眼用レンズ構造、複数の光学機能を実現するための装置、および複数の光学機能を実現するための方法
本発明は、光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、少なくとも1つのレンズセルとを有し、上記レンズセルは、切り替え可能な光の回転手段と、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備え、上記回転手段は入射光を0°または90°に回転させ、上記偏光子は偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致している眼用レンズ構造に関する。また、本発明は、複数の光学機能を実現するための装置および方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、視覚障害を補整するための眼用レンズ構造に関する。具体的には、本発明は、複屈折特性を有するレンズ部材を備えた眼用レンズ構造に関する。また、本発明は、複数の光学機能を実現するための装置および方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
視力障害を補整するための眼用レンズが知られている。眼の補整の分野における最も重要な問題の1つは、加齢により近くの物に眼の焦点を合わせる能力が次第に低下する老眼の補整である。老眼の補整は、典型的には、同一のレンズで遠近両方の補整を行うための近方視領域と遠方視領域とを有する2焦点あるいは多焦点のコンタクトレンズを用いることによって対処される。累進的な眼用レンズは、通常、遠方視領域、近方視領域、およびそれら両領域の間の累進帯(累進チャンネル)を備えている。上記の累進帯は、遠方視領域から近方視領域まで境界線や分光特性の急激な変化を生じることなく除々に性能が変化する。
【0003】
上記のようなレンズを用いることにより、広い距離範囲を見ることができるようになるものの、歪みや空間的制約などの問題に適応するために設計、製造、および使用方法の複雑化を伴うという問題がある。一方、単焦点のレンズは、単一の範囲についてのみ良好な性能を提供するようになっているので、上記のような問題は生じない。
【0004】
従来、眼用レンズを着用者に処方する場合、視覚障害を有する着用者に光学特性の異なる複数のレンズを着用させてその着用者に最も良好な光学特性を提供することのできるレンズを選択していた。このような技術は、着用者が多数の眼鏡の着脱動作を行う必要があるという問題、および選択可能な複数のレンズの中に当該着用者に固有の視覚障害を補整するために最適な光学レンズが含まれていない場合があるという問題がある。
【0005】
US2004/0156021には、眼用レンズ構造に関する先行技術が開示されている。しかしながら、上記先行技術にかかるレンズ構造には、光学レンズのサイズの制限、光学出力変化の変化幅の制限、色収差の制限、および高次回折モードの発生などの問題がある。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様では、光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、少なくとも1つのレンズセルとを備え、上記レンズセルは、切り替え可能な光の回転手段と、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、上記回転手段は、入射光を0°または90°に回転させることができ、上記偏光子は、偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致しており、上記少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との中間面が累進面(progressive surface)である眼用レンズ構造を提供する。
【0008】
また、光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、少なくとも1つのレンズセルとを有し、上記レンズセルは、切り替え可能な光の回転手段と、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備え、上記回転手段は入射光を0°または90°に回転させ、上記偏光子は偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致している構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の実施例は、以下に示す構成としてもよい。
【0010】
すなわち、少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneである構成としてもよい。
【0011】
また、上記少なくとも1つのレンズセルの外表面は当該レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されている構成としてもよい。
【0012】
また、少なくとも1つの上記回転手段は、当該眼用レンズ構造の屈折力が上記サブレンズ部材の屈折率nに依存した所定の屈折力範囲ΔP内になるように入射光を回転させるように調整されている構成としてもよい。
【0013】
また、上記眼用レンズ構造の外表面は眼科の処方に応じて機械加工可能であってもよい。
【0014】
また、少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の中間面が球トロイダル面(sphero-toric surface)であってもよい。
【0015】
また、少なくとも1つの回転手段が、当該眼用レンズ構造のジオプトリ値(dioptric values)を変化させるために第1状態と第2状態とに切り替え可能である構成としてもよい。上記ジオプトリ値は、例えば、球面屈折力(spherical power)、非点収差屈折力(astigmatic power)、プリズム屈折力(prismatic power)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
また、上記回転手段は、当該眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に応じて切り替えられる構成としてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は、複数の光学機能を実現するための装置であって、上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の屈折面(dioptric surface)が複合面(complex surface)である複数のレンズセルを有す眼用レンズ構造と、1または複数の上記レンズセルに備えられる上記回転手段を実現すべき光学機能に応じて切り替えるためのセレクタとを備え、実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される装置である。
【0018】
また、本発明の実施例として、以下に示す構成としてもよい。
【0019】
すなわち、少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneであり、対応するレンズセルの外表面が合わされており、上記セレクタは、上記少なくとも1つのサブレンズ部材に対応する上記回転手段を各レンズセルの通常軸または異常軸に沿った屈折力がゼロとなり、かつ、当該各レンズセルと異なる少なくとも1つの他のレンズセルの回転手段を当該他のレンズセルの屈折力が非ゼロとなるように切り替えることにより実現すべき上記光学機能を選択する構成としてもよい。
【0020】
また、上記セレクタは、1つのレンズセルの屈折力を非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替え可能である構成としてもよい。
【0021】
また、実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される構成としてもよい。
【0022】
本発明の第3の態様は、眼用レンズの複数の光学機能を実現する方法であって、実現すべき光学機能を選択する工程と、光を偏光させる工程と、光が複数のレンズセルを通過する工程とを含み、各レンズセルは、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、実現すべき光学特性に応じて第1入射方向から入射光を0°または90°回転させる工程を含む。
【0023】
なお、上記光は、レンズセルを通過する前に偏光されてもよく、レンズセルを通過した後に偏光されてもよい。
【0024】
また、上記方法は、1つのレンズセルの屈折力を連続的に非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替える工程を含んでいてもよい。
【0025】
本発明に係る方法の少なくとも一部は、コンピュータによって実行されてもよい。上記方法は、プログラム可能な装置上でソフトウェアによって実行されてもよい。上記方法は、ハードウェアによって実行されてもよく、ソフトウェアによって実行されてもよく、これらの組み合わせによって実行されてもよい。
【0026】
本発明はソフトウェアによって実行可能であり、本発明は、任意の適切な伝送媒体にコンピュータ読み取り可能なコードとして埋め込まれていてもよい。また、上記伝送媒体は、フロッピディスク(登録商標)、CD−ROM、ハードディスクドライブ、磁気テープ装置、個体記憶装置などの実体のある記録媒体であってもよい。また、上記伝送媒体は、電気信号、電子信号、光信号、音響信号、磁気信号、または電磁気信号(例えば、マイクロウェーブやRF信号)などの信号を含む一時的な伝送媒体であってもよい。
【0027】
〔図面の簡単な説明〕
以下に示す図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0028】
図1Aおよび図1Bは、本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【0029】
図2は、本発明の第1および第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【0030】
図3Aは、本発明の各実施例における偏光回転手段がオフの状態を示す概要図である。
【0031】
図3Bは、本発明の各実施例における偏光回転手段がオンの状態を示す概要図である。
【0032】
図4Aは、本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す概要図である。
【0033】
図4Bは、本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す透視図である。
【0034】
図5Aは、本発明の各実施例における図3Aに示した偏光回転手段のオフ状態での動作を示した概念図である。
【0035】
図5Bは、本発明の各実施例における図3Bに示した偏光回転手段のオン状態での動作を示した概念図である。
【0036】
図6Aおよび図6Bは、本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0037】
図7Aおよび図7Bは、本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0038】
図8は、本発明の各実施例における上記回転手段を制御するための電子制御装置の概略図である。
【0039】
図9は、本発明の第4実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0040】
図10Aおよび図10Bは、本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0041】
図11は、本発明の第6実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0042】
図12Aおよび図12Bは、本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【0043】
〔詳細な説明〕
本発明の第1実施例について、図1A、図1B、および図2を参照しながら説明する。
【0044】
図1Aは、本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造10の概略図であり、この眼用レンズ構造10は、偏光子11、切り替え可能な回転手段13、レンズ15、およびサブレンズ17を備えている。偏光子11は、光を光波の電場方向を規定する偏光軸方向に偏光させることのできる直線偏光子である。レンズ15は、レンズ媒体を通る光が当該光の偏光方向に応じてレンズ媒体中を異なる光学経路で通過する複屈折特性を有している。レンズ媒体を通る光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向に沿った通常屈折率noまたは異常軸方向に沿った異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ15の材質をCaCO3としている。変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。レンズの外表面151および152は半径Rによって定義された曲率を有しており、それによって1つのレンズが形成されている。レンズ15は、複屈折特性により、通常屈折率noに応じた第1焦点foおよび異常屈折率neに応じた第2焦点feの2つの焦点を有している。本実施例では、サブレンズ17は、レンズ15の通常屈折率noに対応する固定の屈折率noを有している。
【0045】
図2に示すように、眼用レンズ構造10に入射した光は偏光子11によってある偏光軸方向に直線偏光される。切り替え可能な回転手段13は、制御装置135から受け取った制御信号に応じて光の偏光方向を元々の偏光軸方向から0°あるいは90°回転させることができる。
【0046】
図3Aに示すように、回転手段13は、それぞれ回転手段13の外面側に配置された2枚の基板132,133と、これら両基板132,133の間に配置された液晶構造層131、ITO(indium tin oxide)層、および内部ポリイミド層を備えている。回転手段13は液晶の特性に基づいて動作する。液晶は、休止状態では螺旋構造を成すように配向する傾向を有している。偏光された光は、当然、この螺旋構造に沿った経路を通る。液晶層を、上記螺旋構造を通る光の偏光方向が元々の偏光方向に対して90°の角度で回転する90°回転のみを許容する構成としてもよい。基板132および133を電極として機能させて液晶層に電場を印加すると、図3Bに示すように、電気双極性を有する液晶分子は電場方向に平行な方向に沿って配向する。この配向状態では、光は液晶分子の配向方向に沿って偏光方向が回転されることなく進行する。電場を生成する制御電圧は10V程度であり、吸収される電力は非常に小さい。本実施例における回転手段13および液晶層131の厚さは10μm以下である。なお、レンズ自体を基板として機能させてもよい。
【0047】
各基板132,133には、2つのコネクター134,135が設けられている。光学レンズ構造の製造工程の一部に光学レンズを形成するための機械加工工程や切断工程が含まれる場合には、基板132,133に設けられる上記各コネクターを上記製造工程後に形成する。図4Aおよび図4Bに示すように、例えば眼鏡のレンズ用に製造される眼用レンズの場合、上記各コネクターが眼用レンズ構造の製造中に切断されないように、空のセルを用いて上記接続を形成するようにしてもよい。
【0048】
図5Aおよび図5Bは、回転手段13および偏光子11の動作を示す概略図である。図5Aでは、基板132と133との間に電圧が印加されておらず、液晶層131は休止状態になっている。光はまず直線偏光子11によって水平偏光軸方向に偏光される。偏光された光は、その後、回転手段13に入射し、通常は基板132および133に平行に螺旋配向している液晶の構造に沿って進む。上記光の偏光は元々の水平方向に対して90°回転され、垂直方向に偏光する。
【0049】
図5Bでは、基板132と133との間の液晶層131に電界が印加され、液晶は電界方向に沿って配向する。液晶が電気的に極性化されないように交流電流が用いられる。この状態では、上記光は液晶の配向に沿って進み、当該光の偏光方向は回転手段に入射したときの偏光方向のまま変化しない。
【0050】
上記の光の偏光方向の回転と非回転とにより、レンズ15の焦点を、通常屈折率noに対応する第1焦点foと異常屈折率neに対応する第2焦点feとに切り替えることができる。
【0051】
サブレンズ17は屈折率noを有している。レンズ15とサブレンズ17との眼用複合体の外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ15の表面151の曲率と、サブレンズ17の表面172の曲率とは一致している。
【0052】
回転手段13が休止状態の場合、上記光はレンズ15の通常屈折率noとサブレンズ17の屈折率noとに遭遇する。屈折率noが同一であるレンズの表面を平行に配置した複合レンズでは屈折力はゼロになる。一方、回転手段13が活性状態の場合、レンズ15の異常屈折率neが選択される。この状態では、上記光はレンズ15で異常屈折率neに遭遇し、サブレンズ17の屈折率は通常屈折率noなので、レンズ15とサブレンズ17の界面であるレンズ15の表面152で屈折する。この場合、界面の曲率および屈折率の差ne−noに応じた光学的影響を受ける。すなわち、レンズの屈折率Peは以下の式(1)で表される。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、Δnはレンズ15の通常屈折率noとレンズ15の異常屈折率neとの差であり、R1は複合レンズの前面側の表面151の曲率半径であり、R2は複合レンズのレンズ15とサブレンズ17との界面152の曲率半径である。
【0055】
一例として、レンズ15がCaCO3からなる場合、Δn=0.17、R1=200mm、R1=147mmの切り替え可能な眼用レンズ構造が実現される。上記眼用レンズ構造では、複合レンズの屈折力を平面の屈折力から2ジオプターの屈折力に切り替えることができる。これにより、全視界の焦点を遠方領域に合わせた状態と全視界の焦点を近方領域に合わせた状態とに切り替え可能な2焦点レンズを提供できる。
【0056】
回転手段13、レンズ15、およびサブレンズ17の複合体をレンズセル19として示す。なお、本発明の実施例において、上記レンズセルを複数備えていてもよい。
【0057】
例えば、図6Aおよび図6Bに示すように、第2実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子21と、第1回転手段23_1、第1レンズ25_1、および第1サブレンズ27_1からなる第1レンズセル29_1と、第2回転手段23_1、第2レンズ25_2、および第2サブレンズ27_2からなる第2レンズセル29_2とを備えている。レンズセル29_1および29_2は、それぞれ第1実施例のレンズセルと同様の構成である。
【0058】
各レンズセル29_1および29_2は、対応する各レンズセルの回転手段23_1あるいは23_2を切り替えることにより、互いに独立して制御可能になっている。これにより、回転手段23_1および23_2の切り替えによって1組の異なる屈折力を実現することができる。
【0059】
2つの回転手段23_1および23_2が活性化状態である場合、偏光された光はレンズ25_1およびレンズ25_2の両方の異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力PTは、レンズの厚みを無視できる場合のレンズメーカー方程式に基づいて下記式(2)のように表すことができる。
【0060】
【数2】
【0061】
ここで、Δnはレンズ25_1および25_2の通常屈折率noとレンズ25_1および25_2の異常屈折率neとの差を示している。また、R1はレンズ25_1の前面側の表面25_11の曲率半径を示しており、R2はレンズ25_1とサブレンズ27_1との間の界面25_12の曲率半径を示しており、R3はレンズ25_2とレンズ27_2との間の界面25_22の曲率半径を示している。
【0062】
第1回転手段23_1が活性化状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の異常屈折率neに遭遇するが、第2回転手段23_2は不活性状態なので偏光された光はレンズ25_2の通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P1は下記式(3)のように表される。
【0063】
【数3】
【0064】
第1回転手段23_1が不活性状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の通常屈折率noに遭遇するが、第2回転手段23_2は活性化状態なので偏光された光がレンズ25_2の異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P2は下記式(4)のように表される。
【0065】
【数4】
【0066】
第1回転手段23_1および23_2の両方が不活性状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の通常屈折率noおよびレンズ25_2の通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P3は下記式(5)のように表される。
【0067】
【数5】
【0068】
一例として、下表のパラメータを有するCaCo3からなるレンズ25_1およびレンズ25_2を用いる。
【0069】
【表1】
【0070】
この場合、下表に示す4つの焦点に切り替え可能な4焦点全視野レンズ構造を実現できる。
【0071】
【表2】
【0072】
ここで、C2およびC1はレンズ23_1およびレンズ23_2が不活性状態(0)であるか活性状態(1)であるかをそれぞれ示している。
【0073】
図7Aおよび図7Bは本発明の第3実施形態にかかる眼用レンズ構造を示している。この眼用レンズ構造は、偏光子31と、第1レンズセル39_1と、第2レンズセル39_2と、第3レンズセル39_3とを備えている。第1レンズセル39_1は、第1回転手段33_1、第1レンズ35_1、および第1サブレンズ37_1を備えている。第2レンズセル39_2は、第2回転手段33_1、第2レンズ35_2、および第2サブレンズ37_2を備えている。第3レンズセル39_3は、第3回転手段33_3、第3レンズ35_3、および第3サブレンズ37_3を備えている。レンズセル39_1、39_2および39_3は、それぞれ第1実施例のレンズセルと同様の構成である。各回転手段33_1、33_2、および33_3が活性化されており、光が各レンズ35の異常屈折率neに遭遇する場合、上記の眼用レンズ構造の屈折力PTは下記式(6)で表される。
【0074】
【数6】
【0075】
ここで、Δnはレンズ35_1、35_2、および35_3における通常屈折率noと異常屈折率neとの差を示している。また、R1はレンズ35_1の前面側の表面35_11の曲率半径を示しており、R2はレンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の曲率半径を示しており、R3はレンズ35_2とレンズ37_2との間の界面35_22の曲率半径を示しており、R4はレンズ35_3とサブレンズ37_3との間の界面35_32の曲率半径を示している。
【0076】
各レンズセル39_1、39−2、および39_3は、当該各レンズセルに対応する回転手段33_1、33_2、あるいは33_2を切り替えることにより、互いに独立して制御可能になっている。これにより、回転手段33_1、33−2、および33_2の切り替えによって1組の異なる屈折力を実現することができる。
【0077】
一例として、下表のパラメータを有するCaCo3からなるレンズ35_1、35−2、およびレンズ35_3を用いる。
【0078】
【表3】
【0079】
この場合、下表に示す8つの焦点に切り替え可能な8焦点全視野レンズ構造を実現できる。
【0080】
【表4】
【0081】
本発明の他の実施例として、様々な組み合わせを実現して近接領域を細かくサンプリングするために、任意の数のレンズセルを組み合わせて用いてもよい。J個のレンズセルを用いる場合の屈折力PTは下記式(7)で表される。
【0082】
【数7】
【0083】
ここで、Δnは上記レンズの第1屈折力に対応する第1屈折率と上記レンズの第2屈折力に対応する第2屈折率との差を示している。また、R1は複合レンズの前面の曲率半径を示しており、RJ+1はJ番目のレンズとそれに対応するサブレンズとの間の界面の曲率半径を示している。
【0084】
本発明の他の変形例として、レンズ表面の形状を球面ではなく複合面にしてもよい。図1Aおよび図1Bに示すように、レンズ15の表面が複合面である場合、レンズ15とサブレンズ17との間の界面152における光学的影響は複合面152の曲率に依存して生成される。
【0085】
図7Bに示したように、レンズ35_1、35_2、および35_3の複合面35_12、35_22、35_33に依存した複数の異なる光学機能を実現するために、3つのレンズセル39_1、39_2、および39_3からなる眼用レンズ構造を用いてもよい。このような構成は、眼用レンズの着用者のために複数の光学機能を実現する眼用レンズ実演装置を実現するために用いることができる。
【0086】
例えば、3つの個々の光学機能をそれぞれ個別に順次実行するようにしてもよい。また、この目的のために、回転手段33_1、33_2、および33_3が順次活性化される構成としてもよい。
【0087】
回転手段33_1が活性化された場合(回転手段33_2および33_3は不活性のまま)、光の偏光は回転され、レンズ35_1では異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_2および35_3では通常屈折率noに遭遇する。この実施例では、上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3はそれぞれ屈折率noを有している。光学機能は、レンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の曲率半径に依存する。上記複合レンズ構造の屈折力は下記式(8)によって表される。
【0088】
【数8】
【0089】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11の半径を示しており、R2はレンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の半径を示している。
【0090】
回転手段33_2が活性化されると(回転手段33_1および33_3は不活性)、光の偏光は回転手段33_2によって回転され、レンズ35_2では異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_1および35_3では通常屈折率に遭遇する。上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3は通常屈折率noを有している。実現される光学機能は、レンズ35_2とレンズ要素37_2との間の界面35−21の曲率に依存する。上記複合レンズの屈折力は下記式(9)によって表される。
【0091】
【数9】
【0092】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11の半径である。また、R3はレンズ35_2とサブレンズ37_2との間の界面35_22の半径である。
【0093】
回転手段33_3が活性化されると(回転手段33_1および33_2は不活性)、光の偏光は回転手段33_3によって回転され、レンズ35_3の異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_1および35_2では通常屈折率に遭遇する。上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3は通常屈折率noを有している。実現される光学機能は、レンズ35_3とレンズ要素37_3との間の界面35−32の曲率に依存する。上記複合レンズ構造の屈折力は下記式(10)によって表される。
【0094】
【数10】
【0095】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11を示しており、R4はレンズ35_3とサブレンズ37_3との間の界面35_32の半径を示している。
【0096】
また、回転手段33_1、33_2、および33_3のうちの2つまたは全部が活性化された場合、屈折力は下記式(11)のように表される。
【0097】
【数11】
【0098】
また、回転手段33_1、33_2、および33_3が全て不活性状態の場合、全体としての屈折力はゼロになる。
【0099】
上述した実施例において、上記回転手段を制御するために電子制御装置を用いてもよい。図8は、N個の回転手段C1〜CNにロジック制御信号を出力する電子制御装置の一例を示している。要求された焦点に正確に合わせるように上記回転手段を制御できるように、実行すべき特定の光学機能に基づく信号、あるいは眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に基づく信号を制御回路に供給するようにしてもよい。
【0100】
上記の眼用実演装置は、例えば光学機器製造者の実験室などの光学実演設備において、患者や顧客に異なる眼鏡やレンズを個別に試着させることなく、異なるタイプの眼用レンズによる異なる光学機能を比較実験させるために用いられてもよい。これにより、着用者に当該着用者の視覚能力に応じた幅広い光学機能を試させることができ、当該着用者が光学レンズを選択するための情報を提示することができる。また、各光学機能について単焦点全視野の観察を実現することができる。
【0101】
上記の光学機能を提供する光学複合面は、累進面であってもよく、非点収差用であってもよい。上記表面は、例えば球トロイダルであってもよい。この目的のために、上記眼用レンズ構造の特定のレンズセルは、累進設計であってもよく、特定の屈折力あるいは特定の非点収差に専用のものであってもよい。このように、1つの設計を他の設計と比較できる。
【0102】
複屈折材料を用いることによって得られる2焦点の差を用いることにより、非点収差を補整するための異なる光学効果を着用者に提供する眼用レンズ製品を提供できる。眼用レンズ製品を構成する複合レンズセル構造の外側の表面の一方または両方に、着用者のレンズ処方に適合させるための機械加工を施してもよい。
【0103】
2つのレンズセルの眼用配置を用いることにより、着用するための眼用レンズ製品を形成してもよく、2つの光学機能(例えば近方視機能と遠方視機能))に切り替え可能な構成としてもよい。光学機能の切り替えは、手動で行われてもよく、自動的に行われてもよい。遠方視機能と近方視機能とを切り替えるための回転手段の自動的な切り替えは、眼用レンズ構造を介して観察している対象物の接近に応じて行われてもよい。例えば、エシラー(Essilor)のFR0953127あるいはFR0953126などに記載されている眼の動きの検出器を用いて近方視機能と遠方視機能のどちらが要求されているかを検出するようにしてもよい。このように、光学製品の着用者は、1つのレンズ表面における近方視用および遠方視用の各専用領域を介して観察する必要がなく、遠方視および近方視の両方を全視野で観察できる。
【0104】
本発明において、「累進面」とは、表面の少なくとも一部で曲率が連続的に変化する非回転対象な光学面を意味している。
【0105】
本発明において、「近方視領域」とは、近方領域を観察するためのジオプトリ度数を有する光学機能領域を意味する。
【0106】
本発明において、「遠方視領域」とは、遠方領域を観察するためのジオプトリ度数を有する光学機能領域を意味する。
【0107】
例えば、図13に示すように、本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子91、第1レンズセル99_1、および第2レンズセル99_2を備えている。また、第1レンズセル99_1は第1回転手段93_1、第1レンズ95_1、および第1サブレンズ97_1からなり、第2レンズセル99_2は第2回転手段93_2、第2レンズ95_2、および第2サブレンズ97_2からなる。
【0108】
第1レンズ95_1および第2レンズ95_2は、当該レンズのレンズ媒体を通過する光が当該光の偏光に応じてレンズ媒体中の異なる経路を通過する複屈折特性を有している。すなわち、上記光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向の通常屈折率noまたは異常軸方向の異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ15の材質をCaCO3としている。なお、変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。
【0109】
第1サブレンズ97_1および第2サブレンズ97_2は屈折率noを有している。第1レンズ95_1と第1サブレンズ97_1との眼用複合体の両外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ95_1の表面95_11の曲率とサブレンズ97_1の表面97_12の曲率とは一致している。
【0110】
第2レンズ95_2と第2サブレンズ97_2との眼用複合体の両外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ95_2の表面95_21の曲率とサブレンズ97_2の表面97_22の曲率とは一致している。
【0111】
第1レンズセル99_1は、第1レンズ部材95_1と第1サブレンズ部材97_1との中間面98_1が、光が異常屈折率neに遭遇する第1光学機能Prg1を有する累進面になるように構成されている。例えば、上記第1光学機能Prg1は、近方視領域および累進帯を構成する。
【0112】
第1レンズセル99_2は、第2レンズ部材95_2と第2サブレンズ部材97_2との中間面98_2が、光が異常屈折率neに遭遇する第2光学機能Prg2を有する累進面になるように構成されている。例えば、上記第2光学機能Prg2は、遠方視領域および累進帯を構成する。
【0113】
第1回転手段93_1が休止状態である場合、光は第1レンズ95_1の通常屈折率noおよび第1サブレンズ97_1の屈折率noに遭遇する。上記複合レンズは同一の屈折率noを有するレンズが平行に配置されているので、当該複合レンズの屈折力はゼロになる。
【0114】
一方、第1回転手段93_1が活性状態の場合、第1レンズ95_1の異常屈折率neが選択される。この状態では、光は、第1レンズ95_1において異常屈折率neに遭遇し、第1レンズ95_1と第1サブレンズ97_1との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率および屈折率の差ne−noに関連する光学効果が生成される。このようにして光学機能Prg1が提供される。
【0115】
光が第2レンズ95_2の通常屈折率noおよび第2サブレンズ97_2の屈折率noに遭遇する場合、複合レンズは同一の屈折率noを有するレンズが平行に配置されているので、当該複合レンズの屈折率がゼロになる。光が第2レンズ95_2において異常屈折率neに遭遇する場合、当該光は第2レンズ95_と第2サブレンズ97_2との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率および屈折率の差ne−noに関連する光学効果が生成される。このようにして光学機能Prg2提供される。
【0116】
各レンズセル99_1および99_2は、対応するレンズセルの回転手段93_1あるいは93_2の切り替えにより個別に制御される。その結果、回転手段93_1および93_2の切り替えに応じて、1組の異なる光学機能が提供される。なお、本実施例では、回転手段93_1および93_2は同時に活性状態に切り替えることができないようになっている。
【0117】
第1回転手段93_1が活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1では異常屈折率neに遭遇するが、第2回転手段93_2は不活性状態なので偏光された光は第2レンズ95_2では通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の光学機能は第1光学機能Prg1となる。
【0118】
第1回転手段93_1が不活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1では通常屈折率noに遭遇が、第2レンズ93_2は活性状態なので偏光された光は第2レンズ95_2では異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の光学機能は第2光学機能Prg2となる。
【0119】
2つの回転手段93_1および93_2が共に不活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1および第2レンズ95_2の両方で通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力はゼロになる。
【0120】
これにより、下表に示す光学機能に切り替え可能な全視野の2つの機能を有するレンズ構造を提供できる。
【0121】
【表5】
【0122】
ここで、C1およびC2は、それぞれ、回転手段93_1および93_2が不活性状態(0)であること、および活性状態(1)であることを示している。
【0123】
上記構成により、近方視の場合と遠方視の場合とでレンズ表面の異なる領域を介して観察することなく、近方および遠方の両方を全視野で観察できる光学製品を提供できるという効果が得られる。また、歪みなどの欠陥、非点収差の発生、非点収差や累進レンズの表面における屈折力の空間分布などの空間制限問題を低減できる。
【0124】
図14に示すように、本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子101、回転手段103、レンズ105、およびサブレンズ107を備えている。
【0125】
上記レンズ105は、レンズ媒体を通過する光が、当該光の偏光に応じて当該レンズ媒体中を異なる経路で通過する複屈折特性を有している。上記光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向の通常屈折率noまたは異常軸方向の異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ105の材質をCaCO3としている。なお、変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。サブレンズ107は、屈折率noを有している。
【0126】
上記の眼用複合体は、レンズ105とサブレンズ107とを含んでいる。レンズ105は、表面105_1および複合面である表面105_2の2つの表面を有している。サブレンズ107は、外表面107_1と内表面107_2とを有しており、内表面107_2はレンズ105の表面105_2と組み合わされている。上記眼用複合体における外表面105_1および107_1は、通常屈折率noに遭遇する第1光学機能を提供するように形成されている。例えば、上記第1光学機能として、累進光学機能Prg1が提供される。上記の第1の累進光学機能Prg1は、例えば、近方視領域と累進帯とを含んでいる。
【0127】
上記眼用複合体(レンズ105およびサブレンズ107)は、レンズ105とサブレンズ107との間の中間面105−2が、光がレンズ105の異常屈折率neに遭遇する第2光学機能を提供する複合面になるように形成されている。例えば、上記第2光学機能として累進光学機能Prg2が提供される。上記の第2の累進光学機能Prg2は、例えば、遠方視領域と累進帯とを含んでいる。
【0128】
回転手段103が休止状態である場合、光はレンズ105の通常屈折率noおよびサブレンズの屈折率noに遭遇する。この場合、上記眼用複合体の外表面105_1および107_2の曲率および屈折率noに関連する光学効果が提供される。これにより、上記の第1累進光学機能Prg1が提供される。
【0129】
一方、回転手段103が活性状態である場合、レンズ105の異常屈折率neが選択される。この状態では、光はレンズ105で異常屈折率neに遭遇し、レンズ105とサブレンズ107との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率、屈折率の差ne−no、および眼用複合体の外表面の曲率に関連する光学機能が生成される。これにより、上記の第2累進光学機能Prg2が提供される。
【0130】
なお、本発明は、特定の累進光学機能Prg1およびPrg2に限定されるものではない。例えば、累進光学機能Prg1は遠方視領域と累進帯とを含んでいてもよい。また、累進光学機能は、着用者の特定の活動(例えば運転、コンピュータ操作、スポーツなど)に応じたものであってもよい。
【0131】
上記眼用複合体(レンズ105およびサブレンズ107)は、回転手段103を切り替えることによって制御できる。これにより、回転手段103の切り替えに応じて、異なる光学機能を提供することができる。
【0132】
回転手段103が、偏光された光がレンズ105の異常屈折率neに遭遇する活性状態である場合、眼用レンズ構造の光学機能は第2累進光学機能Prg2になる。
【0133】
回転手段103が、偏光された光がレンズ105の通常屈折率noに遭遇する不活性状態の場合、眼用レンズ構造の光学機能は第1累進光学機能Prg1になる。
【0134】
これにより、下表に示す光学機能に切り替え可能な全視野の2つの機能を有するレンズ構造を提供できる。
【0135】
【表6】
【0136】
ここで、C1は回転手段103は、不活性状態(0)または活性状態(1)のいずれであるかを示している。
【0137】
上記構成により、単一の眼用複合レンズ105およびサブレンズ107を用いて着用者に全視野の2つの異なる光学機能を提供可能な光学製品を提供できるとういう効果が得られる。
【0138】
他の実施例として、サブレンズの屈折率を、noおよびneとは異なるnとしてもよい。
【0139】
図9に示す眼用レンズ構造40は、偏光子41、回転手段43、レンズ45、およびサブレンズ57を備えている。レンズ45は複偏光特性を有しており、第1実施例のレンズ15と同様、光の偏光に応じた屈折率noおよびneを有している。サブレンズ47は、noおよびneとは異なる屈折率nを有している。レンズ45の前面側の表面451の曲率半径およびサブレンズ47の背面側の表面472の曲率半径は一致している。また、屈折率nはレンズ45の屈折率noおよびneとは異なっている。回転手段43が、光が通常屈折率noに遭遇する不活性状態である場合、下記式(12)に示す屈折力Poが得られる。一方、回転手段43が、光の偏光を90°回転させる活性状態である場合、下記式(12)に示す屈折力Peが得られる。
【0140】
【数12】
【0141】
ここで、R1はレンズ45の前面側の表面451の曲率半径を示しており、R2はレンズ45とサブレンズ47との界面452の曲率半径を示している。
【0142】
光学レンズ構造40によって得られる屈折力差ΔPの範囲は光学屈折力範囲内で移動させることができる。例えば、no=n=1.3、ne=1.47、R1=0.3m、R2=−0.2mである場合、屈折力Po=0δ、屈折力Pe=1.41δが得られる。また、no=1.3、ne=1.47、n=1.2、R1=0.3m、R2=−0.2mである場合、屈折力Po=0.83δ、屈折力Pe=2.24δが得られる。このように、光学レンズ構造によって得られる屈折力範囲ΔPの幅を変化させずに維持したまま、光学屈折力範囲内の全域で移動させることができる。レンズ45の前面側の表面451の曲率半径とサブレンズ47の背面側の表面472の曲率範囲とが一致していない場合、屈折力の自由度を拡大することができる。回転手段43が、光が通常屈折率noに遭遇する不活性状態である場合、屈折力Poは下記式(13)によって表される。
【0143】
【数13】
【0144】
一方、回転手段43が、光の偏光が90°回転する活性状態である場合、屈折力Peは下記式(14)によって表される。
【0145】
【数14】
【0146】
ここで、R1はレンズ45の前面側の表面451の曲率半径を示しており、R2はレンズ45とサブレンズ47との界面452の曲率半径を示しており、R3はサブレンズ47の背面側の表面472の曲率半径を示している。
【0147】
上述の例に示したように、複合レンズ構造によって提供される屈折力差ΔPの範囲は変化しないが、屈折力nおよび/または曲率半径R3を調整することにより屈折力範囲内で移動させることができる。なお、曲率半径R1およびR2を変化させてもよい。例えば、光学レンズ構造40の全体の厚さを薄くするために曲率半径R1およびR2を増加させてもよい。
【0148】
このように、上述した2つの例では、不活性化状態における眼用レンズ構造の屈折力をゼロではないジオプトリ度数にすることができる。このジオプトリ度数は、眼用レンズ製品の着用者の屈折力に合わせることができる。
【0149】
上記レンズおよび上記サブレンズに円環表面を形成してもよい。この場合、上記円環表面は1つの軸と2つの半径Rt,Rsを有する。これにより、遠方視用の屈折力が提供されるとともに、他の近接物を観察することができるように異なる屈折力が付加される。着用者に提供する屈折力を最適化するために、各接近物に応じた非点収差値を識別するようにしてもよい。
【0150】
また、上述した各実施例では、偏光子が回転手段およびレンズとサブレンズの複合体の前面側に配置されているが、図10Aおよび図10Bに示す第5実施例のように、回転手段53をレンズ44およびサブレンズ57の複合体の背面側に配置し、偏光子51を回転手段53の背面側に配置してもよい。また、図11に示す多様な実施例のように、偏光子61がレンズセル毎に異なる位置に配置されたレンズセル69_1から69_4を個々に備えてもよく、これらの偏光子61がレンズセル毎に異なる位置に配置されたレンズセル同士を組み合わせたレンズセル80_1から80_5を形成してもよい。
【0151】
本発明について上述の実施例を参照して説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で変更可能である。
【0152】
例えば、上述の実施例では、複屈折材料CaCO3からなるレンズを用いているが、他の複屈折材料を用いてもよい。上記複屈折材料としては、例えば、KATZらの著作物である「配位重合体合成法を用いて設計された高複屈折材料(Highly birefringent materials designed using coordination polymer synthetic methodology)」に示されている複屈折材料を用いることができる。通常屈折率noと異常屈折率neとの差Δnとして0.4オーダーの値を得ることができる。レンズセルの厚さを低減させ、それによって眼用レンズ構造のサイズを従来の眼用レンズ構造のサイズに近づけるために、上記の屈折率の差を用いてレンズの曲率半径を低減させてもよい。
【0153】
また、図12Aに示すように、光の偏光を回転させるためにセル構造を有する回転手段R1を用いてもよい。この構成では、回転手段は、マトリクス状の回転手段セルに分割されている。これにより、レンズ製造工程においてレンズ構造のエッジが切断された場合であっても、回転手段の全体が損傷することを防止でき、いくつかの回転手段セルが除去されるものの、内側に配置された回転手段セルについては通常に機能させることができる。あるいは、図12Bに示すように、製造工程において切断される可能性のある周辺領域だけセル構造R2とし、製造工程において切断される可能性の低い中央領域R3については非セル型の回転手段としてもよい。
【0154】
上述した実施例は単なる例示にすぎず、本発明の概念を制限するものではなく、上記実施例に対してさらに多くの修正および変形を施してもよい。本発明の概念は特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。異なる実施例に示した特徴点を適宜置換してもよい。
【0155】
特許請求の範囲における「含む」という記載は、他の要素やステップを含むことを除外するものではない。また、不定冠詞”a”や“an”は複数であることを除外するものでない。また、異なる従属請求項に記載した特徴を組み合わせてもよい。また、請求項に記載した符号は本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1A】本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図1B】本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図2】本発明の第1および第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図3A】本発明の各実施例における偏光回転手段がオフの状態を示す概要図である。
【図3B】本発明の各実施例における偏光回転手段がオンの状態を示す概要図である。
【図4A】本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す概要図である。
【図4B】本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す透視図である。
【図5A】本発明の各実施例における図3Aに示した偏光回転手段のオフ状態での動作を示した概念図である
【図5B】本発明の各実施例における図3Bに示した偏光回転手段のオン状態での動作を示した概念図である
【図6A】本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図6B】本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図7A】本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図7B】本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図8】本発明の各実施例における上記回転手段を制御するための電子制御装置の概略図である。
【図9】本発明の第4実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図10A】本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図10B】本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図11】本発明の第6実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図12A】本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【図12B】本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【図13】本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造を示す図である。
【図14】本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、視覚障害を補整するための眼用レンズ構造に関する。具体的には、本発明は、複屈折特性を有するレンズ部材を備えた眼用レンズ構造に関する。また、本発明は、複数の光学機能を実現するための装置および方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
視力障害を補整するための眼用レンズが知られている。眼の補整の分野における最も重要な問題の1つは、加齢により近くの物に眼の焦点を合わせる能力が次第に低下する老眼の補整である。老眼の補整は、典型的には、同一のレンズで遠近両方の補整を行うための近方視領域と遠方視領域とを有する2焦点あるいは多焦点のコンタクトレンズを用いることによって対処される。累進的な眼用レンズは、通常、遠方視領域、近方視領域、およびそれら両領域の間の累進帯(累進チャンネル)を備えている。上記の累進帯は、遠方視領域から近方視領域まで境界線や分光特性の急激な変化を生じることなく除々に性能が変化する。
【0003】
上記のようなレンズを用いることにより、広い距離範囲を見ることができるようになるものの、歪みや空間的制約などの問題に適応するために設計、製造、および使用方法の複雑化を伴うという問題がある。一方、単焦点のレンズは、単一の範囲についてのみ良好な性能を提供するようになっているので、上記のような問題は生じない。
【0004】
従来、眼用レンズを着用者に処方する場合、視覚障害を有する着用者に光学特性の異なる複数のレンズを着用させてその着用者に最も良好な光学特性を提供することのできるレンズを選択していた。このような技術は、着用者が多数の眼鏡の着脱動作を行う必要があるという問題、および選択可能な複数のレンズの中に当該着用者に固有の視覚障害を補整するために最適な光学レンズが含まれていない場合があるという問題がある。
【0005】
US2004/0156021には、眼用レンズ構造に関する先行技術が開示されている。しかしながら、上記先行技術にかかるレンズ構造には、光学レンズのサイズの制限、光学出力変化の変化幅の制限、色収差の制限、および高次回折モードの発生などの問題がある。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様では、光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、少なくとも1つのレンズセルとを備え、上記レンズセルは、切り替え可能な光の回転手段と、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、上記回転手段は、入射光を0°または90°に回転させることができ、上記偏光子は、偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致しており、上記少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との中間面が累進面(progressive surface)である眼用レンズ構造を提供する。
【0008】
また、光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、少なくとも1つのレンズセルとを有し、上記レンズセルは、切り替え可能な光の回転手段と、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備え、上記回転手段は入射光を0°または90°に回転させ、上記偏光子は偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致している構成としてもよい。
【0009】
また、本発明の実施例は、以下に示す構成としてもよい。
【0010】
すなわち、少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneである構成としてもよい。
【0011】
また、上記少なくとも1つのレンズセルの外表面は当該レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されている構成としてもよい。
【0012】
また、少なくとも1つの上記回転手段は、当該眼用レンズ構造の屈折力が上記サブレンズ部材の屈折率nに依存した所定の屈折力範囲ΔP内になるように入射光を回転させるように調整されている構成としてもよい。
【0013】
また、上記眼用レンズ構造の外表面は眼科の処方に応じて機械加工可能であってもよい。
【0014】
また、少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の中間面が球トロイダル面(sphero-toric surface)であってもよい。
【0015】
また、少なくとも1つの回転手段が、当該眼用レンズ構造のジオプトリ値(dioptric values)を変化させるために第1状態と第2状態とに切り替え可能である構成としてもよい。上記ジオプトリ値は、例えば、球面屈折力(spherical power)、非点収差屈折力(astigmatic power)、プリズム屈折力(prismatic power)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
また、上記回転手段は、当該眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に応じて切り替えられる構成としてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様は、複数の光学機能を実現するための装置であって、上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の屈折面(dioptric surface)が複合面(complex surface)である複数のレンズセルを有す眼用レンズ構造と、1または複数の上記レンズセルに備えられる上記回転手段を実現すべき光学機能に応じて切り替えるためのセレクタとを備え、実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される装置である。
【0018】
また、本発明の実施例として、以下に示す構成としてもよい。
【0019】
すなわち、少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneであり、対応するレンズセルの外表面が合わされており、上記セレクタは、上記少なくとも1つのサブレンズ部材に対応する上記回転手段を各レンズセルの通常軸または異常軸に沿った屈折力がゼロとなり、かつ、当該各レンズセルと異なる少なくとも1つの他のレンズセルの回転手段を当該他のレンズセルの屈折力が非ゼロとなるように切り替えることにより実現すべき上記光学機能を選択する構成としてもよい。
【0020】
また、上記セレクタは、1つのレンズセルの屈折力を非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替え可能である構成としてもよい。
【0021】
また、実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される構成としてもよい。
【0022】
本発明の第3の態様は、眼用レンズの複数の光学機能を実現する方法であって、実現すべき光学機能を選択する工程と、光を偏光させる工程と、光が複数のレンズセルを通過する工程とを含み、各レンズセルは、入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、実現すべき光学特性に応じて第1入射方向から入射光を0°または90°回転させる工程を含む。
【0023】
なお、上記光は、レンズセルを通過する前に偏光されてもよく、レンズセルを通過した後に偏光されてもよい。
【0024】
また、上記方法は、1つのレンズセルの屈折力を連続的に非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替える工程を含んでいてもよい。
【0025】
本発明に係る方法の少なくとも一部は、コンピュータによって実行されてもよい。上記方法は、プログラム可能な装置上でソフトウェアによって実行されてもよい。上記方法は、ハードウェアによって実行されてもよく、ソフトウェアによって実行されてもよく、これらの組み合わせによって実行されてもよい。
【0026】
本発明はソフトウェアによって実行可能であり、本発明は、任意の適切な伝送媒体にコンピュータ読み取り可能なコードとして埋め込まれていてもよい。また、上記伝送媒体は、フロッピディスク(登録商標)、CD−ROM、ハードディスクドライブ、磁気テープ装置、個体記憶装置などの実体のある記録媒体であってもよい。また、上記伝送媒体は、電気信号、電子信号、光信号、音響信号、磁気信号、または電磁気信号(例えば、マイクロウェーブやRF信号)などの信号を含む一時的な伝送媒体であってもよい。
【0027】
〔図面の簡単な説明〕
以下に示す図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0028】
図1Aおよび図1Bは、本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【0029】
図2は、本発明の第1および第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【0030】
図3Aは、本発明の各実施例における偏光回転手段がオフの状態を示す概要図である。
【0031】
図3Bは、本発明の各実施例における偏光回転手段がオンの状態を示す概要図である。
【0032】
図4Aは、本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す概要図である。
【0033】
図4Bは、本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す透視図である。
【0034】
図5Aは、本発明の各実施例における図3Aに示した偏光回転手段のオフ状態での動作を示した概念図である。
【0035】
図5Bは、本発明の各実施例における図3Bに示した偏光回転手段のオン状態での動作を示した概念図である。
【0036】
図6Aおよび図6Bは、本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0037】
図7Aおよび図7Bは、本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0038】
図8は、本発明の各実施例における上記回転手段を制御するための電子制御装置の概略図である。
【0039】
図9は、本発明の第4実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0040】
図10Aおよび図10Bは、本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0041】
図11は、本発明の第6実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【0042】
図12Aおよび図12Bは、本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【0043】
〔詳細な説明〕
本発明の第1実施例について、図1A、図1B、および図2を参照しながら説明する。
【0044】
図1Aは、本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造10の概略図であり、この眼用レンズ構造10は、偏光子11、切り替え可能な回転手段13、レンズ15、およびサブレンズ17を備えている。偏光子11は、光を光波の電場方向を規定する偏光軸方向に偏光させることのできる直線偏光子である。レンズ15は、レンズ媒体を通る光が当該光の偏光方向に応じてレンズ媒体中を異なる光学経路で通過する複屈折特性を有している。レンズ媒体を通る光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向に沿った通常屈折率noまたは異常軸方向に沿った異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ15の材質をCaCO3としている。変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。レンズの外表面151および152は半径Rによって定義された曲率を有しており、それによって1つのレンズが形成されている。レンズ15は、複屈折特性により、通常屈折率noに応じた第1焦点foおよび異常屈折率neに応じた第2焦点feの2つの焦点を有している。本実施例では、サブレンズ17は、レンズ15の通常屈折率noに対応する固定の屈折率noを有している。
【0045】
図2に示すように、眼用レンズ構造10に入射した光は偏光子11によってある偏光軸方向に直線偏光される。切り替え可能な回転手段13は、制御装置135から受け取った制御信号に応じて光の偏光方向を元々の偏光軸方向から0°あるいは90°回転させることができる。
【0046】
図3Aに示すように、回転手段13は、それぞれ回転手段13の外面側に配置された2枚の基板132,133と、これら両基板132,133の間に配置された液晶構造層131、ITO(indium tin oxide)層、および内部ポリイミド層を備えている。回転手段13は液晶の特性に基づいて動作する。液晶は、休止状態では螺旋構造を成すように配向する傾向を有している。偏光された光は、当然、この螺旋構造に沿った経路を通る。液晶層を、上記螺旋構造を通る光の偏光方向が元々の偏光方向に対して90°の角度で回転する90°回転のみを許容する構成としてもよい。基板132および133を電極として機能させて液晶層に電場を印加すると、図3Bに示すように、電気双極性を有する液晶分子は電場方向に平行な方向に沿って配向する。この配向状態では、光は液晶分子の配向方向に沿って偏光方向が回転されることなく進行する。電場を生成する制御電圧は10V程度であり、吸収される電力は非常に小さい。本実施例における回転手段13および液晶層131の厚さは10μm以下である。なお、レンズ自体を基板として機能させてもよい。
【0047】
各基板132,133には、2つのコネクター134,135が設けられている。光学レンズ構造の製造工程の一部に光学レンズを形成するための機械加工工程や切断工程が含まれる場合には、基板132,133に設けられる上記各コネクターを上記製造工程後に形成する。図4Aおよび図4Bに示すように、例えば眼鏡のレンズ用に製造される眼用レンズの場合、上記各コネクターが眼用レンズ構造の製造中に切断されないように、空のセルを用いて上記接続を形成するようにしてもよい。
【0048】
図5Aおよび図5Bは、回転手段13および偏光子11の動作を示す概略図である。図5Aでは、基板132と133との間に電圧が印加されておらず、液晶層131は休止状態になっている。光はまず直線偏光子11によって水平偏光軸方向に偏光される。偏光された光は、その後、回転手段13に入射し、通常は基板132および133に平行に螺旋配向している液晶の構造に沿って進む。上記光の偏光は元々の水平方向に対して90°回転され、垂直方向に偏光する。
【0049】
図5Bでは、基板132と133との間の液晶層131に電界が印加され、液晶は電界方向に沿って配向する。液晶が電気的に極性化されないように交流電流が用いられる。この状態では、上記光は液晶の配向に沿って進み、当該光の偏光方向は回転手段に入射したときの偏光方向のまま変化しない。
【0050】
上記の光の偏光方向の回転と非回転とにより、レンズ15の焦点を、通常屈折率noに対応する第1焦点foと異常屈折率neに対応する第2焦点feとに切り替えることができる。
【0051】
サブレンズ17は屈折率noを有している。レンズ15とサブレンズ17との眼用複合体の外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ15の表面151の曲率と、サブレンズ17の表面172の曲率とは一致している。
【0052】
回転手段13が休止状態の場合、上記光はレンズ15の通常屈折率noとサブレンズ17の屈折率noとに遭遇する。屈折率noが同一であるレンズの表面を平行に配置した複合レンズでは屈折力はゼロになる。一方、回転手段13が活性状態の場合、レンズ15の異常屈折率neが選択される。この状態では、上記光はレンズ15で異常屈折率neに遭遇し、サブレンズ17の屈折率は通常屈折率noなので、レンズ15とサブレンズ17の界面であるレンズ15の表面152で屈折する。この場合、界面の曲率および屈折率の差ne−noに応じた光学的影響を受ける。すなわち、レンズの屈折率Peは以下の式(1)で表される。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、Δnはレンズ15の通常屈折率noとレンズ15の異常屈折率neとの差であり、R1は複合レンズの前面側の表面151の曲率半径であり、R2は複合レンズのレンズ15とサブレンズ17との界面152の曲率半径である。
【0055】
一例として、レンズ15がCaCO3からなる場合、Δn=0.17、R1=200mm、R1=147mmの切り替え可能な眼用レンズ構造が実現される。上記眼用レンズ構造では、複合レンズの屈折力を平面の屈折力から2ジオプターの屈折力に切り替えることができる。これにより、全視界の焦点を遠方領域に合わせた状態と全視界の焦点を近方領域に合わせた状態とに切り替え可能な2焦点レンズを提供できる。
【0056】
回転手段13、レンズ15、およびサブレンズ17の複合体をレンズセル19として示す。なお、本発明の実施例において、上記レンズセルを複数備えていてもよい。
【0057】
例えば、図6Aおよび図6Bに示すように、第2実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子21と、第1回転手段23_1、第1レンズ25_1、および第1サブレンズ27_1からなる第1レンズセル29_1と、第2回転手段23_1、第2レンズ25_2、および第2サブレンズ27_2からなる第2レンズセル29_2とを備えている。レンズセル29_1および29_2は、それぞれ第1実施例のレンズセルと同様の構成である。
【0058】
各レンズセル29_1および29_2は、対応する各レンズセルの回転手段23_1あるいは23_2を切り替えることにより、互いに独立して制御可能になっている。これにより、回転手段23_1および23_2の切り替えによって1組の異なる屈折力を実現することができる。
【0059】
2つの回転手段23_1および23_2が活性化状態である場合、偏光された光はレンズ25_1およびレンズ25_2の両方の異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力PTは、レンズの厚みを無視できる場合のレンズメーカー方程式に基づいて下記式(2)のように表すことができる。
【0060】
【数2】
【0061】
ここで、Δnはレンズ25_1および25_2の通常屈折率noとレンズ25_1および25_2の異常屈折率neとの差を示している。また、R1はレンズ25_1の前面側の表面25_11の曲率半径を示しており、R2はレンズ25_1とサブレンズ27_1との間の界面25_12の曲率半径を示しており、R3はレンズ25_2とレンズ27_2との間の界面25_22の曲率半径を示している。
【0062】
第1回転手段23_1が活性化状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の異常屈折率neに遭遇するが、第2回転手段23_2は不活性状態なので偏光された光はレンズ25_2の通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P1は下記式(3)のように表される。
【0063】
【数3】
【0064】
第1回転手段23_1が不活性状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の通常屈折率noに遭遇するが、第2回転手段23_2は活性化状態なので偏光された光がレンズ25_2の異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P2は下記式(4)のように表される。
【0065】
【数4】
【0066】
第1回転手段23_1および23_2の両方が不活性状態である場合、偏光された光はレンズ25_1の通常屈折率noおよびレンズ25_2の通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力P3は下記式(5)のように表される。
【0067】
【数5】
【0068】
一例として、下表のパラメータを有するCaCo3からなるレンズ25_1およびレンズ25_2を用いる。
【0069】
【表1】
【0070】
この場合、下表に示す4つの焦点に切り替え可能な4焦点全視野レンズ構造を実現できる。
【0071】
【表2】
【0072】
ここで、C2およびC1はレンズ23_1およびレンズ23_2が不活性状態(0)であるか活性状態(1)であるかをそれぞれ示している。
【0073】
図7Aおよび図7Bは本発明の第3実施形態にかかる眼用レンズ構造を示している。この眼用レンズ構造は、偏光子31と、第1レンズセル39_1と、第2レンズセル39_2と、第3レンズセル39_3とを備えている。第1レンズセル39_1は、第1回転手段33_1、第1レンズ35_1、および第1サブレンズ37_1を備えている。第2レンズセル39_2は、第2回転手段33_1、第2レンズ35_2、および第2サブレンズ37_2を備えている。第3レンズセル39_3は、第3回転手段33_3、第3レンズ35_3、および第3サブレンズ37_3を備えている。レンズセル39_1、39_2および39_3は、それぞれ第1実施例のレンズセルと同様の構成である。各回転手段33_1、33_2、および33_3が活性化されており、光が各レンズ35の異常屈折率neに遭遇する場合、上記の眼用レンズ構造の屈折力PTは下記式(6)で表される。
【0074】
【数6】
【0075】
ここで、Δnはレンズ35_1、35_2、および35_3における通常屈折率noと異常屈折率neとの差を示している。また、R1はレンズ35_1の前面側の表面35_11の曲率半径を示しており、R2はレンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の曲率半径を示しており、R3はレンズ35_2とレンズ37_2との間の界面35_22の曲率半径を示しており、R4はレンズ35_3とサブレンズ37_3との間の界面35_32の曲率半径を示している。
【0076】
各レンズセル39_1、39−2、および39_3は、当該各レンズセルに対応する回転手段33_1、33_2、あるいは33_2を切り替えることにより、互いに独立して制御可能になっている。これにより、回転手段33_1、33−2、および33_2の切り替えによって1組の異なる屈折力を実現することができる。
【0077】
一例として、下表のパラメータを有するCaCo3からなるレンズ35_1、35−2、およびレンズ35_3を用いる。
【0078】
【表3】
【0079】
この場合、下表に示す8つの焦点に切り替え可能な8焦点全視野レンズ構造を実現できる。
【0080】
【表4】
【0081】
本発明の他の実施例として、様々な組み合わせを実現して近接領域を細かくサンプリングするために、任意の数のレンズセルを組み合わせて用いてもよい。J個のレンズセルを用いる場合の屈折力PTは下記式(7)で表される。
【0082】
【数7】
【0083】
ここで、Δnは上記レンズの第1屈折力に対応する第1屈折率と上記レンズの第2屈折力に対応する第2屈折率との差を示している。また、R1は複合レンズの前面の曲率半径を示しており、RJ+1はJ番目のレンズとそれに対応するサブレンズとの間の界面の曲率半径を示している。
【0084】
本発明の他の変形例として、レンズ表面の形状を球面ではなく複合面にしてもよい。図1Aおよび図1Bに示すように、レンズ15の表面が複合面である場合、レンズ15とサブレンズ17との間の界面152における光学的影響は複合面152の曲率に依存して生成される。
【0085】
図7Bに示したように、レンズ35_1、35_2、および35_3の複合面35_12、35_22、35_33に依存した複数の異なる光学機能を実現するために、3つのレンズセル39_1、39_2、および39_3からなる眼用レンズ構造を用いてもよい。このような構成は、眼用レンズの着用者のために複数の光学機能を実現する眼用レンズ実演装置を実現するために用いることができる。
【0086】
例えば、3つの個々の光学機能をそれぞれ個別に順次実行するようにしてもよい。また、この目的のために、回転手段33_1、33_2、および33_3が順次活性化される構成としてもよい。
【0087】
回転手段33_1が活性化された場合(回転手段33_2および33_3は不活性のまま)、光の偏光は回転され、レンズ35_1では異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_2および35_3では通常屈折率noに遭遇する。この実施例では、上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3はそれぞれ屈折率noを有している。光学機能は、レンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の曲率半径に依存する。上記複合レンズ構造の屈折力は下記式(8)によって表される。
【0088】
【数8】
【0089】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11の半径を示しており、R2はレンズ35_1とサブレンズ37_1との間の界面35_12の半径を示している。
【0090】
回転手段33_2が活性化されると(回転手段33_1および33_3は不活性)、光の偏光は回転手段33_2によって回転され、レンズ35_2では異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_1および35_3では通常屈折率に遭遇する。上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3は通常屈折率noを有している。実現される光学機能は、レンズ35_2とレンズ要素37_2との間の界面35−21の曲率に依存する。上記複合レンズの屈折力は下記式(9)によって表される。
【0091】
【数9】
【0092】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11の半径である。また、R3はレンズ35_2とサブレンズ37_2との間の界面35_22の半径である。
【0093】
回転手段33_3が活性化されると(回転手段33_1および33_2は不活性)、光の偏光は回転手段33_3によって回転され、レンズ35_3の異常屈折率neに遭遇し、レンズ35_1および35_2では通常屈折率に遭遇する。上述したように、サブレンズ37_1、37_2、および37_3は通常屈折率noを有している。実現される光学機能は、レンズ35_3とレンズ要素37_3との間の界面35−32の曲率に依存する。上記複合レンズ構造の屈折力は下記式(10)によって表される。
【0094】
【数10】
【0095】
ここで、R1はレンズ15の前面側の表面(複合レンズ構造の前面側の表面)35_11を示しており、R4はレンズ35_3とサブレンズ37_3との間の界面35_32の半径を示している。
【0096】
また、回転手段33_1、33_2、および33_3のうちの2つまたは全部が活性化された場合、屈折力は下記式(11)のように表される。
【0097】
【数11】
【0098】
また、回転手段33_1、33_2、および33_3が全て不活性状態の場合、全体としての屈折力はゼロになる。
【0099】
上述した実施例において、上記回転手段を制御するために電子制御装置を用いてもよい。図8は、N個の回転手段C1〜CNにロジック制御信号を出力する電子制御装置の一例を示している。要求された焦点に正確に合わせるように上記回転手段を制御できるように、実行すべき特定の光学機能に基づく信号、あるいは眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に基づく信号を制御回路に供給するようにしてもよい。
【0100】
上記の眼用実演装置は、例えば光学機器製造者の実験室などの光学実演設備において、患者や顧客に異なる眼鏡やレンズを個別に試着させることなく、異なるタイプの眼用レンズによる異なる光学機能を比較実験させるために用いられてもよい。これにより、着用者に当該着用者の視覚能力に応じた幅広い光学機能を試させることができ、当該着用者が光学レンズを選択するための情報を提示することができる。また、各光学機能について単焦点全視野の観察を実現することができる。
【0101】
上記の光学機能を提供する光学複合面は、累進面であってもよく、非点収差用であってもよい。上記表面は、例えば球トロイダルであってもよい。この目的のために、上記眼用レンズ構造の特定のレンズセルは、累進設計であってもよく、特定の屈折力あるいは特定の非点収差に専用のものであってもよい。このように、1つの設計を他の設計と比較できる。
【0102】
複屈折材料を用いることによって得られる2焦点の差を用いることにより、非点収差を補整するための異なる光学効果を着用者に提供する眼用レンズ製品を提供できる。眼用レンズ製品を構成する複合レンズセル構造の外側の表面の一方または両方に、着用者のレンズ処方に適合させるための機械加工を施してもよい。
【0103】
2つのレンズセルの眼用配置を用いることにより、着用するための眼用レンズ製品を形成してもよく、2つの光学機能(例えば近方視機能と遠方視機能))に切り替え可能な構成としてもよい。光学機能の切り替えは、手動で行われてもよく、自動的に行われてもよい。遠方視機能と近方視機能とを切り替えるための回転手段の自動的な切り替えは、眼用レンズ構造を介して観察している対象物の接近に応じて行われてもよい。例えば、エシラー(Essilor)のFR0953127あるいはFR0953126などに記載されている眼の動きの検出器を用いて近方視機能と遠方視機能のどちらが要求されているかを検出するようにしてもよい。このように、光学製品の着用者は、1つのレンズ表面における近方視用および遠方視用の各専用領域を介して観察する必要がなく、遠方視および近方視の両方を全視野で観察できる。
【0104】
本発明において、「累進面」とは、表面の少なくとも一部で曲率が連続的に変化する非回転対象な光学面を意味している。
【0105】
本発明において、「近方視領域」とは、近方領域を観察するためのジオプトリ度数を有する光学機能領域を意味する。
【0106】
本発明において、「遠方視領域」とは、遠方領域を観察するためのジオプトリ度数を有する光学機能領域を意味する。
【0107】
例えば、図13に示すように、本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子91、第1レンズセル99_1、および第2レンズセル99_2を備えている。また、第1レンズセル99_1は第1回転手段93_1、第1レンズ95_1、および第1サブレンズ97_1からなり、第2レンズセル99_2は第2回転手段93_2、第2レンズ95_2、および第2サブレンズ97_2からなる。
【0108】
第1レンズ95_1および第2レンズ95_2は、当該レンズのレンズ媒体を通過する光が当該光の偏光に応じてレンズ媒体中の異なる経路を通過する複屈折特性を有している。すなわち、上記光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向の通常屈折率noまたは異常軸方向の異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ15の材質をCaCO3としている。なお、変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。
【0109】
第1サブレンズ97_1および第2サブレンズ97_2は屈折率noを有している。第1レンズ95_1と第1サブレンズ97_1との眼用複合体の両外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ95_1の表面95_11の曲率とサブレンズ97_1の表面97_12の曲率とは一致している。
【0110】
第2レンズ95_2と第2サブレンズ97_2との眼用複合体の両外面の曲率は一致している。すなわち、レンズ95_2の表面95_21の曲率とサブレンズ97_2の表面97_22の曲率とは一致している。
【0111】
第1レンズセル99_1は、第1レンズ部材95_1と第1サブレンズ部材97_1との中間面98_1が、光が異常屈折率neに遭遇する第1光学機能Prg1を有する累進面になるように構成されている。例えば、上記第1光学機能Prg1は、近方視領域および累進帯を構成する。
【0112】
第1レンズセル99_2は、第2レンズ部材95_2と第2サブレンズ部材97_2との中間面98_2が、光が異常屈折率neに遭遇する第2光学機能Prg2を有する累進面になるように構成されている。例えば、上記第2光学機能Prg2は、遠方視領域および累進帯を構成する。
【0113】
第1回転手段93_1が休止状態である場合、光は第1レンズ95_1の通常屈折率noおよび第1サブレンズ97_1の屈折率noに遭遇する。上記複合レンズは同一の屈折率noを有するレンズが平行に配置されているので、当該複合レンズの屈折力はゼロになる。
【0114】
一方、第1回転手段93_1が活性状態の場合、第1レンズ95_1の異常屈折率neが選択される。この状態では、光は、第1レンズ95_1において異常屈折率neに遭遇し、第1レンズ95_1と第1サブレンズ97_1との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率および屈折率の差ne−noに関連する光学効果が生成される。このようにして光学機能Prg1が提供される。
【0115】
光が第2レンズ95_2の通常屈折率noおよび第2サブレンズ97_2の屈折率noに遭遇する場合、複合レンズは同一の屈折率noを有するレンズが平行に配置されているので、当該複合レンズの屈折率がゼロになる。光が第2レンズ95_2において異常屈折率neに遭遇する場合、当該光は第2レンズ95_と第2サブレンズ97_2との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率および屈折率の差ne−noに関連する光学効果が生成される。このようにして光学機能Prg2提供される。
【0116】
各レンズセル99_1および99_2は、対応するレンズセルの回転手段93_1あるいは93_2の切り替えにより個別に制御される。その結果、回転手段93_1および93_2の切り替えに応じて、1組の異なる光学機能が提供される。なお、本実施例では、回転手段93_1および93_2は同時に活性状態に切り替えることができないようになっている。
【0117】
第1回転手段93_1が活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1では異常屈折率neに遭遇するが、第2回転手段93_2は不活性状態なので偏光された光は第2レンズ95_2では通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の光学機能は第1光学機能Prg1となる。
【0118】
第1回転手段93_1が不活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1では通常屈折率noに遭遇が、第2レンズ93_2は活性状態なので偏光された光は第2レンズ95_2では異常屈折率neに遭遇し、眼用レンズ構造の光学機能は第2光学機能Prg2となる。
【0119】
2つの回転手段93_1および93_2が共に不活性状態の場合、偏光された光は第1レンズ95_1および第2レンズ95_2の両方で通常屈折率noに遭遇し、眼用レンズ構造の屈折力はゼロになる。
【0120】
これにより、下表に示す光学機能に切り替え可能な全視野の2つの機能を有するレンズ構造を提供できる。
【0121】
【表5】
【0122】
ここで、C1およびC2は、それぞれ、回転手段93_1および93_2が不活性状態(0)であること、および活性状態(1)であることを示している。
【0123】
上記構成により、近方視の場合と遠方視の場合とでレンズ表面の異なる領域を介して観察することなく、近方および遠方の両方を全視野で観察できる光学製品を提供できるという効果が得られる。また、歪みなどの欠陥、非点収差の発生、非点収差や累進レンズの表面における屈折力の空間分布などの空間制限問題を低減できる。
【0124】
図14に示すように、本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造は、偏光子101、回転手段103、レンズ105、およびサブレンズ107を備えている。
【0125】
上記レンズ105は、レンズ媒体を通過する光が、当該光の偏光に応じて当該レンズ媒体中を異なる経路で通過する複屈折特性を有している。上記光は、当該光の偏光方向に応じて、通常軸方向の通常屈折率noまたは異常軸方向の異常屈折率neに遭遇する。この目的のために、本実施例ではレンズ105の材質をCaCO3としている。なお、変形例として、適切な複屈折特性を有する任意の重合体からなるレンズを用いてもよい。サブレンズ107は、屈折率noを有している。
【0126】
上記の眼用複合体は、レンズ105とサブレンズ107とを含んでいる。レンズ105は、表面105_1および複合面である表面105_2の2つの表面を有している。サブレンズ107は、外表面107_1と内表面107_2とを有しており、内表面107_2はレンズ105の表面105_2と組み合わされている。上記眼用複合体における外表面105_1および107_1は、通常屈折率noに遭遇する第1光学機能を提供するように形成されている。例えば、上記第1光学機能として、累進光学機能Prg1が提供される。上記の第1の累進光学機能Prg1は、例えば、近方視領域と累進帯とを含んでいる。
【0127】
上記眼用複合体(レンズ105およびサブレンズ107)は、レンズ105とサブレンズ107との間の中間面105−2が、光がレンズ105の異常屈折率neに遭遇する第2光学機能を提供する複合面になるように形成されている。例えば、上記第2光学機能として累進光学機能Prg2が提供される。上記の第2の累進光学機能Prg2は、例えば、遠方視領域と累進帯とを含んでいる。
【0128】
回転手段103が休止状態である場合、光はレンズ105の通常屈折率noおよびサブレンズの屈折率noに遭遇する。この場合、上記眼用複合体の外表面105_1および107_2の曲率および屈折率noに関連する光学効果が提供される。これにより、上記の第1累進光学機能Prg1が提供される。
【0129】
一方、回転手段103が活性状態である場合、レンズ105の異常屈折率neが選択される。この状態では、光はレンズ105で異常屈折率neに遭遇し、レンズ105とサブレンズ107との界面で屈折する。この場合、上記界面の曲率、屈折率の差ne−no、および眼用複合体の外表面の曲率に関連する光学機能が生成される。これにより、上記の第2累進光学機能Prg2が提供される。
【0130】
なお、本発明は、特定の累進光学機能Prg1およびPrg2に限定されるものではない。例えば、累進光学機能Prg1は遠方視領域と累進帯とを含んでいてもよい。また、累進光学機能は、着用者の特定の活動(例えば運転、コンピュータ操作、スポーツなど)に応じたものであってもよい。
【0131】
上記眼用複合体(レンズ105およびサブレンズ107)は、回転手段103を切り替えることによって制御できる。これにより、回転手段103の切り替えに応じて、異なる光学機能を提供することができる。
【0132】
回転手段103が、偏光された光がレンズ105の異常屈折率neに遭遇する活性状態である場合、眼用レンズ構造の光学機能は第2累進光学機能Prg2になる。
【0133】
回転手段103が、偏光された光がレンズ105の通常屈折率noに遭遇する不活性状態の場合、眼用レンズ構造の光学機能は第1累進光学機能Prg1になる。
【0134】
これにより、下表に示す光学機能に切り替え可能な全視野の2つの機能を有するレンズ構造を提供できる。
【0135】
【表6】
【0136】
ここで、C1は回転手段103は、不活性状態(0)または活性状態(1)のいずれであるかを示している。
【0137】
上記構成により、単一の眼用複合レンズ105およびサブレンズ107を用いて着用者に全視野の2つの異なる光学機能を提供可能な光学製品を提供できるとういう効果が得られる。
【0138】
他の実施例として、サブレンズの屈折率を、noおよびneとは異なるnとしてもよい。
【0139】
図9に示す眼用レンズ構造40は、偏光子41、回転手段43、レンズ45、およびサブレンズ57を備えている。レンズ45は複偏光特性を有しており、第1実施例のレンズ15と同様、光の偏光に応じた屈折率noおよびneを有している。サブレンズ47は、noおよびneとは異なる屈折率nを有している。レンズ45の前面側の表面451の曲率半径およびサブレンズ47の背面側の表面472の曲率半径は一致している。また、屈折率nはレンズ45の屈折率noおよびneとは異なっている。回転手段43が、光が通常屈折率noに遭遇する不活性状態である場合、下記式(12)に示す屈折力Poが得られる。一方、回転手段43が、光の偏光を90°回転させる活性状態である場合、下記式(12)に示す屈折力Peが得られる。
【0140】
【数12】
【0141】
ここで、R1はレンズ45の前面側の表面451の曲率半径を示しており、R2はレンズ45とサブレンズ47との界面452の曲率半径を示している。
【0142】
光学レンズ構造40によって得られる屈折力差ΔPの範囲は光学屈折力範囲内で移動させることができる。例えば、no=n=1.3、ne=1.47、R1=0.3m、R2=−0.2mである場合、屈折力Po=0δ、屈折力Pe=1.41δが得られる。また、no=1.3、ne=1.47、n=1.2、R1=0.3m、R2=−0.2mである場合、屈折力Po=0.83δ、屈折力Pe=2.24δが得られる。このように、光学レンズ構造によって得られる屈折力範囲ΔPの幅を変化させずに維持したまま、光学屈折力範囲内の全域で移動させることができる。レンズ45の前面側の表面451の曲率半径とサブレンズ47の背面側の表面472の曲率範囲とが一致していない場合、屈折力の自由度を拡大することができる。回転手段43が、光が通常屈折率noに遭遇する不活性状態である場合、屈折力Poは下記式(13)によって表される。
【0143】
【数13】
【0144】
一方、回転手段43が、光の偏光が90°回転する活性状態である場合、屈折力Peは下記式(14)によって表される。
【0145】
【数14】
【0146】
ここで、R1はレンズ45の前面側の表面451の曲率半径を示しており、R2はレンズ45とサブレンズ47との界面452の曲率半径を示しており、R3はサブレンズ47の背面側の表面472の曲率半径を示している。
【0147】
上述の例に示したように、複合レンズ構造によって提供される屈折力差ΔPの範囲は変化しないが、屈折力nおよび/または曲率半径R3を調整することにより屈折力範囲内で移動させることができる。なお、曲率半径R1およびR2を変化させてもよい。例えば、光学レンズ構造40の全体の厚さを薄くするために曲率半径R1およびR2を増加させてもよい。
【0148】
このように、上述した2つの例では、不活性化状態における眼用レンズ構造の屈折力をゼロではないジオプトリ度数にすることができる。このジオプトリ度数は、眼用レンズ製品の着用者の屈折力に合わせることができる。
【0149】
上記レンズおよび上記サブレンズに円環表面を形成してもよい。この場合、上記円環表面は1つの軸と2つの半径Rt,Rsを有する。これにより、遠方視用の屈折力が提供されるとともに、他の近接物を観察することができるように異なる屈折力が付加される。着用者に提供する屈折力を最適化するために、各接近物に応じた非点収差値を識別するようにしてもよい。
【0150】
また、上述した各実施例では、偏光子が回転手段およびレンズとサブレンズの複合体の前面側に配置されているが、図10Aおよび図10Bに示す第5実施例のように、回転手段53をレンズ44およびサブレンズ57の複合体の背面側に配置し、偏光子51を回転手段53の背面側に配置してもよい。また、図11に示す多様な実施例のように、偏光子61がレンズセル毎に異なる位置に配置されたレンズセル69_1から69_4を個々に備えてもよく、これらの偏光子61がレンズセル毎に異なる位置に配置されたレンズセル同士を組み合わせたレンズセル80_1から80_5を形成してもよい。
【0151】
本発明について上述の実施例を参照して説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で変更可能である。
【0152】
例えば、上述の実施例では、複屈折材料CaCO3からなるレンズを用いているが、他の複屈折材料を用いてもよい。上記複屈折材料としては、例えば、KATZらの著作物である「配位重合体合成法を用いて設計された高複屈折材料(Highly birefringent materials designed using coordination polymer synthetic methodology)」に示されている複屈折材料を用いることができる。通常屈折率noと異常屈折率neとの差Δnとして0.4オーダーの値を得ることができる。レンズセルの厚さを低減させ、それによって眼用レンズ構造のサイズを従来の眼用レンズ構造のサイズに近づけるために、上記の屈折率の差を用いてレンズの曲率半径を低減させてもよい。
【0153】
また、図12Aに示すように、光の偏光を回転させるためにセル構造を有する回転手段R1を用いてもよい。この構成では、回転手段は、マトリクス状の回転手段セルに分割されている。これにより、レンズ製造工程においてレンズ構造のエッジが切断された場合であっても、回転手段の全体が損傷することを防止でき、いくつかの回転手段セルが除去されるものの、内側に配置された回転手段セルについては通常に機能させることができる。あるいは、図12Bに示すように、製造工程において切断される可能性のある周辺領域だけセル構造R2とし、製造工程において切断される可能性の低い中央領域R3については非セル型の回転手段としてもよい。
【0154】
上述した実施例は単なる例示にすぎず、本発明の概念を制限するものではなく、上記実施例に対してさらに多くの修正および変形を施してもよい。本発明の概念は特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。異なる実施例に示した特徴点を適宜置換してもよい。
【0155】
特許請求の範囲における「含む」という記載は、他の要素やステップを含むことを除外するものではない。また、不定冠詞”a”や“an”は複数であることを除外するものでない。また、異なる従属請求項に記載した特徴を組み合わせてもよい。また、請求項に記載した符号は本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1A】本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図1B】本発明の第1実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図2】本発明の第1および第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概要図である。
【図3A】本発明の各実施例における偏光回転手段がオフの状態を示す概要図である。
【図3B】本発明の各実施例における偏光回転手段がオンの状態を示す概要図である。
【図4A】本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す概要図である。
【図4B】本発明の各実施例における偏光回転手段の接続状態を示す透視図である。
【図5A】本発明の各実施例における図3Aに示した偏光回転手段のオフ状態での動作を示した概念図である
【図5B】本発明の各実施例における図3Bに示した偏光回転手段のオン状態での動作を示した概念図である
【図6A】本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図6B】本発明の第2実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図7A】本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図7B】本発明の第3実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図8】本発明の各実施例における上記回転手段を制御するための電子制御装置の概略図である。
【図9】本発明の第4実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図10A】本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図10B】本発明の第5実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図11】本発明の第6実施例にかかる眼用レンズ構造の概略図である。
【図12A】本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【図12B】本発明の各実施例における眼用レンズ構造に備えられる回転手段の変形例の概略図である。
【図13】本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造を示す図である。
【図14】本発明の他の実施例にかかる眼用レンズ構造を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズ構造であって、
光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、
少なくとも1つのレンズセルとを備え、
上記レンズセルは、
切り替え可能な光の回転手段と、
入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、
屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、
上記回転手段は、入射光を0°または90°に回転させることができ、
上記偏光子は、偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致しており、
上記少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との中間面が累進面である眼用レンズ構造。
【請求項2】
上記サブレンズ部材の屈折率がnoまたはneである請求項1に記載の眼用レンズ構造。
【請求項3】
上記少なくとも1つのレンズセルの外表面は当該レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されている請求項2に記載の眼用レンズ構造。
【請求項4】
少なくとも1つの上記回転手段は、当該眼用レンズ構造の屈折力が上記サブレンズ部材の屈折率nに依存した所定の屈折力範囲ΔP内になるように入射光を回転させるように調整されている請求項1から3のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項5】
上記眼用レンズ構造の外表面は眼科の処方に応じて機械加工可能である請求項1から4のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項6】
少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の中間面が球トロイダル面である請求項1から5のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項7】
少なくとも1つの回転手段が、当該眼用レンズ構造のジオプトリ値を変化させるために第1状態と第2状態とに切り替え可能である請求項1から6のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項8】
上記回転手段は、当該眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に応じて切り替えられる請求項1から7のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項9】
複数の光学機能を実現するための装置であって、
上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の屈折面が複合面である複数のレンズセルを有する請求項3から8のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造と、
1または複数の上記レンズセルに備えられる上記回転手段を実現すべき光学機能に応じて切り替えるためのセレクタとを備え、
実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される装置。
【請求項10】
少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneであり、当該サブレンズ部材に対応するレンズセルの外表面は各レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されており、
上記セレクタは、
上記少なくとも1つのサブレンズ部材に対応する上記回転手段を各レンズセルの通常軸または異常軸に沿った屈折力がゼロとなり、かつ、当該各レンズセルと異なる少なくとも1つの他のレンズセルの回転手段を当該他のレンズセルの屈折力が非ゼロとなるように切り替えることにより実現すべき上記光学機能を選択する請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上記セレクタは、1つのレンズセルの屈折力を非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替え可能である請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
眼用レンズの複数の光学機能を実現する方法であって、
実現すべき光学機能を選択する工程と、
光を偏光させる工程と、
光が複数のレンズセルを通過する工程とを含み、
各レンズセルは、
入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、
屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、
実現すべき光学特性に応じて第1入射方向から入射光を0°または90°回転させる工程を含む方法。
【請求項13】
1つのレンズセルの屈折力を連続的に非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替える工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項1】
眼用レンズ構造であって、
光を偏光軸方向に偏光させる偏光子と、
少なくとも1つのレンズセルとを備え、
上記レンズセルは、
切り替え可能な光の回転手段と、
入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、
屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、
上記回転手段は、入射光を0°または90°に回転させることができ、
上記偏光子は、偏光軸方向が上記レンズ部材の上記通常軸方向または上記異常軸方向のいずれか一方と一致しており、
上記少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との中間面が累進面である眼用レンズ構造。
【請求項2】
上記サブレンズ部材の屈折率がnoまたはneである請求項1に記載の眼用レンズ構造。
【請求項3】
上記少なくとも1つのレンズセルの外表面は当該レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されている請求項2に記載の眼用レンズ構造。
【請求項4】
少なくとも1つの上記回転手段は、当該眼用レンズ構造の屈折力が上記サブレンズ部材の屈折率nに依存した所定の屈折力範囲ΔP内になるように入射光を回転させるように調整されている請求項1から3のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項5】
上記眼用レンズ構造の外表面は眼科の処方に応じて機械加工可能である請求項1から4のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項6】
少なくとも1つのレンズセルにおける上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の中間面が球トロイダル面である請求項1から5のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項7】
少なくとも1つの回転手段が、当該眼用レンズ構造のジオプトリ値を変化させるために第1状態と第2状態とに切り替え可能である請求項1から6のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項8】
上記回転手段は、当該眼用レンズ構造を介して観察する対象物の接近に応じて切り替えられる請求項1から7のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造。
【請求項9】
複数の光学機能を実現するための装置であって、
上記レンズ部材と上記サブレンズ部材との間の屈折面が複合面である複数のレンズセルを有する請求項3から8のいずれか1項に記載の眼用レンズ構造と、
1または複数の上記レンズセルに備えられる上記回転手段を実現すべき光学機能に応じて切り替えるためのセレクタとを備え、
実現すべき上記光学機能が、少なくとも累進設計および非点収差設計を含むグループの中から選択される装置。
【請求項10】
少なくとも1つのサブレンズ部材の屈折率がnoまたはneであり、当該サブレンズ部材に対応するレンズセルの外表面は各レンズセルの上記通常軸方向または上記異常軸方向に沿った屈折力がゼロになるように調整されており、
上記セレクタは、
上記少なくとも1つのサブレンズ部材に対応する上記回転手段を各レンズセルの通常軸または異常軸に沿った屈折力がゼロとなり、かつ、当該各レンズセルと異なる少なくとも1つの他のレンズセルの回転手段を当該他のレンズセルの屈折力が非ゼロとなるように切り替えることにより実現すべき上記光学機能を選択する請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上記セレクタは、1つのレンズセルの屈折力を非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替え可能である請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
眼用レンズの複数の光学機能を実現する方法であって、
実現すべき光学機能を選択する工程と、
光を偏光させる工程と、
光が複数のレンズセルを通過する工程とを含み、
各レンズセルは、
入射光の回転に応じて上記入射光が通常軸方向の第1屈折率noまたは異常軸方向の第2屈折率neに遭遇する複屈折特性を有するレンズ部材と、
屈折率nを有するサブレンズ部材とを備えており、
実現すべき光学特性に応じて第1入射方向から入射光を0°または90°回転させる工程を含む方法。
【請求項13】
1つのレンズセルの屈折力を連続的に非ゼロに順次設定し、残りのレンズセルの屈折力をゼロにするように各レンズセルの上記回転手段を切り替える工程を含む請求項11に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−513818(P2013−513818A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542558(P2012−542558)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069346
【国際公開番号】WO2011/070139
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507229319)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック) (37)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069346
【国際公開番号】WO2011/070139
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507229319)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック) (37)
【Fターム(参考)】
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