説明

眼科及び耳鼻咽喉科用のデバイス材料

強度が向上した柔軟且つ高屈折率のデバイス材料が開示される。これらの材料は単官能性又は二官能性アクリレート又はメタクリレート末端芳香族官能メタクリル又はアクリルマクロマーを含む。1つの実施形態において、本発明は、a)単官能性アクリレート又はメタクリレートモノマー[1];b)二官能性アクリレート又はメタクリレート架橋剤[2];及びc)アクリレート若しくはメタクリレート末端芳香族官能メタクリル若しくはアクリルマクロマー[3]、又はアクリレート若しくはメタクリレート末端芳香族官能メタクリル若しくはアクリルマクロマー[4]を含む、眼科用及び耳鼻咽喉科用ポリマーデバイス材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改良された眼科及び耳鼻咽喉科用のデバイス材料を対象とする。特に、本発明は、強度の向上した、柔軟且つ高屈折率のアクリル系デバイス材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
小切開白内障手術における最近の進歩に伴い、人工レンズで使用するのに好適な柔軟且つ折り曲げ可能な材料の開発により重点が置かれてきている。一般的に、これらの材料は、以下の3つのカテゴリー:即ち、ヒドロゲル、シリコン及びアクリル系の一つに含まれる。
【0003】
一般的に、ヒドロゲル材料は、屈折率が比較的低く、所定の屈折力を達成するにはより厚い光学レンズが必要となるため、その他の材料よりも望ましくない点が見られる。シリコン材料は一般的にヒドロゲルよりも屈折率が高いが、折り曲げた状態で眼に付けると、急激に広がる傾向がある。急激な広がりは、角膜内皮を損傷し、及び/又は天然の水晶体被膜を破裂させる可能性がある。それに対し、アクリル系材料は、一般的に屈折率が高く、シリコン材料よりもゆっくりと広がり、制御しやすいことから、望ましいとされる。
【0004】
米国特許第5,290,892号(特許文献1)は、眼内レンズ(IOL)材料として使用するのに好適な高屈折率のアクリル系材料を開示している。これらのアクリル系材料は、主要な成分として2種類のアリールアクリルモノマーを含む。これらのアクリル系材料で製造されるIOLは、小切開により挿入するために、丸めたり、折り曲げたりすることができる。
【0005】
米国特許第5,331,073号(特許文献2)は又、柔軟なアクリル系IOL材料を開示している。これらの材料は、主要成分として、それぞれのホモポリマーの特性により定義される2種類のアクリルモノマーを含む。第一のモノマーは、ホモポリマーが少なくとも約1.50の屈折率を有するものとして定義される。第二のポリマーは、ホモポリマーが約22℃未満のガラス転移温度を有するものとして定義される。これらのIOL材料は又、架橋成分も含む。更に、これらの材料は場合により、親水性モノマーに由来する最初の3種類の成分とは異なる第四の成分を含む場合もある。これらの材料は、好ましくは、合計で約15重量%未満の親水性成分を有する。
【0006】
米国特許第5,693,095号(特許文献3)は、2つの主要成分(1つはアリールアクリル系疎水性モノマー、もう1つは親水性モノマー)のみを少なくとも約90重量%含む、折り曲げ可能な高屈折率の眼科用レンズ材料を開示している。このアリールアクリル系疎水性モノマーは、以下の式を有する。
【0007】
【化2】

(式中、XはH又はCHであり;mは1〜6であり;Yは存在しないか、O、S又はNRであって、ここでRはH、CH、C2n+1(n=1〜10)、イソ−OC、C、又はCHであり;Arは、CH、C、n−C、イソ−C、OCH、C11、Cl、Br、C、又はCHで置換されていなくても置換されていてもよい、任意の芳香環である)
米国特許第5,693,095号(特許文献3)に記載のレンズ材料は、好ましくは、約−20〜+25℃のガラス転移温度(T)を有する。
【0008】
柔軟な眼内レンズは、小切開により折り曲げられ、挿入される場合がある。一般的には、より柔軟な材料ほど、より大きく変形させることができ、より小さな切開で材料を挿入するできるようになる。柔軟なアクリル系又はメタクリル系材料は一般的に、シリコン系IOLで必要とされるほどに小さな切開によりIOLを挿入できるようにするのに適切な、強度、柔軟性及び非粘着性表面特性の組み合わせを有していない。シリコンエラストマーの機械的特性は、無機充填材、一般的には表面処理シリカを添加することによって向上する。表面処理シリカは、柔軟なアクリル系ゴムの機械的特性も向上させるが、完成品の光学的透明度を低下させる。そのため、柔軟なアクリル系ゴムに近い屈折率を有する代替の充填材材料が必要とされている。
【0009】
柔軟なポリマーへ補強充填材を添加する方法は、引張強度及び引裂抵抗を向上させることが知られている。補強とは、ポリマーを硬化させ、ポリマー鎖の運動の局所的な自由を制限することによりその強靱性を高め、弱い固定点のネットワークを導入することにより構造を強化することである。特定の充填材の補強性能は、その特性(例えば、サイズ及び界面化学)、充填剤を使用するエラストマーの種類、及び存在する充填材の量により異なる。従来の充填剤には、カーボンブラック及びシリコンフィルターが含まれ、その粒子径(最大表エリアの場合)及び湿潤性(結合強度の場合)が最も重要となる。マトリクスと充填材の間の共有化学結合は、一般的に効果的な補強には必要でない。レビューについては、Boonstra,“Role of particulate fillers in elastomer reinforcement:a review”Polymer 1979,20,691(非特許文献1);及びGu,et al.,“Preparation of high strength and optically transparent silicone rubber”Eur.Polym.J.1998,34,1727(非特許文献2)を参照されたい。
【特許文献1】米国特許第5,290,892号明細書
【特許文献2】米国特許第5,331,073号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,095号明細書
【非特許文献1】Boonstra,“Role of particulate fillers in elastomer reinforcement:a review”Polymer 1979,20,691
【非特許文献2】Gu,et al.,“Preparation of high strength and optically transparent silicone rubber”Eur.Polym.J.1998,34,1727
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
特にIOLとして使用するのに好適であるが、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜リング又はインレー、耳科用風管及び鼻の移植片等の、眼科又は耳鼻咽喉科用デバイスとしても有用である、改良された柔軟且つ折り曲げ可能なアクリル系デバイス材料が発見されている。これらのポリマー材料は、従来のブロックコポリマーにおいて見られるのと同様のミクロ相分離ドメインを含む。ミクロ相分離ドメインの存在は、充填材を添加する必要なく強度を向上させ、ポリマー材料の表面特性に影響を及ぼす。本発明の材料の特性は、仕込み比が同じ統計的(ランダムな)コポリマーと異なっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
特に指示がない限り、成分量は全て重量%(w/w)をベース(重量%)として表される。
【0012】
本発明のデバイス材料は、自己補強性ポリマー材料である。この材料は、a)単官能性アクリレート又はメタクリレートモノマー[1]、b)二官能性アクリレート又はメタクリレート架橋剤[2]、及びc)アクリレート又はメタクリレート末端芳香族官能メタクリル又はアクリルマクロモノマー[3]又は[4]を含むコポリマーである。一実施形態において、本材料は、a)単官能性アクリレート又はメタクリレートモノマー[1]、b)二官能性アクリレート又はメタクリレート架橋剤[2]、及びc)アクリレート又はメタクリレート末端芳香族官能メタクリル又はアクリルマクロモノマー[3]、及びアクリレート又はメタクリレート末端芳香族官能メタクリル又はアクリルマクロモノマー[4]を含む。
【0013】
【化3】

(式中、
B=O(CH、NH(CH又はNCH(CHであり;
D=Cl、Br、H又は−CHC(=CH)C(O)XYであり;
E=H又はCHであり;
G=H、C(E)(CH)C(O)X(CHH、C(E)(CH)C(O)X(CHCHO)CH、又はC(E)(CH)C(O)X’Z’X’C(O)C(R’)=CHであり;
R、R’は独立してH、CH又はCHCHであり;
X、X’は独立してO(CH、NH(CH、NCH(CH、O(CHCHO)CH、O(CHCHCHO)CH、O(CHCHCHCHO)CH、又は存在せず;
J=(CH、O(CHCHO)、O、又は存在せず;
n=0〜6であり;
Y=C、(CHH、(CH、OH、CHCH(OH)CHOH、(OCHCHOCH、又は(OCHCHOCHCHであり;
m=0〜12であり;
Z、Z’は独立して−(CH−、−(CHCHO)−、−(CHCHCHCHO)−、−C−、−CC(CH)(CH)C−、又は−[(CH(CHCH)CH)(CHCH)]−であり;
a=1〜12であり;
b=1〜24であり;
p=5〜400であり;
q=1〜80である)
これらの成分のフリーラジカル重合により、架橋ポリマーネットワークが、並びにマクロモノマーの分子量によっては、ブロックコポリマー中に存在するものと同様の相分離ポリアクリレート及びポリメタクリレートドメインが生じる。これらの相分離ドメインは、得られた材料の強度及び表面特性に影響を及ぼし、仕込み比が同じランダムコポリマーと材料特性が異なるコポリマーを生成する。
【0014】
式[1]の好ましいモノマーは、
R=Hであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの;
R=Hであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの;及び
R=CHであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの
である。
【0015】
式[2]の好ましいモノマーは、
R=Hであり、X=OCHであり、J=(CHであるもの;
R=CHであり、X=OCHであり、Jが存在しないもの;及び
R=CHであり、Xが存在せず、J=O(CHCHO)(式中bは10より大きい)であるもの
である。
【0016】
式[3]の好ましいマクロマーは、
R=H又はCHであり;
G=C(E)(CH)C(O)X’Z’X’C(O)C(R’)=CHであり;
X=O(CHであり、X’=O(式中n=1〜3である)であり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
Z及びZ’=(CHであり;及び
pが、マクロマー[3]の数平均分子量(M)が5,000〜50,000となるような数である、
ものである。
【0017】
式[3]のその他の好ましいマクロマーは、
R=H又はCHであり;
D=−CHC(=CH)C(O)XYであり;
X=O(CH(式中n=1〜3である)であり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
Z及びZ’=(CHであり;
pが、Mが5,000〜50,000となるような数である、
ものである。
【0018】
式[4]の好ましいマクロマーは、
R=H又はCHであり;
X=O(CH(式中n=1〜3である)であり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
D=CHC(=CH)C(O)XYであり;
X’=Oであり;
Z’=(CHであり;
pが、Mが1,000〜10,000となるような数である、
ものである。
【0019】
式[1]のモノマーは既知であり、既知の方法で製造することができる。例えば、米国特許第5,331,073号及び第5,290,892号を参照されたい。式[1]のモノマーの多くは、様々な供給元から販売されている。
【0020】
式[2]のモノマーは既知であり、既知の方法で製造することができ、市販されている。式[2]の好ましいモノマーには、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;ポリ(エチレンオキシド)ジメタクリレート(数平均分子量600〜1000);及びそれらの対応するアクリレートが含まれる。
【0021】
式[3]及び[4]のマクロマーは既知である。これらは、場合により市販されており、既知の方法で製造することができる。式[3]及び[4]のマクロモノマーは、直鎖又は分岐アクリル又はメタクリルポリマーの末端官能基に、重合可能な基を共有結合させることにより製造することができる。例えば、ヒドロキシ末端ポリ(メチルメタクリレート)は、メチルメタクリレートをアニオン重合することにより合成した後、エチレンオキシドで終結させて官能基化し、ヒドロキシ末端ポリ(メチルメタクリレート)を製造する場合がある。末端ヒドロキシル基は、アクリレート又はメタクリレート官能性を有する鎖末端の一方又は両方に末端キャップ構造を有する。末端キャップは、例えば、塩化メタクリロイルとのエステル化、又はイソシアネートとの反応によりカルバメート結合を形成する既知の方法により、共有結合する。一般的には、内容全体が本明細書に参考として組み入れられている、米国特許第3,862,077号及び第3,842,059号を参照されたい。
【0022】
式[3]及び[4]のマクロマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)条件を使用して製造することもできる。例えば、ヒドロキシ末端開始剤(ヒドロキシエチルブロモイソブチレート)を、ハロゲン化銅及び可溶化アミン配位子と結合させることができる。これは、アクリレート又はメタクリレートモノマーの重合を開始させるために使用することができる。次いで、得られたヒドロキシ末端ポリ(アクリレート)又はポリ(メタクリレート)を、塩化メタクリロイル又はイソシアナートエチルメタクリレートと反応させることができる。一般的には、米国特許第5,852,129号、第5,763,548号、及び第5,789,487号を参照されたい。
【0023】
本発明のコポリマー材料の柔軟性は主に、モノマー[1]から形成されるホモポリマーのガラス転移温度により異なる。モノマー[1]の濃度は一般的に、全(モノマー+マクロマー+架橋剤)濃度の少なくとも50%であり、好ましくは65〜85重量%である。二官能性架橋剤[2]の濃度は一般的に、R=CHであり、Xが存在せず、D=O(CHCHO)(式中bは5より大きい)である場合に、全濃度の10〜15重量%であり、好ましくは、より低分子量の二官能性架橋剤において、例えば、R=Hであり、X=OCHであり、D=(CHである場合に、好ましくは約3重量%未満である。
【0024】
本発明の材料は、[3]又は[4]の少なくとも1つのマクロマーを有するが、[3]及び[4]のマクロマーを有してもよい。マクロマー[3]及び[4]の合計量は、柔軟性ポリマー材料の形成を確実するためにモノマー[1]から形成されるホモポリマーのガラス転移温度により異なる。本発明のコポリマー材料は、全体で少なくとも5重量%のマクロマー[3]及び[4]を含む。R=CH又はCHCHであるマクロマーの場合、マクロマー[3]及び[4]の全濃度は、一般的に50重量%未満、好ましくは35重量%未満である。一方、R=Hであるマクロマーの場合、マクロマー濃度は50重量%を超えて65重量%以上に増大しても、このような材料からなるIOLを小さな外科切開部(<2.8mm)に挿入できるような柔軟性を備えたコポリマー材料が得られる。このような(マクロマー[3]又は[4]の場合は、R=Hであり、濃度が50重量%を超える)場合は、モノマー[1]、モノマー[2]及びマクロマー[3]及び/又は[4]の混合物の粘度が更に重要となる。又、マクロマーの投入量もマクロマーの分子量により異なる。マクロマー[3]及び[4]は、それらの分子量の関数として、得られるコポリマー材料の弾性率を上昇させ、柔軟性を減少させる傾向がある。より低分子量の場合、マクロマー[3]及び[4]は、混和性を有する場合があり、Tに対する効果は、従来のコポリマーにより近い。それに対し、より高い分子量又は全体マクロマー濃度の場合には、相分離が増大する場合があり、別個のマクロマー相及び2つのTを許容する場合がある。一実施形態において、R=CH又はCHCHであるマクロマー[3]の数平均分子量は10,000〜25,000である。
【0025】
本発明のコポリマー性デバイス材料は、重合可能なUV吸収剤及び重合可能な着色剤からなる群から選択される、1つ以上の成分を場合により含む。好ましくは、本発明のデバイス材料は、式[1]及び[2]のモノマー、マクロマー[3]及び[4]、及び重合可能なUV吸収剤及び着色剤に加えて、その他の成分を含まない。
【0026】
本発明のデバイス材料は、反応性UV吸収剤又は反応性着色剤を場合により含む。反応性UV吸収剤は多くが既知である。好ましい反応性UV吸収剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、o−Methallyl Tinuvin P(oMTP)としてPolysciences,Inc.(米国ペンシルベニア州ウォリントン)により販売されている。UV吸収剤は一般的に、約0.1〜5%(重量)の量で存在する。好適な反応性青色光吸収化合物には、米国特許第5,470,932号に記載のものが含まれる。青色光吸収剤は一般的に、約0.01〜0.5%(重量)の量で存在する。IOLの製造に使用される場合、本発明のデバイス材料は、好ましくは、反応性UV吸収剤及び反応性着色剤を含む。
【0027】
本発明のデバイス材料を形成するには、選択した成分[1]、[2]、及び[3]及び/又は[4]を混合し、加熱又は放射の作用による重合を開始するためにラジカル開始剤を使用して重合する。デバイス材料は、好ましくは、窒素下で脱気したポリプロピレン鋳型中で、又はガラス鋳型中で重合される。
【0028】
好適な重合開始剤には、熱開始剤及び光開始剤が含まれる。好ましい熱開始剤には、t−ブチル(ペルオキシ−2−エチル)ヘキサノエート及びジ−(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート(Perkadox(登録商標)としてAkzo Chemical Inc.[米国イリノイ州シカゴ]から販売)等のペルオキシ遊離基開始剤が含まれる。特に、本発明の材料が青色光吸収剤発色団を含まない場合、好ましい光開始剤には、Lucirin(登録商標)TPOとしてBASF Corporation(米国ノースカロライナ州シャーロット)から販売される2,4,6−トリメチル−ベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシド等のベンゾイルホスフィンオキシドが含まれる。開始剤は、一般的に全処方重量の約5%以下の量で、更に好ましくは全処方重量の2%未満の量で存在する。成分量を計算する際の恒例として、開始剤の重量は、処方重量%の計算に含まれていない。
【0029】
前述の成分の特定の組み合わせ、及び何れかの追加成分の同一性及び量は、完成したデバイス材料の所望の特性により測定される。好ましい実施態様において、本発明のデバイス材料は、圧縮又は伸長させて、2mm以下の外科切開部に挿入するように設計されている、光学直径が5.5又は6mmのIOLを製造するのに使用される。
【0030】
デバイス材料は、589nm(Na光源)及び25℃にてアッベ屈折計により測定した場合に、乾燥状態で好ましくは少なくとも約1.47、更に好ましくは少なくとも約1.50の屈折率を有する。屈折率が1.47未満の材料から製造される光学製品は、より屈折率が高い材料から製造される同じ性能の光学製品よりも必然的に厚みが増す。そのため、機械的特性が同等で、屈折率が約1.47未満の材料から製造されるIOL光学製品は一般的に、IOLを移植するための切開部が比較的大きくなる。
【0031】
材料の形態又は相構造は、マクロマーの濃度、分子量、コポリマーネットワーク中におけるその混和性(分子量にもよる)、及び重合法により異なる。ミクロ相分離挙動は、示差走査熱量測定法(DSC)により認められる。ミクロ相分離材料は、2つのガラス転移温度(T)を示す。連続相及び不連続相は、それぞれ別個のTを示す。連続相のTは主に材料の柔軟特性、並びに折り曲げ及び展開特性を決定し、好ましくは約+25℃未満であり、更に好ましくは約0℃未満である。不連続相のTは、連続相のTよりも、材料の柔軟性に及ぼす影響が少ない。Tは、10℃/分にて示差走査熱量測定法により測定され、一般的に、熱流束対温度曲線の遷移の中間点で決定される。
【0032】
デバイス材料は、少なくとも150%、更に好ましく少なくとも300%の伸長性を有し、6.0MPa未満、更に好ましくは5.0MPa未満のヤング率を有する。これらの特性は、このような材料から製造されるレンズが容易に折り曲げることができ、折り曲げた時にひび割れ、引裂又は割れが生じないことを示している。ポリマー試料の引張特性は、全長が20mm、グリップエリアの長さが4.8mm、全体幅が2.49mm、が狭い切片の幅0.833mm、フィレット半径が8.83mm、及び厚さ0.9mmの、ダンベル型をした引張試験用試料を使用して測定される。試験は、50Nのロードセルを備えたInstron Material Tester 4400を使用して、23±2℃及び相対湿度50±5%の標準的な実験条件下における試料にて実施する。グリップ距離は14mm、クロスヘッド速度は500mm/分であり、試料は壊れるまで引っ張る。伸長率(歪度)は、元のグリップ距離に対する破断時のずれの割合として報告する。弾性率は、歪度(ヤング率)0%、歪度(弾性率)25%、及び歪度(弾性率)100%における応力−歪み曲線の瞬間の傾きとして計算する。引裂抵抗は、ASTM D624−91 “Standard Test Method for Tear Strength of Conventional Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers”に従い、刻み目のない90℃角の試料(Die C)を使用して測定した。試験試料は、全長20mm、ゲージ長9.0mm及び厚さ0.9mmであった。試験は、50Nのロードセルを備えたInstron Material Tester 4400を使用して、23±2℃の標準的な実験条件下における試料にて実施した。グリップ距離は9.0mm、クロスヘッド速度は500mm/分であり、試料は壊れるまで引っ張った。引裂抵抗(引裂強度)は、試験時に得られた最大引張力を試料の厚さで除算して計算した。
【0033】
本発明のデバイス材料で構成されたIOLは、2mmの切開部に適応可能な、小さな断面に伸縮させることができる何れの設計であってもよい。例えば、IOLは、一体型又は組立て型の設計として知られるものがあり、光学製品及び触覚部品を含む。光学製品とは、レンズの役割を果たす部分であり、触覚部品とは、光学製品に結合して、光学製品を眼の適切な位置に保持するアームのようなものである。光学製品及び触覚部品は、同一の材料であってもよければ、異なる材料であってもよい。光学製品及び触覚部品は別個に製造された後、触覚部品を光学製品に結合することから、組立レンズと呼ばれている。一体型レンズでは、光学製品と触覚部品が1つの材料から製造される。材料によっては、触覚部品を材料から切断又は切削加工することよって、IOLを製造する。
【0034】
IOLの他にも、本発明の材料は、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜インレー又はリング、耳科用風管及び鼻の移植片等の、眼科又は耳鼻咽喉科用デバイスとして使用するにも好適である。
【0035】
以下の実施例により本発明を更に詳細に例示するが、これらの実施例は、本発明を限定することを目的としたものではなく、例示することを目的としたものである。
【実施例1】
【0036】
ヒドロキシル末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)の合成
合成操作は全て、Nを充填したグローブボックス中で行った。PTFEで被覆した磁気攪拌子を入れたシュレンク管に、0.3340g(3.374mmol)のCuCl、1.9665g(11.09mmol)のN,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、30.9268g(162.57mmol)の2−フェニルエチルメタクリレート(PEMA)、及び30mLのアニソールを充填した。フラスコを油浴中で50℃に温め、0.4296g(2.036mmol)の2−ヒドロキシルエチル−2−ブロモイソブチレートを添加した。反応物を50℃に3時間維持した後、室温に冷却した。この産物を酢酸エチルで希釈し、カラムクロマトグラフィーによって精製した。更に産物を0℃にてアセトンから大過剰のメタノールに沈殿させて精製した。この産物を真空ろ過によって単離し、冷メタノールで十分に洗浄した後、周囲温度にて真空乾燥させて、20.5920g(67%)の白色固体を得た。分子量はポリスチレン基準試料と対照させてテトラヒドロフラン(THF)中でGPCにより測定した。
【実施例2】
【0037】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー[3]の合成
PTFEで被覆した磁気攪拌子を入れ、炉乾燥させたシュレンク管にNを流し、Mが21,273のヒドロキシル末端ポリ(PEMA)20.3434g(GPCのMによると0.97mmolのヒドロキシル基)を充填した。そして無水ジクロロメタン(50mL)を添加して、ポリマーを溶解させた。次に、トリエチルアミン(0.30mL、2.15mmol)を添加した。フラスコを氷浴に浸し、メタクリロイルクロライド(0.15mL、1.55mmol)を攪拌しながら滴下した。その後氷浴を取り除き、反応物をN下にて周囲温度に7日間維持した。この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、ジクロロメタン移動相を有するシリカゲルカラムで粗ポリマーをクロマトグラフィーにかけた。その溶離液をロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、ポリマーを冷メタノールに沈殿させて単離した。産物を真空ろ過によって単離し、メタノールで十分に洗浄し、周囲温度にて真空乾燥させて、15.8401g(78%)の白色固体を得た。
【実施例3】
【0038】
ヒドロキシル末端ポリ(2−フェニルエチルアクリレート)の合成
合成操作は全て、Nを充填したグローブボックス中で行った。PTFEで被覆した磁気攪拌子を入れたシュレンク管に、0.2438g(1.700mmol)のCuBr、0.6713g(3.786mmol)のN,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、7.0941g(40.26mmol)の2−フェニルエチルアクリレート(PEA)を充填した。フラスコを50°Cの油浴中に入れ、0.2840g(1.346mmol)の2−ヒドロキシルエチル−2−ブロモイソブチレートを添加した。反応物を50℃にて2時間維持した後、室温に冷却した。この産物をテトラヒドロフランで希釈し、カラムクロマトグラフィーによって精製した。更に産物を−50℃にてジクロロメタンから大過剰のメタノールに沈殿させて精製した。この産物を低温真空ろ過によって単離し、冷メタノールで十分に洗浄した後、周囲温度にて真空乾燥させて、薄黄色の粘稠液4.761g(67%)を得た。分子量はポリスチレン基準試料と対照させてTHF中でGPCにより測定した。
【実施例4】
【0039】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルアクリレート)マクロマー[3]の合成
PTFEで被覆した磁気攪拌子を入れ、添加漏斗を備え、炉乾燥させた三口丸底フラスコにNを流し、Mが5,676のヒドロキシル末端ポリ(PEA)4.7610g(GPCのM基準のヒドロキシル基0.84mmol)を充填した。そして無水ジクロロメタン(15mL)を添加して、ポリマーを溶解させた。次に、トリエチルアミン(0.15mL、1.08mmol)を添加した。フラスコを氷浴に浸し、メタクリロイルクロライド(0.14mL、1.45mmol)を添加漏斗に入れ、2mlのジクロロメタンで希釈した。このメタクリロイルクロライド溶液を攪拌しながら滴下した。添加が完了したら、氷浴を取り除き、反応物をN下にて周囲温度に4日間維持した。この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、ジクロロメタン移動相を有する塩基性アルミナカラムで粗ポリマーをクロマトグラフィーにかけた。その溶離液を分液漏斗に移し、1M−HClで2回、脱イオン水で2回、そして飽和NaClで洗浄した。有機相はろ過した無水MgSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去して、2.9804g(63%)の無色の粘稠液を得た。
【実施例5】
【0040】
2−フェニルエチルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートの共重合
シンチレーションバイアルに、0.6204g(3.261mmol、30.85重量%)の2−フェニルエチルメタクリレート(PEMA)、1.3261g(7.526mmol、65.96重量%)の2−フェニルエチルアクリレート(PEA)、0.0641g(0.323mmol、3.19重量%)の1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、及び0.0264g(0.161mmol)の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Darocur 1173)を充填した。この溶液を十分に混合させた後、Nで脱気した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出し、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表1に示す。
【実施例6】
【0041】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:15,460)と、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
シンチレーションバイアルに、0.6114g(3.214mmol、30.45重量%)のメタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)(ポリPEMA−MA)、1.3336g(7.568mmol、66.42重量%)の2−フェニルエチルアクリレート(PEA)、0.0629g(0.317mmol、3.13重量%)の1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、及び0.0247g(0.150mmol)の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Darocur 1173)を充填した。この溶液をポリPEMA−MAが溶解するまで混合させた後、Nで脱気した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出し、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表1に示す。
【実施例7】
【0042】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:18,470)と、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
シンチレーションバイアルに、0.6114g(3.214mmol、30.47重量%)のポリPEMA−MA、1.3259g(7.525mmol、66.09重量%)のPEA、0.0690g(0.348mmol、3.44重量%)のBDDA、及び0.0227g(0.138mmol)のDarocur 1173を充填した。この溶液を混合させてポリPEMA−MAを溶解させた後、Nで脱気した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出した後、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表1に示す。
【実施例8】
【0043】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:24,624)と、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
シンチレーションバイアルに、1.2218g(6.422mmol、30.55重量%)のポリPEMA−MA、2.6495g(15.04mmol、66.26重量%)のPEA、0.1276g(0.644mmol、3.19重量%)のBDDA、及び0.0407g(0.248mmol、1.02重量%)のDarocur 1173を充填した。この溶液を混合させてポリPEMA−MAを溶解させた後、Nで脱気し、1μmのグラスファイバーフィルターでろ過した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出した後、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表1に示す。
【0044】
【表1】

表1のデータは、マクロマー[3]を添加することにより、破断することなくより変形させることができる柔軟なアクリル系ポリマーの強度特性を向上させることができることを示している。例えば、表1において、2−フェニルエチルアクリレートポリ(PEMA)MAグラフトコポリマー(実施例6)は、モノマー仕込み比が同じ2−フェニルエチルアクリレート及び2−フェニルエチルメタクリレートのランダムコポリマー(実施例5)に比べて、引張強度及び引裂抵抗が向上している。
【実施例9】
【0045】
2−フェニルエチルメタクリレート、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートの共重合
シンチレーションバイアルに、2.5011g(13.15mmol、25.0重量%)のPEMA、7.4014g(42.00mmol、74.0重量%)のPEA、0.1007g(0.508mmol、1.00重量%)のBDDA、及び0.1006g(0.613mmol)のDarocur 1173を充填した。この溶液を十分に混合させた後、Nで脱気した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出し、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表2に示す。
【実施例10】
【0046】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:18,470)と、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
シンチレーションバイアルに、0.5011g(2.634mmol、24.85重量%)のポリPEMA−MA、1.4935g(8.476mmol、74.07重量%)のPEA、0.0216g(0.109mmol、1.07重量%)のBDDA、及び0.0212g(0.129mmol)のDarocur 1173を充填した。この溶液を混合させてポリPEMA−MAを溶解させた後、Nで脱気した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出した後、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表2に示す。
【実施例11】
【0047】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:24,624)と、2−フェニルエチルアクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
シンチレーションバイアルに、1.0010g(5.262mmol、24.96重量%)のポリPEMA−MA、2.9701g(16.86mmol、74.06重量%)のPEA、0.0393g(0.198mmol、0.98重量%)のBDDA、及び0.0385g(0.234mmol、0.96重量%)のDarocur 1173を充填した。この溶液を混合させてポリPEMA−MAを溶解させた後、Nで脱気し、1μmのグラスファイバーフィルターでろ過した。配合物をポリプロピレン鋳型に移し、紫外線(約3.0mW/cm、365nm)に30分間露光させて重合させた。得られたポリマーをアセトン中で3時間かけて抽出した後、新しいアセトンで洗浄し、風乾させた。抽出したポリマーは、60℃にて少なくとも3時間真空乾燥させた。抽出物の量は、重力測定法により測定した。代表的な特性を表2に示す。
【0048】
【表2】

表2のデータも、マクロマー[3]を添加することにより、破断することなくより変形させることができる柔軟なアクリル系ポリマーの強度特性を向上させることができることを示している。例えば、表2において、2−フェニルエチルアクリレートポリ(PEMA)MAグラフトコポリマー(実施例10)は、モノマー仕込み比が同じ2−フェニルエチルアクリレート及び2−フェニルエチルメタクリレートのランダムコポリマー(実施例9)に比べて、引張強度及び引裂抵抗が向上している。
【実施例12】
【0049】
メタクリレート末端ポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー(M:6,300)と、2−フェニルエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートとの共重合
20mLのシンチレーションバイアルに、0.8072gのポリ(2−フェニルエチルメタクリレート)マクロマー、2.5693gの2−フェニルエチルアクリレート(PEA)、0.6131gの2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート(MEEMA)、及び0.0410gの1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)を充填した。バイアルを閉じ、攪拌してマクロモノマーを溶解させた。このモノマー混合物を1.0μmのグラスファイバー膜でろ過した。配合物は、モノマー混合物によりNをバブリングさせることにより脱気した。ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(0.0202g)を添加し、溶液を十分に混合させた。このモノマー混合物をN雰囲気下にて、脱気した真空のポリプロプレン鋳型に分取した。その後、充填した鋳型を70℃の機械的対流中に1時間入れた後、110℃にて2時間後硬化させた。産物をポリプロプレン鋳型から取り出して、残ったモノマーを室温にてアセトン抽出により除去した。この産物ポリマーを60℃にて真空乾燥させた。
【0050】
これらのコポリマー(実施例5〜12)は全て、鋳型として優れた透明度を有する。
【0051】
本発明のグラフトコポリマーは又、仕込み組成が同じランダムコポリマーに比べて、表面粘着性が少なく、そのためIOLの製造性及び操作性が向上する。
【0052】
以上において、特定の好ましい実施態様を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明は、特定の又は本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態又は変形で具体化される場合があることを理解しなければならない。従って、前述の実施態様は全ての点において例示的なものであり、限定的なものでなく、本発明の適用範囲は、前述の説明よりもむしろ、添付の特許請求の範囲により示されると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)単官能性アクリレート又はメタクリレートモノマー[1];
b)二官能性アクリレート又はメタクリレート架橋剤[2];及び
c)アクリレート若しくはメタクリレート末端芳香族官能メタクリル若しくはアクリルマクロマー[3]、又はアクリレート若しくはメタクリレート末端芳香族官能メタクリル若しくはアクリルマクロマー[4]
を含む、眼科用及び耳鼻咽喉科用ポリマーデバイス材料であって、
【化1】

式中、
B=O(CH、NH(CH又はNCH(CHであり;
D=Cl、Br、H又は−CHC(=CH)C(O)XYであり;
E=H又はCHであり;
G=H、C(E)(CH)C(O)X(CHH、C(E)(CH)C(O)X(CHCHO)CH、又はC(E)(CH)C(O)X’Z’X’C(O)C(R’)=CHであり;
R、R’は独立してH、CH又はCHCHであり;
X、X’は独立してO(CH、NH(CH、NCH(CH、O(CHCHO)CH、O(CHCHCHO)CH、O(CHCHCHCHO)CH、又は存在せず;
J=(CH、O(CHCHO)、O、又は存在せず;
n=0〜6であり;
Y=C、(CHH、(CH、OH、CHCH(OH)CHOH、(OCHCHOCH、又は(OCHCHOCHCHであり;
m=0〜12であり;
Z、Z’は独立して−(CH−、−(CHCHO)−、−(CHCHCHCHO)−、−C−、−CC(CH)(CH)C−、又は−[(CH(CHCH)CH)(CHCH)]−であり;
a=1〜12であり;
b=1〜24であり;
p=5〜400であり;
q=1〜80である、
ポリマーデバイス材料。
【請求項2】
式[1]の該モノマーが、
R=Hであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの;
R=Hであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの;及び
R=CHであり、B=O(CHであり、Y=Cであるもの
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項3】
式[2]の該モノマーが、
R=Hであり、X=OCHであり、J=(CHであるもの;
R=CHであり、X=OCHであり、Jが存在しないもの;及び
R=CHであり、Xが存在せず、J=O(CHCHO)(式中bは10より大きい)であるもの
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項4】
式[2]の該モノマーが、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート;ポリ(エチレンオキサイド)ジメタクリレート(数平均分子量600〜1000);及びそれらの対応するアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項5】
式[3]の該マクロマーが、
R=H又はCHであり;
G=C(E)(CH)C(O)X’Z’X’C(O)C(R’)=CHであり;
X=O(CHであり、X’=Oであり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
Z及びZ’=(CHであり;及び
pが、マクロマー[3]の数平均分子量(M)が5,000〜50,000となるような数である、
ものからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項6】
式[3]の該マクロマーが、
R=H又はCHであり;
D=−CHC(=CH)C(O)XYであり;
X=O(CHであり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
Z及びZ’=(CHであり;
pが、Mが5,000〜50,000となるような数である、
ものからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項7】
式[4]の該マクロマーが、
R=H又はCHであり;
X=O(CHであり;
Y=Cであり;
E=CHであり;
D=CHC(=CH)C(O)XYであり;
X’=Oであり;
Z’=(CHであり;
pが、Mが1,000〜10,000となるような数である、
ものからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーデバイス材料。
【請求項8】
式[1]のモノマー、式[2]のモノマー、式[3]のマクロマー、及び式[4]のマクロマーを含む、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項9】
式[1]のモノマーの合計量が、少なくとも35%(w/w)である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項10】
式[1]のモノマーの合計量が、65〜85%(w/w)である、請求項8に記載のデバイス材料。
【請求項11】
式[2]のモノマーの合計量が、15%(w/w)を超えない、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項12】
式[2]のモノマーの合計量が、3%(w/w)未満である、請求項11に記載のデバイス材料。
【請求項13】
マクロマー[3]及び[4]の合計量が、5〜55%(w/w)である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項14】
R=CH又はCHCHである式[3]のマクロマーを含み、デバイス材料中のマクロマー[3]の量が5〜35%であり、マクロマー[3]の数平均分子量が10,000〜25,000である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項15】
重合可能なUV吸収剤及び重合可能な着色剤からなる群から選択される成分を更に含む、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項16】
乾燥状態の屈折率が少なくとも1.47である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項17】
連続相のガラス転移温度が25℃未満である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項18】
伸長性が少なくとも150%であり、ヤング率が6.0MPa未満である、請求項1に記載のデバイス材料。
【請求項19】
眼内レンズ;コンタクトレンズ;人工角膜;角膜インレー又はリング;耳科用風管;及び鼻インプラントからなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス材料を含む眼科用又は耳鼻咽喉科用デバイス。
【請求項20】
請求項1に記載のデバイス材料を含む眼内レンズ。

【公表番号】特表2008−543432(P2008−543432A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516977(P2008−516977)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/022808
【国際公開番号】WO2006/138213
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】