説明

眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム

【課題】前回の検診時の被検者データを有効活用しながら、迅速かつ的確な診断を行うことができる、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムを提供する。
【解決手段】眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、顎台昇降機構と、前後左右スライド機構と、光学ヘッド昇降機構とを備え、被検者の前回の検診時の顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを被検者基礎データ、被検者検査データと併せて記憶すると共に、前記被検者の再診時には前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さが、予め設定された所定の補正範囲62,63内にある場合には、再診時に前記顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さを再現する際に、前記顎台と前記光学ヘッドの相対高さを保持したまま、前記予め設定した所定の補正範囲62,63から外れるところまで前記顎台高さを前記上下ストローク61の中心方向に向かって移動させるように制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼底カメラやオートレフラクトメータ、非接触式眼圧計をはじめとする、眼科医療施設で用いる一般的な眼科検査装置において、患者や検診受診者(以下、被検者という)に検査を行う際は、被検者を椅子に座らせ、医師、臨床検査技師、看護師等の医療スタッフ(以下、検者という)は、検査装置の顎台昇降スイッチと光学ヘッド昇降スイッチを操作して被検者検査眼に光学ヘッドを位置調整し検査を行っている。
【0003】
また、近年、検査装置の電子制御化により、被検者の検査データと共にカルテ番号、ID番号、氏名、年齢、性別、既往症等、被検者基礎データを電子データとして検査装置内に保存し閲覧することが可能になったり、被検者の検査時の顎台高さや光学ヘッド高さを上記被検者基礎データ、検査データと共に電子データとして保存し、被検者の再診時には被検者一覧から当該被検者を検索し選択することにより、前回検査時と同一の顎台高さや光学ヘッド高さ等の検査状況を再現する装置も提案されている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3942965号公報
【特許文献2】特許第3319525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術の一つ目の問題点としては、同一被検者の前回検査時の顎台高さと光学ヘッド高さを再現すれば、そのまま前回と同じ条件で検査できそうに思えるが、実際に被検者が検査装置の顎台に自分の顎を載せる際は、被検者の服装、気分、疲労度、検査椅子の微妙な前後位置の違い等により、顎台から検査眼までの高さが上下に振れるため、十分な再現性が得られないという点が挙げられる。
【0006】
そのため、検者はその都度光学ヘッドを上下させて微調整を行うことが必要となる。
仮に、ある被検者の前回の検診時に、光学ヘッド高さの上下ストロークの上端付近で検査を行った場合、再診時には、従来技術の眼科検査装置においてはそのままの顎台高さと光学ヘッド高さを再現するため、被検者が顎台の上方寄りに顎を載せてしまうと検者は光学ヘッドを更に上方に調整する必要がある。
【0007】
ところが、光学ヘッドは調整範囲の上端付近に自動で高さが再現されており、それ以上の上昇ができないことになり、被検者の検査眼に光学ヘッド高さを合わせることができない事態が発生する。
このような場合は、一旦被検者に顎台から離れてもらい、検者が顎台をマニュアル操作で下降させてから再度、被検者に顎台に顎を載せさせた上で光学ヘッドの微調整を行う必要がある。
【0008】
これらの再操作は、ただでさえ検査項目が多く疲労している被検者に、更なる負担を与えることとなり、被検者の疲労によって、当該検査をはじめとする各検査において被検者が検査眼の視点を目標のマークに固定させる(以下、固視という)ことが困難になり、検査時間の増大を招くばかりか検査装置によっては正確な検査データが得られず、誤った診断に繋がる場合もある。
【0009】
また、二つ目の問題点としては、眼底カメラや眼底三次元画像解析検査装置、光学的眼軸長測定装置等、検査光を眼底に照射し検査を行う眼科検査装置において、被検者検査眼に、白内障等の病変により水晶体等の中間透光体に部分的な混濁があって、検査光の透過率が低く、所望の検査情報が得られない場合には、検査光軸を意図的にずらして透光部位を確保する方法が知られるが、光学ヘッド位置がストロークの上限や下限付近では光軸を意図的にずらすためのストロークが確保できず、良好な検査情報が得られないという点が挙げられる。
【0010】
このように、検査光軸を意図的にずらして検査できない場合、例えば、眼底カメラにおいては霞んだ眼底写真しか得られず、眼底三次元画像解析検査装置においては濃淡コントラストのはっきりした断層画像が得らず、光学的眼軸長測定装置においては網膜の反射信号がノイズに埋もれて抽出できず眼軸長を測定できない、といった問題があった。
この時、検者が熟練者であれば、光軸をずらすストロークを確保するために、上記一つ目の問題点と同様、一旦被検者に顎台から離れてもらい、検者が顎台をマニュアル操作で下降させてから再度、被検者に顎台に顎を載せさせた上で光学ヘッドの光軸ずらし操作を行うことにより、良好な検査情報を得ることは可能であるが、それでも上記一つ目の問題点は残る。ましてや検者が熟練者でない場合は、測定不能として諦めてしまうことが多々あった。
【0011】
このようなケースでは、被検者の正確な診断結果が得られないため、医師の治療方針にも影響し、結果として被検者が適切な治療を受けられず、最悪の場合は失明等の重大な結果に至ることもあった。
本発明は、上記状況に鑑みて、前回の検診時の被検者データを有効活用しながら、迅速かつ的確な診断を行うことができる、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、検者のスイッチ操作によって顎台高さを昇降させる顎台昇降機構と、検者のジョイスティック操作によって光学ヘッドの前後左右位置をスライドさせる光学ヘッド前後左右スライド機構と、検者のスイッチ操作によって光学ヘッド高さを昇降させる光学ヘッド昇降機構とを備え、被検者の前回の検診時の顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを被検者基礎データ、被検者検査データと併せて記憶すると共に、前記被検者の再診時には前記顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを再現するように制御を行う、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、顎台高さの上下ストロークの上下端から所定の補正範囲を設定し、前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さが前記所定の補正範囲内の場合には当該顎台高さの制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記顎台高さが、前記所定の補正範囲内にある場合には、前記被検者の再診時に前記顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さを再現する際に、前記顎台と前記光学ヘッドの相対高さを保持したまま、前記所定の補正範囲から外れるところまで前記顎台高さを前記上下ストロークの中心方向に向かって移動させるように制御を行うことを特徴とする。
【0014】
〔3〕上記〔2〕記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記所定の補正範囲が前記顎台高さの上下ストロークの10%であることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕から〔3〕の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さは検者が手動スイッチにより操作し、眼科検査時の操作は検者がタッチパネル式の液晶パネルからなる操作表示部により操作することを特徴とする。
【0015】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記眼科検査装置が眼底三次元画像解析検査装置であることを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記眼科検査装置が光学的眼軸長測定装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)ある被検者を検査したときの顎台高さが、顎台高さの上下ストロークの上下端から予め設定した所定の補正範囲内である場合、例えば顎台の昇降範囲の上限や下限ぎりぎりであった場合は、その被検者の再診時に顎台高さ及び光学ヘッド高さを再現する際に、顎台高さと光学ヘッド高さの相対位置を保持したまま、所定の補正範囲から外れる位置まで顎台高さをその上下ストロークの中心方向に向かって移動させるように制御を行って、顎台高さ及び光学ヘッド高さを近似的に再現することにより、例えば再診時に被検者が顎台の上方寄りに顎を載せてしまい、検者が光学ヘッドを更に上方に調整する必要があるような場合でも、余裕をもって調整することが可能になるので、一旦被検者に顎台から離れてもらい、検者が顎台をマニュアル操作で下降させてから再度、被検者に顎台に顎を載せさせた上で光学ヘッドの微調整を行う必要がなくなり、検査項目が多く疲労している被検者に更なる負担を与えることもなくなる。
【0017】
(2)被検者の疲労に起因する被検者検査眼の固視不良もなくなり、検査時間の短縮を図ることができ、より正確な検査データを得ることが可能になり、誤った診断に繋がる恐れも少なくなる。
(3)また、眼底カメラや眼底三次元画像解析検査装置、光学的眼軸長測定装置等、検査光を眼底に照射し検査を行う眼科検査装置においては、被検者検査眼に白内障等の病変により水晶体等の中間透光体に部分的な混濁があり、検査光の透過率が低く所望の検査情報が得られない場合に用いる、検査光軸を意図的にずらして透光部位を確保する方法が余裕を持って使えるようになるため、良好な検査情報を容易に得ることができる。
【0018】
例えば、眼底カメラにおいては霞まない鮮明な眼底写真を得ることができ、眼底三次元画像解析検査装置においては濃淡コントラストのはっきりした断層画像を得ることができ、また光学的眼軸長測定装置においては網膜の反射信号がノイズに対し明確に抽出できるようになり確実に眼軸長を測定できるようになる。
また、検者が熟練者でない場合でも容易に確実に測定結果を得られるようになるため、被検者は正確な診断結果を得ることが可能になり、適切な治療が受けらるようになる。
【0019】
(4)被検者の前回の検診時の顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さは手動スイッチにより操作し、被検者の検査時の操作はタッチパネル式の液晶パネルからなる操作表示部により操作するようにしたので、顎台の高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さの調整と被検者の検査時の操作を容易に、かつ精確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による眼底三次元画像解析装置を被検者側から見た斜視図である。
【図2】本発明による眼底三次元画像解析装置を検者側から見た斜視図である。
【図3】本発明による眼底三次元画像解析装置の正面図である。
【図4】本発明による眼底三次元画像解析装置の右側面図である。
【図5】本発明による眼底三次元画像解析装置の左側面図である。
【図6】本発明による眼底三次元画像解析装置の背面図である。
【図7】本発明による眼底三次元画像解析装置の平面図である。
【図8】本発明による眼底三次元画像解析装置の顎台昇降機構の内部構造を示す斜視図である。
【図9】本発明による眼底三次元画像解析装置の顎台昇降機構の内部構造を示す断面図である。
【図10】本発明による眼底三次元画像解析装置の光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す被検者側から見た斜視図である。
【図11】本発明による眼底三次元画像解析装置の光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す検者側から見た斜視図である。
【図12】本発明による眼底三次元画像解析装置の光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す断面図である。
【図13】本発明による眼底三次元画像解析装置における制御系とその周辺を示すブロック図である。
【図14】本発明による眼底三次元画像解析装置における表示操作部の態様(その1)を示す図面代用写真である。
【図15】本発明による眼底三次元画像解析装置における表示操作部の態様(その2)を示す図面代用写真である。
【図16】本発明による眼底三次元画像解析装置における表示操作部の態様(その3)を示す図面代用写真である。
【図17】本発明による眼底三次元画像解析装置における表示操作部の態様(その4)を示す図面代用写真である。
【図18】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の被検者側から見た斜視図である。
【図19】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の検者側から見た斜視図である。
【図20】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の正面図である。
【図21】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の右側面図である。
【図22】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の左側面図である。
【図23】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の背面図である。
【図24】本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の平面図である。
【図25】本発明による被検者の前回の検診時の検者による操作フローチャートである。
【図26】本発明による被検者の前回の検診時の検者による操作フローチャートである。
【図27】本発明の実施例を示す被検者再診時の検者による眼科検査装置における顎台(又は光学ヘッド)の設定制御の説明図である。
【図28】本発明の実施例を示す眼科検査装置における顎台(又は光学ヘッド)の設定制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムは、検者のスイッチ操作によって顎台高さを昇降させる顎台昇降機構と、検者のジョイスティック操作によって光学ヘッドの前後左右位置をスライドさせる光学ヘッド前後左右スライド機構と、検者のスイッチ操作によって光学ヘッド高さを昇降させる光学ヘッド昇降機構とを備え、被検者の前回の検診時の顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを被検者基礎データ、被検者検査データとを併せて記憶すると共に、前記被検者の再診時には前記顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを再現するように制御を行う、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さ又は光学ヘッド高さが、顎台高さ又は光学ヘッド高さの上下ストロークの上下端から予め設定された所定の補正範囲内である場合には、前記被検者の再診時に前記顎台高さ及び光学ヘッドの位置及び高さを再現する際に、前記顎台高さと光学ヘッドの位置及び高さの相対位置を保持したまま、前記予め設定した所定の補正範囲から外れるように前記顎台又は光ヘッドの高さの上下ストロークの中心方向に移動するように制御を行うことを特徴とする。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
図1及び図2はそれぞれ本発明による眼底三次元画像解析装置を被検者側及び検者側から見た斜視図、図3はその眼底三次元画像解析装置の正面図、図4はその右側面図、図5はその左側面図、図6はその背面図、図7はその平面図、図8はその顎台昇降機構の内部構造を示す斜視図、図9はその顎台昇降機構の内部構造を示す断面図、図10はその光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す被検者側から見た斜視図、図11はその光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す検者側から見た斜視図、図12はその光学ヘッド及び光学ヘッド昇降機構の内部構造を示す断面図である。また、図13は本発明による眼底三次元画像解析装置における制御系とその周辺を示すブロック図、図14〜17はそれぞれ本発明による眼底三次元画像解析装置における表示操作部の態様(その1〜その4)を示す図面代用写真である。
【0023】
本発明では、眼科検査装置として眼底三次元画像解析装置を例に挙げて説明する。
眼底三次元画像解析装置は、OCT(Optical Coherent Tomography)装置に代表される眼底の検査装置である。
OCT装置は、低コヒーレンス光源からの近赤外光ビームを眼底に照射し眼底網膜部からの後方散乱光を受光し、コンピュータ処理により眼底網膜部の三次元詳細形状を取得するものである。
【0024】
検者(医師)は、そのOCT装置で得られた眼底網膜部の三次元詳細形状や断層画像、数値データにより、網膜疾患の有無の判断、病変部位の特定、病変進行度の判断等の診断を行う。
図1〜図7に示すように、眼底三次元画像解析装置は、光学ヘッド1、光学ヘッド昇降機構3、光学ヘッド前後左右スライド機構4、及び顎台昇降機構5から構成される。
【0025】
まず、図1〜図7及び図12を参照しながら、光学ヘッドについて説明する。
光学ヘッド1には、対物レンズ2と、各種スイッチ8及び液晶表示パネル9からなる操作表示部10とが設けられ、この光学ヘッド1の内部には、眼底撮像光学系11、光干渉計21、及び制御系31が設置されている。
対物レンズ2は、光干渉計21の低コヒーレンス光源28からの低コヒーレンス光ビームを網膜上に合焦させ、網膜からの後方散乱光を再び光干渉計21に戻し、眼底撮像光学系11からの眼底照明光を網膜上に照射し、二次元眼底像を眼底撮影CCD17上に結像させ、眼底撮像光学系11の固視灯19を網膜上に結像させるものである。
【0026】
各種スイッチ8は、顎台及び光学ヘッドの設定(セッティング)を行うためのものであり、図13に示すように、光学ヘッド電源スイッチ8A、光学ヘッド上昇スイッチ8B、光学ヘッド下降スイッチ8C、光学ヘッドリセットスイッチ8D、光学ヘッドデータ出力スイッチ8E、顎台電源スイッチ8F、顎台上昇スイッチ8G、顎台下降スイッチ8H、顎台リセットスイッチ8I、顎台データ出力スイッチ8Jなどを含む。
【0027】
液晶表示パネル9には、図14〜図17に示すように、被検者登録・検索ボタンE、データ管理ボタンF、ソフトキーボードG、被検者情報入力タブH、検査スタートボタンI、検査データ保存ボタンJ、撮影ボタンK、眼底断層モニター画面(プレビュー画像)L、眼底モニター画面M、印刷ボタンNなどが表示され、検者はこの液晶表示パネル9を見ながら、眼底三次元画像、眼底写真、解析結果などをモニターしたり、前回の検診時の被検者登録、再診時の被検者選択等を行う。
【0028】
また、液晶表示パネル9はタッチパネル式のものが用いられ、眼科検査の各操作におけるメニュー表示を行うと共に操作スイッチを兼用するように、表示画面の構成が操作モード毎に切り替わるようにしてもよい。例えば、図14に示されるメインメニューで、被検者登録・検索ボタンEをタッチすると、図15に示される被検者登録・検索画面に切り替わるので、ソフトキーボードGを用いて被検者情報入力タブHに被害者の基礎データを入力することができる。そして、図16に示すように、検査画面に切り替わると、検査スタートボタンIをタッチして断層画像モニター画面(プレビュー)L及び眼底モニター画像Mをモニターしながら検査を行い、鮮明な画像が確認できたところで撮影ボタンKにタッチして撮影を行い、検査データ保存ボタンJにタッチしてその検査データを保存する。そして、図17に示される検査データを確認し、必要に応じて、印刷ボタンNにタッチして、検査データを出力してチェックできるようにしている。
【0029】
また、眼底撮像光学系11は、ダイクロイックミラー12からの透過光を受けて、眼底の平面的な写真を取得するためのものであり、図12に示すように、眼底照明部13、ビームスプリッタ14,16、レンズ群15、眼底撮影CCD17、反射ミラー18、固視灯19などから構成され、レンズ群15、反射ミラー18、フィルターなどによって、眼底照明部13又は固視灯19による眼底の照明及び眼底撮影CCD17による結像を行う。
【0030】
光干渉計21は、ダイクロイックミラー12からの反射光を受けて、眼底の断層情報を取得するためのものであり、図12に示すように、眼底走査ミラー(X)22、眼底走査ミラー(Y)23、位置調整可能な反射ミラー24を有する参照光路長合わせ機構25、光束を拡大又は縮小させるレンズ群26A、ミラー系及び分光器26Bを有する多チャンネル検出器27、シングルモードファイバ28Aが配設される低コヒーレンス光源28などから構成される。
【0031】
制御系31は、光学ヘッド1の検者側に設けられ、図13に示すように、電源32、CPU(中央処理装置)33、インターフェース34,35、プログラムメモリ36から構成される。インターフェース34には上記した各種スイッチ8及び液晶パネル9が接続され、一方、インターフェース35には、第1のパルスモータ(顎台用)41、顎台原点センサ49、顎台ストロークセンサ49A、補助記憶装置(ICカードリーダー・ライター)50、第2のパルスモータ(光学ヘッド用)51、光学ヘッド原点センサ58、光学ヘッドストロークセンサ59、補助記憶装置(ICカードリーダー・ライター)60、光学ヘッドデータ出力装置71が接続され、補助記憶装置(ICカードリーダー・ライター)50,60には、ICカード72が接続される。
【0032】
この制御系31では、検者による各種スイッチ8のスイッチ操作に基づく、顎台昇降や光学ヘッド昇降などの装置アライメント、液晶表示パネル9の操作に基づく、眼底断層画像取得や眼底三次元画像取得等の検査、取得したデータの表示、データ解析、検査結果やデータ解析結果の出力(印刷ボタンNの操作による印刷、オンラインでのホストコンピュータへの送信など)、検査結果や解析結果の記憶装置への保存など、眼底三次元画像解析装置の制御を行う。
【0033】
光学ヘッド昇降機構3は、検者による光学ヘッド上昇スイッチ8B及び光学ヘッド下降スイッチ8Cの操作により、光学ヘッド1を上昇、下降させ、被検者の検査眼に対物レンズ2の高さを合わせるためのものである。
光学ヘッド前後左右スライド機構4は、光学ヘッド1及び光学ヘッド昇降機構3を、検査光軸を平行に保った状態で被検者のジョイスティック4Aの手動操作により前後左右に移動させ、光学ヘッド1の対物レンズ2を被検者の左右検査眼に合わせるためのものである。
【0034】
顎台昇降機構5は、被検者の顎を載せる顎台6、顎台フレーム6A、被検者の額を当接させる額当て7、額当てフレーム7Aから構成され、検者による顎台上昇スイッチ8G及び顎台下降スイッチ8Hの操作により、顎台6を上昇、下降させることにより、被検者の検査眼を光学ヘッド1の対物レンズ2の高さに合わせるためのものである。
図5、図8及び図9を参照しながら、眼底三次元画像解析装置の顎台昇降機構の構成とその動作について説明する。
【0035】
顎台昇降機構5は基台A上に配置されており、顎台ベース5Aに固定された第1のパルスモータ41と、この第1のパルスモータ41の出力軸41Aに固定される第1のギア42と、この第1のギア42に噛合する第2のギア43と、この第2のギア43に噛合する第3のギア44がそれぞれ設けられており、第3のギア44には台形ネジ45が固定されている。この台形ネジ45には第1のナット46が螺合し、この第1のナット46にはナットホルダ47が固定され、このナットホルダ47に顎台センサ板48が固定されている。一方、この顎台センサ板48に対応するように顎台ベース5Aに顎台原点センサ49が固定されている。
【0036】
台形ネジ45は、第1のパルスモータ41の駆動により回転駆動される。この台形ネジ45には第1のナット46が螺合し、台形ネジ45の回転を上下方向に変換するように構成されており、第1のナット46と一体のナットホルダ47、顎台フレーム6A及び顎台6が共に昇降する。
なお、第1のギア42、第2のギア43、第3のギア44、台形ネジ45は、各々回転軸受けにより顎台ベース5Aに回転自在に取り付けられている(図示なし)。
【0037】
また、ナットホルダ47、顎台フレーム6A、顎台6は各々直動軸受けによって昇降自在に取り付けられる(図示なし)。
顎台原点センサ49は透過型の光センサであり、この透過型の光センサは、顎台昇降機構5の第1のナット46と連動して上下する顎台センサ板48により、顎台高さの上下ストロークの下限において遮光状態となるよう配置される。
【0038】
第1のパルスモータ41は光学ヘッド1内の制御系31により制御され、顎台原点センサ49の遮光位置が顎台6の原点(ストロークの下限)となり、パルスデータにて台形ネジ45の回転角度(つまり、顎台6の上下移動量) が決まる。
電源投入時には、顎台6はその原点まで定速回転下降し、そこから規定量だけ回転上昇したところを、電源投入後の待機位置、つまり被検者の前回の検診時の顎台6の待機位置とする。被検者の前回の検診時には顎台6は顎台上昇スイッチ9G及び顎台下降スイッチ9Hによる上下操作と連動して正回転、逆回転を行うが、常に原点からの位置情報(パルスデータ)は保持される。そして検査時の原点からの位置情報(パルスデータ)を、検査データ保存時に検査データや被検者基礎データと共に保存記憶する。同じ被検者の再診時には、前回検査時に保存した原点からの位置情報(パルスデータ)を呼び出す。
【0039】
次に、図10〜12を参照しながら、眼底三次元画像解析装置の光学ヘッド昇降機構の構成とその動作について説明する。
光学ヘッド昇降機構3は、光学ヘッド前後左右スライド機構4上に配置されており、光学ヘッドベース3Aに固定された第2のパルスモータ51と、この第2のパルスモータ51の出力軸51Aに固定される第4のギア52と、この第4のギア52に噛合する第5のギア53がそれぞれ設けられており、この第5のギア53の中心部には第2のナット54が固定されている。この第2のナット54には第2の台形ネジ55が噛合する。なお、56は第2の台形ネジ55の上端に固定される光学ヘッド昇降ベース、57は光学ヘッド昇降ベース56に固定される光学ヘッドセンサ板、58は光学ヘッドセンサ板57に対応するように光学ヘッド昇降機構5の固定部に配置される光学ヘッド原点センサである。
【0040】
光学ヘッドベース3Aに固定された第2のパルスモータ51の回動は第4のギア52を介して第5のギア53を回転駆動させる。第5のギア53には第2のナット54が固定されており、この第2のナット54には第2の台形ネジ55が螺合し、第2のナット54の回転を上下方向に変換するように構成されており、第2の台形ネジ55と一体の光学ヘッド昇降ベース56及び光学ヘッド1が共に昇降する。
【0041】
なお、第4のギア52、第5のギア53は、各々回転軸受けにより光学ヘッドベース3Aに回転自在に取り付けられている(図示なし)。
また、第2の台形ネジ55、光学ヘッド昇降ベース56は各々直動軸受けによって光学ヘッドベース3Aに対して昇降自在に取り付けられている(図示なし)。
光学ヘッド原点センサ58は透過型の光センサであり、この透過型の光センサは、光学ヘッド昇降機構3の光学ヘッド昇降ベース56と連動して上下する光学ヘッドセンサ板57により、光学ヘッド高さの上下ストロークの下限において遮光状態となるよう配置される。
【0042】
第2のパルスモータ51は光学ヘッド1内の制御系31により制御され、光学ヘッド原点センサ58の遮光位置が光学ヘッド1の原点(ストロークの下限)となり、パルスデータにて第5のギア53の回転角度(つまり、光学ヘッド1の上下移動量) が決まる。
電源投入時には、光学ヘッド1はその原点まで定速回転下降し、そこから規定量だけ回転上昇したところを、電源投入後の待機位置、つまり被検者の前回の検診時の光学ヘッド1の待機位置とする。被検者の前回の検診時には光学ヘッド1は光学ヘッド上昇スイッチ8B及び光学ヘッド下降スイッチ8Cによる上下操作と連動して正回転、逆回転を行うが、常に原点からの位置情報(パルスデータ)は保持される。そして、検査時の原点からの位置情報(パルスデータ)を、検査データ保存時に検査データや被検者基礎データと共に保存し記憶する。同じ被検者の再診時には、前回検査時に保存した原点からの位置情報(パルスデータ)を呼び出す。
【0043】
なお、光学ヘッド昇降機構3及び顎台昇降機構5の構成は、上記実施例に限定されることなく、以下のような変形が可能である。
(1)駆動機構としては、ラック・アンド・ピニオン、又はネジ送りを使用することができる。
(2)送りネジとしては、例えば台形ネジ等のすべりを利用したもの、ボールネジやローラーネジ等の転がりを利用した送りネジ等を用いることができる。
【0044】
(3)電動モータとしては、サーボモータ、パルスモータ、ACモータ、DCモータ等を用いることができる。
パルスモータやサーボモータを用いる場合は、原点センサを設け、顎台には連動して上下動する顎台センサ板を設け、顎台が原点位置にあるときのみ顎台原点センサを動作させる位置関係を設定する。
【0045】
ACモータ、DCモータを用いる場合は、原点センサに加えて回転数センサを設ける。回転数センサはモータ回転軸に連動するスリット円盤の回転毎の反射光、入射光の回数を検出し、顎台の上下方向の位置情報とする。
ここで、被検者検診時の検者による操作を図18〜図24を参照しながら説明する。
図18及び図19はそれぞれ本発明による眼底三次元画像解析装置を昇降台に載置し被検者の検査を行っている状態の被検者側及び検者側から見た斜視図、図20はその正面図、図21はその右側面図、図22はその左側面図、図23はその背面図、図24はその平面図である。
【0046】
まず、図25のフローチャートを参照しながら、被検者の前回の検診時の検者による操作について説明する。
(1)まず、検者は、図15に示したように、操作表示部10から被検者Dの氏名、生年月日、性別、カルテ番号等を入力し登録する(ステップS1)。
(2)次に、被検者Dを検査椅子Cに着席させる(ステップS2)。
【0047】
(3)次に、被検者Dの顎81を顎台6上に載置させ、また同時に被検者Dの額82が額当て7に当接するように、顎台上昇スイッチ8G、顎台下降スイッチ8Hを操作し顎台昇降機構5を動作させ、顎台高さを調整する(ステップS3)。
(4)次に、図16に示した操作表示部10の眼底モニター画面Mを見ながら、ジョイスティック4Aの手動操作で光学ヘッド前後左右スライド機構4を動作させ、光学ヘッド1の左右及び前後の位置を被検者Dの検査眼の眼底に合わせる(ステップS4)。
【0048】
(5)次に、図16に示した操作表示部10の眼底モニター画面Mを見ながら、光学ヘッド上昇スイッチ8B、光学ヘッド下降スイッチ8Cを操作し光学ヘッド昇降機構3を動作させ、光学ヘッド1の上下位置を被検者Dの検査眼の眼底に合わせる(ステップS5)。
(6)次いで、図16に示した操作表示部10の断層画像モニター画面(プレビュー)Lを見ながら断層画像のコントラストが最も強く得られる条件を探す(ステップS6)。
【0049】
(7)白内障等の病変により中間透光体に混濁があって検査光軸が確保できず、診断を行うのに十分な情報が得られると判断できる明瞭なコントラストの断層画像が得られない場合は、図16に示した操作表示部10の断層画像モニター画面(プレビュー)Lを見ながら、光学ヘッド上昇スイッチ8B、光学ヘッド下降スイッチ8Cを操作し光学ヘッド1を上昇又は下降させて検査光軸を意図的にずらし、断層画像モニター画面(プレビュー)Lの画像のコントラストが最も強く得られる条件を探す(ステップS7)。
【0050】
(8)診断を行うのに十分な情報が得られると判断できる明瞭なコントラストの断層画像が得られる条件であれば、図16に示す操作表示部10の撮影ボタンKにタッチして三次元断層撮影を行う(ステップS8)。
(9)図17に示すように撮影結果を確認し、操作表示部10の印刷ボタンNにタッチして、出力データの印刷(又は出力データの転送など)の出力操作を行う(ステップS9)。
【0051】
(10)また、検査データは補助記憶装置50,60に保存する。なお、検査データを保存する際には、顎台高さ情報は顎台データ出力スイッチ8Jの操作により、光学ヘッド高さ情報は光学ヘッドデータ出力スイッチ8Eの操作により、それぞれ保存し、検査終了とする(ステップS10)。
次に、図26のフローチャートを参照しながら、被検者再診時の検者による操作について説明する。
【0052】
(1)まず、検者は、操作表示部10から被検者Dの氏名、生年月日、性別、カルテ番号等を検索し、当該被検者Dを選択する(ステップS11)。
(2)次に、顎台高さ、光学ヘッド高さ、光学系の撮影設定条件等、前回の検診時(例えば初診時)の条件を自動で再現する(ステップS12)。
この時、記憶されている当該被検者Dの顎台(又は光学ヘッド)高さが、顎台(又は光学ヘッド)高さの上下ストロークの上下端から予め設定した所定の範囲内である場合、例えば顎台(又は光学ヘッド)の昇降範囲の上限や下限ぎりぎりであった場合は、被検者Dの全体の検診時の顎台高さと光学ヘッド高さの相対位置を保持したまま、予め設定した補正範囲から外れるように顎台(又は光学ヘッド)高さの上下ストロークの中心方向に移動するように制御を行い、顎台高さ及び光学ヘッド高さを自動で再現する。
【0053】
(3)被検者Dを検査椅子Cに着席させる(ステップS13)。
(4)操作表示部10の眼底モニター画面Mを見ながらジョイスティック4Aの手動操作で光学ヘッド前後左右スライド機構4を動作させ、光学ヘッド1の検査光軸が被検者Dの検査眼の眼底に合うように光学ヘッドの上下位置を調整する(ステップS14)。
(5)光学ヘッド1の高さは既に自動で再現されているが、微調整のため、操作表示部10の眼底モニター画面Mを見ながら、光学ヘッド上昇スイッチ8B、光学ヘッド下降スイッチ8Cを操作し光学ヘッド昇降機構3を動作させ、光学ヘッド1の検査光軸が被検者Dの検査眼の眼底に合うように光学ヘッドの上下位置を調整する(ステップS15)。
【0054】
(6)光学ヘッド1の断層画像パラメータは既に自動で再現されているが、微調整のため、操作表示部10の断層画像モニター画面(プレビュー)Lを見ながら断層画像のコントラストが最も強く得られる条件を探す(ステップS16)。
(7)白内障等の病変により中間透光体に混濁があって検査光軸が確保できず、診断を行うのに十分な情報が得られると判断できる明瞭なコントラストの断層画像が得られない場合は、操作表示部10の断層画像モニター画面(プレビュー)Lを見ながら、光学ヘッド上昇スイッチ8B、光学ヘッド下降スイッチ8Cを操作し光学ヘッド昇降機構3を動作させ、光学ヘッド1を上昇又は下降させて検査光軸を意図的にずらし、断層画像モニター画面(プレビュー)Lの画像のコントラストが最も強く得られる条件を探す(ステップS17)。
【0055】
(8)診断を行うのに十分な情報が得られると判断できる明瞭なコントラストの断層画像が得られる条件であれば、操作表示部10の撮影ボタンKにタッチして三次元断層撮影を行う(ステップS18)。
(9)撮影結果を確認し、操作表示部10の印刷ボタンにタッチして出力データの印刷(又は出力データの転送など)の出力操作を行う(ステップS19)。
【0056】
(10)また、検査データは補助記憶装置50,60に保存する。なお、検査データを保存する際には、顎台高さ情報は顎台データ出力スイッチ8Jの操作により、光学ヘッド高さ情報は光学ヘッドデータ出力スイッチ8Eの操作により、それぞれ保存し、検査終了とする(ステップS20)。
本発明においては、上記した被検者を検査したときの顎台(又は光ヘッド)高さが、顎台(又は光ヘッド)高さの上下ストロークの上下端から予め設定された所定の範囲内である場合は、その被検者の再診時に顎台(又は光学ヘッド)高さを再現する際に、顎台(又は光学ヘッド)高さの相対位置を保持したまま、予め設定した補正範囲から外れるように顎台(又は光学ヘッド)高さの上下ストロークの中心方向に移動させるように制御する。
【0057】
そこで、本発明における顎台(光学ヘッド)高さの補正について、図27及び28を参照しながら具体的に説明する。なお、ここでは顎台高さの補正を中心にして説明する。
例えば、図27に示すように、顎台高さの上下ストローク61を100mm(±0mm〜+100mm)とし、下限側補正範囲62を±0mm〜+10mm、上限側補正範囲63を+90mm〜+100mmとする。ある検査者の検査時に設定し保存した顎台高さのデータが、下限側及び上限側補正範囲62,63から外れている場合(即ち、補正不要範囲64内にある場合)は、被検者の再診時には前回の検査時のデータをそのまま再現すればよい。
【0058】
ところが、被検者の前回の検診時の顎台高さが上限側補正範囲63内(例えば、+95mm)であった場合、この高さをそのまま再現すると、顎台高さの調整が必要になっても上方向には5mmしか余裕がなく、光学ヘッドとの相対位置を調整できる範囲も限定されてしまう。そのため、顎台高さの原点を+95mmから+90mmに変更し、パルスデータを設定すると共に、光学ヘッド高さデータも−5mm分補正し、パルスデータを設定することによって、前回の検診時との条件の違いによる高さの誤差を調整できる範囲を広げることができる。
【0059】
同様に、前回の検診時の顎台高さが下限側補正範囲62内(例えば、+3mm)だった場合は、顎台高さの原点を+3mmから+10mmに変更し、パルスデータを設定すると共に、光学ヘッド高さデータも+7mm分補正しパルスデータを設定すればよい。
これらの場合、被検者にとって前回検査時の顎台(又は光学ヘッド)高さと若干違うことになるが、人間の首骨の自由度は意外に大きく10mm〜20mm程度の変化には十分に適応できるので、上記のような設定を行うようにする。
【0060】
図28は本発明の実施例を示す眼科検査装置における顎台(又は光学ヘッド)の設定制御のフローチャートである。なお、ここでは、顎台高さの補正を中心に説明する。
(1)まず、顎台高さの上下ストローク61の下限側補正範囲62を±0mm〜+10mm、上限側補正範囲63及び下側補正範囲62を設定する(ステップS21)。
(2)次に、被検者の前回の検診をしたときの顎台高さが、その補正範囲62又は63内にあるか否かをチェックする(ステップS22)。
【0061】
(3)その補正範囲62又は63内にある場合には、顎台と光学ヘッドの相対高さを保持したまま、補正範囲62又は63から外れるところまで顎台高さをその上下ストローク61の中心方向に向かって移動させるように制御する(ステップS23)。
(4)ステップS22において、顎台高さが補正範囲62又は63の両方からから外れている場合には、そのまま顎台高さを再現する(ステップS24)。
【0062】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムは、前回の検診時の被検者データを有効活用しながら、迅速かつ的確な診断を行うことができる、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 光学ヘッド
2 対物レンズ
3 光学ヘッド昇降機構
3A 光学ヘッドベース
4 光学ヘッド前後左右スライド機構
4A ジョイステック
5 顎台昇降機構
5A 顎台ベース
6 顎台
6A 顎台フレーム
7 額当て
7A 額当てフレーム
8 各種スイッチ
8A 光学ヘッド電源スイッチ
8B 光学ヘッド上昇スイッチ
8C 光学ヘッド下降スイッチ
8D 光学ヘッドリセットスイッチ
8E 光学ヘッドデータ出力スイッチ
8F 顎台電源スイッチ
8G 顎台上昇スイッチ
8H 顎台下降スイッチ
8I 顎台リセットスイッチ
8J 顎台データ出力スイッチ
9 液晶表示パネル
10 操作表示部
11 眼底撮像光学系
12 ダイクロイックミラー
13 眼底照明部
14,16 ビームスプリッタ
15 レンズ群
17 眼底撮影CCD
18 反射ミラー
19 固視灯
21 光干渉計
22 眼底走査ミラー(X)
23 眼底走査ミラー(Y)
24 位置調整可能な反射ミラー
25 参照光路長合わせ機構
26A 光束を拡大又は縮小させるレンズ群
26B ミラー系及び分光器
27 多チャンネル検出器
28 低コヒーレンス光源
28A シングルモードファイバ
31 制御系
32 電源
33 CPU(中央処理装置)
34,35 インターフェース
36 プログラムメモリ
41 第1のパルスモータ(顎台用)
41A 第1のパルスモータの出力軸
42 第1のギア
43 第2のギア
44 第3のギア
45 台形ネジ
46 第1のナット
47 ナットホルダ
48 顎台センサ板
49 顎台原点センサ
49A 顎台ストロークセンサ
50,60 補助記憶装置(ICカードリーダー・ライター)
51 第2のパルスモータ(光学ヘッド用)
51A 第2のパルスモータの出力軸
52 第4のギア
53 第5のギア
54 第2のナット
55 第2の台形ネジ
56 光学ヘッド昇降ベース
57 光学ヘッドセンサ板
58 光学ヘッド原点センサ
59 光学ヘッドストロークセンサ
61 光学ヘッド高さの上下ストローク
62 光学ヘッド高さの下限側補正範囲(所定の補正範囲)
63 光学ヘッド高さの上限側補正範囲(所定の補正範囲)
71 光学ヘッドデータ出力装置
72 ICカード
A 基台
B 支持台
C 検査椅子
D 被検者
E 被検者登録・検索ボタン
F データ管理ボタン
G ソフトキーボード
H 被検者情報入力タブ
I 検査スタートボタン
J 検査データ保存ボタン
K 撮影ボタン
L 眼底断層モニター画面(プレビュー画像)
M 眼底モニター画面
N 印刷ボタン
81 被検者の顎
82 被検者の額

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検者のスイッチ操作によって顎台高さを昇降させる顎台昇降機構と、検者のジョイスティック操作によって光学ヘッドの前後左右位置をスライドさせる光学ヘッド前後左右スライド機構と、検者のスイッチ操作によって光学ヘッド高さを昇降させる光学ヘッド昇降機構とを備え、被検者の前回の検診時の顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを被検者基礎データ、被検者検査データと併せて記憶すると共に、前記被検者の再診時には前記顎台高さ並びに光学ヘッド位置及び高さを再現するように制御を行う、眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、顎台高さの上下ストロークの上下端から所定の補正範囲を設定し、前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さが前記所定の補正範囲内の場合には当該顎台高さの制御を行うようにしたことを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記顎台高さが、前記所定の補正範囲内にある場合には、前記被検者の再診時に前記顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さを再現する際に、前記顎台と前記光学ヘッドの相対高さを保持したまま、前記所定の補正範囲から外れるところまで前記顎台高さを前記上下ストロークの中心方向に向かって移動させるように制御を行うことを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記所定の補正範囲が前記顎台高さの上下ストロークの10%であることを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記被検者の前回の検診時の前記顎台高さ並びに光学ヘッドの位置及び高さは検者が手動スイッチにより操作し、眼科検査時の操作は検者がタッチパネル式の液晶パネルからなる操作表示部により操作することを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記眼科検査装置が眼底三次元画像解析検査装置であることを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一項記載の眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システムにおいて、前記眼科検査装置が光学的眼軸長測定装置であることを特徴とする眼科検査装置における顎台と光学ヘッドの設定制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−217710(P2012−217710A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88183(P2011−88183)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000146179)エムテックスマツムラ株式会社 (17)