説明

眼科用剤

【課題】 徐放成分としてアルギン酸若しくはその塩を配合しながら、経時的に粘度低下の問題を生じない眼科用剤を提供すること。
【解決手段】 以下の成分(A)ないし(D)
(A)チモロールマレイン酸塩
(B)トロメタモール
(C)アルギン酸若しくはその塩
(D)無機金属塩
を含有することを特徴とする眼科用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科用剤に関し、より詳細にはチモロールマレイン酸塩を有効成分として含有し、経時的な粘度低下が抑制された眼科用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障の治療においては、一般に眼圧降下作用を期待して各種の点眼剤が使用されることが多い。緑内障に使用される点眼剤の具体的な例としては、カルテオロール塩酸塩、チモロールマレイン酸塩、塩酸ベタキソロール等のβ遮断薬、塩酸ブナゾシン等のα遮断薬、塩酸レボブノロール、ニプラジロール等のαβ遮断薬や、プリンゾラミド、塩酸ドルゾラミド等の炭酸脱水素酵素阻害薬、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン系薬、塩酸ジピベフリン等の交感神経刺激薬、塩酸ピロカルピン等の副交感神経刺激薬などが挙げられる。
【0003】
ところで、多くの緑内障治療用点眼剤は、その眼圧低下効果の持続時間が十分ではなく、一日の投与回数が2回となっているが、種々の手法により、これを持続型の製剤とすることが望まれており、そのための試みがなされていた。
【0004】
眼科用剤について持続型の製剤とするための手法の一例としては、高分子化合物を利用し、薬剤の粘度を挙げることによる徐放製剤化が知られている。例えば、特許文献1には、ラムサンガムを含有する局所用薬用組成物が、特許文献2には、ゲル化多糖類と微粉砕された薬剤坦体とからなる局部眼科用組成物がそれぞれ開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、炭酸脱水酵素阻害薬およびキサンタンガムを含有する眼科用組成物が、特許文献4には、メチルセルロース等、眼表面上で液体−ゲル相転移を起こす基剤を含有し、さらにβブロッカーとβブロッカー以外の眼圧降下薬を含有した緑内障または高眼圧症治療剤がそれぞれ開示されている。
【0006】
加えて、特許文献5には、約120mM以下の合計イオン強度を有し、そして少なくとも約4%の当初結合アセテート含量および少なくとも約2.5%の当初結合ピルビン酸塩含量を有するキサンタンガムを含む眼科用組成物が開示されている。
【0007】
更に、特許文献6には、βブロッカーをアルギン酸の存在下に水に溶解すること、並びにそこにアルカリ性塩基を加えて、その溶液のpHを6〜8にすることによって得られる、βブロッカー溶液を含有する眼用医薬組成物が、特許文献7には、M/G比が1.0 以下であるアルギン酸誘導体と、リン酸およびその塩並びにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびその塩から選択される1つ以上の化合物とを含有する液状組成物が、特許文献8には、アルギン酸誘導体とホウ酸および/またはその塩とを含有する液状の組成物がそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開昭64−034926号
【特許文献2】特開平07−010776号
【特許文献3】特表2001−508035
【特許文献4】特表2001−081048
【特許文献5】特表2002−510654
【特許文献6】特表2002−511430
【特許文献7】特開2002−332248
【特許文献8】特開2002−332249
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の文献で開示された技術により、種々の徐放化製剤が提供されているが、このうち、アルギン酸若しくはその塩を用いた眼科用剤について、本発明者らが検討を行ったところ、アルギン酸を配合した眼科用剤は、調製直後より粘度の低下が経時的に起こることが判明した。そして、これらの物性値の変動は、徐放性や官能性等の製剤特有の機能を著しく損なわせる原因となっていることも明らかとなった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、チモロールマレイン酸塩を有効成分とする眼科用剤において、トロメタモールと特定のアルギン酸若しくはその塩と金属無機塩を併用することにより、粘度が経時的に低下しづらい眼科用剤となし得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(A)チモロールマレイン酸塩
(B)トロメタモール
(C)アルギン酸若しくはその塩
(D)金属無機塩
を含有し、経時的な粘度低下が抑制された眼科用剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼科用剤は経時的な粘度低下が抑制されたものであるため、徐放性や官能性等の機能が低下せず、緑内障の治療等に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の眼科用剤の有効成分は、成分(A)として配合される、チモロールマレイン酸塩である。この成分(A)の配合量は、通例、眼科用剤中、0.01〜5w/v%であり、好ましくは0.05〜3w/v%、より好ましくは0.1〜1w/v%である。
【0013】
また、本発明の眼科用剤は、成分(B)としてトロメタモールを含有する。この成分(B)の配合量は、特に制限されないが、通例眼科用剤中、0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%であり、より好ましくは0.1〜2w/v%である。成分(B)の配合量が0.01w/v%を下回ると、アルギン酸の高粘度化への増強作用が不足し、また、10w/v%を上回ると、眼刺激性の面から好ましくない。
【0014】
さらに、本発明の眼科用剤は、成分(C)として、アルギン酸若しくはその塩を含有する。このアルギン酸は、褐藻類などに含まれる多糖の一種であり、s−D−マンヌロン酸(M)とそのC−5エピマーであるα−L−グルロン酸(G)の2種のブロック(いずれもカルボキシル基を持つ単糖)が(1−4)−結合した直線状の高分子である。このアルギン酸若しくはその塩の例としては、アルギン酸、アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノール塩、アンモニウム塩等のアルギン酸塩等が挙げられるが、これらの中でも特にアルギン酸およびアルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
また、上記アルギン酸若しくはその塩におけるM/G比は、通例0.5以上2.0以下、好ましくは0.7以上1.8以下であり、より好ましくは1.0以上1.6以下である。ここで、M/G比とは、s−D−マンヌロン酸(M)とそのC−5エピマーであるα−L−グルロン酸(G)のブロック比を意味する。
【0016】
なお、アルギン酸若しくはその塩のM/G比は、既知の方法、例えば(”Carbohydrate Research”, 32(1974), 217-225)に記載の方法に準じて測定することができる。すなわち、アルギン酸は、MM画分、GG画分およびMG画分を含むが、これらは加水分解に対する抵抗性と酸に対する溶解性が異なる。そこで、弱塩酸を用いて、MM画分、GG画分、MG画分と切断されるような条件で分解したのち、各画分を常法に従って分画し、更に各画分の糖量をフェノール硫酸法で測定し、M/G比を算出することができる。
【0017】
この成分(C)の配合量は、特に制限されないが、眼科用剤中、通例0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%であり、より好ましくは0.1〜2w/v%である。成分(C)の配合量が0.01w/v%を下回ると、アルギン酸の高粘度化への増強作用が不足し、また、10w/v%を上回ると、眼刺激性の面から好ましくない。
【0018】
更にまた、本発明の成分(D)として配合される、無機金属塩の例としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられるが、これらの中でも特に塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。
【0019】
この成分(D)の配合量は特に制限されないが、眼科用剤中、通例0.01〜10w/v%、好ましくは0.05〜5w/v%であり、より好ましくは0.1〜2w/v%である。成分(D)の配合量が0.01w/v%を下回ると、眼科用剤の経時的な粘度低下の抑制作用が不十分となることがあり、また、10w/v%を上回ると、眼刺激性の面から好ましくない。
【0020】
本発明による眼科用剤は、例えば、水等の適当な液状担体中、上記成分(A)〜(D)を配合し、公知の一般的な手順によって混合することにより調製される。
【0021】
本発明の眼科用剤の調製にあたっては、上記した各成分の他に、必要に応じて緩衝剤、防腐剤、増粘剤、pH調節剤、清涼化剤、界面活性剤、等張化剤などの添加剤を加えることができる。
【0022】
添加剤のうち、緩衝剤の例としては、リン酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、酢酸またはその塩、酒石酸またはその塩、クエン酸またはその塩などを挙げることができる。
【0023】
また、防腐剤の例としては、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノールなどを挙げることができ、増粘剤の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アラビアゴム、ポビドン、キサンタンガムなどを挙げることができる。
【0024】
更に、pH調節剤の例としては、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを挙げることができ、清涼化剤の例としては、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ユーカリ油、ハッカ油などを挙げることができる。
【0025】
加えて界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート(ポリソルベート80)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックP123)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(プルロニックP85)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(プルロニックF127)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(プルロニックL−44)などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、特にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルが好ましく、更にその中でもポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましい。
【0026】
また、等張化剤の例としては、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール400、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0027】
本発明による眼科用剤のpHは、通例5〜9、好ましくは5.5〜8.5、より好ましくは6〜8である。pHが、5〜9の範囲を逸脱すると、点眼時に刺激を感じることがあるため好ましくない。
【0028】
また、本発明による眼科用剤の浸透圧比は、通例、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.9〜1.1である。浸透圧比が0.5〜1.5の範囲を逸脱すると、点眼時に刺激を感じることがあるため好ましくない。
【実施例】
【0029】
本発明の内容を以下の実施例、試験例および比較例でさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等の内容に何ら制約されるものではない。
【0030】
実 施 例 1
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、トロメタモール0.71gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化ナトリウム0.74gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用剤を得た。この眼科用剤のpHは6.98であった。
【0031】
実 施 例 2
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(ダックアシッドA;M/G比:約0.9)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、トロメタモール0.71gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化ナトリウム0.74gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用剤を得た。この眼科用剤のpHは7.52であった。
【0032】
比 較 例 1
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、トロメタモール0.70gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン2.40gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用剤を得た。この眼科用剤のpHは6.89であった。
【0033】
比 較 例 2
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(ダックアシッドA;M/G比:約0.9)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、トロメタモール0.70gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン2.40gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用剤を得た。この眼科用剤のpHは7.59であった。
【0034】
比 較 例 3
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(ダックアシッドA;M/G比:約0.9)およびニプラジロール(桂化学(株)社製、以下同様)0.25gを加えて分散させた後、トロメタモール0.60gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン2.42gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、希塩酸を用いてpHを約7に調整した。これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは7.25であった。
【0035】
比 較 例 4
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(ダックアシッドA;M/G比:約0.9)およびニプラジロール0.25gを加えて分散させた後、トロメタモール0.60gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン0.06g、塩化ナトリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、希塩酸を用いてpHを約7に調整した。これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは7.12であった。
【0036】
比 較 例 5
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびニプラジロール0.25gを加えて分散させた後、トロメタモール0.68gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン2.42gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、希塩酸を用いてpHを約7に調整した。これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは7.14であった。
【0037】
比 較 例 6
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびニプラジロール0.25gを加えて分散させた後、トロメタモール0.68gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン0.06g、塩化ナトリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、希塩酸を用いてpHを約7に調整した。これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは7.01であった。
【0038】
比 較 例 7
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびニプラジロール0.25gを加えて分散させた後、モノエタノールアミン0.21gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン2.67gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、点眼液組成物を得た。この点眼液組成物のpHは6.81であった。
【0039】
比 較 例 8
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびニプラジロール0.25gを加えて分散させた後、モノエタノールアミン0.21gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにグリセリン0.30g、塩化カリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、点眼液組成物を得た。この点眼液組成物のpHは6.95であった。
【0040】
比 較 例 9
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)を加えて分散させた後、トロメタモール0.625gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化ナトリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、点眼液組成物を得た。この点眼液組成物のpHは6.95であった。
【0041】
比 較 例 10
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)を加えて分散させた後、トロメタモール0.625gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化カリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、希塩酸を用いてpHを約7に調整した。点眼液組成物を得た。この点眼液組成物のpHは6.95であった。
【0042】
比 較 例 11
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、水酸化ナトリウムを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化ナトリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、点眼液組成物を得た。この点眼液組成物のpHは7.08であった。
【0043】
比 較 例 12
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(キミカアシッドSA;M/G比:約1.6)およびチモロールマレイン酸塩0.342g(チモロールとして0.25g)を加えて分散させた後、トロメタモール0.60gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これにベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは6.80であった。
【0044】
比 較 例 13
精製水約70gに、アルギン酸1.00g(ダックアシッドA;M/G比:約0.9)を加えて分散させた後、トロメタモール0.53gを加えて、液が澄明になるまで攪拌して溶解させた。これに塩化ナトリウム0.70gおよびベンザルコニウム塩化物液(10%)0.02gを加えて溶解した後、これに精製水を加えて全量を100mLとし、眼科用薬剤を得た。この眼科用薬剤のpHは6.72であった。
【0045】
試 験 例
実施例1、2および比較例1〜13で得られた各眼科用剤を、各々60℃の条件下で4週間保存し、その前後に粘度測定を行った。このとき、点眼時の涙液によるゲル化を再現するために、眼科用剤0.5mLあたり、0.01mol/Lの塩化カルシウム水溶液0.5mLを各々添加して測定を行った。粘度測定は、E型粘度計のコーン・プレート型デジタル粘度計(ブルックフィールド製)で、日本薬局方の一般試験法として記載されている粘度測定法の「円すい一平板形回転粘度計」の項に準じて、測定温度25℃、測定回転数20rpmで実施した。その結果を表1に示す。なお、同表中には、実施例1および2並びに比較例1ないし13の組成も併せて示した。
【0046】
【表1】

【0047】
上記試験例から、実施例1、2の眼科用剤は、比較例1〜比較例13の眼科用剤と比較して、経時的な粘度の低下が起こりにくいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の眼科用薬剤は、従来のものに比べ、保存後において粘度の低下が起こりにくく、徐放性、持続性を維持しているものである。
【0049】
従って本発明の眼科用剤は、持続性の緑内障治療用点眼剤等として広く使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)ないし(D)
(A)チモロールマレイン酸塩
(B)トロメタモール
(C)アルギン酸若しくはその塩
(D)無機金属塩
を含有することを特徴とする眼科用剤。
【請求項2】
アルギン酸のM/G比が2.0以下である請求項第1項記載の眼科用剤。
【請求項3】
無機金属塩が、塩化カリウムおよび/または塩化ナトリウムである請求項第1又は2項記載の眼科用剤。



【公開番号】特開2010−90052(P2010−90052A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260638(P2008−260638)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(390031093)テイカ製薬株式会社 (38)
【Fターム(参考)】