく必要があるため、点眼後起床して日常生活をおこなうには適さなかった。また、上記アイマスクは、蒸発可能な液状物を眼に供給するには適するが、蒸発が困難な溶質を眼に供給するには適さない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、長時間装着したまま日常生活を行うことができ、必要に応じて装着した状態で点眼を行うことができる眼帯を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.眼帯本体と、該眼帯本体に設けられる点眼孔と、該眼帯本体に一端を固定され且つ該点眼孔を開閉可能に設けられる点眼孔蓋と、を備えることを特徴とする眼帯。
2.上記眼帯本体は、上記点眼孔の周囲に点眼ノズル固定部を更に備える上記1.記載の眼帯。
3.上記点眼ノズル固定部は、眼球側が細くなるテーパを備える円筒形状である上記2.記載の眼帯。
4.上記眼帯本体は、その周縁に液吸収材を更に備える上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の眼帯。
5.上記点眼孔蓋は上記固定された一端を軸として回動可能であり、上記液吸収材は高吸水性樹脂である上記4.記載の眼帯。
【発明の効果】
【0007】
本発明の眼帯によれば、眼帯を装着した状態で適宜点眼を行うことができる。また、眼帯に大きな付属物を具備していないために身体を動かすための支障になることがなく、眼帯を装着した状態で日常生活をすることができる。更に、点眼を行わないときは点眼孔蓋を用いて大きな開口部である点眼孔を塞いでいるため、点眼孔から菌等が眼帯内に進入することを抑制することができ、眼帯内を清潔に保つことができる。また、点眼孔蓋は、一端を眼帯本体に固定しているため紛失することが無く、且つ任意の場所に載置されて菌等によって汚染されることがない。
【0008】
更に、点眼ノズル固定部を備える場合は、点眼時の位置決めを容易に行うことができ、点眼時間を短縮して点眼作業者及び眼帯装着者の負担を軽減することができる。また、点眼時間の短縮し、且つ点眼ノズルの先端が皮膚等に接触することを抑制することによって、点眼時に菌等の侵入を抑制することができる。
更に、点眼ノズル固定部がテーパ形状を具備する円筒形状である場合は、点眼ノズルを固定しやすくすることができ、点眼作業者及び眼帯装着者の負担を軽減することができる。
更に、液吸収材を備える場合は、点眼液並びに滲み出た涙及び血液等の液状物を液吸収材に吸収させることができ、眼球に液状物が付着したままとなって雑菌が繁殖し、炎症を起こすことを避けることができる。
また、点眼孔蓋を回動可能にする場合は、点眼孔蓋の開閉を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1〜7を例にして本発明の眼帯を詳細に説明する。
本眼帯は、例えば図1〜4に例示するように眼帯本体2、点眼孔3及び点眼孔蓋5を少なくとも備える。また、点眼ノズル固定部4及び液吸収材6を備えることができる。
【0010】
上記「眼帯本体」は、従来から知られている眼帯と同様に任意の形状及び材質を選択することができる。また、形状の具体例として図1に例示する、略球面状の板状物2を挙げることができる。更に、材質の具体例としては、鉄及びアルミニウム等の金属、並びに樹脂等を挙げることができる。また、透明でもよいし不透明でもよい。透明の眼帯本体の場合は、眼帯を付けた眼でも見ることができる。更に、不透明の眼帯本体の場合は、患部を視認しにくくすることができる。
また、眼帯本体は、例えば図5に例示するように、通気のための通気孔7を設けることができる。眼帯本体に通気孔を具備する場合は、眼帯内の湿度を適度に保ち、菌を繁殖しにくくすることができる。
尚、眼帯本体は、片眼のみ装着できるものであってもよいし、両眼に装着できてもよい。更に、両眼に装着する場合は、片眼毎に独立した形状であってもよいし、一体形状であってもよい。
上記「点眼孔」は、例えば図4に例示するように、眼帯1を装着したときに眼球91の略直前となる位置に設けられた孔3である。点眼孔の大きさ及び形状は、点眼薬容器8の点眼ノズル81を挿入することができればよく、特に限定されない。
【0011】
上記「点眼孔蓋」は、点眼孔を覆うことによって大きな開口部である点眼孔から雑菌等が侵入することを抑制するための蓋である。点眼孔蓋の形状及び材質は、任意に選択することができる。また、点眼孔蓋の一端は眼帯本体に固定されるのが好ましい。
点眼孔蓋の一端を眼帯本体に固定して、点眼孔蓋の紛失を防止することで、開放された点眼孔から雑菌等が眼帯内に進入し、眼帯内が雑菌等によって汚染されるのを防止することができるからである。更に、外された点眼孔蓋が不衛生な場所に載置されることによって、雑菌等が付着し、再度眼帯本体に設けることによって眼帯が汚染されることを防止することができる。
上記「固定」の方法は、点眼孔蓋が眼帯本体から脱落しないように設けられていればよく、任意の方法を選択することができる。例えば、点眼孔蓋が回動及び位置移動ができないように設けられていてもよいし、図1及び2に例示するように点眼孔蓋5がその一端51を軸として回動可能に固定されていてもよい。更に、図6に例示するように、眼帯本体2に脱落防止用のストッパを具備する摺動溝52を設け、この摺動溝52に沿って点眼孔蓋5Aをスライド移動できるように固定されていてもよい。また、図7に例示するように、点眼孔蓋5Bの眼帯本体2の接触側に粘着剤を設けて粘着固定し、点眼時には点眼孔蓋5Bの一部を剥がして点眼孔3を露出させるようにしてもよい。これらのうち、点眼孔蓋の一端は、図1及び2に例示するように、一端51を軸として回動可能に固定されるのが好ましい。
【0012】
上記「点眼ノズル固定部」は、点眼孔の周囲に設けられ、点眼薬容器等に具備する点眼ノズルを、その先端が眼球側に向くように固定することができるガイドである。点眼ノズル固定部の形状は特に限定されず、例えば図4に例示するような円筒形状の点眼ノズル固定部4の他、点眼孔の周囲に複数立設された任意形状の棒状体等を挙げることができる。
更に、点眼ノズル固定部4は、図4に例示するように、眼球側が細くなるテーパを備えていることが好ましい。テーパを備えることによって点眼ノズルの先端側を眼球側に向けて固定しやすくすることができるからである。
【0013】
上記「液吸収材」は、眼帯内の液状物を吸収するための吸収材である。この液状物の例として、点眼時に過剰に点眼された点眼液、並びに涙、汗及び血液等の体液等を挙げることができる。液吸収材を用いて眼帯内の過剰な液状物を除去することによって、装着者の液状物に由来する異物感をなくすことができる。また、眼球に液状物が付着したままとなって雑菌が繁殖しやすい状況を避けることができる。
液吸収材は、上記液状物を吸収し、内部に保持することができればよく、例えば、不織布、ガーゼ、吸水性樹脂等の1種及びこれらの組み合わせを挙げることができる。このうち、吸水性樹脂、特に高吸水性樹脂を少なくとも有するのが好ましい、液状物の吸収及び保持の性能が高いためである。
この高吸水性樹脂は、水及びその溶解物を取り込み、容易に放出することがない樹脂であればよく、ポリビニルアルコール系、マレイン酸系、ポリアクリル酸系、ポリエチレンオキサイド系、セルロース系、及びデンプン系等を例示することができる。
液吸収材は、装着者と眼帯本体とが接触する部分である眼帯本体の端部に設けるのが好ましい(例えば図1〜4の眼帯本体2の外周に設けた液吸収材6を参照。)。
【0014】
本眼帯を装着する方法は特に限定されず、既知の方法を任意に選択して用いることができる。例えば、眼帯本体及び/又は液吸収材に粘着剤を設けて、装着者の顔面に貼り付け固定することができる。また、医療用接着テープを用いて装着者の顔面に貼り付け固定することができる。更に、紐等を設けて耳に引っ掛け固定することができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例により本発明の眼帯を具体的に説明する。
1.眼帯の構成
本実施例の眼帯1は、図1〜4に示すように、眼帯本体2と、眼帯本体2に設けられた点眼孔3、点眼ノズル固定部4、点眼孔蓋5及び液吸収材6とを備える。
眼帯本体2は、略球面形状であり、平面形状が略楕円形状の透明樹脂板である。
点眼孔3は、眼帯本体2の略中心に設けられた直径約10mmの孔であり、図4に示すように直径約10mmまでの点眼薬容器8の点眼ノズル81を挿入することができる。
点眼ノズル固定部4は、テーパを具備する円筒形状樹脂であり、眼帯本体2と一体形成されている。また、点眼ノズル固定部4の広口側を点眼孔3に接続し、点眼孔3に挿入された点眼薬容器8のノズル81を挟持し、ノズル先端を眼球91の方向に固定する。
尚、点眼ノズル固定部4は、眼帯本体2と別体形成され、その後接合されていてもかまわない。
【0016】
点眼孔蓋5は樹脂製であり、直径約15mmの略楕円板である。また、一端に眼帯本体2に設けられた連通孔に固定するための固定軸51が設けられている。点眼孔蓋5は、固定軸51を眼帯本体2の連通孔に挿入することによって回動可能に固定される。
また、図1に示すように点眼を行わないときは点眼孔3を覆う位置で用いられる。更に、点眼を行うときは固定軸51を軸として回動させ、図2及び4に示すように点眼孔3を露出させることができる。
液吸収材6は、ポリビニルアルコール架橋体等の高吸水性樹脂を包んだガーゼからなり、図1〜4に示すように眼帯本体2の周囲に設けられている。
【0017】
2.眼帯の使用方法
このような眼帯1は、図3に示すように従来の眼帯と同様に眼球91を覆うように装着者92に装着して用いることができる。また、眼帯1は、医療用接着テープ等を用いて装着者92に固定される(図示せず)。
このように装着している間は従来の眼帯と同様に扱うことができ、日常生活を支障なく行うことができる。更に、大きな開口部である点眼孔3は点眼孔蓋5によって覆われているため、点眼孔3から雑菌等が眼帯内に進入することを防ぐことができる。
また、装着時に滲み出る汗、涙及び血液等の体液は、液吸収材6によって吸収及び保持されるため、異物感をもたらすことがない。
【0018】
また、点眼を行うときは、図2及び4に示すように点眼孔蓋5をずらして点眼孔3を露出させ、次いで、点眼薬容器8の点眼ノズル81を点眼孔3に挿入し、その後、点眼ノズル81から点眼液を眼球91に滴下する。
点眼孔3に挿入された点眼ノズル81は、点眼ノズル固定部4によって先端が眼球91の方向に向く形で固定され、眼球以外の位置に点眼液が滴下することを妨げることができる。更に、過剰に点眼を行い、あふれてしまった点眼液は液吸収材6によって吸収及び保持することができるため、異物感をもたらすことがない。
【0019】
尚、本発明においては、前記実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。例えば、図5に示すように、連通孔7を具備する眼帯1Aとしてもよい。この通気孔7は、眼帯本体2に多数設けられた連通孔であり、眼帯内の湿度を適度に保ち、菌を繁殖しにくくすることができる。
また、図6に示すように、眼帯本体2に設けられた摺動溝52に沿ってスライド移動することによって点眼孔3を開閉することができる点眼孔蓋5Aを備える眼帯1Bとしてもよい。更に、図7に示すように、一端51が容易に剥がれないように眼帯本体2に粘着固定し、他端をめくり上げることによって点眼孔3を開閉することができる点眼孔蓋5Bを備える眼帯1Cとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本眼帯の構成を説明するための模式斜視図である。
【図2】本眼帯の構成を説明するための模式平面図である。
【図3】本眼帯を装着した状態を説明するための模式図である。
【図4】本眼帯を装着し、点眼を行う様子を説明するための模式断面図である。
【図5】他の態様の眼帯の構成を説明するための模式斜視図である。
【図6】他の態様の眼帯の構成を説明するための模式斜視図である。
【図7】他の態様の眼帯の構成を説明するための模式斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1、1A、1B、1C;眼帯、2;眼帯本体、3;点眼孔、4;点眼ノズル固定部、5;点眼孔蓋、6;液吸収材、7;通気孔、8;点眼薬容器、81;点眼ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼帯本体と、該眼帯本体に設けられる点眼孔と、該眼帯本体に一端を固定され且つ該点眼孔を開閉可能に設けられる点眼孔蓋と、を備えることを特徴とする眼帯。
【請求項2】
上記眼帯本体は、上記点眼孔の周囲に点眼ノズル固定部を更に備える請求項1記載の眼帯。
【請求項3】
上記点眼ノズル固定部は、眼球側が細くなるテーパを備える円筒形状である請求項2記載の眼帯。
【請求項4】
上記眼帯本体は、その周縁に液吸収材を更に備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の眼帯。
【請求項5】
上記点眼孔蓋は上記固定された一端を軸として回動可能であり、
上記液吸収材は高吸水性樹脂である請求項4記載の眼帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151766(P2007−151766A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350008(P2005−350008)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(505123620)