説明

眼瞼模型、眼模型及びこれを用いたコンタクトレンズ装脱トレーニング方法

【課題】ハードコンタクトレンズ等の装脱の練習に好適な眼模型及びこの眼模型に用いる眼瞼模型、並びにこの眼模型を用いたコンタクトレンズ装脱トレーニング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、球面に外嵌可能な内面を有する部分球殻状の基体を備え、この基体が、隣接する上眼瞼部及び下眼瞼部を有し、この上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間が基体の伸縮により開閉可能に構成されている眼瞼模型である。上記上眼瞼部及び下眼瞼部の対向縁の断面が、鋭角に形成されているとよい。さらには、上記上眼瞼部の平均厚さが下眼瞼部の平均厚さより大きいとよく、上記上眼瞼部及び/又は下眼瞼部が、対向縁と並行するように内面に形成される複数の凹条部を有しているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼瞼模型、眼模型及びこれを用いたコンタクトレンズ装脱トレーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズを装脱するには慣れが必要であり、特に、他人の眼に対してコンタクトレンズを適切に装脱することは容易ではない。そこで、眼科や、コンタクトレンズ販売店におけるスタッフらは、他人の眼に対してコンタクトレンズを適切に装脱するための研修を受けている。
【0003】
一方、このような研修等に供せられる眼模型は、眼瞼(まぶた)が無い構造のものが一般的であり、また、眼瞼を有する構造の眼模型も、この眼瞼は通常、剛体で形成されている。従って、これらの眼模型は、実際の診療等で行う「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験できる機能を有していない。
【0004】
特に、ハードコンタクトレンズの装脱の場合、眼瞼の縁を利用してハードコンタクトレンズを外す作業が必要となるため、一般的な眼模型を用いてトレーニングをすることができない。従って、他人の眼に対するハードコンタクトレンズの装脱のトレーニングは、実際に他人を練習台として行わざるを得ない。このように実際に他人の眼を利用してコンタクトレンズの装脱の練習を行うことは、安全面や衛生面において好ましいとはいえない。
【0005】
このような中、医療分野の研修等に用いられる眼模型として種々のものが提案されているが(例えば特開2002−196664号公報等)、実物に近い形状や感触を有する眼瞼を備える眼模型は開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−196664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、コンタクトレンズの装脱の練習に好適な眼模型及びこの眼模型に用いる眼瞼模型、並びにこの眼模型を用いたコンタクトレンズ装脱トレーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
球面に外嵌可能な内面を有する部分球殻状の基体を備え、
この基体が、隣接する上眼瞼部及び下眼瞼部を有し、
この上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間が基体の伸縮により開閉可能に構成されている眼瞼模型である。
【0009】
当該眼瞼模型は、通常用いられる略球状の眼球模型を内面側に嵌め込むことで、実物に近い形状及び感触を有する眼瞼模型として機能する。つまり、当該眼瞼模型は、上記形状等を備えることで、眼球模型を内面側に嵌め込んだ状態において上眼瞼部及び下眼瞼部を軽く指で押さえて寄せることによって、眼球模型表面に沿って一対の対向縁間の間に形成される開口部を閉じるように両眼瞼部を近づけること、また、逆に指で押さえて広げることによって、開くように遠ざけることができる。従って、当該眼瞼模型を備える眼模型によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニングをはじめとした「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験させることができる。
【0010】
上記上眼瞼部及び下眼瞼部の対向縁の断面が、鋭角に形成されているとよい。当該眼瞼模型によれば、両眼瞼部が上記形状を有することでコンタクトレンズを取り外すときに、両眼瞼部を指で寄せて開口部を若干閉じることにより、鋭角に形成されている両眼瞼部の少なくともどちらかの対向縁がコンタクトレンズの端部の下に潜り込みコンタクトレンズが外れるという、実際のハードコンタクトレンズ等の装脱作業を忠実に再現することができる。
【0011】
上記上眼瞼部の平均厚さが下眼瞼部の平均厚さより大きいとよい。当該眼瞼模型によれば、より実際の眼瞼に近い感覚でコンタクトレンズの装脱等のトレーニングを行うことができる。
【0012】
当該眼瞼模型が、上記上眼瞼部及び/又は下眼瞼部が、対向縁と並行するように内面に形成される複数の凹条部を有しているとよい。当該眼瞼模型によれば、眼瞼部の内面にこのような凹条部を有することで、各眼瞼部自体の伸縮性が高まり、より実際の眼瞼に近い感覚を得ることができる。
【0013】
当該眼瞼模型の基体が、弾性を有する合成樹脂を主成分として形成されていることが好ましい。弾性を有する合成樹脂を主成分として基体を形成することで、基体の弾性を人体に近い状態で容易に調整することができるとともに、当該眼瞼模型の大量生産が可能となり、コンタクトレンズ装脱のトレーニング用途に限らず各種用途に対して安定的に供給することが可能となる。
【0014】
上記合成樹脂が、シリコーン樹脂又は熱可塑性樹脂であるとよい。当該眼瞼模型の基体をシリコーン樹脂製又は熱可塑性樹脂製とすることで、基体の弾性の調整をより容易に行うことができる。また、シリコーン樹脂製又は熱可塑性樹脂製とすることで、例えば型による製造を可能とし、大量生産性が向上する。
【0015】
上記合成樹脂の100%モジュラスが、0.5N/m以上20N/m以下であることが好ましい。当該眼瞼模型の基体を上記範囲の100%モジュラス、すなわち弾性を有する合成樹脂から形成することで、上下両眼瞼の感触をより実際のものに近づけることができる。
【0016】
上記内面が、球面の一部で形成される凹状形状を有し、上記内面に囲まれる空間が、この凹状形状を形成する球の中心を含むとよい。基体がこのような凹状の内面を有することで、当該眼瞼模型は略球状の眼球模型の半分以上を覆うことができるため、眼球模型の眼瞼模型内面との密着性が向上し、より使いやすくなる。なお、「内面に囲まれる空間」とは、内面が開かれた部分を有する場合は、その開かれた部分を最小の面積の面で閉じることによって形成される空間の領域をいう。
【0017】
本発明の眼模型は、上記眼瞼模型と、この眼瞼模型に外嵌される略球状の眼球模型とを備える。当該眼模型によれば、上述のように眼瞼模型における上眼瞼部及び下眼瞼部を軽く指で押さえて寄せることによって、眼球模型表面に沿って一対の対向縁の間に形成される開口部を閉じるように両眼瞼部を近づけること、また、逆に指で広げることによって、開くように遠ざけることができる。従って、当該眼模型によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニングをはじめとした「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験させることができる。
【0018】
当該眼模型は、上記眼瞼模型と、眼球模型とを一体的に固定する固定具をさらに備えることが好ましい。当該眼模型によれば、固定具を備えることで、例えば、この固定具を介して従来の人体模型に嵌め込むことができるなど、取扱性、応用性及び汎用性を高めることができる。
【0019】
当該眼模型において、眼球模型が、表面の一部に形成される角膜部と、この角膜部と反対側の半球表面上に形成される凹凸構造とを有し、上記角膜部の少なくとも一部が、上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間から露出可能に構成されているとよい。当該眼模型は眼球模型にこのような凹凸構造を有することで、両眼瞼部における伸縮性を確保しつつ、眼球模型と眼瞼模型との密着性を向上させることができる。
【0020】
当該眼模型は、上述のようにコンタクトレンズの装脱トレーニング用として好適に用いられる。
【0021】
本発明のコンタクトレンズの装脱トレーニング方法は、
眼模型の角膜部表面にコンタクトレンズを装着する工程、及び
上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間を基体の伸縮により開閉させる工程
を有する方法である。上記眼模型を用いてコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことで、安全面や衛生面の不安を解消し、かつ、実際と近い感覚でトレーニングを行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、当該眼瞼模型及びこの眼瞼模型を備える眼模型によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニングをはじめとした「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験させることができる。従って、当該眼瞼模型を備える眼模型を用いて研修等を行うと、実際と近い感覚でトレーニングを行うことができることに加えて、従来の人体で行っていた場合の細菌等微生物汚染等のリスクを避けることができる。
【0023】
また、当該眼模型及びこの眼模型を備える眼模型は、コンタクトレンズの装脱トレーニングのみならず、眼瞼腫瘍、散粒腫等の触診、睫毛除去、点眼、軟膏注入、開瞼器操作、手指による開瞼等のトレーニング、メイキャップのトレーニング、コンタクトレンズのフィッティング検査等にも活用することができる。さらには、当該眼模型及びこの眼模型を備える眼模型は、マネキン、玩具、ロボット等に用い、眼瞼を動力に連動させて作動させることで、従来にはない表情を醸し出すことができる。また、当該眼瞼模型及び眼模型は人間以外の動物の眼瞼又は眼の模型としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る眼瞼模型を示す模式的斜視図、(b)はこの模式的平面図、(c)はこのA−A線矢視部模式的断面図である。
【図2】(a)図1の眼瞼模型を備える眼模型を示す模式的斜視図、(b)はこの模式的断面図である。
【図3】図2の眼模型に備わる眼球模型を示す模式的斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は、図2の眼模型の使用方法を示す模式図である。
【図5】図2の眼模型とは異なる実施形態に係る眼模型の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の眼瞼模型、眼模型及びコンタクトレンズ装脱トレーニング方法の実施の形態を詳説する。
【0026】
〔眼瞼模型〕
図1の眼瞼模型1は、弾性を有する基体2を備えている。この基体2は、略半球形状の外観を有する。また、基体2は、この外観を形成する半球と同一中心及び小さい半径を有する球面の一部で形成される凹状形状の内面3を有する。言い換えれば、この基体2は球面に外嵌可能な内面3を有し、略同一な厚さの壁で形成された部分球殻状を有している。
【0027】
また、この基体2は、頂部に、隣接する上眼瞼部5及び下眼瞼部6を有している。この上眼瞼部5及び下眼瞼部6の一対の対向縁(上眼瞼部5の端縁5a及び下眼瞼部側の端縁6a)の間が基体2の伸縮により開閉可能に構成されている。つまり、基体2は上記一対の対向縁(上眼瞼部5の端縁5a及び下眼瞼部側の端縁6a)の間に形成される開口部4を有している。
【0028】
当該眼瞼模型1は、通常用いられる略球状の眼球模型を内面側に嵌め込むことで、実物に近い感触を有する眼瞼模型として機能する。つまり、当該眼瞼模型1は、上記形状等を備えることで、眼球模型を内面3側に嵌め込んだ状態において、上眼瞼部5及び下眼瞼部6を軽く指で押さえて寄せることによって、眼球模型表面に沿って開口部4を閉じる方向に引き延ばすこと、また、逆に指で押さえて広げることによって開くように遠ざけることができる。従って、当該眼瞼模型1を備える眼模型によれば、コンタクトレンズの装脱トレーニングをはじめとした「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験させることができる。
【0029】
基体2の内面3を形成する球の一部の半径は、一般的な眼球模型の半径とほぼ等しく、具体的には1.2cm以上1.5cm以下程度である。眼瞼模型1の内面3を形成する球の半径を、一般的な眼球模型の半径とほぼ等しくすることで、眼瞼模型1の内面3側に、通常用いられる一般的な眼球模型を嵌め込むことができる。
【0030】
なお、この内面3の凹状形状を形成する球面の一部は、球面に外嵌可能であれば、厳密な球面の一部でなくてよく、実際の眼球又は眼球模型のような、実質的な球面状の一部である曲面であればよい。
【0031】
基体2の内面3に囲まれる空間は、この内面3の凹状形状を形成する球の中心Pを含む形状となっている。当該眼瞼模型1は、この内面3がこのような形状となっていることで略球状の眼球模型の半分以上を覆うことができる。従って、当該眼瞼模型1によれば、眼球模型の眼瞼模型1の内面3との密着性が向上し、より使いやすくなる。
【0032】
基体2を形成する壁の平均厚さとしては特に限定されず、例えば2mm以上1cm以下程度である。基体2を形成する壁の平均厚さを上記範囲とすることで、一定の強度と軽量性及びコンパクト性とを両立させることができる。
【0033】
当該眼瞼模型1すなわち基体2のサイズは、上述の内面3を形成する球のサイズと、基体2を形成する壁の厚さとで決まり、例えば、半径が1.4cm以上2.5cm以下程度の部分球殻状(外観略半球形状)となる。
【0034】
開口部4は、略紡錘形状を有し、一般的な人の瞼及び瞳の大きさとなるように設計されている。具体的には略紡錘形状の開口部4の軸方向(図1(b)中の矢印方向)の長さとしては、1.5cm以上3cm以下程度、軸の垂直方向の長さとしては、1cm以上1.5cm以下程度である。
【0035】
ここで「略紡錘状」とは、2つの略錐形を底面側で接合した形状において、両頂点を結ぶ2線分に囲まれる曲面領域をいう。ここで上記略錐形は、円錐、角錐等、頂点が尖鋭な純粋な錐形の他、頂部を平坦に切断した円錐台形状又は角錐台形状も含み、さらには、階段錐形状、蛇腹錐形状等、断面が段階的に、又は、不連続的若しくは不規則に変化する形状も含む。
【0036】
上眼瞼部5及び下眼瞼部6は、人体の眼瞼を模した形状として、平面視略三日月形状を有している。この上眼瞼部5及び下眼瞼部6は、弾性を有する基体2の一部として形成されているため、開口部4の軸方向(図1(b)中の矢印方向)と垂直方向に、すなわち開口部4の軸に向かって伸縮可能である。
【0037】
上眼瞼部5の端縁5a及び下眼瞼部6の端縁6a(開口部4の外縁となる一対の対向縁)の開口部4の軸と垂直な平面における断面、すなわち図1(c)の断面図における端縁5a及び6aの先端形状が、鋭角に形成されている。当該眼瞼模型1によれば両眼瞼部5及び6が上記形状を有することで、コンタクトレンズを取り外すときに、両眼瞼部5及び6を指で押さえて寄せることで開口部4を若干閉じることにより、鋭角に形成されている両眼瞼部5及び6の少なくともいずれかの対向縁(端縁5a又は6a)がコンタクトレンズの端部の下に潜り込みコンタクトレンズが外れるという、実際のハードコンタクトレンズ等の装脱作業を忠実に再現することができる。
【0038】
上眼瞼部5の端縁5aの断面がなす角θ及び下眼瞼部6の端縁6aの断面がなす角φの下限としては15°が好ましく、30°がさらに好ましい。一方、角θ及びφの上限としては、90°未満が好ましく、75°がさらに好ましく、60°がより好ましい。角θ及びφが上記下限未満の場合は、端縁5a及び6aが薄くなり、強度及び耐久性が低下するおそれがある。一方、角θ及びφが上記上限を超えると、端縁5a及び6aがコンタクトレンズの端部の下に潜り込みにくくなるおそれがある。
【0039】
また、両眼瞼部5及び6又はこれらの端縁5a及び6aは、コーティングしたり、基材に他の材質を添加したり、厚みを調整したりすること等によって、触れた感触を他の部分と比して硬く感じるように作ってもよい。このようにすることで、さらに実際の眼瞼の感触に近づけることができる。また、このように両眼瞼部の端縁5a及び6aの強度を高めることで、当該眼瞼模型1の耐久性を向上させることができる。
【0040】
上眼瞼部5の平均厚さが下眼瞼部6の平均厚さより大きいとよい。このような眼瞼模型1によれば、下眼瞼より上眼瞼の方が厚みがあるという、実際の眼瞼に近い感覚でコンタクトレンズの装脱等のトレーニングを行うことができる。ここで、両眼瞼部の平均厚さとは、開口部4の軸(上眼瞼部5と下眼瞼部6との間が閉じた状態の一対の対向縁)
を直径とした円内の各眼瞼部5及び6におけるそれぞれの平均厚さをいう。
【0041】
上眼瞼部5の平均厚さとしては、具体的には4mm以上8mm以下程度である。また、下眼瞼部6の平均厚さとしては、具体的には3mm以上6mm以下程度である。上眼瞼部5の平均厚さ及び下眼瞼部6の平均厚さが上記下限未満の場合は、強度が低下し、耐久性が低下するおそれがある。一方、この厚さが上記上限を超えると、実際の眼瞼の感触との差が大きくなるとともに、伸縮性が低下するおそれがある。
【0042】
基体2を形成する素材としては、弾性を有しているものが好ましく、例えば合成樹脂、天然ゴム、皮革やこれらの混合物等を用いることができるが、これらの中でも合成樹脂が好ましい。弾性を有する合成樹脂を基体の主成分として形成することで、基体2の弾性を人体に近い状態で容易に調整することができるとともに、当該眼瞼模型1の大量生産を可能とし、コンタクトレンズ装脱のトレーニング用途に限らず各種用途に対して安定的に供給することが可能となる。
【0043】
上記合成樹脂としては、シリコーン樹脂又は熱可塑性樹脂であるとよい。当該眼瞼模型1の基体2をシリコーン樹脂製又は熱可塑性樹脂製とすることで、基体2の弾性の調整をより容易に行うことができる。また、シリコーン樹脂製又は熱可塑性樹脂製とすることで例えば型による製造を可能とし、大量生産性が向上する。
【0044】
上記シリコーン樹脂としては、溶剤付加型シリコーン又は縮合硬化型シリコーン等の硬化型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましく、これらの中でも溶媒付加型シリコーンを用いて作製されたシリコーン樹脂が好ましい。
【0045】
上記溶剤付加型シリコーンとしては、例えば、ビニル基を有する直鎖状メチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させて得られるものが挙げられる。
【0046】
溶剤付加型シリコーンの具体例としては、例えば信越シリコーン社製のKS−887、KS−779H、KS−778、KS−835、X−62−2456、X−62−2494、X−62−2461、KS−3650、KS−3655、KS−3600、KS−847、KS−770、KS−770L、KS−776A、KS−856、KS−775、KS−830、KS−830E、KS−839、X−62−2404、X−62−2405、KS−3702、X−62−2232、KS−3503、KS−3502、KS−3703、KS−5508等が挙げられる。
【0047】
縮合硬化型シリコーンの具体例としては、例えば信越シリコーン社製のKS−881、KS−882、KS−883、X−62−9490、X−62−9028等のシリコーンが挙げられる。
【0048】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリル共重合体、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、シリコン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABSゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記熱可塑性樹脂として、耐久性及び加工性の点から、ガラス転移点が30℃〜150℃のものが好ましく、50℃〜120℃のものがさらに好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、シリコーン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABSゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体、アクリル変性フッ素樹脂等が挙げられる。
【0050】
この基体を形成する素材の主成分として用いる合成樹脂の100%モジュラスとしては0.5N/m以上20N/m以下が好ましく、1.0N/m以上15N/m以下がさらに好ましい。基体2を上記範囲の100%モジュラス、すなわち弾性を有する合成樹脂から形成することで、上下両眼瞼5及び6の感触をより実際のものに近づけることができる。ここで、「100%モジュラス」とは、JIS−K6251に記載の所定伸び引張応力に準じて、所定伸び100%として測定したときの値である。
【0051】
基体2の主成分として用いる合成樹脂の弾性率が上記下限未満の場合は、実際の眼瞼の感触と比べて柔らかくなりすぎることに加え、強度が低下し、耐久性が低下するおそれがある。逆にこの弾性率が上記上限を超える場合は、実際の眼瞼の感触と比べて硬くなり過ぎることに加えて、加工性が低下するおそれがある。
【0052】
また、この基体を形成する素材の主成分として用いる合成樹脂の硬度(JIS−K7312におけるタイプCによる測定値)としては5以上80以下が好ましく、10以上30以下がさらに好ましい。この合成樹脂のショアC硬度を上記範囲とすることで、強度及び加工性のバランスを備えつつ、実際の眼瞼の感触により近づけることができ、当該眼瞼模型の利用性がさらに向上する。
【0053】
当該眼瞼模型1は、このような形状、構造等を備えるため、後述する略球状の眼球模型を内面3側に嵌め込むことで、実物に近い感触を有する眼瞼模型として機能することができる。従って、当該眼瞼模型1を使用することで、コンタクトレンズの装脱トレーニングをはじめとした「眼瞼に触れながら行う処置」を実際の眼瞼に近い感覚で擬似的に体験させることができる。
【0054】
当該眼瞼模型1の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、基体2の凹型に対して溶融した合成樹脂を流し込み、硬化させることによって、所定形状を有する基体2を備える眼瞼模型1を得ることができる。
【0055】
〔眼模型〕
図2の眼模型11は、眼瞼模型1、この眼瞼模型1に外嵌される眼球模型12、及び眼瞼模型1と眼球模型12とを一体的に固定する固定具13を備えている。眼瞼模型1は、図1のものと同様であるので、説明を省略する。
【0056】
眼球模型12は、図3に示すように、眼球の模型として略球状を有している。この眼球模型12は、頂点部分表面に設けられる角膜部14と、この角膜部14の反対側の半球表面上に形成される凹凸構造15とを有している。
【0057】
角膜部14は、人の角膜を模したものであり、凸状かつ平面視円形状を有している。この角膜部14のサイズとしては、半径が5〜6mm程度であり、高さが1〜2mm程度である。この角膜部14の凸状形状は、人の角膜と同程度の曲率半径を有している。また、この角膜部14には、人の眼球を模したものとして水晶体や虹彩が描かれているとよい。角膜部14は、図2に示されるように、眼模型11の開口部4(一対の対向縁間)から露出するように構成されている。
【0058】
凹凸構造15は、角膜部14方向に向かって突条の凹凸として形成されている。眼球模型12がこのような凹凸構造15を有することで、眼模型11として、両眼瞼部5及び6における伸縮性を確保しつつ、眼球模型12と眼瞼模型1との密着性を向上させることができる。また、この凹凸構造15は、角膜部14方向に突条の凹凸として形成されていることで、眼筋に模すことができる。
【0059】
眼球模型12の材質としては、特に限定されず、合成樹脂、ガラス、木材等を適宜用いることができる。これらの中でも、加工性、耐久性等の点から合成樹脂が好ましく、加工性の点から、熱可塑性樹脂がさらに好ましい。
【0060】
また、眼球模型12は、眼瞼模型1よりも低い弾性率を備える合成樹脂から形成されていることが好ましい。眼瞼模型1と眼球模型12とでこのような弾力差を設けることで、より実際の眼瞼及び眼球に近い感覚を表すことができる。
【0061】
固定具13は、半球殻状の第1固定具13aと、この第1固定具13aの開口縁に螺合可能な構造を有する環状の第2固定具13bとを備えている(図2(b)参照)。第1固定具13aの内径は眼球模型12の外径より若干大きく設計されている。
【0062】
当該固定具13によれば、一体となった眼瞼模型1と眼瞼模型1に外嵌された眼球模型12とを、第1固定具13aに嵌め込み、第2固定具13bを第1固定具13aの開口縁に螺合させることによって、眼瞼模型1と眼球模型12とを一体的に圧迫固定することができる。この際、眼瞼模型1は、基体2の内面3に囲まれる空間が、この内面の凹状形状を形成する球の中心を含む形状であるため、内面3が球状の眼球模型12を直径を含む形で半分以上覆う状態となっている。従って、眼球模型12と第2固定具13bとの間に眼瞼模型1の基体2が挟み込まれているため、第2固定具13bを締め付けることにより、これらを一体的に強固に固定することができる。
【0063】
従って、このような固定具13を備える眼模型11によれば、柔らかい眼瞼模型1を触らずとも、固定具13部分を把持することによって取り扱うことができるなど、取扱性に優れている。また、当該眼模型11は、例えば、この固定具を介して従来の人体模型に嵌め込むことができるなど、応用性及び汎用性を高めることができる。
【0064】
〔コンタクトレンズ装脱トレーニング方法〕
本発明のコンタクトレンズの装脱トレーニング方法は、上記眼模型11を用いる方法、すなわち、眼模型11の角膜部14表面にコンタクトレンズHを装着する工程、及び上眼瞼部5及び下眼瞼部6の一対の対向縁間(開口部4)を基体2の伸縮により開閉させる(基体2の、主に上眼瞼部5及び下眼瞼部6を開口部4の軸に向かって伸縮させる)工程を有する方法である。以下、上記眼模型11を用いたコンタクトレンズの装脱トレーニング方法について図4を参照に説明する。
【0065】
図4の眼模型11は、図2の眼模型11と同様のものであり、眼瞼模型1と眼球模型12と固定具13とを備えている。この眼模型11において、眼球模型12の角膜部14上に、コンタクトレンズHを開口部4から装着する(図4(a)参照)。
【0066】
この眼模型11において、コンタクトレンズHを取り外す場合は、通常、他人に対して行うのと同様の手順で行うことができる。つまり、眼瞼模型1の上眼瞼部5及び下眼瞼部6を軽く指で押さえて寄せる(図4(b)参照)。具体的には、両手の人差し指で上眼瞼部5及び下眼瞼部6をそれぞれ押さえ、両眼瞼部を近づけるように寄せる。この際、以下の理由(1)〜(3)により、実際の眼瞼に近い感覚で、上眼瞼部5及び下眼瞼部6を、眼球模型12の表面に沿って開口部4を閉じるように近づける(引き延ばす)ことができる。
(1)眼瞼模型1の内側には、略球状の眼球模型12が嵌め込まれているため。
(2)眼瞼模型1の内面3は、この眼球模型12の曲率とほぼ等しい曲率を有する球の一部により形成される凹状形状を有するため。
(3)眼瞼模型1の基体2は、弾性を有する樹脂で形成されているため。
【0067】
この際、上眼瞼部5及び下眼瞼部6の眼球模型12表面に対する潤滑性を向上させるために、開口部4から、点眼するように両眼瞼部5及び6と眼球模型12との間に液体を流し込むとよい。この液体としては、例えば、水、生理食塩水、コンタクトレンズ保存液等を用いることができる。
【0068】
このように上眼瞼部5及び下眼瞼部6を、眼を閉じるように開口部4を閉じる方向に開口部の軸に向かって引き延ばすと、各眼瞼部の端縁5a及び6aは断面形状が鋭角に形成されているため、端縁5a及び/又は6aがコンタクトレンズHの端部の内側(眼球模型12側)に潜り込み、コンタクトレンズHをはずすことができる(図4(b)参照)。この作業は、実際に、眼科やコンタクトレンズ販売店において、スタッフが他人に対してハードコンタクトレンズ等を装脱する場合と同様である。
【0069】
なお、この作業(トレーニング)は、眼模型11を机等の平面においてコンタクトレンズHを上から装脱するように行うこともできるし、この眼模型11を人体模型や壁等に取り付けて、コンタクトレンズHを人が起きた状態で、前から装脱するように行うこともできる。
【0070】
このように、当該コンタクトレンズの装脱トレーニング方法によれば、上記眼模型11を用いてコンタクトレンズの装脱トレーニングを行うことで、実際と近い感覚でトレーニングを行うことができることに加え、他人の目を練習台として用いることの安全面や衛生面の不安を解消することができる。
【0071】
本発明の眼模型を用いたコンタクトレンズの装脱トレーニングは、ソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズのいずれにも対応することができるが、眼瞼の縁を利用してコンタクトレンズを外すという作業を要するハードコンタクトレンズの装脱トレーニングに特に好適に用いることができる。
【0072】
なお、本発明の眼瞼模型、眼模型及びこれを用いたコンタクトレンズ装脱トレーニング方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【0073】
例えば、図5(a)の眼模型21は、眼瞼模型22と眼球模型23とが一体となっている。この眼瞼模型22も、球面に外嵌可能な内面を有する部分球殻状の基体を備え、この基体が、隣接する上眼瞼部及び下眼瞼部を有し、この上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁が基体の伸縮により開閉可能に構成されている。
【0074】
この上眼瞼部及び下眼瞼部は、対向縁(開口部側の両端縁)と並行するように内面に形成される複数の凹条部24を有している。このような眼瞼模型22を備える眼模型21によれば、この凹条部24を有することで、各眼瞼部自体の伸縮性が高まり、より実際の眼瞼に近い感覚を得ることができる。
【0075】
また、眼球模型23は、略球状を有し、頂点部分の表面に設けられる角膜部を有している。この眼瞼模型22と眼球模型23とは、同一基材から一体成型されていてもよいし、別々に成型したものを、例えば接着剤等によって一体化してもよい。当該眼模型21によれば、眼瞼模型22と眼球模型23とが一体となっていることで、取扱性が向上する。
【0076】
さらに異なる本発明の眼瞼模型の実施形態としては、一対の対向縁が、通常は接している、すなわち開口部が閉じた状態を有するものも挙げられる。このような眼瞼模型によれば、指などによって両眼瞼部の間を広げて検診を行う等のトレーニング等に用いることができる。
【0077】
また、眼瞼模型における上眼瞼部と下眼瞼部の厚さは同じであってもよい。このように上下の眼瞼部の厚さを等しくすると、眼瞼模型の上下の区別が無くなるため、生産性をより高めることができる。
【0078】
さらには、本発明の眼瞼模型の外観としては、略半球形状に限らず、例えば、マネキンの顔の一部となった形状であってもよい。また、本発明の眼瞼模型は、基体の他に、例えば疑似眉毛などが備えられていてもよい。本発明の眼瞼模型は、例えばこのような外観や構造を有していても、球面に外嵌可能な内面を有する部分球殻状の基体を備え、この基体が上述のような対向縁が開閉可能な両眼瞼部を有していれば、同様な作用効果を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明の眼模型及びこの眼模型を備える眼模型は、コンタクトレンズの装脱トレーニングに好適に用いることができる。本発明の眼模型及びこの眼模型を備える眼模型は、上記用途に限らず、眼瞼腫瘍、散粒腫等の触診、睫毛除去、点眼、軟膏注入、開瞼器操作、手指による開瞼等のトレーニング、メイキャップのトレーニング、コンタクトレンズのフィッティング検査等にも活用することができる。さらには、当該眼模型及びこの眼模型を備える眼模型は、マネキン、玩具、ロボット等や、人間以外の動物等の眼模型としても用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 眼瞼模型
2 基体
3 内面
4 開口部
5 上眼瞼部
6 下眼瞼部
5a、6a 端縁
11 眼模型
12 眼球模型
13 固定具
13a 第1固定具
13b 第2固定具
14 角膜部
15 凹凸構造
21 眼模型
22 眼瞼模型
23 眼球模型
24 凹条部
H コンタクトレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面に外嵌可能な内面を有する部分球殻状の基体を備え、
この基体が、隣接する上眼瞼部及び下眼瞼部を有し、
この上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間が基体の伸縮により開閉可能に構成されている眼瞼模型。
【請求項2】
上記上眼瞼部及び下眼瞼部の対向縁の断面が、鋭角に形成されている請求項1に記載の眼瞼模型。
【請求項3】
上記上眼瞼部の平均厚さが下眼瞼部の平均厚さより大きい請求項1又は請求項2に記載の眼瞼模型。
【請求項4】
上記上眼瞼部及び/又は下眼瞼部が、対向縁と並行するように内面に形成される複数の凹条部を有している請求項1、請求項2又は請求項3に記載の眼瞼模型。
【請求項5】
上記基体の主成分が弾性を有する合成樹脂である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の眼瞼模型。
【請求項6】
上記合成樹脂が、シリコーン樹脂又は熱可塑性樹脂である請求項5に記載の眼瞼模型。
【請求項7】
上記合成樹脂の100%モジュラスが、0.5N/m以上20N/m以下である請求項5又は請求項6に記載の眼瞼模型。
【請求項8】
上記内面が、球面の一部で形成される凹状形状を有し、
上記内面に囲まれる空間が、この凹状形状を形成する球の中心を含む請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の眼瞼模型。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の眼瞼模型と、
この眼瞼模型に外嵌される略球状の眼球模型と
を備える眼模型。
【請求項10】
上記眼瞼模型と眼球模型とを一体的に固定する固定具をさらに備える請求項9に記載の眼模型。
【請求項11】
上記眼球模型が、表面の一部に形成される角膜部と、この角膜部と反対側の半球表面上に形成される凹凸構造とを有し、
上記角膜部の少なくとも一部が、上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間から露出可能に構成されている請求項9又は請求項10に記載の眼模型。
【請求項12】
コンタクトレンズの装脱トレーニング用である請求項9、請求項10又は請求項11に記載の眼模型。
【請求項13】
請求項12に記載の眼模型の角膜部表面にコンタクトレンズを装着する工程、及び
上眼瞼部及び下眼瞼部の一対の対向縁間を基体の伸縮により開閉させる工程
を有するコンタクトレンズの装脱トレーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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