説明

眼科用組成物におけるPEO−PBOブロックコポリマーの使用

【課題】(ポリオキシエチレン)−(ポリオキシブチレン)ブロックコポリマー(「PEO−PBO」)と呼ぶ1つ以上のブロックコポリマーを含有する眼科用組成物を提供すること。
【解決手段】コンタクトレンズおよび他の医療用具の表面を改質するのに有用な医薬組成物におけるポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーの使用を開示する。本発明は、この種類の化合物が疎水性表面(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズおよび他の種類の眼科用レンズの表面)を湿潤するのに特に有効であるという発見に一部基づく。このような化合物はまた、洗浄の目的にも有用である。そのため、コンタクトレンズを処理するための種々のタイプの組成物における界面活性剤としての化合物の使用が、本発明の好適な実施形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ポリオキシエチレン)−(ポリオキシブチレン)ブロックコポリマー(「PEO−PBO」)と呼ぶ1つ以上のブロックコポリマーを含有する眼科用組成物を対象とする。本発明は特に、コンタクトレンズ処理用組成物における湿潤剤および/または洗浄剤としてのPEO−PBOブロックコポリマーの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは、薬物送達剤、人工装具およびコンタクトレンズを含めた種々の生物医学的用途において使用される、水で膨潤した三次元ポリマーネットワークである。ヒドロゲルの表面特性は、高分子の疎水性および親水性部分の配向により決定されることは十分確立されている。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0003】
コンタクトレンズは、角膜表面と、タンパク質、脂質、無機カチオン(例えば、カルシウム)およびムチンから構成されるヒトの涙液層とに密着するため、レンズの生体適合性は、レンズを形成するヒドロゲル物質の表面ぬれ性の影響を直接受ける。特に、レンズ材料の表面ぬれ性は涙液層の安定性に影響を及ぼすことから、当該特性を評価することが重要となる。安定した涙液層を維持するためには、コンタクトレンズ材料が親水性の表面特性を有さなければならない。コンタクトレンズ材料が疎水性になると、涙液層が破壊される場合がある。ヒトの涙液(すなわち、涙)などの水溶液による表面のぬれ性を測定するには、接触角を測定する。表面上に水性液が拡散することは、表面が親水性であり、そのため接触角が小さくなることを示している。水性液の液滴が広がらなければ、表面は疎水性であり、そのため接触角は大きくなる。
【0004】
コンタクトレンズ材料の新しい種類であるシリコーンヒドロゲル(「SiH」)は、長時間装用ソフトコンタクトレンズに最適な材料として、従来のヒドロゲルに徐々に取って代わりつつある。シリコーンヒドロゲル材料は、シロキサン官能基が存在するために、従来のソフトレンズヒドロゲルよりも著しく高い酸素透過性を有する。さらに、SiH材料中にシロキサン基が存在する結果、疎水性を有するレンズ表面が得られる。SiHレンズの例には、Johnson & Johnsonが販売するAcuvue Advance(登録商標)コンタクトレンズがある。
【0005】
生体適合性親水性可湿性レンズ表面を提供するために、種々の技法(例えば、プラズマ表面処理や、レンズ材料中への分子の組込み)が利用されてきた。表面の修飾は生体適合性を改善することができるものの、いくつかのシリコーンヒドロゲル材料では、時間とともに脂質が蓄積し、この蓄積の結果、シリコーンヒドロゲルレンズ材料と表面のぬれ性が減少することも報告されている。
【0006】
コンタクトレンズの表面のぬれ性は、表面上の疎水化の量を減少させることによっても改良することができる。従来の組成物では、コンタクトレンズの処理に界面活性剤が使用されてきた。例えば、ポロキサマーおよびポロキサミン(例えば、Pluronic(登録商標)およびTetronic(登録商標)ブランドの界面活性剤)は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)(「PEO−PPO」)ブロックコポリマーであり、コンタクトレンズを処理するために利用される従来の製品において広く使用されてきた。しかし、このような界面活性剤はSiHレンズを効率よく湿らさない。
【0007】
特許文献1(Lundsted)には、高次α,βアルキレンオキシド由来の界面活性化合物が開示されている。
【0008】
特許文献2(Spriggs)には、ポリオキシブチレングリコールのヒドロキシポリエチレンジエーテルが開示されている。
【0009】
特許文献3(Schmolka)には、ポリオキシブチレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマーを含有する両性界面活性剤ゲルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第722,746号明細書
【特許文献2】米国特許第2,828,345号明細書
【特許文献3】米国特許第4,360,451号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ketelson et al.,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,Vol.40,pages 1−9(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の状況から、シリコーンヒドロゲルレンズ材料を改良して装用中の表面湿潤および生体適合性を改善するための新規の方法および組成物が必要とされている。本発明は、この要求を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、眼科用医療用具の表面特性を改良して、用具のぬれ性を向上させ、用具の洗浄を容易にするための、(ポリオキシエチレン)−(ポリオキシブチレン)ブロックコポリマー(「PEO−PBO」)と呼ぶブロックコポリマーの使用を対象とする。本明細書に記載のPEO−PBOブロックコポリマーは、医療用具を処理するための種々のタイプの組成物(例えば、湿潤溶液、浸漬溶液、洗浄液およびコンフォート液、ならびに殺菌液)中に含有される場合がある。具体的には、本発明は、コンタクトレンズ(特に、SiHレンズ)を処理するための、このような組成物におけるPEO−PBOコポリマーの使用を対象とする。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
500〜100,000ダルトンの範囲の分子量を有する少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーの有効量とその眼科的に許容されるビヒクルとを含む眼科用組成物。
(項目2)
ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーが、式(EO)(BO)(式中、mは10〜1000の平均値を有する整数であり、nは5〜1000の平均値を有する整数である)のコポリマーである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
mがnより大きい、項目2に記載の組成物。
(項目4)
mとnの比率が約2:1〜約10:1の範囲である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
mとnの比率が約3:1〜約6:1の範囲である、項目4に記載の組成物。
(項目6)
mの平均値が45であり、nの平均値が10である、項目5に記載の組成物。
(項目7)
ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーが、1,000〜50,000ダルトンの範囲の分子量を有する、項目1に記載の組成物。
(項目8)
ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーが、2,000〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する、項目7に記載の組成物。
(項目9)
ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーが、式:
【化5】


(式中、Rは、水素、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択され、mは10〜1000の平均値を有する整数であり、nは5〜1000の平均値を有する整数である)
のコポリマーである、項目1に記載の組成物。
(項目10)
Rがメチルであり、mが45の平均値を有し、nが10の平均値を有する、項目9に記載の組成物。
(項目11)
有効量のポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーもさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目12)
前記ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーがポロキサミンを含む、項目11に記載の組成物。
(項目13)
組成物が、コンタクトレンズを処理するための無菌水溶液であり、前記溶液が200〜400ミリオスモル/キログラムの重量オスモル濃度を有する、項目1に記載の組成物。(項目14)
コンタクトレンズを殺菌するのに有効な量で眼科的に許容される抗菌剤もさらに含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記抗菌剤がポリクアテルニウム−1を含む、項目14に記載の組成物。
(項目16)
溶液が前記ブロックコポリマーを0.001〜1重量/体積%の濃度で含む、項目1に記載の組成物。
(項目17)
ブロックコポリマー濃度が0.05〜0.5重量/体積%である、項目16に記載の組成物。
(項目18)
ブロックコポリマー濃度が0.1〜0.2重量/体積%である、項目17に記載の組成物。
(項目19)
ブロックコポリマー濃度が0.1重量/体積%である、項目18に記載の組成物。
(項目20)
レンズの表面特性を改良するかまたはレンズを洗浄するためにコンタクトレンズを処理する方法であって、項目1〜19のいずれか1項に記載の組成物の有効量をレンズに適用することを含む、方法。
【0014】
本発明の組成物におけるPEO−PBOブロックコポリマーの主な機能は、医療用具(特に、眼科用用具、例えば、コンタクトレンズまたは眼内レンズ)の表面を処理することである。このような処理は、用具のぬれ性を促進し、かつ/または用具の洗浄を容易にする。この表面処理は、SiHコンタクトレンズのぬれ性の向上に対して特に有効であることが明らかになっている。
【0015】
また、ブロックコポリマーは、(a)眼科用組成物の抗菌活性を向上させる、(b)コンタクトレンズによる殺生物剤の取込みを防止または減少させる、(c)涙液層を安定させる、(d)コンタクトレンズの表面からのタンパク質および/または脂質の除去を促進する、(e)タンパク質および脂質堆積物の形成を防止する、(f)眼科用エマルジョンを安定させる、(g)コンタクトレンズ中または容器表面上への殺生物剤または薬物の取込みを防止または減少させる、(h)薬物安定剤として機能する、(i)薬物浸透を向上させる、(j)コンフォート剤およびクッション剤として機能する、ならびに/あるいは(k)コンタクトレンズまたは他の医療用具の表面への微生物の付着を減少させるためにも利用される場合がある。本発明のブロックコポリマーにおける上述の有用性はすべて、使用されるブロック化学(すなわち、親水性(PEO)セグメントと疎水性(PBO)セグメントの比率)により異なる。コポリマーは低濃度で有効であり、眼に直接点眼することができ、微生物の汚染から水性医薬組成物を保護し、かつ/またはコンタクトレンズを殺菌するために利用される抗菌剤との適合性を有する。
【0016】
本発明は、コンタクトレンズ表面特性を低濃度で効果的に改良するためにPEO−PBOブロックコポリマーを使用できるという知見に一部基づいている。さらに詳細には、本明細書に記載のPEO−PBOブロックコポリマーは、疎水性表面上で効果的かつ効率的に保持され、これにより改善され優れたぬれ性に反映されるように表面のぬれ性が変化することが発見されている。
【0017】
PEO−PBOブロックコポリマーを使用した表面化学におけるこの変化にはいくつかの理由があるが、ポリ(オキシブチレン)を疎水性ブロックとして使用することにより、表面活性特性は、現在レンズケア製品で使用されている界面活性剤(例えば、ポロキサマーおよびポロキサミン)の特性と著しく異なると考えられる。PEO−PBOブロックコポリマーは、既知のPEO−PPOブロックコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)および/またはTetronic(登録商標)ブロックコポリマー)に比べて、界面の表面張力を減少させる点で優位性を示し、界面においてより効率的に密集し、臨界ミセル濃度がより低く、高純度(低多分散性)で製造できることが示されている。より疎水性の高いブロック(すなわち、オキシ(ブチレン)−オキシ(プロピレン))を使用することにより、著しい疎水性を有する、より低分子量のブロックコポリマーを調製することができる。オキシブチレンの疎水性は、改善された界面特性を提供する。これらの特性は、界面または基体への高い拡散速度をもたらすほか、疎水性表面上におけるより高い保持/改善された持続性をもたらし、またPEO−PPOブロックコポリマー(例えば、コンタクトレンズを処理するために従来の組成物で広く使用されてきたPluronic(登録商標)およびTetronic(登録商標)ブランドの界面活性剤)の濃度に比べて、より低い濃度で所望の特性を達成することを可能にする。PEO−PBOブロックコポリマーの上述の特性は、他の既知のブロックコポリマーよりも重要な利点をもたらす。
【0018】
本発明の第1の実施形態は、コンタクトレンズの表面を改質する方法であって、レンズを覆うのに十分な量の本明細書に記載のタイプのコンタクトレンズ処理溶液中にレンズを入れ、前記溶液にレンズを浸漬することを含む、方法を対象とする。別の実施形態は、コンタクトレンズを前記水溶液で湿潤する方法、ならびにポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーがレンズマトリックス内に吸収され、かつ/またはレンズ表面に吸着されるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを対象とする。
【0019】
別の実施形態は、本明細書に記載のタイプの少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)ブロックコポリマーと、その眼科的に許容されるビヒクルとを含む、眼科用組成物を対象とする。このような組成物は、コンタクトレンズの湿潤、コンタクトレンズの洗浄、またはコンタクトレンズの湿潤と洗浄の両方を達成するために配合される場合がある。
【0020】
以下の図面および以下の詳細な説明を用いて、本発明をさらに詳細に考察する。
【0021】
本発明は、以下の詳細な説明を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される以下の略語および用語は、特に記載がない限り、以下の意味を有すると理解するものとする。
【0023】
「SiH」という略語は、シリコーンヒドロゲルを意味する。
【0024】
「PEO−PPO」という略語は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)を意味する。
【0025】
「PEO−PBO」という略語は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)を意味する。
【0026】
「PEO−PBO−PEO」という略語は、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシブチレン)−ポリ(オキシエチレン)を意味する。
【0027】
「PEG」という略語は、ポリエチレングリコールを意味する。
【0028】
「b.d.l.」という略語は、検出限界以下を意味する。
【0029】
「PHMB」という略語は、ポリヘキサメチレンビグアニドを意味する。
【0030】
「mOsm/kg」という略語は、ミリオスモル/(水)キログラムを意味する。
【0031】
「pHEMA」という略語は、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)を意味する。
【0032】
「HLB」という略語は、親水性−親油性バランスを意味する。
【0033】
「EO」という略語は、オキシエチレンを意味する。
【0034】
「BO」という略語は、オキシブチレンを意味する。
【0035】
「接触角」という用語は、液体による固体の湿潤を示す定量的な指標であり、幾何学的には、液相と気相と固体相が交わる場合に液体により形成される角度として定義される。本明細書で使用される場合がある別の関連する用語には、「ぬれ角」または「前進接触角」が含まれる。
【0036】
「親水性の」という用語は、水に対して強い親和性を有することを意味する。本明細書で使用される場合がある別の関連する用語には、「親水性」が含まれる。
【0037】
「疎水性の」という用語は、水に対してほとんどまたは全く親和性を有さないことを意味する。本明細書で使用される場合がある別の関連する用語には、「疎水性」が含まれる。
【0038】
「pHEMA−MAA」という用語は、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル−コ−メタクリル酸)から構成されるコンタクトレンズを意味する。pHEMA−MAAレンズの例には、「Acuvue(登録商標)2」(Johson & Johnson)が含まれる。
【0039】
「界面活性剤」という用語は、物質が溶解している液体(例えば、水または水溶液)の表面張力を減少させることができる物質を意味する。
【0040】
「湿潤」という用語は、接触角実験による測定で液体(例えば、水)の表面張力が増加するために液体が拡散しない疎水性表面を、同じく接触角実験による測定で液体の表面張力が減少するために液体が容易に拡散する親水性の表面に変えることを意味する。本明細書で使用される場合がある別の関連する用語には、「ぬれ性」が含まれる。
【0041】
「取り込み」という用語は、コンタクトレンズまたはその他の医療用具により吸収および/または吸着される界面活性剤の量を意味する。本明細書で使用される場合がある別の用語には、「取り込み濃度」、「界面活性剤の取り込み」、「取り込み結果」、「取り込みデータ」および「界面活性剤の取り込み濃度」が含まれる。
【0042】
「オキシエチレン」という用語は、酸素原子に結合した2個の炭素のアルキレニル基(例えば、−CH−CHO−)を意味する。
【0043】
「オキシブチレン」という用語は、酸素原子に結合した4個の炭素のアルケニル基(例えば、−[OCHC(CHCH)H]−)を意味する。
【0044】
「ブロックコポリマー」という用語は、1つのモノマーの少なくとも1つのホモポリマー鎖と、第2のモノマーの少なくとも1つのさらなるホモポリマー鎖とを有するポリマーである。このようなブロックコポリマーの構造の例には、分岐鎖構造、星形構造、ジブロック構造、トリブロック構造、および環状構造が含まれ、環状構造が好適である。
【0045】
「ホモポリマー」という用語は、1つのモノマーから形成されるポリマー(例えば、エチレンの重合により形成されるポリエチレン)を意味する。
【0046】
「保存するのに有効な量」という用語は、本明細書に記載の溶液を微生物の汚染から保護する所望の効果をもたらすのに有効な抗菌剤の量を意味し、好ましくは、単独で、または1つ以上のさらなる抗菌剤との組み合わせのいずれかで、米国薬局方(「USP」)の防腐効果要件を満たすのに十分な量を意味する。
【0047】
「殺菌するのに有効な量」という用語は、コンタクトレンズ上に存在する生菌数を実質的に減少させることによりコンタクトレンズを殺菌する所望の効果をもたらすのに有効な抗菌剤の量を意味し、好ましくは、単独でまたは1つ以上のさらなる抗菌剤との組み合わせのいずれかで十分な量を意味する。
【0048】
「洗浄するのに有効な量」という用語は、洗浄剤を含有する組成物と接触したコンタクトレンズから屑や堆積物を除去するのを促進し、好ましくは除去するのに有効な洗浄剤の量を意味する。
【0049】
「眼科的に許容されるビヒクル」という用語は、眼組織との生理学的適合性を有する物理的特性(例えば、pHおよび/またはオスモル濃度)を有する医薬組成物を意味する。
【0050】
本発明で使用されるブロックコポリマーは、周知のアニオン重合法を使用してブロックコポリマーのHLB(親水性−疎水性バランス)、分子量およびその他の特性を制御するように変更することができる親水性および疎水性セグメントを含有する化合物を含む。より具体的には、本発明のブロックコポリマーは、親水性成分としてポリ(オキシエチレン)ブロックを、および疎水性成分としてポリ(オキシブチレン)ブロックを含むものである。これらは、PEO−PBOとして表されるジブロックポリマー、PEO−PBO−PEOもしくはPBO−PEO−PBOとして表されるトリブロックコポリマー、または他のブロック型構造の形態である場合がある。別段の明記がない限り、本明細書における「PEO−PBOブロックコポリマー」のすべての言及は、前記形態のすべてを包含する。これらのコポリマーはまた、それぞれの反復基に割り当てられる近似値または平均値で記載される場合もある。例えば、(EO)20(BO)の場合、オキシエチレン基の平均値は20であり、オキシブチレン基の平均値は5である。
【0051】
本発明の好適なポリマーは、以下の一般式:
【0052】
【化1−1】

(式中、mは10〜1000の平均値を有する整数であり、nは5〜1000の平均値を有する整数である)
のジブロックコポリマーである。
【0053】
以下の一般式のPEO−PBOジブロックコポリマーが、特に好適である:
【0054】
【化1−2】

(式中、Rは、水素、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択され、mは10〜1000の平均値を有する整数であり、nは5〜1000の平均値を有する整数である)。
【0055】
最も好適であるのは、式(II)(式中、Rはメチルであり、mは45の平均値を有し、nは10の平均値を有する)のコポリマーである。
【0056】
本発明で使用されるPEO−PBOブロックコポリマーは、1,000〜約100,000ダルトンの範囲、より好ましくは1,000〜15,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0057】
適切な親水性−親油性バランス(HLB)を維持することにより、本発明のPEO−PBOブロックコポリマー組成物に特定の特性が付与される。例えば、本発明の組成物で使用されるブロックコポリマーのHLBは、本発明の組成物の溶解度、表面ぬれ性、および界面活性特性と直接関連する。
【0058】
式(I)のブロックコポリマーのBO部分は疎水性であり、本明細書に記載の組成物のぬれ性に主に関与する。コポリマーのEO部分は親水特性を有する組成物を提供するが、さらに重要なこととして、コポリマーの水溶性を決定するのもコポリマーのこの部分である。本発明の組成物で可溶化剤を使用することが可能であり、この場合EOセグメントとBOセグメントの比率は幾分それほど重要ではないが、可溶化剤はHLBを乱すかまたは修飾する場合があり、ひいては組成物のぬれ性に悪影響を及ぼすか、眼球刺激を引き起こすか、または他の懸念を生じる場合があることから、このような化合物を必要としないコポリマーを使用するのが好適である。そのため、式(I)の好適なコポリマーは、BOセグメントよりもEOセグメントの方が優位性を有するものである。すなわち、前記式(I)および式(II)における変数「m」は、好ましくは変数「n」よりも大きい。PEO−PBOブロックコポリマーは、好ましくは約2:1〜約10:1のEO対BOセグメント比を有し、約3:1〜約6:1の比が最も好適である。
【0059】
前述のPEO−PBOブロックコポリマーは、参考文献に記載される、例えば、それぞれの内容全体が参考として本明細書で援用される、Nace,V.M.J.Am.Oil
Chem.Soc.1996,73,1、Yang,Z.;Pickard,S.;Deng,N.−J.;Barlow,R.J.;Attwood,D.;Booth,C.Macromolecules 1994,27,2371、Yang,Y.−W.;Deng,N.−J.;Yu,G.−E.;Zhou,Z.−K.;Attwood,D.;Booth,C.Langmuir 1995,11,4703、Yu,G.−E.;Yang,Y.−W.;Yang,Z.;Attwood,D.;Booth,C.;Nace,V.M.Langmuir 1996,12,3404、Chaibundit,C.;Mai,S.−M.;Heatley,F.;Booth,C.Langmuir 2000,16,9645;Bedells,A.D.;Arafeh,R.M.;Yang,Z.;Attwood,D.;Heatley,F.;Pedget,J.C.;Price,C.;Booth,C.J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1993,89,1235、およびKelarakis,A.;Havredaki,V.;Yu,G.−E.;Derici,L.;Booth,C.Macromolecules 1998,31,944に記載されるような、既知の方法を適用または適応することにより調製される場合がある。前述のPEO−PBOブロックコポリマーはまた、それぞれの内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第2,828,345号明細書(Spriggs)および同第2,174,761号明細書(Schuette et al.,)に記載される既知の方法を適用または適応することによっても調製される場合がある。
【0060】
上述のPEO−PBOブロックコポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの第一級ヒドロキシル基にオキシブチレンを制御下で添加することにより、明確に定義されたPEGポリマーを使用して合成される場合がある。例えば、PEO−PBOジブロックコポリマー(EO)45(BO)10は、以下の一般反応スキーム:
【0061】
【化2】

に従って調製される場合がある。
【0062】
ブロック化学構造の他の変異形もまた、当業者に容易に利用可能であり、周知の技法および方法を使用して調製される場合がある。例えば、(EO)(BO)(EO)の形態のトリブロックコポリマーの調製に、以下の反応プロセスが使用される場合がある:
【0063】
【化3】

上述のブロックコポリマーおよびこれらの変異形は、互いに組み合わせるか、または他のタイプのポリマーと組み合わせるかのいずれかで使用される場合がある。例えば、PEO−PBOブロックコポリマーまたはこれらの変異形は、非イオン性界面活性剤(例えば、BASFから入手可能なTetronic(登録商標)ブランドの界面活性剤などのポロキサマーおよびポロキサミンブロックコポリマー)と組み合わせて使用され、適宜相加効果または相乗効果を提供する場合がある。好適な実施形態において、本発明のPEO−PBOブロックポリマーは、ポロキサミンブロックコポリマーと組み合わせて使用される。PEO−PBOブロックコポリマーはまた、特異的表面反応の特異的な末端基で官能化して、ポリマーを表面と共有結合させるか、または新規ポリマー材料を調製する場合もある。本発明で使用される場合があるPEO−PBOブロックコポリマーは、このブロックコポリマーが水溶液に溶解し、本明細書に記載の濃度と類似した濃度で眼組織に対して無毒である限り、構造または分子量に関して限定されない。
【0064】
本発明の組成物で必要とされるPEO−PBOブロックコポリマーの量は、選択された特定のブロックコポリマーと、ブロックコポリマーが使用されている目的または機能(例えば、コンタクトレンズの洗浄、コンタクトレンズの湿潤、および/または脂質もしくは他の生体分子の取り込みの阻害)、ならびに他の変数(例えば、組成物中の他の成分の同一性および物理的特性)に応じて変動する。所定の組成物における特定のコポリマーの理想的濃度は、通常の検査により決定することができる。本明細書においてこのような濃度は、PEO−PBOブロックコポリマーが果たす機能によって、「洗浄するのに有効な量」、「濡れ性を向上させるのに有効な量」、「生体分子取り込みを阻害するのに有効な量」などと呼ばれる。
【0065】
本発明の組成物中に含有されるPEO−PBOブロックコポリマーの総量は、典型的には0.001〜約1重量/体積パーセント(w/v%)、好ましくは約0.05〜0.5w/v%、より好ましくは0.1〜0.2w/v%の範囲である。
【0066】
本発明のブロックコポリマーはまた、コンタクトレンズを処理するための製品で通常使用される他の成分(例えば、レオロジー調整剤、酵素、抗菌剤、界面活性剤、キレート剤、緩衝剤またはこれらの組み合わせ)と組み合わせる場合もある。
【0067】
組成物はまた、1つ以上のポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミンコポリマー(例えば、「Tetronic(登録商標)1304」として市販されるポロキサミン1304))を含有する場合もある。Pluronic(登録商標)の商標名でも知られるポロキサマーは、ポリ(オキシプロピレン)の中心疎水性鎖と、その両側に位置するポリ(オキシエチレン)の2つの親水性鎖とにより構成される非イオン性ブロックコポリマーである。Tetronic(登録商標)の商標名でも知られるポロキサミンは、中心エチレンジアミン部分の窒素原子と結合した4つのポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレンオキシド(PPO)鎖を含有する四官能性ブロックコポリマーである。本発明の特に好適な実施形態は、式:
【0068】
【化4】

のブロックコポリマーおよびポロキサミン1304を含む組成物である。
【0069】
上述のポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマーの1つ以上は、コンタクトレンズの湿潤および/または洗浄を促進するのに有効な量(本明細書においては「有効量」と呼ぶ)で、本発明の組成物中に含有される場合がある。このような量は、典型的には0.001〜約1重量/体積パーセント(w/v%)、好ましくは約0.05〜0.5w/v%、より好ましくは0.1から0.2w/v%の範囲である。
【0070】
本発明の組成物は、溶液の微生物汚染から溶液を保護するのに有効な量で、またはレンズ上に存在する生菌数を実質的に減少させることによりコンタクトレンズを殺菌するのに有効な量で、1つ以上の眼科的に許容される抗菌剤を含有する場合がある。眼科用組成物を微生物汚染から保護する、またはコンタクトレンズを殺菌するのに必要とされる抗菌活性のレベルは、個人的な経験、ならびに公開されている公定基準(例えば、防腐効果に関する米国薬局方(USP)、およびコンタクトレンズ殺菌に関するEN ISO14729:2001、および類似の刊行物に規定されるもの)に基づき、当業者に周知である。
【0071】
本発明は、使用される場合がある抗菌剤の種類に関して限定されない。好適な殺生物剤には、アルキルアミドアミン、ポリヘキサメチレンビグアニドポリマー(「PHMB」)、ポリクアテルニウム−1、およびアミノビグアニド(例えば、米国特許第6,664,294号明細書に記載のもの)が含まれる。最も好適な抗菌システムは、ポリクアテルニウム−1、およびポリクアテルニウム−1とミリスタミドプロピルジメチルアミン(「MAPDA」)の組み合わせである。
【0072】
アミドアミンおよびアミノアルコールはまた、本明細書に記載の組成物の抗菌活性を向上させるために使用される場合もある。好適なアミドアミンは、MAPDAおよび米国特許第5,631,005号明細書(Dassanayake,et al)に記載の関連化合物である。好適なアミノアルコールは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(「AMP」)および米国特許第6,319,464号明細書に記載の他のアミノアルコールである。前記’005号特許および’464号特許の内容全体は、参考として本明細書で援用される。
【0073】
コンタクトレンズの処理に適応させた本発明の組成物は、レンズの洗浄または殺菌を向上させるための薬剤を含有する場合がある。このような薬剤には、それぞれの内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第5,370,744号明細書および同第5,037,647号明細書に記載のような、ポリカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)が含まれる場合がある。
【0074】
組成物は無菌であり、水性であり、かつ生理学的適合性を有さければならない。組成物は、典型的には6.0〜約9.0の範囲、好ましくは6.5〜8.0の範囲のpHを有する。水酸化ナトリウムを使用して配合物のpHを増加させることができるが、他の塩基(例えば、トリエタノールアミン、2−アミノ−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)も使用される場合がある。
【0075】
本発明の組成物では、種々の緩衝剤(例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、リン酸緩衝液、およびこれらの組み合わせ)が使用される場合がある。ホウ酸塩およびポリオール系を使用して緩衝を提供する場合もあれば、抗菌活性を向上させる場合もあり、緩衝と抗菌活性の向上の両方を提供する場合もあり、他の有用な性質を本発明の組成物に提供する場合もある。使用される場合があるホウ酸塩およびポリオール系には、それぞれの内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,849,253号明細書、同第6,503,497号明細書、同第6,365,636号明細書、同第6,143,799号明細書、同第5,811,466号明細書、同第5,505,953号明細書、および同第5,342,620号明細書に記載のものが含まれる。
【0076】
本発明の眼科用組成物は、一般的には、約200〜約400ミリオスモル/(水)キログラム(「mOsm/kg」)のオスモル濃度と生理学的に適合するpHとを有する無菌水溶液として配合される。溶液のオスモル濃度は、従来の化学物質(例えば、無機塩(例えば、NaCl)、有機塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコールもしくはソルビトール)、またはこれらの組み合わせ)により調節される場合がある。
【0077】
上述の組成物を使用して、コンタクトレンズまたは他の用具を当業者に既知のプロセスに従って処理する場合もある。より具体的には、最初にレンズを患者の目から取り出し、次いで所望の効果(例えば、ぬれ性の向上、洗浄、および/または殺生物剤の取り込みの防止)を達成するのに十分な時間にわたり、レンズを本発明の組成物に浸漬する。この浸漬は、典型的には数時間(例えば、約2〜4時間)から一晩(例えば、約6〜8時間)の範囲の期間にわたりレンズを溶液に浸漬することにより達成される。次いでレンズをすすいで、眼に入れる。また、前記組成物に浸漬する前に、好ましくはレンズをすすいで洗浄を促進する。しかし、本発明の組成物はまた、ヒト患者が装用したままコンタクトレンズに直接適用される湿潤点眼薬として配合される場合もある。組成物はまた、コンタクトレンズの包装溶液(すなわち、製造時からコンタクトレンズ装用者へ販売されるまでコンタクトレンズを保存する溶液)として使用される場合もある。
【0078】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解することができるが、以下の実施例は、本発明の特定の好適な実施形態を詳細に例示するために示されるものであり、本発明の適用範囲を限定するものと決して解釈してはならない。以下の実施例では、当業者に既知の種々の方法を使用して、本発明に従ってレンズの接触角を測定する場合がある。方法の例には、Sessile法またはCaptive Bubble法が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0079】
(実施例1) 対照レンズの接触角測定:予浸なし
pHEMA−MAAレンズ(Acuvue2(登録商標))およびシリコーンヒドロゲルレンズ(Acuvue Advance(登録商標)、O Optix(登録商標)およびPure Vission(登録商標))(いずれも界面活性剤溶液での予浸処理に付していない)の接触角を、本実施例1に記載の通りに測定した。接触角の結果(以下「対照レンズの結果」と呼ぶ)を以下の表1に報告する。
【0080】
4種類のブランドのコンタクトレンズ(pHEMA−MAAレンズ1種:Acuvue
2(登録商標)、ならびにシリコーンヒドロゲルレンズ3種:Acuvue Advance(登録商標)、O Optix(登録商標)、およびPure Vision(登録商標))をUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した後、接触角を測定した。次いで、各レンズの接触角を、以下に記載の通りにSessileドロップ法に従って室温(すなわち、23℃±0.5)にて測定した。結果を以下の表1に示す。
Sessileドロップ法
SCA20ソフトウェア(Version 2.1.5 build16)を使用したFuture Digital Scientific製のビデオベースの接触角測定システム(OCA20)を使用した。特定期間にわたるレンズの表面ぬれ性を評価する加速法を開発した。pHEMA−MAAレンズを逐次湿潤および大気暴露サイクルに付して、正常なまばたきプロセス中に生じるコンタクトレンズの臨床湿潤および乾燥条件をシミュレートした。1「サイクル」とは、レンズを食塩水中に5分間浸漬した後、レンズを空気に1分半暴露することを意味する。pHEMA−MAA表面上の水滴の接触角を各サイクル後10秒以内に測定した。すべての測定において、左および右接触角を測定し、これらの接触角の平均を使用した。各液滴画像につき3回の独立したフィッティング測定を行い、同じ液滴画像の3つの平均接触角を得た。これらの3つの接触角の平均を決定し、精度は±3°であった。この手順を3つの新規pHEMA−MAAレンズで繰り返し、この方法の再現性を確認した。
【0081】
【表1】

上述のデータは、すべてのレンズタイプの接触角がサイクル数の増加に伴って増加することを示している。Acuvue 2(登録商標)、Acuvue Advance(登録商標)およびPure Vision(登録商標)で認められた高い接触角から、これらのレンズの表面が疎水性であり、水に対する低いぬれ性を示したことが示唆される。
(実施例2) 界面活性剤溶液A、BおよびCへの予浸後におけるpHEMA−MAA(Acuvue 2(登録商標))およびシリコーンヒドロゲル(Acuvue Advance(登録商標))によるTetronic(登録商標)1304および(EO)45−(BO)14の取り込み量
すべてのコンタクトレンズをUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した。以下の表2に示す配合成分のそれぞれを水中に溶解させることにより、界面活性剤溶液A、BおよびCを調製した。透明ガラスバイアルに各タイプのレンズ1枚(すなわち、Acuvue 2(登録商標)1枚とAcuvue Advance(登録商標)1枚)をパックから直接取り出して入れ、10mLの各界面活性剤溶液に24時間予浸した。次いで、レンズを溶液から取り出し、水気を拭き取った。次に、レンズをUnisol(登録商標)食塩水(10mL)に浸漬することによりすすぎ、バイアルから取り出し、たたくようにして水気を取り、ガラスバイアル中に保存した。次いで、Ketelson et al.,Colloids and Surfaces Biointerfaces,vol.40,pages 1−9(2005)に報告される色素法を使用して、取り込み濃度を測定した。配合物Aで処理したAcuvue
Advance(登録商標)シリコーンヒドロゲルレンズ中のTetronic(登録商標)1304の取り込み濃度は、検出限界以下(b.d.l.)であった。他の結果を以下の表2に示す。
【0082】
【表2】

上述のデータは、Acuvue 2(登録商標)レンズとAcuvue Advance(登録商標)レンズの両方で有意なレベルのTetronic(登録商標)1304および(EO)45−(BO)14が測定されたことを示している。特に、(EO)45−(BO)14は、配合物BおよびCで得られた結果により示される通り、Acuvue Advance(登録商標)(シリコーンヒドロゲル)レンズについて顕著な取り込みを有することが判明したのに対し、配合物Aで処理したAcuvue Advance(登録商標)シリコーンヒドロゲルレンズでは、検出できるほどのTetronic(登録商標)1304の取り込みは見られなかった。
(実施例3) (Unisol(登録商標)中の)0.1%(EO)45−(BO)14溶液への予浸後におけるAcuvue 2(登録商標)(pHEMA−MAA)および種々のシリコーンヒドロゲルレンズの接触角測定
すべてのコンタクトレンズをUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した。次いで、レンズを(Unisol(登録商標)中の)0.1%(EO)45−(BO)14溶液に24時間予浸した。次に、各レンズの接触角を、上記の実施例1に記載の通り、Sessileドロップ法に従って室温(すなわち、23℃±0.5)にて測定した。
【0083】
【表3】

上述のデータから、すべてのレンズタイプの接触角が対照レンズ(上記の実施例1を参照)に比べて減少したことが示唆される。Unisol(登録商標)食塩水中の0.1%(EO)45−(BO)14溶液に予浸することにより接触角が減少し、このことは、すべてのレンズタイプの表面が元の表面特性に比べて水に対するぬれ性が高かったことを示している。
(実施例4) (Unisol(登録商標)中に)0.1%(EO)45−(BO)14および0.1%Tetronic(登録商標)1304を含有する2成分界面活性剤溶液への予浸後におけるAcuvue 2(登録商標)(pHEMA−MAA)および種々のシリコーンヒドロゲルレンズの接触角測定
すべてのコンタクトレンズをUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した。次いで、レンズを、0.1%(EO)45−(BO)14および0.1%Tetronic(登録商標)1304を含有する2成分界面活性剤溶液に24時間予浸した。次に、各レンズの接触角を、上記の実施例1に記載の通り、Sessileドロップ法に従って室温(すなわち、23℃±0.5)にて測定した。
【0084】
【表4】

上述のデータから、すべてのレンズタイプの接触角が対照レンズ(実施例1を参照)に比べて減少したことが示唆される。(EO)45−(BO)14と0.1%Tetronic(登録商標)1304の両方を含有する2成分溶液にレンズを予浸すると、すべてのレンズで接触角の顕著な減少が生じ、これによりレンズのぬれ性が改善された。
(実施例5) 界面活性剤溶液A、B、CおよびDへの予浸後における、pHEMA−MAA(Acuvue 2(登録商標))およびシリコーンヒドロゲル(Acuvue Advance(登録商標))、O Optix(登録商標)およびPure Vision(登録商標))によるTetronic(登録商標)1304、Tetronic(登録商標)1107、(EO)45(BO)14、および(EO)20(BO)の取り込み量
各タイプのレンズ3枚をUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した。以下の表5に示すような配合物成分のそれぞれをUnisol(登録商標)食塩水に溶解させることにより、界面活性剤溶液A、B、CおよびDを調製した。透明ガラスバイアルに各タイプ(すなわち、Acuvue 2(登録商標)、Acuvue Advance(登録商標)、O Optix(登録商標)およびPure Vision(登録商標))のレンズ3枚を直接パックから取り出して入れ、各界面活性剤溶液10mLに予浸した。次いで、レンズを溶液から取り出し、水気を拭き取った。次に、レンズをUnisol(登録商標)食塩水(10mL)に浸漬することによりすすぎ、バイアルから取り出し、たたくようにして水気を取り、ガラスバイアル中に保存した(各バイアルにつきレンズ3枚)。次いで、上記実施例2に明記した染色法を使用して、取り込み濃度を測定した。取り込み濃度は、レンズ材料の種類につき3枚のレンズの平均として報告した。取り込み結果(表5)は、ポリ(オキシプロピレン)を疎水性ブロックとして有するTetronic(登録商標)ブロックコポリマーに比べて、(EO)45−(BO)14をシリコーンヒドロゲルレンズに使用した場合の方が、取り込みが顕著に増大することを示している。
【0085】
【表5】

上述のデータは、最も疎水性の高いシリコーンヒドロゲルレンズ(Pure Vision(登録商標)およびAcuvue Advance(登録商標))に(EO)45−(BO)14を使用すると取り込みが顕著に増大することを示している。これらの結果は、PEO−PBOブロックコポリマーが疎水性表面と強力に相互作用することができることを示している。シリコーンヒドロゲルレンズ(実施例3および4参照)のぬれ性の改善は、レンズ材料の表面におけるPEO−PBOブロックコポリマーの存在を反映していると考えられる。
(実施例6) (Unisol(登録商標)中に)0.1%(EO)45−(BO)10および0.05%Tetronic(登録商標)1304を含有する2成分界面活性剤溶液への予浸後におけるAcuvue 2(登録商標)(pHEMA−MAA)およびAcuvue Advance(登録商標)の接触角測定
すべてのコンタクトレンズをUnisol(登録商標)食塩水に一晩浸漬して、残存する包装溶液の汚染物質を除去した。次いで、0.05%Tetronic(登録商標)1304(配合物A)、または0.1%(EO)45−(BO)10および0.05%Tetronic(登録商標)1304(配合物B)のいずれかを含有する界面活性剤溶液にレンズを24時間予浸した。次に、各レンズの接触角を、上記の実施例1に記載の通り、Sessileドロップ法に従って室温(すなわち、23℃±0.5)にて測定した。
【0086】
【表6−1】

【0087】
【表6−2】

上述のデータは、Acuvue 2レンズタイプの接触角の方が対照レンズに比べて配合物Aも配合物Bも減少したことを示している。しかし、0.05%Tetronic(登録商標)1304(配合物A)を含有する溶液中にAcuvue Advanceレンズを予浸すると、接触角が比較的増加することが示されている。比較すると、0.1%(EO)45−(BO)10と0.05%Tetronic(登録商標)1304の両方を含有する2成分溶液(配合物B)中にAcuvue Advanceレンズを浸漬すると、接触角の顕著な減少が生じ、これによりレンズのぬれ性が改善された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。


【公開番号】特開2013−65026(P2013−65026A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−238011(P2012−238011)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2009−540519(P2009−540519)の分割
【原出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】