説明

眼底血管評価システム

【課題】眼底血管の表面を客観的に数値として評価できるシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係る眼底血管評価システムは、眼底血管を観察する眼底カメラ1と、赤色、緑色及び青色の3帯域別に撮影及び記録するデジタルカメラ2と、血管画像の特性を数値に変換して客観評価する情報処理装置3と、を備えて構成される。この場合において、眼底カメラは眼底血管を460nm以上720nmの間の波長光の画像として観察できることが好ましい。また、デジタルカメラは、赤色、緑色及び青色の3帯域別に非圧縮データとして1000万画素以上で撮影及び記録することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底の血管を画像解析して血管表面の特性を評価することができる眼底血管評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼底血管の状態を評価するには、Keith−Wagener分類(1939年、下記非特許文献1参照)と、Scheie分類(1953年、下記非特許文献2参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Keith N.M.,Wagener H.P. and Barker、N.W.、“Some different types of essential hypertension:Their course and prognosis.”、Amer.J.Med.Sci.、197:332−43、1939.
【非特許文献2】Scheie H.G.、“Evaluation of ophthalmoscopic changes of hypertension and arteriolar sclerosis.”、AMA Arch Ophthalmol.、Feb.1953;49(2):117−38.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記分類はいずれも定性的なランクづけであり、検者の恣意が混入してしまうといった課題があり、眼底血管の定量的客観的評価するシステムは現在のところない。
【0005】
従って本発明は、以上を鑑み、眼底血管の表面の評価を客観的数値として表示できるようにする眼底血管評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため具体的には以下の手段を採用する。具体的には、本発明の第一の手段に係る眼底血管評価システムは、眼底血管を観察する眼底カメラと、赤色、緑色及び青色の3帯域別に撮影及び記録するデジタルカメラと、血管画像の特性を数値に変換して客観評価する情報処理装置と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本手段において、限定されるわけではないが、眼底カメラは、眼底血管を460nm以上720nmの間の波長光の画像として観察できることが好ましい。
【0008】
また、本手段において、限定されるわけではないが、デジタルカメラは、赤色、緑色及び青色の3帯域別に非圧縮データとして1000万画素以上で撮影及び記録できることが好ましい。
【0009】
また、本手段において、限定されるわけではないが、情報処理装置は、画像情報を2次元フーリエ演算して赤色、緑色及び青色の3帯域別の空間周波数のパワースペクトルを用いて数値化することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
このシステムにより、眼底画像における血管表面の輝度情報を数値化できる眼底血管評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る眼底血管評価システム装置を示す図である。
【図2】本装置係る解析手順を示す図である。
【図3】解析する眼底全体所見を示す図である。
【図4】解析しようとする関心領域を示す図である。
【図5】解析しようとする関心領域の血管縁と血管中心を示す図である。
【図6】解析しようとする血管と血管中心を示す図である。
【図7】解析しようとする血管の緑色帯域の2次元フーリエ解析結果を示す図である。
【図8】解析した赤色と緑色と青色帯域のパワースペクトルを示す図である。
【図9】高齢者群と若年者群の解析結果の平均値と標準偏差を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を基に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例示にのみ限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る眼底血管評価システム(以下「本システム」という。)の概略を示す図である。本図で示すように、本システムは、眼底カメラ1、デジタルカメラ2、情報処理装置3、印字装置4と、を有して構成される。
【0014】
本実施形態において眼底カメラ1は、眼底を観察することのできる装置であって、公知の構成のものを使用することができる。本実施形態において眼底カメラ1は、可視領域において眼底を観察することができることが好ましく、可視光領域としては、限定されるわけではないが、460nm以上720nm以下の範囲において、画像情報をひずみなく観察することができることが好ましい
【0015】
また、本実施形態においてデジタルカメラ2は、眼底カメラ1の観察状態を記録することの出来るものであって、赤色、緑色、青色の3帯域の画像にわけて記録できることが好ましい。なおこの場合において、デジタルカメラ2の画像は、圧縮による画像情報の欠失を防ぐため、非圧縮で保存できることが好ましい。
【0016】
また、本実施形態に係るデジタルカメラ2で記録された情報は、情報処理装置3に転送される。転送の方法としては、ケーブル等の有線で接続した状態での転送であっても、無線を介した転送であってもよく、また場合によってはCD−ROM等の記憶媒体を介したデータの転送であっても良い。
【0017】
また、本実施形態では、情報処理装置3に転送された画像情報は、解析プログラムにより数値化される。この数値化は、赤色、緑色、及び青色の帯域別に数値化されることが好ましい。
【0018】
ここで、次に解析プログラムについて述べる。図2は、解析プログラムが行なう解析手順を示す図である。本図で示すように、まず、スタート後、情報処理装置3のキーボードやマウス等の入力装置302を用いてを用いて眼底画像を選択する(S01)。次に、解析する血管を選択する(S02)。そして、その血管を中心に関心領域を切り出す(S03、図3参照)。この場合において、関心領域のサイズは適宜調整可能であるが、例えば300ピクセル×300ピクセル程度がこのましい。なお選択する血管は視神経乳頭の辺縁から視神経乳頭の直径程度離れた眼底画像の中心により近いより太い血管を選択することが好ましい。そして、血管だけを抽出する(S04、図4乃至図6参照)。このとき血管の分岐や交差による関心血管と非関心血管との誤認識に対処するため、関心血管の中心を解析するべき血管に沿って数点選択する(図4参照)。その点の数は限定されるわけではないが、例えば9点程度あることが好ましい。さらに、血管の分岐、交差による誤認識に対処するために関心血管の太さをはさむように関心血管の辺縁2点を選択して、およその太さを指定することも好ましい。次にその血管の縁を輝度により定める(図5参照)。このステップで血管の表面を抽出する(図6参照)。次のステップで抽出された血管表面の輝度のパワー値を二次元フーリエ解析により求め(S05、図7参照)、その空間周波数のスペクトルを求める(S06、図8参照)。赤色、緑色、及び青色の血管表面の空間周波数のスペクトルそのものが血管表面の情報を提供することとなる。なお場合によってはこのスペクトルそのものを用いてもよい。この場合において、簡略化してピーク値とそのピーク値の周波数を用いるのも好ましい(S07)。また、回帰させた係数を用いるのも好ましい(S07)。たとえば回帰直線の傾きを用いるのも好ましく、曲線回帰の係数を用いるのも好ましい(S07)。又は、そのスペクトルの平均値あるいは積分値を用いるのも好ましい(S07)。そして、これらの値と、予め情報処理装置の記録媒体などに記録しておいた標準値と比較し、その結果を算出する。なお、この処理の後、解析プログラムは情報処理装置3における表示装置301等に結果を表示させ(S09)、必要に応じて印字装置4に印刷させ(S10)、又はハードディスク等の記録媒体にデータを保存し(S08)、終了する。
【0019】
なお図6は、抽出した緑帯域の血管のみをあらわし、図7は緑帯域の血管表面画像情報の2次元フーリエ解析結果を表している。また、図8は血管表面画像情報の2次元フーリエ解析結果のパワーの空間周波数軸で観察した赤色と緑色と青色のスペクトルを表し、図9は75歳以上の高齢者群11名の解析結果の2次元フーリエ結果の直線回帰による係数すなわち傾きと,35歳以下の若年者群10名の血管表面画像情報の2次元フーリエ解析結果の直線回帰による係数すなわち傾きの平均値と標準偏差を赤色、緑色、及び青色のそれぞれにおいて求めたものである。
【0020】
以上、本システムにより、眼底画像における血管表面の輝度情報を数値化できる眼底血管評価システムを提供することができる
【符号の説明】
【0021】
1…眼底カメラ、2…デジタルカメラ、3…情報処理装置、301…表示装置、302…入力装置、4…印字装置、5…関心領域、6…解析血管、601…血管縁A、602…血管縁B、603…血管中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底血管を観察する眼底カメラと、
赤色、緑色及び青色の3帯域別に撮影及び記録するデジタルカメラと、
血管画像の特性を数値に変換して客観評価する情報処理装置と、を備えた眼底血管評価システム。
【請求項2】
前記眼底カメラは眼底血管を460nm以上720nmの間の波長光の画像として観察できることを特徴とする請求項1記載の眼底血管評価システム。
【請求項3】
前記デジタルカメラは、赤色、緑色及び青色の3帯域別に非圧縮データとして1000万画素以上で撮影及び記録する請求項1記載の眼底血管評価システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、画像情報を2次元フーリエ演算して赤色、緑色及び青色の3帯域別の空間周波数のパワースペクトルを用いて数値化する請求項1記載の眼底血管評価システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213526(P2012−213526A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81279(P2011−81279)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)