説明

眼底分光特性測定装置及び眼底分光特性測定方法、並びに分光特性測定装置及び分光特性測定方法

【課題】検出感度の低下を招くことなく高精度に眼底の分光特性を測定することができる眼底分光特性測定装置及び眼底分光特性測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の眼底分光特性測定装置1は、光源からの光を被検眼眼底Sbに照射して該眼底Sbから発せられる光を対物レンズを通して第1反射部16と第2反射部15に導く。そして第1及び第2反射部16、15で反射された第1及び第2反射光を結像レンズで同一点に導き、干渉光強度を検出部24で検出する。位相シフター14によって第1及び第2反射光の光路長差を伸縮させつつ検出部24で干渉光強度変化を検出し、処理部30はその干渉光強度変化からインターフェログラムを求める。このとき、処理部30は結像レンズの光軸と結像面の交点から受光素子までの距離、結像レンズの焦点距離、第1反射部16の移動量から光路長差を算出し、光路長差に応じてスペクトルを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光特性を測定する技術に関し、特に被検眼眼底の分光特性を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より眼科診断において眼底組織の蛍光を測定することが行われている。例えば、加齢黄斑変性症(AMD:Age-related Macular Degeneration)という疾患では、リポフスチンと言われる物質が眼底網膜の黄斑部に蓄積することが知られている。リポフスチンは一種の蛍光物質であるので、所定の波長の光を照射すると自然蛍光を発する。従って、眼底網膜からの自然蛍光の光量を測定すればリポフスチンの蓄積量を定量測定することができるため、AMDの早期診断が可能であると考えられる。
【0003】
特許文献1には、このような眼底組織からの自然蛍光を測定する装置が開示されている。この眼底蛍光測定装置は、被検眼眼底に励起光を照射し、これにより被検眼眼底から発せられる自然蛍光を受光素子で受光して測定する。特許文献1に記載の装置では、被検眼眼底とほぼ共役な位置に絞りが配置されており、受光素子は絞りを介して被検眼眼底からの自然蛍光を受光する。このため、被検眼眼底からの自然蛍光の多くが絞りを通過せず、測定に供されない。眼底からの自然蛍光は非常に微弱であることから、このように光の利用効率が低いと、被検眼眼底からの自然蛍光の分光特性を正確に評価することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-247076号公報
【特許文献2】特開2008-309706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、検出感度の低下を招くことなく高精度に眼底の分光特性を測定することができる眼底分光特性測定装置及び眼底分光特性測定方法、並びに分光特性測定装置及び分光特性測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、被測定物を光学的に構成する輝点から生じる物体光を分割し、これら分割光同士の干渉現象を利用することにより被測定物のインターフェログラムを求める手法を発明し、先に出願した(特許文献2)。本願発明は、この手法を眼底の分光特性測定に利用したものである。
【0007】
具体的には、上記課題を解決するために成された本発明に係る眼底分光特性測定装置は、
a) 被検眼眼底に光を照射する光源と、
b) 被検眼眼底から発せられる光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
c) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
d) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段と、
e) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
f) 前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段と、
g) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出する光路長差算出手段と、
h) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記干渉光強度検出手段の各受光素子で干渉光強度変化を検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、処理部は、算出された光路長差に基づきインターフェログラムを求めるようにしても良く、第1反射部の移動量に基づきインターフェログラムを求め、このインターフェログラムと算出された光路長差とからスペクトルを求めるようにしても良い。
【0009】
また、上述の眼底分光特性測定装置は、さらに、前記被検眼眼底の2次元画像を取得する画像取得手段と、前記2次元画像から前記被検眼眼底の特定領域を抽出させる領域抽出手段とを備え、前記処理部が、前記被検眼眼底の特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を各受光素子で検出して、当該受光素子におけるスペクトルを取得することを特徴とする。
【0010】
例えば、上述の加齢黄斑変性症(AMD)は滲出型と萎縮型に分けられ、中心暗点、変視症、非可逆且つ高度な視力低下といった症状が見られる。萎縮型は進行が緩慢であるのに対して滲出型は進行が早い。厚生省(現厚生労働省)特定疾患網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班により作成された分類及び診断基準によると、AMDの前駆病変として中心窩を中心とする半径3mm以内の領域に、軟性ドルーゼンや網膜色素上皮異常がみられる。網膜色素上皮異常とは、網膜色素上皮の色素脱失、色素沈着、色素むら、小型の漿液性網膜色素上皮剥離(直径1乳頭未満)を指す。図1は、健康な網膜(a)とAMD患者の網膜(b)を示している。このように、健康な網膜とAMD患者の網膜では、中心窩を中心とする半径3mm以内の領域の色調、色素むらの有無等が明らかに異なる。
従って、本発明の眼底分光特性装置を用いて、網膜の分光特性を測定することにより、網膜色素上皮異常の有無を調べることができ、ひいてはAMDの早期診断が可能となる。
【0011】
また、本発明に係る眼底分光特性測定方法は、
a) 被検眼眼底から発せられる光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段により、前記同一点に導かれた干渉光の強度を検出し、
d) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出し、
d) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、各受光素子で干渉光強度変化を検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る分光特性測定装置は、
a) 被測定物から発せられる光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段と、
d) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段と、
f) 前記被測定物の2次元画像を取得する画像取得手段と、
g) 前記2次元画像から前記被測定物の特定領域を抽出させる領域抽出手段と、
h) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出する光路長差算出手段と、
i) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を各受光素子で検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る分光特性測定方法は、
a) 被測定物から発せられる光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段により、前記同一点に導かれた干渉光の強度を検出し、
d) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、前記被測定物の特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を各受光素子で検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得し、
e) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出し、
f) 算出された前記光路長差に応じて当該受光素子における前記スペクトルを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分割光学系(対物レンズ、固定ミラー部、可動ミラー部)を通過してきた光線の全てを被検眼眼底の分光特性測定に利用することができるため、微弱光であっても分光特性の測定精度を向上させることができる。また、2次元配置された複数の受光素子のうちいずれの位置の受光素子で検出された干渉光強度に基づきスペクトルを取得した場合であっても、光路長差を正しく求めてスペクトルを補正することができるため、分光特性の測定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】健康な網膜(a)と加齢黄斑変性症患者の網膜(b)の眼底画像の例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る眼底分光特性測定装置の概略的な全体構成図。
【図3】位相シフターの可動ミラー部の構成を示す側面図。
【図4】分光特性測定装置の光学的作用の説明図。
【図5】光路長差の算出方法の説明図。
【図6】2次元CCDカメラの画素位置によって光路長差が異なることを説明するための図。
【図7】光軸から画素までの距離によるピーク波長の違いを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の眼底分光特性測定装置の一実施形態について説明する。
図2は本実施形態に係る眼底分光特性測定装置1の光学系を概略的に示す図である。眼底分光特性測定装置1では、光源5から出射した光がハーフミラー8により図中下方に反射され、対物レンズ12により平行光束となり平行光線化されて被検眼Sに照射される。
【0017】
被検眼Sに照射された光は被検眼Sの前眼部Saを透過して眼底Sbに到達し、様々な光学現象に起因した反射光、散乱光が生成される。これらの生成された光により眼底Sbを光学的にモデル化すると、理想的な点光源である輝点の集合体と見なすことができる。照明方式や光学現象により指向性は異なるが、理想的な点光源である1つの輝点からは、放射状に光線が射出される。このように眼底Sb上の一輝点から射出された光(「物体光」ともいう。)は、多様な方向に向かって放射され、前眼部Saを透過して対物レンズ12に入射し、平行光束へ変換される。
【0018】
前記対物レンズ12は分割光学系を構成するものであり、レンズ駆動機構13によって光軸方向に移動可能に構成されている。レンズ駆動機構13は、対物レンズ12の合焦位置を走査するためのもので、例えばピエゾ素子により構成することができる。
【0019】
なお、対物レンズ12を透過した後の光束は完全な平行光束である必要はない。後述するように、1つの輝点から生じた光線を2分割あるいはそれ以上に分割できる程度に広げることができればよい。ただし、平行光束でない場合は、後述の位相シフト量に応じて生じる位相差量に誤差を生じ易い。従って、より高い分光計測精度を得るためにはできるだけ平行光束とすることが望ましい。
【0020】
対物レンズ12を透過してきた平行光束はハーフミラー8及び10を介して位相シフター14に到達する。位相シフター14は、図2及び図3に示すように、矩形板状の固定ミラー部15及び可動ミラー部16、可動ミラー部16を保持する保持部17、保持部17を移動する駆動ステージ18を備えて構成されている。固定ミラー部15及び可動ミラー部16の表面は光学的に平坦で且つ本装置1が計測対象とする光の波長帯域を反射可能な光学鏡面となっている。
【0021】
本実施例では、可動ミラー部16及び固定ミラー部15がそれぞれ第1及び第2反射部に相当する。なお、以下の説明では、位相シフター14に到達した光束のうち固定ミラー部15の反射面に到達して反射される光束を固定光線、可動ミラー部16の反射面に到達して反射される光束を可動光線ともいう。
【0022】
駆動ステージ18は、例えば静電容量センサを具備する圧電素子から構成されており、制御部20からの制御信号を受けて保持部17を矢印A方向に移動する。これにより、可動ミラー部16は光の波長に応じた精度で矢印A方向に移動する。分光特性測定能力にもよるが、例えば可視光領域では10nm程度の高精度な位置制御が必要となる。
駆動ステージ18は、圧電素子を用いたピエゾアクチュエータにより駆動され、該駆動ステージ18の駆動に伴い可動ミラー部16は矢印A方向に移動する。本実施形態では、保持部17、駆動ステージ18、ピエゾアクチュエータが光路長差伸縮手段を構成する。駆動ステージ18の移動量はピエゾアクチュエータに内蔵の変位センサ32によって検出される。変位センサ32は静電ストレインゲージ等の歪みセンサからなり、その検出信号は制御部20に入力される。制御部20は変位センサ32からの検出信号に基づき駆動ステージ18の移動量、つまり可動ミラー部16の移動量をモニタリングし、当該移動量を予め設定された値に制御する。従って、本実施形態では、変位センサ32が移動量検出手段を構成する。
【0023】
位相シフター14に到達し、固定ミラー部15及び可動ミラー部16の反射面で反射された固定光線及び可動光線は、それぞれハーフミラー10で反射された後、結像レンズ22に入射し、該結像レンズ22により収束されて検出部24に入る。検出部24は受光面を有する2次元CCDカメラから構成されている。2次元CCDカメラの受光面は結像レンズ22の結像面に配置されており、固定ミラー部15及び可動ミラー部16の反射面で反射され結像レンズ22により収束された固定光線及び可動光線は、2次元CCDカメラの受光面において結像する。2次元CCDカメラは受光面の結像強度に応じた出力信号を分光処理装置30に出力する。
【0024】
このとき、被検眼Sの眼底Sbから発せられる光線には様々な波長の光が含まれる(且つ各波長の光の初期位相が必ずしも揃っていない)ことから、可動ミラー部16を移動させて固定光線と可動光線との光路長差を変化させることにより、図4(a)に示すようなインターフェログラムと呼ばれる結像強度変化(干渉光強度変化)の波形が得られる。図4(a)は検出部24の一つの画素におけるインターフェログラムである。なお、図4(a)において、横軸は可動ミラー部16の移動に伴う固定光線と可動光線間の光路長差を、縦軸は結像面上の一点における結像強度を示す。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより、被検眼Sの眼底Sb上の一輝点から発せられた光の波長毎の相対強度である分光特性を取得することができる(図4(b)参照)。2次元CCDカメラの全ての画素において分光特性を得ることができれば、被検眼Sの2次元分光特性測定が可能となる。
【0025】
分光処理装置30は、2次元CCDカメラからの眼底画像データを取得する画像データ取得部301、2次元CCDカメラからの干渉光強度データを取得する光強度データ取得部302、変位センサ32で検出された可動ミラー部16の移動量、2次元CCDカメラの画素の位置に基づき光路長差を算出する光路長差算出部303、算出された光路長差と光強度データと対応付けてインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより分光特性(スペクトル)を測定する分光処理部304、眼底画像から特定領域を抽出させる領域抽出部305、所定領域の分光スペクトルを評価するスペクトル評価部306を備える。記憶部307は、算出された光路長差と光強度データを対応付けて記憶する。また、眼底画像、分光特性(スペクトル)などを記憶する。表示部308は、図示しない表示装置に眼底画像や分光特性(スペクトル)などを表示させる。
【0026】
画像データ取得部301が本発明の画像取得手段に相当し、例えば光源5からの光が眼底Sbに照射された初期状態(つまり、位相シフター14が停止状態にあり、固定ミラー部15と可動ミラー部16の反射面が同じ位置にあるとき)における2次元CCDカメラからの画像データを取得する。
領域抽出部305が本発明の領域抽出手段に相当し、例えば表示装置に表示された眼底画像上でカーソルを移動させるマウスなどから構成することができる。このような構成によれば、作業者がマウスを操作してカーソルを移動させることにより眼底Sbの適宜の領域を選択できる。
2次元CCDカメラにより取得された画像データを用いて、網膜上の中心窩を特定しここを中心とする半径3mm以内を抽出領域と定めても良い。
【0027】
次に、光学光路長差の求め方を説明する。
上述したように、測定対象である被検眼Sの眼底Sb上の一測定点から出射した光は対物レンズ12を通過した後、ハーフミラー8,10を通って位相シフター14に入射し、固定ミラー部15及び可動ミラー部16で反射された後、ハーフミラー10を介して結像レンズ22に入射する。このとき、図5に示すように、光軸上ではない測定点Pから生じた光(散乱光)は、位相シフター14の固定ミラー部15及び可動ミラー部16の反射面に垂直に入射せず、光軸に対してわずかに傾いた状態で入射する。このように光軸から傾いて位相シフター14に入射した場合の光路長差は図6に一点鎖線で示す距離となる。入射角度をθ、固定ミラー部と可動ミラー部の間の距離をdx、測定点Pと光軸との距離をyとすると、固定ミラー部15で反射され検出部24に入射する光線(固定光線)と、可動ミラー部16で反射され検出部24に入射する光線の光路長差Δxは次の式(1)で表される。
Δx= 2dx・cosθ (1)
【0028】
また、図6から、結像レンズの焦点距離をf、2次元CCDカメラの画素と結像レンズの光軸との距離をyとすると、位相シフター14への入射角θは次の式(2)で表される。
θ= arctan(y/f) (2)
式(1)及び(2)から、光路長差Δx(θ)(入射角θのときの光路長差)は次の式(3)で表される。
Δx(θ)= 2dx・cos(arctan(y/f)) (3)
【0029】
式(3)より、可動ミラー部16を移動させたときに与えられる光路長差は、2次元CCDカメラの各画素の光軸からの距離によって変化することが分かる。そこで、本実施形態では、可動ミラー部16の移動量と2次元CCDの画素毎に、当該画素の光軸からの距離と可動ミラー部16の移動量とから光路長差を算出し、この光路長差を使って分光特性を求めるようにしている。
【0030】
図7は、CCDカメラの画素位置に関係なく、可動ミラー部16の移動量を光路長差としたときの(つまり、光路長差補正をしない場合)、ピーク波長の変化をシミュレーションした結果を示している。図7は、光路長差を伸縮させつつ、633nmの光を対物レンズ12に入射させてたときに得られる分光スペクトルのピーク波長を示している。横軸は2次元CCDカメラの画素と結像レンズ22の光軸との距離を、縦軸はピーク波長を表す。なお、結像レンズ22の焦点距離は50 mmである。図7に示すように、光軸からの距離が大きくなるにつれてピーク波長が長波長側にシフトし、光軸からの距離が0.01mのときはピーク波長が約645nmとなり、実際のピーク波長(633nm)から10nm以上ずれていることが分かる。
【0031】
これに対して、上記式(3)から求められた光路長差を用いて分光スペクトルを得た場合は2次元CCDカメラの画素位置に関係なく正しくピーク波長633nmを得ることができる。従って、例えば、被検眼の眼底の特定領域における分光特性を求める場合であっても、干渉光強度変化を検出する画素の位置によってピーク波長がずれることがなく、該特定領域の分光特性を精度良く求めることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…眼底分光特性測定装置
5…光源
8,10…ハーフミラー
12…対物レンズ
13…レンズ駆動機構
14…位相シフター
15…固定ミラー部
16…可動ミラー部
22…結像レンズ
24…検出部
30…分光処理装置
301…画像データ取得部
302…光強度データ取得部
303…光路長差算出部
304…分光処理部
305…領域抽出部
306…スペクトル評価部
307…記憶部
308…表示部
32…変位センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 被検眼眼底に光を照射する光源と、
b) 被検眼眼底から発せられる光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
c) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
d) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段と、
e) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
f) 前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段と、
g) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出する光路長差算出手段と、
h) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記干渉光強度検出手段の各受光素子で干渉光強度変化を検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
を備えることを特徴とする眼底分光特性測定装置。
【請求項2】
前記被検眼眼底の2次元画像を取得する画像取得手段と、
前記2次元画像から前記被検眼眼底の特定領域を抽出させる領域抽出手段と
を備え、
前記処理部が、前記被検眼眼底の特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を前記受光素子で検出して、インターフェログラムを求めることを特徴とする請求項1に記載の眼底分光特性測定装置。
【請求項3】
前記領域抽出手段が、前記被検眼眼底の中心窩を中心とする所定領域を抽出することを特徴とする請求項2に記載の眼底分光特性測定装置。
【請求項4】
a) 被検眼眼底から発せられる光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段により、前記同一点に導かれた干渉光の強度を検出し、
d) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出し、
e) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、各受光素子で干渉光強度変化を検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得することを特徴とする眼底分光特性測定方法。
【請求項5】
a) 被測定物から発せられる光を分割して第1反射部と第2反射部に導く分割光学系と、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を同一点に導く結像光学系と、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段と、
d) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮する光路長差伸縮手段と、
e) 前記第1反射部の移動量を検出する移動量検出手段と、
f) 前記被測定物の2次元画像を取得する画像取得手段と、
g) 前記2次元画像から前記被測定物の特定領域を抽出させる領域抽出手段と、
h) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出する光路長差算出手段と、
i) 前記光路長差伸縮手段によって光路長差を伸縮させつつ前記特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を各受光素子で検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と、
を備えることを特徴とする分光特性測定装置。
【請求項6】
領域抽出手段が、前記画像取得手段で得られた2次元画像データから中心窩を中心とする所定領域を抽出し、抽出された所定領域に基づきインターフェログラムを取得することを特徴とする請求項5に記載の分光特性測定装置。
【請求項7】
a) 被測定物から発せられる光を分割光学系によって分割して第1反射部と第2反射部に導き、
b) 前記第1反射部で反射された第1反射光と前記第2反射部で反射された第2反射光を結像光学系によって同一点に導き、
c) 前記結像光学系の結像面上に2次元配置された複数の受光素子を有する干渉光強度検出手段により、前記同一点に導かれた干渉光の強度を検出し、
d) 前記第1反射部を移動させることにより前記第1反射光と前記第2反射光の光路長差を伸縮させつつ、前記被測定物の特定領域から発せられた光の干渉光強度変化を各受光素子で検出してインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得し、
e) 前記結像光学系の光軸と前記結像面の交点から各受光素子までの距離と、前記結像光学系の焦点距離と、前記第1反射部の移動量から当該受光素子における光路長差を算出し、
f) 算出された前記光路長差に応じて当該受講素子における前記スペクトルを補正することを特徴とする分光特性測定方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−183122(P2012−183122A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46890(P2011−46890)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】