説明

眼用器具

マウスピース204を有するベース202と、前記ベースに結合する少なくとも1つの支持部220を備える対象者の目に対する目的物の位置決め及び挿入を容易化する眼用器具。前記支持部は、前記マウスピースが対象者の歯の間に配置されたときに前記支持部は前記マウスピースからある距離離間して対象者の目の中央の前の領域に位置する。前記支持部は、コンタクトレンズなどの前記目的物を取り外し可能に保持するよう構成される。前記眼用器具は、対象者の目に投与される薬物を収容するレセプタクルヘッドを更に有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはオプトメトリーに関連し、より詳細には対象者の目に、例えば、コンタクトレンズや薬物などといった、目的物や液体を位置決め、挿入するための器具(装置)及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズを使用する人は、それぞれの目にコンタクトレンズを入れる作業を定期的に行う必要がある。コンタクトレンズを挿入する最も普通の方法には、コンタクトレンズを指先に配置するステップ、目の前の指先の上でコンタクトレンズの位置調整を行うステップ、瞼を明けたままでコンタクトレンズを目の頂部に配置するステップが含まれる。
【特許文献1】米国特許第5,649,727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この方法には多くの欠点がある。受け入れる目の前でコンタクトレンズを正しく位置調整することは困難である場合が多い。コンタクトレンズを支持する指を目の近くに持って来ると、焦点が失われて、指の映像がレンズの映像を不明瞭にさせてしまう。更に、コンタクトレンズを挿入する従来の方法では、片手の指先でコンタクトレンズを支持して目に挿入し、もう一方の手の指先で受け入れる目の瞼を開いておくために、両手の使用を必要とする場合が多かった。従って、目の上へのコンタクトレンズの挿入を成功させるには、手先の器用さや調整が必要であった。
【0004】
コンタクトレンズの適切な位置決めと挿入が難しいことを考えると、多くの人がコンタクトレンズを装着することを思いとどまり、眼鏡の使用を選ぶことは驚くに当たらない。コンタクトレンズのハンドリングと使用者の目への挿入を指向する多数の器具が知られている。しかし、安定で正確で再現性のある(reproducible)コンタクトレンズの目の上での位置決め及び挿入をも提供できる器具へのニーズが存在している。
【0005】
コンタクトレンズの位置決めと配置に関して上記したと正に同じ問題が目への薬物の投与に関連しても生じる。自身の目に目薬やクリームなどの薬物を正確に配置することは大変に難しい。このことは、お年寄りや手の震えのある人にとっては特にそうである。薬物の容器が目や周辺の組織に接触することを防ぐことにより薬物の汚染も避けなければならない。このように、目への薬物や他の目的物の正確で再現性のある適用を提供できる器具へのニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
コンタクトレンズや薬物などの目的物を対象者の目の上に位置決めし、挿入するための器具及び方法が開示される。本明細書において、コンタクトレンズ及び薬物の挿入に関連して上記器具及び方法は開示されるが、目の上で他の目的物や液体を位置決めし、挿入する場合にも、同じ器具及び方法を使用し得ることは理解されるべきである。
【0007】
自身の目に目的物を挿入することに関連して多くの問題がある。これらの問題のなかで重要なものに、目への目的物の挿入の前の適切な位置決めがある。上手く目に挿入するための適切な位置決めがなされる前に何度も失敗することはめずらしいことではない。
【0008】
本明細書に開示される眼用器具(ocular device)は、人の咬み合わせ(bite)と目の間の固定された距離を用いて目の上に目的物を配置するための適切な位置決めに関連する問題に対処する。当該眼用器具は、対象者の咬み合わせを基準点(reference point)又は固定点(anchoring point)として用いる。そして、対象者の目に挿入されるべき目的物は、対象者の目の実質的に前の領域(an area substantially in front of the subject's eye)の対象者の咬み合わせからある距離に位置決めされる。対象者の咬み合わせと対象者の目の間の距離は固定されているため、対象者の咬み合わせを対象者の目の前に目的物を配置するための基準点として用いて、対象者の目への適切な配置のために目的物を位置決めすることが可能である。
【0009】
従って、本明細書に開示される眼用器具は、これに限定されはしないが、対象者の咬み合わせと両目の間の第1、第2の距離及び対象者の目の間の第3の距離を含む対象者の個々の顔の寸法に合わせて構成されることができる。対象者の顔の鉛直平面に沿って対象者の目に対して対象者の咬み合わせが移動する程度を考慮して支持部と対象者の顔の間の第4の距離が調整され得る。
【0010】
好ましい1実施形態に従えば、対象者の目に目的物を位置決めし、挿入することを容易化する眼用器具が開示される。この好ましい実施形態では、対象者の歯の間で保持されるマウスピースと、前記マウスピースに結合し、対象者の目に挿入されるべき目的物を取り外し可能に保持する2つの支持部を備える。マウスピースは、対象者の目に対する2つの支持部の位置を固定(anchor)し、安定化させる。更に、支持部は、マウスピースが対象者の歯の間に保持されたときに少なくとも部分的に対象者の目の前であるマウスピースから所定距離に位置決めされる。
【0011】
他の好ましい実施形態に従えば、対象者の目への目的物の位置決め及び挿入を容易化する眼用器具が開示される。この眼用器具は、マウスピースを有するベースと、前記ベースに結合し、前記目的物を取り外し可能に保持するように構成された少なくとも1つの支持部を有する。前記支持部は、前記ベースが対象者の歯の間に配置されたときに、支持部が対象者の目に向かう変位により対象者の目への目的物の配置が行われるように、前記ベースから所定距離に位置決めされる。
【0012】
更に他の好ましい実施形態に従えば、眼用器具は、ベースと、少なくとも1つの支持部と、前記支持部に結合した伸長可能(expandable)なチャンバーアセンブリを有する。前記伸長可能なチャンバーアセンブリは、チャンバーアセンブリに圧力が加えられたときに、支持部を対象者の目に向けて押し遣るように伸長して対象者の目に目的物を挿入する。
【0013】
更なる好ましい実施形態に従えば、眼用器具は、マウスピースと、前記マウスピースに設けられた少なくとも1つの吸入口を有するベースを有する。前記眼用器具は、前記少なくとも1つの吸入口と流体流通状態にある伸長可能なチャンバーをそれぞれ有する第1及び第2の支持部を有する。前記第1及び第2の支持部は、前記吸入口に空気が吹き込まれたときに対象者の目に向かって駆動される。
【0014】
更に他の好ましい実施形態に従えば、眼用器具は、対象者の目への薬物の投与を容易化するために使用される。この更なる好ましい実施形態では、眼用器具は、マウスピースを有するベースと、薬物を貯留するように構成されたレセプタクルヘッド(容器保持部)を備える。前記レセプタクルヘッドは、前記マウスピースが対象者の歯の間に配置されたときに、前記ベースから所定距離で対象者の眼球の前に位置決めされる。
【0015】
更に他の好ましい実施形態に従えば、眼用器具は、対象者の目への目的物の位置決め及び挿入を容易化するために使用される。この眼用器具は、対象者の咬み合わせで所定位置に保持されるマウスピース手段と、対象者の目に挿入される目的物を取り外し可能に保持する支持手段と、前記支持手段を対象者の目に向けて駆動して前記目的物を対象者の目に挿入する駆動手段とを有する。マウスピース手段は、安定な固定点を提供し、支持手段は、駆動手段が支持手段を対象者の目に向けて駆動したときに、目的物を対象者の目に再現性をもって挿入するように、マウスピース手段から所定距離に位置決めされる。
【0016】
本明細書に同様に開示されるものは、目に目的物を挿入する方法である。この方法は、本明細書に開示される眼用器具を準備するステップと、目に挿入される目的物を支持部に配置するステップと、マウスピースを咬み込むステップと、支持部を目に向けて駆動して目的物を目に接触させるステップとを含む。支持部が目に向けて駆動されるメカニズムは、使用される個々の眼用器具に依存する。
【0017】
好ましい実施形態の一態様では、支持部をベースに結合させるアームを有する眼用器具が本方法に使用される。支持部は、手動によって対象者の目に向けて支持部を押し遣り、目的物を対象者の目に挿入することにより目に向けて駆動され得る。
【0018】
好ましい実施形態の他の態様では、伸長可能なチャンバーアセンブリを有する眼用器具が本方法に使用される。対象者の目に向けて支持部を駆動し、対象者の目に目的物を挿入するために圧力が伸長可能なチャンバーアセンブリに印加され得る。
【0019】
好ましい実施形態の更なる態様では、マウスピースに設けられた吸入口を有する眼用器具が使用される。吸入口に空気を吹き込んで、支持部を目に向けて駆動し、目に目的物を挿入することにより、目的物は目に配置される。
【0020】
本発明の他の目的、構成及び効果は、以下の詳細な説明により当業者に明瞭となる。しかしながら、詳細な説明及び具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるけれども、説明のために記載されるたものであり、限定のためのものではない。本発明の範囲内の多くの変更や改変を本発明の精神から離れることなく行うことが可能であり、本発明はそのような全ての改変を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照しつつ本発明の特定の実施形態が説明されるが、そのような実施形態は、本発明の単なる例であり、本発明の原理の応用を代表する多数の具体的な実施形態のごく一部であることが理解されるべきである。本発明の属する技術分野における当業者に自明な変更や改変は、添付特許請求の範囲に更に定義されるように、本発明の精神、範囲、着想の範囲内であると見なされる。
【0022】
図1(A)、(B)は、対象者の目12に支持部(support)120,170に支持された目的物15を挿入するために、対象者の顔10に対して位置決めされた眼用挿入器具100の好ましい実施形態を示している。
【0023】
眼用挿入器具100は、概して、マウスピース104を有するベース102と、一対のアーム110,160と、当該アーム110,160の頂部に配置された一対の支持部120,170とを備えている。各支持部120,170は、コンタクトレンズなど、対象者の目12に挿入することを意図する目的物15を取り外し可能に支持する。
【0024】
特に好ましい実施形態では、眼用器具100は、対象者の咬み合わせと対象者の個々の目の間の鉛直方向の距離、及び、対象者の目の間の水平方向の距離を含む、対象者に固有の顔の寸法に合わせて構成される。対象者の顔10からの支持部120,170の距離は、対象者の顔の鉛直平面に沿って対象者の咬み合わせと目が離間する程度に応じて調整され得る。
【0025】
一旦、眼用器具100が対象者の特定の顔の寸法に合わせて構成されると、支持部120,170に支持された任意の目的物の着実で再現性のある対象者の目12への配置を提供する。
【0026】
この特に好ましい実施形態では、マウスピース104は、対象者の咬み合わせによる咬み型(impression of subject' bite)を保持できる材料により形成される。この咬み型は、次回の使用時に対象者の咬み合わせがマウスピース104上における同位置に方向付けられることを確実なものとする。このことは、ひいては、対象者が咬み型に咬み合わせを合わせたときに、対象者の顔に対する支持部120,170の位置が一定に保たれることを確実にし、対象者の目への目的物の再現性のある位置決めと挿入を提供する。マウスピース104の非限定的な例には、熱弾性プラスチックや他の可塑性材料が含まれる。
【0027】
マウスピース104に対象者の咬み型が一度形成されると、支持部120,170とベース102の間の鉛直距離、支持部120,170間の水平距離、及び、支持部120,170と対象者の顔10の距離が、支持部120,170を対象者の顔10に向かう方向に移動させることにより、支持部120,170に取り外し可能に保持された目的物15が対象者の目12の頂部に正確に位置決めされて配置されるように調整され得る。
【0028】
他の好ましい実施形態では、マウスピースはベースに取り外し可能に取り付けられた事前形成された溝を有し得る。この事前形成された溝は、対象者の咬み合わせをマウスピース上で安定化させる多数の方法のうちの任意の方法で形成され得る。1つの好ましい実施形態では、事前形成された溝は、対象者の上前歯のアーチ形状に一致するアーチ状に形成され得る。特定の対象者の咬み合わせに適合するように、様々な曲率のアーチ形状の溝を有するいくつかのマウスピースが提供され得る。
【0029】
支持部120,170は、対象者の目の直前に位置決めされ得るが、図1(A)、(B)に図示されるような、アーム110,160の一部及び支持部120,170が角度的に離間された実施形態では、このことは必要とはされないことが理解される。
【0030】
図2、3は、図1(A)、(B)に示される眼用器具100の好ましい実施形態を示す。この眼用器具100は、ベース102と、一対の支持部120,170と、ベース及び支持部120,170を接続させる一対のアーム110,160を有している。ベース102は、更に、マウスピース104と、対象者の咬み合わせに対してマウスピースの位置が中央になるようにするためのガイド106とを有する。
【0031】
マウスピース104は、任意的に、対象者の咬み型(imprint of the subject's bite)を形成し、維持することができる、熱弾性プラスチックや他の可塑性材料などの素材により形成され得る。このことは、対象者の目に対する眼用器具100、より詳細には支持部120,170の位置が、その対象者による引き続く使用に際して、一貫して一定に保たれることを確実にする。
【0032】
図2−3の好ましい実施形態では、眼用器具100により対象者の目に挿入されるべき目的物は、コンタクトレンズ(不図示)である。この好ましい実施形態では、支持部120,170は凸状に形成され、コンタクトレンズが対象者の目に配置されたときに凸状支持部120,170からのコンタクトレンズの除去を容易化するための貫通孔、スリット、窪み又は溝(図2−3では不図示)を有する。
【0033】
図2−3に更に示されるように、アーム110,160は、それぞれ、支持部120,170に結合する頂部セクション110a,160aと、ベース102に結合する底部セクション110b,160bを有する。コンタクトレンズを対象者の目に配置するよう頂部セクション110a,160aが底部セクション110b,160bに対して角度をもって、旋回的に可動となるように、ジョイント111,161が頂部セクション110a,160aと底部セクション110b,160bを相互に結合する。
【0034】
各支持部120,170とベース102の間の距離は、マウスピース104が対象者の咬み合わせ位置に配置され、支持部120,170が対象者の目に向けて押し遣られたときに、支持部120,170に保持された目的物が適切に対象者の目の上に配置されるように調整され得る。
【0035】
上記好ましい実施形態の1態様では、アーム110,160は、それぞれ、ベース102から突出する螺子切りされたスクリュー部(不図示)に係合する螺子切り孔部(不図示)を更に有し得る。支持部120,170とベース102の距離は、アーム110,160をベース102から突出する螺子切りされたスクリュー部に対してある方向に回転させることにより支持部120,170とベース102の距離を増加させ、その反対方向に回転させることによりその距離を減少させるように調整し得る。各支持部120,170とベース102の間の所望の距離が得られたときに、アーム110,160の更なる回転を防ぐための停止機構(不図示)を任意的に設けることが可能である。
【0036】
好ましい実施形態の他の態様では、各支持部120,170とベース102の間の距離は、スライド可能に調整され得る。この態様では、アーム110,160は、ベースに取り付けられた突出部材上にスライド可能に配置される空洞部を更に有し得る。この態様では、アーム110,160は、突出部材に対してスライド可能に動かされて、支持部120,170の間の望ましい距離が得られたときに、空洞部及び/又は突出部材のいずれか一方又は双方に接着剤が塗布され得る。
【0037】
図4−5は、眼用器具200の他の好ましい実施形態を示す。眼用器具200は、マウスピース204を有するベース202と、伸長可能(expandable)なチャンバーアセンブリ214,264と、ベース202に取り付けられた螺子切りされたスクリュー部206,256を介して伸長可能なチャンバーアセンブリ214,264をベース202に結合させるハウジング210,260を有している。
【0038】
図6−7は、図4−5における伸長可能なチャンバーアセンブリ214,264を示す。図4−5に描かれる眼用器具200は対応する番号が付された同様の部材を含むことが理解されるべきである。番号が付された左側の部材は、右側の番号に50を加えた番号が付された右側の部材に対応する。従って、図4−5に示される右側の伸長可能なチャンバーアセンブリ214についての説明は、左側の伸長可能なチャンバーアセンブリ264にも適用される。
【0039】
図6−7に示されるように、伸長可能なチャンバーアセンブリ214は、キャビティ216、伸長可能な蛇腹(bellows)218、及び、支持部220を有するクローズドシステムである。支持部220は、コンタクトレンズ(不図示)などの丸みのある目的物を支持するように凸形状を有するように描かれているが、支持部220は、目の上に配置されることが望まれる他の形状の目的物を受け入れるように必要な任意の形状に構成し得ることが理解される。支持部220は、コンタクトレンズやその他の目的物が一旦目の上に挿入されたときに、支持部220の表面からのコンタクトレンズの除去を容易化するための溝又はスリット222を有し得る。
【0040】
キャビティ216に圧力が印加されたときに、蛇腹218がハウジング210から伸長して支持部220に支持された目的物(不図示)を対象者の目に挿入するように、キャビティ216及び伸長可能な蛇腹218は相互に液体流通状態にある。キャビティ216と伸長可能な蛇腹218は実質的に中空で、空気、液体、ゲル或いはキャビティ216に加えられた圧力に応答して蛇腹218が伸長することを可能にする任意の物質を含み得る。
【0041】
図4−5に戻って、伸長可能なチャンバーアセンブリ214,264は、少なくとも部分的にハウジング210,260に包摂される。キャビティ216,266の一部は、キャビティへの圧力の印加を許容するように露出しており、これにより、蛇腹218,268を伸長させて支持部220,270に保持された目的物を目に挿入するように支持部220,270を押し遣る。
【0042】
好ましくは、対象者がマウスピース204を咬み込んだときに、支持部220,270はそれぞれ対象者の目の実質的に前の領域に配置される。従って、眼用器具200は、対象者の咬み合わせと目の間の鉛直方向の距離と、対象者の目の間の水平方向の距離を含むそれぞれの対象者に固有の顔の寸法に合わせて構成され得る。一旦対象者の顔の寸法に合わせて構成されると、眼用器具200は、対象者の咬み合わせと対象者の目の間の固定された距離を利用して、対象者の目に挿入される任意の目的物の一貫して再現性のある配置を提供する。
【0043】
ハウジング210,260は、ベース202に結合した螺子切りスクリュー部206,256を受容して歯合するように適合された螺子切り孔部212,262を有する。各支持部220,270とベースの距離は、ベース220に対してハウジング210,260をある方向に回転させることで支持部220,270とベース202の間の距離を増加させ、反対方向に回転させることでこれを減少させることで調整され得る。アーム110,160の更なる回転を防止し、従って、所望のアーム110,160の長さを固定するために停止機構(不図示)を設け得る。
【0044】
2つの支持部220,270の間の距離もまた対象者の目の間の距離に一致するように調整され得る。これは、各支持部220,270がそれぞれの目の実質的に前に位置決めされるまで、ベース202に対するスクリュー部206,256の角度を調整することにより達成され得る。
【0045】
好ましい実施形態では、スクリュー部206,256は、それぞれベース202にボ―ルソケット形継手(ball and socket joint)により結合される。この継手は、ソケット内でのボールの動きによって、スクリュー部206,256、従って、支持部220,270の全方向への回転運動を許容する。2つの支持部220,270の間の距離は、対象者の目の間の距離に容易に合わせることができる。更に、2つの支持部220,270は、対象者の顔からの異なる距離に独立に調整されることができる。所望の位置が一旦得られたら、支持部220,270の位置を固定するためにボ―ルソケット形継手に接着剤が塗布され得る。
【0046】
図8−11は、マウスピース304と、マウスピース304に配された一対の吸入口500,550と、マウスピース304の外側領域におけるベース302に配された一対の排出口502,552を有する眼用器具300の更なる好ましい実施形態を示す。ベース302は、ハウジング310,360の螺子切り孔部312,362を受容するよう構成された一対の螺子切りスクリュー部306,366を有する。
【0047】
ハウジング310,360はそれぞれ、伸長可能な空気蛇腹アセンブリ318.368と、この蛇腹アセンブリ318,368に結合する支持部320,370を有する。支持部320,370は、コンタクトレンズを収容するように凸状の形状であり得る。この実施形態では、支持部320,370は、コンタクトレンズが対象者の目に挿入されたときに、支持部320,370からの目的物の除去を容易にするためのスリット又は溝322,372を有し得る。
【0048】
眼用器具300の同様の部材は対応して符号が付されていることが理解されるであろうから、理解の容易のため、眼用器具300の一方の側についてのみ説明する。左側の番号が付された部材は、右側の番号に50を加えた番号が付された右側の部材に対応する。従って、右側の支持部320についての説明は、眼用器具300の左側の支持部370にも適用される。
【0049】
眼用器具300は、対象者の目にコンタクトレンズや他の所望の目的物を挿入するのに使用される。前述の実施形態について説明したように、マウスピース304に一旦対象者の咬み込みが形成されると、ハウジング310をベース302の螺子切りスクリュー部306に対して回転させることでベース302に対する支持部320の高さを調整することができる。支持部320は、ハウジング310を支持する螺子切りスクリュー部306によって対象者の目の中心に一致するように調整され得る。
【0050】
図10に示されるように、吸入口500は、第1ベース導管501を介して排出口502と流体流通している。第1導管501はまた、螺子切りスクリュー部306とハウジング310内の中空の伝達路(channel)により規定される第1アーム導管503を介して伸長可能な空気蛇腹アセンブリ318と流体流通状態にある。
【0051】
排出口502が遮蔽されず、覆われていないときは、吸入口500に吹き込まれた空気は、第1ベース導管501に、そして、排出口502の外部に伝搬する。排出口502が対象者の指やプラグで遮蔽され、又は、覆われると、吸入口500に吹き込まれた空気は、第1ベース導管501、第1アーム導管503を介して伸長可能な空気蛇腹アセンブリ318内に伝搬し、伸長可能な空気蛇腹318を伸長させ、従って、レンズ支持部320をハウジング310から対象者の目に向けて押し遣る。
【0052】
図10には示されていないが、吸入口550は第2ベース導管(不図示)を介して排出口552と流体流通状態にあり、その第2ベース導管は、螺子切りされたスクリュー部356及びハウジング360内の中空の伝達路により規定される第2アーム導管を介して伸長可能な空気蛇腹アセンブリ368と流体流通状態にある。従って、排出口552が遮蔽されず、覆われていないときは、吸入口502に吹き込まれた空気は、第2ベース導管に、そして、排出口552の外部に伝搬する。
【0053】
図8−11に示されていない他の構成の吸入口及び排出口も考え得る。
【0054】
図12は、眼用器具の更なる好ましい実施形態のベース600の斜視図である。図12は、好ましい実施形態の更に他の態様を示しており、ベース600は、単一の吸入口700を有するマウスピース604を有する。吸入口700は、ベース600に配され、それぞれ第1、第2排出口706,756に接続する第1、第2導管703,705に続く吸入導管701を介して第1、第2排出口706,756と流体流通状態にある。第1、第2導管703,753は、伸長可能な空気蛇腹アセンブリ(不図示)に続く第1、第2アーム導管707,709と液体流通状態にある。
【0055】
図12に示される好ましい実施形態では、空気蛇腹アセンブリ(不図示)に結合される支持部は、吸入口700に空気を導入しつつ、排出口706,756の1つを覆うことで選択的に展開され得る。代替的には、両方の排出口706,756を覆いつつ吸入口に空気を導入することで両方の支持部が同時に展開され得る。
【0056】
好ましい実施形態における図示されない他の態様では、ベースは2つの吸入口と1つの排出口を有し得る。この好ましい実施形態では、支持部の1つを展開させるために、2つの吸入口のうちの1つから選択的に空気が吹き込まれ得る。一方の吸入口を遮蔽するのに舌又は栓を使用し、他方の吸入口に空気が吹き込まれ得る。代替的には、排出口を覆った状態で両方の吸入口に空気を導入することで、両方の支持部が同時に展開され得る。
【0057】
本明細書に記載された眼用器具は、コンタクトレンズの挿入との関連での使用に限定されないことが理解される。むしろ、本明細書に記載された眼用器具は、目に挿入される任意の目的物に対する広い適用性を有する。この眼用器具は、支持部の形状及び構成を変更することでそのような他の器具(装置)に適合され得る。この眼用器具は、目のための薬物、パッチ、クリーム、食塩水、涙又は他の目的物の送達との関連で使用され得る。
【0058】
図13は、対象者の目に薬物を送達するのに適合した眼用器具400の更なる好ましい実施形態を示す。眼用器具400は、マウスピース404と一対の螺子切りスクリュー部406,456を有するベース402と、螺子切りスクリュー部406,456を収容するよう適合された螺子切り孔部(412,不図示の462)を有するハウジング部材410,460を備えている。
【0059】
上記ハウジング部材は更に、薬物17のカートリッジ又は容器を受容又は保持するレセプタクルヘッド430,480を有する。レセプタクルヘッド430,480はそれぞれ薬物17を挿入するための開口した背部を有している。レセプタクルヘッド430,480はそれぞれ更に、薬物がレセプタクルヘッド430,480から滑り出ることを防ぐためのレセプタクルヘッド430,480の内周から突出した縁(rim)として図13に示される停止保持部434,484を有している。
【0060】
薬物ボトル17は、レセプタクルヘッド430,480の背部の開口からレセプタクルヘッド430,480にスライドさせて挿入される。薬物ボトル17は、好ましくは対象者の目に薬物17を吐出させる吐出端部19と、吐出端部19を保護する取り外し可能なプラスチックのキャップ(不図示)を有する。
【0061】
好ましい実施形態の1態様では、薬物ボトル17は、嚢21(bladder)に圧力を加えることで容器17から対象者の目に薬物が吐出されようにするための嚢21をも備える。
【0062】
好ましい実施形態の他の態様では、対象者の頭が少なくとも部分的に水平位置にあるときに、薬物は容器から重力によって吐出される。この態様では、薬物を容器17から対象者の目に吐出させるのに圧力を加える必要が無い。
【0063】
特に好ましい実施形態では、眼用器具400は、対象者の咬み合わせと対象者の両目の間の距離と、対象者の目の間の距離を含むそれぞれの対象者に固有の顔の寸法に合わせてカスタマイズされる。一旦カスタマイズされると、眼用器具400は、対象者の咬み合わせと対象者の目の間の固定された距離を利用して、レセプタクルヘッド430,480に含まれる薬物17の一貫して再現性のある挿入を提供する。
【0064】
図13に示される特に好ましい実施形態では、ベースは、対象者の咬み込みによる恒久的な咬み型を保持できる材料で形成されたマウスピース404を有する。そのような材料の非限定的な例には熱弾性プラスチックや他の可塑性材料が含まれる。マウスピース404に恒久的な咬み型が一旦形成されると、マウスピース404上での対象者の咬み合わせの向きは安定化され、その後の使用において一定となる。
【0065】
レセプタクルヘッド430,480とベース402の間の距離は、レセプタクルヘッド430,480に保持される薬物17が対象者のそれぞれの目に注入されるように調整され得る。
【0066】
眼用器具400は、種々の形状、サイズの容器の薬物を収容できるように設計され得ることが理解される。例えば、眼用器具400は、レセプタクルヘッド430,480の代わりに、任意の容器を所定の場所に取り付けるためのクランプ、クリップなどの他の固定装置を有し得る。
【0067】
本願に開示された特定の好ましい実施形態は、本発明のいくつかの態様を説明することを意図したものであり、本願に記載され、特許請求の範囲に記載された発明は、これらの実施形態によりその範囲が限定されることを意図されていない。任意の等価な実施形態が本発明の範囲に含まれる。もちろん、本願に示され、説明されたものの他にも、種々の本発明の改変が上記した詳細な説明から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変もまた、添付特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1(A)は、対象者の口に取り付けられたときの使用時における眼用器具の好ましい実施形態の配置を示す対象者の顔の正面図。図1(B)は、対象者の顔及び図1(A)の好ましい実施形態の側面図。
【図2】眼用器具の好ましい実施形態の斜視図。
【図3】図2の眼用器具の好ましい実施形態の側面図。
【図4】眼用器具の他の好ましい実施形態の斜視部分断面図。
【図5】図4のI−I断面図。
【図6】図5の伸長可能なチャンバーアセンブリの斜視図。
【図7】図6の伸長可能なチャンバーアセンブリのII−II断面図。
【図8】眼用器具の更なる好ましい実施形態の斜視部分断面図。
【図9】図8の好ましい実施形態の正面平面図。
【図10】図8のIII−III断面図。
【図11】図8の好ましい実施形態の背部斜視部分断面図。
【図12】眼用器具の更なる好ましい実施形態のベースの斜視図。
【図13】眼用器具の更なる好ましい実施形態の斜視部分断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースを有するベースと、
前記ベースと結合し、目的物を取り外し可能に保持するよう構成された少なくとも1つの支持部とを備える対象者の目に対する前記目的物の位置決め及び挿入を容易化する眼用器具であって、
前記支持部は前記ベースから固定された距離に位置するよう調整可能に構成され、
前記ベースは前記対象者の咬み合わせに対する前記支持部の位置を固定することを特徴とする眼用器具。
【請求項2】
前記マウスピースは、前記対象者の咬み合わせの恒久的な咬み型を形成することが可能な材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の眼用器具。
【請求項3】
前記支持部を前記ベースに結合させるある長さの少なくとも1つのアームを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の眼用器具。
【請求項4】
前記マウスピースが前記対象者の咬み合わせに配置されたときに、前記支持部を前記対象者の目の実質的に前の領域に位置させるための前記ベースからの望ましい距離に前記支持部を位置させるように前記アームの長さが調整可能であることを特徴とする請求項3に記載の眼用器具。
【請求項5】
前記目的物がコンタクトレンズであることを特徴とする請求項4に記載の眼用器具。
【請求項6】
前記対象者の目に向けての前記支持部の移動により、前記コンタクトレンズが前記対象者の目の上に再現性をもって配置されることを特徴とする請求項5に記載の眼用器具。
【請求項7】
前記支持部に結合する伸長可能なチャンバーアセンブリを更に備え、
前記伸長可能なチャンバーアセンブリに圧力が加えられたときに、前記伸長可能なチャンバーアセンブリが伸長して、前記コンタクトレンズを前記対象者の目に挿入するように前記対象者の目に向けて前記支持部を押し遣ることを特徴とする請求項6に記載の眼用器具。
【請求項8】
前記チャンバーアセンブリがそれぞれ更に蛇腹及びキャビティを有し、前記支持部がそれぞれ前記蛇腹に結合していることを特徴とする請求項7に記載の眼用器具。
【請求項9】
前記蛇腹及び前記キャビティが相互に液体流通状態にあり、前記キャビティに圧力が加えられたときに、前記蛇腹がそれぞれ伸長して、前記コンタクトレンズを前記対象者の目に挿入するように前記対象者の目に向けて前記支持部を押し遣ることを特徴とする請求項8に記載の眼用器具。
【請求項10】
前記支持部が薬物を保持するよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の眼用器具。
【請求項11】
前記薬物が容器内に配されており、前記支持部が前記容器を取り外し可能に保持するよう構成されていることを特徴とする請求項10に記載の眼用器具。
【請求項12】
前記容器が吐出端部を有することを特徴とする請求項11に記載の眼用器具。
【請求項13】
前記マウスピースが前記対象者の咬み合わせに配置されたときに、前記吐出端部が前記薬物を前記対象者の目に吐出することを特徴とする請求項12に記載の眼用器具。
【請求項14】
それぞれある長さを有する2つのアームを更に備え、
前記2つのアームがそれぞれ1つの支持部を前記ベースに結合させ、
前記マウスピースが前記対象者の咬み合わせに配置されたときに、前記支持部を前記対象者の目の実質的に前の領域に位置させるための前記ベースからの所定距離に前記2つの支持部を位置させるように、それぞれの前記アームの長さが個別に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の眼用器具。
【請求項15】
前記支持部の間の距離が前記対象者の目の間の距離に一致するように調整可能であることを特徴とする請求項14に記載の眼用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−537245(P2009−537245A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511182(P2009−511182)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/068749
【国際公開番号】WO2007/134218
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508338876)
【氏名又は名称原語表記】LOMDOM, SAS
【住所又は居所原語表記】99/103 rue de Sevres, Paris 6, FRANCE