説明

眼科手術用レーザを制御するための外部デバイス及び関連の方法

【課題】角膜の屈折手術のような外科処置の間に用いるための,位置及び機能に柔軟性がある遠隔制御デバイスを提供する。
【解決手段】手術に用いるデバイスを制御するシステムは,プロセッサと,コントローラと,治療レーザと,信号受信器とを備える。遠隔デバイスは複数の入力要素を備える前記信号受信器と通信する。各入力要素は活性化されたとき前記信号受信器が受信できる離散信号を送信するように構成される。前記離散信号の少なくとも1つが前記コントローラの通知する操作に対応する。ソフトウェアパッケージは前記プロセッサ上に常駐し,前記信号受信器からのデータを少なくとも前記コントローラを指示するための信号に変換するように適応させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,目のレーザ手術に関するものであり,より特定すれば視力障害を矯正するためのレーザ切除手術,更に特定すればレーザ手術デバイスの制御デバイスのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目の屈折手術において,レーザシステムは典型的にはキーボード及びマウス,又はシステムに組み込まれたハードウェアボタンを用いて制御される。そのような永続的に装着されたデバイスは位置を変更することができず,構成することもできない。また特に,1つの目からもう1つの目に移るときなど,処置のある部分で手が届きにくいことがある。
【0003】
電子デバイスを操作するために遠隔制御デバイスを使うことはよく知られている。白内障及び硝子体処置においても外部デバイスの使用が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角膜の屈折手術のような手術処置の間に用いるための,位置及び機能に柔軟性がある遠隔制御デバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,目の屈折手術に用いるデバイスを制御するためのシステム及び方法に関する。本システムは,プロセッサと,前記プロセッサと通信するコントローラと,前記コントローラと通信する治療レーザと,前記プロセッサと通信する信号受信器とを備える。遠隔制御デバイスは複数の入力要素を備える前記信号受信器と通信する。各入力要素は活性化されたとき前記信号受信器が受信できる離散信号を送信するように構成される。前記離散信号の少なくとも1つが前記コントローラの通知する操作に対応する。ソフトウェアパッケージは前記プロセッサ上に常駐し,前記信号受信器からのデータを少なくとも前記コントローラを指示するための信号に変換するように適応させられる。
【0006】
目の屈折手術に用いるデバイスを制御するためのシステムを構成する方法は,複数の入力要素を備える遠隔制御デバイスであって,各入力要素は活性化されたときに離散信号を送信するように構成する遠隔制御デバイスを提供するステップを有する。各離散信号は,屈折レーザ手術システムのハードウェア要素によって実装される操作に電子的に対応付けられる。プロセッサ上に常駐するソフトウェアパッケージは,前記遠隔制御デバイスからの信号データを受信し,前記電子的対応付けに基づいて前記ハードウェア要素の制御データに変換するように適応させられる。前記ソフトウェアパッケージはまた,前記制御データと相関する制御信号を前記ハードウェア要素に出力するように適応させられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果は多岐にわたる。遠隔制御デバイスの利用によって,機動性が得られ,かつ複数のユーザが決めた位置からの制御が可能になり,システムを扱う際の柔軟性が増加する。例えば,制御位置をそれぞれの目に対応して反対側に切り替えることができ,それによって適切な手を使うことができ,又は単純に,同時に複数の位置にある制御ユニットを選択することができる。レーシック手術における現在の実践法に関して,本発明はマイクロケラトームの準備のような同時に行う複数の仕事から手術助手を解放することができ,それでもなお遠隔制御デバイスを介してグラフィックユーザインタフェースの制御を維持することができる。
【0008】
物理的柔軟性及び機動性に加えて,外部制御もまた構成可能性を増加させ,ユーザが自分の好みに合った制御機能を指定することができるので,人間工学及び利便性を改善する。
【0009】
制御位置及び構成を最適化することによって,操作者と制御ユニットの間に直接の見通しがなくても遠隔制御デバイスを操作することができる。これによって固定されたハードウェアに装着された制御部又は別々のユーザインタフェースを探すために手術が中断される可能性が取り除かれ,更に手術過程が改善される。更に,システムからハードウェアコンポーネントが取り除かれるのでスペースが節約になり,起こりうる電磁的干渉問題も除去される。
【0010】
機構及び操作方法双方に関して本発明を特徴付ける特徴は,その更なる目的及び利点と共に,以下の記述と付随する図面とからより良く理解されるであろう。添付の図面は例示及び説明のためのものであり,本発明の範囲を定義するものではないことは直ちに理解されるであろう。本願発明によって達成されるこれらの及びほかの目的,並びに提供される利点は,以下の記述を付随する図面と共に読むことによって,より十分に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで図1〜5を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。角膜レーザ切除を行うシステム10は,例えばエキシマレーザであってもよい間欠治療レーザ11を備える(図1)。角膜フラップを切断する切断レーザ12もあってよい。患者は典型的にはベッド13の上に寝かせられ,ベッドは患者の角膜15が切断レーザ12で処置される第1の位置14と,患者の角膜15が治療レーザ11で処置される第2の位置16との間を移動することができる。
【0012】
システム10は,プロセッサ17及びその上に常駐するソフトウェア18を備える。レーザコントローラ19と,ディスプレイデバイス20と,信号受信器21とは,プロセッサ17と通信する。遠隔制御デバイス22は,信号受信器21と通信することができ,複数の入力要素23〜29を備える。各入力要素23〜29は,活性化されると信号受信器21が受信できる,例えば赤外線又は無線周波数範囲の離散信号を送信するように構成される。離散信号の少なくとも1つが,コントローラ19が通知する操作に対応付けられる。ソフトウェアパッケージ18は,信号受信器21からのデータをコントローラ19及びディスプレイデバイス20のようなハードウェア要素を指示する信号に変換するように適応させられる。
【0013】
ディスプレイデバイス20は,医師/ユーザに例えば患者リストと,患者用ベッドの位置と,カメラ30が提供する患者の角膜15の画像とを表示するためのグラフィックユーザインタフェース(GUI)を備えてもよい。ソフトウェア18が患者リストを表示するように指示しているときは,遠隔制御デバイス22の上矢印23及び下矢印24を用いて患者リストをスクロールさせることができ,決定キー25で特定の患者の名前を選択することができる。そのような選択を行うと,ソフトウェア18はその選択された患者の所定の切除輪郭を取得する。
【0014】
ユーザが目の画像を見たいときは,遠隔制御デバイス22のユーザ定義キー26を使って,ディスプレイ20にカメラ30からの画像を表示するように指示することができる。そしてソフトウェア18は,自動的にその画像を例えば角膜など所望の位置に合わせるように処理することができる。
【0015】
患者用ベッド13を第1の位置14と第2の位置16との間で移動させる方向もまた,遠隔制御デバイス22の上キー23,下キー24,右キー27,左キー28でメニュー項目をスクロールさせることによって調整することができる。前のGUIメニューに戻る信号は,戻るボタン29を選択することによって送信させることができる。
【0016】
遠隔制御デバイス22上の入力要素23〜29は制御デバイスに結線されていないので,当技術の当業者であれば,遠隔制御デバイスが送信する離散信号をソフトウェアパッケージ18が実現する任意の所望の方法でユーザが定義し,構成することができることは理解できるであろう。更に各入力要素23〜29はまた,例えばさまざまな条件下で,またさまざまな機能のために,一組の条件下で入力要素23〜29が一組の制御に対応付けられ,かつもう1つの条件の組においては,入力要素23〜29が所望の別の制御の組に対応付けることができるように多様な機能を持つようにプログラムしてもよい。GUIは例えば,プログラムされた入力要素の機能性がユーザに明確であるように,システムの状態を明確に示すようにプログラムすることができる。
【0017】
遠隔制御デバイス22はいくつかある方法のどれによって組み立てられても良く,例示された形状は限定を意図したものではない。遠隔制御デバイス22は,例えば顕微鏡から直接患者を見通すことを妨げないように,できるだけ薄いことが望ましい。ボタン23〜29は,操作が容易なように遠隔制御デバイス22に上面に位置するのが望ましい。ボタン23〜29は,すばやく探すことができるように独特の形状を有し,高さがあって分離しているのが望ましい。例えば矢印ボタン23,24,27,28は,曲線状の内側及びとがった外縁を有してもよい。決定ボタン25は矢印ボタン23,24,27,28に対して中心に位置し,矢印ボタン23,24,27,28と同じ高さで,探すのが容易なように真ん中に出っ張りがあってもよい。例としての実施例における自動位置合わせボタン26は,矢印ボタン23,24,27,28の下に位置し,出っ張りのない決定ボタン25と類似の形状をしている。戻るボタン29はここでは正方形であり,矢印ボタン23,24,27,28の上に位置している。最適なメニュースクロール及びユーザフィードバックのために,ボタン23〜29を押下するとクリック音を伴うのが望ましい。ボタン23〜29はまた,薄暗い環境でもよく見えるように,バックライトを当てるのが望ましい。
【0018】
もう1つの実施例においては,手持ち遠隔制御デバイス22に加え,又はその代わりに足踏スイッチ22’を提供してもよい(図5)。足踏スイッチ22’は例えば,白内障手術のように医師の手がふさがっているほかの医療処置においてシステムを制御するために用いられるようなデバイスを備えてもよい。足踏スイッチ22’の実施例の効果の中には,制御機能を助手に委任できること,また医師自身が足踏スイッチ22’を操作するとき,医師の完全な無菌状態を保証することがある。足踏スイッチ22’は,ほぼ平面状の底面41を有する台40と,人間の足をその上に乗せられるように形どられ,寸法決めされた上面42とを備えてもよく,また前縁43から後縁44に向けて上方に角度を持ってもよい。足踏スイッチ22’は固定機能を制御しないと考えられるが,これば制限として意図するものではない。
【0019】
ここでは押下できるボタンである複数の入力要素45〜49は,上記のように活性化されると信号受信器21が受信できる例えば赤外線又は無線周波数範囲の離散信号を送信するように構成される。離散信号の少なくとも1つは,コントローラ19が通知する操作に対応付けられる。ソフトウェアパッケージ18は,信号受信器21からのデータを,コントローラ19及びディスプレイデバイス20のようなハードウェア要素を指示する信号に変換するように適応させられる。
【0020】
図5に示すような特定の実施例においては,ボタン45は「戻る」ボタンであり,ボタン46は「決定」ボタンであり,ボタン47は上/下ボタンであり,ボタン48は左/右ボタンであり,そしてボタン49はユーザ定義ボタンである。
【0021】
もう1つの選択肢では,ボタンで操作する遠隔制御デバイスの代わりにジョイスティック22”を備えてもよい。
【0022】
遠隔制御デバイス22自体はシステム10内のさまざまな位置に装着することができる。例えば,図2及び3に示すように顕微鏡アーム31の上の複数の位置32,33のいずれか,又は医師用椅子35のひじ掛け34の上に,例えば磁石又はほかの種類の連結方法で装着できる。遠隔制御デバイス22は,医師の体又は衣服,若しくはカートにさえ装着することができる。レーザヘッド上に装着すれば,いずれかの手の指で制御することを選択することができる。更に,複数の遠隔制御デバイス22を,操作が容易なように複数の位置に置くこともできる。遠隔制御デバイス22はシステム10の多様な位置のいずれでも同様に良好に再充電することができ,図4に示すようにディスプレイ20の背面には,電源に接続された複数のドッキングステーション36を備えている。
【0023】
以上の記述において,簡潔性,明瞭性及び理解性のために特定の用語を用いたが,それによって先行技術の要求条件を超えて不必要な制限を強いるものではない。なぜならばそのような単語はここでは説明のために用いられており,広く解釈されるように意図されているからである。更に,ここに例示され説明された装置の実施例は例であって,本発明の範囲はその構造のとおりの詳細によって制限されない。
【0024】
以上,本発明が説明された。その好ましい実施例の構造,操作及び利用と,それによって得られる利点があり,新しくかつ有用な結果と,新規で有用な構造と,当技術の当業者には明白なそれらの合理的な機械的均等物とは,本願請求項において明らかにされている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の例示システムの概略図である。
【図2】遠隔制御デバイスのための複数の装着位置を有する例示レーザシステムヘッドの側面透視図である。
【図3】遠隔制御デバイスのための装着位置を有する例示医師用椅子の側面透視図である。
【図4】背面にドッキングステーションを有する例示ディスプレイデバイスの側面透視図である。
【図5】本発明の足踏スイッチの実施例の上前面透視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 システム
11 治療レーザ
12 切断レーザ
17 プロセッサ
18 ソフトウェアパッケージ
19 コントローラ
20 ディスプレイデバイス
21 信号受信器
22 遠隔制御デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の屈折手術に用いるデバイスを制御するためのシステムであって,
プロセッサと,
前記プロセッサと通信するコントローラと,
前記コントローラと通信する治療レーザと,
前記プロセッサと通信する信号受信器と,
複数の入力要素を備える前記信号受信器と通信する遠隔制御デバイスであって,各入力要素は活性化されたとき前記信号受信器が受信できる離散信号を送信するように構成され,前記離散信号の少なくとも1つが前記コントローラの通知する操作に対応する遠隔制御デバイスと,
前記プロセッサ上に常駐するソフトウェアパッケージであって,前記信号受信器からのデータを少なくとも前記コントローラを指示するための信号に変換するように適応させたソフトウェアパッケージとを備えるシステム。
【請求項2】
前記プロセッサと通信するディスプレイデバイスであって,前記離散信号の少なくとも1つが前記ディスプレイデバイスの制御に対応するディスプレイデバイスを更に備え,かつ前記ソフトウェアパッケージを,前記離散信号の前記少なくとも1つからのデータを前記ディスプレイデバイスの制御信号に変換するように更に適応させた請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ソフトウェアパッケージを,前記ディスプレイデバイスが患者リストと,患者用ベッド位置と,患者の角膜の画像とのうち少なくとも1つを表示するように指示するように適応させた請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ソフトウェアパッケージを,前記ディスプレイデバイスが患者リストを表示するように指示するように適応させ,かつ前記離散信号の少なくとも1つを患者の選択に対応させ,前記ソフトウェアパッケージを,前記患者の選択を受信し,その選択された患者の所定の切除輪郭を取得するように更に適応させた請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサを,更に患者の目を写すように位置させたカメラと通信させ,かつ前記ソフトウェアパッケージを,前記患者の目の角膜の位置合わせをした画像を自動的に計算して表示するように適応させた請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラを,患者用ベッドの位置を変えるために,患者用ベッドに関連した制御をするように構成する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記の患者用ベッド位置を治療位置と角膜フラップ切除位置との間で移動できるようにし,前記治療位置は治療レーザと位置合わせし,前記フラップ切除位置は組織切断レーザと位置合わせする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
ユーザが,前記入力要素の少なくとも1つの前記対応付けをプログラムできる請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記遠隔制御デバイスを,手持ち遠隔制御デバイスと,足踏スイッチと,ジョイスティックとからなるグループから選択する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
目の屈折手術に用いるデバイスを制御するためのシステムを構成する方法であって,
複数の入力要素を備える遠隔制御デバイスであって,各入力要素が活性化されたときに離散信号を送信するように構成する遠隔制御デバイスを提供するステップと,
各離散信号を,屈折レーザ手術システムのハードウェア要素によって実装される操作に電子的に対応付けるステップと,
プロセッサ上に常駐するソフトウェアパッケージであって,該ソフトウェアパッケージを,前記遠隔制御デバイスからの信号データを受信し,前記電子的対応付けに基づいて前記ハードウェア要素の制御データに変換し,かつ前記制御データと相関する制御信号を前記ハードウェア要素に出力するように適応させたソフトウェアパッケージを提供するステップとを有する方法。
【請求項11】
前記離散信号の少なくとも1つをディスプレイデバイスの制御に対応させ,かつ前記ソフトウェアパッケージを前記離散信号の前記少なくとも1つからのデータを前記ディスプレイデバイスの制御信号に変換するように更に適応させた請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ソフトウェアパッケージを,前記ディスプレイデバイスが患者リストと,患者用ベッド位置と,患者の角膜の画像とのうち少なくとも1つを表示するように指示するように適応させた請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ソフトウェアパッケージを,前記ディスプレイデバイスが患者リストを表示するように指示するように適応させ,かつ前記離散信号の少なくとも1つを患者の選択に対応させ,前記ソフトウェアパッケージを,前記患者の選択を受信し,その選択された患者の所定の切除輪郭を取得するように更に適応させた請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ソフトウェアパッケージを,カメラから患者の目の画像を受信し,前記患者の目の角膜の位置合わせをした画像を自動的に計算して表示するように適応させた請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記離散信号の少なくとも1つを,患者用ベッドの位置を変えるためのコントローラに対応させる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記の患者用ベッド位置を治療位置と角膜フラップ切除位置との間で移動できるようにし,前記治療位置は治療レーザと位置合わせし,前記フラップ切除位置は組織切断レーザと位置合わせする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ソフトウェアパッケージを,前記入力要素の少なくとも1つとユーザが指定する機能との対応付けを構成するために,ユーザ入力を受信するように更に適応させた請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記遠隔制御デバイスを,手持ち遠隔制御デバイスと,足踏スイッチと,ジョイスティックとからなるグループから選択する請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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