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眼科用組成物
説明

眼科用組成物

【課題】カルボキシビニルポリマーを含有しながら、光照射による粘度低下が抑制された眼科用組成物の提供。
【解決手段】カルボキシビニルポリマー、及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含み、粘度が200〜100,000mPa・sである眼科用組成物。該組成物は、さらに、ナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を含むことが好ましい。該組成物は、さらに、ホウ酸を含むことが好ましい。該組成物は、透明容器に充填された点眼剤であることがことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼剤、洗眼剤などの眼科用組成物において、眼球表面への滞留時間を長くしたり、涙液の蒸発を抑制するために、高分子増粘剤を添加して粘度を向上させることが行われている。
例えば、特許文献1には、眼に用いるのに適した調剤薬であって、調剤上受容可能なキャリアと、薬剤成分と、涙液膜の蒸発を減少させる成分とを含む薬が記載されている。また、涙液膜の蒸発を減少させる成分として、ポリアクリル酸が記載されている。
しかし、高分子増粘剤であるカルボキシビニルポリマー(以下、「CVP」と略称することがある)は、長時間光に暴露されると粘度が低下してしまう。一方、特に、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物などの眼科用組成物は、品質管理上、透明性の高い容器に充填されることが望ましい。このため、長時間光に曝されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-526292(請求項1、段落0077)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、CVPを含有しながら、光照射による粘度低下が抑制された眼科用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) CVPを含み、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物は、光照射により粘度が低下し易いが、CVPに加えてε-アミノカプロン酸を含むことにより、光照射による粘度低下が効果的に抑制される。
(ii) CVPを含み、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物は、乾燥後に白残りと呼ばれる析出物が発生し易いが、CVPに加えてε-アミノカプロン酸を含むことにより、乾燥後の析出物の発生が効果的に抑制される。
(iii) CVPを含み、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物は、CVPに加えてε-アミノカプロン酸を含むことにより、水分の蒸散が効果的に抑制される。
(iv) CVPとε-アミノカプロン酸とを含み、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物は、CVP及びε-アミノカプロン酸に加えてナファゾリンを含むことにより、該眼科用組成物を充填する容器の容器口への付着が極めて効果的に抑制される。
【0006】
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものであり、以下の眼科用組成物を提供する。
項1. カルボキシビニルポリマー、及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含み、粘度が200〜100,000mPa・sである眼科用組成物。
項2. カルボキシビニルポリマーの含有量が、眼科用組成物の全体に対して、乾燥重量に換算して、0.001〜10w/v%である項1に記載の眼科用組成物。
項3. ε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩の含有量が、眼科用組成物の全体に対して、0.1〜10w/v%である項1又は2に記載の眼科用組成物。
項4. カルボキシビニルポリマーの乾燥重量に換算した含有量の1重量部に対して、ε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を0.01〜10000重量部含む項1〜3のいずれかに記載の眼科用組成物。
項5. さらに、ナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を含む、項1〜4のいずれかに記載の眼科用組成物。
項6. さらに、ホウ酸を含む項1〜5のいずれかに記載の眼科用組成物。
項7. 透明容器に充填されている項1〜6のいずれかに記載の眼科用組成物。
項8. 点眼剤である項1〜7のいずれかに記載の眼科用組成物。
項9. カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の光照射による粘度低下の抑制方法。
項10. カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の乾燥後の析出物の発生の抑制方法。
項11. カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物からの水分蒸散の抑制方法。
項12. カルボキシビニルポリマー及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含む眼科用組成物にナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、該眼科用組成物を充填する容器の容器口における液切れ性能の向上方法。
【発明の効果】
【0007】
一般に、高分子増粘剤を配合した高粘度点眼剤は、長時間光に暴露されると粘度が低下して、薬効の持続や眼の乾燥防止といった高粘度点眼剤の効果が損なわれてしまう。そして、高分子増粘剤のなかでもCVPを用いた場合には、この粘度低下が強く現れる。本発明の眼科用組成物は、このように粘度低下を引き起こし易いCVPを配合した高粘度点眼剤でありながら、光照射による粘度低下が抑制されているため、保存後も薬効の持続や眼の乾燥防止といった高粘度点眼剤の効果が保たれる。また、光照射による影響が抑制されているため、本発明の眼科用組成物は、品質管理し易い透明性の高い容器に充填することができ、また容器を必ずしも遮光袋に入れなくてよく使用し易い。
【0008】
また、一般に高粘度の眼科用組成物は、乾燥後に白残りと呼ばれる析出物の発生が生じ易い。例えば、点眼剤である場合は、使用時に適用部位周辺(例えば、まぶたやまつ毛、眼の下などの部位)で析出物が発生する恐れがあり、使用感が悪く、また見た目に不快な印象を与える。また、容器口付近に成分が析出して容器を汚したり、析出した成分が眼に入る恐れがある。また、容器口に成分が析出すると、滴下される液量にバラツキが生じる場合もある。
この点、本発明の眼科用組成物は、CVPを高粘度で含有するにもかかわらず、ε−アミノカプロン酸を含むことにより、乾燥後の析出物の発生が抑制されているので、このような問題が回避される。
【0009】
また、本発明の眼科用組成物は、CVPに加えてε−アミノカプロン酸を含むことにより、水分の蒸散が抑制されている。これにより、眼の保護作用に優れ、特にドライアイの予防又は治療剤として好適に使用できる。
【0010】
また、一般に、高粘度の眼科用組成物では、容器から注出する際に容器口における液切れが悪く、液の滴下後に容器口付近(例えば、ノズル外側)に多くの液が付着残存する。また、点眼剤の場合は常に一定の角度で点眼することが実際上困難であることから、使用者によって点眼時の容器の向きは様々である。特に容器が横向き(容器が眼表面に並行する方向、即ち、容器口の面方向が眼表面に対して垂直である方向)に近づくと、容器口に付着残存する量が多くなる。
本発明の眼科用組成物がナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を含むときは、容器口での液切れが極めて良好であり、このため、容器口付近に付着した成分の析出が一層効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例において粘度測定に用いた、単一円筒形回転粘度計の概略構成を示す図である。
【図2】ε-アミノカプロン酸による乾燥後の析出物発生の抑制効果を示す図面である。
【図3】ナファゾリン塩酸塩が眼科用組成物のノズルへの付着を極めて効果的に抑制することを示す図面である。
【図4】ε-アミノカプロン酸による水分蒸散抑制効果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の眼科用組成物は、CVP、及びε-アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩(以下、「塩」と略称することがある)を含み、粘度が200〜100,000mPa・sである眼科用組成物である。
【0013】
CVP(カルボキシビニルポリマー)
CVPは、アクリル酸を主成分として重合して得られる親水性ポリマーであり、ポリアクリル酸、又はポリアクリル酸塩の何れであってもよい。
各成分の混合時にポリアクリル酸を使用する場合でも、pHを調整すると、結果として得られる組成物中では、その一部又は全部がポリアクリル酸塩になっている場合がある。好ましくは、CVPとその他の成分とを混合する時に低粘度のポリアクリル酸を使用し、pH調整により、場合によりその一部又は全部をポリアクリル酸塩として組成物の粘度を上げればよい。また、混合時からポリアクリル酸塩を使用するのも好ましい。
ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;ポリアクリル酸のモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩のようなアミン塩;ポリアクリル酸のアンモニウム塩などを使用できる。中でも、アルカリ金属塩が好ましい。
また、ポリアクリル酸またはその塩は架橋型、又は非架橋型のいずれであってもよいが、増粘効果が高く本願発明の効果をより一層発揮し易い点で架橋型ポリマーが好ましい。
【0014】
CVPは市販品を利用できる。市販品としては、カーボポール(商品名)(ルーブリゾール社)、シンタレン(商品名)、ハイビスワコー(商品名)(和光純薬社)、アクペック(商品名)(住友精化)、ジュンロン(商品名)(日本純薬)等を使用することができる。
CVPは1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
【0015】
CVPの含有量は、眼科用組成物全体に対して、乾燥重量に換算して、約0.001〜10w/v%が好ましく、約0.005〜5w/v%がより好ましく、約0.01〜3w/v%がさらに好ましく、約0.05〜0.5w/v%がさらにより好ましい。上記含有量の範囲であれば、CVP添加による増粘効果が十分に得られる。また、上記含有量の範囲であれば、良好な使用感が得られ、かつ容器口への付着や乾燥後の析出物の発生が十分に抑えられる。
【0016】
ε-アミノカプロン酸又はその塩
ε-アミノカプロン酸は、合成アミノ酸の1種であり、一般に、抗炎症成分、又は収斂成分などとして眼科用組成物に配合されることがある成分である。
本発明では、ε-アミノカプロン酸又はその塩を用いる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。ε-アミノカプロン酸又はその塩は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。好ましくは、ε-アミノカプロン酸が用いられる。
【0017】
ε-アミノカプロン酸又はその塩の含有量は、眼科用組成物全体に対して、約0.1〜10w/v%が好ましく、約0.25〜7.5w/v%がより好ましく、約0.5〜5.0w/v%がさらにより好ましい。上記含有量の範囲であれば、眼に対して安全であり、かつ本願発明の効果が十分に奏される。
また、CVPの含有量(乾燥重量に換算した値)に対するε-アミノカプロン酸又はその塩の含有量の比率は、CVP:ε-アミノカプロン酸又はその塩が、重量比で、約1:0.01〜10000が好ましく、約1:0.1〜1000がより好ましく、約1:1〜100がさらにより好ましい。上記含有量の範囲であれば、本願発明の効果が十分に奏され、かつ眼に対して安全である。
【0018】
ナファゾリン又はその塩
ナファゾリン又はその塩は、一般に、充血除去成分などとして眼科用組成物に配合されることがある成分である。本発明の眼科用組成物は、ナファゾリン又はその塩を含むことが好ましく、これにより、容器口(例えば、点眼剤容器の場合のノズルなど)からの液切れが極めて良好になる。塩としては塩酸塩、硝酸塩などが挙げられる。ナファゾリン又はその塩は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。好ましくは、ナファゾリン塩酸塩が用いられる。
【0019】
ナファゾリン又はその塩の含有量は、眼科用組成物全体に対して、約0.0001〜0.1w/v%が好ましく、約0.0001〜0.01w/v%がより好ましく、約0.0003〜0.003w/v%がさらにより好ましい。上記含有量の範囲であれば、液切れ性の向上効果が十分に得られ、かつ眼に対して安全である。
また、CVPの含有量(乾燥重量に換算した値)に対するナファゾリン又はその塩の含有量の比率は、CVP:ナファゾリン又はその塩が、重量比で、約1:0.00001〜3が好ましく、約1:0.0001〜1がより好ましく、約1:0.0005〜0.1がさらにより好ましい。上記含有量の範囲であれば、眼に対して安全であり、かつナファゾリン又はその塩による上記の効果が十分に奏される。
【0020】
ホウ酸
本願発明の眼科用組成物は、ホウ酸を含有することが好ましく、これによりホウ酸による防腐効果が得られる。後述する実施例の項目に示す通り、CVPとホウ酸を含む組成物にアミノ酸を添加すると、組成物の粘度が著しく低下する場合があるが、同じアミノ酸でもε−アミノカプロン酸を含む本発明組成物は、ホウ酸を含む場合も著しい粘度低下が見られず、逆に光照射による粘度低下を効果的に抑制する。
ホウ酸の含有量は、眼科用組成物全体に対して、約0.05〜5w/v%が好ましく、約0.1〜5w/v%がより好ましく、約0.2〜3w/v%がさらにより好ましく、約0.5〜2.5w/v%が特に好ましい。上記範囲であれば、防腐効果を十分に発揮でき、かつ眼に対して安全である。また、上記範囲であれば、ホウ酸の結晶析出が回避される。
【0021】
任意成分
本発明の眼科用組成物には、上記の成分に加えて、有効成分(薬理活性成分や生理活性成分等)を、1種又は2種以上配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、局所麻酔薬成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な薬理活性成分及び生理活性成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0022】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0023】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピンなど。
【0024】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0025】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩など、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸ケトチフェン、レボカバスチン又はその塩酸塩など、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、オキサトミド、スプラタスト又はそのトシル酸塩など、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウムなど。
【0026】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0027】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0028】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、アシクロビルなど。
【0029】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0030】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、ペクチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴールおよびその薬学上許容される塩類など。
【0031】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0032】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど。
【0033】
眼科用組成物の分野において各種成分の配合割合は既知であり、本発明の眼科用組成物中の薬理活性成分又は生理活性成分の配合割合は、その成分の種類や眼科用組成物の剤型等に応じて適宜設定され得る。薬理活性成分又は生理活性成分の配合割合は、例えば、組成物の総量に対して約0.0001〜30w/v%、好ましくは約0.001〜10w/v%の範囲から選択できる。
【0034】
また、本発明の眼科用組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、1種又は2種以上併用して含有させることができる。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性又は油性基剤など)、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0035】
以下に本発明の眼科用組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0036】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0037】
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー407など)、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミンなど)、POEソルビタン脂肪酸エステル(具体的には、ポリソルベート80など)、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油など)、ステアリン酸ポリオキシルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)の陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0038】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0039】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0040】
pH調節剤:例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸など。
【0041】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0042】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸など。
【0043】
緩衝剤:クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂 、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
【0044】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリンなど。
【0045】
粘度
本発明の眼科用組成物の粘度は、約200mPa・s以上であり、約300mPa・s以上が好ましく、約400mPa・s以上がより好ましく、約500mPa・s以上がさらにより好ましい。また、粘度の上限は、通常約100,000mPa・sであり、約10,000mPa・s以下が好ましく、約3,000mPa・s以下がより好ましい。CVPの種類や使用量、或いは任意に併用してよい他の成分の種類や使用量を適宜選択することにより、上記粘度の眼科用組成物を得ることができる。
本発明の眼科用組成物は、上記範囲で、実用上十分な粘度となると共に、光照射による粘度低下抑制効果を効果的に発揮できる。また、上記範囲で、良好な使用感が得られ、かつ容器口への付着や乾燥後の析出物の発生が十分に抑えられる。
本発明において、粘度は、第十五改正日本薬局方に記載の、一般試験法、粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(2)単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」の項に記載の方法で、B型回転粘度計(RB−80L;東機産業社)を用いて25℃で測定した値であり、ローターや回転数等の条件の選定は、本機の取扱説明書に準拠して選定すればよい。具体的には実施例の項目に記載の方法で測定した値である。
【0046】
その他
本発明の眼科用組成物の剤型は特に制限されず、液剤、懸濁剤、乳剤等の剤型が挙げられる。これらの場合、水の含有量は、通常、約85重量%以上、好ましくは約90重量%以上とすればよい。好ましくは液剤である。
また、本発明の眼科用組成物のpHは、約3〜10とすればよく、約4〜9が好ましく、約5〜8.5がより好ましく、約5.5〜8が特に好ましい。
本発明の眼科用組成物を保存するための容器の材質としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなプラスチック製やガラス製などの透明容器が挙げられる。本発明の眼科用組成物は、光照射による粘度低下が抑制されているため、このような透明容器(異物を観察するのに差し支えない程度の透明性を備えた容器であって、少なくとも一部(例えば、容器側面の面積の約80%以上)が透明性を有する容器であればよい)に充填することができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリアリレートを含有する容器が好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートを含有する容器がより好ましい。また、本発明の眼科用組成物は、遮光された容器に充填されてもよい。遮光は、例えば上記した透明容器材料に着色剤を添加することにより行ってもよいし、容器をシュリンクフィルム、外箱などで覆うことにより、遮光してもよい。また、容器の容量は、押出の加減等で液切れ向上効果をより一層発揮し易くするために、0.5〜20mL程度が好ましく、3〜18mL程度がより好ましく、5〜15mL程度がさらにより好ましい。
また、本発明の眼科用組成物が点眼剤である場合、その点眼剤を収容する容器に備えられているノズルについても、その構造や構成素材については特に制限されるものではない。ノズルの構造については、点眼剤容器のノズルとして一般的に採用されている構造等であればよく、またノズルの構成素材については、例えば、上記プラスチック容器の構成素材と同様のものが例示される。本発明の眼科用組成物の液切れを一層良好にさせるという観点からは、ポリエチレン、又はポリプロピレンを構成素材として含むノズルが好適である。ポリエチレンの種類としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0047】
製造方法
本発明の眼科用組成物は、慣用の方法で調製できる。例えば、各成分を水などの担体に分散させた後、ホモジナイザーなどを用いて均一化、溶解又は乳化させ、pH調整剤でpHを調整することにより調製すればよい。また、製剤の滅菌方法としては、オートクレーブ滅菌、ろ過滅菌等の方法が選択される。
【0048】
用途・使用方法
本発明の眼科用組成物として、具体的には、点眼剤(点眼薬、点眼液を含む)、洗眼剤(洗眼薬、洗眼液を含む)、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用ケア用剤(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューションなど)等が例示される。点眼剤及び洗眼剤には、コンタクトレンズを装用したまま使用可能な点眼剤及び洗眼剤が含まれる。また、本明細書において、コンタクトレンズには、ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズも含む)、ソフトコンタクトレンズ等のあらゆるタイプのコンタクトレンズが包含される。
用法用量は、組成物の用途により異なり、各用途について通常採用されている用法用量で使用すればよい。
点眼剤や洗眼剤等のような医薬品の場合には、製造工程における容器内の異物検査が必須である他、粘度の変化もより少ない方が望ましいなど特に高い品質保証が要求される。本発明の眼科用組成物は、粘度低下が抑制されているため、このような品質保証に耐えることができる。
また、特に点眼剤や洗眼剤では、容器口での析出物が落下して眼に悪影響を及ぼす場合があるので、容器口での析出が抑制されている本発明の眼科用組成物は点眼剤や洗眼剤として好適に使用できる。
また、本願発明の眼科用組成物は、水分蒸散が抑制されているので、特に点眼剤として好適に使用することができ、中でもドライアイなどの目が乾く症状に対する予防又は治療用の点眼剤として好適に使用できる。
【0049】
発明のその他の態様
本発明は以下の(a)〜(d)の方法を包含する。
(a) CVPを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の光照射による粘度低下の抑制方法。
(b) CVPを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の乾燥後の析出物の発生の抑制方法。
(c) CVPを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物からの水分蒸散の抑制方法。
(d) CVP及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含む眼科用組成物にナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、該眼科用組成物を充填する容器の容器口における液切れ性能の向上方法。
上記の各方法において、各成分の種類、含有量、任意成分、組成物の剤型、粘度、pH、用途・使用方法は、上記した眼科用組成物と同様である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)光安定性試験1
下記表1に記載の組成を有する各試験液を用いて、光照射前後の粘度を測定し、光に対する安定性を評価した。
【表1】

【0051】
具体的な試験手法は以下の通りである。
先ず、105℃で3時間乾燥させたCVP(架橋型、商品名:AQUPEC HV−505E、住友精化株式会社製)を、2w/v%溶液になるように水に攪拌溶解させた。次いで、この溶液をCVP濃度が0.15w/v%になるように希釈した後、ホウ酸、ホウ砂、及び必要に応じてε−アミノカプロン酸を各濃度になるように加え、さらに粘度が50〜1500mPa・s(25℃)程度になるように塩化ナトリウムを加えて、溶液が均一になるまで充分に攪拌した。その後、塩酸もしくは水酸化ナトリウム溶液を適量加えてpHが7〜8になるように調整し、水を加えてメスアップした。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:SH65−4000、信越化学工業株式会社製;ヒプロメロースとも呼ばれる)を配合した処方についても、CVPと同様に、約1000〜1500mPa・s(25℃)になるように調製した。
【0052】
これらの眼科用組成物を30ml容量のガラス容器に30ml充填した。これらの組成物を充填した容器に、光照射装置であるサンテスター(SUNTEST XLS+;東洋精機製作所)を用いて、放射照度350W/mで4時間光照射した。これは、5000kJ/mに相当する。
照射終了後、光を照射していない試料(未照射試料)及び光を照射した試料(照射試料)を25℃で一晩遮光保管した。その後速やかに、後述する条件で、25℃における粘度を測定した。さらに、光照射後の粘度を、未照射試料の粘度を100とした場合の相対粘度で表した。

相対粘度=〔照射試料の粘度(25℃)/未照射試料の粘度(25℃)〕×100
【0053】
<粘度測定条件>
試験に用いた各サンプルの粘度を、第十五改正日本薬局方に記載の、「一般試験法、粘度測定法、第2法回転粘度計法」に記載されている「(2)単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」の項に記載の試験法に準拠して測定した。粘度計としてB型回転粘度計(RB−80L;東機産業社)を使用した。
粘度の測定条件は以下の通りである。
測定温度 25℃
測定値 1分後の粘度を測定値とした
回転数及びローターNo.
・粘度100 mPa・s未満:回転数60rpm、ローターNo.M2
・粘度100 mPa・s以上2500mPa・s未満:回転数12rpm、ローターNo.M2
・粘度2500mPa・s以上10000mPa・s未満:回転数12rpm、ローターNo.M3
【0054】
単一円筒形回転粘度計は、液体中の円筒を一定角速度で回転させたときのトルクを測定する粘度計である。装置の概略を図1に示す。あらかじめ粘度計校正標準液を用いて実験的にKBを定めることにより、液体の粘度ηを次式によって算出する。
η=KB × T/ω
η:液体の粘度(mPa・s)
KB:装置定数(rad/cm3
ω:角速度(rad/s)
T:円筒面に作用するトルク(10-7N・m)
【0055】
結果を上記表1に併せて示す。
表1から明らかなように、粘度約1000mPa・s程度の高粘度のCVP製剤は、ε−アミノカプロン酸を含まない場合(比較例1)、光照射により粘度の著しい低下が見られた。一方、このような高粘度のCVP製剤に、さらにε−アミノカプロン酸を配合した製剤(実施例1、2)では、光照射による粘度低下が効果的に抑制された。
また、約50mPa・sと低粘度のCVP製剤(比較例4)では、そもそも光照射による粘度低下という問題が認められなかった。
また、増粘剤としてCVPに代えて、汎用増粘剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合は、粘度約1000mPa・s程度の高粘度の製剤であっても、光照射後の顕著な粘度低下は認められず(比較例3)、また、ε−アミノカプロン酸を配合しても光照射後の粘度低下が高度に抑制される現象は認められなかった(比較例2)。
【0056】
(2)光安定性試験2
下記表2に記載の組成を有する各試験液を用いて、光照射前後の粘度を測定し、光に対する安定性を評価した。
実験方法は、放射照度350W/mで4時間(5000kJ/m相当)の光照射処理に代えて、放射照度765W/mで1時間半の光照射処理にし、また、容器への試料の充填量を30mlから100mlに変更した以外は、光安定性試験1と同様にした。この放射照度765W/mで1時間半の光照射条件は、4000kJ/mに相当する。
【表2】

結果を上記表2に併せて示す。表2から明らかなように、初期粘度が400mPa・s程度のCVP高粘度製剤の場合でもε−アミノカプロン酸を組み合わせることにより、光照射による粘度低下が顕著に抑制された。
【0057】
(3)白残りの評価
下記表3に示す組成を有する試験液を用いて、乾燥後の析出物発生(白残り)の程度を評価した。
【表3】

【0058】
具体的な試験手法は以下の通りである。
先ず、上記光安定性試験1の項目で説明した方法で、各試験液を調製し、それぞれ粘度を測定した。次いで、各試験液50μLをスライドグラス上に滴下し、25℃のインキュベーター内で2時間静置して乾燥させた。2時間後に、各試験液の状態を目視で観察し、写真撮影を行った。
各試験液の2時間乾燥後の写真を図2に示す。図2から明らかなように、CVPを含むがε−アミノカプロン酸を含まない比較例6、7では、乾燥後に白色の析出物が多量に生じた。これに対して、CVPとε−アミノカプロン酸とを含む実施例4、5では、白色析出物の発生がほぼ完全に抑制された。
また、増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むがε−アミノカプロン酸を含まない比較例9では白色析出物の発生が、比較例6、7に比べてやや少なかった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにε−アミノカプロン酸を組み合わせた比較例8では、白色析出物の発生が完全には無くならず、ε−アミノカプロン酸による白色析出物の発生抑制効果が弱かった。
【0059】
(4)ノズル付着試験
下記表4に示す組成を有する試験液を用いて、ノズルから滴下させたときに、ノズルに付着して残存する試験液の量を測定することにより、ノズルからの液切れ性能を評価した。
【表4】

【0060】
具体的な試験手法は以下の通りである。
先ず、上記光安定性試験1の項目で説明した方法で、各試験液を調製し、それぞれ粘度を測定した。次いで、各試験液13mLをポリエチレンテレフタレート(PET)製点眼容器に充填し、ポリエチレン(PE)製ノズルを装着した。次いで、ガラス容器に濾紙を装着し、重量を測定した。次いで、ノズルの角度をほぼ水平にして試験液を滴下し、その後、ノズル外側に付着した液を濾紙に吸わせた。この操作を1試験液につき20滴繰り返し、濾紙の重量変化を測定して、ノズル外側の付着液量(合計重量)を評価した。
結果を図3に示す。図3から明らかなように、CVP及びε−アミノカプロン酸を含有する、実施例6のような高粘度試験液の場合でも実用上許容できる範囲ではあったものの、さらにナファゾリン塩酸塩を配合した実施例7の試験液では、ノズルへの付着液量がおよそ半減した。
【0061】
(5)水分蒸散試験1
下記表5に示す組成を有する試験液について、水分蒸散量を評価した。
【表5】

【0062】
具体的な試験手法は以下の通りである。
先ず、上記光安定性試験1の項目で説明した方法で、各試験液を調製し、それぞれ粘度を測定した。次いで、各試験液を60mmシャーレ(ポリスチレン製)に5.0gずつ量りとり(水分蒸散前試料重量)、50℃で90分間にわたりインキュベートした。90分後の重量を測定した。水分蒸散前後の試料重量の測定値から、下式に従い、水分蒸散率(%)を算出した。

水分蒸散率(%)=〔(水分蒸散前の試料重量−水分蒸散後の試料重量)/
水分蒸散前の試料重量〕×100
【0063】
結果を図4に示す。図4から明らかなように、CVPを含有する高粘度の製剤にε−アミノカプロン酸を配合することにより、ε−アミノカプロン酸の用量に依存して水分蒸散率が抑えられた。これにより、本願発明組成物は、長期にわたり眼球表面上で水分を保持(滞留)できる優れた製剤であることが実証された。
一方、汎用増粘剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する製剤にε−アミノカプロン酸を配合しても、水分蒸散抑制効果は全く認められなかった。
【0064】
(6)水分蒸散試験2
下記表6に示す組成を有する試験液について、水分計を用いて水分蒸散量を評価した。
【表6】

具体的な試験手法は以下の通りである。
先ず、上記光安定性試験1の項目で説明した方法で、各試験液を調製し、それぞれ粘度を測定した。次いで、加熱乾燥式水分計MS-70((株)エー・アンド・デイ社製)を用いて、各試験液の水分蒸散率を測定した。試験は当該水分計に添付の取扱い説明書に従って行った。具体的には、試験開始前に34℃で3時間UF水を用いて作動させて機械の数値を安定化させた後、34℃で、各試験液300mgを用い、60分後の水分蒸散率(%)を測定した。水分蒸散率(%)は、前記水分計に付随の計算ソフト(RsFig Ver.2.41M)により算出した。
【0065】
結果を上記表6に併せて示す。表6中の水分蒸散率(%)の値が小さいほど水分の蒸散が抑えられていることを示す。表6から明らかなように、初期粘度が200mPa・s程度のCVP製剤の場合も、ε−アミノカプロン酸を組み合わせることにより水分蒸散が抑制された。一方、初期粘度が60〜70mPa・s程度である低粘度のCVP製剤の場合には、ε−アミノカプロン酸を併用することによる水分蒸散抑制効果は認められなかった。
【0066】
(7)アミノ酸の種類が粘度に与える影響
下記表7に示す組成を有する比較例16、17の試験液を調製した。比較例16の試験液は、CVPとホウ酸を含む。また、比較例17の試験液は、さらにアミノ酸であるL-アルギニンを含む。また、塩酸及び水酸化ナトリウムの量は、比較例16と比較例17とで略同じである。
【表7】

【0067】
比較例16及び17の両試験液を、25℃で1時間水浴させて温度を安定化させた後、上記光安定性試験1の項目で説明した方法で、各試験液の粘度を測定した。
結果を上記表7に併せて示す。表7から明らかなように、L-アルギニンを含まない比較例16のCVP製剤は粘度が773mPa・sであるのに対し、L-アルギニンを含む比較例17のCVP製剤の粘度は17.7mPa・sであった。
眼科用組成物には、緩衝作用や保存効力の増強などを目的としてホウ酸を配合することが多い。しかし、ホウ酸を含む高粘度のCVP製剤に、ε−アミノカプロン酸ではなく、他のアミノ酸であるL-アルギニンを配合する場合は、粘度低下を抑制しないばかりか、却って粘度を顕著に低下させた。
【0068】
処方例
本発明の眼科用組成物の処方例を下記表8に示す。各成分の含有量の単位はg/100mLである。
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の眼科用組成物は、光暴露による粘度低下が効果的に抑制されているので、汎用の透明容器に充填しても、長期にわたり保存することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシビニルポリマー、及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含み、粘度が200〜100,000mPa・sである眼科用組成物。
【請求項2】
さらに、ナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を含む請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
さらに、ホウ酸を含む請求項1又は2に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
透明容器に充填されている請求項1〜3のいずれかに記載の眼科用組成物。
【請求項5】
点眼剤である請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用組成物。
【請求項6】
カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の光照射による粘度低下の抑制方法。
【請求項7】
カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物の乾燥後の析出物の発生の抑制方法。
【請求項8】
カルボキシビニルポリマーを含む眼科用組成物にε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、眼科用組成物からの水分蒸散の抑制方法。
【請求項9】
カルボキシビニルポリマー及びε−アミノカプロン酸又は薬学的に許容されるその塩を含む眼科用組成物にナファゾリン又は薬学的に許容されるその塩を配合して、粘度200〜100,000mPa・sの眼科用組成物を調製する、該眼科用組成物を充填する容器の容器口における液切れ性能の向上方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206977(P2012−206977A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73667(P2011−73667)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】