説明

眼疾患を処置するための補体経路の阻害剤の使用

【課題】被験体における眼疾患を予防又は改善するための方法を提供すること。
【解決手段】上記方法は、被験体に補体経路阻害剤を投与することを含む。一実施形態において、阻害される補体経路は第二補体経路であり、この眼疾患は、網膜変性、糖尿病性網膜症、及び眼球血管形成からなる群から選択され、この補体経路阻害剤は、抗体、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は小分子である。別の実施形態において、この補体経路阻害剤は、H因子又はその機能ペプチド、あるいは抗体又はその結合フラグメントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症等の補体活性化に関連する眼関連病態及び疾患を患う患者における、補体経路、特にD因子の阻害に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
黄斑変性は臨床用語であり、ブルッフ膜、脈絡膜、神経網膜、及び/又は網膜色素上皮の異常を伴う中心視の進行性消失によって特徴付けられる疾患群を説明するために使用される。網膜の中心には黄斑があり、その大きさは直径約1/3〜1/2cmである。黄斑は、錐体の密度が高いために、特にその中心(窩)で詳細な像をもたらす。血管、神経節細胞、内顆粒層と細胞、及び網状層は全て、1つの周辺部に偏位しており(錐体の上を覆っているのではなく)、それによって光は錐体に向かってより直接的な路をとることが可能となる。網膜の下には、脈絡膜、線維組織内に埋め込まれた豊富な血管、及び色素上皮(PE)があり、PEは脈絡膜層を覆っている。脈絡膜血管は、網膜(特に、その視細胞)に栄養を供給する。脈絡膜及びPEは、眼の後方に認められる。
【0003】
PEを構成する網膜色素上皮(RPE)は、光受容体の正常機能及び生存に関与する種々の因子の生成、貯蔵及び輸送を行う。これらの多機能細胞は、それらの血液供給(眼の脈絡膜毛細血管)から光受容体に代謝産物を輸送する。RPE細胞も、マクロファージとして機能し、正常な細胞の生体内作用で生成される桿体及び錐体の外節の先端を貪食する。種々のイオン、タンパク質、及び水分は、RPE細胞と光受容体間の間隙との間を移動し、最終的にこれらの分子は、光受容体の代謝と生存能力に影響を及ぼす。
【0004】
最も一般的な黄斑変性である加齢性黄斑変性症(AMD)は、視野の中心部分の視力の進行性消失、色覚の変化、及び異常な暗順応と感度を伴う。AMDの2つの主要な臨床症状は、乾性、即ち萎縮型、及び湿性、即ち滲出型として説明されてきた。乾性型は、読書、運転、又は顔の認識などの活動で使用される細かい視力に必要とされる中心網膜又は黄斑の萎縮性細胞死と関連する。これらの乾性AMD患者の約10〜20%は、湿性AMDとして知られる、AMDの第二の型に進行する。
【0005】
湿性(新生血管型/滲出型)AMDは、黄斑の下の網膜の裏側の血管の異常な増殖及び血管漏出によって引き起こされ、網膜の移動、出血、及び瘢痕形成をもたらす。これは、数ヵ月から数年の期間にわたる視力の悪化をもたらす。一方で、患者は急速な視力喪失を被ることもある。湿性AMDの全ての症例は、乾性AMDの進行から生ずる。湿性型は、AMDによる失明の85%を占める。滲出AMDでは、血管が体液及び血液を漏出するために、中心網膜を破壊する瘢痕組織が形成される。
【0006】
両方の型を発症させる最も重要な危険因子は、年齢とドルーゼン沈着(網膜色素上皮の裏側での異常な細胞外沈着物)である。ドルーゼンは、RPE単層の横方向の拡張と、近接した血管供給(脈絡膜毛細血管)からのRPEの物理的な移動を引き起こす。この移動は、脈絡膜毛細血管と網膜との間の正常な代謝及び老廃物の拡散を妨げる場合がある物理的なバリアを形成する。ドルーゼンは、AMDに関連する顕著な沈着物である。ドルーゼンの生合成は、RPEの機能障害、光受容体外節の消化障害、及びそれに続くデブリの蓄積に関与する。ドルーゼンは、補体活性化因子、阻害因子、活性化特異的補体フラグメント、並びに細胞膜傷害複合体(MAC又はC5b−9)を含めた最終経路成分を含有し、このことは、これらの物質の局所的な濃度によって、補体カスケードを介して作用する白血球の強力な走化性刺激が生成される可能性を示唆する(非特許文献1)。最近の研究では、局所炎症と補体カスケードの形成における活性化を関連付けている(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0007】
滲性AMDは、脈絡膜血管新生(CNV)と関連しており、複雑な生体内作用である。新しい脈絡膜血管の形成の病因は、完全には理解されていないが、炎症、虚血、及び血管新生因子の局所生成等の因子が有力であると考えられる。炎症が一定の役割を果たしていると示唆されているが、補体の役割については未だに研究されてない。CNVの予備研究は、マウスモデルでは補体の活性化によって引き起こされることが示されている(非特許文献6)。
【0008】
補体系は、細菌感染に対する自然免疫の重要な構成成分であり、通常、不活性状態で血清中に存在するタンパク質の一群を含む。これらのタンパク質は、以下の3つの活性化経路で構成される:古典的経路、レクチン経路、及び第二経路(V.M. Holers,In Clinical Immunology: Principles and Practice,ed. R.R. Rich,Mosby Press;1996,363−391)。微生物表面の分子は、これらの経路を活性化させることが可能であり、C3転換酵素として知られるプロテアーゼ複合体の形成をもたらす。古典的経路は、カルシウム/マグネシウム依存カスケードであり、通常、抗原−抗体複合体の形成によって活性化される。古典的経路は又、リガンドと複合体を形成したC反応性タンパク質の結合によって、及びグラム陰性菌を含む多数の病原体によって抗体非依存的な方法で活性化され得る。第二経路は、特定の感受性の表面(例えば、酵母及び細菌の細胞壁多糖、並びに特定の生体高分子物質)上におけるC3の沈着及び活性化によって活性化されるマグネシウム依存カスケードである。
【0009】
第二経路は、古典的経路とレクチン経路の両活性の増幅に関与する(Suankratay,C,ibid;Farries,T.C.ら、MoI. Immunol. 27: 1155− 1161(1990))。補体経路の活性化は、補体タンパク質(例えばC3a、C4a及びC5aアナフィラトキシン、並びにC5b−9細胞膜傷害複合体(MAC))の生物活性フラグメントを生成し、それらは白血球走化性の関与;マクロファージ、好中球、血小板、マスト細胞、及び内皮細胞の活性化;血管浸透性、細胞溶解、及び組織傷害の増加を介して炎症反応を媒介する。
【0010】
D因子は、ヒトではその血漿濃度が極めて低い(1.8μg/ml)ため、補体経路のこの増幅の阻害に適切な標的となる可能性があり、第二補体経路の活性化にとって制限的な酵素となることが示されている(P.H. Lesavre and HJ. Mueller−Eberhard. J. Exp. Med.,1978;148: 1498−1510;J.E. Volanakisら、New Eng. J. Med.,1985;312: 395−401)。補体活性化の阻害は、動物モデルを使用する幾つかの疾患の徴候の治療で、及びex vivo研究(例えば、全身性エリテマトーデス及び糸球体腎炎)において有効であることが実証されている(Y. Wangら、Proc. Natl. Acad. Sci.;1996,93: 8563−8568)。
【0011】
AMD患者の一塩基多型(SNP)分析を使用して、H因子の遺伝的変異体(Y402H)は、AMDの罹患率の増加と関連性が高いことが見出されている(Zareparsi S,Branham KEH,Li Mら、Am J Hum Genet. 2005;77: 149−53;Haines JLら、Sci 2005;208: 419−21)。H因子遺伝子のこの点変異に対してホモ接合性又はヘテロ接合性の何れかである人は、AMD症例の50%を占める可能性がある。H因子は、第二補体経路の主要な可溶性阻害剤である(Rodriguez de Cordoba Sら、MoI Immunol 2004;41: 355−67)。H因子はC3bに結合し、それによって第二補体経路C3転換酵素(C3bBb)の崩壊を促進させ、I因子が媒介するC3bのタンパク質分解不活性化の補因子として作用する。組織化学的染色研究では、RPE脈絡膜の接触面でH因子とMACの類似する分布があることが示されている。AMD患者に認められるこの接触面で沈着するMACの著しい量は、H因子ハプロタイプ(Y402H)が補体の阻害機能を弱めた可能性があることを示唆している。H因子(Y402H)はC3bに対して低い結合親和性を有する可能性があると推定されている。従って、この因子は、第二補体経路の活性化を阻害する上で野生型H因子と同程度に有効ではない。この因子は、第二補体経路が媒介する補体攻撃に対してRPE及び脈絡膜細胞を持続的な危険にさらす。
【0012】
血漿中のH因子の欠如は、C3及びしばしば他の補体最終成分(C5等)の消費により第二補体経路の無制御の活性化を引き起こすことが明らかにされている。この所見を踏まえて、H因子の血漿レベルが、AMDの既知の危険因子である喫煙と共に減少することが知られている(Esparza−Gordillo Jら、Immunogenetics. 2004;56: 77−82)。
【0013】
現在のところ、乾性AMDの実証された薬物療法はなく、進行性の乾性AMDの治療法もない。滲性AMDの選択症例において、レーザー光凝固術として知られる技法は、血管からの漏出又は出血を塞ぐために効果的である場合がある。残念ながら、レーザー光凝固術は一般的に、視力の喪失を改善するのではなく、更なる喪失を単に遅らせ、場合により防止するだけである。近年、光ダイナミック療法が、早期治療時に滲性AMD患者の約3分の1の異常な血管増殖を阻止するのに効果的であることが示されている。ビスダイン(Visdyne)光ダイナミック療法(PDT)では、患者の眼球に注射される染料が網膜内の血管漏出の領域に蓄積され、低出力レーザーに曝露されると、漏出する血管を密封するように反応する。これらの2種類のレーザー技術に加えて、滲性AMDの治療のために開発された血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とする幾つかの抗血管形成療法がある。しかしながら、治療を受けた患者のわずか10%しか視力の改善を示していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Killingsworth,ら、Exp Eye Res(2001)73,887−96
【非特許文献2】Bok D. Proc Natl Acad Sci (USA)(2005)102:7053−4
【非特許文献3】Hageman GSら、Prog Retin Eye Res.(2001)20:705−32
【非特許文献4】Anderson DHら、Am J Ophthalmol.(2002)134:411−31
【非特許文献5】Johnson LVら、Exp Eye Res.(2001)73:887−96
【非特許文献6】Bora PS、J Immunol.(2005)174:491−497
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
滲性AMDに不適当なこれらの治療、及び進行性乾性AMDで使用することが可能な治療が全くないことを鑑みると、この重度の疾患のための新規の治療法の開発が明らかに必要とされている。本発明は、この重度の疾患を治療する新しい手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(要旨)
本発明は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、眼球血管形成(脈絡膜、角膜、又は網膜の組織に影響を与える眼球血管新生等)、及び補体活性化に関与する他の眼球病態等の眼に関連する病態又は疾患を治療する補体阻害剤に関する。AMDの治療は、乾性及び滲性の両型のAMDを含む。
【0017】
本発明の補体阻害剤には、D因子、プロペルジン、B因子、Ba因子、及びBb因子等の第二補体経路、並びにC3a、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、C9、及びC5b−9等の古典的補体経路を阻害する阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。本発明は又、抗血管形成剤等の他の薬剤並びにステロイド等の抗炎症剤と組み合わせた補体阻害剤の使用も含む。
【0018】
本発明の別の実施形態は、抗体と由来フラグメント及び単一ドメイン構築物、並びに低分子化合物等のC5aR及びC3aR阻害剤の使用に関する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、組換え型可溶性タンパク質CR1(TP10)及びその由来タンパク質の使用;C3阻害分子(C3活性化を結合及び阻害するペプチド模倣薬であるコンプスタチン等)の使用;C3、C5、FD、P因子、B因子の合成を阻止するsiRNAに関する。
【0020】
これらの阻害剤は、小分子化学物質、ヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣薬、及び抗体であってよいが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の別の実施形態は、患者の眼内に、又はその他何れかの臨床的に有効な経路によって投与されるヒト血液から精製されるヒトH因子又は組換えヒトH因子の使用を含む。
【0022】
本発明の抗体には、scFv、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)2、又はdAbの全免疫グロブリンを含む。ドメイン抗体は、VHドメイン又はVLドメインの何れかを含む。
【0023】
本発明の一実施形態は、D因子に結合して、第二補体経路を活性化させる能力を阻止するモノクローナル抗体の使用である。このような抗体は、参考として本明細書で援用される、国際特許第WO01/70818号及び米国特許第20020081293号に記載され、例えば、ATCCに寄託され、HB12476と指定されるハイブリドーマから生成されたモノクローナル抗体166−32等がある。本発明は又、モノクローナル抗体166−32と同じエピトープに特異的に結合する抗体を含む。本発明のモノクローナル抗体は又、参考として本明細書で援用される同時係属出願第________号のヒト化抗体を含む場合もある。
【0024】
本発明の一実施形態は、補体成分C5aに結合するモノクローナル抗体の使用である。このような抗体には、ATCCに寄託され、PTA−3650と指定されるハイブリドーマから生成された抗体137−26、及び137−26と同じエピトープに特異的に結合する何れかの抗体が含まれる。
【0025】
本発明によれば、補体経路阻害剤は、(a)非経口投与;(b)生体適合性又は生体分解性(bioerodable)の持続放出インプラント;(c)薬物注入ポンプの移植;又は(d)結膜下投与等の局所投与によって、又は硝子体内投与によって投与される場合がある。補体阻害剤は又、舌下投与、腸内投与、及び局所性投与から選択される非経口投与によって投与される場合もある。局所投与は、洗眼液、眼軟膏、アイシールド(eye shield)、又は点眼液を含む場合がある。
【0026】
更に、本発明の補体阻害剤は、免疫調節化合物又は免疫抑制化合物と併用して投与される場合がある。
【0027】
本発明の別の実施形態は、遺伝子治療のために補体経路阻害因子を発現することが可能な核酸構築物を投与することに関する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、Cc1−2又はCcr−2欠損老齢マウスにおけるAMDモデルの使用を含むAMD治療において有用な補体阻害剤のスクリーニング法を含む。これらのマウスは、ヒト乾性及び滲性AMDに見られるのと同様の病理組織学的変化を現す。これらのマウスは、補体阻害剤又はH因子を使用して硝子体内で処置される場合がある。被試薬物で処置されたマウスにおけるAMD発症からの保護を判定するために、組織学的試験が実施される場合がある。
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
被験体における眼疾患を予防又は改善するための方法であって、このような投与を必要とする被験体に補体経路阻害剤を投与する手順を含む、方法。
(項目2)
上記補体経路が第二補体経路である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記眼疾患が、網膜変性、糖尿病性網膜症、及び眼球血管形成からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記被験体が、脈絡膜、網膜色素上皮、又は網膜組織に影響を及ぼす眼球血管新生の阻害を必要とする、項目3に記載の方法。
(項目5)
上記補体経路阻害剤が、抗体、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は小分子である、項目1〜4の何れか1項に記載の方法。
(項目6)
上記補体経路阻害剤が、H因子又はその機能ペプチドである、項目1〜4の何れか1項に記載の方法。
(項目7)
上記補体経路阻害剤が抗体又はその結合フラグメントである、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記補体阻害剤が、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、又は単鎖Fvを含む抗体フラグメントである、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記補体阻害剤が単一ドメイン抗体である、項目7に記載の方法。
(項目10)
上記補体阻害剤がモノクローナル抗体である、項目7に記載の方法。
(項目11)
上記補体阻害剤が、キメラ抗体、脱免疫化(deimmunized)抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、又はヒト抗体である、項目7に記載の方法。
(項目12)
上記抗体が、上記第二補体経路の成分に特異的に結合する、項目7に記載の方法。
(項目13)
上記抗体がD因子、プロペルジン、B因子、Ba因子、又はBb因子に特異的に結合する、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記抗体がD因子に特異的に結合する、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記抗体が、ATCCに寄託され、HB12476と指定されるハイブリドーマから生成されるモノクローナル抗体166−32である、項目14に記載の方法。
(項目16)
上記抗体が、ATCCに寄託され、HB12476と指定されるハイブリドーマから生成されるモノクローナル抗体166−32と同じエピトープに特異的に結合する、項目14に記載の方法。
(項目17)
上記抗体が、ATCCに寄託され、HB12476と指定されるハイブリドーマから生成される166−32に由来するヒト化モノクローナル抗体である、項目14に記載の方法。
(項目18)
上記抗体が、古典的補体経路又はレクチン補体経路の成分に特異的に結合する、項目7に記載の方法。
(項目19)
上記抗体が、C2、C2a、C3a、C5、C5a、C5b、C6、C7、C8、C9、又はC5b−9に特異的に結合する、項目18に記載の方法。
(項目20)
上記抗体が補体成分C5aに特異的に結合する、項目18に記載の方法。
(項目21)
上記抗体が、ATCCに寄託され、PTA−3650と指定されるハイブリドーマから生成される137−26である、項目20に記載の方法。
(項目22)
上記抗体が、ATCCに寄託され、PTA−3650と指定されるハイブリドーマから生成される137−26と同じエピトープに結合する、項目20に記載の方法。
(項目23)
上記補体経路阻害剤が、(a)非経口投与、経口投与、腸内投与、又は局所投与;(b)生体適合性又は生体分解性の持続放出インプラント;(c)注入ポンプの移植;又は(d)例えば、硝子体内投与又は結膜下投与等の局所投与によって投与される、項目1〜22の何れか1項に記載の方法。
(項目24)
上記局所投与が洗眼液、眼軟膏、アイシールド、又は点眼液である、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記被験体に免疫調節化合物又は免疫抑制化合物を投与する手順も更に含む、項目23に記載の方法。
(項目26)
眼疾患を有する被験体において第二補体経路の活性化を阻害する方法であって、補体経路タンパク質に特異的なsiRNAを投与することを含む、方法。
(項目27)
眼疾患を有する患者において第二補体経路の活性化を阻害する方法であって、補体経路阻害剤をコードする核酸を投与することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、細胞系、ベクター、又は試薬に限定されることはない。何故なら、これらは変化する可能性があるためである。更に、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明の適用範囲を限定することを目的としたものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形“a”、“an”及び“the”は、複数の言及を含む。例えば、「宿主細胞(a host cell)」の言及は、このような複数の宿主細胞を含む。
【0030】
特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語、並びに何れの頭字語も、本発明の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似する又は同等の何れの方法及び物質も本発明の実施で使用できるが、例示的な方法、装置及び物質を本明細書では記載している。
【0031】
本明細書に記載する全ての特許及び刊行物は、本発明と共に使用される可能性があることがそれらの中で報告されている、タンパク質、酵素、ベクター、宿主細胞、及び方法を説明及び開示するために法により許容される範囲で、参考として本明細書で援用される。しかしながら、本発明が先行発明によってこのような開示に先行する資格がないとの了解として解釈されるべきものは、本明細書には一切ない。
【0032】
定義
「アミノ酸配列変異体」という用語は、未変性の配列のポリペプチドとある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。通常、アミノ酸配列変異体は、未変性のポリペプチドと少なくとも約70%の相同性、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の相同性を有する。アミノ酸配列変異体は、未変性アミノ酸配列のアミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、及び/又は挿入を有する。
【0033】
「同一性」又は「相同性」という用語は、配列全体における最大同一性パーセントを達成する必要がある場合において、配列を整列し、ギャップを導入した後に、比較される対応配列の残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義され、如何なる保存的置換を配列同一性の一部として考慮しない。N末端又はC末端の拡張若しくは挿入も、同一性又は相同性を減少させるものとして解釈してはならない。整列のための方法及びコンピュータプログラムは、当該技術分野で周知である。配列同一性は、以下に記載される既知のものを含むがこれらに限定されない方法によって容易に算出することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A. M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects,Smith,D. W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A. M.,and Griffin,H. G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;and Sequence Analysis Primer,Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;and Carillo,30 H.,and Lipman,D.,SIAM J. Applied Math.,48: 1073 (1988))。同一性を決定する方法は、試験される配列間で最大の一致をもたらすように設計される。2つの配列間の同一性を決定するコンピュータプログラム法には、以下が含まれるが、これらに限定されない:GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,ら、Nucleic Acids Research 12(1): 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Atschul,S. F.ら、J Molec. Biol. 215: 403−410 (1990))。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の供給源から公的に入手可能である(BLASTManual,Altschul,S.,et al,NCBI NLM NIH Bethesda,Md. 20894,Altschul,S.,ら、J. MoI. Biol. 215: 403−410 (1990))。周知のSmith Watermanアルゴリズムも、同一性を決定するために使用される場合がある。
【0034】
本明細書において「抗体」という用語は、広範な意味で使用され、特に、インタクトのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体のフラグメント(所望の生物活性を示す限り)を包含する。
【0035】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一の抗体の集団(即ち、その集団を含む個別の抗体は、少量で存在することもある天然の変異を除いて同一である)から得た抗体を指す。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる種々の抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一の抗体の集団から得られる抗体の特性を示し、特定の方法による抗体の生成が必要であるとは解釈されないものとする。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al,Nature,256:495 (1975)において記載されたハイブリドーマ方法によって作製される場合もあれば、或いは組換えDNA法によって作製される場合もある(米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」は又、例えば、Clacksonら、Nature,352:624−628 (1991);及びMarksら、J. MoI. Biol,222:581−597 (1991)に記載の技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離させる場合もある。
【0036】
本明細書においてモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含む。このキメラ抗体は、その重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体において、対応する配列と同一若しくは相同であり、同時に、鎖の残りの部分が、別の種由来の抗体、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体、並びにこのような抗体が所望の生物活性を示す限りそれらの抗体のフラグメントにおいて、対応する配列と同一若しくは相同である(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81:6851−6855 (1984))。
【0037】
「抗体フラグメント」は、抗原結合領域又はその可変領域を含むインタクト抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント;ダイアボディ(diabody);線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が含まれる。
【0038】
「インタクト」抗体は、抗原結合可変領域、並びに軽鎖定常ドメイン(C)、及び重鎖定常ドメイン(C1、C2、及びC3)を含む抗体である。定常ドメインは、未変性配列の定常ドメイン(例えばヒト未変性配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体である場合がある。インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する場合がある。
【0039】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(未変性配列のFc領域又はアミノ酸配列変異体のFc領域)に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体の下方制御(例えば、B細胞受容体(BCR))等が含まれる。
【0040】
インタクト抗体は、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、別の「クラス」に割り当ててもよい。インタクト抗体には、主に以下の5つのクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM。これらの幾つかは、更に「サブクラス」(アイソタイプ)に分けられる場合がある(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2)。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び3次元配置は、周知のものである。
【0041】
「抗体依存性細胞性細胞傷害」(ADCC)とは、細胞により媒介される反応を指し、Fc受容体(FcRs)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞の上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγIIIのみを発現するのに対して、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。FcRは造血細胞上に発現する。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は第5,821,337号に記載のもの等のin vitroのADCC検定を実施する場合がある。このような検定に有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。或いは、若しくは更に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで(例えば動物モデルで)評価される場合もある。このようなモデルは幾つか利用できるものがある。
【0042】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分が複数の抗体の間で配列が広範囲にわたり異なり、その特定の抗原に対する特定の各抗体の結合及び特異性で使用される事実をいう。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布してはいない。これは、軽鎖及び重鎖の両可変ドメインで超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。これらの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。可変ドメインのより高度に保存される部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。未変性重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを含み、主として3つの超可変領域によって結合されるβシート配置の形をとる。これらの領域は、βシート構造を結合し、場合によりその部分を形成するループ構造を形成する。各鎖の超可変領域は、FRにより極めて近接して結合され、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md. (1991)を参照)。
【0043】
本明細書で使用される「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般的に、「相補性決定領域(CDR)」(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)、並びに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜65(H2)、及び95〜102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md. (1991))のアミノ酸残基、及び/又は「超可変ループ」(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、並びに重鎖可変ドメインの26〜32(H1)、53〜55(H2)、及び96〜101(H3);Chothia and Lesk J. MoL Biol. 196:901−917 (1987))のアミノ酸残基を含む。「フレームワーク領域(FR)」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0044】
抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(それぞれ単一の抗原結合部位を有する)及び1つの残留「Fc」フラグメント(この名称は、容易に結晶化するその能力を反映している)を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、依然として架橋結合抗原の能力があるF(ab’)フラグメントをもたらす。
【0045】
Fabフラグメントは又、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含めた重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に少数の残基を添加することによってFabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab’の名称である。F(ab’)抗体フラグメントは本来、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生される。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
【0046】
何れかの脊椎動物種に由来する抗体の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる明らかに異なる2つの型の1つに割り当てられる。
【0047】
「Fv」は、完全な抗原認識部位と抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、密接した非共有結合において1本の重鎖と1本の軽鎖の可変ドメインの二量体から構成される。各可変ドメインの3つの超可変領域が、V−V二量体の表面上で抗原結合部位を規定するために相互作用するのは、この配置である。6つの超可変領域は一緒になって、抗体に対する抗原結合特異性を付与する。しかし、全体の結合部位よりも低い親和性ではあるものの、単一の可変ドメイン(又は1つの抗原に対して特異的な3つの超可変領域だけを含むFvの半分)でも抗原を認識して結合する能力を有する。
【0048】
「単鎖Fv(scFv)」抗体フラグメントは、ドメインが単鎖ポリペプチドに存在する抗体のV及びVドメインを含む。好ましくは、Fvポリペプチドは更に、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成できるように、VドメインとVドメインの間にポリペプチドリンカーも含む。scFvのレビューについては、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol. 113,Rosenburg and Moore eds.,Springer− Verlag,New York,pp. 269−315 (1994)を参照されたい。抗ErbB2抗体のscFvフラグメントについては、国際特許第WO93/16185号;米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号に記載されている。
【0049】
「ダイアボディ」という用語は、同一のポリペプチド鎖(V−V)において可変軽鎖ドメイン(V)に結合した可変重鎖ドメイン(V)を含む2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指す。同じ鎖上で2つのドメイン間を対にするには短すぎるリンカーを使用することで、それらのドメインを別の鎖の相補的なドメインと対にして、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディについては、例えば、欧州特許第404,097号;国際特許第93/11161号;及びHollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,90:6444− 6448 (1993)に詳述されている。
【0050】
「単一ドメイン抗体」は、「dAb」と同義であり、抗原結合が単一の可変領域ドメインによってもたらされる免疫グロブリン可変領域ポリペプチドを指す。本明細書で使用される「単一ドメイン抗体」には、以下が含まれる:i)重鎖可変ドメイン(VH)又はその抗原結合部位を含む抗体で、その他何れかの可変ドメインとは別に抗原結合部位を形成するもの、ii)軽鎖可変ドメイン(VL)又はその抗原結合フラグメントを含む抗体で、その他何れかの可変ドメインとは別に抗原結合部位を形成するもの、iii)別のVH又はVLドメインポリペプチド(例えば、VH−VH又はVHx−VL)に結合したVHドメインポリペプチドを含む抗体であって、各Vドメインがその他何れかの可変ドメインとは別に抗原結合部位を形成するもの、及びiv)別のVLドメインポリペプチド(VL−VL)に結合したVLドメインポリペプチドを含む抗体であって、各Vドメインがその他何れかの可変ドメインとは別に抗原結合部位を形成するもの。本明細書で使用されるVLドメインは、軽鎖のκ及びλの両型を指す。
【0051】
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化の」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、超可変領域が所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種の超可変領域からの残基によって置換されるヒト免疫グロブリンである。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、ヒト抗体又は非ヒト抗体では見られない残基を含む場合がある。これらの修飾は、抗体の能力を更に改善するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これらのドメインでは、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのループに対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRに対応する。ヒト化抗体は又場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を、一般的にはヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。ヒト化技術の例については、例えば、参考として本明細書で援用される、Queenら、の米国特許第5,585,089号、第5,693,761号;第5,693,762号;及び第6,180,370号に記載されている。
【0052】
抗体の生成
本発明の抗体は、当該技術分野で周知の任意の適切な方法によって生成されることが可能である。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含む場合がある。ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に既知である(全体が参考として本明細書で援用される、Harlow,ら、Antibodies: a Laboratory Manual,(Cold spring Harbor Laboratory Press,2nd ed. (1988))。
【0053】
例えば、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、ウサギ、マウス、ラット等を含むがこれらに限定されない種々の宿主動物に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって抗体を生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、及び所望の場合にはアジュバントの注入を必要とすることもある。種々のアジュバントは、宿主種によって、免疫応答を増加させるために使用されることもあり、以下を含むがこれらに限定されない:フロイントアジュバント(完全及び不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウム等)、界面活性物質(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール等)、及び潜在的に有用なヒトアジュバント(カルメット−ゲラン桿菌(BCG)及びコリネバクテリウムパルバム)。使用される場合があるアジュバントの更なる例は、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫プロトコルは、当該技術分野で周知であり、選択する動物宿主において免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される場合がある。アジュバントも当該技術分野で周知である。
【0054】
通常、免疫原(アジュバントの有無に係らず)は、複数回の皮下注射若しくは腹腔内注射によってか、又は筋肉内若しくはIVを介して哺乳類に注入される。免疫原は、抗原ポリペプチド、融合タンパク質、又はそれらの変異体を含む場合がある。ポリペプチドの性質(即ち、疎水性パーセント、親水性パーセント、安定性、正味電荷、等電点等)に応じて、免疫される哺乳類において免疫原性であることが知られるタンパク質に免疫原を抱合させることも有用である場合がある。このような抱合は共有結合が形成されるように、抱合される免疫原及び免疫原タンパク質の両方に対する活性な化学官能基を誘導体化することによって、又は融合タンパク質に基づく方法を介して、若しくは当業者に既知の他の方法での何れかの化学抱合を含む。このような免疫原タンパク質の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:キーホールリンペットヘモシアニン、卵白アルブミン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、ダイズトリプシン阻害剤、及び乱交雑Tヘルパーペプチド。免疫応答を増加させるために、上述の通り種々のアジュバントを使用する場合がある。
【0055】
本発明で有用な抗体は、モノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495 (1975)及び米国特許第4,376,110号)に、Harlow,ら、Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold spring Harbor Laboratory Press,2.sup.nd ed. (1988)に、Hammerling,ら、Monoclonal Antibodies and T−CeIl Hybridomas (Elsevier,N. Y.,(1981))に記載されるハイブリドーマ技術を使用して、又は当業者に既知の他の方法を使用して調製される場合がある。モノクローナル抗体を生成するために使用される場合がある他の方法例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら、1983,Immunology Today 4:72;Coleら、1983,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026−2030)及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、1985,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Alan R. Liss,Inc.,pp. 77−96)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。本発明の抗体を産生するハイブリドーマは、in vitro又はin vivoで培養される場合がある。
【0056】
一般的なハイブリドーマ技術を使用して、目的の抗原に特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することができるリンパ球を誘導するために、マウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系を有するマウス、ハムスター、ウサギ、ラクダ、又はその他何れかの適切な宿主動物等の宿主を一般的に、免疫原で免疫化する。或いは、抗原を使用してin vitroでリンパ球を免疫化する場合もある。
【0057】
一般的に、抗体を産生するハイブリドーマを作製する場合、ヒト由来の細胞を所望の場合には、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、又は非ヒト哺乳類の供給源が所望の場合には、脾臓細胞若しくはリンパ節細胞が使用される。次いで,ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコール等の適切な融剤を使用して、リンパ球は、不死化細胞系と融合される(Goding,Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,Academic Press,(1986),pp. 59−103)。不死化細胞系は一般的に、哺乳類の形質転換細胞、特に、げっ歯類、ウシ、又はヒト由来の骨髄腫細胞である。一般的に、ラット又はマウスの骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の増殖又は生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培地で培養される場合がある。例えば、親株細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠乏している場合、ハイブリドーマの培地は一般的に、HGPRT欠損細胞の増殖を阻止するヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(「HAT培地」)物質を含む。
【0058】
好ましい不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定な高レベル抗体発現を支持し、且つHAT培地等の培地に対して感受性のあるものである。より好ましい不死化細胞系はマウス骨髄腫系であり、これは、例えば、SaIk Institute Cell Distribution Center(米国カリフォルニア州サンディエゴ)及びAmerican Type Culture Collection(米国バージニア州マナッサス)から入手可能である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の産生に使用され得る(Kozbor,J. Immunol.,133:3001 (1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987) pp. 51−63)。
【0059】
ハイブリドーマ細胞が培養される培地を、次いで、免疫原に対して向けられるモノクローナル抗体の存在を検定することができる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、例えば、免疫沈降法によって、又は放射免疫測定法(RIA)若しくは酵素結合免疫測定法(ELISA)等のin vitro結合検定によって決定される。このような技法は、当該技術分野で及び当業者に既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Scatchard分析によって決定される(Munsonら、Anal. Biochem.,107:220 (1980))。
【0060】
所望のハイブリドーマ細胞を同定してから、クローンを、限界希釈法によってサブクローン化し、標準方法によって増殖させる場合がある(Goding、上記を参照)。この目的のための適切な培地は、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地及びRPMI−1640を含む。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製法によって培地から単離又は精製されることが可能である。
【0061】
当該技術分野には種々のモノクローナル抗体の生成方法があり、従って、本発明は、ハイブリドーマでのそれらの単独の産生に限定されない。例えば、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載の通り、組換えDNA方法によって生成される場合がある。これに関連して、「モノクローナル抗体」という用語は、単一の真核生物クローン、ファージクローン、又は原核生物クローン由来の抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の方法(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする、又はヒト、ヒト化、若しくは他の供給源由来のこのような鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を使用して、容易に単離及び配列を決定することが可能である。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離されると、DNAは、発現ベクターに置かれる場合があり、次いで、組換え宿主細胞でモノクローナル抗体の合成を得るために、ベクターは、NS0細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他に免疫グロブリンタンパク質を生成しない骨髄腫細胞等の宿主細胞に形質転換される。DNAは、例えば、相同のマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖の定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号、Morrisonら、,前掲を参照)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは部分を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることによって修飾される場合がある。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ二価抗体を作製するために、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに使用されることが可能であり、又は本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに使用されることが可能である。
【0062】
抗体は一価抗体でもよい。一価抗体を調製する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋結合を阻止するようにFc領域の任意の点で切断される。或いは、関連するシステイン残基を別のアミノ酸残基と置換して、又は欠失させて架橋結合を阻止する。
【0063】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の技法によって生成される場合もある。例えば、本発明のFab及びF(ab’)フラグメントを、パパイン(Fabフラグメントを生成するため)又はペプシン(F(ab’)フラグメントを生成するため)の酵素を使用して、免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生成する場合がある。F(ab’)フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域、及び重鎖のCH1ドメインを含む。
【0064】
ヒトにおける抗体のin vivo使用及びin vitro検出検定を含む幾つかの用途のために、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体を使用することが好ましい場合もある。キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体及びヒト免疫グロブリン定常領域由来の可変領域を有する抗体のように、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を生成する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、全体が参考として本明細書で援用される、Morrison,Science 229:1202 (1985);Oiら、BioTechniques 4:214 (1986);Gilliesら、(1989) J. Immunol. Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;第4,816,567号;及び第4,816397号を参照されたい。
【0065】
ヒト化抗体は、非ヒト種で生成される抗体分子であり、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク(FR)領域を有する所望の抗原に結合する。抗原結合を改変する、好ましくは、改善するために、ヒトフレームワーク領域のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換されることが多い。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法(例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためにCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって、及び特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較)によって同定される(例えば、全体が参考として本明細書で援用される、Queenら、の米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323 (1988)を参照)。抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用してヒト化されることが可能であり、例えば、CDR移植(欧州特許第239,400号;PCT特許公開第WO91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、ベニアリング又は表面再処理(欧州特許第592,106号;欧州特許519,596号;Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489−498 (1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805−814 (1994);Roguska.ら、PNAS 91:969−973 (1994))、及び鎖シャッフル(米国特許第5,565,332号)がある。
【0066】
通常、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源に由来する、導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、一般的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と呼ばれることが多い。ヒト化は、基本的に、Winterと同僚らの方法に従い、げっ歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって実施される(Jonesら、Nature,321 :522−525 (1986);Reichmannら、Nature,332:323−327 (1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536 (1988))。従って、このような「ヒト化」抗体は、実質的により少ないインタクトなヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は一般的には、一部のCDR残基及び可能性のある一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似する部位から置換されるヒト抗体である。
【0067】
完全なヒト抗体は、特にヒト患者の治療上の処置にとって望ましい。ヒト抗体は、ヒト免役グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用した上述のファージディスプレイ法を含めた、当該技術分野で既知の種々の方法で生成することができる。又、それぞれの全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;並びにPCT特許公開第WO98/46645号、国際特許第98/50433号、国際特許第98/24893号、国際特許第98/16654号、国際特許第96/34096号、国際特許第96/33735号、及び国際特許第91/10741号も参照されたい。Cole等、Boerder等の技法も、ヒトモノクローナル抗体の調製で利用できる(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R. Riss,(1985);及びBoernerら、J. Immunol.,147(l):86−95,(1991))。
【0068】
ヒト抗体は又、任意の他の可変ドメインとは独立して機能するVH又はVLドメインを有する単一ドメイン抗体であってよい。これらの抗体は、一般的には、ファージで発現した抗体ライブラリーから選択される。これらの抗体及びこのような抗体を単離する方法については、全てが参考として本明細書で援用される、米国特許第6,595,142号;第6,248,516号;及び米国特許出願第20040110941及び米国出願第20030130496号に記載されている。
【0069】
機能的な内在性免役グロブリンを発現できないが、ヒト免役グロブリン遺伝子を発現できる遺伝子導入マウスを使用して、ヒト抗体を生成することも可能である。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免役グロブリン遺伝子複合体をマウス胚性幹細胞に無作為に又は相同組換えによって導入する場合もある。或いは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域を、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、マウスの胚性幹細胞に導入する場合もある。マウスの重鎖及び軽鎖免役グロブリン遺伝子を、相同組換えによるヒト免役グロブリン遺伝子座の導入で、別々又は同時に機能させなくすることもできる。特に、JH領域のホモ接合欠失は、内在性抗体の産生を阻止する。キメラマウスを生成するために、改変した胚性幹細胞を増殖させて、胚盤胞に微量注入する。次いで、ヒト抗体を発現するホモ接合体子孫を生成するために、キメラマウスを繁殖させる。遺伝子導入マウスを、選択抗原(例えば、本発明のポリペプチドの全体又は一部)を使用して通常の方法で免疫する。抗原に対して向けられるモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して、免疫した遺伝子導入マウスから得られる。遺伝子導入マウスによって保持されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列し、その後クラススイッチ及び体細胞突然変異を生じる。このように、このような技法を使用して、治療に有益なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生成することは可能である。ヒト抗体を生成するこの技術の概要については、Lonberg and Huszar,Int. Rev. Immunol. 13:65−93 (1995)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生成するこの技術及びこのような抗体を生成するプロトコルの詳細な考察については、例えば、全体が参考として本明細書で援用される、PCT特許公開第WO98/24893号;国際特許第92/01047号;国際特許第96/34096号;国際公開96/33735号;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,569,825号;第5,661,016号;第5,545,806号;第5,814,318号;第5,885,793号;第5,916,771号;及び第5,939,598号を参照されたい。更に、Abgenix,Inc.(米国カリフォルニア州フリーモント)、Genpharm(米国カリフォルニア州サンホゼ)、Medarex,Inc.(米国ニュージャージー州プリンストン)のような企業は、上述の技術に類似する技術を使用して、選択抗原に対して向けられるヒト抗体を提供するために従事することが可能である。
【0070】
又、ヒトMAbは、ヒト末梢血白血球、脾細胞、又は骨髄(例えば、XTLのトリオーマ法)を移植されたマウスを免疫することによって生成することができる。選択したエピトープを認識する完全なヒト抗体は、「ガイド選択法」と呼ばれる技法を使用して、生成することができる。この手法では、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)は、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択をガイドするために使用される(Jespersら、Bio/technology 12:899−903 (1988))。
【0071】
更に、本発明のポリペプチドに対する抗体は、次に、本発明のポリペプチドを「模倣」する抗イディオタイプ抗体を当業者に周知の技法を使用して生成するために利用することができる(例えば、Greenspan & Bona,FASEB J. 7(5):437−444;(1989);及びNissinoff,J. Immunol. 147(8):2429−2438 (1991)を参照)。例えば、ポリペプチドに結合し、ポリペプチド多量体化及び/又は本発明のポリペプチドのリガンドへの結合を競合的に阻害する抗体は、ポリペプチド多量体化及び/又は結合ドメインを模倣し、結果としてポリペプチド及び/又はそのリガンドに結合して中和する抗イディオタイプを生成するために使用することができる。このような中和する抗イディオタイプ又はこのような抗イディオタイプのFabフラグメントは、ポリペプチドリガンドを中和する治療レジメンで使用されることが可能である。例えば、このような抗イディオタイプ抗体は、本発明のポリペプチドを結合するため、及び/又はそのリガンド/受容体を結合するために使用でき、それによってその生物活性を阻止する。
【0072】
本発明の抗体は二重特異性抗体である場合がある。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくは、ヒト抗体又はヒト化抗体である。本発明では、結合特異性の1つは、D因子に向けられることもあり、他方の特異性は、その他何れかの抗原に、好ましくは細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスコード化エンベロープタンパク質、細菌由来タンパク質、又は細菌表面タンパク質等に向けられる場合もある。二重特異性抗体は又、2つ以上の単一ドメイン抗体を含む場合がある。
【0073】
二重特異性抗体を生成する方法は周知である。従来から、二重特異性抗体の組換え生成は、2対の免疫グロブリン重鎖/軽鎖の同時発現に基づき、それら2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537−539 (1983))。免疫グロブリン重鎖と軽鎖の無作為な組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の起こり得る混合体を生成し、そのうちただ1つが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は一般的に、親和性クロマトグラフィーの段階によって達成される。同様の手順については、国際特許第93/08829号(1993年5月13日公開);及びTrauneckerら、EMBO J.,10:3655−3659 (1991)に開示されている。
【0074】
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合することができる。この融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2、及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。融合は、少なくとも融合の1つに軽鎖結合が存在するのに必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有し得る。免疫グロブリン重鎖融合と、必要に応じて免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAを、別の発現ベクターに挿入して、適切な宿主生物に同時形質転換させる。二重特異性抗体を生成する詳細については、例えば、Sureshら、Meth. In Enzym.,121:210 (1986)を参照されたい。
【0075】
ヘテロ抱合体抗体も、本発明によって熟慮される。ヘテロ抱合体抗体は、2つの共有結合した抗体から構成される。このような抗体は、例えば、不必要な細胞に対して免疫系細胞をターゲティングすることが提唱されている(米国特許第4,676,980号)。抗体は、合成タンパク質化学(架橋結合剤を使用するものを含む)での既知の方法を使用して、in vitroで調製される場合があると考えられている。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、又はチオエステル結合を形成することで構築される場合がある。この目的のための好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミダート、並びに例えば、米国特許第4,676,980号に開示されたものが含まれる。更に、IL−13に対する単一ドメイン抗体を生成することも可能である。この技術の例については、国際特許第9425591号においてラクダ科重鎖由来の抗体Igが記載されており、並びに米国特許第20030130496号にファージライブラリー由来の単一ドメインの完全ヒト抗体の単離が記載されている。
【0076】
モノクローナル抗体(MAB)の生成
本発明の一実施形態において、抗D因子等のモノクローナル抗体は、ヒト血漿若しくは尿から精製された未変性のD因子、又は真核細胞系若しくは原核細胞系の何れかによって発現した組換えD因子若しくはそのフラグメントの何れかを有するげっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、及びモルモット)を免疫することによって生成することができる。免疫化に他の動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒト免疫グロブリンを発現する遺伝子導入マウス、及びヒトBリンパ球を移植された重症複合免疫不全(SCID)マウス)を使用することもできる。ハイブリドーマは、Koehler and C. Milstein (Nature,1975: 256: 495−497)に記載の通り、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0及びNS0)で免疫された動物由来のBリンパ球を融合させる従来の手順によって生成することができる。
【0077】
更に、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイ系でヒトBリンパ球由来の組換え単鎖Fv又はFabライブラリーのスクリーニング法によって生成することもできる。所定の抗原に対するMAbの特異性は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタン免疫ブロット法、又は他の免疫化学技法によって試験することができる。補体活性化に関する抗体の阻害活性は、第二経路については非感作ウサギ又はモルモットの赤血球(RBC)を使用して、及び古典的経路については感作ニワトリ又はヒツジのRBCを使用する溶血検定によって評価することができる。陽性ウェルのハイブリドーマは、限界希釈法によってクローン化される。抗体は、D因子等の抗原に対する特異性の特徴付けのために、当該技術分野で周知の検定で精製される。
【0078】
重鎖及び軽鎖FV領域が結合されている単鎖ペプチド結合分子を作製することも可能である。単鎖抗体(「ScFv」)及びそれらの構築方法は、米国特許第4,946,778号に記載されている。或いは、Fabは、同様の手段(M.J. Evans et al,J. Immunol. Meth.,1995;184: 123−138)によって構築され、発現することができる。完全な及び部分的なヒト抗体の全ては、完全なマウスMAbよりも免疫原性が低く、フラグメント及び単鎖抗体も免疫原性が低い。これらの種類の全ての抗原は、従って、免疫応答又はアレルギー反応を誘発する可能性が低い。従って、それらは、ヒトでのin vivo投与では、特に反復投与又は長期投与が必要な場合、完全な動物抗体よりも好適である。更に、より小さな抗体フラグメントは、組織の生物学的利用能の向上に役立つ場合があり、これは急性疾患の徴候においてより良い用量蓄積に極めて重要な場合がある。
【0079】
本発明の好ましい実施形態においては、動物(マウス)可変領域及びヒト定常領域を有するキメラFabが治療的に使用される。Fabが好まれるのは、免疫グロブリン全体よりも小さく、より良い組織浸透をもたらす場合があり;一価分子として、免疫複合体や凝集体を形成する機会が少なく;及び哺乳類系よりもより簡単にスケールアップが可能な微生物系で生成できるためである。
【0080】
補体経路阻害剤の適用
抗体及びそれらの結合フラグメント等の補体阻害剤は、以下を含むがそれらに限定されない種々の経路によって適切な医薬製剤で被験体に投与することができる:静脈内注入、静脈内ボーラス注入、並びに腹腔内、皮内、筋肉内、皮下、鼻腔内、気管内、脊髄内、頭蓋内、及び経口の経路。このような投与は、補体活性剤がD因子等の内在性抗原と結合するのを可能し、従って、C3b,C3a、及びC5aアナフィラトキシン、並びにC5b−9の生成を阻害する。
【0081】
このような抗体と分子の推定される好ましい投与量は、血清の10〜500μg/mlの範囲である。実際の投与量は、最適投与量を決定するための従来の方法(即ち、種々の用量を投与して、どの用量が最も効果的であるかを決定する方法)に従って、臨床試験で決定することができる。
【0082】
補体経路阻害剤は、in vivo補体活性化及び/又は第二補体経路、並びにマクロファージ、好中球、血小板、及びマスト細胞の動員と活性化、浮腫及び組織損傷等に伴う炎症病態を阻害するよう機能できる。これらの阻害剤は、補体系の過剰な活性化又は無制御活性化によって媒介される疾患又は病態の治療のために使用することができる。
【0083】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、又はより大きい多特異性である場合がある。多特異性抗体は、選択抗原の異なるエピトープに特異的である場合もあれば、或いは両方の抗原、並びに異種エピトープ(異種ポリペプチド若しくは固体支持物質等)に特異的である場合もある。例えば、PCT特許公開第WO93/17715号;国際特許第92/08802号;国際特許第91/00360号;国際特許第92/05793号;Tutt,et al,J. Immunol. 147:60−69 (1991);米国特許第4,474,893号;第4,714,681号;第4,925,648号;第5,573,920号;第5,601,819号;Kostelnyら、J. Immunol. 148:1547− 1553 (1992)を参照されたい。
【0084】
本発明で有用な抗体は、補体経路成分(D因子等)のエピトープ又は部分(抗体が認識し、又は特異的に結合する)に関して記述又は特定される場合もある。エピトープ又はポリペプチド部分は、本明細書に記載の通り特定される場合がある(例えば、N末端及びC末端の位置によって、近接するアミノ酸残基の大きさによる)。
【0085】
本発明で有用な抗体は又、交差反応性に関して記述又は特定される場合もある。補体経路成分ポリペプチドを結合し、IL−13と少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、及び少なくとも50%の同一性(当該技術分野で既知であり、本明細書に記載される方法を使用して算出)を有する抗体も、本発明に含まれる。抗D因子抗体も、約10−7M未満、約10−6M未満、又は約10−5M未満のKD(解離定数)で、他のタンパク質(抗D因子抗体が向けられる以外の種由来のD因子抗体等)に結合する場合もある。
【0086】
ベクター及び宿主細胞
別の態様において、本発明は、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクター構築物及びこのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。クローン化及び形質転換のための標準的な技法を、本発明の抗体を発現する細胞系の調製で使用する場合がある。
【0087】
本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを、周知の技法を使用して調製することができる。発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス、又は昆虫の遺伝子由来のもの等の適切な転写調節又は翻訳調節のヌクレオチド配列に機能可能に結合されたヌクレオチド配列を含む。調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、及び/又は転写及び翻訳の開始及び終了を制御する他の適切な配列を含む。調節配列が、適切なポリペプチドのヌクレオチド配列に機能的に関連するとき、ヌクレオチド配列は、「操作可能に結合」される。このように、プロモーターヌクレオチド配列が適切なヌクレオチド配列の転写を制御する場合、プロモーターヌクレオチド配列は、例えば、抗体重鎖配列に操作可能に結合される。
【0088】
更に、抗体の重鎖配列及び/又は軽鎖配列に自然には付随しない適切なシグナルペプチドをコードする配列は、発現ベクターに組み込むことができる。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のためのヌクレオチド配列は、抗体が周縁質の空間に、又はビヒクルに分泌されるようにインフレームでポリペプチド配列と融合される場合がある。所望の宿主細胞において機能しているシグナルペプチドは、適切な抗体の細胞外分泌を亢進させる。シグナルペプチドは、細胞から抗体が分泌されると、ポリペプチドから切断される場合がある。このような分泌シグナルの例は、周知であり、例えば、米国特許第5698435号、米国特許第5698417号、及び米国特許第6204023号に記載のものを含む。
【0089】
本発明で有用な宿主細胞は、以下を含むがこれらに限定されない:組換えバクテリオファージDNA、抗体コード配列を含むプラスミドDNA若しくはコスミドDNAの発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌、枯草菌)等の微生物;抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターを使用して形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス、ピキア);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))に感染した、又は抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は哺乳類細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)、若しくは哺乳類ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を内部に持つ哺乳類細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)。
【0090】
ベクターは、プラスミドベクター、単鎖若しくは二本鎖ファージベクター、又は単鎖若しくは二本鎖RNA若しくはDNAウイルスベクターである場合がある。このようなベクターは、DNA及びRNAを細胞に導入するための周知の方法によってポリヌクレオチドとして細胞に導入される場合もある。ファージ及びウイルスベクターの場合も、ベクターは、感染及び形質導入のための周知の技法によってパッケージされた又は被包されたウイルスとして細胞に導入される場合がある。ウイルスベクターは、複製可能又は複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は一般的に、補完する宿主細胞においてのみ起こる。無細胞翻訳系も、本DNA構築物由来のRNAを使用してタンパク質を生成するために使用される場合がある。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(例えば、PCT特許公開第WO86/05807号;PCT特許公開第WO89/01036号;及び米国特許第5,122,464号を参照)を含む場合があり、抗体の可変ドメインは、重鎖又は軽鎖全体の発現のためにこのようなベクターにクローン化することができる。
【0091】
本発明で宿主細胞として有用な原核生物は、大腸菌及び枯草菌等のグラム陰性又はグラム陽性の生物を含む。原核宿主細胞で使用する発現ベクターは、一般的に、1つ以上の表現型選択可能マーカー遺伝子を含む。表現型選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を付与するか又は独立栄養の必要量を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞のための有用な発現ベクターの例には、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals[スウェーデン ウプサラ])、pGEM1(Promega Biotec[米国ウィスコンシン州マディソン])及びpET(Novagen[米国ウィスコンシン州マディソン])等の市販のプラスミド由来もの、並びにpRSET(Invitrogen Corporation[米国カリフォルニア州カールズバッド])ベクターシリーズが含まれる(Studier,F. W.,J. MoI. Biol. 219: 37 (1991);Schoepfer,R. Gene 124: 83 (1993))。組換え原核生物宿主細胞発現ベクターで一般的に使用するプロモーター配列には、T7(Rosenbergら、Gene 56,125−135 (1987))、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275:615,(1978);及びGoeddelら、Nature 281 :544,(1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl. Acids Res. 8:4057,(1980))、及びtacプロモーター(Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N. Y.)が含まれる。
【0092】
本発明で有用な酵母は、サッカロミセス属、ピキア属、放線菌類、クリベロミセス属由来のものを含む。酵母ベクターは、2μ酵母プラスミドからの複製開始点の配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化の配列、転写終了の配列、及び選択可能なマーカー遺伝子を含むことが多い。酵母ベクターの好適なプロモーター配列は、特に、メタロチオネイン、3−ホスホグリセロール酸キナーゼ(Hitzemanら、J. Biol. Chem. 255:2073,(1980))のプロモーター、又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセロール酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、及びグルコキナーゼ等の他の解糖酵素(Hollandら、Biochem. 17:4900,(1978))を含む。酵母発現で使用する他の適切なベクター及びプロモーターは更に、Fleerら、Gene,107:285−195 (1991)に記載されている。酵母及び酵母形質転換プロトコルに適切な他のプロモーター及びベクターは、当該技術分野で周知である。酵母形質転換プロトコルは周知である。このようなプロトコルの1つは、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. ScL,75:1929 (1978)に記載されている。Hinnenプロトコルは、選択培地でTrp+形質転換体を選択する。
【0093】
哺乳類又は昆虫の宿主細胞培養系も、組換え抗体を発現するために使用される場合がある(例えば、異種タンパク質の生成のためのバキュロウイルス系)。昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を,外来遺伝子を発現するベクターとして使用する場合もある。ウイルスは、ヨトウガ細胞で増殖する。抗体コード配列を、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に個別にクローン化し、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置する場合がある。
【0094】
本発明の抗体の哺乳類発現のためにNS0又はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)の細胞を使用してもよい。哺乳類宿主細胞発現ベクターの転写及び翻訳の制御配列をウイルスゲノムから切除する場合もある。一般的に使用されるプロモーター配列及びエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2型、サルウイルス40(SV40)、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)に由来する。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列は、哺乳類宿主細胞で構造遺伝子配列の発現(例えば、SV40開始点、初期及び後期プロモーター、エンハンサー、スプライス、及びポリアデニル化部位)のための他の遺伝子要素を提供するために使用される場合がある。ウイルス初期及び後期プロモーターは、特に有用である。両方とも、ウイルスの複製開始点も含む場合があるフラグメントとしてウイルスゲノムから容易に得られるためである。哺乳類宿主細胞で使用する一般的な発現ベクターは、市販されている。
【0095】
抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明は更に、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列及びそのフラグメントを含むポリヌクレオチド又は核酸(例えばDNA)を提供する。一般的なポリヌクレオチドは、本明細書に記載の1つ以上のアミノ酸配列を含む抗体鎖をコードするものを含む。本発明は又、ストリンジェントな、又は低いストリンジェントなハイブリダイゼ−ション条件下で本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。
【0096】
当該技術分野で既知の任意の方法によってポリヌクレオチドを得る場合があり、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が決定される。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られる場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチド(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242 (1994)に記載)から構築される場合がある。これは、簡単に言えば、抗体をコードする配列の部分を含むオリゴヌクレオチドの重ね合わせ、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、次いで、結合したオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅からなる合成を伴う。
【0097】
或いは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から生成されることも可能である。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが抗体分子の配列が分っている場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、又は本発明の抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞等の抗体を発現する任意の組織若しくは細胞から生成されたcDNAライブラリー、又は単離した核酸、好ましくは、ポリA+RNA)から、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、又は例えば抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローン化によって化学的に合成される、又は得られることが可能である。PCRによって生成された増幅核酸は、次いで、当該技術分野で周知の任意の方法を使用して複製可能なクローン化ベクターにクローン化される場合がある。
【0098】
抗体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が一旦決定されると、異なるアミノ酸配列(例えば、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を作製するための)を有する抗体を生成するために、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作のための当該技術分野で周知の方法(例えば、組換えDNA法、部位特異的変異誘発、PCR等)を使用して操作されることが可能である(例えば、何れも全体が参考として本明細書で援用される、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.;及びAusubelら、eds.,1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NYに記載の技法を参照)。
【0099】
特定の実施形態において、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列は、CDRの配列を同定するために、周知の方法(例えば、配列の超可変領域を決定するために、他の重鎖及び軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列との比較によって)で調べられることが可能である。日常的な組換えDNA法を使用して、上述の通り1つ以上のCDRをフレームワーク領域内(例えば非ヒト抗体をヒト化するためにヒトフレームワーク領域内)に挿入することができる。フレームワーク領域は、天然のフレームワーク領域又はコンセンサスフレームワーク領域、好ましくは、ヒトフレームワーク領域である場合がある(ヒトフレームワーク領域の一覧については、例えば、Chothiaら、J. MoI. Biol. 278: 457−479 (1998)を参照)。好ましくは、フレームワーク領域とCDRの組み合わせによって生成されるポリヌクレオチドは、特に本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体をコードする。上述の通り、好ましくは、1つ以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内で行われることが可能であり、好ましくは、アミノ酸置換は、抗体のその抗原との結合を向上させる。更に、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如している抗体分子を生成するために、このような方法を使用して、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸の置換又は欠失を行うことが可能である。ポリヌクレオチドに対する他の改変は、本発明によって包含され、かつ当該分野の技量の範囲内である。
【0100】
更に、「キメラ抗体」の生成のために開発された、適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングする技法(Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. 81:851−855 (1984);Neubergerら、Nature 312:604−608 (1984);Takedaら、Nature 314:452−454 (1985))を使用することができる。上述の通り、キメラ抗体は分子であり、その種々の部分がマウスMAb及びヒト免疫グロブリン定常領域(例えばヒト化抗体)由来の可変領域を有する動物等の異なる種に由来する。
【0101】
或いは、単鎖抗体の生成について記載される技法(米国特許第4,946,778号;Bird,Science 242:423−42 (1988);Hustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883 (1988);及びWardら、Nature 334:544−54 (1989))を、単鎖抗体を生成するために適応させることができる。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋によって結合することによって形成され、単鎖ポリペプチドが結果として生じる。大腸菌の機能的なFVフラグメントを構築する技法も使用される場合がある(Skerra,ら、Science242:1038−1041 (1988))。
【0102】
抗体生成方法
本発明の抗体は、当該技術分野で既知の何れかの抗体合成法によって、特に、化学的合成によって、又は好ましくは組換え発現法によって生成することができる。
【0103】
本発明の抗体、又はそのフラグメント、誘導体、若しくは類似体(例えば、本発明の抗体の重鎖若しくは軽鎖又は本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、抗体又はその抗体のフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。抗体分子をコードするポリヌクレオチドを一旦採取すれば、抗体の生成用ベクターは、組換えDNA法によって生成されることが可能である。発現ベクターは、抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳の制御シグナルを含めて構築される。これらの方法は、例えば、in vitro組換えDNA法、合成法、及びin vivo遺伝的組換えを含む。
【0104】
発現ベクターは、従来の技法によって宿主細胞に移され、形質移入された細胞は、次いで、本発明の抗体を生成するために従来の技法によって培養される。本発明の一態様において、重鎖と軽鎖の両鎖をコードするベクターは、以下の詳細のように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞で同時発現される場合がある。
【0105】
種々の宿主発現ベクター系を利用して、上述の通り本発明の抗体分子を発現させる。このような宿主発現系は、目的のコード配列を生成して、その後精製することが可能なビヒクルを意味するが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換若しくは形質移入された場合、本発明の抗体分子をin situで発現することが可能な細胞も意味する。大腸菌等の細菌性細胞及び真核細胞は、組換え抗体分子の発現、特に組換え抗体分子全体の発現のために、一般的に使用される。ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間初期遺伝子プロモーター要素等のベクターと関連して、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳類細胞は、抗体にとって効果的な発現系である(Foeckingら、Gene 45:101 (1986);Cockettら、Bio/Technology 8:2 (1990))。
【0106】
又、挿入配列の発現を調節し、又は所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングする宿主細胞株が選択される場合がある。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要である場合がある。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的で特異的な機構を有する。適切な細胞系又は宿主系は、発現される外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実にするために選択される場合がある。そのために、遺伝子産物の一次転写物、グリコシル化、及びリン酸化の適当なプロセシングのために細胞機構を有する真核宿主細胞を使用する場合がある。このような哺乳類の宿主細胞には、CHO、COS、293、3T3、又は骨髄腫細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
組換えタンパク質の長期的、高収率生産のために、安定の発現が好ましい。例えば、安定して抗体分子を発現する細胞系を操作することが可能である。ウイルスの複製開始点を含む発現ベクターを使用するよりはむしろ、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)及び選択可能なマーカーによって制御されるDNAを使用して宿主細胞を形質転換できる。外来DNAの導入後に、操作した細胞を濃縮培地で1〜2日間増殖させ、次いで、選択培地に切り換える場合がある。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、その選択に対する耐性を与え、且つ細胞がその染色体にプラスミドを安定して組み込み、増殖して細胞増殖巣を形成することを可能する。続いて、これをクローン化して、細胞系へと拡大させることができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞系を操作するために有利に使用され得る。このような操作される細胞系は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する化合物のスクリーニング及び評価で特に有用である場合がある。
【0108】
幾つかの選択系が使用される場合があり、これには、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(Szybalska & Szybalski,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))、及びアデニンホスホリボシル転移酵素(Lowyら、Cell 22:817 (1980))が含まれるが、これらに限定されることはなく、それぞれ遺伝子がtk、hgprt、又はaprt細胞で利用され得る。又、以下の遺伝子についての選択の基礎として、代謝拮抗物質耐性を使用することができる:メトトレキサートに耐性を与えるdhfr(Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci.. USA 77:357 (1980);O’Hareら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に耐性を与えるneo(Wu and Wu,Biotherapy 3:87−95 (1991));及びハイグロマイシンに耐性を与えるhygro(Santerreら、Gene 30:147 (1984))。当該技術分野で周知の組換えDNA法の方法は、所望の組換えクローンを選択するために日常的に適用される場合があり、このような方法は、例えば、全体が参考として本明細書で援用される、Ausubelら、(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY (1993);Kriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY (1990);and in Chapters 12 and 13,Dracopoliら、(eds),Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY (1994);Colberre−Garapinら、J. MoI. Biol. 150:1 (1981)に記載されている。
【0109】
抗体分子の発現レベルは、ベクターの増幅によって増加させることができる(レビューについては、Bebbington and Hentschel,“The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells” (DNA Cloning,Vol.3. Academic Press,New York,1987)を参照)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養中に存在する阻害剤の濃度を上昇させると、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅される領域は、抗体遺伝子と関連するために、抗体の生成も増加する(Crouseら、Mol.Cell.Biol.3:257 (1983))。
【0110】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、即ち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクターと軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターで同時導入される場合がある。これらの2つのベクターは、重鎖及び軽鎖のポリペプチドの同等の発現を可能にする同一の選択可能なマーカーを含み得る。或いは、重鎖及び軽鎖の両ポリペプチドをコードし、発現できる単一ベクターを使用できる。このような状況では、有毒な遊離重鎖の過剰を回避するために軽鎖を重鎖の前に配置する必要がある(Proudfoot,Nature 322:52 (1986);Kohler,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2197 (1980))。重鎖及び軽鎖のコード配列は、cDNA又はゲノムDNAを含む場合がある。
【0111】
一旦、本発明の抗体分子が動物によって生成される、化学合成される、又は組換えで発現されると、その抗体分子は、当該技術分野で既知の任意の免疫グロブリン分子精製法(例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーの後の特異的抗原に対する親和性による)、遠心分離、示差溶解性、又はタンパク質精製のための他の如何なる標準的な技法によって)で精製される場合がある。更に、本発明の抗体又はそのフラグメントは、精製を促進するために、本明細書に記載の、又は当該技術分野で既知の異種のポリペプチド配列と融合することができる。
【0112】
本発明は、ポリペプチドに組換えで融合された、又は化学的に抱合された(共有結合的及び非共有結合的の両抱合を含む)抗体を包含する。本発明の融合又は抱合抗体は、精製を容易にするために使用され得る。例えば、全体が参考として本明細書で援用される、Harborら、,前掲、並びにPCT特許公開第WO93/21232号;欧州特許第439,095号;Naramuraら、Immunol. Lett. 39:91−99 (1994);米国特許第5,474,981号;Gilliesら、Proc. Natl. Acad. Sci. 89:1428−1432 (1992);Fellら、J. Immunol. 146:2446−2452(1991)を参照されたい。
【0113】
更に、本明細の抗体又はそのフラグメントは、精製を促進するために、ペプチド等のマーカー配列に融合され得る。好ましい実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、市販されている多数の中でも特に、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,91311)で提供されるタグ等のヘキサ−ヒスチジンペプチドである。例えば、Gentzら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821−824 (1989)に記載の通り、ヘキサ−ヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製法を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、「HA」タグが含まれるが、これに限定されない。このタグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質(Wilsonら、Cell 37:767 (1984))由来のエピトープ及び「flag」タグに相当する。
【0114】
抗体の診断用途
本発明の抗体は、共有結合が抗原への結合に干渉しないように修飾される(即ち、抗体への如何なる種類の分子の共有結合によって)誘導体を含む。例えば、制限の目的ではなく、抗体誘導体は、例えば、ビオチン化、HRP、又はその他何れかの検出可能な部分によって修飾された抗体を含む。
【0115】
本発明の抗体は、例えば、in vitro及びin vivoの両診断方法を含むD因子を検出するために使用され得るが、それらに限定されない。例えば、抗体は、眼の病態又は疾患を患う被験体の眼から得られる生体試料でD因子レベルを質的且つ量的に測定するための免疫測定法での有用性を有する。一般的に、免疫測定法については、例えば、全体が参考として本明細書で援用される、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed. 1988)に記載されている。
【0116】
以下に更に詳細に考察する通り、本発明の抗体は、単独で、又は他の組成物と組み合わせて使用され得る。抗体は更に、N若しくはC末端で異種ポリペプチドに組換えで融合される場合もあれば、或いはポリペプチド若しくは他の組成物に化学的に抱合(共有結合的又は非共有結合的抱合を含む)される場合もある。例えば、本発明の抗体は、検出分析でラベルとして有用な分子に組換えで融合又は抱合され得る。
【0117】
本発明は、更に、罹患した個体の眼の補体経路成分のレベルを検出するために診断薬に抱合される抗体又はそのフラグメントの使用を包含する。抗体は、例えば、所定の治療レジメンの有効性を決定する等の臨床試験手順の一部として、眼の病態又は疾患の発症又は進行をモニタリングするために診断において使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質にカップリングすることによって促進させることが可能である。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々のポジトロン放出断層撮影法を使用するポジトロン放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンを含む。検出可能な物質は、当該技術分野で既知の技法を使用して中間体(例えば、当該技術分野で既知のリンカー等)を介して、抗体(又はそのフラグメント)に直接的若しくは間接的にカップリングまたは抱合される場合がある。本発明に従って診断法としての用途のために抗体に抱合することができる金属イオンに関しては、例えば米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素の例は、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含む;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、又はフィコエリトリンを含む;発光物質の例は、ルミノールを含む;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを含み;並びに適切な放射性物質は、125I、131I、111In、又は−99Tcを含む。
【0118】
抗体は又、標的の抗原の免疫測定法又は精製に特に有用である固体支持体に結合される場合がある。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンを含むが、これらに限定されない。
【0119】
D因子に特異的に結合する標識化抗体、及びその誘導体と類似体は、D因子の異常発現及び/又は活性に関連する疾患、障害、及び/又は病態の検出、診断、又はモニタリングを行う診断目的で使用することができる。本発明は、(a)D因子に特異的な本発明の1つ以上の抗体を使用して個体の細胞又は体液内のD因子の発現を検定することと、(b)標準的発現レベルと比較して検定したD因子発現レベルの増加又は減少が異常発現を示す、遺伝子発現のレベルを標準遺伝子発現レベルと比較することを含む、D因子の異常発現の検出を提供する。
【0120】
抗体は、試料(例えば、眼の流体)中のD因子の存在及び/又はレベルを検出するために使用され得る。検出方法は、試料を抗D因子抗体に接触させることと、その試料に結合する抗体の量を測定することを含む場合がある。
【0121】
本発明は、(a)本発明の1つ以上の抗体を使用して個体の細胞又は体液内のD因子の発現を検定することと、(b)標準発現レベルと比較して検定した遺伝子発現レベルの増加又は減少が特定の障害を示す、遺伝子発現のレベルを標準遺伝子発現レベルと比較することを含む、障害を診断するための診断検定を提供する。
【0122】
本発明の抗体は、当業者に既知の古典的な免疫組織学的方法を使用して生体試料のタンパク質レベルを検定するために使用することができる(例えば、Jalkanen,ら、J. Cell. Biol. 101:976−985 (1985);Jalkanen,ら、J. Cell. Biol. 105:3087−3096 (1987)を参照)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法は、酵素結合吸着検定法(ELISA)及び放射免疫測定法(RIA)等の免疫測定法を含む。適切な抗体検定標識は、当該技術分野で既知であり、ブドウ糖酸化酵素等の酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、及びテクネチウム(99Tc)等の放射性同位元素;ルミノール等の発光標識;並びにフルオレセインやローダミン、及びビオチン等の蛍光標識を含む。
【0123】
本発明の一態様は、被験体の、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトの眼の補体活性化に関連する疾患又は障害の検出及び診断である。一実施形態において、診断は、a)患者の眼から試料を採取することと;b)C3a又はC3b又はC5a等の補体成分のレベルを測定することとを含む。バックグラウンドのレベルは、検出した標識化分子の量を特定の系で以前に決定した基準値と比較することを含む種々の方法で決定することができる。
【0124】
ある実施形態において、疾患又は障害のモニタリングは、疾患又は障害を診断する方法を繰り返すこと、例えば初期診断から1ヵ月後、初期診断から6ヵ月後、初期診断から1年後等によって実施される。
【0125】
補体経路阻害剤の治療的使用
補体経路阻害剤は、加齢性黄斑変性症等の眼疾患を患う被験体に投与することができる。これに抱合された治療的部分の有無にかかわらず、抗体は治療として使用することができる。本発明は、補体経路の活性化に関与する眼疾患、障害、又は病態を治療するために、前述の阻害剤を動物、哺乳類、又はヒトに投与することを含む、補体経路阻害剤、特に抗体の使用を対象とする。動物又は被験体は、例えば補体に関連する障害等、特定の障害と診断された動物等、特定の治療を必要とする動物である場合がある。D因子に対して向けられた抗体は、第二補体経路を阻害することに有用であり、従って、補体経路に関連する障害又は病態を阻害することに有用である。特に、本発明は、AMD、糖尿病性網膜症、及び脈絡膜血管新生の治療に関する。例えば、本発明の1つの抗体又は複数の抗体、本抗体の混合物、又は種々の供給源からの他の分子と組み合わせて治療的に許容される用量で投与することによって、補体経路成分の活性化の影響は、治療される哺乳類において低下又は除去される場合がある。
【0126】
本発明の治療化合物は、以下を含むが、これらに限定されない:本発明の抗体(本明細書に記載の通り、そのフラグメント、類似体、及び誘導体を含む)及び以下に記述するように本発明の抗体をコードする核酸(本明細書に記載の通り、そのフラグメント、類似体、及び誘導体並びに抗イディオタイプの抗体を含む)。本発明の抗体は、補体経路の異常発現及び/又は補体経路、特に第二補体経路活性、及び特にD因子に関連する疾患、障害、又は病態の治療、阻害、予防のために使用することができる。D因子の異常発現及び/又は活性に関連する疾患、障害、又は病態の治療及び/又は予防は、これらの疾患、障害、又は病態に関連する少なくとも1つの症状を軽減することを含むが、これに限定されない。本発明の抗体は、本明細書に記載の通り当該技術分野で既知の薬学的に許容される組成物で提供される場合がある。
【0127】
補体経路の異常発現及び/又は活性化に関連する疾患又は障害の治療、阻害、及び予防に効果的である抗体の量は、標準的な臨床技法によって決定することができる。抗体は、疾患に基づく一貫した治療レジメン(例えば疾患の状態を改善させるために1日から数日にわたる単回若しくは少数回の投与、又は眼疾患若しくは病態を予防するために長期間にわたる定期的投与)で投与することができる。
【0128】
更に、in vitro検定は、最適な用量範囲を確認するのを助けるために、場合により使用される場合がある。製剤で使用される正確な用量は又、投与経路及び疾患又は障害の重症度に依存し、且つ開業医の判断並びに各患者の状況に従って決定されなければならない。有効用量は、in vitro又は動物モデル試験系由来の用量反応曲線から推定される場合がある。
【0129】
抗体に関して、患者に投与される用量は一般的に、患者の体重の0.1mg/kg〜100mg/kgである。好ましくは、患者に投与される用量は、患者の体重の0.1mg/kg〜20mg/kgの範囲であり、より好ましくは、患者の体重の1mg/kg〜10mg/kgの範囲である。通常、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答のため、ヒト体内で、他の種由来の抗体よりも長い半減期を有する。従って、より低い用量及び少ない回数のヒト抗体投与が可能になることが多い。更に、本発明の抗体の投与用量と回数は、例えば、脂質化等の修飾によって抗体の摂取及び組織の透過(例えば脳内に)を向上させることで減少する場合がある。好ましい態様において、抗体は実質的に精製される(例えば、その効果を限定する又は望ましくない副作用を引き起こす物質が実質的に存在しない)。
【0130】
本発明の抗体を投与するために、注射、例えばリポソームのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、化合物を発現できる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、J. Biol. Chem. 262:4429−4432 (1987)を参照)、レトロウイルス又は他のベクター等の一部としての核酸の構築を含む、種々の送達系が知られており、且つ使用することができる。
【0131】
抗体は、任意の許容される方法で哺乳類に投与され得る。導入の方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、吸入、及び経口の経路を含むが、これらに限定されない。しかしながら、本発明において好ましい投与経路は眼内投与である。
【0132】
投与は、全身的又は局所的であり得る。更に、本発明の治療用の抗体又は組成物を、脳室内及び髄腔内の注射を含めた任意の適切な経路によって中枢神経系に導入することが望ましい場合もあり、脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバー等のリザーバーに結合した脳室内カテーテルによって促進され得る。
【0133】
別の実施形態において、抗体は、ベシクルで、特にリポソームで送達することができる(Langer,Science 249:1527−1533 (1990);Treatら、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler (eds.),Liss,New York,pp. 353−365 (1989);Lopez−Berestein,ibid., pp. 317−327;see generally ibid.を参照;通常は同書を参照)。
【0134】
更に別の実施形態において、抗体は徐放系で送達することができる。一実施形態においては、ポンプを使用できる(Langer,前掲;Sefton,CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987);Buchwaldら、Surgery 88:507 (1980);Saudekら、N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照)。別の実施形態においては、ポリマー材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise (eds.),CRC Pres.,Boca Raton,FIa. (1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball (eds.),Wiley,New York (1984);Ranger and Peppas,J.,Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)を参照;又、Levyら、Science 228:190 (1985);Duringら、Ann. Neurol. 25:351 (1989);Howardら、J. Neurosurg. 71:105 (1989)も参照)。更に別の実施形態において、徐放系は、治療標的に近接して配置することができる。
【0135】
本発明は又、本方法で有用な薬学的組成物も提供する。このような組成物は、治療的に有効量の抗体及び生理学的に許容される担体を含む。特定の実施形態において、「生理学的に許容される」という用語は、動物での使用、及びより詳細にはヒトでの使用を米国連邦政府又は州政府の監督官庁によって認可されている、又は米国薬局方若しくは他の一般的に承認されている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。このような生理学的担体は、石油、動物、植物若しくは合成起源の油(例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等)のそれらを含む水及び油等の無菌液体であってよい。薬学的組成物が静脈内に投与されるとき、水は好ましい担体である。生理食塩水並びにブドウ糖及びグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射剤のために使用され得る。適切な医薬品賦形剤は、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。所望であれば、組成物は又、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤等の剤形を取り得る。組成物は、従来の結合剤及びトリグリセリド等の担体と共に座薬として製剤化され得る。経口製剤は、医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含み得る。好適な担体の例については、E.W. Martinの“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。このような組成物は患者に適切な投与形態を提供するために、適切量の担体と共に、好ましくは精製された形状で、有効量の抗体を含有する。製剤は投与モードに適合しなくてはならない。
【0136】
一実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適応した薬学的組成物として通常の手順に従って製剤化される。一般的に、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水溶液である。必要に応じて、組成物は又、可溶化剤及び注入部位での疼痛を和らげるためにリグノカイン等の局所麻酔剤を含む場合がある。一般的に、成分は、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又は包装した小袋(sachette)等の密封した容器に凍結乾燥粉末又は無水濃縮製剤として単位剤形中に個別に或いは混合して供給される。組成物が点滴で投与される場合、組成物は、無菌の医薬品等級の水又は生理食塩水を含む点滴ボトルで調剤され得る。組成物が注射で投与される場合、投与前に成分が混合され得るように注射用無菌水又は生理食塩水のアンプルを供給することも可能である。
【0137】
本発明は又、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分を満たした1つ以上の容器を含む医薬品パック又はキットを提供する。このような容器に関連して、場合により、通知は、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用、及び販売を規制する政府機関によって規定された形式であってよく、その通知は、ヒトに対する投与のための製造、使用、又は販売について政府機関による承認を反映している。
【0138】
更に、本発明の抗体は、異種ポリペプチド、薬物、放射性ヌクレオチド、又は毒素などの種々のエフェクター分子と抱合され得る。例えば、PCT特許公開第92/08495号;国際特許第91/14438号;国際特許第89/12624号;米国特許第5,314,995号;及び欧州特許第396,387号を参照されたい。抗体又はそのフラグメントは、細胞毒(例えば、細胞増殖抑制剤又は細胞殺傷剤)、治療剤、又は放射性金属イオン(例えば、213Bi等のα放射体)等の治療的部分に抱合される場合がある。細胞毒又は細胞毒性薬は、細胞に有毒な任意の薬剤を含む。例としては、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメシン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストテロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又は同族化合物が含まれる。治療剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロソスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)。
【0139】
抗体にこのような治療的部分を抱合させる技法は、周知の技法であり、例えば、Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら、(eds.),pp. 243−56 (Alan R. Liss,Inc. 1985);Hellstromら、“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.);Robinsonら、(eds.),pp. 623−53 (Marcel Dekker,Inc. 1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”,in Monoclonal Antibodies’84: Biological And Clinical Applications;Pincheraら、(eds.),pp. 475−506 (1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy;Baldwinら、(eds.),pp. 303−16 (Academic Press 1985);及びThorpeら、“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol. Rev. 62:119−58 (1982)を参照されたい。或いは、抗体は、抗体ヘテロ抱合体を形成するために、第二抗体に抱合することもできる(例えば、米国特許第4,676,980号中のSegalを参照)。
【0140】
本発明の抱合体は、所定の生物学的応答を修飾するために使用することができ、治療剤又は薬物部分は、古典的な化学治療剤に限定されると解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質又はポリペプチドである場合がある。このようなタンパク質は、例えば、毒素(アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素等);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、α―インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アポトーシス剤(例えば、TNF−α、TNF−β、AIMI(国際特許第WO97/33899号を参照)、AIMII(国際特許公開第WO97/34911号を参照)、Fasリガンド(Takahashiら、Int. Immunol.,6:1567−1574 (1994))、VEGI(国際特許公開第WO99/23105号を参照)、血栓溶解剤又は抗血管新生薬(例えば、アンジオスタチン若しくはエンドスタチン));又は生物学的応答修飾因子(例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、又は他の成長因子を含む。
【0141】
抗体に基づく遺伝子治療
本発明の別の様態において、抗体又はその結合フラグメントをコードする配列を含む核酸は、遺伝子治療を手段とする補体経路の異常発現及び/又は活性化に関連する疾患又は障害を治療、阻害、又は予防するために投与される。遺伝子治療とは、発現された又は発現可能な核酸の被験体への投与によって実施される治療を指す。本発明の本実施形態において、核酸は、治療効果を媒介するコードタンパク質を生成する。利用可能な遺伝子治療の任意の方法は、本発明に従って使用され得る。一般的な方法を以下に記述する。
【0142】
遺伝子治療方法の一般的なレビューについては、Goldspielら、Clinical Pharmacy 12:488−505 (1993);Wu and Wu, Biotherapy 3:87−95 (1991);Tolstoshev,Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573−596 (1993);Mulligan,Science 260:926−932 (1993);及びMorgan and Anderson,Ann. Rev. Biochem. 62:191−217 (1993);May,TIBTECH 11(5):155−215 (1993)を参照されたい。
【0143】
一態様において、化合物は抗体をコードする核酸配列を含み、核酸配列は、適切な宿主において、抗体又はそのフラグメント若しくはキメラタンパク質若しくは重鎖若しくは軽鎖を発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸配列は、抗体コード領域に操作可能に結合したプロモーターを有し、プロモーターは、誘導性または構成的であり、且つ場合により組織特異的である。
【0144】
別の特定の実施形態においては、核酸分子が使用され、そこで抗体コード配列及びその他何れかの所望の配列が、ゲノム内の所望の部位で相同組換えを促進する領域に隣接され、それによって抗体をコードする核酸の染色体内発現を提供する(Koller and Smithies,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932−8935 (1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438 (1989))。特定の実施形態において、発現される抗体分子は単鎖抗体である;或いは、核酸配列は抗体の重鎖及び軽鎖の両方又はそのフラグメントをコードする配列を含む。
【0145】
患者への核酸の送達は、患者が核酸又は核酸を運ぶベクターに直接的に曝されている直接的な場合もあれば、細胞が最初にin vitroで核酸を導入され、次いで患者に移植される間接的な場合もある。これらの2通りの手法は、それぞれin vivo遺伝子治療又はex vivo遺伝子治療として知られている。
【0146】
特定の実施形態において、核酸配列は、in vivoで直接的に投与され、そこで発現され、コードされる生成物を生成する。これは、当該技術分野で既知の多数の方法の何れかによって、例えば核酸配列を適切な核酸配列ベクターの一部として構築し、それらが細胞内になるように投与することによって;例えば欠損した若しくは弱毒化したレトロウイルス若しくは他のウイルスのベクターを使用する感染によって(米国特許第4,980,286号を参照);又は裸のDNAを直接注入することによって;又は微粒子照射(例えば遺伝子銃、Biolistic、Dupont)の使用によって;又は脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクト剤で被覆することによって;リポソーム、微粒子、若しくはマイクロカプセルへのカプセル化;又は細胞核に侵入することが知られるペプチドにそれらを結合させて投与することによって;受容体媒介エンドサイトーシスに供するリガンドにそれを結合させて投与することによって(例えば、Wu and Wu,J. Biol. Chem. 262:4429−4432 (1987)を参照)(受容体を特異的に発現する細胞の種類を標的にするために使用され得る)等で達成され得る。別の実施形態においては、核酸リガンド複合体を形成することができ、この複合体で、リガンドは、エンドソームを破壊するために、膜融合ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソームの分解を回避すること可能にする。更に別の実施形態において、核酸は、in vivoで特異的な受容体による細胞特異的な摂取及び発現に向けることができる(例えば、PCT特許公開第WO92/06180号;国際特許第92/22635号;国際特許第92/20316号;国際特許第93/14188号;国際特許第93/20221号を参照)。或いは、核酸は、相同組換えによって細胞内に導入され、発現のために宿主細胞DNA内に取り込むことができる(Koller and Smithies,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932−8935 (1989);Zijlstraら、Nature 342:435−438 (1989))。
【0147】
特定の実施形態においては、本発明の抗体をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる(Millerら、Meth. Enzymol. 217:581−599 (1993)を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正確なパッケージング及び宿主細胞DNAへの組込みに必要な成分を含む。遺伝子治療で使用される抗体をコードする核酸配列は、患者への遺伝子送達を促進する1つ以上のベクターにクローン化される。レトロウイルスベクターについての詳細については、Boesenら、Biotherapy
6:291−302 (1994)に記載されており、この文献では、化学療法に対する幹細胞の耐性を高めるために、造血幹細胞にmdrl遺伝子を送達するレトロウイルスベクターの使用について記載されている。遺伝子治療でレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献は、以下の通りである:Clowesら、J. Clin. Invest. 93:644−651 (1994);Kiemら、Blood 83:1467−1473 (1994);Salmons and Gunzberg,Human Gene Therapy 4:129−141 (1993);及びGrossman and Wilson,Curr. Opin. Gen. and Dev. 3:110−114 (1993)。
【0148】
アデノウイルスも本発明で使用される場合がある。アデノウイルスは、抗体を気道上皮に送達するために本発明では特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは、自然に気道上皮に自然感染する。アデノウイルスに基づく送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞を感染することができるという利点を有する。Kozarsky and Wilson,Curr. Opin. Gen. Dev. 3:499−503 (1993)には、アデノウイルスに基づく遺伝子治療のレビューが示されている。Boutら、Human Gene Therapy 5:3−10 (1994)は、遺伝子をアカゲサルの気道上皮に移入させるためにアデノウイルスベクターの使用を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用の他の例については、以下に記載されている:Rosenfeldら、Science 252:431− 434 (1991);Rosenfeldら、Cell 68:143−155 (1992);Mastrangeliら、J. Clin. Invest.91:225−234 (1993);PCT特許公開第WO94/12649号;及びWang,ら、Gene Therapy 2:775−783 (1995)。アデノ随伴ウイルス(AAV)の使用も、遺伝子治療で提供されてきた(Walshら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289−300 (1993);米国特許第5,436,146号;第6,632,670号;第6,642,051号)。
【0149】
遺伝子治療への別の手法は、電気穿孔法、リポフェクション法、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、又はウイルス感染等の方法によって、組織培養で細胞に遺伝子を導入することを含む。通常、移入方法は、細胞に選択可能なマーカーを移入させることを含む。細胞は、次いで、選択下に置かれ、移入される遺伝子を取り込んで発現している細胞を単離する。それらの細胞は、次いで、患者に送達される。
【0150】
本実施形態において、核酸は細胞に導入され、結果として生じた組換え細胞をin vivoで投与する。このような導入は、以下の方法を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の任意の方法によって実施され得る:形質移入法、電気穿孔法、微量注入法、核酸配列を含むウイルス若しくはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介による遺伝子導入、微小核体媒介による遺伝子導入、スフェロプラスト融合等。当該技術分野では、外来遺伝子を細胞に導入するための多数の技法が知られており(例えば、Loeffler and Behr,Meth. Enzymol.217:599−618 (1993);Cohenら、Meth. Enzymol.217:618−644 (1993);Cline,Pharmac. Ther.29:69−92m (1985)を参照)、受容細胞の必要な発生機能及び生理機能が破壊されないという条件で、本発明に基づき使用される場合がある。核酸が細胞によって発現できるよう、好ましくは、遺伝性であり且つその子孫細胞によって発現できるように、技法は、細胞への安定した核酸の移入を提供しなければならない。
【0151】
結果として生じる組換え細胞は、当該技術分野で既知の種々方法によって患者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は前駆細胞)は、好ましくは静脈内に投与される。使用を想定した細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、当業者によって決定することができる。
【0152】
核酸が遺伝子治療の目的で導入され得る細胞には、任意の所望の利用可能な細胞の種類が含まれ、これには、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、血液細胞(Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球等)、種々の幹細胞若しくは前駆細胞、特に、造血幹細胞若しくは前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝等から採取)が含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
一実施形態において、遺伝子治療に使用され細胞は、患者自身のものである。本発明の抗体をコードする核酸配列は、それらが細胞又はその子孫細胞によって発現できるように細胞に導入され、次いで組換え細胞が治療効果のためにin vivoで投与される。特定の実施形態においては、幹細胞又は前駆細胞が使用される。in vitroで単離、維持され得る任意の幹細胞及び/又は前駆細胞は、本発明の本実施形態に従って使用できる可能性がある(例えば、PCT特許公開第WO94/08598号;Stemple and Anderson,Cell 71:973−985 (1992);Rheinwald,Meth. Cell Bio.21A:229 (1980);及びPittelkow and Scott,Mayo Clinic Proc. 61 :771 (1986)を参照)。
【0154】
siRNAによる補体経路成分発現の調節
小分子又は抗体等の従来の拮抗薬は効果が弱い可能性がある場合、遺伝子発現を調節する研究においてsiRNAがツールとして有用であることが判明した(Shi Y.,Trends in Genetics 19(1):9−12 (2003))。21〜23のヌクレオチドの長さであるin vitroで合成された二本鎖RNAは、干渉RNA(iRNA)として作用でき、遺伝子発現を特異的に阻害できる(Fire A.,Trends in Genetics 391;806−810 (1999))。これらのiRNAは、それらの標的RNAの分解を媒介することによって作用する。iRNAは、長さが30ヌクレオチド未満であるので、それらは細胞抗ウイルス防御機構を誘発しない。このような機構は、インターフェロン産生、及び宿主細胞タンパク質合成の通常のシャットダウンを含む。実際的に、siRNAは合成され、次いでDNAベクターにクローン化されることが可能である。このようなベクターは、形質移入されることが可能であり、高レベルでsiRNAを発現させることができる。高レベルのsiRNA発現は、「ノックダウン」を行うために、又は細胞内で生成されるタンパク質の量を著しく低下させるために使用される。従って、タンパク質の過剰発現が、癌等の障害に関連すると信じられている実験で有用である。siRNAは、抗原の細胞産生を制限することによって補体経路タンパク質の有用な拮抗薬であり、補体カスケードの活性化を阻害する。
【0155】
ペプチド模倣薬及び小分子
ペプチドをペプチド模倣薬と置換し得ることは、通常の当業者に周知のことである。ペプチド模倣薬は、それらの向上した生物学的利用率及びタンパク質分解酵素からの攻撃の相対的欠如のために、通常、治療薬としてペプチドより好ましい。分子モデリングの技法は、本明細書に開示されるペプチドに関連した補体の構造を模倣するペプチド模倣薬を設計するために使用される場合がある。従って、本発明は又、補体経路タンパク質の構造分析から得たデータに基づいて同定され得るペプチド模倣薬及び他の鉛化合物を提供する。潜在的なD因子類似体は、GRAM、DOCK、又はAUTODOCK等のドッキングプログラムを使用するコンピュータモデリングの使用によって試験される場合がある。この方法は、潜在的なD因子類似体のコンピュータフィッティングを含む。コンピュータプログラムは又、潜在的な結合部位への類似体の誘引、反発、及び立体障害を推定するために使用することもできる。通常、適合が密接であればあるほど(例えば、立体障害が低くなればなるほど、及び/又は誘引力は大きくなる)、これらの特性がより密接な結合定数と整合するために、潜在的な薬物は強力になる。更に、潜在的な薬物の設計で特異性がより多くなればなるほど、薬物はその発現系の他の特性に干渉しない可能性が高い。これは、他のタンパク質との無用な相互作用が起因する潜在的な副作用を最小限に抑える。
【0156】
最初に、潜在的なD因子類似体は、例えば、組換えバクテリオファージによって生成される無作為なペプチドライブラリー又は化学ライブラリーをスクリーニングすることによって得られる。この方法で選択される類似体リガンドは、次いで、1つ以上の有望な潜在的なリガンドが同定されるまで、コンピュータモデリングプログラムによって系統的に修飾されることが可能である。
【0157】
行われ得る無数の本質的に無作為の化学修飾とは対照的に、このようなコンピュータモデリングは、有限数の合理的な化学修飾の選択を可能にし、そのうちの何れか1つが有用な薬物をもたらす可能性がある。従って、本明細書に開示される三次元構造及びコンピュータモデリングの使用によって、数多くの化合物は迅速に選別され、多くの時間と労力を要する無数の化合物の合成を行わずに、可能性のあるわずかな数の候補化合物を決定することができる。
【0158】
一旦、潜在的なD因子類似体が同定されると、Merck、Glaxo Welcome、Bristol Meyers Squib、Monsanto/Searle、Eli Lilly、Novartis and Pharmacia UpJohnを含めた大手の化学企業から市販されている化学ライブラリーから選択されてもよく、或いは新規に可能性のあるリガンドが合成される。上記のように、特異的な化合物の1つ又は比較的小さい基でも新規合成は、薬物の設計の分野では道理にかなっている。
【0159】
或いは、抗D因子抗体の可変領域の分子構造に基づいて、抗体の結合領域の分子構造を模倣し、D因子活性を阻害する小分子を生成して選別するために、分子モデリング及び合理的な分子設計を使用できる。これらの小分子はペプチド、ペプチド模倣薬、オリゴヌクレオチド、又は有機化合物であり得る。
【実施例】
【0160】
滲性AMDのモデルとしてのレーザー誘発脈絡膜血管新生(CNV)における抗体の有効性
抗体の眼内注入の有効性を、上記のKrzystolik MGら、(Arch Ophthalm. 2002;120: 338−346)による記述のようにレーザー損傷CNVモデルで試験できる。このモデルは、AMDの予防及び/又は回復の任意の候補薬の有効性を試験するために使用され得る。このレーザー誘発CNVモデルは、アルゴングリーンレーザーを使用して、サルの黄斑にCNVを誘発する。CNV病変の数と有意な血管造影漏出の間には良好な相関関係がある。
【0161】
この試験は2つの相からなる:第1相(予防相)は、一般的にレーザー損傷から2〜3週間後に表れるCNVの形成を阻害するために、CNVのレーザー誘導前およびレーザー曝露の1週間後に抗体治療を開始することを含む。第1相からの対照眼にCNV病変が予想される場合、第2相(治療相)を42日目(レーザー損傷から3週間後)に開始する。第2相は、既存のCNV病変の程度及び漏れやすさを弱める治療効果を評価する。
【0162】
10匹のカニクイザル(Macaca fascicularis)が、一般的にこの種の試験で使用される。全ての処置の間、例えば塩酸ケタミン(20mg/kg);マレイン酸アセプロマジン(0.125mg/kg);及び硫酸アトロピン(0.125mg/kg)等の筋肉内注射でサルを麻酔する。必要に応じて、5〜6mg/kgの塩酸ケタミンの追加麻酔を投与することもある。更に、通常、0.5%の塩酸プロパラカインを局所麻酔として使用する。眼球摘出の前に静脈内ペントバルビタールナトリウム溶液(5mg/kg)で追加麻酔を投与し得る。実験の後、動物を安楽死させる。
【0163】
抗体治療
試験する抗体を、例えば約10μg/μLの濃度で生理緩衝液中で投与する。対照眼に、試験する抗体を除いた全ての成分を含むビヒクルを注射する。局所麻酔及び5%のポビドンヨードを滴下注入した後、30ゲージ針及びツベルクリンシリンジを使用して、毛様体扁平部から片眼当たり、約、例えば50μLの抗体又はビヒクルの眼球内注射を各眼それぞれ実施する。抗体を、5μmフィルターを介してバイアルから回収し、眼球内注射のために新たな(シャープな)30ゲージ針を使う。注射後、バシトラシン等の殺菌性点眼用軟膏を円蓋に滴下注入する。一般的に、強膜への外傷を避けるために注射部位を変える。
【0164】
第1相では、約、例えば500μg(片眼当たり50μL)の用量で抗体の眼球内注射を投与するために各動物の右眼又は左眼を無作為に割り当て、この眼を予防眼と呼ぶ。使用される用量は、この有効性試験前の安全性及び毒性学試験に基づいて、又は他の臨床的に適切な手段によって決定できる。他方の眼を、ビヒクルの眼球内注射を投与するために割り当て、対照眼と呼ぶ。各動物の両眼に、一般的に、レ−ザー処置の0日及び14日前に試験する抗体又はビヒクル単独の何れかの眼球内注射を2回投与する。21日目、CNV病変を誘発させるために、全ての眼にアルゴングリーンレーサー光凝固術を施す。28日目、レーザー誘発から1週間後、予防眼に抗体の注射を、対照眼にビヒクルの注射をもう一度投与する。本試験の第2相を、CNVが発症すると予想される42日目又はレーザー誘発から3週間後に開始する。42日目の蛍光眼底観察の後、各動物の両眼に約、例えば500μg(片眼当たり50μL)の用量で抗体の眼球内注射を投与し、これを56日目に繰り返す。
【0165】
実験的CNVの誘導
スリットランプ及び平らな眼底コンタクトレンズを使用して、アルゴングリーンレーザー(Coherent Argon Dye Laser 920;Coherent Medical Laser[米国カリフォルニア州パロアルト])による火傷で、カニクイザルの黄斑にCNV膜を誘発させる。保護用マスクを付けた外科医が、各眼の黄斑に9つの損傷を対称的に配置する。レーザー変数は、50μm〜100μmのスポットサイズ、0.1秒の持続時間、及び350〜700mW範囲の出力を含む。使用される出力は、選択する出力下で水疱及び小出血をもたらすレーザーの性能によって決定される。出血が見られない場合、同様のレーザー手順に従って、追加のレーザースポットを、最初のスポットに隣接して配置する。一般的に、カラー写真及び蛍光眼底血管造影法を使用してCNVの程度及び漏れやすさを検出、測定する。しかしながら、レーザー誘発CNV及びその随伴効果を測定できる何れの方法を使用してもよい。
【0166】
眼球検査
動物の眼を相対的求心性瞳孔反応欠損について調べ、次いで2.5%の塩酸フェニレフリン及び0.8%のトロピカミドで散大させる。0日、14日、28日、42日、及び56日目(抗体注射の前);1日、15日、29日、43日、及び57日目(注射後);21日目(レーザー照射の前);35日及び49日目(中間の日);並びに63日目(眼球摘出及び死亡)に、スリットランプ生体顕微鏡検査法及び間接検眼法を使用して、両眼を検査する。
【0167】
カラー写真及び蛍光眼底血管造影
一般的に、眼球検査と同日に、全ての動物に対して眼底血管造影を実施する。眼底カメラ(Canon Fundus CF−60Z;Canon USA Inc.[米国ニューヨーク州レイクサクセス])及び35mmフィルムで写真を撮影できるが、任意の写真撮影装置が使用可能である。
【0168】
イマジネットデジタル血管造影装置(Topcon 501A及びImagenetシステム;Topcon America Corp.[米国ニュージャージー州パラムス])を蛍光眼底血管造影で使用できる。一般的に、1mL/秒の速度で、10%フルオレセインナトリウム(Akorn Inc.[米国ロサンゼルス州アビータスプリングス])を0.1mL/kg(体重)で使用して、蛍光眼底血管造影法に従って、両眼の無赤色写真を撮影する。フルオレセイン注射に続いて、まず、最初の1分間に右眼の、次いで左眼の後極の一連の画像を迅速に撮影する。一般的に、更に対の画像を約1、2分〜5分の間に撮影する。2分から5分の間に、各眼の中間周辺部(側頭部及び鼻側)の2つの画像を撮影する。蛍光眼底血管造影は、ベースライン(0日目)並びに7日、14日、29日、42日、49日、57日及び63日目に実施する。
【0169】
眼部データの分析
写真及び血管造影図を、血管造影漏出、出血、又は他のあらゆる異常の証拠を求めて評価する。眼底出血は、網膜出血での評点方式に基づいて等級分けする。3円板領域未満はグレード1と規定され、3〜6の円板領域の出血はグレード2と規定され、6円板領域を越える出血はグレード3と規定される。CNV膜又はレーザー誘発部位での出血の関連も評価する。臨床的に重要な出血は、6円板領域以上のあらゆる眼底出血として規定される。
【0170】
眼球炎症もスリットランプ生体顕微鏡検査法を使用して評価する。2mmスリットランプを高倍率で使用して、前眼房細胞及び硝子体細胞を数え、米国眼科学会のスキーマを使用して等級分けする。35日、42日、49日、56日、及び63日目に実施した蛍光眼底血管造影を、通常は二人の経験豊かな検査員(意見の一致によって等級分けを行う)によって再検討することによってCNV病変を等級分けする。CNV病変を、比較のための標準血管造影写真を使用して、以下のスキームに従って等級分けする。グレード1病変は、ハイパー蛍光がない。グレード2病変は、漏出がなく、ハイパー蛍光を示す。グレード3病変は、初期又は中間経過の画像にハイパー蛍光及び最近の漏出を示す。グレード4病変は、治療領域を越えて経過中の明るいハイパー蛍光及び最近の漏出を示す。グレード4病変は、臨床的に重要と規定される。
【0171】
統計解析は、一般化推定方程式を使用する人口集積パネルデータ及び罹患率比(IRR)を使用して行われる場合がある。罹患率は一般的に、所定の間隔の間に起こるグレード4病変の数を誘発される病変の累計で割った率と定義される。第1相では、IRRは、予防眼のグレード4病変の罹患率対対照眼の罹患率の比を呼ぶ。IRR1は、罹患率の間に差がないことを示す。1よりもずっと小さい数は、予防群対対照群におけるグレード4病変の発生の減少を示す。第2相では、対照眼対治療眼におけるグレード4病変の発生を比較する。これは、最初は対照群に割り当てられるが、42日及び56日目に抗体を使用した治療を施され、治療眼になる眼の一群でグレード4病変の発生を長期にわたり比較することを意味する。
【0172】
AMD治療で有用な薬剤のための選別
加齢性黄斑変性症(AMD)の研究及び治療は、単球走化性タンパク質−1(Cc1−2;MCP−1としても知られる)又はその同族のC−Cケモカイン受容体−2(Ccr−2)の何れかが欠損したマウスを含む新規の動物モデルを使用して達成することができる(Ambati,J.ら、Nat Med. 2003 Nov;9(l l):1390−7. Epub 2003 Oct 19)。これらのマウスは、ドルーゼン内及びドルーゼン下の網膜色素上皮(RPE)内のリポフスチンの蓄積、光受容体萎縮、及び脈絡膜血管新生(CNV)を含むAMDの主要な特徴を発症する。
【0173】
所望の薬剤を使用したこれらのマウスの治療では、AMDの治療におけるその有効性のためにこのような薬剤の有効性の評価が可能な場合がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。

【公開番号】特開2009−280626(P2009−280626A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205369(P2009−205369)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【分割の表示】特願2008−539095(P2008−539095)の分割
【原出願日】平成18年11月4日(2006.11.4)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】