説明

眼標的のRNAi媒介型阻害

RNA干渉により、高眼圧症の標的mRNA発現の阻害がもたらされ、開放隅角緑内障又は高眼圧症の患者における上昇した眼内圧を低下させることが可能となる。高眼圧症の標的には、カルボニックアンヒドラーゼII、IV及びXII;β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ;Na/K−ATPase;並びにNa−K−2Cl共輸送体が含まれる。高眼圧症は、本発明の干渉RNAを投与することによって処置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、緑内障において、具体的には原発性開放隅角緑内障に関して、高眼圧症標的の発現を阻害する干渉RNA組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
緑内障は、特定の臨床的特徴を共通して有する視神経障害の不均一な群である。緑内障における視覚の喪失は、視野における特徴的な変化、神経線維層の欠陥、及び視神経乳頭(ONH)の進行性の杯形成によって臨床的に診断される神経網膜における網膜神経節細胞の選択的な死に帰因する。緑内障の発症における主要な危険性因子の一つに、高眼圧症(眼内圧(IOP)の上昇)の存在がある。眼の形状を維持し、血管がない角膜や水晶体への房水の流れを可能にする圧力勾配をもたらすには、適度な眼内圧が必要である。又、IOPレベルは、IOP低下薬物から利益を受ける患者によって明らかにされるように、正常眼圧緑内障(NTG)の病理発生にも関与する場合がある。NTG患者のIOP測定値に対して中心角膜厚の調節が行われると、これらの患者の多くは高眼圧であることが分かることがある。
【0003】
緑内障に伴うIOPの上昇は、前眼房の虹彩角膜角に位置する小さな特殊組織である小柱網(TM)における房水流出抵抗の上昇に帰因する。TMの緑内障性の変化には、TM細胞における喪失や、タンパク質性プラーク様物質を含む細胞外デブリスの沈着及び蓄積が含まれる。更に、緑内障性ONHにおける変化も生じる。緑内障性の眼では、ONHグリア細胞における形態学的及び運動性変化がみられる。又、IOPの上昇及び/又は一過性の虚血性傷害に応答して、ONH細胞外マトリックスの組成における変化や、グリア細胞及び網膜神経節細胞の軸索の形態学的変化がみられる。
【0004】
原発性緑内障は、解剖学又は生理学的な基礎を有する眼内液の流れの乱れから生じる。二次的な緑内障は、眼の傷害若しくは外傷、又は既に罹患している疾患により生じる。原発性開放隅角緑内障(POAG)は、慢性又は単性緑内障としても知られており、全ての原発性緑内障の90パーセントを占める。POAGは、眼からの排液に対する異常に高い抵抗をもたらす小柱網の変性を特徴とする。そのような抵抗性の結果、眼によって正常に産生される分泌液を、増大した抵抗を超えて流動させるためにIOPの上昇が必要となる。
【0005】
現在の抗緑内障治療法には、房水形成抑制剤若しくはブドウ膜強膜からの流出を高める薬剤の使用によるIOPの低下、レーザー線維柱帯形成術、又は排液を改善するためのろ過手術である線維柱帯切除術が含まれる。抗緑内障薬の療法では、様々な望ましくない副作用が示されている。例えば、ピロカルピン等の縮瞳薬では、視界のぼやけやその他の負の視覚的副作用が引き起こされる可能性がある。全身投与されるカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)でも、悪心、消化不良、疲労及び代謝性アシドーシスが引き起こされる可能性がある。更に、特定のベータ遮断剤は、肺組織のベータ−2受容体に対する作用に起因する肺の重篤な副作用に関連することが多くなってきている。交感神経様作用薬では、頻脈、不整脈及び高血圧が引き起こされる。このような負の副作用は、患者のコンプライアンスの低下や、治療の終了にもつながる場合ある。その上、現在のIOP低下療法は比較的効力が長続きしないため、毎日繰り返し服用しなければならず、次第に効力が低下していく場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように緑内障における高眼圧症の重要性や、従来の処置法では不十分であることを鑑みると、高眼圧症の進行の根本的原因に対処する処置法を改善することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、高眼圧症の標的mRNAの発現を封じ、それによって開放偶角緑内障又は高眼圧症患者の眼内圧を低下させる干渉RNAを対象とする。高眼圧症の標的には、カルボニックアンヒドラーゼII、IV及びXII;β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ;Na/K−ATPase;並びにNa−K−2Cl共輸送体が含まれる。本発明の干渉RNAは、開放偶角緑内障又は高眼圧症患者の処置に有用である。
【0008】
本発明の一実施形態では、カルボニックアンヒドラーゼII、IV又はXII;β1−又はβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ;Na/K−ATPase;又はNa−K−2Cl共輸送体のmRNAといった高眼圧症の標的mRNAの発現を被験体において減少させる方法が提供される。この方法は、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する。投与は、ヒトにおいて高眼圧症標的の発現を減少させるために被験体の眼に対して行われる。
【0009】
本発明の一実施形態において、干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を含む。更に、アンチセンス鎖は、カルボニックアンヒドラーゼII及びIV;β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ(ACHE)改変体E4−E5;Na/K−ATPaseのα2ポリペプチド;Na−K−2Cl共輸送体NKCC2(SLC12A1)、カルボニックアンヒドラーゼXII改変体1、アセチルコリンエステラーゼ改変体E4−E6、Na/K−ATPaseのα1ポリペプチド改変体1及び改変体2、Na/K−ATPaseのα3ポリペプチド、Na/K−ATPaseのα4ポリペプチドの改変体1及び改変体2、Na/K−ATPaseのβ1ポリペプチドの改変体1及び改変体2、Na/K−ATPaseのβ2ポリペプチド、Na/K−ATPaseのβ3ポリペプチド、Na−K−2Cl共輸送体NKCC1(SLC12A2)、及びカルボニックアンヒドラーゼXII改変体2をそれぞれコードするセンスcDNA配列である、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズする。アンチセンス鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。そのような組成物の投与により、被験体の高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させることができる。
【0010】
一実施形態において、高眼圧症の標的mRNAは、カルボニックアンヒドラーゼII、IV又はXIIをコードし、アンチセンス鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。
【0011】
別の実施形態において、高眼圧症の標的mRNAは、β1−又はβ2−アドレナリン作動性受容体をコードし、アンチセンス鎖は、配列番号3又は配列番号4に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号3又は配列番号4にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。
【0012】
更なる実施形態において、高眼圧症の標的mRNAは、アセチルコリンエステラーゼをコードし、アンチセンス鎖は、配列番号5又は配列番号123に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号5又は配列番号123にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。
【0013】
更に別の実施形態において、高眼圧症の標的mRNAは、Na/K−ATPaseをコードし、アンチセンス鎖は、配列番号6、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131又は配列番号132に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号6、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131又は配列番号132にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。
【0014】
更なる実施形態において、高眼圧症の標的mRNAは、Na−K−2Cl共輸送体をコードし、アンチセンス鎖は、配列番号7又は配列番号133に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号7又は配列番号133にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。
【0015】
本発明の一実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド232、527、721、728、809、810、855、856、921、1139、506、547、548、740、911、1009、1140、1149、1150、1151、1188、1194、1195、1223、1239、1456、1457、1458、100、158、166、247、286、318、322、328、371、412、482、504、505、541、734、772、777、814、972、998、1232、317又は401を含む、配列番号1に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0016】
本発明の別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド213、252、258、266、399、457、463、490、595、1064、109、112、125、126、150、261、265、280、398、453、459、462、467、492、534、785、801、825、827、876、1003又は1012を含む、配列番号2に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0017】
本発明の更なる実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド191、239、274、275、341、389、412、413、423、687、689、695、710、791、792、794、983、993、994、995、691、1039、1568、2326、2332、2425、2433、2844、2845、2880、2884、2891、2954、2955、2956、2957、2964、2965、3006、3007、3012又は3026を含む、配列番号101に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0018】
別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド687、1535、2293、2299、2392、2400、2811、2812、2847、2851、2858、2921、2922、2923、2924、2931、2932、2973、2974、2979又は2993を含む、配列番号134に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ヌクレオチド468、523、799、1563、1565、1569、1593、1613、1614、1626、310、322、726、769、772、801、802、1501、1576、1577、1579、1580、1581、1586、1590、1592、1594、1615、1616、1632、1633又は1654を含む、配列番号3に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0020】
本発明の更なる実施形態では、ヌクレオチド329、375、1031、1046、1149、1163、1371、1401、1426、1880、283、607、608、609、619、623、722、857、1037、1091、1115、1124、1136、1137、1151、1164、1393、1394、1395、1406、1407、1427、1428、1429、1442、1725、1726、1756、1757、1758、1767、1790、1791、1792、1793、1803、1861、1869、1971、1972又は1979を含む、配列番号4に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0021】
本発明の別の方法において、干渉RNAは、ヌクレオチド1875、1890、1891、2011、2012、2133又は2134を含む、配列番号123に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0022】
本発明の別の実施形態では、ヌクレオチド366、370、384、385、525、588、768、1045、1046、1061、1090、1232、1314、1316、1460、1461、1462、1528、1607、1705、1713、382、393、397、622、1131、1459、1530、2251、2885、2886、386、1231、1315、2047、2049、2053、2055、2057、2125、2126、2127、2250、2253、2258、2260、2318、2395、2397、2404、2405、2643、2645又は2887を含む、配列番号5に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0023】
更なる実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド2208、2275、2307、2526、2538、2592、2628、2979、2985、3093、3474、3504、3505、3506、3518、343、442、700、707、811、907、1059、1363、1594、1662、1758、1760、1896、2037又は2147を含む、配列番号124に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0024】
更に別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド436、441、443、552、617、701、702、832、2204、2291又は2495を含む、配列番号125に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0025】
本発明の更なる実施形態では、ヌクレオチド471、1990、3080、3797、4037、4093、4225、4323、5213、5285、214、467、470、472、473、632、825、946、1693、1767、1768、2157、2263、2589、2590、2765、2988、3094、3144、3145、3344、3345、3418、3666、3828、3850、4040、4041、4061、4882、4894、4900、5040、5114、5115、5128、5129、5253、5296、5375、5384又は5385を含む、配列番号6に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0026】
本発明の別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド240、272、362、1836、1851、2103、2137、2138、2139、2157、2158、2160、2425、2580、2601、2646、2650、2794、2803、3116、3124、3126、3129又は3377を含む、配列番号126に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0027】
本発明の更に別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド113、612、702、833、1101、1732、1733、1836、2070、2071、2143、2328、2475、2861、2862、2952、3203、3281、3377、3379、3470、3471、3554、3614、3615、3616、3617、3625、3626、3642、3646、3647、3653、3655、3797、3801、3803、3809又は3810を含む、配列番号127に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0028】
別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド126、251、252、253、331、427、429、520、521、530、601、602、603、604、664、665、666、667、675、676、692、696、697、702、703、705、707、847、851、853、859又は860を含む、配列番号128に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0029】
更に別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド1096、1099、1130、1131、1167、1299、1441、1450、1451、1452、1564、1746、1750、1751、1752、1795、203、204、214、222、224、225、226、380、525、591、612、613、615、635、636、663、664、669、699、765、790、839、840、841、900、909、933又は947を含む、配列番号129に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0030】
別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド1063、1102、1106、1107、1108、1109、1111又は1151を含む、配列番号130に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0031】
別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド653、654、771、773、841、849、853、917、918、926、927、931、981、983、984、996、998、1022、1023、1160、1214、1355、1356、1381、1394、1425、1474、1550、1620、1707、1740、1753、1825、1956、1965、2598、2599、2608、2828、2829、2888、3012又は3251を含む、配列番号131に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0032】
本発明の別の実施形態において、干渉RNAは、ヌクレオチド292、434、438、457、459、488、490、498、499、592、639、723、774、775、788、857、858、910、911、930、931、932、1009、1010、1023、1024、1111、1146、1147、1220、1246、1321、1325、1326、1327、1331、1437、1548、1571、1785、1786又は1787を含む、配列番号132に対応するmRNAを標的化するように設計されている。
【0033】
本発明の別の実施形態では、ヌクレオチド675、974、1373、1780、2102、2151、2315、2542、2609、3197、67、71、73、353、405、864、911、912、913、1409、1748、1811、1935、1937、1993、2012、2346、2388、2437、2586、3007、3008、3022、3130、3210、3237又は3271を含む、配列番号7に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0034】
本発明の別の実施形態では、ヌクレオチド748、749、753、1119、1169、1499、1509、1820、2081、2118、2147、2615、2644、2659、2663、2671、2672、2793、2812、2914、2948、3044、3334、3391、3480、3520、3549、3639、3840、3941、3944、4001、4995、4997、5141、5143、5249、5375、5834、5852、5981又は6678を含む、配列番号133に対応するmRNAを標的化するように設計された干渉RNAが提供される。
【0035】
本発明は更に、第1の干渉RNAに加えて、第2の干渉RNAを被験体に投与することを提供する。この方法は、長さ19〜49ヌクレオチドで、且つセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な相補性の領域を含む第2の干渉RNAを被験体に投与する工程を包含し;ここで第2の干渉RNAのアンチセンス鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134に対応するmRNAの第2の部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つアンチセンス鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAの第2のハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。第2の干渉RNAは、第1の干渉RNAと同じ標的mRNAを標的化する場合もあれば、異なるmRNAを標的化する場合もある。更に、第3、第4又は第5等の干渉RNAが同様の様式で投与される場合がある。
【0036】
本発明の更なる実施形態は、治療を必要とする被験体において高眼圧症を処置する方法である。この方法は、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体の眼に投与する工程を包含し、この場合、干渉RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を含む。アンチセンス鎖は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。これにより高眼圧症が処置される。
【0037】
本発明の別の実施形態は、長さ19〜49ヌクレオチドの一本鎖の干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体において高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させる方法である。高眼圧症標的の発現を減少させるため、一本鎖の干渉RNAは、アンチセンス鎖について上に示した配列識別子及びヌクレオチド位置に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズする。
【0038】
本発明の別の実施形態は、長さ19〜49ヌクレオチドの一本鎖の干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、被験体において高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させる方法であって、干渉RNAが、以下の通り、配列番号8、配列番号14〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号717、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む方法である。
【0039】
高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼmRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号8、配列番号14〜配列番号32、配列番号83〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号219、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0040】
高眼圧症の標的mRNAがβ−アドレナリン作動性受容体mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号33〜配列番号52、配列番号220〜配列番号282のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0041】
高眼圧症の標的mRNAがACHE mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号53〜配列番号62及び配列番号283〜配列番号333のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0042】
高眼圧症の標的mRNAがATP1A1 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号334〜配列番号374のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0043】
高眼圧症の標的mRNAがATP1A2 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号63〜配列番号72及び配列番号375〜配列番号416のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0044】
高眼圧症の標的mRNAがATP1A3 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号417〜配列番号440のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0045】
高眼圧症の標的mRNAがATP1A4 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号441〜配列番号511のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0046】
高眼圧症の標的mRNAがATP1B1 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号512〜配列番号563のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0047】
高眼圧症の標的mRNAがATP1B2 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号564〜配列番号606のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0048】
高眼圧症の標的mRNAがATP1B3 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号607〜配列番号648のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0049】
高眼圧症の標的mRNAがSLC12A1 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号73〜配列番号82及び配列番号649〜配列番号675のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0050】
高眼圧症の標的mRNAがSLC12A2 mRNAをコードする場合、干渉RNAは、配列番号676〜配列番号717のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0051】
本発明の更なる実施形態において、連続したヌクレオチドの領域は、配列識別子の配列の3’末端の末位2番目からの14ヌクレオチドに対する少なくとも85%の配列相補性又は少なくとも85%の配列同一性をそれぞれ有する、少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域である。本発明の更に別の実施形態において、連続したヌクレオチドの領域は、配列識別子の配列の3’末端の末位2番目からの15、16、17又は18ヌクレオチドに対する少なくとも80%の配列相補性又は少なくとも80%の配列同一性をそれぞれ有する、少なくとも15個、16個、17個又は18個の連続したヌクレオチドの領域である。
【0052】
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、且つ配列番号8、配列番号14〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号717、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つのヌクレオチド配列又はその相補体を含む干渉RNA、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物は、本発明の実施形態である。一実施形態において、干渉RNAは単離されている。「単離されている」という用語は、干渉RNAがその完全な天然環境にないことを意味する。
【0053】
本発明の別の実施形態は、治療を必要とする被験体において高眼圧症を処置する方法であり、この場合、この方法は、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体の眼に投与する工程を包含し、干渉RNAは、配列番号8、配列番号14〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号717、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含み、これにより高眼圧症が処置される。
【0054】
被験体において高眼圧症の標的mRNAの第2の改変体の発現を減少させることなく高眼圧症の標的mRNAの第1の改変体の発現を減少させる方法は、本発明の更なる実施形態である。この方法は、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を被験体に投与する工程を包含し、干渉RNAは、第1の改変体の3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含み、第1の改変体mRNAの発現は、第2の改変体mRNAの発現を減少させることなく減少し、且つそれぞれ、第1の改変体標的mRNAは、配列番号101、配列番号5、配列番号124、配列番号127又は配列番号129であり、第2の改変体標的mRNAは、配列番号134、配列番号123、配列番号125、配列番号128又は配列番号130である。
【0055】
上述の方法の更なる実施形態において、それぞれ、第1の改変体標的mRNAは、配列番号134、配列番号123、配列番号125、配列番号128又は配列番号130であり、第2の改変体標的mRNAは、配列番号101、配列番号5、配列番号124、配列番号127又は配列番号129である。
【0056】
高眼圧症mRNAの発現を減少させるための医薬品の調製における、本明細書に記載されるようないずれかの実施形態の使用も又、本発明の実施形態である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
(発明の詳細な説明)
RNA干渉(RNAi)は、遺伝子発現を封じるために二本鎖RNA(dsRNA)が使用されるプロセスである。理論により拘束されることを望むわけではないが、RNAiは、長いdsRNAがRNaseIII様酵素(ダイサー)によって小さな干渉RNA(siRNA)に切断されることから始まる。siRNAは、通常の場合長さが約19〜28ヌクレオチド、又は20〜25ヌクレオチド、又は21〜22ヌクレオチドであり、多くの場合2ヌクレオチドの3’突出、並びに5’リン酸末端及び3’ヒドロキシル末端を含有するdsRNAである。siRNAの一方の鎖が、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるリボヌクレオタンパク質複合体に取り込まれる。RISCはこのsiRNA鎖を使用して、取り込まれたsiRNA鎖に対して少なくとも部分的に相補的であるmRNA分子を同定し、その後これらの標的mRNAを切断するか、又はそれらの翻訳を阻害する。従って、RISCに取り込まれるsiRNA鎖は、ガイド鎖又はアンチセンス鎖として知られている。もう一方のsiRNA鎖は、パッセンジャー鎖又はセンス鎖として知られており、siRNAから取り除かれて、標的mRNAに対して少なくとも部分的に相同的となる。基本的に、siRNAのいずれの鎖もRISCに取り込まれ、ガイド鎖として機能することができることを、当業者は認識する。しかし、siRNAの設計(例えば、アンチセンス鎖の5’末端におけるsiRNA二重鎖安定性の低下)により、アンチセンス鎖のRISCへの取り込みを助け得る。
【0058】
ガイド鎖に対して少なくとも部分的に相補的である配列を有するmRNAの、RISCによる切断は、そのmRNAの定常状態レベル、及びこのmRNAによってコードされる対応するタンパク質の定常状態レベルにおける減少をもたらす。或いは、RISCは又、標的mRNAの切断を伴うことなく、翻訳抑制によって対応するタンパク質の発現を低下させることも可能である。その他のRNA分子及びRNA様分子も又、RISCと相互作用し、遺伝子発現を封じることができる。RISCと相互作用することができるその他のRNA分子の例には、ショートヘアピンRNA(shRNA)、一本鎖siRNA、ミクロRNA(miRNA)、及びダイサーと基質の27mer二重鎖が含まれる。本明細書で使用される「siRNA」という用語は、別途記載のない限り、二本鎖の干渉RNAを指す。RISCと相互作用することができるその他のRNA様分子の例には、1つ以上の化学的に改変されたヌクレオチド、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド、及び/又は1つ以上の非ホスホジエステル結合を含有するRNA分子が含まれる。本発明の考察として、RISCと相互作用することができ、遺伝子発現におけるRISC媒介型の変化に関わる全てのRNA又はRNA様分子は、「干渉RNA」と称される。従って、siRNA、shRNA、miRNA、及びダイサーと基質の27mer二重鎖が、「干渉RNA」のサブセットである。
【0059】
本発明の実施形態の干渉RNAは、標的mRNAの切断に対して触媒作用を持つと考えられている。即ち、干渉RNAは、準化学量論的な量で標的mRNAの阻害を行うことができる。従って、アンチセンス療法と比べると、こうした切断条件下で治療効果をもたらすのに必要となる干渉RNAは著しく少なくなる。
【0060】
本発明は、高眼圧症の標的mRNAの発現を阻害し、それによって開放偶角緑内障又は高眼圧症の患者において眼内圧を低下させるための干渉RNAの使用に関する。高眼圧症の標的には、カルボニックアンヒドラーゼII、IV及びXII;β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ;Na/K−ATPaseサブユニット;並びにNa−K−2Cl共輸送体が含まれる。本発明によれば、外部から提供されるか又は内因的に発現される干渉RNAは、眼組織における高眼圧症の標的mRNAのサイレンシングをもたらす。
【0061】
カルボニックアンヒドラーゼは、二酸化炭素の可逆的水和を触媒し、房水形成の調節において役割を果たすと考えられている。カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、産生される液体の量を減少させることによって眼の圧力を低下させる。カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤は、点眼剤(ドルゾラミド、ブリンゾラミド)又は錠剤/カプセル(アセタゾラミド、メタゾラミド)として利用可能である。点眼剤は、錠剤又はカプセルよりも副作用が少なく、多くの患者により良好に許容される。AZOPT(登録商標)(ブリンゾラミド)眼用懸濁物(1%)は、局所用カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(Alcon Laboratories,Inc.[米国テキサス州フォートワース])である。
【0062】
眼用β遮断剤は、眼において産生される液体の量を減少させることによって眼の圧力を低下させる。このような薬物は、非選択的ベータ遮断剤(チモロール、レボブノロール、メチプラノロール、カルテオロール)及びβ−1選択的遮断剤(ベタキソロール)という2種類の薬物に分類される。通常の投薬量は、使用される薬物により、各眼に1日1回又は2回、1滴である。この産物の一例には、BETOPTICS(登録商標)(ベタキソロールHCl)眼用懸濁物(0.25%)(Alcon Laboratories,Inc.[米国テキサス州フォートワース])がある。
【0063】
アセチルコリンエステラーゼの阻害剤は、加水分解に関わる酵素(アセチルコリンエステラーゼ)をブロックすることによってアセチルコリンを受容体部位に保つ。アセチルコリンが受容体に蓄積すると、毛様体筋の収縮(直接作用するコリン作動性アゴニストの作用と類似)によって眼内圧の低下をもたらす。
【0064】
ウアバイン、一酸化窒素供与体及びエンドセリン等のNa/K−ATPase阻害剤は、毛様体突起による房水形成の駆動力となるNa/K−ATPaseの活性を低下させる。
【0065】
エタクリン酸等の塩素輸送阻害剤は、房水流出率を向上させるために小柱網の細胞体積を変化させる。
【0066】
本明細書に記載される核酸は、別途指示のない限り、5’から3’の方向で記載される。本明細書で使用される「核酸」という用語は、DNA若しくはRNA、又はDNAに存在するプリン若しくはピリミジン塩基(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、チミン「T」)又はRNAに存在するプリン若しくはピリミジン塩基(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、ウラシル「U」)を含むそれらの改変形態のいずれかを指す。本明細書に示される干渉RNAは、「T」塩基がRNAに天然で存在しないとしても、特に3’末端に「T」塩基を含む場合がある。「核酸」は「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語を包含し、一本鎖分子又は二本鎖分子を指すことができる。二本鎖分子は、A塩基とT塩基との間、C塩基とG塩基との間、及びA塩基とU塩基との間のワトソン・クリック塩基対形成によって形成される。二本鎖分子の鎖は、互いに部分的な相補性、実質的な相補性又は完全な相補性を有する場合があり、塩基配列の相補性の性質及び程度により結合の強さが異なる二重鎖ハイブリッドを形成する。
【0067】
mRNA配列は、対応するDNAの配列から容易に推定することができる。例えば、配列番号1は、カルボニックアンヒドラーゼIIのmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。mRNA配列は、「T」塩基が「U」塩基で置換されたDNAセンス鎖配列と同一である。
【0068】
従って、カルボニックアンヒドラーゼIIのmRNA配列は配列番号1から公知であり、カルボニックアンヒドラーゼIVのmRNA配列は配列番号2から公知であり、β1−アドレナリン作動性受容体のmRNA配列は配列番号3から公知であり、β2−アドレナリン作動性受容体のmRNA配列は配列番号4から公知であり、アセチルコリンエステラーゼのスプライス改変体E4−E5のmRNA配列は配列番号5から公知であり、Na/K−ATPase α2のmRNA配列は配列番号6から公知であり、Na−K−2Cl共輸送体A1のmRNA配列は配列番号7から公知であり、カルボニックアンヒドラーゼXIIの改変体1のmRNA配列は配列番号101から公知であり、アセチルコリンエステラーゼのスプライス改変体E4−E6のmRNA配列は配列番号123から公知であり、Na/K−ATPase α1の改変体1のmRNA配列は配列番号124から公知であり、Na/K−ATPase α1の改変体2のmRNA配列は配列番号125から公知であり、Na/K−ATPase α3のmRNA配列は配列番号126から公知であり、Na/K−ATPase α4の改変体1のmRNA配列は配列番号127から公知であり、Na/K−ATPase α4の改変体2のmRNA配列は配列番号128から公知であり、Na/K−ATPase β1の改変体1のmRNA配列は配列番号129から公知であり、Na/K−ATPase β1の改変体2のmRNA配列は配列番号130から公知であり、Na/K−ATPase β2のmRNA配列は配列番号131から公知であり、Na/K−ATPase β3のmRNA配列は配列番号132から公知であり、Na−K−2Cl共輸送体A2のmRNA配列は配列番号133から公知であり、カルボニックアンヒドラーゼXIIの改変体2のmRNA配列は配列番号134から公知である。
【0069】
カルボニックアンヒドラーゼII、IV及びXIIのmRNA(CA2、CA4及びCA12):カルボニックアンヒドラーゼ(CA)II、IV及びXIIは、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov)のGenBankデータベースに記載されるように、二酸化炭素の可逆的水和を触媒する亜鉛金属酵素の大きなファミリーのメンバーである。カルボニックアンヒドラーゼは、重要な生理学的プロセス、例えば、呼吸及び代謝組織と肺との間のCO/重炭酸塩の輸送、pH及びCOの恒常性、様々な組織及び器官における電解質分泌、生合成反応(例えば、糖新生、脂質生成及び尿素形成)、骨再吸収、石灰化、並びに腫瘍原性に関与する。
【0070】
14個の異なるカルボニックアンヒドラーゼイソ酵素が、異なる細胞内局在化及び組織分布によって同定されており、カルボニックアンヒドラーゼIIが細胞質ゾル酵素であるのに対して、カルボニックアンヒドラーゼIV及びXIIが膜結合型である。又、異なるイソ型をコードする2つの転写物改変体が、CA−XII遺伝子において同定されており、改変体1が比較的長いイソ型をコードするのに対し、改変体2が、転写物改変体1と比べて内部のコードエキソンの1つを有しておらず、それによりイソ型1と比べて11アミノ酸の部分が欠失している。全身性のカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)は、緑内障に特徴的である眼内圧(IOP)の上昇を低下させるのに有用である。毛様体突起に存在するイソ酵素(スルホンアミド感受性イソ酵素のCA II及びCA IV)の阻害によって、重炭酸塩及び房水の分泌速度が低下し、それによってIOPが25%〜30%低下する。しかし、眼球外組織に存在する各種CAイソ酵素の阻害は、四肢のしびれ及び刺痛、金属味、うつ病、疲労、倦怠感、体重減少、性欲減退、胃腸過敏、代謝性アシドーシス、腎結石及び一過性近視をはじめとする様々な副作用をもたらす。
【0071】
GenBankデータベースでは、CA2のDNA配列が受入番号NM_000067として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号1として示される。配列番号1は、CAIIをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。CAIIのコード配列は、ヌクレオチド66〜ヌクレオチド848である。
【0072】
上述のCA2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態、イソ酵素又は同族体である。同族体は、配列番号1に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するCA2 mRNAである。配列番号1に関連するCA2核酸配列には、GenBank受入番号M77181、X03251、BC011949、BC035424、CR536526、CR541875、J03037、M36532、S69526及びY00339を有する核酸配列が含まれる。
【0073】
GenBankデータベースでは、CA4のDNA配列が受入番号NM_000717として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号2として提供される。配列番号2は、CAIVをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。CAIVのコード配列は、ヌクレオチド47〜ヌクレオチド985である。
【0074】
上述のCA4 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態、イソ酵素又は同族体である。同族体は、配列番号2に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するCA4 mRNAである。配列番号2に関連するCA4核酸配列には、GenBank受入番号L10955、BC057792、BC069649、BC074768、CR541766及びM83670を有する核酸配列が含まれる。
【0075】
GenBankデータベースでは、CA12の改変体1のDNA配列が受入番号NM_001218として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号101として示される。配列番号101は、CAXIIの改変体1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。CAXIIの改変体1のコード配列は、ヌクレオチド157〜ヌクレオチド1221である。
【0076】
上述のCA12の改変体1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態、イソ酵素又は同族体である。同族体は、配列番号101に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するCA12 mRNAである。
【0077】
GenBankデータベースでは、CA12の改変体2のDNA配列が受入番号NM_206925として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号134として示される。配列番号134は、CAXIIの改変体2をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。CAXIIの改変体2のコード配列は、ヌクレオチド157〜ヌクレオチド1188である。改変体2は、改変体1と比べて内部のコードエキソンの1つを有さない。
【0078】
上述のCA12の改変体2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態、イソ酵素又は同族体である。同族体は、配列番号134に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するCA12 mRNAである。
【0079】
β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体のmRNA(ADRB1及びADRB2):アドレナリン作動性受容体(サブタイプα1、α2、β1及びβ2)は、National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov)のGenBankデータベースに記載されるように、ホルモンのエピネフリン及び神経伝達物質のノルエピネフリンの生理学的作用を媒介するGタンパク質共役受容体の原型ファミリーである。
【0080】
GenBankデータベースでは、ADRB1のDNA配列が受入番号NM_000684として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号3として示される。配列番号3は、β1−アドレナリン作動性受容体をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。β1−アドレナリン作動性受容体のコード配列は、ヌクレオチド87〜ヌクレオチド1520である。
【0081】
上述のADRB1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号3に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するADRB1 mRNAである。配列番号3に関連するADRB1核酸配列には、GenBank受入番号AF169006、AF169007、AY567837及びJ03019を有する核酸配列が含まれる。
【0082】
GenBankデータベースでは、ADRB2のDNA配列が受入番号NM_000024として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号4として示される。配列番号4は、β2−アドレナリン作動性受容体をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。β2−アドレナリン作動性受容体のコード配列は、ヌクレオチド220〜ヌクレオチド1461である。
【0083】
上述のADRB2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号4に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するADRB2 mRNAである。配列番号4に関連するADRB2核酸配列には、GenBank受入番号AF022953、AF022954、AF022955、AF022956、AF169225、AF202305、AF203386、AY011291、J02960、Y00106、AY136741、BC012481、BC063486、BC073856、M15169及びX04827を有する核酸配列が含まれる。
【0084】
アセチルコリンエステラーゼmRNAのスプライス改変体E4−E6及びE4−E5(ACHE);National Center for Biotechnology Information(ncbi.nlm.nih.gov)のGenBankデータベースに記載されるように、アセチルコリンエステラーゼは神経伝達物質のアセチルコリンを神経筋接合部及び脳のコリン作動性シナプスにおいて加水分解し、それによってシグナル伝播を終了させる。アセチルコリンエステラーゼは又、アセチルコリンエステラーゼがYt血液型抗原を構成する赤血球膜においても見出される。アセチルコリンエステラーゼは、類似する触媒作用特性を有するが、そのオリゴマー集合、及び細胞表面への細胞結合の様式が異なる多分子形態で存在する。アセチルコリンエステラーゼは単一のACHE遺伝子によってコードされ、遺伝子産物における構造多様性が、選択的mRNAスプライシング、並びに触媒サブユニット及び構造サブユニットの翻訳後会合により生じる。脳、筋肉及びその他の組織に見出されるアセチルコリンエステラーゼの主要な形態は、親水性の種であり、これはコラーゲン性又は脂質含有構造サブユニットを伴うジスルフィド結合したオリゴマーを形成する。それ以外の選択的スプライシング形態は、主に赤芽球系組織で発現し、C末端が異なり、GPIアンカー部位を伴う切断可能な疎水性ペプチドを含有する。アセチルコリンエステラーゼは、翻訳後に付加されたホスホイノシチド(PI)部分を介して膜と会合する。スプライス改変体E4−E6は、主要な転写物であり、エキソン4からエキソン6のスプライシングにより生じる。スプライス改変体E4−E5は、エキソン4からエキソン5の選択的スプライシングにより生じる。
【0085】
GenBankデータベースでは、ACHEスプライス改変体E4−E5のDNA配列が受入番号NM_015831として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号5として示される。配列番号5は、アセチルコリンエステラーゼE4−E5をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。アセチルコリンエステラーゼE4−E5のコード配列は、ヌクレオチド95〜ヌクレオチド1948である。
【0086】
上述のACHE mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号5に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するACHE mRNAである。配列番号5に関連するACHE核酸配列には、GenBank受入番号AC011895、AF002993、AF312032、AY750146、CH236956、L06484、L42812、S71129、AF334270、BC026315、BC036813、M55040及びNM_000665を有する核酸配列が含まれる。
【0087】
GenBankデータベースでは、ACHEスプライス改変体E4−E6のDNA配列が受入番号NM_000665として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号123として示される。配列番号123は、アセチルコリンエステラーゼE4−E6改変体をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。アセチルコリンエステラーゼE4−E6のコード配列は、ヌクレオチド95〜ヌクレオチド1939である。
【0088】
上述のACHE mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号123に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するACHE mRNAである。配列番号123に関連するACHE核酸配列には、GenBank受入番号NM_015831、AC011895、AF002993、AF312032、AY750146、CH236956、L06484、L42812、S71129、AF334270、BC026315、BC036813及びM55040を有する核酸配列が含まれる。
【0089】
Na/K−ATPase α及びβのmRNA(ATP1−A1改変体1、−A1改変体2、−A2、−A3、−A4改変体1、−A4改変体2、−B1改変体1、−B1改変体2、−B2及び−B3):GenBankデータベースに記載されるように、これらの遺伝子によってコードされるタンパク質は、P型カチオン輸送ATPaseのファミリー、及びNa/K−ATPaseのサブファミリーに属する。Na/K−ATPaseは、原形質膜間のNaイオン及びKイオンの電気化学的勾配を確立及び維持することに関わる内在性膜タンパクである。これらの勾配は、浸透圧調節に、様々な有機分子及び無機分子のナトリウム共役輸送に、並びに神経及び筋肉の電気的興奮性に不可欠なものである。この酵素は、大きな触媒サブユニット(α又はA)と比較的小さな糖タンパク質サブユニット(β又はB)という2つのサブユニットから構成される。Na/K−ATPaseの触媒サブユニットは、複数の遺伝子によってコードされる。
【0090】
GenBankデータベースでは、ATP1A1改変体1のDNA配列受入番号がNM_000701として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号124として示される。配列番号124は、Na/K−ATPaseサブユニットA1の改変体1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseサブユニットA1の改変体1のコード配列は、ヌクレオチド299〜ヌクレオチド3370である。
【0091】
上述のATP1A1改変体1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号124に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A1改変体1 mRNAである。
【0092】
GenBankデータベースでは、ATP1A1改変体2のDNA配列が受入番号NM_001001586として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号125として示される。配列番号125は、Na/K−ATPaseサブユニットA1の改変体2をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseサブユニットA1の改変体2のコード配列は、ヌクレオチド299〜ヌクレオチド2344である。
【0093】
上述のATP1A1改変体2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号125に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A1改変体2 mRNAである。
【0094】
GenBankデータベースでは、ATP1A2のDNA配列が受入番号NM_000702として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号6として示される。配列番号6は、Na/K−ATPaseのA2サブユニットをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのA2サブユニットのコード配列は、ヌクレオチド105〜ヌクレオチド3167である。
【0095】
上述のATP1A2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号6に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A2 mRNAである。配列番号6に関連するATP1A2核酸配列には、GenBank受入番号J05096、M27578、AB018321、AK091617、AK124581、AK126573、AL831991、AL831997、BC013680、BC047533、BC052271、M16795及びY07494を有する核酸配列が含まれる。
【0096】
GenBankデータベースでは、ATP1A3のDNA配列が受入番号NM_152296として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号126として示される。配列番号126は、Na/K−ATPaseのA3サブユニットをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのA3サブユニットのコード配列は、ヌクレオチド155〜ヌクレオチド3196である。
【0097】
上述のATP1A3 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号126に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A3 mRNAである。
【0098】
GenBankデータベースでは、ATP1A4改変体1のDNA配列が受入番号NM_144699として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号127として示される。配列番号127は、Na/K−ATPaseのA4サブユニットの改変体1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのA4サブユニットの改変体1のコード配列は、ヌクレオチド469〜ヌクレオチド3558である。
【0099】
上述のATP1A4改変体1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号127に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A4改変体1 mRNAである。
【0100】
GenBankデータベースでは、ATP1A4改変体2のDNA配列が受入番号NM_001001734として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号128として示される。配列番号128は、Na/K−ATPaseのA4サブユニットの改変体2をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのA4サブユニットの改変体2のコード配列は、ヌクレオチド111〜ヌクレオチド608である。
【0101】
上述のATP1A4改変体2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号128に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1A4改変体2 mRNAである。
【0102】
GenBankデータベースでは、ATP1B1改変体1のDNA配列が受入番号NM_001677として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号129として示される。配列番号129は、Na/K−ATPaseのB1サブユニットの改変体1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのB1サブユニットの改変体1のコード配列は、ヌクレオチド122〜ヌクレオチド1033である。
【0103】
上述のATP1B1改変体1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号129に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1B1改変体1 mRNAである。
【0104】
GenBankデータベースでは、ATP1B1改変体2のDNA配列が受入番号NM_001001787として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号130として示される。配列番号130は、Na/K−ATPaseのB1サブユニットの改変体2をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのB1サブユニットの改変体2のコード配列は、ヌクレオチド122〜ヌクレオチド1027である。
【0105】
上述のATP1B1改変体2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号130に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1B1改変体2 mRNAである。
【0106】
GenBankデータベースでは、ATP1B2のDNA配列が受入番号NM_001678として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号131として示される。配列番号131は、Na/K−ATPaseのB2サブユニットをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのB2サブユニットのコード配列は、ヌクレオチド584〜ヌクレオチド1456である。
【0107】
上述のATP1B2 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号131に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1B2 mRNAである。
【0108】
GenBankデータベースでは、ATP1B3のDNA配列が受入番号NM_001679として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号132として示される。配列番号132は、Na/K−ATPaseのB3サブユニットをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na/K−ATPaseのB3サブユニットのコード配列は、ヌクレオチド175〜ヌクレオチド1014である。
【0109】
上述のATP1B3 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号132に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するATP1B3 mRNAである。
【0110】
Na−K−2Cl共輸送体mRNA(SLC12A1及びSLC12A2):ナトリウム−カリウム−塩素共輸送体(Na−K−2Cl共輸送体又はNKCC)は、原形質膜間のNa、K及びClイオンの共役した共輸送を促進させる。イソ型には、NKCC1及びNKCC2の2つが存在する。NKCC1は、眼を含めた殆どの組織で発現するのに対し、NKCC2は主に腎臓で発現するが、眼におけるこのイソ型の発現レベルの方が低いことも認められている。NKCC1はSLC12A2遺伝子(溶質キャリアファミリー12、メンバー2)によってコードされ、NKCC2はSLC12A1遺伝子によってコードされる。小柱網細胞は頑強なNa−K−2Cl共輸送体を有する。この共輸送体の活性は、神経伝達物質及びホルモン(例えば、共輸送活性を低下させるノルエピネフリン、又は、共輸送活性を増大させるバソプレシン等)によって調節される。
【0111】
GenBankデータベースでは、SLC12A1のDNA配列が受入番号NM_000338として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号7として示される。配列番号7は、Na−K−2Cl共輸送体NKCC2をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na−K−2Cl共輸送体NKCC2のコード配列は、ヌクレオチド20〜ヌクレオチド3319である。
【0112】
上述のNa−K−2Cl NKCC2共輸送体mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号7に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するNa−K−2Cl共輸送体NKCC2 mRNAである。配列番号7に関連するSLC12A1核酸配列には、GenBank受入番号AJ005332、AJ005333、AB032525、AB032527、BC040138、BX647067、BX647484及びU58130を有する核酸配列が含まれる。
【0113】
GenBankデータベースでは、SLC12A2のDNA配列が受入番号NM_001046として示され、このDNA配列は「配列表」で配列番号133として示される。配列番号133は、Na−K−2Cl共輸送体NKCC1をコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(但し、「U」塩基の代わりに「T」塩基が含まれる)。Na−K−2Cl共輸送体NKCC1のコード配列は、ヌクレオチド165〜ヌクレオチド3803である。
【0114】
上述のNa−K−2Cl共輸送体NKCC1 mRNA配列の等価体は、その選択的スプライス形態、対立遺伝子形態又は同族体である。同族体は、配列番号133に対して相同的である(即ち、オルソログである)別の哺乳動物種に由来するNa−K−2Cl共輸送体NKCC1 mRNAである。
【0115】
mRNA発現の減少:本明細書で使用される「mRNAの発現を減少させる」という表現は、mRNAの切断によるか、翻訳の直接的な阻害によるかのいずれかによって標的mRNAのタンパク質への翻訳を低下させるために、一定量の干渉RNA(例えば、siRNA)を投与又は発現させることを意味する。標的mRNA又は対応するタンパク質の発現における低下は、一般的に「ノックダウン」と呼ばれ、非標的化コントロールRNA(例えば、非標的化コントロールsiRNA)の投与又は発現後に存在するレベルを基準として報告される。50%及び100%を含めた50%〜100%の発現のノックダウンが、本明細書の実施形態によって検討されている。しかし、そのようなノックダウンレベルが本発明において達成されることが必ずしも必要というわけではない。一実施形態においては、高眼圧症標的の1つを標的化する単一の干渉RNAが、IOPを低下させるために投与される。他の実施形態においては、同じ高眼圧症標的(例えば、CA2)を標的化する複数の干渉RNAが、IOPを低下させるために投与される。更に他の実施形態においては、複数の高眼圧症標的(例えば、CA2及びADRB2)を標的化する複数の干渉RNAが、IOPを低下させるために投与される。
【0116】
ノックダウンは一般的に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)増幅を使用してmRNAレベルを測定することによって、或いはウエスタンブロット又は酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によりタンパク質レベルを測定することによって評価される。タンパク質レベルを分析することにより、mRNA切断と翻訳阻害の両方の評価が可能となる。ノックダウンを測定する更なる技法には、RNA溶液のハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼの保護、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイを使用した遺伝子発現モニタリング、抗体結合、放射免疫アッセイ及び蛍光活性化細胞分析が含まれる。
【0117】
本明細書に記載される標的の阻害は又、例えば、緑内障の症状の改善(例えば、眼内圧の改善、視野喪失の改善、又は、視神経乳頭変化の改善)を観察することにより、ヒト又は哺乳動物において推定される。
【0118】
本発明の実施形態の干渉RNAは、標的RNAの切断に対して触媒作用を持つと考えられている。即ち、干渉RNAは、準化学量論的な量で標的mRNAの阻害を行うことができる。従って、アンチセンス療法と比べると、こうした切断条件下で治療効果をもたらすのに必要となる干渉RNAは著しく少なくなる。
【0119】
干渉RNA:本発明の一実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、これらのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を含む。本発明の更なる実施形態において、干渉RNAは、それぞれmRNA内の対応する標的配列の3’末端の末位2番目からの13、14、15、16、17又は18ヌクレオチドに対する所定パーセントの配列相補性又は所定パーセントの配列同一性を有する、少なくとも13個、14個、15個、16個、17個又は18個の連続したヌクレオチドの領域を含む。
【0120】
干渉RNAのそれぞれの鎖の長さは、19個〜49個のヌクレオチドを含むが、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個又は49個のヌクレオチドを含む場合もある。
【0121】
siRNAのアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖がRISCに取り込まれ、それによってRISCが、切断又は翻訳抑制のために、アンチセンスsiRNA鎖に対する少なくとも部分的な相補性を有する標的mRNAを識別できるようになるという点において、siRNAの能動的な誘導剤である。
【0122】
本発明において、標的mRNA配列内の干渉RNA標的配列(例えば、siRNA標的配列)は、利用可能な設計ツールを使用して選択される。このような標的配列に対応する干渉RNAは、その後、標的mRNAを発現する細胞のトランスフェクションと、それに続く上述のノックダウンの評価によって試験される。そして50%〜100%の発現のノックダウンをもたらす干渉RNAが、更なる分析のために選択される。
【0123】
siRNAの標的配列を選択する技法は、Tuschl,T.,et al.,“The siRNA User Guide”(2004年5月6日改訂;ロックフェラー大学のウェブサイトに掲載);Technical Bulletin #506,“siRNA Design Guidelines,”(Ambion Inc.)(Ambionのウェブサイトに掲載)、及び例えば、Invitrogen、Dharmacon、Integrated DNA Technologies、Genscript又はProligoのウェブサイトに掲載される、ウェブベースその他の設計ツールによって提供される。最初の検索パラメータには、35%〜55%の間でのG/C含有量、及び19〜27ヌクレオチドのsiRNAの長さが含まれてもよい。標的配列は、mRNAのコード領域又は5’若しくは3’非翻訳領域に位置する場合がある。
【0124】
カルボニックアンヒドラーゼIIの19ヌクレオチドのDNA標的配列の実施形態は、以下の配列番号1のヌクレオチド232〜250に存在する:
【0125】
【化1】

配列番号8の対応するmRNA配列を標的化するための本発明のsiRNAであって、21ヌクレオチドの鎖、及び2ヌクレオチドの3’突出を有するsiRNAは、以下の通りである:
【0126】
【化2】

各Nは、任意のヌクレオチド(A、C、G、U、T)又は改変ヌクレオチドであってもよい。3’末端は、1、2、3、4、5及び6を含めたそれらの間の数の「N」残基を有することができる。いずれかの鎖における「N」残基は、同じ残基(例えば、UU、AA、CC、GG又はTT)であってもよく、或いは異なる残基(例えば、AC、AG、AU、CA、CG、CU、GA、GC、GU、UA、UC又はUG)であってもよい。3’突出は同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。一実施形態においては、いずれの鎖も3’UU突出を有する。
【0127】
配列番号8の対応するmRNA配列を標的化するための本発明のsiRNAであって、21ヌクレオチドの鎖、及び各鎖の3’UU突出を有するsiRNAは、以下の通りである:
【0128】
【化3】

干渉RNAは又、5’のヌクレオチド突出を有する場合もあれば、平滑末端を有する場合もある。配列番号8の対応するmRNA配列を標的化するための本発明のsiRNAであって、19ヌクレオチドの鎖及び平滑末端を有するsiRNAは、以下の通りである:
【0129】
【化4】

二本鎖の干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖は、ヘアピン又はステムループ構造(例えば、shRNA)を形成させるために結合される場合がある。配列番号8の対応するmRNA配列を標的化するための本発明のshRNAであって、19bpの二本鎖ステム領域及び3’UU突出を有するshRNAは、以下の通りである:
【0130】
【化5】

Nは、ヌクレオチド(A、T、C、G又はU)であるか、又は当業者により知られる改変形態である。ループ内のヌクレオチドNの数は、3及び23を含めた3〜23の数、5及び15を含めた5〜15の数、7及び13を含めた7〜13の数、4及び9を含めた4〜9の数、又は9及び11を含めた9〜11の数であり、或いはヌクレオチドNの数は9である。ループ内のヌクレオチドの一部は、ループ内のその他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与してもよい。ループを形成させるために使用できるオリゴヌクレオチド配列の例には、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.,et al.,(2002)Science 296:550)及び5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.,et al.,(2002)RNA 8:1454)が含まれる。結果として得られる一本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステムループ又はヘアピン構造を形成することが、当業者によって認識される。
【0131】
上で同定されたsiRNA標的配列は、ダイサーと基質の27mer二重鎖の設計を容易にするために、3’末端において延長されることが可能である。カルボニックアンヒドラーゼIIのDNA配列(配列番号1)において同定された19ヌクレオチドのDNA標的配列(配列番号8)の、6ヌクレオチドによる延長は、以下の配列番号1のヌクレオチド232〜ヌクレオチド256に存在する25ヌクレオチドのDNA標的配列をもたらす:
【0132】
【化6】

配列番号724の対応するmRNA配列を標的化するための本発明のダイサーと基質の27mer二重鎖は、以下の通りである:
【0133】
【化7】

【0134】
【化8】

センス鎖の3’末端における2つのヌクレオチド(即ち、配列番号718のCAヌクレオチド)は、プロセシング強化ためのデオキシヌクレオチドである場合がある。19〜21ヌクレオチドの標的配列(例えば、本明細書に示す標的配列)からのダイサーと基質の27mer二重鎖の設計については、Integrated DNA Technologies(IDT)のウェブサイト、及びKim,D.−H.,et al.,(February,2005)Nature Biotechnology 23:2;222−226で詳細に考察されている。
【0135】
干渉RNAが化学合成によって産生されると、一方又は両方の鎖(存在する場合)の5’末端におけるヌクレオチドの5’位リン酸化により、siRNAの効率、及び結合したRISC複合体の特異性を向上させることができるが、リン酸化は細胞内で生じるため、このようなリン酸化は必要とされない。
【0136】
表1には、上述のような様式で本発明のsiRNAが設計されている、CA2、CA4及びCA12の改変体1及び改変体2のDNA配列(それぞれ、配列番号1、配列番号2、配列番号101及び配列番号134)内におけるsiRNA標的配列の例が示されている。CA2、CA4及びCA12の改変体1及び改変体2は、カルボニックアンヒドラーゼII、IV及びXIIの改変体1及び2をそれぞれコードする。
【0137】
(表1:siRNAのCA2、CA4及びCA12標的配列)
【0138】
【表1−1】

【0139】
【表1−2】

【0140】
【表1−3】

【0141】
【表1−4】

【0142】
【表1−5】

表2には、上述のような様式で本発明のsiRNAが設計されている、ADRB1及びADRB2のDNA配列(それぞれ、配列番号3及び配列番号4)内におけるsiRNA標的配列の例が示されている。上述の通り、ADRB1及びADRB2は、β1−及びβ2−アドレナリン作動性受容体をそれぞれコードする。
【0143】
(表2:siRNAのADRB1及びADRB2標的配列)
【0144】
【表2−1】

【0145】
【表2−2】

【0146】
【表2−3】

表3には、上述のような様式で本発明のsiRNAが設計されている、スプライス改変体E4−E5及びスプライス改変体E4−E6のACHEのDNA配列(それぞれ、配列番号5及び配列番号123)内におけるsiRNA標的配列の例が示されている。上述の通り、ACHEは、アセチルコリンエステラーゼをコードする。
【0147】
(表3:siRNAのACHE標的配列)
【0148】
【表3−1】

【0149】
【表3−2】

【0150】
【表3−3】

表4には、上述のような様式で本発明のsiRNAが設計されている、Na/K−ATPaseのA及びBサブユニットのDNA配列(ATP1A1改変体1、配列番号124;ATP1A1改変体2、配列番号125;ATP1A2、配列番号6;ATP1A3、配列番号126;ATP1A4改変体1、配列番号127;ATP1A4改変体2、配列番号128;ATP1B1改変体1、配列番号129;ATP1B1改変体2、配列番号130;ATP1B2、配列番号131;及びATP1B3、配列番号132)内におけるsiRNA標的配列の例が示されている。
【0151】
(表4:siRNAのATP1A及びATP1B標的配列)
【0152】
【表4−1】

【0153】
【表4−2】

【0154】
【表4−3】

【0155】
【表4−4】

【0156】
【表4−5】

【0157】
【表4−6】

【0158】
【表4−7】

【0159】
【表4−8】

【0160】
【表4−9】

表5には、上述のような様式で本発明のsiRNAが設計されている、SLC12A1及びSLC12A2のDNA配列(それぞれ、配列番号7及び配列番号133)内におけるsiRNA標的配列の例が示されている。上述の通り、SLC12A1及びSLC12A2は、Na−K−2Cl共輸送体であるNKCC2及びNKCC1をそれぞれコードする。
【0161】
(表5:siRNAのSLC12A1標的配列)
【0162】
【表5−1】

【0163】
【表5−2】

【0164】
【表5−3】

上の例に示す通り、当業者は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134における配列位置を参照して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134に対して相補的又はほぼ相補的なヌクレオチドをそれぞれ付加又は欠失することによって、表1〜表5に示す配列よりも長さが短い又は長い干渉RNAを設計するために、表1〜表5に示す標的配列情報を使用することができる。
【0165】
干渉RNAのsiRNA及びその他の形態により導かれる標的RNA切断反応は、配列特異性が高い。一般的に、標的mRNAの部分と配列が同一であるセンスヌクレオチド鎖、及び標的mRNAの部分に対して厳密に相補的であるアンチセンスヌクレオチド鎖を含有するsiRNAは、本明細書に記載のmRNAを阻害するためのsiRNA実施形態である。しかし、アンチセンスsiRNA鎖と標的mRNAの間、又はアンチセンスsiRNA鎖とセンスsiRNA鎖の間の100%の配列相補性が、本発明の実施に必要なわけではない。従って、例えば、本発明では、遺伝子変異、鎖多型又は進化的多様性によって予想される配列変化が考慮される。
【0166】
本発明の一実施形態において、siRNAのアンチセンス鎖は、標的mRNAに対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドを有する。本明細書で使用される「ほぼ完全な」という用語は、siRNAのアンチセンス鎖が少なくとも標的mRNAの部分に対して「実質的に相補的」であり、且つsiRNAのセンス鎖が少なくとも標的mRNAの部分に対して「実質的に同一」であることを意味する。「同一性」は、当業者に公知の通り、配列間のヌクレオチドの順序及び同一性を一致させることによって測定されるような、ヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を指す。一実施形態において、標的mRNA配列に対する80%の相補性、80%〜100%の相補性、例えば85%、90%又は95%の相補性を有するsiRNAのアンチセンス鎖は、ほぼ完全に相補的であると見なされ、本発明において使用される場合がある。「完全な」連続した相補性は、隣接する塩基対の標準的なワトソン・クリック塩基対形成である。「少なくともほぼ完全な」連続した相補性には、本明細書で使用される「完全な」相補性が含まれる。ヌクレオチド配列が一致する最大程度を同定するために、同一性又は相補性を測定するコンピュータ方法は、各種設計されている(例えば、BLASTN(Altschul,S.F.,et al.,(1990)J.Mol.Biol.,215:403−410))。
【0167】
「%同一性」という用語は、第2の核酸分子における同じ長さの連続した1組のヌクレオチドと同じである、第1の核酸分子における連続したヌクレオチドの割合を説明している。「%相補性」という用語は、第2の核酸分子における連続した1組のヌクレオチドと、ワトソン・クリック塩基対形成が可能な第1の核酸分子における連続したヌクレオチドの割合を説明している。
【0168】
標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの一方の鎖(センス鎖)の間の関係性は、同一性の関係性を指す。siRNAのセンス鎖は又、存在する場合、パッセンジャー鎖とも呼ばれる。標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの他方の鎖(アンチセンス鎖)の間の関係性は、相補性の関係性を指す。siRNAのアンチセンス鎖は又ガイド鎖とも呼ばれる。
【0169】
5’から3’の方向で記載される核酸配列における末位2番目の塩基は、最後の塩基の隣り、即ち、3’塩基の隣りの塩基である。5’から3’の方向で記載される核酸配列の末位2番目からの13塩基は、3’塩基の隣りで、3’塩基を含まない配列の最後の13塩基である。同様に、5’から3’の方向で記載された核酸配列の末位2番目からの14、15、16、17又は18塩基はそれぞれ、3’塩基の隣りで、3’塩基を含まない配列のそれぞれ最後の14、15、16、17又は18塩基である。
【0170】
「(配列識別子)のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域」という表現は、一ヌクレオチド置換を可能にする。2つのヌクレオチド置換(即ち、11/13=85%の同一性/相補性)は、かかる表現に含まれない。
【0171】
本発明の一実施形態において、連続したヌクレオチドの領域は、それぞれの配列識別子によって同定される配列の3’末端の末位2番目からの14ヌクレオチドに対する少なくとも85%の配列相補性又は少なくとも85%の配列同一性を有する、少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域である。2つのヌクレオチド置換(即ち、12/14=86%の同一性/相補性)が、かかる表現に含まれる。
【0172】
本発明の更なる実施形態において、連続したヌクレオチドの領域は、配列識別子の配列の3’末端の末位2番目からの14ヌクレオチドに対する少なくとも80%の配列相補性又は少なくとも80%の配列同一性を有する、少なくとも15、16、17又は18個の連続したヌクレオチドの領域である。3つのヌクレオチド置換が、かかる表現に含まれる。
【0173】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134に対応するmRNAにおける標的配列は、mRNAの5’又は3’非翻訳領域、並びにmRNAのコード領域に存在する場合がある。
【0174】
二本鎖の干渉RNAの一方又は両方の鎖が、リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド又はそれらの混合物であり得る、1〜6ヌクレオチドの3’突出を有し得る。突出部のヌクレオチドは、塩基対形成しない。本発明の一実施形態において、干渉RNAは、TT又はUUの3’突出を含む。本発明の別の実施形態において、干渉RNAは、少なくとも1つの平滑末端を含む。末端は通常、5’リン酸基又は3’ヒドロキシル基を有する。他の実施形態において、アンチセンス鎖は5’リン酸基を有し、センス鎖は5’ヒドロキシル基を有する。更に他の実施形態において、末端は、その他の分子又は官能基の共有結合による付加によって更に改変される。
【0175】
二本鎖siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、上述のような2つの一本鎖の二重鎖形成の状態である場合もあれば、相補性の領域が塩基対形成され、ヘアピンループにより共有結合されて、一本鎖を形成するような単一分子である場合もある。ヘアピンは、ダイサーと呼ばれるタンパク質によって分子内で切断され、2つの個々の塩基対形成されたRNA分子の干渉RNAを形成すると考えられている。
【0176】
干渉RNAは、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換又は改変によって、天然のRNAとは異なる場合がある。非ヌクレオチド物質は、5’末端、3’末端又は内部のいずれかにおいて干渉RNAと結合する場合がある。このような改変は一般的に、干渉RNAのヌクレアーゼ抵抗性を増大させるため、細胞取り込みを向上させるため、細胞標的化を向上させるため、干渉RNAの追跡を助けるため、安定性を更に向上させるため、又はインターフェロン経路の活性化の可能性を低下させるために設計されている。例えば、干渉RNAは、プリンヌクレオチドを突出部の末端において含む場合がある。例えば、コレステロールをピロリジンリンカーによりsiRNA分子のセンス鎖の3’末端に結合体化することによっても、siRNAに安定性がもたらされる。
【0177】
更なる改変には、例えば、3’末端のビオチン分子、細胞浸透性を有することが知られているペプチド、ナノ粒子、ペプチド模倣体、蛍光性色素又はデンドリマーが含まれる。
【0178】
ヌクレオチドは、その塩基部分、その糖部分、又は分子のリン酸部分において改変され、本発明の実施形態において機能する場合がある。改変には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、デアザ基、ハロ基、ヒドロキシル基、チオール基又はそれらの組み合わせによる置換が含まれる。ヌクレオチドは、例えば、より安定性に優れたアナログ(例えば、リボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置換するアナログ)、又は糖修飾を有するアナログ(例えば、2’OH基が2’アミノ基、2’O−メチル基、2’メトキシエチル基又は2’−O,4’−Cメチレン架橋によって置換されるアナログ)により置換される場合がある。ヌクレオチドのプリン又はピリミジンアナログの例には、キサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルチオアデニン、7−デアザ−アデノシン並びにO−及びN−改変ヌクレオチドが含まれる。ヌクレオチドのリン酸基は、リン酸基の酸素の1つ以上を窒素又はイオウにより置換することによって改変される場合がある(ホスホロチオアート)。改変は、例えば、機能を向上させるのに、安定性又は透過性を向上させるのに、又は局在化若しくは標的化を導くのに有用である。
【0179】
又、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134の部分に対して相補的でないアンチセンス干渉RNA鎖の領域が存在する場合もある。非相補的な領域は、相補性領域の3’末端、5’末端若しくは両末端に、又は2つの相補性領域の間に存在する場合がある。
【0180】
干渉RNAは、化学合成によって、in vitro転写によって、又は比較的長い二本鎖RNAをダイサー若しくは類似する活性を有するその他の適切なヌクレアーゼで切断することによって、外因により作製される場合がある。従来のDNA/RNA合成機を使用して保護リボヌクレオシドホスホルアミダイトから産生される、化学合成された干渉RNAは、例えば、Ambion Inc.(米国テキサス州フォートワース)、Invitrogen(米国カリフォルニア州カールスバッド)又はDharmacon(米国コロラド州ラファイエット)等の民間供給業者から入手できる場合がある。干渉RNAは、例えば、溶媒若しくは樹脂による抽出、沈殿化、電気泳動、クロマトグラフィー、又はこれらの組み合わせによって精製される。或いは、干渉RNAは、試料処理による損失を避けるため、殆ど精製することなく、使用される場合がある。
【0181】
干渉RNAは又、プラスミド若しくはウイルス発現ベクターから、又は最小限の発現カセット(例えば、1つ以上のプロモーター、及び干渉RNAに適切な1つ以上の鋳型を含むPCR生成フラグメント)から内因により発現される場合がある。shRNAの市販のプラスミド型発現ベクターの例には、pSilencerシリーズの発現ベクター(Ambion[米国テキサス州オースティン])及びpCpG−siRNA(InvivoGen[米国カリフォルニア州サンディエゴ])が含まれる。干渉RNA発現のためのウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV、FIV及びEIAV)及びヘルペスウイルスを含む様々なウイルスに由来する場合がある。shRNA発現のための市販のウイルスベクターの例には、pSilencerアデノ(Ambion[米国テキサス州オースティン])及びpLenti6/BLOCK−iTTM−DEST(Invitrogen[米国カリフォルニア州カールスバッド])が含まれる。ウイルスベクターの選択、干渉RNAをベクターから発現させるための方法、及びウイルスベクターを送達する方法は、当業者の範囲に含まれる。PCR生成shRNA発現カセットを作製するためのキットの例には、Silencer Express(Ambion[米国テキサス州オースティン])及びsiXpress(Mirus[米国ウィスコンシン州マディソン])が含まれる。
【0182】
干渉RNAは、pol IIIプロモーター(例えば、U6プロモーター又はH1プロモーター等)又はpol IIプロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター等)を含め、当業者に既知の様々な真核生物プロモーターから発現される場合がある。これらのプロモーターも又、干渉RNAの誘導可能な発現を可能にするために適応させることができることを、当業者は認識する。
【0183】
生理学的条件下でのハイブリダイゼーション:本発明の特定の実施形態において、干渉RNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体の部分としてin vivoでmRNAとハイブリダイズする。
【0184】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的又はほぼ相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸が相互作用して、ハイブリッドと呼ばれる水素結合した複合体を形成するプロセスを指す。ハイブリダイゼーション反応は高感度かつ選択的である。in vitroにおいて、ハイブリダイゼーションの特異性(即ち、ストリンジェンシー)は、例えば、プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション溶液における塩若しくはホルムアミドの濃度によって、又はハイブリダイゼーション温度によって制御されるが、このような手法はこの分野で周知である。具体的に、ストリンジェンシーは、塩の濃度を低下させる、ホルムアミドの濃度を上昇させる、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって増大する。
【0185】
例えば、高ストリンジェンシーの条件は、約50%のホルムアミド、37℃〜42℃の温度で生じ、約35%〜25%のホルムアミド、30℃〜35℃の温度で低ストリンジェンシーの条件が生じる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の例については、Sambrook,J.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に示されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の更なる例には、400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃又は70℃、12時間〜16時間、その後洗浄、或いは1XSSC中70℃若しくは1XSSC中50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーションの後0.3XSSC中70℃での洗浄、或いは4XSSC中70℃若しくは4XSSC中50℃、50%ホルムアミドでのハイブリダイゼーションの後、1XSSC中67℃での洗浄が含まれる。ハイブリダイゼーションのための温度は、ハイブリッドの融解温度(T)よりも約5℃〜10℃低い。この場合、Tは、長さが19〜49塩基対のハイブリッドの場合、以下の計算式を使用して求められる:T(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)、式中、Nはハイブリッドにおける塩基の数であり、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液におけるナトリウムイオンの濃度である。
【0186】
上述のin vitroハイブリダイゼーションアッセイは、候補siRNAと標的の間の結合が特異性を有するかどうかを予測する方法を提供する。しかし、RISC複合体に関連して、標的の特異的な切断は又、ハイブリダイゼーションのための高ストリンジェンシーをin vitroで示さないアンチセンス鎖によっても生じる可能性がある。
【0187】
一本鎖の干渉RNA:上述の通り、干渉RNAは、究極的には一本鎖として機能する。一般鎖(ss)干渉RNAは、二本鎖RNAよりも効率的でないが、mRNAのサイレンシングを行うことが見出されている。従って、本発明の実施形態では又、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134の部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号101、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133又は配列番号134それぞれのハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有するss干渉RNAの投与が提供される。ss干渉RNAは、上述のds干渉RNAの場合のように19〜49ヌクレオチドの長さを有する。ss干渉RNAは5’リン酸を有するか、又は5’位がin situ又はin vivoでリン酸化される。「5’位リン酸化」という用語は、例えば、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの5’末端における糖(例えば、リボース、デオキシリボース、又はそれらのアナログ)のC5ヒドロキシルへのエステル結合により結合したリン酸基を有するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを記述するために使用される。
【0188】
ss干渉RNAは、ds干渉RNAの場合のように、化学的に又はin vitro転写によって合成されるか、又はベクター若しくは発現カセットから内因により発現される。5’リン酸基がキナーゼによって付加される場合もあれば、5’リン酸がRNAのヌクレアーゼ切断により生成される場合もある。送達は、ds干渉RNAの場合と同様である。一実施形態においては、保護された末端及びヌクレアーゼ抵抗性の改変を有するss干渉RNAが、サイレンシングのための投与される。ss干渉RNAは貯蔵のために乾燥させる場合もあれば、水溶液に溶解される場合もある。溶液は、アニーリングを阻害するため又は安定化をもたらすために、緩衝剤又は塩を含有する場合がある。
【0189】
ヘアピン干渉RNA:ヘアピン干渉RNAは、干渉RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方をステムループ又はヘアピン構造で含む単一分子(例えば、単一のオリゴヌクレオチド鎖)である(例えば、shRNA)。例えば、shRNAは、センス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドが、短いスペーサーによって、逆向きの相補的なアンチセンス干渉RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドに結合されるDNAベクターから発現させることができる。選択した発現ベクターに必要な場合は、3’末端のT、及び制限部位を形成するヌクレオチドが付加される場合がある。結果として得られるRNA転写物は、それ自体で折り畳まれて、ステムループ構造を形成する。
【0190】
投与様式:干渉RNAは、眼組織注射、例えば、眼周囲、結膜、テノン嚢下、眼房内、硝子体内、眼内、網膜下、結膜下、球後又は管内注射によって;カテーテル又はその他の留置デバイス(例えば、多孔性物質、非多孔性物質又はゼラチン様物質を含む網膜ペレット、眼内挿入物、坐薬又はインプラント)を使用した眼への直接適用によって;局所的な点眼剤又は眼用軟膏によって;又は盲嚢における徐放性デバイス、若しくは強膜に隣接して(経強膜的)若しくは眼の内部に埋め込まれる徐放性デバイスによって、眼に直接送達される場合がある。眼房内注射は、薬剤が小柱網に到達するように角膜を介して前眼房内に行われる場合がある。管内注射は、シュレム管から流出する静脈コレクターチャネルの中に、又は、シュレム管の中に行われる場合がある。静脈内、皮下及び経口送達が含まれるが、これらに限定されない、全身又は非経口投与が検討されている。
【0191】
被験体:高眼圧症の処置を必要としているか、又は高眼圧症を発症する危険性がある被験体は、本明細書に記載する標的(即ち、カルボニックアンヒドラーゼII、IV又はXII;β1−又はβ2−アドレナリン作動性受容体;アセチルコリンエステラーゼ;Na/K−ATPase;又はNa−K−2Cl共輸送体)の望ましくない若しくは不適切な発現若しくは活性に関連する高眼圧症を有するか、又はこのような高眼圧症を有する危険性があるヒト又はその他の哺乳動物である。このような障害に関連する眼の構造体には、例えば、眼、網膜、脈絡膜、水晶体、角膜、小柱網、虹彩、視神経、視神経乳頭、強膜、眼房、硝子体腔又は毛様体が含まれる場合がある。被験体は又、眼細胞、細胞培養物、器官、又はex vivoの器官若しくは組織である場合がある。
【0192】
処方物及び投薬量:医薬処方物は、生理学的に許容される眼用キャリア媒体(例えば、水、緩衝液、生理的食塩水、グリセリン、ヒアルロン酸及びマンニトール)と混合される、最高99重量%の本発明の干渉RNA又はその塩を含む。
【0193】
本発明の干渉RNAは、溶液、懸濁物又はエマルションとして投与される。以下は、本発明により具現化される可能な処方物の例である。
【0194】
【表6】

一般的に、本発明の実施形態の干渉RNAの有効量は、100pM〜100nM、1nM〜50nM、5nM〜約10nM、又は約25nMまでの標的細胞の表面における細胞外濃度をもたらす。このような局所的濃度を達成するために必要となる服用量は、送達方法、送達部位、送達部位と標的細胞又は標的組織との間における細胞層の数、送達が局所的であるか全身的であるかといった幾つかの要因により異なる。送達部位における濃度は、標的細胞又は標的組織の表面におけるよりもかなり高くなる場合がある。局所用組成物は、通常の技能を有する医師の日常的な裁量に従って、1日1回〜4回、或いは毎日、毎週、2週間毎、毎月又はそれ以上といった長期にわたる送達スケジュールで、眼の表面に送達される。処方物のpHは、約pH4〜9又は約4.5〜pH7.4である。
【0195】
高眼圧症の標的mRNAに対して向けられたsiRNAによる患者の治療的処置は、作用の持続期間を増大させ、それによってより少ない頻度での服用、及び、より大きい患者コンプライアンスを可能にすることで小分子の局所用点眼剤よりも有益であることが予想される。
【0196】
正確な治療方式は医師の裁量に委ねられるが、干渉RNAは、医師によって指示されるように1滴をそれぞれの眼に入れることによって投与される場合がある。処方物の有効量は、様々な要因(例えば、患者の年齢、人種及び性別、高眼圧症の重篤度、標的遺伝子転写物/タンパク質の代謝回転の速度、干渉RNAの効力、及び、干渉RNAの安定性等)により異なる場合がある。一実施形態において、干渉RNAは眼に局所的に送達され、小柱網、網膜又は視神経乳頭に治療的用量で到達し、それによって高眼圧症に関連する疾患プロセスを改善する。
【0197】
受容可能なキャリア:眼に受容可能なキャリアは、最大でも、眼の刺激を全く生じさせないか、又は眼の刺激を殆ど生じさせず、必要に応じて好適な保護を提供し、且つ本発明の1つ以上の干渉RNAを均一な投薬量で送達するようなキャリアを示す。本発明の実施形態の干渉RNAの投与のための許容され得るキャリアには、カチオン性脂質系トランスフェクション試薬のTransIT(登録商標)−TKO(Minis Corporation[米国ウィスコンシン州マディソン])、LIPOFECTIN(登録商標)、Lipofectamine、OLIGOFECTAMINETM(Invitrogen[米国カリフォルニア州カールスバッド])又はDHARMAFECTTM(Dharmacon[米国コロラド州ラファイエット]);ポリカチオン(例えば、ポリエチレンイミン);カチオン性ペプチド、例えば、Tat、ポリアルギニン又はPenetratin(Antpペプチド)等;又はリポソームが含まれる。リポソームは、標準的な小胞形成離質及びステロール(例えば、コレステロール等)から形成され、標的化分子(例えば、内皮細胞表面抗原に対する結合親和性を有するモノクローナル抗体等)を含むことができる。更に、リポソームはPEG化リポソームである場合がある。
【0198】
干渉RNAは、溶液で、懸濁物で、又は生体内分解性若しくは生体内非分解性の送達デバイスで送達される場合がある。干渉RNAは、単独で、共有結合結合体の成分として、カチオン性脂質、カチオン性ペプチド又はカチオン性ポリマーと複合体化されて、又は標的化ナノ粒子若しくは非標的化ナノ粒子に包まれて送達される場合がある。
【0199】
眼送達のため、干渉RNAは、水性の無菌の眼用懸濁物又は眼用溶液を形成するための眼科学的に受容可能な保存剤、共溶媒、界面活性剤、粘度増強剤、浸透強化剤、緩衝剤、塩化ナトリウム又は水と組み合わせられる場合がある。眼用溶液処方物は、干渉RNAを生理学的に許容され得る等張性の水性緩衝液に溶解することによって調製される場合がある。更に、眼用溶液は、阻害剤の溶解を助けるための眼科学的に受容可能な界面活性剤を含む場合がある。粘度上昇剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース又はポリビニルピロリドン等)が、化合物の保持を改善するために、本発明の組成物に添加される場合がある。
【0200】
無菌の眼用軟膏処方物を調製するため、干渉RNAは、適切なビヒクル(例えば、鉱油、液体ラノリン又は白色ワセリン)において保存剤と組み合わされる。無菌の眼用ゲル処方物は、眼用処方物についてこの分野で知られる方法に従って、例えば、CARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich[米国ノースカロライナ州シャーロット])の組み合わせから調製される親水性基剤に干渉RNAを懸濁することによって調製される場合がある。例えば、VISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.[米国テキサス州フォートワース])が眼内注射のために使用される場合もある。本発明のその他の組成物は、干渉RNAが眼において余り浸透性でない場合に、浸透強化剤(例えば、クレメホル(cremephor)及びTWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、Sigma Aldrich[米国ミズーリ州セントルイス])等)を含有する場合がある。
【0201】
キット:本発明の実施形態は、本明細書に示されるようなmRNAの発現を細胞において減少させるための試薬を含むキットを提供する。キットはsiRNA又はshRNA発現ベクターを含有する。siRNA及び非ウイルス性のshRNA発現ベクターの場合、キットは又、トランスフェクション試薬又は他の好適な送達ビヒクルを含有する場合もある。ウイルス性のshRNA発現ベクターの場合、キットは、ウイルスベクター作製のためのウイルスベクター及び/又は必要な成分を含有する場合もある(例えば、パッケージング細胞株、並びにウイルスベクター鋳型を含むベクター及びパッケージングのための更なるヘルパーベクター)。キットは又、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールsiRNA又はshRNA発現ベクターを含有する場合もある(例えば、非標的化コントロールsiRNA、又は関連性のないmRNAを標的化するsiRNA)。キットは又、所期の標的遺伝子のノックダウンを評価するための試薬を含有する場合もある(例えば、標的mRNAを検出するための定量的PCRのためのプライマー及びプローブ、並びに対応するタンパク質に対するウエスタンブロット用の抗体)。或いは、キットは、in vitro転写によってsiRNAを生じさせるために必要な、又はshRNA発現ベクターを構築するために必要なsiRNA配列又はshRNA配列、並びに説明書及び材料を含む場合がある。
【0202】
容器手段をそれによる厳重な閉じ込めで受け入れるために適合化された担体手段と、干渉RNA組成物及び眼に受容可能なキャリアを含む第1の容器手段とを組み合わせたパッケージで含むキット形態での薬学的組み合わせが更に提供される。そのようなキットは、当業者には容易に明らかであるように、所望の場合、様々な従来の医薬用キット成分の1つ又は複数(例えば、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアを伴う容器、更なる容器等)を更に含んでもよい。投与する成分の量、投与のための指針、及び/又は、成分を混合するための指針を示す印刷された説明書も又、添付文書又はラベルのいずれであっても、キットに含めることができる。
【0203】
内因性の標的遺伝子発現のレベルを、例えば、ヒト小柱網(TM)細胞においてノックダウンする干渉RNAの能力が下記のようにin vitroで評価される。形質転換されたヒトTM細胞(例えば、GTM−3又はHTM−3と名付けられた細胞株(Pang,I.H.,et al.,1994,Curr.Eye Res.,13:51〜63を参照))を標準的な成長培地(例えば、1%ウシ胎児血清が補充されたDMEM)においてトランスフェクションの24時間前に置床する。トランスフェクションを、0.1nM〜100nMの範囲での干渉RNA濃度で、製造者の説明書に従ってDharmfect1(Dharmacon[米国コロラド州ラファイエット])を使用して行う。非標的化コントロールの干渉RNA及びラミンA/Cの干渉RNA(Dharmacon)をコントロールとして使用する。標的mRNAのレベルを、例えば、TAQMAN(登録商標)用のフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びに標的部位を包含するプローブセット(Applied Biosystems[米国カリフォルニア州フォスターシティー])を使用して、トランスフェクション後24時間でqPCRによって評価する。標的タンパク質のレベルは、例えば、ウエスタンブロットによってトランスフェクション後の約72時間で評価され得る(実際の時間はタンパク質の代謝回転速度に依存する)。培養された細胞からのRNA及び/又はタンパク質の単離のための様々な標準的な技術が当業者に周知である。非特異的な、標的を外れた影響の可能性を低下させるために、標的遺伝子の発現における所望されるレベルのノックダウンをもたらす、できる限り低い濃度の干渉RNAを使用しなければならない。
【0204】
CA2タンパク質の発現のレベルをノックダウンする本発明の干渉RNAの能力は、以下の実施例1において更に例示する。
【実施例】
【0205】
(実施例1)
(HeLa細胞においてCA2を特異的に封じるための干渉RNA)
本研究では、培養されたHeLa細胞における内因性CA2発現のレベルをノックダウンするCA2干渉RNAの能力が調べられる。
【0206】
HeLa細胞のトランスフェクションを、標準的なin vitro濃度(100nM及び1nM)のCA2siRNA又は非標的コントロールsiRNA、及び、DHarmaFECTTM 1トランスフェクション試薬(Dharmacon[米国コロラド州ラファイエット])を使用して行った。全てのsiRNAを1X siRNA緩衝液(20mM KCl、6mM HEPES(pH7.5)、0.2mM MgClの溶液)に溶解した。CA2タンパク質の発現及びアクチンタンパク質の発現(ローディングコントロール)をトランスフェクション72時間後にウエスタンブロット分析によって評価した。CA2siRNAは、下記の標的配列について特異性を有する二本鎖の干渉RNAである:siCA2#1は配列番号721を標的化する;siCA2#3は配列番号15を標的化する;siCA2#4は配列番号720を標的化する;siCA2#5は配列番号141を標的化する。これら4つのCA2siRNAのそれぞれが、図1のウエスタンブロットデータによって示されるように、非標的化コントロールsiRNAと比較して、CA2の発現を100nM及び1nMの両方で著しく低下させた。配列番号720を標的化するsiCA2#4、及び、配列番号141を標的化するsiCA2#5は、特に効果的であるようであった。
【0207】
本明細書で引用される参考文献は、それらが、本明細書に示される詳細に対する補充となる例示的な手順の詳細又は他の詳細を提供する程度に、参考として特に組み込まれる。
【0208】
当業者は、本開示に照らして、本明細書に開示された実施形態の自明な改変が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する。本明細書に開示された実施形態の全てが、本開示に照らして過度な実験を行うことなく行うことができ、又、実行することができる。本発明の完全な範囲は本開示及びその均等な実施形態において示される。本明細書は、本発明に与えられる保護の完全な範囲を不当に狭くするために解釈してはならない。
【0209】
別途指示がない限り、本明細書で使用される「a」及び「an」という用語は、「1つ」、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」を意味するものとして解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】図1は、CA2のsiRNA#1、#3、#4及び#5;非標的化コントロールsiRNA;及び緩衝液コントロール(−siRNA)によりトランスフェクトされたHeLa細胞の、CA2及びアクチンに対する抗体によりプローブされたウエスタンブロットを示す。siRNAは100nM又は1nMの濃度であった。矢印は約30kDaのCA2タンパク質及び42kDaのアクチンタンパク質のバンドの位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させる方法であって、
長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含し、該干渉RNAが、配列番号8、配列番号14〜配列番号32、配列番号83〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号219、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、方法。
【請求項2】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼIIをコードし、
前記干渉RNAが、配列番号8、配列番号14〜配列番号22、配列番号83〜配列番号100、配列番号135〜配列番号155、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼIVをコードし、
前記干渉RNAが、配列番号23〜配列番号32及び配列番号156〜配列番号177のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼXIIをコードし、
前記干渉RNAが、配列番号102〜配列番号122及び配列番号178〜配列番号219のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
連続したヌクレオチドの前記領域が、前記配列識別子の配列の3’末端の末位2番目からの14ヌクレオチドに対する少なくとも85%の配列相補性又は少なくとも85%の配列同一性を有する、少なくとも14個の連続したヌクレオチドの領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
連続したヌクレオチドの前記領域が、前記配列識別子の配列の3’末端の末位2番目からのそれぞれ15、16、17又は18ヌクレオチドに対する少なくとも80%の配列相補性又は少なくとも80%の配列同一性を有する、少なくとも15個、16個、17個又は18個の連続したヌクレオチドの領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記干渉RNAがshRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記干渉RNAがmiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記干渉RNAがsiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
被験体において高眼圧症を処置するための医薬品の調製における、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物の使用であって、
該干渉RNAが、配列番号8、配列番号14〜配列番号32、配列番号83〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号219、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、使用。
【請求項11】
前記干渉RNAが、配列番号8、配列番号14〜配列番号22、配列番号83〜配列番号100、配列番号135〜配列番号155、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記干渉RNAが、配列番号23〜配列番号32及び配列番号156〜配列番号177のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記干渉RNAが、配列番号102〜配列番号122及び配列番号178〜配列番号219のいずれか1つの3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含む、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記干渉RNAがshRNAである、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、眼房内、網膜下、結膜下、球後又は管内投与のために調製される、請求項10に記載の使用。
【請求項16】
前記組成物が、前記干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivo発現による投与のために調製される、請求項10に記載の使用。
【請求項17】
前記干渉RNAがmiRNAである、請求項10に記載の使用。
【請求項18】
前記干渉RNAがsiRNAである、請求項10に記載の使用。
【請求項19】
被験体において高眼圧症の標的mRNAの第2の改変体の発現を減少させることなく高眼圧症の標的mRNAの第1の改変体の発現を減少させる方法であって、
長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含し、該干渉RNAが、該第1の改変体の3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含み、
該第2の改変体mRNAの発現を減少させることなく該第1の改変体mRNAの発現を減少させ、該第1の改変体標的mRNAが配列番号101であり、該第2の改変体標的mRNAが配列番号134である、方法。
【請求項20】
被験体において高眼圧症の標的mRNAの第2の改変体の発現を減少させることなく高眼圧症の標的mRNAの第1の改変体の発現を減少させる方法であって、
長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含し、該干渉RNAが、該第1の改変体の3’末端の末位2番目からの13ヌクレオチドに対する少なくとも90%の配列相補性又は少なくとも90%の配列同一性を有する、少なくとも13個の連続したヌクレオチドの領域を含み、
該第1の改変体mRNAの発現が、該第2の改変体mRNAの発現を減少させることなく減少し、該第1の改変体標的mRNAが配列番号134であり、該第2の改変体標的mRNAが配列番号101である、方法。
【請求項21】
被験体の高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させる方法であり、
長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含し、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を含み;
該アンチセンス鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有し、
高眼圧症の標的mRNAの発現が減少する、方法。
【請求項22】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼIIをコードし、前記アンチセンス鎖が、配列番号1に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼIVをコードし、前記アンチセンス鎖が、配列番号2に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号2に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記高眼圧症の標的mRNAがカルボニックアンヒドラーゼXIIをコードし、前記アンチセンス鎖が、配列番号101又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号101又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アンチセンス鎖が、ヌクレオチド232、527、721、728、809、810、855、856、921、1139、506、547、548、740、911、1009、1140、1149、1150、1151、1188、1194、1195、1223、1239、1456、1457、1458、100、158、166、247、286、318、322、328、371、412、482、504、505、541、734、772、777、814、972、998、1232、317又は401を含む、配列番号1に対応するmRNAを標的化するように設計されている、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記アンチセンス鎖が、ヌクレオチド213、252、258、266、399、457、463、490、595、1064、109、112、125、126、150、261、265、280、398、453、459、462、467、492、534、785、801、825、827、876、1003又は1012を含む、配列番号2に対応するmRNAを標的化するように設計されている、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記アンチセンス鎖が、ヌクレオチド191、239、274、275、341、389、412、413、423、687、689、695、710、791、792、794、983、993、994、995、691、1039、1568、2326、2332、2425、2433、2844、2845、2880、2884、2891、2954、2955、2956、2957、2964、2965、3006、3007、3012又は3026を含む、配列番号101に対応するmRNAを標的化するように設計されている、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記アンチセンス鎖が、ヌクレオチド687、1535、2293、2299、2392、2400、2811、2812、2847、2851、2858、2921、2922、2923、2924、2931、2932、2973、2974、2979又は2993を含む、配列番号134に対応するmRNAを標的化するように設計されている、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
更に、19〜49ヌクレオチドの長さを有し、且つセンスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な相補性の領域を含む第2の干渉RNAを前記被験体に投与する工程を包含し;
該第2の干渉RNAの該アンチセンス鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134に対応するmRNAの第2の部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ該アンチセンス鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAの該第2のハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記センスヌクレオチド鎖及び前記アンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド配列によって連結される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
被験体において高眼圧症を処置するための医薬品の調製における、長さ19〜49ヌクレオチドの干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物の使用であって、
該干渉RNAが、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、及び少なくとも19ヌクレオチドの少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を含み;
該アンチセンス鎖が、配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号1、配列番号2、配列番号101又は配列番号134にそれぞれ対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、使用。
【請求項32】
前記センスヌクレオチド鎖及び前記アンチセンスヌクレオチド鎖がループヌクレオチド配列によって連結される、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記組成物が、局所、硝子体内、経強膜、眼周囲、結膜、テノン嚢下、眼房内、網膜下、結膜下、球後又は管内投与のために調製される、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
前記組成物が、前記干渉RNAを発現することができる発現ベクターからのin vivo発現による投与のために調製される、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
被験体の高眼圧症の標的mRNAの発現を減少させる方法であって、
長さ19〜49ヌクレオチドの一本鎖の干渉RNAの有効量、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を該被験体に投与する工程を包含し、
該一本鎖の干渉RNAが、ヌクレオチド232、527、721、728、809、810、855、856、921、1139、506、547、548、740、911、1009、1140、1149、1150、1151、1188、1194、1195、1223、1239、1456、1457、1458、100、158、166、247、286、318、322、328、371、412、482、504、505、541、734、772、777、814、972、998、1232、317又は401を含む、配列番号1に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ該干渉RNAが、配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の領域を有するか;
又は、
該一本鎖の干渉RNAが、ヌクレオチド213、252、258、266、399、457、463、490、595、1064、109、112、125、126、150、261、265、280、398、453、459、462、467、492、534、785、801、825、827、876、1003又は1012を含む、配列番号2に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ該干渉RNAが、配列番号2に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有するか;
又は、
該一本鎖の干渉RNAが、ヌクレオチド191、239、274、275、341、389、412、413、423、687、689、695、710、791、792、794、983、993、994、995、691、1039、1568、2326、2332、2425、2433、2844、2845、2880、2884、2891、2954、2955、2956、2957、2964、2965、3006、3007、3012又は3026を含む、配列番号101に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ該干渉RNAが、配列番号101に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有するか;
又は、
該一本鎖の干渉RNAが、ヌクレオチド687、1535、2293、2299、2392、2400、2811、2812、2847、2851、2858、2921、2922、2923、2924、2931、2932、2973、2974、2979又は2993を含む、配列番号134に対応するmRNAの部分に対して生理学的条件下でハイブリダイズし、且つ該干渉RNAが、配列番号134に対応するmRNAの該ハイブリダイズ部分に対し少なくともほぼ完全な連続した相補性の少なくとも19ヌクレオチドの領域を有し;
高眼圧症の標的mRNAの発現がそれにより減少する、方法。
【請求項36】
前記干渉RNAがmiRNAである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記干渉RNAがsiRNAである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
19〜49ヌクレオチドの長さを有し、且つ配列番号8、配列番号14〜配列番号32、配列番号83〜配列番号100、配列番号102〜配列番号122、配列番号135〜配列番号219、配列番号720及び配列番号721のいずれか1つのヌクレオチド配列を有する干渉RNA又はその相補体、及び薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物。
【請求項39】
前記干渉RNAがshRNAである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記干渉RNAがsiRNAである、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
前記干渉RNAがmiRNAである、請求項38に記載の組成物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−528632(P2008−528632A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553373(P2007−553373)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003515
【国際公開番号】WO2006/083945
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】