眼科情報処理システム、眼科情報処理方法及びプログラム
【課題】経過観察時のC/D比描画の効率化を図る。
【解決手段】眼科情報処理システムは眼科画像5、C/D比の描画情報6などを記憶する記憶部4、データ入力部8の選択画像を示す第一眼科検査データ9Aとその過去データである第二眼科検査データ9Bより、2つの眼科画像を位置合わせ部10により位置合わせを行う。表示部に第一眼科検査データ9Aの眼科画像5を表示させ、位置合わせ情報を基に眼科画像5上に第二眼科検査データのC/D比の描画情報を第二眼科検査データ1と区別して表示する。C/D比入力部13でC/D比を入力する際に、第二眼科検査データのC/D比の描画情報を反映して描画情報を編集する。
【解決手段】眼科情報処理システムは眼科画像5、C/D比の描画情報6などを記憶する記憶部4、データ入力部8の選択画像を示す第一眼科検査データ9Aとその過去データである第二眼科検査データ9Bより、2つの眼科画像を位置合わせ部10により位置合わせを行う。表示部に第一眼科検査データ9Aの眼科画像5を表示させ、位置合わせ情報を基に眼科画像5上に第二眼科検査データのC/D比の描画情報を第二眼科検査データ1と区別して表示する。C/D比入力部13でC/D比を入力する際に、第二眼科検査データのC/D比の描画情報を反映して描画情報を編集する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像から視神経乳頭部の検出解析を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視機能障害の一つに緑内障がある。緑内障の検査では診断する指標として、視神経乳頭の陥没状態を反映するC/D比が従来から広く用いられている。眼底画像を用いて求めるC/D比は、視神経乳頭部(以下、乳頭)のディスクと呼ばれる乳頭外縁(D)とカップと呼ばれる乳頭凹の外縁(C)から、それぞれの径の比や面積比で定義されている。なお、垂直方向における直径比を垂直C/D比と呼び、水平方向における直径比を水平C/D比と呼ぶことがある。特にカップの上下方向への変化が多いため、垂直方向のC/D比を指標として用いられることが多い。
【0003】
また、近年ではR/D比も緑内障診断に用いられるようになってきている。R/D比は、乳頭外縁と乳頭凹の外縁に挟まれたリム領域の幅(R)と、この幅の計測位置及び乳頭中心を通る乳頭外縁径との比として定義される。近年、眼底画像を解析してC/D比やC/D比を求める様々な手法が開発されている(特許文献1、2参照)。さらに、これらC/D比やR/D比を求めるために眼底画像上に描画したディスクライン、カップライン、リムラインの描画情報を眼底画像のアノテーション情報として記録しておき、経過観察時に過去の描画情報との差分を視覚的に表示する手法も開発されている(特許文献3参照)。また、眼科分野では、眼科画像を参照して医師などの所見を入力するためのシステムも利用されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−280411号公報
【特許文献2】特開2008−154951号公報
【特許文献3】特開2009−22506号公報
【特許文献4】特開2009−106532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、眼底画像上に描画されるディスクラインやカップラインなどの描画解析は、通常オペレータ(例えば、医師)によって操作されるため、正確なラインを描画するには十分な経験が必要である。特に経過観察では、変化がない箇所に対しては毎回同じ位置にライン描画されていなければ測定誤差が生じ、正確なC/D比の経過観察にならない。また、眼底画像より乳頭を自動抽出し、ディスクライン、カップラインを描画するシステムも存在するが、正確なラインまで認識することが困難であり、オペレータが描画されたラインを修正することが多いため、オペレータの経験が必要である。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、C/D比の変化の経過観察を行う際に、前回の描画と同じ位置に描画が行えるようにオペレータの作業を支援し、経過観察時のC/D比変化量の誤差を減らすことのできる眼科情報処理システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の眼科情報処理システムは、眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理システムであって、同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する記憶手段と、前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する付加手段と、前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る算出手段と、前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする位置合わせ手段と、前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する入力手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、経過観察時における眼底画像に描画するC/D比のライン情報が毎回同じ位置にあるか否かを確認しながら描画することで、経過観察時の測定誤差を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの機能的構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムのハードウェア構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの処理を示すフローチャート図である。
【図4】選択画像のデータを示す図である。
【図5】データベース上にあるデータを検索した結果のデータを示す図である。
【図6】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図7】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図8】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図9】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図10】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図11】C/D比描画の比較画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの機能的構成を示す図である。本実施形態に係る眼科情報処理システムは、オペレータが使用するコンピュータを含んで構成される。このコンピュータは、例えば、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して、眼科画像や患者情報などを保管管理するデータベースに接続されている。なお、眼科情報処理システムは、コンピュータ単体で構成されてもよいし、眼科画像等は、外部の記憶装置、例えばCD(Compact Disc)に保管されている構成でもよい。また、眼科情報処理システムは、通信回線を介して、眼科撮影装置に接続されてもよい。眼科撮影装置の例として、眼底カメラ、OCT(Optical Coherence Tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等がある。
【0012】
眼科情報処理システムには、図1に示すように、操作部1、表示部2、制御部3、記憶部4、C/D比入力部8、位置合わせ部9、変化量算出部10、が設けられている。まず、記憶部4について説明する。記憶部4には、眼科画像5、描画情報6、識別情報7が記憶される。眼科画像5は、上記の眼科撮影装置により取得された撮影対象(被検眼)の画像である。例としては、眼底カメラにより撮影された眼底像、OCTにより撮影された眼底の断層画像、SLOにより撮影された網膜や脈絡膜の画像等がある。眼底画像7には、被検眼の部位や、撮影日時、撮影条件等の付帯情報が付加されて記憶される。被検眼の部位には、左右眼情報や、乳頭、黄班等の情報が含まれる。また、撮影条件には、撮影画角、結像倍率、照明光の明るさ、固視灯の位置等の情報が含まれる。描画情報6は、C/D比入力部8により作成されるC/D比情報であり、制御部3によって記憶部4に記憶される。
【0013】
識別情報7は、各被検眼を識別するための情報である。例えば患者名や患者ID等の患者識別情報と個々の眼科画像を関連付けたものや、個々の眼科画像と個々の描画情報とを関連付けたものである。これにより、どの患者のどの部位に対する眼科画像であるか、また、その眼科画像のC/D比描画情報であるかを識別することが可能になる。関連付けの処理は制御部3により実行される。
【0014】
操作部1は、オペレータが眼科情報処理システムを操作するときや、C/D比情報を入力するときに使用される。操作部1は、オペレータによる操作を受けると、その操作内容に応じて操作信号を生成し、操作信号を制御部3に入力する。操作部1は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネルなど、任意の操作デバイス、入力デバイスを含んで構成される。
【0015】
表示部2は、制御部3に従って画面やデータを表示する。表示部2は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等、任意の表示デバイスから構成される。なお、操作部1で記載したタッチパネル等の操作部と表示部とを一体化したデバイスを使用することも可能である。この場合は、図1で示す操作部と表示部を一体化した構成になる。
【0016】
制御部3は、眼科情報処理システムの各部を制御する。制御に関しては後述する。C/D比入力部8は、C/D比の情報を入力するときに動作する。C/D比の情報とは、ディスク外周のライン(ディスクライン)とカップ外周のライン(カップライン)の位置情報である。C/D比を入力するには、眼科画像を表示部2に表示し、操作部1の操作によって行い、眼科画像のどの位置にC/D比の情報が入力されたかを処理し、結果を記憶する。C/D比情報のディスクラインとカップラインの決定は、オペレータがディスクラインを指定して入力する方法と、眼科画像の乳頭を自動で抽出してさらに、ディスクライン、カップラインを抽出して描画する方法がある。
【0017】
位置合わせ算出部9は、眼科画像と位置合わせしたい眼科画像とで位置合わせ処理した位置合わせ情報を補正値として算出し、この位置合わせ情報を基にC/D比情報の位置を合わせる処理を行う。変化量算出部10は、C/D比の変化量を算出する。例えば、記憶部4の描画情報6に記憶されているC/D比情報とC/D比情報との差分量を算出する。あるいは、C/D比情報とある点との最短距離を算出する。
【0018】
図2は、眼科情報処理システムのハードウェア構成の例を示している。眼科情報処理システムは、コンピュータ20を含んで構成される。データベース30は、眼科画像や患者情報等を保管管理するサーバなどを含んで構成される。コンピュータ20は、LANなどの通信回線を介してデータベース30に接続される。
【0019】
オペレータは、眼科画像の閲覧の要求をコンピュータ20に入力する。この要求は、例えば患者名や患者IDの患者識別情報を入力または選択し、所定の操作(キーボードの入力キー、マウスのクリック等)をすることによって行う。コンピュータ20は、入力された要求をデータベース30に送信する。データベース30は、この要求に基づいて眼科画像を検索して、コンピュータ20に送信する。コンピュータ20はこの検索結果を表示する。
【0020】
コンピュータ20は、例えば、図1の操作部1、表示部2、制御部3、C/D比入力部8、位置合わせ部9、変化量算出部10として機能する。データベース30は、記憶部4として機能する。コンピュータ20は、一般的なコンピュータの構成と同様に、演算処理としてのCPU21、主記憶装置として機能するRAM22、外部記憶装置として機能するROM23、外部記憶装置としてのHDD(ハードディスクドライブ)24を含み、ディスプレイ26、キーボード27、マウス28、通信I/F29を含んで構成される。コンピュータ20は、HDD24に格納されたプログラム25をRAM22上に展開することにより、この実施形態の動作を実行させる。
【0021】
図3は、本実施形態におけるC/D比描画のフローチャートを示している。このフローチャートでは、実施形態として眼科画像5を眼底カメラで撮影された眼底画像、表示部2の表示デバイスをディスプレイ、操作部1にマウス、キーボードを例に挙げながら説明する。
【0022】
まずステップS1で、オペレータは、マウスを操作してC/D比を描画する眼底画像を指定する。この操作は、例えば、眼底画像のサムネイル画像表示から画像をクリックし、画像を選択して実行する。選択実行されると、制御部3は選択画像の情報を読込み、画像に関連付けられている患者情報を読み込む。この読み込んだ選択画像のデータと関連付けられた患者情報を含んでデータをデータ1(第一眼科検査データ9A)とする。データ例を図4に示す。患者情報から患者ID,選択画像の情報から、検査UID、左右眼、部位、画像UID、撮影日、撮影時刻、C/D比データUID。C/D比データUIDは、C/D比のデータであるC/D比の描画情報(選択画像と関連づけられている位置情報)、C/D比の計測結果を格納している情報と関連付けられている。C/D比データUIDから、それらの情報を取得することができる。C/D比データが存在しない場合は、データの存在を示さない値(例えば、NULL等)が入力されている。なお、C/D比の描画情報は、選択画像上のある座標点の集合として表現される。
【0023】
次にステップS2で、前回のC/D比が存在するかどうかを確認する。図4のデータを例にすると、データ1の患者IDを“3”、左右眼を“L”、部位を“乳頭”、C/D比データUIDが存在するものを検索条件とすると、記憶部4から当確するデータを検索する。検索結果の例を図5に示す。C/D比データが複数存在する場合は、最新のC/D比データを取得する。図5を例にすると、画像UID257を選択して、S3を実行する。この時、画像の選択を図5のデータをリスト表示し、オペレータに選択させてもよい。
【0024】
ステップS3では、選択された画像を読み込む処理を行う。この読み込んだ画像データとそれに関連付けられたC/D比データを含んだデータをデータ2(第二眼科検査データ9B)とする。次にステップS4では、データ1の眼底画像とデータ2の眼底画像に対して位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理は位置合わせ部の画像位置合わせの処理を行う。この位置合わせを行う処理は、まず眼底画像から乳頭を自動抽出して、差分を補正値として算出し、この補正値に基づいて乳頭の位置合わせを行う。特に乳頭の中心が最も良く合うように位置を合わせる処理がよい。すなわち、視神経乳頭を前記眼科画像から乳頭領域を抽出する乳頭抽出手段を有し、この抽出手段により抽出した乳頭領域を用いて視神経乳頭の中心が最も良く位置が合うように位置合わせを行う。
【0025】
データ2のC/D比の描画情報のディスクラインの中心位置に対応するデータ2の画像位置が最も良く合うように処理してもよい。また、位置合わせは血管を抽出して位置を合わせてもよい。この場合も乳頭付近の血管位置が合うように位置合わせを行うのがよい。
【0026】
なお、画角が異なる場合の位置合わせは拡大、縮小の処理も行って位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理より、位置合わせ情報として、座標の移動量、回転の角度、拡大値が算出される。ステップS5は、ステップS4で算出された補正値(位置合わせ情報)によって位置合わせを行うかどうかを判定する。判定には、位置合わせ一致率(位置合わせ後の相関値)がある程度低い場合は、位置合わせ不一致として、位置合わせを行わないようにする。位置合わせ不一致の判定時の場合に、位置合わせを行わずにステップS7に処理を進めてもよいし、あるいは、検索結果を表示して、オペレータに前回のC/D比データを選択させてもよい。例えば、図5のデータをディスプレイに表示し、マウス操作でオペレータが選択する。選択された時は、再度ステップS3の処理に戻る。
【0027】
位置合わせを行う場合は、ステップS6に処理が進む。ステップS4で求めた補正値と、データ2のC/D比データの描画の位置情報より、データ1の眼底画像上にデータ2のC/D比を描画処理し描画情報をディスプレイに表示する。ステップS6処理完了時の画面の例を図6に示す。図6はC/D比の入力を行うための画面例である。画面上では、ステップS1で選択された眼底画像41を表示し、アノテーションリスト42より、アノテーションとして描画する項目をオペレータが選択する。C/D比を描画するためには、アノテーションリスト42よりC/D比をマウスのクリックなどで選択する。C/D比を計測する乳頭が43である。ステップS1の処理終了後に図6を表示し、アノテーションリスト42よりC/D比を選択した時に、ステップS2の処理を行ってもよい。
【0028】
ステップS6処理後の画面例を図7に示す。データ2のディスクラインを51で示す。データ2のカップラインを52で示す。この時、これから描画するデータ1のC/D比の描画と区別ができるようにデータ2のC/D比の描画ラインを薄く表示する。データ2のラインを破線で表示してもよい。あるいは、データ2の線をデータ1のC/D比描画と色を変えて表示してもよい。この実施形態ではデータ2のC/D比描画のラインを破線で表示している。
【0029】
次に、ステップS7でデータ1の画像に対してディスクラインをマウス操作等によって描画する。まず、データ1の画像上に描画されているデータ2のC/D比のディスクラインの描画をデータ1のディスクラインとして反映して描画する。ディスクラインを描画開始時に、データ2のディスクラインを反映するかどうかをオペレータに確認してもよい。
【0030】
ここで、新規にディスクラインを描画する場合を説明する。ディスクラインの描画はオペレータがマウス操作をしながら、ディスプレイに表示されているデータ1の画像上に描画するポイントをクリックすることで指定し、ディスクラインを描画する。ディスクラインの外縁に複数ポイントを指定し、指定ポイントをスプライン曲線で滑らかなラインとなるように結ぶ。描画されたポイントを編集したい場合は、編集したいポイントをマウスで選択し、マウス移動の操作によってポイントを移動させたり、ポイントを追加、削除したりする。あるいは、ディスクラインの描画をディスクの外縁を自動認識して、認識した外縁に沿ってポイントを自動で指定しても良い。この場合の編集方法は上記に記載した方法と同じである。編集が完了したらディスクラインの描画完了をオペレータが選択しディスクラインを確定する。例えば、編集の終了はダブルクリックなどで終了させる。あるいは、画面上に編集終了のボタンをオペレータに操作させることで終了させてもよい。ディスクラインの描画でデータ2のディスクラインを反映した場合は、データ2の指定ポイント数と同じポイント数が描画される。ディスクラインを編集したい場合は上記に記載した方法で編集を行う。
【0031】
一般的にはディスクの外縁の変化は少ないことが多いので、自動でディスクラインを反映し、ディスクラインの編集を行わずにステップS8の処理に移行してもよい。この場合はカップラインを描画した後に必要があればディスクラインの編集を行う。次にステップS8では、カップラインを描画する。カップラインの描画もディスクラインと同様に行う。ただし、緑内障の進行具合や治療具合を確認する経過観察の場合は、カップラインの変化が大きくなることが多いので、カップライン描画選択時には、前回のカップラインを反映して編集を行える状態になっているのが良い。あるいは、新規にカップラインの描画入力を行う状態になっているのがよい。カップラインの入力で、カップの外縁を自動認識して描画させる方法は、公知のカップ抽出の認識アルゴリズムでは、カップの外縁の認識が困難なため行わない。これは、自動認識の処理は通常、多くの処理時間がかかることを考慮すると、手動でオペレータが編集する方が、短時間で、かつ本件の手法により公知より正確なカップラインを描画できるからである。
【0032】
カップラインの描画の画面例を図8に示す。61はオペレータがマウス操作で指定したいポイントを指定操作するカーソルである。確認用拡大画面62は、データ2のC/D比描画された眼科画像とその眼科画像上にC/D比を描画した画面である。データ1のC/D比描画のライン63は、データ1の画像、すなわち眼科画像41に対しC/D比を描画したラインである。この図8の例では、データ1のディスクライン入力処理を終え、次にカップラインの入力を行っている状態である。
【0033】
図8から分かるように、データ2のC/D比描画線を同一画像上に表示しているため、データ1のC/D比の入力中にどの部分がどれくらい変化しているのが視覚的に把握できる。また、この変化の差より数値として実際にどれくらい離れているかも入力中に算出することもできる。また、カーソル61の位置とデータ2のC/D比の描画情報より、カーソル61の位置に対応するデータ2の画像を確認用拡大画面62に表示している。この確認用拡大画面62により、データ2で入力した時の眼科画像の状態も比較確認できる。図8の実施例の画面では、カーソル61は、データ2のカップライン上の点を指しているので、確認用拡大画面62は、カーソル61の示すデータ2のC/D比の画面を拡大して表示する。データ2との変化が小さいところは、確認用拡大画面62は大きく表示し、小さな変化も見易くしている。
【0034】
なお、ステップS7のディスクライン描画処理で、データ2のディスクラインを反映させてポイントを編集する時のポイントの移動量を、ステップS8のカップライン描画処理で行うポイントの編集のポイントの移動量は異なるように設定することもできる。例えば、ディスクラインのポイント編集の移動量はカップラインのポイント編集の移動量の半分の移動量と設定する。この設定により、オペレータが操作するマウスの移動量が同じであっても、ポイントが移動する量はディスクラインの方が小さくなる。ディスクラインの変化とカップラインの変化が異なるため、この設定は有効である。
【0035】
図9は、図8のカーソル61を少し移動させた時の画面である。カーソル61がデータ2のカップライン上から外れて位置している。データ2のカップライン52とカーソル61の距離に応じて確認用拡大画面62の表示は変わる。確認用拡大画面62は、データ2のカップラインとの距離が離れるほど、データ2のC/D比の描画画面である確認用拡大画面62は、全体が見えるように縮小して表示される。ただし、ある距離以上離れると、最大縮小の表示は変わらないようにする。最大縮小表示は、前回のC/D比の描画情報が確認できるサイズ、すなわちディスクラインが乳頭のどの部分に描画されているかが分かる範囲で決定する。また、カップライン上にある場合の最大拡大表示は、現在表示しているC/D比描画のカーソル61を中心として、2倍程度の拡大率で表示するのがよい。
【0036】
ここでは、確認用拡大画面62の表示をカーソル位置で変わることを例に上げたが、オペレータが操作部を操作して拡大表示の変更をしてもよい。例えば、操作部であるキーボードの↑、↓キーを拡大、縮小に割り当てておき、キーが押されたら、その押された回数に応じて確認用拡大画面62の表示の拡大率を変更してもよい。例えば、5%ごとのステップを持ち100%まで表示するのもよい。
【0037】
また、ステップS5において位置合わせを行わない場合は、データ2のC/D比の描画は全体が見える縮小画面を表示させてもよい。この場合は変化量を視覚的に確認することはできないが、ディスクラインやカップラインを乳頭のどの位置に描画しているかを確認しながら、C/D比の入力を行うことができる。
【0038】
カップラインの描画の完了をオペレータが選択すると、ステップS9に処理が進む。ステップS9では、描画したディスクライン、カップラインより、C/D比を算出する。ステップS10は、ステップS9で処理されたC/D比の算出結果をディスプレイに表示する。ステップS11は、オペレータにC/D比の描画したポイント点を変更するかどうかを判定させる。編集する場合は、ディスクラインの編集はステップS71に処理が進み、カップラインの場合はステップS81に処理が進む。処理内容はステップS7、S8と同様であるが、描画上のポイントを編集する処理から始まる。また、ポイントの編集が完了すると、ステップS9の処理になり、C/D比を算出し、結果をディスプレイに表示する。ポイントの編集が終了すると、ステップS12に処理が進む。ステップS12は、選択画像とC/D比の描画情報、および計測結果を対応付けて記録部に記憶する。以上でフローチャートの説明を終える。
【0039】
フローチャートで説明したデータ1、データ2の記録情報を使用し、データ1、データ2の眼科画像とC/D比の描画情報を並べて比較表示し、視覚的な違いと数値的な違いを同時に見る画面を設けてもよい。また、データ1とデータ2を選択した時で、既に両方にC/D比の描画情報がある場合は、データ1の眼底画像上にデータ1とデータ2のC/D比の描画情報を描画して表示する。
【0040】
C/D比描画の比較画面の例を図10に示す。この画像データを残したいときは、この画面の画像とC/D比の数値、変化値をこの検査データに関連付け記憶部に記憶する。また、検査の結果をレポートとして出力したい場合は、比較画面と一緒にC/D比の数値と変化値を出力する。このレポートを管理することで、数値的な変化と視覚的な変化を経過観察で見ることができる。なお、通常の眼科情報処理システムが持つ画像や検査の比較画面で表示しても良い。また、さらに詳しく情報を残したい時は、所見のアノテーションを付加して記憶することもできる。
【0041】
なお、本発明に係わるプログラムは、眼科画像を記憶するコンピュータに次の処理を実行させる。(1)選択された第一眼科検査データの前回のC/D比の描画情報がある画像を検索し、検索結果より第二眼科検査データを読み込み、画像の位置合わせ処理より、第一の眼科検査データの画像上に第二眼科検査データのC/D比の描画情報を表示させる。(2)第二眼底検査データのC/D比描画情報を反映し、C/D比の描画情報のポイントをオペレータが操作部の操作で編集する。(3)C/D比を算出する。(4)C/D比の描画情報と算出結果を記憶する。(5)第一眼科検査データのC/D比の描画情報と第二眼科検査データのC/D比描画情報を比較画面で表示する。
【0042】
また、本発明に係わるプログラムは、上記実施例で説明した任意の処理を上記コンピュータに実行させるように構成することが可能である。上記実施形態のプログラム25は、本発明に係わるプログラムの一例である。本発明に係わるプログラムによれば、前回のC/D比の描画情報を選択された眼科画像上に表示することができるので、C/D比の描画情報を入力する際に、従来のようなどこに前回ポイントされたかを確認する手間が省けることができる。それにより、C/D比の描画上のためのポイントの指定する入力作業の効率化を図ることができる。さらに、本発明に係わるプログラムによれば、C/D比の描画情報を数値的な変化だけでなく視覚的な変化も記録できるので、経過観察の効率化を図ることができる。
【0043】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0044】
1:操作部、2:表示部、3:制御部、4:記憶部、5:眼科画像、6:描画情報、7:識別情報、8:データ入力部、9A:第一眼科検査データ、9B:第二眼科検査データ、10:位置合わせ部、11:画像位置合わせ、12:C/D比描画位置合わせ、13:C/D比入力部、14:C/D比描画入力部、15:C/D比算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像から視神経乳頭部の検出解析を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視機能障害の一つに緑内障がある。緑内障の検査では診断する指標として、視神経乳頭の陥没状態を反映するC/D比が従来から広く用いられている。眼底画像を用いて求めるC/D比は、視神経乳頭部(以下、乳頭)のディスクと呼ばれる乳頭外縁(D)とカップと呼ばれる乳頭凹の外縁(C)から、それぞれの径の比や面積比で定義されている。なお、垂直方向における直径比を垂直C/D比と呼び、水平方向における直径比を水平C/D比と呼ぶことがある。特にカップの上下方向への変化が多いため、垂直方向のC/D比を指標として用いられることが多い。
【0003】
また、近年ではR/D比も緑内障診断に用いられるようになってきている。R/D比は、乳頭外縁と乳頭凹の外縁に挟まれたリム領域の幅(R)と、この幅の計測位置及び乳頭中心を通る乳頭外縁径との比として定義される。近年、眼底画像を解析してC/D比やC/D比を求める様々な手法が開発されている(特許文献1、2参照)。さらに、これらC/D比やR/D比を求めるために眼底画像上に描画したディスクライン、カップライン、リムラインの描画情報を眼底画像のアノテーション情報として記録しておき、経過観察時に過去の描画情報との差分を視覚的に表示する手法も開発されている(特許文献3参照)。また、眼科分野では、眼科画像を参照して医師などの所見を入力するためのシステムも利用されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−280411号公報
【特許文献2】特開2008−154951号公報
【特許文献3】特開2009−22506号公報
【特許文献4】特開2009−106532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、眼底画像上に描画されるディスクラインやカップラインなどの描画解析は、通常オペレータ(例えば、医師)によって操作されるため、正確なラインを描画するには十分な経験が必要である。特に経過観察では、変化がない箇所に対しては毎回同じ位置にライン描画されていなければ測定誤差が生じ、正確なC/D比の経過観察にならない。また、眼底画像より乳頭を自動抽出し、ディスクライン、カップラインを描画するシステムも存在するが、正確なラインまで認識することが困難であり、オペレータが描画されたラインを修正することが多いため、オペレータの経験が必要である。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、C/D比の変化の経過観察を行う際に、前回の描画と同じ位置に描画が行えるようにオペレータの作業を支援し、経過観察時のC/D比変化量の誤差を減らすことのできる眼科情報処理システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の眼科情報処理システムは、眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理システムであって、同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する記憶手段と、前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する付加手段と、前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る算出手段と、前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする位置合わせ手段と、前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する入力手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、経過観察時における眼底画像に描画するC/D比のライン情報が毎回同じ位置にあるか否かを確認しながら描画することで、経過観察時の測定誤差を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの機能的構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムのハードウェア構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの処理を示すフローチャート図である。
【図4】選択画像のデータを示す図である。
【図5】データベース上にあるデータを検索した結果のデータを示す図である。
【図6】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図7】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図8】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図9】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図10】C/D比描画を行う画面を示す図である。
【図11】C/D比描画の比較画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る眼科情報処理システムの機能的構成を示す図である。本実施形態に係る眼科情報処理システムは、オペレータが使用するコンピュータを含んで構成される。このコンピュータは、例えば、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して、眼科画像や患者情報などを保管管理するデータベースに接続されている。なお、眼科情報処理システムは、コンピュータ単体で構成されてもよいし、眼科画像等は、外部の記憶装置、例えばCD(Compact Disc)に保管されている構成でもよい。また、眼科情報処理システムは、通信回線を介して、眼科撮影装置に接続されてもよい。眼科撮影装置の例として、眼底カメラ、OCT(Optical Coherence Tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等がある。
【0012】
眼科情報処理システムには、図1に示すように、操作部1、表示部2、制御部3、記憶部4、C/D比入力部8、位置合わせ部9、変化量算出部10、が設けられている。まず、記憶部4について説明する。記憶部4には、眼科画像5、描画情報6、識別情報7が記憶される。眼科画像5は、上記の眼科撮影装置により取得された撮影対象(被検眼)の画像である。例としては、眼底カメラにより撮影された眼底像、OCTにより撮影された眼底の断層画像、SLOにより撮影された網膜や脈絡膜の画像等がある。眼底画像7には、被検眼の部位や、撮影日時、撮影条件等の付帯情報が付加されて記憶される。被検眼の部位には、左右眼情報や、乳頭、黄班等の情報が含まれる。また、撮影条件には、撮影画角、結像倍率、照明光の明るさ、固視灯の位置等の情報が含まれる。描画情報6は、C/D比入力部8により作成されるC/D比情報であり、制御部3によって記憶部4に記憶される。
【0013】
識別情報7は、各被検眼を識別するための情報である。例えば患者名や患者ID等の患者識別情報と個々の眼科画像を関連付けたものや、個々の眼科画像と個々の描画情報とを関連付けたものである。これにより、どの患者のどの部位に対する眼科画像であるか、また、その眼科画像のC/D比描画情報であるかを識別することが可能になる。関連付けの処理は制御部3により実行される。
【0014】
操作部1は、オペレータが眼科情報処理システムを操作するときや、C/D比情報を入力するときに使用される。操作部1は、オペレータによる操作を受けると、その操作内容に応じて操作信号を生成し、操作信号を制御部3に入力する。操作部1は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネルなど、任意の操作デバイス、入力デバイスを含んで構成される。
【0015】
表示部2は、制御部3に従って画面やデータを表示する。表示部2は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等、任意の表示デバイスから構成される。なお、操作部1で記載したタッチパネル等の操作部と表示部とを一体化したデバイスを使用することも可能である。この場合は、図1で示す操作部と表示部を一体化した構成になる。
【0016】
制御部3は、眼科情報処理システムの各部を制御する。制御に関しては後述する。C/D比入力部8は、C/D比の情報を入力するときに動作する。C/D比の情報とは、ディスク外周のライン(ディスクライン)とカップ外周のライン(カップライン)の位置情報である。C/D比を入力するには、眼科画像を表示部2に表示し、操作部1の操作によって行い、眼科画像のどの位置にC/D比の情報が入力されたかを処理し、結果を記憶する。C/D比情報のディスクラインとカップラインの決定は、オペレータがディスクラインを指定して入力する方法と、眼科画像の乳頭を自動で抽出してさらに、ディスクライン、カップラインを抽出して描画する方法がある。
【0017】
位置合わせ算出部9は、眼科画像と位置合わせしたい眼科画像とで位置合わせ処理した位置合わせ情報を補正値として算出し、この位置合わせ情報を基にC/D比情報の位置を合わせる処理を行う。変化量算出部10は、C/D比の変化量を算出する。例えば、記憶部4の描画情報6に記憶されているC/D比情報とC/D比情報との差分量を算出する。あるいは、C/D比情報とある点との最短距離を算出する。
【0018】
図2は、眼科情報処理システムのハードウェア構成の例を示している。眼科情報処理システムは、コンピュータ20を含んで構成される。データベース30は、眼科画像や患者情報等を保管管理するサーバなどを含んで構成される。コンピュータ20は、LANなどの通信回線を介してデータベース30に接続される。
【0019】
オペレータは、眼科画像の閲覧の要求をコンピュータ20に入力する。この要求は、例えば患者名や患者IDの患者識別情報を入力または選択し、所定の操作(キーボードの入力キー、マウスのクリック等)をすることによって行う。コンピュータ20は、入力された要求をデータベース30に送信する。データベース30は、この要求に基づいて眼科画像を検索して、コンピュータ20に送信する。コンピュータ20はこの検索結果を表示する。
【0020】
コンピュータ20は、例えば、図1の操作部1、表示部2、制御部3、C/D比入力部8、位置合わせ部9、変化量算出部10として機能する。データベース30は、記憶部4として機能する。コンピュータ20は、一般的なコンピュータの構成と同様に、演算処理としてのCPU21、主記憶装置として機能するRAM22、外部記憶装置として機能するROM23、外部記憶装置としてのHDD(ハードディスクドライブ)24を含み、ディスプレイ26、キーボード27、マウス28、通信I/F29を含んで構成される。コンピュータ20は、HDD24に格納されたプログラム25をRAM22上に展開することにより、この実施形態の動作を実行させる。
【0021】
図3は、本実施形態におけるC/D比描画のフローチャートを示している。このフローチャートでは、実施形態として眼科画像5を眼底カメラで撮影された眼底画像、表示部2の表示デバイスをディスプレイ、操作部1にマウス、キーボードを例に挙げながら説明する。
【0022】
まずステップS1で、オペレータは、マウスを操作してC/D比を描画する眼底画像を指定する。この操作は、例えば、眼底画像のサムネイル画像表示から画像をクリックし、画像を選択して実行する。選択実行されると、制御部3は選択画像の情報を読込み、画像に関連付けられている患者情報を読み込む。この読み込んだ選択画像のデータと関連付けられた患者情報を含んでデータをデータ1(第一眼科検査データ9A)とする。データ例を図4に示す。患者情報から患者ID,選択画像の情報から、検査UID、左右眼、部位、画像UID、撮影日、撮影時刻、C/D比データUID。C/D比データUIDは、C/D比のデータであるC/D比の描画情報(選択画像と関連づけられている位置情報)、C/D比の計測結果を格納している情報と関連付けられている。C/D比データUIDから、それらの情報を取得することができる。C/D比データが存在しない場合は、データの存在を示さない値(例えば、NULL等)が入力されている。なお、C/D比の描画情報は、選択画像上のある座標点の集合として表現される。
【0023】
次にステップS2で、前回のC/D比が存在するかどうかを確認する。図4のデータを例にすると、データ1の患者IDを“3”、左右眼を“L”、部位を“乳頭”、C/D比データUIDが存在するものを検索条件とすると、記憶部4から当確するデータを検索する。検索結果の例を図5に示す。C/D比データが複数存在する場合は、最新のC/D比データを取得する。図5を例にすると、画像UID257を選択して、S3を実行する。この時、画像の選択を図5のデータをリスト表示し、オペレータに選択させてもよい。
【0024】
ステップS3では、選択された画像を読み込む処理を行う。この読み込んだ画像データとそれに関連付けられたC/D比データを含んだデータをデータ2(第二眼科検査データ9B)とする。次にステップS4では、データ1の眼底画像とデータ2の眼底画像に対して位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理は位置合わせ部の画像位置合わせの処理を行う。この位置合わせを行う処理は、まず眼底画像から乳頭を自動抽出して、差分を補正値として算出し、この補正値に基づいて乳頭の位置合わせを行う。特に乳頭の中心が最も良く合うように位置を合わせる処理がよい。すなわち、視神経乳頭を前記眼科画像から乳頭領域を抽出する乳頭抽出手段を有し、この抽出手段により抽出した乳頭領域を用いて視神経乳頭の中心が最も良く位置が合うように位置合わせを行う。
【0025】
データ2のC/D比の描画情報のディスクラインの中心位置に対応するデータ2の画像位置が最も良く合うように処理してもよい。また、位置合わせは血管を抽出して位置を合わせてもよい。この場合も乳頭付近の血管位置が合うように位置合わせを行うのがよい。
【0026】
なお、画角が異なる場合の位置合わせは拡大、縮小の処理も行って位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理より、位置合わせ情報として、座標の移動量、回転の角度、拡大値が算出される。ステップS5は、ステップS4で算出された補正値(位置合わせ情報)によって位置合わせを行うかどうかを判定する。判定には、位置合わせ一致率(位置合わせ後の相関値)がある程度低い場合は、位置合わせ不一致として、位置合わせを行わないようにする。位置合わせ不一致の判定時の場合に、位置合わせを行わずにステップS7に処理を進めてもよいし、あるいは、検索結果を表示して、オペレータに前回のC/D比データを選択させてもよい。例えば、図5のデータをディスプレイに表示し、マウス操作でオペレータが選択する。選択された時は、再度ステップS3の処理に戻る。
【0027】
位置合わせを行う場合は、ステップS6に処理が進む。ステップS4で求めた補正値と、データ2のC/D比データの描画の位置情報より、データ1の眼底画像上にデータ2のC/D比を描画処理し描画情報をディスプレイに表示する。ステップS6処理完了時の画面の例を図6に示す。図6はC/D比の入力を行うための画面例である。画面上では、ステップS1で選択された眼底画像41を表示し、アノテーションリスト42より、アノテーションとして描画する項目をオペレータが選択する。C/D比を描画するためには、アノテーションリスト42よりC/D比をマウスのクリックなどで選択する。C/D比を計測する乳頭が43である。ステップS1の処理終了後に図6を表示し、アノテーションリスト42よりC/D比を選択した時に、ステップS2の処理を行ってもよい。
【0028】
ステップS6処理後の画面例を図7に示す。データ2のディスクラインを51で示す。データ2のカップラインを52で示す。この時、これから描画するデータ1のC/D比の描画と区別ができるようにデータ2のC/D比の描画ラインを薄く表示する。データ2のラインを破線で表示してもよい。あるいは、データ2の線をデータ1のC/D比描画と色を変えて表示してもよい。この実施形態ではデータ2のC/D比描画のラインを破線で表示している。
【0029】
次に、ステップS7でデータ1の画像に対してディスクラインをマウス操作等によって描画する。まず、データ1の画像上に描画されているデータ2のC/D比のディスクラインの描画をデータ1のディスクラインとして反映して描画する。ディスクラインを描画開始時に、データ2のディスクラインを反映するかどうかをオペレータに確認してもよい。
【0030】
ここで、新規にディスクラインを描画する場合を説明する。ディスクラインの描画はオペレータがマウス操作をしながら、ディスプレイに表示されているデータ1の画像上に描画するポイントをクリックすることで指定し、ディスクラインを描画する。ディスクラインの外縁に複数ポイントを指定し、指定ポイントをスプライン曲線で滑らかなラインとなるように結ぶ。描画されたポイントを編集したい場合は、編集したいポイントをマウスで選択し、マウス移動の操作によってポイントを移動させたり、ポイントを追加、削除したりする。あるいは、ディスクラインの描画をディスクの外縁を自動認識して、認識した外縁に沿ってポイントを自動で指定しても良い。この場合の編集方法は上記に記載した方法と同じである。編集が完了したらディスクラインの描画完了をオペレータが選択しディスクラインを確定する。例えば、編集の終了はダブルクリックなどで終了させる。あるいは、画面上に編集終了のボタンをオペレータに操作させることで終了させてもよい。ディスクラインの描画でデータ2のディスクラインを反映した場合は、データ2の指定ポイント数と同じポイント数が描画される。ディスクラインを編集したい場合は上記に記載した方法で編集を行う。
【0031】
一般的にはディスクの外縁の変化は少ないことが多いので、自動でディスクラインを反映し、ディスクラインの編集を行わずにステップS8の処理に移行してもよい。この場合はカップラインを描画した後に必要があればディスクラインの編集を行う。次にステップS8では、カップラインを描画する。カップラインの描画もディスクラインと同様に行う。ただし、緑内障の進行具合や治療具合を確認する経過観察の場合は、カップラインの変化が大きくなることが多いので、カップライン描画選択時には、前回のカップラインを反映して編集を行える状態になっているのが良い。あるいは、新規にカップラインの描画入力を行う状態になっているのがよい。カップラインの入力で、カップの外縁を自動認識して描画させる方法は、公知のカップ抽出の認識アルゴリズムでは、カップの外縁の認識が困難なため行わない。これは、自動認識の処理は通常、多くの処理時間がかかることを考慮すると、手動でオペレータが編集する方が、短時間で、かつ本件の手法により公知より正確なカップラインを描画できるからである。
【0032】
カップラインの描画の画面例を図8に示す。61はオペレータがマウス操作で指定したいポイントを指定操作するカーソルである。確認用拡大画面62は、データ2のC/D比描画された眼科画像とその眼科画像上にC/D比を描画した画面である。データ1のC/D比描画のライン63は、データ1の画像、すなわち眼科画像41に対しC/D比を描画したラインである。この図8の例では、データ1のディスクライン入力処理を終え、次にカップラインの入力を行っている状態である。
【0033】
図8から分かるように、データ2のC/D比描画線を同一画像上に表示しているため、データ1のC/D比の入力中にどの部分がどれくらい変化しているのが視覚的に把握できる。また、この変化の差より数値として実際にどれくらい離れているかも入力中に算出することもできる。また、カーソル61の位置とデータ2のC/D比の描画情報より、カーソル61の位置に対応するデータ2の画像を確認用拡大画面62に表示している。この確認用拡大画面62により、データ2で入力した時の眼科画像の状態も比較確認できる。図8の実施例の画面では、カーソル61は、データ2のカップライン上の点を指しているので、確認用拡大画面62は、カーソル61の示すデータ2のC/D比の画面を拡大して表示する。データ2との変化が小さいところは、確認用拡大画面62は大きく表示し、小さな変化も見易くしている。
【0034】
なお、ステップS7のディスクライン描画処理で、データ2のディスクラインを反映させてポイントを編集する時のポイントの移動量を、ステップS8のカップライン描画処理で行うポイントの編集のポイントの移動量は異なるように設定することもできる。例えば、ディスクラインのポイント編集の移動量はカップラインのポイント編集の移動量の半分の移動量と設定する。この設定により、オペレータが操作するマウスの移動量が同じであっても、ポイントが移動する量はディスクラインの方が小さくなる。ディスクラインの変化とカップラインの変化が異なるため、この設定は有効である。
【0035】
図9は、図8のカーソル61を少し移動させた時の画面である。カーソル61がデータ2のカップライン上から外れて位置している。データ2のカップライン52とカーソル61の距離に応じて確認用拡大画面62の表示は変わる。確認用拡大画面62は、データ2のカップラインとの距離が離れるほど、データ2のC/D比の描画画面である確認用拡大画面62は、全体が見えるように縮小して表示される。ただし、ある距離以上離れると、最大縮小の表示は変わらないようにする。最大縮小表示は、前回のC/D比の描画情報が確認できるサイズ、すなわちディスクラインが乳頭のどの部分に描画されているかが分かる範囲で決定する。また、カップライン上にある場合の最大拡大表示は、現在表示しているC/D比描画のカーソル61を中心として、2倍程度の拡大率で表示するのがよい。
【0036】
ここでは、確認用拡大画面62の表示をカーソル位置で変わることを例に上げたが、オペレータが操作部を操作して拡大表示の変更をしてもよい。例えば、操作部であるキーボードの↑、↓キーを拡大、縮小に割り当てておき、キーが押されたら、その押された回数に応じて確認用拡大画面62の表示の拡大率を変更してもよい。例えば、5%ごとのステップを持ち100%まで表示するのもよい。
【0037】
また、ステップS5において位置合わせを行わない場合は、データ2のC/D比の描画は全体が見える縮小画面を表示させてもよい。この場合は変化量を視覚的に確認することはできないが、ディスクラインやカップラインを乳頭のどの位置に描画しているかを確認しながら、C/D比の入力を行うことができる。
【0038】
カップラインの描画の完了をオペレータが選択すると、ステップS9に処理が進む。ステップS9では、描画したディスクライン、カップラインより、C/D比を算出する。ステップS10は、ステップS9で処理されたC/D比の算出結果をディスプレイに表示する。ステップS11は、オペレータにC/D比の描画したポイント点を変更するかどうかを判定させる。編集する場合は、ディスクラインの編集はステップS71に処理が進み、カップラインの場合はステップS81に処理が進む。処理内容はステップS7、S8と同様であるが、描画上のポイントを編集する処理から始まる。また、ポイントの編集が完了すると、ステップS9の処理になり、C/D比を算出し、結果をディスプレイに表示する。ポイントの編集が終了すると、ステップS12に処理が進む。ステップS12は、選択画像とC/D比の描画情報、および計測結果を対応付けて記録部に記憶する。以上でフローチャートの説明を終える。
【0039】
フローチャートで説明したデータ1、データ2の記録情報を使用し、データ1、データ2の眼科画像とC/D比の描画情報を並べて比較表示し、視覚的な違いと数値的な違いを同時に見る画面を設けてもよい。また、データ1とデータ2を選択した時で、既に両方にC/D比の描画情報がある場合は、データ1の眼底画像上にデータ1とデータ2のC/D比の描画情報を描画して表示する。
【0040】
C/D比描画の比較画面の例を図10に示す。この画像データを残したいときは、この画面の画像とC/D比の数値、変化値をこの検査データに関連付け記憶部に記憶する。また、検査の結果をレポートとして出力したい場合は、比較画面と一緒にC/D比の数値と変化値を出力する。このレポートを管理することで、数値的な変化と視覚的な変化を経過観察で見ることができる。なお、通常の眼科情報処理システムが持つ画像や検査の比較画面で表示しても良い。また、さらに詳しく情報を残したい時は、所見のアノテーションを付加して記憶することもできる。
【0041】
なお、本発明に係わるプログラムは、眼科画像を記憶するコンピュータに次の処理を実行させる。(1)選択された第一眼科検査データの前回のC/D比の描画情報がある画像を検索し、検索結果より第二眼科検査データを読み込み、画像の位置合わせ処理より、第一の眼科検査データの画像上に第二眼科検査データのC/D比の描画情報を表示させる。(2)第二眼底検査データのC/D比描画情報を反映し、C/D比の描画情報のポイントをオペレータが操作部の操作で編集する。(3)C/D比を算出する。(4)C/D比の描画情報と算出結果を記憶する。(5)第一眼科検査データのC/D比の描画情報と第二眼科検査データのC/D比描画情報を比較画面で表示する。
【0042】
また、本発明に係わるプログラムは、上記実施例で説明した任意の処理を上記コンピュータに実行させるように構成することが可能である。上記実施形態のプログラム25は、本発明に係わるプログラムの一例である。本発明に係わるプログラムによれば、前回のC/D比の描画情報を選択された眼科画像上に表示することができるので、C/D比の描画情報を入力する際に、従来のようなどこに前回ポイントされたかを確認する手間が省けることができる。それにより、C/D比の描画上のためのポイントの指定する入力作業の効率化を図ることができる。さらに、本発明に係わるプログラムによれば、C/D比の描画情報を数値的な変化だけでなく視覚的な変化も記録できるので、経過観察の効率化を図ることができる。
【0043】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0044】
1:操作部、2:表示部、3:制御部、4:記憶部、5:眼科画像、6:描画情報、7:識別情報、8:データ入力部、9A:第一眼科検査データ、9B:第二眼科検査データ、10:位置合わせ部、11:画像位置合わせ、12:C/D比描画位置合わせ、13:C/D比入力部、14:C/D比描画入力部、15:C/D比算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理システムであって、
同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する記憶手段と、
前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する付加手段と、
前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る算出手段と、
前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする位置合わせ手段と、
前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する入力手段とを備えたことを特徴とする眼科情報処理システム。
【請求項2】
視神経乳頭を前記眼科画像から乳頭領域を抽出する乳頭抽出手段を更に備え、
前記抽出手段により抽出した乳頭領域を用い、前記位置合わせ手段による位置合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の眼科情報処理システム。
【請求項3】
前記眼科情報処理システムは、視神経乳頭の中心が最も良く位置が合うように前記画像位置合わせ手段による位置合わせを行うことを特徴とする請求項2に記載の眼科情報処理システム。
【請求項4】
眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理方法であって、
同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する工程と、
前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する工程と、
前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る工程と、
前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする工程と、
前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する工程とを備えたことを特徴とする眼科情報処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理システムであって、
同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する記憶手段と、
前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する付加手段と、
前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る算出手段と、
前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする位置合わせ手段と、
前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する入力手段とを備えたことを特徴とする眼科情報処理システム。
【請求項2】
視神経乳頭を前記眼科画像から乳頭領域を抽出する乳頭抽出手段を更に備え、
前記抽出手段により抽出した乳頭領域を用い、前記位置合わせ手段による位置合わせを行うことを特徴とする請求項1に記載の眼科情報処理システム。
【請求項3】
前記眼科情報処理システムは、視神経乳頭の中心が最も良く位置が合うように前記画像位置合わせ手段による位置合わせを行うことを特徴とする請求項2に記載の眼科情報処理システム。
【請求項4】
眼科画像におけるディスクラインとカップラインとの比(C/D比)の描画情報を眼科画像に付加する眼科情報処理方法であって、
同じ撮影対象を撮影時を異にして撮影した眼科画像を各々記憶する工程と、
前記眼科画像のC/D比の描画情報を他の眼科画像に付加する工程と、
前記各眼科画像の位置合わせを行うため補正値を得る工程と、
前記補正値を用いて前記各眼科画像及びこれら画像のC/D比の描画情報を位置合わせする工程と、
前記眼科画像を表示した画面上に前記C/D比の描画情報を入力する工程とを備えたことを特徴とする眼科情報処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−254164(P2012−254164A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128487(P2011−128487)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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