説明

眼疾患治療剤

本発明は、化学産業および医薬産業、特に、植物成分、ビタミン類および微量元素類に基づく広い作用スペクトルを有する眼科用剤の開発に関する。眼疾患治療剤は、凍結乾燥したブルーベリー、ベータ-カロチン、セレキセン、ルテイン、ビタミンB1、B2、B6およびB12、および亜鉛を含む。広い作用スペクトルを有する剤は修復作用、回復作用(強壮作用)および再生作用を示し、刺激性作用、アレルギー性作用、炎症性作用もしくは他の望ましくない作用を有さず、そして眼球表面との物理的接触が避けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学産業および医薬産業、特に、植物成分、ビタミン類および微量元素類に基づく広い作用スペクトルを有する眼科用剤の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の眼疾患の治療のための公知の薬剤は、通常、外用の滴剤または軟膏剤の形態で使用される。
【0003】
褐藻類(blown algae)の抽出物に基づく、種々の眼疾患の治療のための眼科用薬剤が知られている(特許文献1)。
【0004】
さらに、人参汁、ロイヤルゼリー、ブルーベリー、アスコルビン酸、ルチン、ビタミンE、ニコチン酸、および糖、デンプン、および佐剤としてのステアリン酸カルシウムを含む、眼疾患の治療および予防のための生物学的に活性な食品添加物が知られている(特許文献2)。
【0005】
糖尿病を患う患者に対して治療的および予防的活性を有する植物濃縮物が知られており、該濃縮物は、ケルセチン、ジヒドロケルセチン、ルチンまたはアスコルチンを生物学的活性成分として含む。前記濃縮物はさらに、薬草、および食肉濃縮物またはおよび鶏肉濃縮物または野菜濃縮物を含む。治療用および予防用植物濃縮物は、種々の年齢の患者に関する臨床症状または外来症状において使用することができ、そして、それはヒトに対する予防と穏やかな治療(soft treatment)とを組み合わせるものである(特許文献3)。
【0006】
さらに、視力障害の予防および視力矯正のための生物学的に活性な食品添加物が知られており、該添加物は、ブルーベリー、銀杏(gingko biloba)乾燥抽出物、乾燥イチョウ葉の微粉末、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはカルシウム、デンプン、および/または微結晶性セルロースを含む。前記添加物は、視覚器において毛細管強化作用および抗炎症作用を有し、視覚器におけるフリーラジカルの有害な作用を阻害し、健康全般を改善する(特許文献4)。
【0007】
外用のために結膜嚢に配するか、または電気泳動(electrophoresis)によって眼組織に適用される、乾燥シザンドラベリー(Schizandra berries)の水性煎剤に基づく、視力を増加させるための剤が公知である(特許文献5)。
【0008】
ブルーベリーの葉および漿果(berries)の治療への使用は公知である。
【0009】
ブルーベリーの使用は、人体における広い効果スペクトルを有するだけでなく、眼球表面(eye surface)における作用または患者の心への精神的衝撃なしで、視力を改善させること、視野を広げること、および眼精疲労を軽減することも証明されている(非特許文献1)。
【0010】
さらに、ブルーベリーに含有されるフラボノイド類(ルチン、ケルセチン、ビタミンP)が、血管壁を増強し、その透過性を制御することが確認されている。
【0011】
さらに、ビタミンPを有する組成物が、ビタミン欠乏、網膜出血、シェーンライン‐ヘーノホ病の治療のために、および角膜における神経栄養の過程(neurotrophical processes)の修復のために使用されることが知られている。
【0012】
上述の薬剤は、視覚機能の改善に向けられている。しかしながら、これらの軟膏剤、フィルム(films)または滴剤の形態における使用は、眼球表面との物理的接触を伴い、それを傷つける。さらに、既知の剤の各々は、とりわけ指向的な作用を示す。
【0013】
同時に、眼球表面の過剰な使用、その刺激、およびそれに対応する患者の精神的なショックが極めて望ましくない場合があるが、視覚機能における作用は必要である。このような場合には、錠剤、カプセル剤、茶剤(teas)または抽出物の形態で経口により内服的に投与される薬剤が使用される。
【0014】
本発明に最も密接する技術的解決法は、凍結乾燥したブルーベリーの漿果、ベータ-カロチン、ジヒドロケルセチンおよびセレキセン(selexen)を含む生物学的に活性な添加剤(BAA)「Okulist」である(非特許文献2)。この添加剤は、網膜症、夜盲症、眼精疲労、緑内障および白内障の場合に推奨される。
【0015】
前記組成物は、他の公知の組成物と比較して多くの利点を提供する。内服による使用では、眼球表面が傷つくのが避けられる。しかしながら、これはまた、指向的な特性を示し、そして長期の作用を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】露国特許第2104679号明細書, A 61 F 9/00
【特許文献2】露国特許第21097258号明細書, A 61 K 35/78
【特許文献3】露国特許第2123350号明細書, A 61 K 35/78
【特許文献4】露国特許第2270583号明細書, A 23 L 1/30
【特許文献5】ソビエト発明者証(Soviet author's certificate)第171981号, A 61 K 35/78
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Gaetan Zheyl, "Extrakt tcherniki i zrenie" ("Blue-berry extract and vision"), TASS, Byulleten inostrannoy nautchno-tekhnitcheskoy informatsii TASS, 1964, 72 (962), 1964
【非特許文献2】TU 9197-028-17664661-05 CEZ 3??.99.29.003, July 26, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、植物成分、ビタミン類および微量元素類のバランスのとれた複合体を開発することにより、眼疾患を治療するための広い作用スペクトルを有する剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
技術的効果は、本発明の剤が修復作用、回復作用(強壮作用)および再生作用を有すること、それが生態学的に汚染性がなく、刺激性作用、アレルギー性作用、炎症性作用もしくは他の望ましくない作用を示さないこと、それが眼球表面との物理的接触を避け、治療効果を増加させること、ならびに、それが黄斑の病状(黄斑変性)および網膜の病状の治療を補助するためにも使用できることにある。
【実施例】
【0020】
前記の目的は、凍結乾燥したブルーベリー、ジヒドロケルセチン、ベータ-カロチンおよびセレキセン、ならびに追加的にルテイン、ビタミンB1、B2、B6およびB12、および亜鉛を、以下:
【0021】

で表されるカプセルあたりの成分量(mg)で含む本発明の眼疾患治療剤によって達成される。
【0022】
前記の剤は、網膜症、夜盲症、眼精疲労、緑内障および白内障の場合に、視力の改善のために使用することができる。
【0023】
前記の剤は、黄斑の病状(黄斑変性)および網膜の病状の治療を補助するための薬剤として使用することができる。
【0024】
本発明の剤を、暫定的に「Okulist-kompleks」と呼ぶ。
【0025】
「Okulist-kompleks」は、上記の量の成分を混合し、混合物をカプセルに充填することによって得られる。
【0026】
上述された疾患の予防のための投薬は、1日に3回、食間に1個のカプセルである。
【0027】
補助療法(supporting therapy)における投薬は、1日に3回、食間に2個のカプセルである。
【0028】
ボランティアにおける臨床試験が、ロシア連邦国防省の中央軍事病院(the Central Military Clinical Hospital of the Ministry of Defense of the Russian Federation)、モスクワの眼疾患科学研究所「Gelmgolts」(the Science and Research Institute for Eye Diseases "Gelmgolts" in Moscow)、およびモロゾフスク市立小児病院(the Clinical Pediatric Hospital of the city of Morozovsk)において実施された。
【0029】
臨床試験の結果から以下の結論が導かれる:
・すべてのケースにおいて、薬剤投与の間、アレルギー反応または望ましくない事象は観察されなかった;
・治療の間、薬剤に関する良好な認容性が観察された;
・BAA「Okulist」と比較して、反復療法において「Okulist-kompleks」を投与した場合には、正の相乗作用効果が観察された。
【0030】
網膜中心部の破壊の主原因は、日光、特にそのスペクトルのうちの最も攻撃的な短波(UV-、紫および青)部分の作用である。ヒトの眼は、過剰な太陽輻射に対するいくつかの段階の防御、すなわち、瞳孔を小さくする着色された虹彩、および網膜の最も感受性の高い部分の前に直接位置する天然の光線フィルターである黄斑を有している。斑の色および光吸収特性は、そこに選択的に蓄積する2種の天然カロチノイド、すなわちルテインおよびゼアキサンチンによって保証されている。
【0031】
人体はこれらの物質を合成することができず、外部からそれらを提供することが必須である。
【0032】
この状況に対する解決法は、高いルテインおよびゼアキサンチン含有量を有する植物(ニンジン、ホウレンソウ、穀類、トマト、エンドウ、キンセンカ等)の消費を増加させることだけでなく、これらの物質を含有する薬剤の開発であろう。
【0033】
この時点で黄斑網膜症の治療方法は知られていないので、これらの予防措置が年齢に依存した視力喪失と戦う唯一の確実な手段である。
【0034】
最近、マリーゴールドから得られたルテインを含有する生物学的に活性な添加剤が登場した。ルテインが黄斑においてよく吸収され蓄えられ、ルテインを添加剤として投与することによりその密度が増加することが研究により確認されている(J.A. Mares-Perlman et al., Am. J. Epidemiol.-2001, vol. 62, p. 1448-1461)。
【0035】
たとえルテインが斑の破壊の予防に関して不可欠だとしても、生物、特にリスク群に属する患者にさらなる微量養分、とりわけ抗酸化物質を提供することもまた非常に重要である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
フリーラジカルの活性化および過酸化過程によって生じる眼疾患、すなわち、白内障および斑の変性の予防に関するデータの解析から、本発明の複合体が良好な治療効果を付与することが確認される。特に一重項酸素の中和を調節するルテインと一緒に、斑の変性を予防するために、物質(植物成分、B群のビタミン、ベータ-カロチン、微量元素)のバランスのとれた複合体が正常視力を補助し、これらの物質はそれぞれの他の効果を補完し、増加させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥したブルーベリーの漿果、ジヒドロケルセチン、ベータ-カロチンおよびセレキセンを含む眼疾患治療剤であって、追加的に、ルテイン、ビタミンB1、B2、B6およびB12、および亜鉛を、以下:

で表されるカプセルあたりの成分量(mg)で含むことを特徴とする、前記の眼疾患治療剤。
【請求項2】
網膜症、夜盲症、眼精疲労、緑内障および白内障の場合に、視力の改善のために使用できることを特徴とする、請求項1記載の剤。
【請求項3】
黄斑の病状(黄斑変性)および網膜の病状の治療を補助するために使用できることを特徴とする、請求項1記載の剤。
【請求項4】
前記疾患の予防のための投薬が、1日に3回、食間に1個のカプセルであることを特徴とする、請求項2または3のいずれか1つに記載の剤。
【請求項5】
補助療法における投薬が、1日に3回、食間に2個のカプセルであることを特徴とする、請求項2または3のいずれか1つに記載の剤。

【公表番号】特表2010−502597(P2010−502597A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526563(P2009−526563)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/RU2006/000629
【国際公開番号】WO2008/026962
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509058645)
【Fターム(参考)】