眼科用途および方法に用いられる水和性ハイドロゲル材料
【課題】長期の再充填可能な水和性を有するコンタクトレンズを提供する。
【解決手段】コンタクトレンズは、重合可能な組成物の反応生成物であるレンズ本体を含む。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する第1の多価アルコールは、レンズ本体のレンズ表面上に存在する。コンタクトレンズを含むコンタクトレンズパッケージ、ならびにコンタクトレンズの製造および使用方法も提供する。
【解決手段】コンタクトレンズは、重合可能な組成物の反応生成物であるレンズ本体を含む。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する第1の多価アルコールは、レンズ本体のレンズ表面上に存在する。コンタクトレンズを含むコンタクトレンズパッケージ、ならびにコンタクトレンズの製造および使用方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和性ハイドロゲル機器、その機器を形成する組成物、およびコンタクトレンズ材料のような眼科用途におけるその使用に関する。特に、本発明は、レンズが長期の再充填可能な水和性を有することになるような表面を含むハイドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明は、また、これらのレンズを含む包装システムならびにレンズを製造および再湿潤する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の親水性ポリマーまたはハイドロゲルレンズが有効かつ効果的であるにもかかわらず、時々、ある課題が存在する。例えば、従来の親水性コンタクトレンズは、レンズ装用者が不快感および/または眼刺激性を伴うことがあり、これによりレンズ装用者が彼/彼女の眼が乾燥していること感じることになる。“ドライアイ”徴候は、レンズ装用者によって点眼薬および/または潤滑剤で治療されてきた。
【0003】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、一般的に用いられるタイプのコンタクトレンズである。シリコーンハイドロゲルは、一般に、従来のハイドロゲルコンタクトレンズより高い酸素透過性を有する。さらに、シリコーンハイドロゲルは、典型的には、従来のハイドロゲルコンタクトレンズより疎水性材料を有するので、従来のハイドロゲルコンタクトレンズと比較して水和表面を有するコンタクトレンズを製造するのに追加の処理工程または配合成分が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商業的現実性、例えば、低商品コスト、良好な臨床的有用性、高い加工性を解決しつつ、水和性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することは依然として難題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本コンタクトレンズは、重合可能な組成物の反応生成物を含むレンズ本体からなる。コンタクトレンズのレンズ本体は、レンズ表面、例えば、前側のレンズ表面または後側のレンズ表面を有する。第1の多価アルコールは、レンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する。一例において、第1の多価アルコールは、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールを含み、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合された右側の炭素原子として鎖中に結合されており、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合されており、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、かつ1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。他の例では、第1の多価アルコールは、1,3-ジオール(すなわち、鎖中の1番目と3番目の炭素の各々に結合した1つのヒドロキシル基を有するジオール)からなる。他の例では、第1の多価アルコールは、1,3-ポリオール(すなわち、2つを超えるペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコール、1級ヒドロキシル基は鎖中の1番目の炭素に結合され、他の1級ヒドロキシル基は鎖中の3番目の炭素に結合され、鎖中の2番目の炭素はヒドロキシル基がそれに結合されていない)からなる。他の例では、多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールからなる。さらに他の例では、多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールからなり、ヒドロキシル基の2つは炭素鎖の1位と3位にある(すなわち、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール)。重合可能な組成物は、少なくとも1つの親水性モノマー、重合の間に少なくとも1つの親水性モノマーを架橋して第1のポリマー成分を形成する少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む。眼科的に許容され得る酸は、第1のポリマー成分の一部として、第2のポリマー成分として、またはこれらの双方として、レンズ本体内の反応生成物に、また、そのレンズ表面に分配され得る。レンズ表面は、100o未満の前進接触角および/または5秒を超える水のブレイクアップ時間(WBUT)を有し、これらは少なくとも6時間の試験管内試験を受けた後に維持されている。眼科的に許容され得る酸は、シリコーンハイドロゲルレンズ配合物またはシリコーンを含まないハイドロゲルレンズ配合物において使用し得る。
【0006】
コンタクトレンズ本体を製造するために用いられる重合可能な組成物中に少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が含まれると、多価アルコール(ポリオール)、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル(-OH)基を有する1,3-ポリオールが付着され得る少なくとも表面を有するレンズ構造が得られることがわかった。眼科的に許容され得る酸が、少なくともレンズ本体の表面の湿潤部分に含むレンズ本体において化学的に、物理的に、あるいは化学的かつ物理的に固定され得るので、酸(または少なくとも一部、または有効部分)が典型的な製造、貯蔵、および/または装用状態の間に抽出されず洗い流されもしない(例えば、レンズが形成されるときに存在する酸の少なくとも90質量%が後に残る、例えば、90wt%〜100wt%、95wt%〜99.99wt%、97wt%〜99wt%、98wt%〜99wt%)。レンズ本体内と少なくともレンズ表面上に供給される比較的少量の眼科的に許容され得る酸でさえポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールと相互作用(例えば、グラフト、反応、結合、または付着)して、湿潤性表面を得るのに充分であることがわかった。固定された眼科的に許容され得る酸が、使用の間、レンズ本体内とそのレンズ表面に存在したままであるので、ポリオールもまた、湿潤溶液または水溶液からレンズを取り出した後とレンズの使用(装用)の間の長期間レンズ本体の少なくとも表面上に存在したままであり得る。コンタクトレンズは、長期間にわたって試験管内法に基づいて高レベルの湿潤性を示すことができる。これらのコンタクトレンズは、また、使用期間の後にポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールの溶液にレンズを浸漬することによって、例えば、室温で一晩浸漬することによって再充填され得る。さらに、本レンズ配合物によって製造されたコンタクトレンズは、有機溶媒、有機溶媒の水溶液、または水による抽出を必要としないが、このように抽出することができ、滅菌する前に、例えばオートクレーブ処理する前に水溶液または水中で水和することもできる。例えば、本明細書に記載されるコンタクトレンズをレンズ金型から分離し(脱レンズ)、中間の洗浄工程を必要とせずにコンタクトレンズパッケージに入れて、レンズ本体から抽出物を除去することができる。従つて、コンタクトレンズは、レンズパッケージ内の水性液中で提供され得る。水性液は、包装溶液でもよい。しかしながら、必要により、コンタクトレンズを洗浄した後にコンタクトレンズを包装溶液中に入れることができる。コンタクトレンズを包装溶液中に入れた後に、パッケージを閉鎖または密閉し、滅菌することができる。
【0007】
本明細書に記載されるコンタクトレンズの例は、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物からなるレンズ本体を含む。レンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在するポリオールは、ポリビニルアルコール、例えば少なくとも5つのヒドロキシル基を有するものであり得る。ポリビニルアルコールのようなポリオールで形成または処理または再充填される本ハイドロゲルレンズは、最大48時間以上良好な水和性を維持し得る。さらに、高分子量形態のポリビニルアルコール、例えば、約100,000ダルトン以上の質量平均分子量を有するものの使用が、低分子量ポリビニルアルコールを含有する以外はポリビニルアルコール溶液中に同じ濃縮で同じ時間入れた同じ配合物のレンズに比べて、高分子量ポリビニルアルコールを含有する溶液からレンズを取り出した後により長時間湿潤状態でレンズを維持することができることがわかった。
コンタクトレンズの他の例は、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および重合可能な組成物に添加されるときに眼科的に許容され得る無機酸または有機酸の重合可能な形態または重合された形態であり得る少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物からなるレンズ本体を含む。眼科的に許容され得る無機酸は、例えば、ボロン酸、リン酸、またはこれらの双方の重合可能な形態または重合された形態であり得る。
本コンタクトレンズは、また、コンタクトレンズパッケージで提供され得る。本開示によるコンタクトレンズは、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物から形成されるコンタクトレンズからなる。コンタクトレンズは、コンタクトレンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する、ポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールを有する。
【0008】
コンタクトレンズを製造する方法もまた、開示される。重合可能な組成物から形成されるコンタクトレンズを製造する方法の例は、反応性成分を含む重合可能な組成物の反応生成物であるレンズ本体を調製する工程を含む。反応性成分には、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が含まれる。方法は、さらに、レンズ本体を水溶液からの少なくとも1つのポリオール、少なくとも5つのヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールと接触させて、多価アルコールを少なくともレンズ表面に付着させる工程を含む。
本コンタクトレンズを用いる方法もまた、開示される。例として、コンタクトレンズのレンズ表面を再湿潤させる方法は、コンタクトレンズを少なくとも第2のポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールと接触させる工程を含む。そのように接触したコンタクトレンズは、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物で予備成形される。予備形成されたレンズは、はじめは、コンタクトレンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する、少なくとも1つのポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有する第1のポリオールを有することができる。再湿潤性レンズは、有機酸、無機酸、またはこれらの双方であり得る少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が配合されたものを含む。再湿潤処理によって、コンタクトレンズの少なくともレンズ表面がレンズ装用者、例えば、レンズ装用者の目にレンズを装用することによる使用後に再湿潤または“再充填”させることができ、これはレンズ製品の耐用年数をさらに延長することができる。再湿潤は、失われたポリオールを置き換えさらに/またはレンズの少なくとも表面にポリオールをさらに添加して、レンズの湿潤性および/または他の性質を改善することができる。
【0009】
本発明の他の例において、眼科的に許容され得る酸は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態を含む。この例において、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態は、重合反応生成物に(すなわち、レンズ本体のバルク内およびそのレンズ表面に)第2のポリマー成分として分配され得るか、重合可能な組成物の重合可能な成分として存在し得るか、または重合可能な組成物の重合可能な成分として存在しかつ反応生成物の第2のポリマー成分として分配される双方であり得る。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態が重合可能な形でありかつ重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物を重合してコポリマーを含む重合反応生成物を形成した後、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態はコポリマーの重合単位として存在する。重合可能な組成物がボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー; および少なくとも1つの架橋剤を含む場合には; 重合反応生成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態の重合単位から形成されるコポリマー; 親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含む。
【0010】
この例では、重合反応生成物であるレンズ本体は、レンズ本体の少なくとも表面上に、レンズ本体のバルク内に、レンズ本体の表面上とレンズ本体のバルク内双方に存在するボロン酸部分を含むことができる。一例において、ボロン酸部分は、レンズ本体を形成するために用いられるコポリマー中に存在し得る。
【0011】
ボロン酸部分を含むレンズ本体は、少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールを有することができる。すなわち、レンズ本体のボロン酸部分は、多価アルコールが少なくとも1つのレンズ表面上に存在するように多価アルコールの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分と錯体形成することができ、錯体形成レンズ本体が形成される。少なくとも1つの多価アルコールは、前述したように、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有することができるか、または5つより少ないヒドロキシル基を有することができる(すなわち、多価アルコールは、少なくとも2つのペンダントヒドロキシル基を有することができる)。前述したように、本例の多価アルコールは、少なくとも1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる(すなわち、多価アルコールは少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有し、少なくとも3つの炭素原子は鎖中に中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子として結合されており、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合されており、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている)。さらに、本例の多価アルコールは、少なくとも1つの1,2-ジオール部分を有するか、または1,2-ジオールと1,3-ジオール部分双方を有する多価アルコールを含むことができる。少なくとも1つの多価アルコールは、少なくとも1つのレンズ表面上に存在することができるかまたは双方のレンズ表面に存在することができる(すなわち、前側のレンズ表面と後側のレンズ表面上双方に存在する)。ある例において、少なくとも1つの多価アルコールは、レンズ本体のバルクにおいてだけでなくレンズ表面上に存在し得る。多価アルコールが少なくとも1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールである例において、多価アルコールの溶液中に存在する1,2-ジオールまたは1,3-ジオールの少なくとも一部は、レンズ本体に存在する少なくとも一部のボロン酸(例えば、ボロン酸部分はレンズ表面上に、レンズ本体のバルク内に、またはこれらの双方に存在する; ボロン酸部分はレンズ本体を形成するコポリマー中に存在する等)と錯体形成することができる。
【0012】
あるいは、この例では、レンズ本体内に存在するボロン酸は、多価アルコールの1,2または1,3部分と錯体形成され得ない。すなわち、重合反応生成物であるレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。方法の一具体例において、非錯体形成レンズ本体は1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールと接触させることができ、レンズ本体内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部は溶液中に存在する多価アルコールの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分の少なくとも一部と錯体形成することができ、錯体形成レンズ本体が形成される。
【0013】
例は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法を含むことができる。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法は: (i)(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む重合可能な組成物を準備する工程; および(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、コポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合反応生成物を形成する工程であって、コポリマーが、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含む工程であって; 非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程を含むことができる。
【0014】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、下記構造を有するボロン酸の重合可能な形態を含むことができる:
【化1】
【0015】
重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含むことができる。
【0016】
重合可能な組成物は、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。この例では、重合可能な組成物に重合可能なシリコーン含有化合物が存在することにより、コポリマー中にシリコーン含有化合物の重合単位が存在することになる。すなわち、コポリマーは、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーは、約5,000ダルトンより大きい平均分子量を有することができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、その主鎖に、その側鎖に、またはその主鎖とその側鎖の双方に少なくとも約15エチレンオキシド(EO)単位を有するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、存在するエチレンオキシド単位数と存在するジメチルシロキサン(DMS)単位数との比が約0.20〜約0.55であるシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0017】
本例において、レンズ本体を注型するために用いられるコンタクトレンズ金型アセンブリは、前側表面と後側表面を含む、成形表面を含むことができる。金型アセンブリの少なくとも1つの成形表面は、熱可塑性樹脂を含むことができる。
本例において、非錯体形成レンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。他の例において、非錯体形成レンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル〜約100バレルの酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0018】
本例のハイドロゲルレンズ本体を製造する方法において、方法は、さらに、レンズ本体(すなわち、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を、ブリスタ溶液を有するコンタクトレンズのブリスタパッケージに入れる工程、およびブリスタパッケージを密封滅菌し、それによって、レンズ本体と包装溶液を滅菌する工程を含むことができる。
【0019】
方法は、さらに、非錯体形成レンズ本体を錯化溶液と接触させる工程、および錯化溶液中に存在する1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。錯化溶液は、少なくとも1つの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなり得る。錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方が水和された後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験される場合、本例の錯体形成レンズ本体は、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも10%小さい前進接触角を有することができる。
【0020】
本例は、また、ハイドロゲルレンズ本体に関する。ハイドロゲルレンズ本体は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得るコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応した重合可能な組成物の注型重合反応生成物を含み、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー、および少なくとも1つの架橋剤を含み; ハイドロゲルレンズ本体は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態のコポリマーの重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する。
【0021】
ハイドロゲルレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。ハイドロゲルレンズ本体は、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコールに存在する1,2または1,3-ジオール部分と錯体形成されているレンズ本体であり得る。すなわち、レンズ本体は錯体形成レンズ本体である。
【0022】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、リン酸緩衝食塩水に浸漬した水和レンズ本体を少なくとも6時間試験することによって求められるように、少なくとも1つの多価アルコールに存在する1,2または1,3-ジオール部分と錯体形成されたコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部を含まない同じ組成物のレンズ本体の前進接触角より少なくとも10%小さい前進接触角を有することができる。
【0023】
ハイドロゲルレンズ本体は、熱可塑性樹脂から形成される金型表面を使用して注型され得る。
【0024】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0025】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0026】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル未満の酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0027】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル未満の酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0028】
上記の一般的説明および下記の詳細な説明双方が単に典型的かつ説明的であり、また、特許請求される本発明の説明をさらに説明するものであることを理解すべきである。
【0029】
本出願の一部に組み込まれかつそれを構成している添付の図面は、本発明の各実施態様を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】図1Aは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1B】図Bは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1C】図1Cは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1D】図1Dは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図2】図2は、眼科的に許容され得る酸によって製造されるハイドロゲルコンタクトレンズ製品の経時ポリビニルアルコールおよび酸を含まずに製造された対照レンズの蓄積取り込み量を示すグラフである。
【図3】図3は、眼科的に許容され得る酸によって製造されるハイドロゲルコンタクトレンズ製品の経時ポリビニルアルコールおよび酸を含まずに製造された対照レンズのレンズの取り込み量と放出量を示すグラフである。
【図4】図4は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第1の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図5】図5は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第2の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図6】図6は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第1の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図7】図7は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第2の形態の取り込み量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
新規なコンタクトレンズが開示される。コンタクトレンズは、少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含むことができる。コンタクトレンズは、必要により、コンタクトレンズの少なくとも表面またはその部分上に存在する湿潤剤または成分を有することができる。湿潤剤または湿潤成分は、レンズ本体の少なくとも一部と結合することによって、例えば、グラフト、化学結合、共有結合によって、または化学的付着または物理的付着またはこれらの双方の他の形態によってコンタクトレンズの少なくとも表面上またはその一部分に存在し得る。コンタクトレンズの表面上に付着する湿潤剤は、例えば、試験管内試験または他の試験に基づき、長期間にわたって、たとえば、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間(例えば、約12時間から72時間以上まで)、湿潤性を保持する。湿潤剤は、例えば、ヒドロキシルまたはヒドロキシ含有湿潤剤であり得る。湿潤剤は、例えば化学的付着によって、コンタクトレンズで少なくとも表面上に、例えば、1つ以上の湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分)を経由してまたは通って付着する能力を有する。単に例示的である、例えば、図1A、1B、1C、1Dに示されるように、酸の重合可能な形態が反応して、レンズ本体に存在する酸の重合形態を形成することができる。次に、重合酸を含むレンズ本体は、湿潤剤、例えばポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有し、ポリビニルアルコールの形態を含むポリオールと接触させることができる。いかなる特定の理論または作用機序によっても縛られることなく、レンズ本体と湿潤剤とを接触させることによりレンズ本体の少なくとも表面に結合している湿潤剤が得られ、レンズ本体を水和性にする。湿潤剤が少なくともレンズ表面上に湿潤剤リンカーの少なくとも一部、例えば、レンズの表面上に含むレンズ内に存在する眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分と化学結合によって結合することが可能である。
【0032】
さらに、本コンタクトレンズは、コンタクトレンズを湿潤剤にさらすことによって再湿潤または再充填され得る少なくとも1つのレンズ表面を含み、使用または他の理由によって失われることになる前に結合された湿潤剤の少なくとも一部を置き換えさらに/またはレンズ表面上に追加の湿潤剤を添加する最初の湿潤剤と同じかまたは異なってもよい。1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上等)の眼科的に許容され得る酸は、レンズ組成物の一部としてレンズに存在し得る。さらに、1つ以上の湿潤剤は、レンズ表面、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上等に結合することができる。
【0033】
本開示によれば、コンタクトレンズは、重合組成物を含み、ここで、重合組成物には少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸または少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸の単位が含まれる。コンタクトレンズは、必要により、重合組成物の少なくとも一部に結合される湿潤剤またはその部分またはその基を含んでもよい。湿潤剤は、少なくとも1つのポリオールである場合があり、湿潤剤は、利用できる眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分の少なくとも一部に結合され得る。眼科的に許容され得る酸、またはそれの少なくとも相当な部分は、重合組成物中に存在し、レンズ加工または装用の間に実質的に抽出されずまたは洗い流されない。
【0034】
湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、全レンズ組成物の全体に存在することができかつレンズ組成物の一部であり得る。選択として、湿潤剤リンカーの濃度は、レンズ本体の非表面部分と比較して表面で異なり得る。湿潤剤リンカーの濃度の種々の勾配がレンズ組成物の全体に存在し得ると、湿潤剤リンカーの濃度はレンズの全体に均一であるかまたはレンズの全体に均一でない。湿潤剤リンカーの濃度は、レンズの全体に実質的に均一である場合があり、これはレンズを形成する組成物中に湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸を添加しかつレンズの形成前に組成物の全体に均一に湿潤剤リンカーを分配することによって達成され得る。選択として、特定の時間後、レンズ組成物を形成するその他の反応性成分の1つ以上が添加された後またはレンズ組成物における1つ以上の位置で、例えば、レンズ表面でより濃縮された湿潤剤リンカーを有するように重合が開始されるとすぐに、湿潤剤リンカーが添加され得る。
【0035】
いくつかの例において、選択として、湿潤剤リンカーは、レンズ表面上のコーティングまたは層としてのみ存在せず、全体のレンズ組成物の一体部分であるので、レンズ組成物から形成されるレンズである。湿潤剤リンカーを含有することができるレンズ表面上の追加層を含むことが選択できるが、これが必要でないことは理解すべきであり、実際に、全体のレンズ組成物の部分および全体のレンズの部分として組み込まれる湿潤剤リンカーを有することによって、湿潤される能力を強化するために酸または他の湿潤リンカーの別々のコーティングまたは層を有することは必要ない。さらに、コーティングまたは層のみを用いる場合、このコーティングまたは層は、装用されかつ取り外しを受けるので、置き換える必要があるが、本コンタクトレンズにおいて、全体のレンズ組成物中およびその部分、つまり、レンズ内に湿潤剤リンカーが組み込まれることによって、このリンカーが除去されたりなくなったりすることはない。
【0036】
さらに、選択として、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の形成後の後処理として単独で存在しない。言い換えれば、本コンタクトレンズについては、湿潤剤リンカーは、すでに形成されたレンズ本体上の後処理のために存在しない。前述のように、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の部分であり、レンズ本体の部分のままである。例えば、湿潤剤リンカーは、コンタクトレンズを形成するために重合される重合可能な組成物の成分として供給することができる。
【0037】
さらに、選択として、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸、またはその少なくとも大部分は、アルコールまたはクロロホルムで抽出可能でなく、これは10wt%未満、または5wt%未満、または1wt%未満、または0.5wt%未満、または0.1wt%未満の湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸が抽出によって除去することができることを意味する。例えば、ある実施態様において、形成時にレンズ内に存在する0.001wt%〜0.3wt%の湿潤剤リンカーのみが抽出によって経時除去される。
【0038】
前述のように、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の単体構造の部分またはそれの中の部分である。一例において、酸は、レンズ本体を形成するレンズ組成物の重合生成物として存在する。
【0039】
本コンタクトレンズのある実施態様において、コンタクトレンズは、少なくともレンズ表面から付着した湿潤剤の時間放出を伴う。時間放出は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間以上であり得る。湿潤剤の時間放出は、時間放出時間にわたって一定であることができるかまたは前倒しすることができ、より大きいパーセントが初期に時間とともに放出される。一定放出速度の場合、放出プロファイルは、測定時間の間、実質的に直線であるように見える。湿潤剤がより短時間により多量に放出される実施態様においては、比較的急勾配の第1のプロファイル部と比較的勾配のない第2のプロファイル部またはプラトー部を有する放出プロファイルが確認され得る。本レンズのいくつかの実施態様は、形状がS字形である放出プロファイルを有することができる。すなわち、比較的遅い放出速度、続いてより速い放出速度、その後比較的より遅い放出速度が続く特徴を有する。従つて、放出プロファイルは、単相、二相、三相であり得る。
【0040】
本コンタクトレンズの他の態様は、非浸出酸含有コンタクトレンズであって、眼科的に許容され得る酸がレンズを形成するレンズ組成物の部分であり、非浸出特性がアルコールまたは水溶液中で少なくとも6時間にわたってアルコールまたは水溶液によってレンズから相当量の酸を浸出することができずかつ本明細書に記載される酸抽出可能含量が低いことについてのことである、前記コンタクトレンズに関する。一例において、眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る酸の重合可能な形態であり得る。レンズを形成する組成物の一部として含まれる場合、オフタルミン酸の重合可能な形態はレンズ本体の一部として重合させることができるので、重合レンズ本体内に本質的にまたは完全に結合することができ、レンズの硬化の間に形成されるポリマー結合を破壊することによってのみ除去され得る。
【0041】
一例において、湿潤剤リンカー、例えば眼科的に許容され得る酸は、レンズを形成する組成物、例えば、レンズを形成する重合組成物の一部であり、少なくとも1つのポリマー(例えば、少なくとも1つの親水性ポリマー、少なくとも1つの疎水性ポリマー、またはこれらの組み合わせ); 必要により少なくとも1つの架橋剤; 必要により少なくとも1つの開始剤; 必要により少なくとも1つの色味剤; 必要により少なくとも1つのUV遮断剤が含まれるが、これらに限定されないコンタクトレンズ、例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズに見られる1つ以上の従来の成分と存在することができ、ここで、重合組成物中に存在するポリマーはホモポリマー、コポリマー、相互侵入網目高分子(IPN)、ブロックポリマー、および/またはポリマーの他の形態であり得る。少なくとも1つのポリマーから形成される重合組成物の説明は、1つ以上のモノマー、例えば、1つ以上の親水性モノマー、1つ以上の疎水性モノマー、これらの組み合わせ等から形成され得るポリマーであることを理解すべきである。また、本明細書に記載される組成物から形成されるコンタクトレンズについては前側表面と後側表面を有するレンズ本体であり、後側表面がコンタクトレンズ装用者の眼の角膜と接触して配置されるように構成されると理解されるべきである。本発明のレンズ本体は、完全に透明であり得る。あるいは、コンタクトレンズがコンタクトレンズ装用者の虹彩の外観を変えるように構成される美容用レンズである場合、レンズ本体は眼の虹彩にかぶせるのに必要な大きさにされる美容用の部分によって外接される透明な視覚ゾーンを含むことができる。透明なレンズには、また、レンズに色を付けるためにハンドリングチントが含まれてもよい。
【0042】
一例として、延長されかつ再充填可能な湿潤性コンタクトレンズは、少なくとも表面が少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する第1の1,3-ポリオールで処理して、ポリオールをレンズに付着させる、少なくとも表面を含む、少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物を含むレンズ本体を備えている。眼科的に許容され得る酸は、そのレンズ表面で若干のさらされることを含むレンズ本体内の反応生成物に分配される。前側表面と後側表面を有する、レンズ本体の眼科的に許容され得る酸は、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオールと反応して、ポリオールを少なくともレンズ表面に結合させる。レンズ表面が処理された得られたレンズ本体は、良好な湿潤性を有し、例えば、100o未満の前進接触角および/または5秒を超える水のブレイクアップ時間(WBUT)によって示すことができ、これらは少なくとも6時間の間の試験管内試験後に維持される。装用された場合の本コンタクトレンズは、上皮組織または他の眼組織と接触している。本コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、または 軟らかい周辺部分が外接した剛性の中央部分からなるまたはハイブリッドコンタクトレンズであり得る。本明細書に用いられるソフトコンタクトレンズは、レンズ装用者の眼の角膜の形状に合致することができ、さもなければ破壊せずにそれ自体折りたたむことができるコンタクトレンズである。ハードコンタクトレンズは、破壊せずにそれ自体折りたたむことができないコンタクトレンズである。ソフトコンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ、すなわち、水を平衡状態で保持することができるコンタクトレンズであり得る。ハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンを含まないハイドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであり得る。本コンタクトレンズの他の特徴および例は、下記の項に記載されている。
【0043】
本コンタクトレンズの例において、コンタクトレンズは、視力矯正を与え、視力を高めるか、または視力矯正を与えかつ視力を高めるように構成される少なくとも1つの視覚ゾーンを有するレンズである。例えば、視覚ゾーンは、球状補正、円環状補正、または三次以上の補正を与えるように構成され得る。視覚ゾーンは、近い視距離で、遠い視距離で、または近い視距離と遠い視距離双方で視力を高めるように構成され得る。本コンタクトレンズは、例えば、近視または遠視を補正するための、球状コンタクトレンズ; 例えば、乱視を補正するための、円環状コンタクトレンズ; 1つ以上の屈折力を与えるための多焦点コンタクトレンズ、例えば、二重焦点コンタクトレンズ、三焦点コンタクトレンズ等であり得る。
【0044】
組成物中またはコンタクトレンズ内に存在する眼科的に許容され得る酸は、選択として中和され得る(例えば、部分的にまたはさまざまな程度まで)。眼科的に許容され得る酸を含有する全体の組成物のpHは、制御または調整されて、多価アルコールに最適な結合pHを達成し、これは、存在する酸化学種のpKaより高いかまたは同じかまたは低いことができる。
【0045】
選択として、眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ本体は、まず、高温で、例えば50〜80℃以上で処理および/または再充填することができ、レンズ本体を処理および/または再充填する時間の量を有利に短縮するので、より急速におよび/またはより効果的に湿潤剤をレンズ表面上に配置することができる。
【0046】
多価アルコールを含有する点滴剤または同じ多価アルコールが少なくとも一部のレンズを再充填するために使用し得る。レンズが眼の上にある場合または眼にない場合、湿潤点滴剤をはレンズに導入することができる。これは、レンズの前側表面の再充填に特に有効である。
【0047】
(定義) 本説明および特許請求の範囲に関連して、後述する定義に従って以下の用語法が用いられる。
本明細書に用いられる用語“ハイドロゲル”は、ポリマー材料、水中で膨潤することができるかまたは水で膨潤することになる、典型的にはポリマー鎖の網目構造または基質を意味する。ハイドロゲルは、また、水を平衡状態で保持する材料であると理解することができる。網目構造または基質は、架橋されてもよく架橋されなくてもよい。ハイドロゲルは、水膨潤可能であるかまたは水膨潤されたコンタクトレンズを含むポリマー材料を意味する。従つて、ハイドロゲルは、(i)非水和性かつ水膨潤可能であってもよく、(ii)部分的に水和されかつ水で膨潤されてもよく、(iii)完全に水和されかつ水で膨潤されてもよい。ハイドロゲルは、シリコーンハイドロゲル、シリコーンを含まないハイドロゲル、または本質的にシリコーンを含まないハイドロゲルであり得る。
【0048】
用語“シリコーンハイドロゲル”または“シリコーンハイドロゲル材料”は、ケイ素(Si)含有成分またはシリコーン含有成分を含む特定のハイドロゲルを意味する。例えば、シリコーンハイドロゲルは、典型的には、ケイ素含有材料と従来の親水性ハイドロゲル前駆体とを組み合わせることによって調製される。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンハイドロゲル材料を含む、視力矯正コンタクトレンズを含む、コンタクトレンズである。
【0049】
“シリコーン含有成分”は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーにおいて、少なくとも1つの[-Si-O-Si-]結合を含有する成分であり、ここで、各ケイ素原子は、必要により、同じでも異なってもよい1つ以上の有機基の置換基(R1、R2)または置換された有機基の置換基、例えば、-SiR1R2O-を有してもよい。
【0050】
“本質的にシリコーンを含まないハイドロゲル”は、0.1%(w/w)未満のシリコーン含有成分を含有するハイドロゲルを意味する。
【0051】
本明細書に用いられる用語“リンカー”は、連続部分、例えば、ポリマー末端や反復単位のブロックを結合するために用いられる原子または原子の集まりを意味する。リンカー部分は、加水分解的に安定であってもよく、生理的に加水分解可能なまたは酵素学的に分解可能な結合を含んでもよい。リンカーは、加水分解的に安定であり得る。
【0052】
用語“長さ”は、例えば、長さが2〜50個の原子の範囲にある特定の原子長を有するリンカーの集まりの原子に関しては、置換基に関係なく、原子の集まりの最も長い鎖における原子数に基づく。例えば、-CH2CH2-は、各メチレン基自体が合計3つの原子を含有するとしても、水素原子が炭素上の置換基でありかつ鎖の全長を概算する点で考慮されないので、2つの炭素原子の長さを有するとみなされる。リンカー、-O-C(O)-CH2CH2C(O)NH-は、同様に、6つの原子の鎖長を有するとみなされる。
【0053】
“ポリビニルアルコール”または“ポリ(ビニルアルコール)”(“PVOH”と略記する)は、一般構造[-CH2-CH(OH)-]m(ここで、mは、1以上の値である)からなるポリマーの名称である。用語“ポリビニルアルコール”は、また、そのままのPVOHの1つ以上のペンダントヒドロキシル基を有する他の分子構造に結合される官能基としてのPVOHを意味することができる。PVOHと眼科的に許容され得る酸の相互作用に関連する“結合”は、特に明記しない限り、グラフト、錯体、結合(化学結合または水素)のいずれか、または付着を意味することができる。PVOH結合は、また、“半永久的”であることができ、例えば、必要により、使用の間、酸から結合したPVOHの緩慢な放出を可能にしてもよく、レンズ装用の間の快適性を高めることになる。
【0054】
本明細書に記載されるポリマーに関連して“分子質量”は、ポリマー(典型的には、サイズ排除クロマトグラフィ、光散乱技術、または1,2,4-トリクロロベンゼンにおける固有速度定量によって求められる、適度な平均分子質量を意味する。ポリマーに関連した分子量は、数平均分子量または質量平均分子量として表すことができ、ベンダー供給材料の場合には、供給元に左右される。典型的には、このような分子量測定の根拠は、包装材料に示されていないとしても、供給元によって容易に示され得る。典型的には、本明細書にマクロマーまたはポリマーの分子量について本明細書に述べることは、質量平均分子量にもあてはまる。双方の分子量測定、数平均と質量平均は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーまたは他の液体クロマトグラフィ技術を用いて測定することができる。分子量値を測定するための他の方法、例えば、数平均分子量を求めるために末端基分析の使用または束一性(例えば、凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定、または質量平均分子量を求めるために光散乱法、超遠心分離法または粘度測定法の使用も用いることができる。
【0055】
親水性ポリマーの“網目構造”または“マトリックス”は、典型的には、架橋がポリマー鎖間で共有結合によってまたは物理的結合、例えば水素結合によって形成されることを意味する。網目構造は、2つ以上のポリマー成分を含むことができ、1つのポリマーが第2のポリマーと物理的に絡み合っていると、これらの間の共有結合はあるとしてもわずかであるが、網目構造を破壊せずに相互に分離することができない、相互侵入網目構造高分子(IPN)を含むことができる。
【0056】
“親水性”物質は、好水性であるかまたは水に対して親水性を有するものである。親水性化合物は、水に親水性であり、通常は、荷電されるかまたは水を引きつける極性部分または基を有する。
【0057】
本明細書に用いられる“親水性ポリマー”は、水に対する親和性を有しかつ水を吸収することができるポリマーとして定義される。親水性ポリマーが、必ずしも水に可溶性ではない。
【0058】
“親水性成分”は、ポリマーでもよくポリマーでなくてもよい親水性物質である。親水性成分には、残りの反応性成分と組み合わせた場合、水和レンズに少なくとも約20%(w/w)、例えば、少なくとも約25%(w/w)の水分を与えることができるものが含まれる。親水性成分は、親水性モノマー、親水性マクロマー、親水性プレポリマー、親水性ポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。親水性マクロマー、親水性プレポリマー、および親水性ポリマーは、また、親水性部分と疎水性部分を有すると理解され得る。典型的には、親水性部分と疎水性部分は、マクロマー、プレポリマー、またはポリマーが親水性であるような相対量で存在する。
【0059】
“モノマー”は、重合可能である、比較的低分子量の化合物、例えば、約700ダルトン未満の平均分子量を有する化合物を意味する。一例において、モノマーは、他の分子と組み合わせて、ポリマーを形成するために重合することができる1つ以上の官能基を含有する分子の単一単位を含むことができ、その他の分子は、モノマーと同じかまたは異なる構造を有する。
【0060】
“マクロマー”は、更に重合が可能な1つ以上の官能基を含有することができる中分子量および高分子量の化合物またはポリマーを意味する。例えば、マクロマーは、約700ダルトンと約2,000ダルトンの間の平均分子量を有する化合物であり得る。
【0061】
“プレポリマー”は、重合性または架橋性の高分子量化合物を意味する。一例において、プレポリマーが一緒に結合した一連のモノマーまたはマクロマーであり得ると、全体の分子が重合性または架橋性のままである。例えば、プレポリマーは、約2,000ダルトンより大きい平均分子量を有する化合物であり得る。
【0062】
“ポリマー”は、1つ以上のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーを重合することによって形成される材料を意味する。本明細書に用いられるポリマーは、重合されることが可能でなく、他のポリマー、例えば、重合可能な組成物中にまたはモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの反応の間に存在する他のポリマーに架橋されて、重合可能な組成物中の他のポリマーを形成する分子を意味すると理解される。
【0063】
“相互侵入網目構造高分子”または“IPN”は、網目構造形態における、2つ以上のポリマーの組み合わせを意味し、少なくとも一方がこれらの間に共有結合を含まずにもう一方の存在下で合成および/または架橋されている。IPNは、並んでまたは相互侵入していること以外は、2つの別々の網目構造を形成している2種類の鎖から構成され得る。IPNの例としては、連続IPN、同時IPN、セミIPNおよびホモIPNが挙げられる。
【0064】
“疑IPN”は、異なるポリマーの少なくとも1つが架橋され、少なくとも1つの他のポリマーが架橋されていない(例えば、線状または枝分かれ)であるポリマー反応生成物を意味し、ここで、架橋されていないポリマーが分子規模で架橋ポリマー内に分配されかつそれによって保持されると、架橋されていないポリマーは網目構造から実質的に抽出できない。
【0065】
“ポリマー混合物”は、異なるポリマーが実質的に架橋せずに共に線状または枝分かれであるポリマー反応生成物を意味し、ここで、得られたポリマーブレンドは分子規模でポリマー混合物である。
【0066】
“グラフトポリマー”は、主鎖と異なるホモポリマーまたはコポリマーを含む側鎖を有する枝分かれポリマーを意味する。
【0067】
“結合”は、特に明記しない限り、充填結合、グラフト、錯体、結合(化学結合または水素)のいずれか、または付着を意味することができる。
【0068】
本明細書に用いられる“眼科的に許容され得るレンズ形成成分”は、眼刺激等を含むレンズ装用者が相当な不快を受けるかまたは報告せずにハイドロゲルコンタクトレンズに組み込むことができるレンズ形成成分を意味する。眼科的に許容され得るハイドロゲルコンタクトレンズは、眼科的に許容され得る表面湿潤性を有し、典型的には著しい角膜膨潤、角膜脱水(“ドライアイ”)、上部角膜上皮弓状病変(“SEAL”)、または他の著しい不快の原因とならずまたはこれらを伴わない。
【0069】
追加の定義は、以下の項でも見出だすことができる。
【0070】
(レンズ製剤) ハイドロゲルは、本コンタクトレンズに用いられる材料の一種を表す。ハイドロゲルは、水を平衡状態で含有する水和された架橋ポリマー系からなる。したがって、ハイドロゲルは、1つ以上の親水性モノマーから調製されるコポリマーである。親水性モノマーは、架橋剤で架橋可能である。
【0071】
コンタクトレンズは、一般的には、シリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まない(または本質的にシリコーンを含まない)ハイドロゲルのレンズ材料を含むハイドロゲルコンタクトレンズに関係し得る。ハイドロゲルコンタクトレンズは、本発明のために共通したいくつかの特徴を有する。これらの特徴には、例えば、少なくとも1つの親水性モノマー、親水性モノマーを重合の間に架橋して、第1のポリマー成分を形成する少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物を含むコンタクトレンズのレンズ本体が含まれる。眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体内の反応生成物中とそのレンズ表面にポリマー成分としてポリマーまたはマクロマーの形態で分配され得る。例えば、さらに、重合された組成物のレンズ本体は、さらに少なくとも1つのポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを少なくとも備えている。ポリオールは、眼科的に許容され得る酸によってレンズ本体の少なくともレンズ表面に付着されるかまたはそれの上に存在する。
【0072】
(親水性モノマー) 親水性モノマーは、例えば、親水性部分を有するシリコーン含有モノマー、シリコーンを含まない親水性モノマー、またはこれらの組み合わせであることができ、これは眼科的に許容され得る酸と適合する。親水性モノマーは、疎水性モノマーと組み合わせて使用し得る。親水性モノマーは、親水性と疎水性双方の一部または部分を有するモノマーであることができる。重合可能なレンズ組成物に用いられる親水性モノマーのタイプと量は、用いられる他のレンズ形成モノマーのタイプによって変動することができる。シリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まないハイドロゲルに用いられる親水性モノマーに関して本明細書に限定されない例が示される。
【0073】
(架橋剤) ハイドロゲルを調製するのに用いられるモノマー、マクロマーまたはこれらの双方のための架橋剤は、当該技術において既知であるものを含むことができ、架橋剤の例は、本明細書にも示される。適切な架橋剤としては、例えば、ジアクリレート(またはジビニルエーテル)官能基化エチレンオキシドオリゴマーまたはモノマー、例えば、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、およびトリメチレングリコールジメタクリレート(TMGDMA)が挙げられる。典型的には、架橋剤は、重合可能なシリコーンハイドロゲル組成物中に重合可能な組成物中比較的少ない合計量で、例えば、重合可能な組成物の約0.1質量%(w/w)から約10質量%(w/w)まで、または約0.5質量%(w/w)から約5質量%(w/w)まで、または約0.75質量%(w/w)から約1.5質量%(w/w)までの範囲にある量で存在する。
【0074】
(眼科的に許容され得る酸) 上述したように、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の表面に少なくとも湿潤部分を含む、レンズ本体に、化学的に、物理的に、または化学的と物理的に固定されることができる酸である。重合したレンズ本体に存在する酸(または少なくとも一部、または有効部分)は、典型的な製造、貯蔵および/または装用状態の間に抽出または洗い流されない(例えば、レンズが形成される場合に存在する少なくとも90質量%の酸がその後に残存する、例えば90wt%から100wt%、95wt%から99.99wt%まで、97wt%から99wt%まで、または98wt%から99wt%まで)。
【0075】
一例において、眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る酸部分だけでなく、重合したコンタクトレンズ本体を作製するために用いられる条件下で他の分子と組み合わせるために重合させることができる少なくとも1つの官能基を含むモノマー、マクロマー、またはプレポリマーを含む、重合可能な酸である。他の例では、眼科的に許容され得る酸は、反応生成物を形成する重合可能な組成物の重合の間に重合可能な組成物中の他の成分と架橋することができるポリマーである。眼科的に許容され得る酸から供給される重合可能な組成物の成分はは、反応生成物(例えば、レンズ本体)を形成する重合可能な混合物に導入される予備成形ポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーであることができ、これは重合の後に反応生成物の中に分配され得る。他の例では、眼科的に許容され得る酸は、反応生成物の他のポリマー成分によって物理的に固定される眼科的に許容され得る酸のポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーとして反応生成物中に分配され得る。眼科的に許容され得る酸のポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーの物理的固定は、IPN、擬IPNまたはポリマー混合物、またはこれらの組み合わせとしてあり得る。眼科的に許容され得る酸から供給される重合可能な組成物の成分は、レンズ本体の反応生成物の形成においてその場で形成することができる。眼科的に許容され得る酸は、例えば、重合可能な組成物中の他の重合可能な成分と共重合またはグラフトすることができる。
【0076】
眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る無機酸または眼科的に許容され得る有機酸の重合可能な形体であり得る。眼科的に許容され得る無機酸は、例えば、ボロン酸またはリン酸の形態であることができ、その重合可能な形態および重合された形態が含まれる。ボロン酸は、例えば、ビニルフェニルボロン酸、その誘導体であり得る。ビニルフェニルボロン酸は、例えば、2-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸MIDAエステル、(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、2-(メタクリルアミド)フェニルボロン酸ピナコールエステル、または3-アクリルアミドアクリルアミドフェニルボロン酸、これらの組み合わせであり得る。ビニルフェニルボロン酸は、例えば、下記の構造(1)を有することができる:
【化2】
【0077】
用いることができる他のボロン酸としては、例えば、米国特許出願公開第2007/0030443号明細書、同第2007/0116740号明細書および同第2008/0151180号明細書に記載されているものが挙げられ、これらの明細書の記載は、全体として本願明細書に組み込まれるものとする。
【0078】
眼科的に受け入れられる有機酸は、例えば、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタール酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(+)、ショウノウ-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(dL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(dL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、ウンデシレン酸、上記の酸の1つの重合可能な形態、これらの組み合わせであり得る。
【0079】
眼科的に許容され得る酸がVPBでありかつ多価アルコールがPVOHである例において、充分なPVOHまたは他の多価アルコールを付着させて水和表面を得るレンズ表面を得るために、比較的少ないVPB量が重合可能なレンズ組成物に使用し得る。眼科的に許容され得る酸は、例えば、重合可能なレンズ組成物中だけでなく、レンズ表面上に、全レンズ配合物質量に基づき、約0.01%(w/w)から約10%(w/w)まで、または約0.05%から約5%(w/w)まで、または0.1%(w/w)から約0.5%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から0.3%(w/w)までの量で、または他の量で使用し得る。
【0080】
(多価アルコール) レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールであることができ、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合された右側の炭素原子として鎖内に結合され、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合され、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子には結合されず、1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。例えば、多価アルコールがジオールである場合にはジオールではなく、ここで、2つのヒドロキシル基は同一炭素原子上にある(すなわち、ジオールは、ジェミナルジオール、例えば、1,1-ジオールではない)。他の例では、多価アルコールはジオールではなく、ここで、2つのヒドロキシル基は隣接の炭素原子に結合される(すなわち、ジオールは、ビシナルジオール、例えば、1,2-オールではない)。他の例では、第1の多価アルコールは、ジオールを含み、ここで、2つのヒドロキシル基は少なくとも3つの炭素原子の主鎖に位置決めされており、少なくとも3つの炭素原子の3つが中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子と左側の炭素原子に結合した中心の炭素原子を含む3つの炭素原子の鎖であると、1つのヒドロキシル基が右側の炭素に結合されており、中心の炭素原子はそれに結合されたヒドロキシル基を有さず、第2のヒドロキシル基は鎖の左側の炭素に結合されている(すなわち、ジオールは、1,3-ジオールである)。
【0081】
他の例では、第1の多価アルコールは、2つを超えるペンダントヒドロキシル基が主鎖に結合した3つを超える原子の主鎖を有するポリオールを含むことができ、ここで、主鎖の3つの炭素原子は、中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子および左側の炭素原子に結合した中心の炭素原子からなる3つの炭素原子の鎖からなり、ここで、追加の原子は、3つの炭素原子の鎖の前か後の主鎖に存在することができ、ここで、3つの炭素原子の鎖が3つの炭素に結合した2つを超えるペンダントヒドロキシル基の2つだけを有すると、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子に結合し、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、第2の1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。例えば、多価アルコールは、1,3-ポリオール、2,4-ポリオール、3,5-ポリオール等であり得る。他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する2,4-ポリオール、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する3,5-ポリオール等を含む。他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含み、ここで、ポリオールは、3つを超える炭素原子の主鎖を有し、1級ヒドロキシル基は、鎖中の第1の炭素に結合され、ヒドロキシル基は、鎖中の第2の炭素原子に結合されず、他の1級ヒドロキシル基は、鎖中の第3の炭素原子に結合され、残りの少なくとも2つのヒドロキシル基は、主鎖の第4の炭素の後の主鎖の原子に結合される(例えば、主鎖の第5、第6、第7の原子等)。さらに他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基に結合される3つを超える炭素原子の主鎖を有するポリオールを含み、ここで、少なくとも2つのヒドロキシル基が3つを超える炭素原子の鎖上に位置決めされると、一連の1級ヒドロキシル基を有する左側の炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない右側の炭素原子が反復している。このタイプの多価アルコールの例としては、1,3,5-ポリオール、2,4,6-ポリオール等が挙げられる。
【0082】
レンズ本体の少なくとも表面に供給される多価アルコールは、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり得る。一例において、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり、ここで、ペンダントヒドロキシル基の2つは、鎖中の第1と第3の炭素に結合されている(すなわち、多価アルコールは、3位の後の鎖に、例えば、9つ以上の炭素鎖については、5位、7位および9位等に結合された少なくとも3つの追加のヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールである)。
【0083】
さらに他の例において、レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも2つが3つを超える炭素原子の鎖に位置決めされると、各々1つのヒドロキシル基が2つの炭素に結合した2つの炭素の間の1つの炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素原子がある。例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、炭素鎖の第2と第4の炭素に結合した第1の2つのヒドロキシル基を有することができる、残りの少なくとも3つのヒドロキシル基は、第5の炭素、第6の炭素、第7の炭素等に結合されている。多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも5つが炭素鎖に沿ってどこかに結合されると、1つの炭素に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素が1つの炭素に結合した1つのヒドロキシル基を有する各炭素の間に存在している。多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも2つが3つを超える炭素原子の鎖に位置決めされると、1つの炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素原子があり、炭素原子が2つの炭素原子の間に位置決めされ、2つの炭素原子の各々が2つの炭素原子に結合した1つのヒドロキシル基を有し、ここで、残りの3つのヒドロキシル基のいずれも、相互におよび第1の2つのヒドロキシル基双方に対してジェミナル位置にまたはビシナル位置にある。
【0084】
レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコール、例えば、少なくとも5、または6、または7、または8、または9、または10、または11以上のペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり得る。ヒドロキシル基の示された数は、レンズ本体において眼科的に許容され得る酸に結合される多価アルコール中に存在するヒドロキシル基を意味する。少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、少なくとも10,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、または少なくとも125,000(例えば、約10,000から約500,000まで、約50,000から約300,000まで、または約50,000から約200,000まで)の質量平均分子量を有することができる。
【0085】
少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、ポリビニルアルコールの形態であり得る。ポリビニルアルコールは、約4,000から約300,000ダルトンまでの範囲、または約60,000から約210,000ダルトンまでの範囲、または約80,000から約150,000ダルトン以上までの範囲、または約120,000から約210,000ダルトンまでの範囲、または約140,000から約190,000ダルトンまでの範囲にある質量平均分子量を有することができる。ポリビニルアルコールは、例えば、少なくとも50%(モル%)、少なくとも88%(モル%)または少なくとも98%加水分解(モル%)(例えば、50%〜99.9%、70%〜99%、75%〜99.5%(モル%))の程度まで加水分解され得る。20℃の水中の4%溶液の落球法を用いて求めたように、例えば、約50センチポアズから約70センチポアズまでの粘度を有するポリビニルアルコールの少なくとも1つの形態が使用し得る。
【0086】
ポリビニルアルコールは、典型的には、ビニルアルコールと異なり安定である、酢酸ビニルの重合によって製造される。得られたポリ酸酢ビニルは、次に、アルコール分解を受ける。ポリビニルアルコールの技術的特性が第一にモル質量およびアセチル含量に依存するので、工業製造プロセスはこれらのパラメータに対する正確な厳守を確実にするように設計されている。一般に、酸酢ビニルを部分的または完全に加水分解してアセテート基を除去することによってポリビニルアルコールが調製されるので、一般に、ポリビニルアルコールは、最終PVOH生成物(すなわち、部分的に加水分解されたタイプと完全に加水分解されたタイプにおいて達成された加水分解レベルに基づいて、2つのタイプに分けられ、ポリ酸酢ビニルがポリビニルアルコールに加水分解された後の分子内に残る残基のアセテート基のモルパーセント(モル%)に左右される。
【0087】
多価アルコール成分は、2つ以上の多価アルコールの混合物を含むことができる。混合物は、2つ以上のタイプの多価アルコール、例えば、ポリビニルアルコールと異なる多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、異なる平均分子量、例えば、約100,000ダルトンの平均分子量を有するポリビニルアルコールと約200,000ダルトンの平均分子量を有するポリビニルアルコールを有する同一タイプの2つ以上の多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、異なる粘度を有する2つ以上の多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、加水分解レベルが異なる2つ以上の多価アルコールの混合物、例えば、加水分解レベルが89%のポリビニルアルコールと加水分解レベルが98%のポリビニルアルコールであり得る。2つ上の多価アルコールの混合物が2つの多価アルコールの混合物である場合、2つの多価アルコールは、約95:5(w:w)、約90:10(w:w)、約80:20(w:w)、約70:30(w:w)、約60:40(w:w)、または約50:50(w:w)の比で存在することができる。
【0088】
実施において水が一般にPVOHに用いられる溶媒であるが、多くの他の適切な溶媒または溶媒混合物が存在する。溶液が水以外の溶媒を除くことがあり得るが、他の溶媒が水の代わりに、またはそれと共に用いることができることが理解される。例えば、溶媒は緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)であることができ、30mM PBSが含まれる。PVOH溶液は、コンタクトレンズを湿潤するかまたは浸漬するために本発明において用いることができ、約0.01(w/w)から約15%(w/w)まで、または約0.05%(w/w)から約5%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から約3%(w/w)までのPVOH濃度を有することができる。PVOH溶液の例は、少なくとも0.05%(w/w)PVOHを有する水溶液または食塩水である。PVA溶液の他の例は、Kuraray(ヒューストン、テキサス州、米国)から市販されている、約0.25(w/w)〜約1%(wt/wt)のMOLWIOL 40-88 PVAの水溶液である。他のPVOH濃度が適切であってもよい。しかしながら、最適濃度がPVOHグレード、PVOHの分子量、またはこれらの双方に左右されることが認識される。その濃度は、日常的な試験による当業者によって明らかであるかまたは容易に決定可能である。
【0089】
一例において、PVOH溶液は、ホウ酸を含むことができる。ホウ酸が存在すると、PVOHをゲルにさせ、それによって、溶液の粘度が増加する。いかなる理論によっても縛られないが、溶液中にホウ酸を含むと、PVOHをそれ自体に少なくとも部分的に架橋させさせることができるので、レンズに付着させることができるPVOHの“層”の厚みを増加させることを可能にすると考えられる。さらに、架橋されたPVOHがレンズ表面からレンズのバルクに架橋されていないPVOHと比較してより少ない程度に移動すると考えられる。レンズ配合物および表面処理のために用いられるPVOHの形態によっては、レンズ表面からレンズのバルクへのPVOHの移動により、レンズ本体のいくつか特性、例えば、モジュラスや引張強さ、また、レンズ形状の変化が生じ得る。PVOHの単一“ストランド”をレンズに付着させる代わりに、少なくとも部分的に架橋されたPVOHの複数の“ストランド”をレンズに付着させることができるので、レンズ上のPVOH層の“深さ”を増加させ、より大きな架橋PVOHのためにレンズ本体に移動するのがより困難になる。例えば、ホウ酸は、0.0005%(w/w)と1%(w/w)の間または約0.01%(w/w)と約0.2%(w/w)の間の濃度でPVOHの溶液中に含むことができる。
【0090】
他の例では、PVOH溶液は、第2のポリマーを含むことができる。第2のポリマーには、例えば、ポリビニルピロリドンの形態、ホスホリルコリンのポリマー形態、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC、HEMA-PC)、またはヒドロキシルプロピルメチルセルロース(HPMC)のポリマー形態を含むことができる。PVOHと第2のポリマーを混合することにより、絡み合っている2つのポリマーを得ることができる。PVOHと第2のポリマー溶液を加熱して、絡み合いのレベルを高めることができる。第2のポリマーがPVOHと絡み合っているので、溶液が眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ本体の少なくとも表面を処理するために用いる場合、PVOHがオフタルミン酸に結合する場合、絡み合った第2のポリマーも同様に結合される。
【0091】
図1A、図1B、図1Cおよび図1Dは、眼科的に許容され得る酸を含有する表面上のポリオールの層の形成の限定されないスキームであり、ここで、5つ以上のヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールは4-ビニルフェニルボロン酸(VPB)のポリマーに結合されている。図1Aに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の形態が反応して、重合した反応生成物、例えば、コンタクトレンズ本体を形成する。ボロン酸基がレンズ本体の表面上に存在したレンズ本体が示されている。ボロン酸は、重合的に結合され得るので、レンズ本体のポリマーマトリックスの一部であり得る。あるいは、ボロン酸はレンズ本体を形成するために反応するモノマーミックスに分散させる非重合可能な形態であることができ、それによって、分散した酸が重合したレンズ本体にトラップされる。次に、レンズ本体をポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Aに示されるように、PVOH分子は、次にレンズ本体の少なくとも表面上のボロン酸基に結合される。
【0092】
図1Bに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形態を反応させて、反応生成物中の酸のホモポリマーから構成されるレンズ本体を形成させる。次に、レンズ本体を少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Bに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖がレンズ本体の少なくとも表面上のホモポリマーの部分に結合される。
【0093】
図1Cに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形態は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)と反応して、酸とDMAのコポリマーから構成されたレンズ本体を形成する。次に、レンズ本体を少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Cに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖がレンズ本体の少なくとも表面上のコポリマーの部分に結合される。
【0094】
図1Dに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形をDMAおよびエチレングリコールメチルエチルメタクリレート(EGMA)と反応させて、酸、DMA、EGMAのコポリマーから構成されるレンズ本体を形成する。次に、レンズ本体を、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Dに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖が、レンズ本体の少なくとも表面上のコポリマーの部分に結合される。
【0095】
一例において、レンズ本体は、ポリオールを含有する溶液中でオートクレーブ処理することができる。オートクレーブの条件は、例えば、約100℃から約150℃まで約20分から約40分までの時間であってもよく、約110℃から約130℃まで約25分から約35分までの時間であってもよい。
【0096】
(シリコーンハイドロゲルレンズ配合物) シリコーンハイドロゲルレンズ配合物は、レンズ表面に眼科的に許容され得る酸、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および多価アルコールと適合する少なくとも1つのシリコーン含有成分を含んでいる。本明細書に述べられる重合可能なレンズ配合物に関して、“適合する”成分は、重合の前に重合可能な組成物中に存在する場合、組成物から重合したレンズ本体の製造を可能にするのに充分な時間安定である単相を形成する成分を意味する。いくつかの成分について、適合する濃度の範囲を見出すことができる。さらに、“適合する”成分は、重合したレンズ本体を形成するために重合される場合、コンタクトレンズとして用いられる充分な物理的特性(例えば、充分な透明性、モジュラス、引張強さ等)を有するレンズを生じる成分である。
【0097】
(シリコーン含有成分) シリコーン含有成分のSiと結合したO部分(Si-O部分)は、シリコーン含有成分の全分子量の20%(w/w)を超える、例えば30%(w/w)を超える量でシリコーン含有成分中に存在し得る。有効なシリコーン含有成分は、重合可能な官能基、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル官能基を含む。本明細書に記載されるように得られたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーン含有モノマーおよび親水性モノマーまたはコモノマーに基づき得る。本明細書に記載されている式(I)によって表されるシリコーン含有化合物に加えて、本レンズに有効であり得る他のシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号明細書、同第4,120,570号明細書、同第4,136,250号明細書、同第4,139,513号明細書、同第4,153,641号明細書、同第4,740,533号明細書、同第5,034,461号明細書、同第5,496,871号明細書、同第5,959,117号明細書、同第5,998,498号明細書および同第5,981,675号明細書、米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に見出だすことができ、これらの明細書の記載は全て本願明細書に全体として組み込まれているものとする。シリコーン含有成分は、シリコーン含有モノマーまたはマクロマーであり得る。
【0098】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、例えば、下記の一般構造(II)を有することができる:
【化3】
(ここで、R5は、HまたはCH3であり、Xは、OまたはNR55(ここで、R55は、Hまたは炭素原子1〜4個を有する一価のアルキル基である)であり、aは、0または1であり、Lは、炭素原子1〜20個、または炭素原子2〜10個を含む二価の結合基であり、これは、必要により、エーテル基および/またはヒドロキシル基、例えば、ポリエチレングリコール鎖を含んでもよく、pは、1〜10、または2〜5であってもよく、R1、R2、およびR3は、同じでも異なってもよく、独立して炭素原子1〜約12個(例えば、メチル基)を有する炭化水素基、1つ以上のフッ素原子で置換された炭化水素基、シロキサニル基、およびシロキサン鎖含有部分より選ばれる基であり、ここで、R1、R2、およびR3の少なくとも1つは、少なくとも1つのシロキサン単位(-OSi)を含む)。例えば、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、-OSi(CH3)3および/または-OSi(R52R53R54)を含むことができる(ここで、R52、R53、R54は、独立して、エチル、メチル、ベンジル、フェニルまたはSi-O反復単位1〜約100個、または約1〜約50、または約1〜約20を含む一価のシロキサン鎖である)。
【0099】
R1、R2およびR3の1つ、2つ、または全3つは、また、他のシロキサニル基またはシロキサン鎖含有部分を含むことができる。構造(II)のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー内に存在する-X-L-の組み合わせ結合は、OまたはNであるヘテロ原子を1つ以上含有することができる。組み合わせ結合は、直鎖または分枝鎖であることができ、ここで、その炭素鎖セグメントは直鎖であり得る。組み合わせ結合-X-L-は、必要により、例えば、カルボキシル、アミド、カルバメート、およびカルボネートより選ばれる1つ以上の官能基を含有してもよい。その組み合わせ結合の例は、例えば、米国特許第5,998,498号明細書および米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に示されており、この開示内容のすべてが本願明細書に組み込まれているものとする。本発明のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、構造(II)に示される単一のアクリロイル基を含むことができ、必要により、2つのアクリロイル基、例えば、モノマーの各末端に1つを有してもよい。必要により、シリコーン含有成分の双方のタイプの組み合わせが、本発明の重合可能な組成物において用いられてもよい。
【0100】
構造(II)のシリコーン含有モノマーの分子量は、一般的には、約200から約2000ダルトンまで、または約300から約1500ダルトンまで、または約500から約1200ダルトンまでの範囲にあり得る。
【0101】
本発明のシリコーン含有成分の例としては、例えば、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシランが挙げられるが、これらに限定されないポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが含まれる。
【0102】
シリコーン含有成分の個々の例は、例えば、3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート(Gelest、Morrisvilleから入手可能な“トリス”)、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelest、Morrisville、ペンシルバニア州、米国から入手可能)であり得る。これらのシリコーン含有成分は、アルキレン基、二価の結合基(例えば、-(CH2)p-)として、“a”は構造(II)に関して0である、および少なくとも2つのシロキサニル基を有することができる。これらのシリコーン含有成分は、構造(A)クラスのシリコーン含有成分として本明細書に示す。これらのシリコーン含有成分の典型的な限定されない構造は、以下の通り示される:
【0103】
【化4】
および
【化5】
シリコーンC
【0104】
シリコーン含有成分の他の個々の例は、例えば、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(“SiGMA”(Gelest、Morrisville、ペンシルバニア州、米国から入手可能)およびメチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート(“SiGEMA”)であり得る。これらのシリコーン含有成分には、構造(II)に示される二価の結合基Lに少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのエーテル基および少なくとも2つのシロキサニル基が含まれる。これらのシリコーン含有成分は、構造(B)クラスシリコーン含有成分として本明細書に示す。シリコーン含有成分のこの種類に関する追加の詳細は、例えば、米国特許第4,139,513号明細書に示されており、その明細書の記載は本願明細書に全体として組み込まれているものとする。SiGMAは、例えば、下記の例示的な限定されない構造によって表すことができる:
【化6】
【0105】
構造(A)および(B)のシリコーン含有成分は、本発明の重合可能な組成物において個々にまたはその組み合わせで使用し得る。構造(A)および/または(B)のシリコーン含有成分は、さらに、本明細書に記載されるように、少なくとも1つのシリコーンを含まない親水性モノマーと組み合わせて用いられる。組み合わせて用いられる場合、例えば、構造(A)のシリコーン含有モノマーの量は、例えば、約10%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約35%(w/w)まで、または約18%(w/w)から約30%(w/w)までであり得る。構造(B)のシリコーン含有成分の量は、例えば、約10%(w/w)から約45%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約20%(w/w)から約35%(w/w)までであり得る。
【0106】
他のシリコーン含有成分も使用し得る。例えば、他の適切なタイプには、例えば、ポリ(オルガノシロキサン)プレポリマー、例えば、α,ω-ビスメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンが含まれ得る。他の例は、mPDMS(モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサンである。他の有効なシリコーン含有成分には、1,3-ビス[4-(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブテ-1-イル]テトラメチルシロキサン、3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシシラン]、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート; トリメチルシリルエチルビニルカルボネート、およびトリメチルシリルメチルビニルカルボネートが挙げられるが、これらに限定されないシリコーン含有ビニルカルボネートモノマーまたはビニルカルバメートモノマーが含まれる。これらのシリコーン含有成分の1つ以上の例は、例えば、米国特許第5,998,498号明細書、米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に示されているものであることができ、これらの開示内容はすべて本願明細書に組み込まれているものとする。
【0107】
シリコーンを含まないモノマー. シリコーンを含まない親水性モノマーは、本コンタクトレンズを製造するために用いられる重合可能な組成物に含まれる。シリコーンを含まないモノマーは、1つ以上のケイ素原子を含有する親水性化合物を除外する。シリコーンを含まない親水性モノマーは、シリコーンハイドロゲルを形成するために重合可能な組成物にシリコーン含有モノマーと組み合わせて使用し得る。シリコーンを含まない親水性モノマーは、シリコーンを含まないハイドロゲルを形成するために重合可能な組成物に、シリコーンを含まない親水性モノマーやシリコーンを含まない疎水性モノマーが含まれる他のシリコーンを含まないモノマーと組み合わせて使用し得る。シリコーンハイドロゲルにおいて、シリコーンを含まない親水性モノマー成分には、他の重合可能な組成物成分と組み合わせた場合に得られた水和レンズに対して少なくとも約10%(w/w)、または少なくとも約25%(w/w)もの水分を与えることができるものが含まれる。シリコーンハイドロゲルについては、合計のシリコーンを含まないモノマーは、重合可能な組成物の約25%(w/w)から約75%(w/w)まで、または約35%(w/w)から約65%(w/w)まで、または約40%(w/w)から約60%(w/w)までであり得る。
【0108】
シリコーンを含まないモノマーとして含まれ得るモノマーは、典型的には、少なくとも1つの重合可能な二重結合および少なくとも1つの親水性官能基を有する。重合可能な二重結合の例としては、例えば、ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチリル、イソプロペニルフェニル、O-ビニルカルボネート、O-ビニルカルバメート、アリル、O-ビニルアセチル、N-ビニルラクタムおよびN-ビニルアミドの二重結合が挙げられる。一例において、親水性モノマーは、ビニル含有(例えば、アクリル含有モノマーまたは非アクリルビニル含有モノマー)である。その親水性モノマーは、それ自体架橋剤として用いることができる。
【0109】
そのシリコーンを含まない親水性モノマーは、架橋剤であってもよいが、必ずしも架橋剤ではない。上記のようにアクリロイル部分のサブセットと考えれば、“アクリルタイプ”モノマーまたは“アクリル含有”モノマーまたはアクリレート含有モノマーは、アクリル基(CR'H=CRCOX)(ここで、Rは、HまたはCH3であり、R'は、H、アルキル、またはカルボニルであり、Xは、OまたはNである)を含有するモノマーであり、これらは容易に重合することも知られている。
【0110】
シリコーンハイドロゲルについては、シリコーンを含まない親水性成分は、アクリルモノマー(例えば、α-炭素位置にビニル基およびカルボン酸末端を有するモノマー、α-炭素位置にビニル基およびアミド末端を有するモノマー等)および親水性ビニル含有(CH2=CH-)モノマー(すなわち、アクリル基の一部でないビニル基を含有するモノマー)を含む非シリコーン含有モノマー成分を含むことができる。
【0111】
例示的アクリルモノマーとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)およびこれらの混合物が挙げられる。一例では、全アクリルモノマー含量は、シリコーンハイドロゲルレンズ生成物を調製するために用いられる重合可能な組成物の約5%(w/w)から約50%(w/w)までの範囲にある量であり、重合可能な組成物の約10%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約30%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0112】
上述のように、シリコーンを含まないモノマーは、また、親水性ビニル含有モノマーを含むことができる。本レンズの材料に組み込まれ得る親水性ビニル含有モノマーとしては、以下が挙げられる: N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステル。ビニル含有モノマーの一例は、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)である。VMAの構造は、CH3C(O)N(CH3)-CH=CH2に対応する。一例において、全ビニル含有モノマー含量は、重合可能な組成物のシリコーンハイドロゲルレンズ生成物を調製するために用いられる重合可能な組成物の約0%から約50%(w/w)までの範囲にある量であり、重合可能な組成物の約20%(w/w)から約45%(w/w)まで、または約28%(w/w)から約40%(w/w)までの量で存在することができる。当該技術において既知の他のシリコーン含まないレンズ形成親水性モノマーも適切で適切であり得る。
シリコーンハイドロゲルのための架橋剤には、上で示した架橋剤が含まれる。架橋剤に用いられるアクリレート官能基化エチレンオキシドオリゴマーの例には、オリゴエチレンオキシドジメタクリレートが含まれ得る。架橋剤は、TEGDMA、TEGDVE、EGDMA、TMGDMA、またはこれらの組み合わせであり得る。典型的には、架橋剤は、重合可能なシリコーンハイドロゲル組成物に重合可能な組成物中比較的少ない合計量で、例えば、重合可能な組成物の約0.1質量%(w/w)から約10質量%(w/w)まで、または約0.5質量%(w/w)から約5質量%(w/w)まで、または約0.75質量%(w/w)から約1.5質量%(w/w)までの範囲にある量で存在する。
【0113】
シリコーンを含まないハイドロゲルレンズ配合物. シリコーンを含まない親水性モノマーは、本発明のコンタクトレンズを調製するために用いられる重合可能な組成物にシリコーン含有モノマーを含まずに、または実質的に含まずに使用し得る。シリコーンを含まないハイドロゲルは、眼科的に許容され得る酸、他の親水性モノマーおよび架橋剤、および少なくともレンズ表面上の多価アルコールと適合する1つ以上のシリコーンを含まないモノマーを含む。
【0114】
シリコーンを含まない重合可能な組成物は、例えば、1つ以上のシリコーンを含まないモノマー、例えば、ヒドロキシアルキル(アルキル)アクリレート、およびメタクリレートホスホリルコリンモノマー単位、および架橋剤を含むことができる。HEMAベースの配合物が使用し得る。一例の配合物において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-メタクリロイルオキシホスホリルコリン(MPC)、およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)が組み合わせて使用し得る。HEMAまたは他のヒドロキシアルキル(アルキル)アクリレートは、重合可能な組成物の約50%(w/w)から約90%(w/w)まで、または約65%(w/w)から約80%(w/w)まで、または約70%(w/w)から約80%(w/w)までの量で使用し得る。MPCまたは他のメタクリレートホスホリルコリンモノマー、HEMA、ならびには他のシリコーンを含まないモノマーは、組成物の約3%(w/w)から約20%(w/w)まで、または約6%(w/w)から約18%(w/w)まで、または約9%(w/w)から約15%(w/w)までの量で使用し得る。本明細書に示されるような架橋剤は、重合可能な組成物の約0.1%(w/w)から約5%(w/w)まで、または約0.3%(w/w)から約2.5%(w/w)まで、または約0.5%(w/w)から約1%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0115】
(追加のハイドロゲル成分) 本明細書に記載されるシリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まないハイドロゲルレンズ重合可能な組成物には、また、追加の成分、例えば、1つ以上の開始剤、例えば1つ以上の熱開始剤、1つ以上の紫外線(UV)開始剤、可視光開始剤、これらの組み合わせ等、1つ以上のUV吸収剤または化合物、またはUV放射線またはエネルギー吸収剤、色味剤、色素、剥離剤、抗菌化合物、および/または他の添加剤が含まれ得る。本出願に関連して用語“添加剤”は、本重合可能なハイドロゲルコンタクトレンズの重合可能な組成物または予め抽出された重合ハイドロゲルコンタクトレンズ生成物に供給される化合物または化学薬品を意味するが、これはハイドロゲルコンタクトレンズの製造に必要ではない。
【0116】
重合可能な組成物は、1つ以上の開始剤化合物、すなわち、重合可能な組成物の重合を開始することができる化合物を含むことができる。熱開始剤、すなわち、“分解開始”温度を有する開始剤が使用し得る。例えば、本発明の本重合可能な組成物に使われる1つの例示的な熱開始剤は、2,2'-アゾビジネス(イソブチロニトリル)(VAZO(登録商標)-64)である。VAZO(登録商標)-64は、62℃の分解開始温度を有し、これは重合可能な組成物中の反応成分が重合し始める温度である。他の熱開始剤は、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(VAZO(登録商標)-52)であり、これは約50℃の分解開始温度を有する。本発明の組成物に用いられるさらにもう1つの熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(VAZO(登録商標)-88)であり、これは90℃の分解開始温度を有する。本明細書に記載されるVAZO熱開始剤の全ては、DuPont(Wilmington、デラウェア州、米国)から入手可能である。追加の熱開始剤としては、亜硝酸塩、例えば、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)だけでなく、Sigma Aldrichから入手可能な他のタイプの開始剤が含まれる。眼科的に適合するシリコーンまたはシリコーンを含まないハイドロゲルコンタクトレンズは、0.05%(w/w)から約0.8%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から約0.6%(w/w)までのVAZO(登録商標)-64または他の熱開始剤を含む重合可能な組成物から得ることができる。
【0117】
UV吸収剤は、例えば、約320-380ナノメートルのUV-A範囲で比較的高い吸収値を示す強いUV吸収剤であり得るが、約380nmより上で比較的透過性である。例としては、光重合性ヒドロキシベンゾフェノンおよび光重合性ベンゾトリアゾール、例えば、Cytec Industries、West Paterson、ニュージャージー州、米国からCYASORB UV416として市販される2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシ)プロポキシベンゾフェノン、Noramco、Athens、ジョージア州、米国からからNORBLOC(登録商標) 7966として市販される光重合性ベンゾトリアゾールが挙げられる。本発明の使用に適している他の光重合性UV吸収剤としては、重合可能なエチレン系不飽和トリアジン、サリチル酸塩、アリール置換アクリレート、およびこれらの混合物が挙げられる。一般的に言って、UV吸収剤が存在する場合には、重合可能な組成物の約0.5質量パーセントから組成物の約1.5質量パーセントまでに対応する量で供給される。例えば、組成物には、約0.6%(w/w)から約1.0%(w/w)までの1つ以上のUV吸収剤が含まれ得る。
【0118】
本発明の重合可能な組成物は、また、色味剤を含むことができるが、着色および無色双方のレンズ生成物が企図される。一例において、色味剤は、得られたレンズ製品に色を与えるのに効果的な反応染料または色素である。色味剤には、例えば、VAT Blue 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9,14,18-テトロン)、1-アミノ-4-[3-(ベータ-スルファトエチルスルホニル)アニリオ]-2-アントラキノンスルホン酸(C. I. Reactive Blue 19、RB-19)、Reactive Blue 19とヒドロキシエチルメタクリレート(RB-19 HEMA)のコポリマー、1,4-ビス[4-[(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノン(Reactive Blue 246、RB-246、Arran Chemical Company、アスローン、アイルランドから入手可能)、1,4-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-9,10-アントラセンジオンビス(2-pプロペン酸)エステル(RB-247)が含まれ得る。他の例示的チンド剤は、例えば、米国特許出願公開第2008/0048350号明細書に開示されており、この開示内容は本願明細書に組み込まれるものとする。本発明の使用に適切な他の色味剤は、フタロシアニン顔料、例えば、フタロシアニンブルーやフタロシアニングリーン、クロム-アルミナ-酸化第一コバルト、酸化クロム(II)、および赤色、黄色、褐色および黒色のための種々の酸化鉄である。二酸化チタンのようなオペーキング剤も組み込まれ得る。ある用途には、色の混合物を使うことができる。使われる場合には、色味剤は、約0.1%(w/w)から約15%(w/w)まで、または約1%(w/w)から約10%(w/w)まで、または約4%(w/w)から約8%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0119】
本発明の重合可能な組成物は、また、離型助剤、すなわち、金型から硬化したコンタクトレンズの取り出しをより容易にするのに効果的な1つ以上の化合物を含むことができる。例示的な離型補助剤には、親水性シリコーン、ポリアルキレンオキシド、およびこれらの組み合わせが含まれる。重合可能な組成物は、さらに、ヘキサノール、エトキシエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロパノール、デカノールおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる希釈液を含むことができる。希釈液が使われる場合には、典型的には、約10%(w/w)から約30%(w/w)までの範囲にある量で存在する。比較的高い濃度の希釈剤を有する組成物は、イオノフラックス値がより小さく、モジュラスが低く、伸びが大きいだけでなく、WBUTが20秒を超える傾向があるが、必ずしも有するというわけではない。ハイドロゲルコンタクトレンズの製造の使用に適している追加の材料は、米国特許第6,867,245号明細書に記載されており、この明細書の記載は本願明細書に組み込まれるものとする。しかしながら、ある実施態様において、重合可能な組成物は希釈剤を含まない。
【0120】
(レンズのための調製方法) スピンキャスティングおよびスタティックキャスティングを含む、コンタクトレンズの製造において重合可能な組成物を硬化するさまざまなプロセスが既知である。スピンキャスティング法は、モノマー混合物を金型に充填し、モノマー混合物をUV光にさらしつつ制御された方法で金型を回転させることを含む。スタティックキャスティング法は、モノマー混合物を2つの金型部分の間に充填し、一方の金型部分は前側のレンズ表面を形成する形状にされ、もう一方の金型部分は後側のレンズ表面を形成する形状にされており、モノマー混合物をUV光、熱、可視光、または他の放射線にさらすことによって硬化することを含む。コンタクトレンズを形成するための追加の詳細および方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0296914号明細書および同第2008/0048350号明細書に見出だすことができ、これらの各々の開示内容は本願明細書に組み込まれるものとする。
【0121】
反応混合物を硬化した後に、得られたポリマーは金型から分離される。いくつかの状況、例えば、スタティックキャスティングにおいて、2つの金型部材が最初に分離された後、ポリマーが金型から分離される。
【0122】
得られたポリマーは、また、溶媒で処理されて、希釈剤(用いられる場合)、未反応の成分、副生成物等を除去し、ポリマーを水和させて、ハイドロゲルを形成することができる。本重合可能な配合物を用いて製造されるレンズは、水和および包装の前に有機溶媒、有機溶媒を含有する水溶液、または水による抽出を必要としないが、これらはこのように抽出され得る。溶媒は、水(または水溶液、例えば、生理食塩水または界面活性剤の水溶液)であってもよく、または、希釈剤および残りの重合されていないモノマーの溶解度特性によっては、はじめに用いられた溶媒は有機液体、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、これらの混合物等、または1つ以上の有機液体と水との混合物であることができ、続いて純水(または生理食塩水または界面活性剤溶液)で抽出して、水で膨潤したポリマーを含むシリコーンハイドロゲルを得る。抽出プロセス、水和プロセス、またはこれらの双方の抽出および水和プロセスは、加熱液体、加圧液体、または減圧下の液体を用いて行うことができる。水和後のシリコーンハイドロゲルは、ハイドロゲルの全質量の20%(w/w)から80%(w/w)の水、例えば、30%(w/w)から70%(w/w)の水、または40%(w/w)から60%の(w/w)の水を含むことができる。水和後のシリコーンを含まないハイドロゲルは、ハイドロゲルの全質量の20%(w/w)から80%(w/w)の水、例えば、30%(w/w)から70%(w/w)の水、または40%(w/w)から60%(w/w)の水を含むことができる。
【0123】
(例示的な重合可能な組成物) 本重合可能な組成物のモノマーは、単独で重合されるかまたは他のモノマーと共重合されて、コンタクトレンズ材料を得ることができる。
本明細書に記載されかつシリコーンハイドロゲル配合物に基づくコンタクトレンズ材料のための一般配合物をは、表Iに示す。
【0124】
表I
【0125】
表II
【0126】
表III
【0127】
表IV
【0128】
表V
【0129】
コポリマーは、1つ以上のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えば、第1と第2のシリコーン含有モノマー、例えば、構造(A)と(B)モノマーの組み合わせを、1つ以上のシリコーンを含まないコモノマー、例えば、表IIに記載されたものおよび架橋剤、例えば、表IIIに記載されたものとを組み合わせることによって調製することができる。表Vおよび重合開始剤、例えば、表IVに記載されたものの眼科的に許容され得る酸が混合物に添加される。
【0130】
コポリマーは、最初に表Iに示される成分を組み合わせることによって、適切なレンズ金型を用いたコンタクトレンズの形で、またはテフロン(登録商標)加工のガラススライドの間に製造されたフィルムの形で調製される。モノマー混合物は、金型またはスライドキャビティに分配され、開始剤は、例えば、適切な分解開始温度に加熱することによって、“分解開始”される。成形完了の後、金型が開かれ、レンズが金型から分離される。次に、レンズを多価アルコール溶液と接触させる。レンズは、多価アルコール溶液で処理する前に水溶液中で水和させることができる。必要により、レンズは、例えば、有機溶媒、例えば、揮発性アルコール、有機溶媒の水溶液で、または水和前に水溶液または水で抽出することができる。一方法において、レンズは、多価アルコールの水溶液中でオートクレーブ処理することができ、次にブリスタまたはブリスタパック、例えば、PBS溶液を用いたブリスタに包装されることができる。
【0131】
シリコーンを含まないハイドロゲル製剤に基づくコンタクトレンズ材料のための一般配合物を表VIに示す。
表VI
【0132】
本配合物によって製造されたコンタクトレンズは、例えば、その種々の特性、例えば、接触角、水のブレイクアップ時間(WBUT)、湿潤溶液の取り込み等によって示されるように湿潤性を高めることができる。
【0133】
(レンズの特性) コンタクトレンズのレンズ表面は、100o未満、または80o未満、または70o未満、または60o未満、または50o未満の前進接触角を有することができる。レンズ表面の前進接触角は、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含む、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオールである多価アルコールの形態を除く包装溶液における貯蔵の約6時間後、約24時間後、または約48時間後に約100o未満のままである。
【0134】
レンズ表面は、5秒を超える、または少なくとも10秒、または少なくとも15秒、または少なくとも20秒の水のブレイクアップ時間(WBUT)を有する。
【0135】
レンズ面は、少なくとも6時間、または少なくとも12時間、または少なくとも24時間、または少なくとも48時間の間の試験管内試験の後、100o未満の前進接触角および5秒を超える水のブレイクアップ時間を維持することができる。
【0136】
レンズ表面上にはじめに存在する多価アルコールの少なくとも1つの形の少なくとも30%、または少なくとも45%、または少なくとも60%は、試験管内試験の少なくとも6時間、または少なくとも12時間、または少なくとも24時間、または少なくとも48時間後に、また、生体内試験の少なくとも6時間、または少なくとも12時間後に定位置に残存する。
【0137】
重合可能な組成物中にはじめに存在する眼科的に許容され得る酸の少なくとも50質量%、または少なくとも60質量%、または少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%(例えば、50質量%〜99.9質量%、60質量%〜95質量%、70質量%〜90質量%、75質量%〜95質量%、80質量%〜99質量%、85質量%〜99質量%)は、試験管内試験に基づき、約6時間後、または約12時間後、または24時間後、または48時間後、レンズ本体内におよび/またはのレンズ表面上に存在したままである。
【0138】
(コンタクトレンズパッケージ) 上記のようなコンタクトレンズ本体、および他の多価アルコール、例えば少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含む包装溶液を備えているコンタクトレンズパッケージが提供される。多価アルコールがレンズ表面上に存在するか、包装溶液中に存在するか、またはこれらの双方である場合、レンズは、包装材料成分に粘着しないことわかった。レンズ本体の表面上に供給される多価アルコールと包装溶液の多価アルコールは、同じでも異なってもよい。異なる多価アルコールは、同じかまたは異なる平均分子量を有することができる。異なる多価アルコールの一方または双方は、例えば、ポリビニルアルコールの形態であり得る。多価アルコール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、例えば、少なくとも約0.001質量%(w/w)、少なくとも約0.01質量%(w/w)、または少なくとも約0.1質量%(w/w)、または少なくとも約0.25質量%(w/w)、または少なくとも約0.5質量%(w/w)、または少なくとも約1質量%(w/w)、または少なくとも約2質量%(w/w)(例えば、約0.001%から約5%まで、上限は溶液の粘度によって決定されている)濃度で包装溶液中に存在することができる。
【0139】
コンタクトレンズパッケージに関して、パッケージは、さらに、コンタクトレンズ本体および包装溶液を保つように構成されたキャビティを有するベース部材、およびコンタクトレンズおよび包装溶液をコンタクトレンズの有効期間に等価な期間滅菌状態で維持するように構成されたベース部材に付着したシール部を備えることができる。コンタクトレンズ本体は、ベース部材またはシール部に付着せず、またはコンタクトレンズ本体は、多価アルコール、例えば、レンズ表面上に存在する少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含まない実質的に同じのコンタクトレンズ本体と比較してしばしばベース部材またはシール部に付着しない。コンタクトレンズ本体は、ベース部材またはシール部に付着せず、またはコンタクトレンズ本体は、包装溶液中に存在する少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含まない実質的に同じコンタクトレンズ本体と比較してしばしばベース部材またはシール部に付着しない。
【0140】
(再湿潤(再充填)レンズ) 本明細書に記載されるコンタクトレンズが使用者によって装用されるか、さもなければ多価アルコールが変性したレンズ表面で失われる方法で使用された後、レンズは、レンズ本体を多価アルコール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含む水溶液に浸漬するかまたは浸水する(水中に沈める)ことによって少なくともレンズ表面で多価アルコール湿潤助剤によって再充填することができる。レンズ本体を一晩(約9-12時間)浸漬すると、レンズ表面を適切に再充填するのに充分であり得るので、レンズが再び眼科的に許容され得る水和表面を有する。
前述のように、本発明の他の例において、眼科的に許容され得る酸は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態を含む。この例では、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、レンズ内とそのレンズ表面に反応生成物の第2のポリマー成分として分配される代わりにまたはそれに加えて、重合可能な組成物の重合可能な成分として存在し、重合後に、重合された反応生成物のコポリマーの重合単位として存在する。
【0141】
この例では、重合された反応生成物であるレンズ本体は、少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールを有することができる。すなわち、レンズ本体は、錯体形成レンズ本体を備えることができる。少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールは、双方のレンズ表面(すなわち、前側のレンズ表面と後側のレンズ表面上に存在する)に存在することができる。いくつかの例において、少なくとも1つの多価アルコールは、レンズ本体のバルク内だけでなく、レンズ表面上に存在することができる。本例の多価アルコールは、少なくとも1つの1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる(すなわち、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコール、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子として鎖内に結合され、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合され、ここで、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基が中心の炭素原子に結合されてなく、1級ヒドロキシル基が左側の炭素原子に結合されている)。さらに、本例の多価アルコールは、少なくとも1,2-ジオール部分を有するか、または1,2-ジオール部分と1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる。多価アルコールが少なくとも1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールである例において、多価アルコール中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部は、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成した(例えば、ボロン酸部分は、レンズ表面上、レンズ本体のバルク内、またはこれらの双方に存在する)。さらに、この例では、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部(例えば、ボロン酸部分は、レンズ表面上に、レンズ本体のバルク内に、またはこれらの双方に存在する)は、多価アルコールの1,2部分または1,3部分と錯体形成することができない。すなわち、重合された反応生成物であるレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。方法の一具体例において、非錯体形成レンズ本体を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールと接触させることができ、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が多価アルコールのそして、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部と錯体形成させることができ、錯体形成レンズ本体が形成される。
【0142】
例には、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法が含まれ得る。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法は: (i)重合可能な組成物を準備する工程であって、重合可能な組成物が(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む前記工程; および(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、コポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合された反応生成物を形成する工程であって、コポリマーが、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含み; ここで、非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程を含むことができる。
【0143】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸、ボロン酸無水物、またはボロン酸とボロン酸無水物の組み合わせの重合可能な形態を含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸を含む。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸の重合可能な形態を含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ビニルフェニルボロン酸(例えば、2-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、下記構造を有するボロン酸の重合可能な形態を含むことができる:
【化7】
【0144】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、重合可能な組成物中に約0.1%から約10.0%まで、約0.5%から約5.0%まで、約1.0〜約2.0%までの濃度で存在することができる。
【0145】
重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、複数の親水性モノマーを含むことができる。一例において、複数の親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する第1の親水性モノマー、および少なくとも1つのメタクリレート部分を有する第2の親水性モノマーを含むことができる。
【0146】
重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、複数の架橋剤を含むことができる。一例において、複数の架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する第1の架橋剤、および少なくとも1つのメタクリレート部分を有する第2の架橋剤を含むことができる。
【0147】
重合可能な組成物は、さらに水を含むことができる。水は、重合可能な組成物中に1つのボロン酸部分と3つの水分子とのモル比で存在することができる。水は、重合可能な組成物中にボロン酸部分の無水環状三量体を3つの別々のボロン酸部分に変換するのに効果的な量で存在することができる。微量の水が重合可能な組成物の成分にすでに存在することがあり得るので、重合可能な組成物中に1:3のモル比の程度で存在するのに必要とされる追加の水の量は、例えば、カールフィッシャー法を用いて求めることができる。一例において、重合可能な組成物中に存在する下記構造IIIの無水環状三量体は、下記構造IVの3つの別々のボロン酸部分に変換することができる:
【化8】
【0148】
【化9】
【0149】
重合可能な組成物は、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。この例では、重合可能な組成物中に重合可能なシリコーン含有化合物が存在することにより、コポリマー中にシリコーン含有化合物の重合単位が存在することになる。すなわち、コポリマーは、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0150】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、約1,000ダルトンを超える、約2,500ダルトンを超える、約5,000ダルトンを超える、約7,000ダルトンを超える、約9,000ダルトンを超える、約10,000ダルトンを超える、または約12,000ダルトンを超える平均分子量を有することができる。平均分子量は、核磁気共鳴(NMR)によって測定される質量平均分子量であり得る。
【0151】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、エチレンオキシド(EO)単位がモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖または主鎖と側鎖の双方に存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、または少なくとも約40のエチレンオキシド(EO)単位を含むことができる。
【0152】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、少なくとも約10、少なくとも約50、少なくとも約80、少なくとも約90、または少なくとも約100のジメチルシロキサン(DMS)単位がモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖、または主鎖と側鎖の双方に存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0153】
シリコーン含有化合物が、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖、または主鎖と側鎖の双方にエチレンオキシド(EO)単位が存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む場合、シリコーン含有化合物は、存在するエチレンオキシド(EO)単位の数とジメチルシロキサン(DMS)単位の数との比率を有する。その例において、存在するエチレンオキシド単位の数とジメチルシロキサン単位の数との比率(EO/DMS比)は、約0.20から約0.55まで、約0.25から約0.50まで、または約0.35から約0.45まであり得る。
シリコーン含有化合物は、シリコーンA、米国特許出願公開第2009/0234089号明細書(Asahi Kasei Aime Co., Ltd.、神奈川、日本)の実施例2に記載されている親水性ポリシロキサンマクロモノマーAと同一か、または構造が似たシリコーン含有成分を含むことができる。
シリコーン含有化合物は、Silicone B、以下に示され、分子量が約1,500ダルトンであるシリコーン含有成分(America、Akron、OH、USAのShin-Etsu Silicones)を含むことができる。
【化10】
シリコーンB
【0154】
シリコーン含有化合物は、シリコーンC、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelest、Morrisville、ペンシルベニア州、米国)を含むことができる。その構造は、以下の通りである:
【化11】
シリコーンC
【0155】
シリコーン含有化合物は、単一のシリコーン含有化合物または複数のシリコーン含有化合物の組み合わせを含むことができる。シリコーン含有化合物は、重合可能な組成物中に約1%から約65%まで、約10%から約60%まで、または約20%から約55%までの濃度で存在することができる。
【0156】
重合可能な組成物は、さらに、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つのポリマーを含むことができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有するポリマーは、ポリマー湿潤剤を含むことができる。ポリマー湿潤剤は、レンズ本体内で相互侵入網目高分子(IPN)または擬IPNを形成することができる。
【0157】
重合可能な組成物は、さらに、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つのモノマーを含むことができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有するモノマーは、親水性モノマーを含むことができる。モノマーは、ホモポリマーとしてまたは重合可能な組成物の他の成分とのコポリマーとして重合して、レンズ本体内に相互侵入網目高分子(IPN)または擬IPNを形成することができる。
【0158】
重合可能な組成物は、さらに、非反応性希釈剤を含むことができる。非反応性希釈液は、水溶性非反応性希釈液、すなわち、水抽出媒体を用いてレンズ本体から抽出することができる希釈剤を含むことができる。具体例では、水溶性非反応性希釈剤は、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有することができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する水溶性非反応性希釈剤は、グリコール、例えば、グリセリンであり得る。
【0159】
重合可能な組成物は、さらに、ホスホリルコリン成分、例えば、2-メタクリロイルオキシホスホリルコリンを含むことができる。ホスホリルコリンの形態は、ホスホリルコリンの重合可能な形態であり得るか、またはホスホリルコリンの重合された形態であり得る。ホスホリルコリンの重合可能な形態またはホスホリルコリンの重合された形態は、ホスホリルコリンの架橋可能な形態であり得る。ホスホリルコリン成分が重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態を含まないこと以外は同じ配合物を有する匹敵する重合可能な組成物と比較して、曇りがない場合があるかまたは曇りが少ない場合があり、かつ眼科的に許容され得る透明である重合された反応生成物を得ることができる(すなわち、コンタクトレンズとしての使用に充分に透明である)。ホスホリルコリン成分が重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物は、合計5%(w/w)未満のC1-C10一価アルコール単一希釈剤、またはC1-C10一価アルコール希釈剤の組み合わせを含有することができる。
【0160】
重合可能な組成物は、さらに、開始剤を含むことができる。開始剤は、熱開始剤、UV開始剤、または熱開始剤とUV開始剤の組み合わせを含むことができる。
【0161】
重合可能な組成物は、さらに、色付け薬剤、UV遮断薬またはその組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせは、重合可能な色味剤、重合可能なUV遮断剤、または重合可能な色味剤と重合可能なUV遮断剤の組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせが重合可能な色味剤、重合可能なUV遮断剤、または重合可能な色味剤と重合可能なUV遮断剤の組み合わせを含む例において、レンズ本体のコポリマーは、さらに、色味剤の重合単位、UV遮断剤の重合単位、または色味剤とUV遮断剤の重合単位を含む。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせは、架橋性色味剤、架橋性UV遮断剤、または架橋性色味剤と架橋性UV遮断剤の組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせが架橋性色味剤、架橋性UV遮断剤、または架橋性色味剤と架橋性UV遮断剤の組み合わせを含む例において、レンズ本体のコポリマーは、さらに、色味剤の架橋単位、UV遮断剤の架橋単位、または色味剤とUV遮断剤の架橋単位を含む。
【0162】
本実施例では、レンズ本体を注型するために用いられるコンタクトレンズ金型アセンブリは、前側面と後側表面を含む、成形表面を備えることができる。金型アセンブリの少なくとも1つの成形面は、熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂は、極性熱可塑性樹脂、無極性熱可塑性樹脂、または極性熱可塑性樹脂と無極性熱可塑性樹脂双方の組み合わせを含むことができる。極性熱可塑性樹脂の例としては、エチレンビニルアルコール(EVOH)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。無極性熱可塑性樹脂の例としては、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。熱可塑性樹脂は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分、例えば、PVOHを有する熱可塑性樹脂を含むことができる。少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分は、重合可能な組成物、重合された反応生成物、または重合可能な組成物および重合された反応生成物双方に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成することができることがあり得る。
【0163】
本例において、非錯体形成レンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有することができる。他の例において、非錯体形成レンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有することができる。
【0164】
方法は、さらに、非錯体形成レンズ本体を錯化溶液と接触させる工程、および錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。錯化溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなり得る。ボロン酸部分を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成することは、前述のように、眼科的に許容され得る酸をPVOHに“結合する”ことに等価である。錯体は、永続的または半永続的であることができ、例えば、必要により、使用の間、レンズ本体から錯体形成多価アルコールの緩慢な放出を可能にしてもよく、これはレンズ装用の間、快適さを高めることができる。
【0165】
接触させかつ錯体形成させる工程は、包装溶液を有するブリスタパッケージにレンズ本体を入れる前に行われるすすぎまたは浸漬プロセスの一部として行うことができる。あるいはまたはさらに、接触させかつ錯体形成させる工程は、包装溶液を有するブリスタパッケージにレンズ本体を入れる工程の一部として、レンズ本体を少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含む包装溶液と接触させ、ブリスタパッケージを密封しかつ滅菌することによって行うことができる。
【0166】
方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を洗浄溶液で洗浄する工程を含むことができる。レンズ本体を洗浄する工程は、レンズ本体と、水、揮発性アルコールの水溶液、または揮発性アルコールを本質的に含まない水溶液と接触させる工程を含むことができる。洗浄工程は、レンズ本体からダストまたはデブリを洗浄する段階、未反応のモノマー、部分的に反応したモノマー、希釈剤等の材料をレンズ本体から抽出する段階、レンズ本体を水和させる段階、またはこれらの組み合わせを含むことができる。洗浄溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。洗浄溶液は、レンズ本体を洗浄し、材料をレンズ本体から抽出し、レンズ本体を膨潤させ、レンズ本体を水和させ、かつこれらの組み合わせに効果的であり得る。洗浄工程は、レンズ本体を錯体形成させるのと同じ工程であり得る。洗浄工程は、1つ以上の処理工程の間、複数のレンズを保つように構成されるブリスタ包装においてまたはレンズトレーにおいて行うことができる。
【0167】
方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を水和溶液で水和させる工程を含むことができる。水和させる工程は、洗浄する工程、錯体形成させる工程、または入れる工程と別の工程を含むことができる。あるいは、水和させる工程は、レンズ本体を水または水溶液と接触させることを含むプロセスの他の工程に組み込むことができる。レンズ本体を水和させる工程は、レンズ本体を水またはレンズ本体を膨潤させるのに効果的な水溶液と接触させる段階を含むことができる。水溶液は、少なくとも1つの多価アルコール、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。水和させる工程は、レンズ本体を錯体形成させるのと同じ工程、レンズ本体を、包装溶液を有するブリスタパッケージに入れるのと同じ工程、またはこれらの双方であり得る。言い換えれば、レンズ本体は別の処理工程で水和させることができ、錯化溶液はレンズ本体を水和させるために用いることができ、包装溶液はレンズ本体を水和させるために用いることができ、または包装溶液はレンズ本体を錯体形成させかつ水和させる双方に用いることができる。
【0168】
本例のハイドロゲルレンズ本体を製造する方法において、方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を、ブリスタ溶液を有するコンタクトレンズブリスタパッケージに入れ、ブリスタパッケージを密封しかつ滅菌し、このことによりレンズ本体と包装溶液が滅菌される工程を含むことができる。一例において、密封され滅菌されたパッケージ内に存在するレンズ本体は、密封および滅菌後の非錯体形成レンズ本体である(すなわち、レンズ本体のコポリマーのボロン酸部分は、最終包装生成物において多価アルコールの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されない)。他の例において、密封され滅菌されたパッケージ内に存在するレンズ本体は、錯体形成レンズ本体である(すなわち、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部は、多価アルコールの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成する)。
【0169】
ボロン酸部分を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成することは、前述のように、眼科的に許容され得る酸をPVOHに“結合する”ことに等価である。錯体は、永続的または半永続的であることができ、例えば、必要により、使用の間、レンズ本体から錯体形成多価アルコールの緩慢な放出を可能にしてもよく、これはレンズ装用の間、快適さを高めることができる。
【0170】
本例の錯体形成レンズ本体は、錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方を水和後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験した場合、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%小さい前進接触角を有することができる。
【0171】
本例の錯体形成レンズ本体は、錯体形成レンズ本体と匹敵するレンズ本体双方を水和後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験した場合、重合可能な組成物中少なくとも1つのボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせを含まない以外は同じ重合可能な組成物を用いて製造された匹敵するレンズ本体の前進接触角より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%小さい前進接触角を有することができる。
【0172】
前述のように、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールは、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)の形態を含むことができる。PVOHは、PVOHの架橋された形態、例えば、ホウ酸で架橋されたPVOH、またはジアルデヒドまたはポリアルデヒドで架橋されたPVOH、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0173】
PVOHの形態は、低分子量を有するPVOHの形態、例えば、約75,000ダルトンより小さい分子量を有するPVOHの形態であり得る。低分子量形態のPVOHは、MOWIOL(登録商標) 4-88(MW=31,000ダルトン)またはMOWIOL(登録商標) 8-88(67,000ダルトン)(Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国)を含むことができる。
【0174】
PVOHの形態は、低加水分解レベルを有するPVOHの形態、例えば、約90%より低い加水分解を有するPVOHの形態であり得る。低分子量形態のPVOHは、MOWIOL(登録商標) 4-88(加水分解88%)またはMOWIOL(登録商標) 8-88(加水分解88%)(Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国)を含むことができる。
【0175】
錯体形成溶液の少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールは、カテコールまたはカテコール形態を含むことができる。カテコール形態は、重合されたカテコール形態を含むことができる。多価アルコールは、グリセリルモノメタクリレート(GMA)、またはグリセロールモノメタクリレート形態を含むことができる。グリセリルモノメタクリレート形態は、重合されたグリセリルモノメタクリレート形態を含むことができる。
【0176】
錯化溶液の多価アルコールは、少なくとももの1、2つのジオールまたは1つの、3つのジオール部分を有する第1のポリマーを含むことができる。第1のポリマーは、ビニルアルコールコポリマー、グリセリルモノメタクリレートコポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールおよび/またはグリセリルモノメタクリレートおよび親水性または疎水性モノマーの単位から形成されるコポリマーを含むことができる。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールおよび/またはグリセリルモノメタクリレート単位およびかさ高い側鎖を有するモノマーから形成することができる。かさ高い側鎖を有する多価アルコールのコポリマーは、ほぼ同じ分子量のビニルアルコールホモポリマーと比較して、レンズ本体のバルクにコポリマーの侵入を減少させるのに効果的であり得る。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールとビニルピロリドンコポリマー、ビニルアルコールとメタクリレートコポリマー、ビニルアルコールとグリセリルモノメタクリレートコポリマー、ビニルアルコールとホスホリルコリンコポリマー、グリセリルモノメタクリレートとビニルピロリドンコポリマー、グリセリルモノメタクリレートとホスホリルコリンコポリマー、これらの組み合わせ等を含むことができる。
【0177】
錯化溶液は、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する第1のポリマー、および第1のポリマーと物理的に絡み合った(すなわち、架橋または化学結合されていない)第2のポリマーを含むことができる。第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーと第2のポリマー双方は、レンズ本体の水和性を高めるのに効果的な湿潤剤、装用の間、レンズの快適さを高めるのに効果的な快適剤、またはこれらの双方を含むことができる。
【0178】
本例の方法は、また、ハイドロゲルレンズ本体を処理する方法を含むことができる。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を処理する方法は: (i)(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む重合可能な組成物を準備する工程; (ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合された反応生成物を形成する工程であって; 非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程; および(iii)非錯体形成レンズ本体を少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含む第1の錯化溶液と接触させ、第1の錯化溶液中に存在する少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分の少なくとも1つをレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも1つと錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。
【0179】
ハイドロゲルレンズ本体がハイドロゲルコンタクトレンズを含む具体例において、ハイドロゲルレンズ本体を処理する方法は、さらに、(iv)コンタクトレンズが第1の錯化溶液によって接触させられ、その後使用者によって装着された後、コンタクトレンズを少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなる第2の錯化溶液と接触させ、第2の錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部で錯体形成させる工程を含むことができる。第1の錯化溶液の多価アルコールが第2の錯化溶液の多価アルコールと同じであってもよく、第1の錯化溶液の多価アルコールが第2の錯化溶液の多価アルコールと異なってもよい。
【0180】
この例は、また、ハイドロゲルレンズ本体に関する。ハイドロゲルレンズ本体は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得るためにコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応させる重合可能な組成物の注型重合反応生成物を含み、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー、および少なくとも1つの架橋剤を含み; ハイドロゲルレンズ本体は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する。
【0181】
ハイドロゲルレンズ本体は、前側表面、後側表面、縁部および少なくとも1つの透明な視覚ゾーンを含むことができる。透明な視覚ゾーンは、正しい視野に構成され得る。
【0182】
ハイドロゲルレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。ハイドロゲルレンズ本体は、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコール上に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されているレンズ本体(すなわち、錯体形成レンズ本体)であり得る。
【0183】
ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、熱可塑性樹脂から形成される金型表面を用いて注型することができる。
【0184】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa未満のモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有する。
【0185】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa未満のモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有する。
【0186】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有する。
【0187】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有する。
【0188】
本例は、また、ハイドロゲルコンタクトレンズパッケージに関する。ハイドロゲルコンタクトレンズパッケージは、(i)ハイドロゲルコンタクトレンズ体を得るためにコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応させる重合可能な組成物の注型重合反応生成物、その重合可能な組成物が、(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含み; そのハイドロゲルレンズ本体が、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する; (ii)包装溶液; (iii)レンズ本体と包装溶液を保つように構成されたキャビティを有するコンタクトレンズパッケージベース部材; および(iv)コンタクト本体と包装溶液をコンタクトレンズパッケージの有効期間に等価な期間滅菌状態で維持するように構成されたベース部材に付着したシール部を含む。
【0189】
包装溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。
【0190】
少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールは、錯化溶液、包装溶液、洗浄溶液、水和溶液、およびこれらの組み合わせ中に、約0.01%から約10%まで、約0.05から約5.0%まで、または約1.0%から約0.1%までの濃度で存在することができる。
【実施例】
【0191】
下記の実施例は、本発明のある態様および利点を具体的に説明するものであり、本発明がこのことにより制限されないことは理解されなければならない。各部、パーセントおよび比率は、特に明記しない限り質量による。
材料および方法
下記の略号および対応する化合物および構造を実施例において用いる。
SiGMA = (3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン。その構造は、以下の通りである:
【0192】
【化12】
シリコーンC = モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン。その構造は、以下の通りである:
【化13】
シリコーンC
【0193】
Tris = 3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート。その構造は、以下の通りである:
【化14】
【0194】
DMA =N,N-ジメチルアクリルアミド。
VMA =N-ビニル-N-メチルアセトアミド。
MMA = メチルメタクリレート。
HEMA =ヒドロキシエチルメタクリレート。
EGMA =エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート。
EGDMA =エチレングリコールジメタクリレート。
TEGDMA = トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート。
TEGDVE = トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル。
VAZO(登録商標) 64 = 2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)。
UV 416 = Cyasorb UV-416、Cytec製、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート。
VPB = 4-ビニルフェニルボロン酸。
PBS =リン酸緩衝食塩水(20mM、pH=7.3 )。
NaCMC =カルボキシルメチルセルロースナトリウム。
PEI 25K = ポリ(エチレンイミン)溶液 Mw〜2500。
PVOH = ポリビニルアルコール(例えば、MOWIOL(登録商標)シリーズポリビニルアルコール、Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国、MOWIOL(登録商標)、4-88(MW=31K)、MOWIOL(登録商標) 8-88(67K)、MOWIOL(登録商標) 18-88(130K)、MOWIOL(登録商標) 40-88(127K)、MOWIOL(登録商標) 40-88(205K); PVOH 98-99%(MW=146-186K)、PVOH 96%(85-124K)、PVOH 87-89%(13-23K)、PVOH 87-89%(31-50K)、PVOH 87-89%(85-124K)、87-89%(146-186K))。
JEFFAMINE(登録商標)ED-600 ポリエーテルアミン = プロピレンオキシドをキャップしたポリエチレングリコール(Huntsman Corporation、Woodlands、テキサス州、米国)から得られる脂肪族ポリエーテルジアミン。
PVP 1300K = ポリビニルピロリドンMw〜1300K
MPC = 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(Lipidure(登録商標)、NOF Corporation、東京、日本)。
VB6= VAT Blue 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9,14,18-テトロン)。
【0195】
コンタクトレンズの調製
下の表の一部によって示される成分および構成成分のさまざまな組み合わせを混合することによって重合可能なレンズ組成物を調製した。レンズ配合物を下記の一般方法でレンズに形成した。
【0196】
コンタクトレンズ金型を、従来の射出成形技術および設備を用いて無極性ポリプロピレン樹脂から射出成形した。各コンタクトレンズ金型には、コンタクトレンズの前面を形成する凹光学的特性表面を含む雌型部材およびコンタクトレンズの裏面を形成する凸光学的特性表面を含む雄型部材を含まれた。雌型部材は前面金型であると理解することができ、雄型部材は裏面金型であると理解することができる。
【0197】
重合可能なレンズ組成物の量(約60μl)を雌型部材の凹面上に配置した。雌型部材を雌型部材と接触させて配置すると、雌型部材の凹面と雄型部材の凸面の間に形成されたコンタクトレンズ形のキャビティ内に重合可能なレンズ組成物が位置した。雄型部材を雌型部材と雄型部材の周辺領域の間の締りばめによって適切な所に固定した。
【0198】
次に、重合可能なレンズ組成物を含有するコンタクトレンズ金型をオーブンに入れ、重合可能なレンズ組成物を約100℃の温度で約30分間硬化した。硬化後、コンタクトレンズ金型は、コンタクトレンズ形のキャビティ内に重合されたコンタクトレンズ生成物を含有した。
【0199】
コンタクトレンズ金型をオーブンから取り出し、室温(約20℃)に冷却した。コンタクトレンズ金型を機械的に型抜きし、雄型部材と雌型部材を相互に分離した。重合されたコンタクトレンズ生成物は、雄型部材に付着したままにした。
【0200】
次に、重合されたコンタクトレンズ生成物を雄型部材から機械的に脱レンズして、コンタクトレンズ生成物を雄型部材から分離した。次に、分離されたコンタクトレンズ生成物をブリスタ包装においてホウ酸塩緩衝食塩水中に封入して、包装された水和コンタクトレンズを形成した。ブリスタにおけるレンズを水溶液中でオートクレーブ処理することによって滅菌した。オートクレーブ処理に用いられる水溶液は、評価中湿潤剤を含むことができる。
【0201】
レンズ生成物を確認する方法
水のブレイクアップ時間(WBUT)。試験の前に、レンズを3mlの新鮮なPBSに少なくとも24時間浸漬する。試験直前に、レンズを振盪して、過剰のPBSを取り除き、水膜がレンズ表面から後退するのにかかる時間の長さを秒で求める(例えば、水のブレイクアップ時間(水BUTまたはWBUT))。
【0202】
(前進接触角/後退接触角) 前進接触角は、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、ここに示されるコンタクトレンズの前進接触角および後退接触角は、捕捉気泡法を用いて測定することができる。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの前進および後退水接触角は、Kruss DSA 100機器(Kruss GmbH、Hamburg)を用いて、D. A. Brandreth: "Dynamic contact angles and contact angle hysteresis", Journal of Colloid and Interface Science, vol. 62, 1977, pp. 205-212、R. Knapikowski, M. Kudra: Kontaktwinkelmessungen nach dem Wilhelmy-Prinzip-Ein statistischer Ansatz zur Fehierbeurteilung", Chem. Technik, vol. 45, 1993, pp. 179-185、米国特許第6,436,481号明細書に記載されているように求めることができ、すべて本願明細書に全体として組み込まれるものとする。
【0203】
一例として、前進接触角および後退接触角は、リン酸緩衝食塩水(PBS; pH=7.2)を用いた捕捉気泡法を用いて求めることができる。試験の前に、レンズをpH 7.2 PBS溶液に少なくとも30分間または一晩浸漬する。レンズを石英面上に平らにし、試験の前に10分間PBSで再水和する。気泡を自動シリンジシステムを用いてレンズ表面上に配置する。気泡のサイズは、増減することができ、後退角(気泡サイズを増大するときに得られるプラトー)および前進角(気泡サイズを減少するときに得られるプラトー)を得る。
(静的接触角) 静的接触角は、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、静的接触角は、捕捉気泡法を用いて、またはDSA 100drop shape analysis system(Kruss、Hamburg、Germany)を用いて求めることができる。試験の前に、レンズをpH 7.2 PBS溶液に少なくとも30分または一晩浸漬する。
【0204】
(モジュラス) レンズ本体のモジュラスは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、約4mmの幅を有するコンタクトレンズのピースをレンズの中心部から切断することができ、モジュラス(単位; MPa)は、インストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いて、空気中25℃における湿度少なくとも75%で10mm/分の速度の引張試験によって得られた応力-ひずみ曲線の初期傾斜から求めることができる。
【0205】
(PVOH取り込み) ブリスタ溶液からのPVOH取り込みは、レンズをPVOH溶液を含有するブリスタ溶液中に室温(RT)で所定の時間、例えば、48時間入れた後、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0206】
(イオノフラックス) 本レンズのレンズ本体のイオノフラックスを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、コンタクトレンズまたはレンズ本体のイオノフラックスを、米国特許第5,849,811号明細書に記載されている“イオノフラックス技術”と実質的に類似の技術を用いて測定することができる。例えば、測定されるレンズを、レンズ保持装置に、雄部と雌部の間に入れることができる。雄部と雌部は、レンズとそれぞれの雄部または雌部の間に位置決めされる可撓性シールリングを含む。レンズをレンズ保持装置に位置決めした後に、レンズ保持装置をネジ付きリッド内に置く。リッドをガラス管にネジでとめて、ドナーチャンバを形成する。ドナーチャンバを、16mlの0.1モルNaCl溶液で充填することができる。受容チャンバを、80mlの脱イオン水で充填することができる。導電率計のリード線を受容チャンバの脱イオン水に浸漬し、スターバーを受容チャンバに加える。受容チャンバをサーモスタットに入れ、温度を35℃に保持する。最後に、ドナーチャンバを受容チャンバに浸漬する。伝導率の測定は、ドナーチャンバを受容チャンバに浸漬した10分後に始めて、2分毎に約20分間測定することができる。伝導率と時間データは、実質的に直線でなければならない。
【0207】
(引張強さ) レンズ本体の引張強さは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、約4mmの幅を有するコンタクトレンズのピースをレンズの中心部から切断することができ、引張強さ(単位; MPa)をインストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いた試験から求めることができる。
【0208】
(伸び) レンズ本体の伸びを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、伸び(%)は、インストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いて求めることができる。
【0209】
(酸素透過性(Dk)) 本レンズのDkは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、Dk値は、高伝達性ソフトコンタクトレンズのための酸素透過性(Dk)の1個のレンズでのポーラログラフ測定、M. Chhabra et al., Biomaterials 28 (2007) 4331-4342に記載されるように、変更ポーラログラフ法を用いて求めることができる。
【0210】
(平衡含水率(EWC)) 本レンズの含水率を、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、水和シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、水性液から取り出し、拭き取って、過剰の表面水を除去し、計量することができる。次に、計量したレンズを、減圧下で80℃のオーブン内で乾燥することができ、次に、乾燥したレンズを計量することができる。水和したレンズの質量から乾いたレンズの質量を減算することによって質量差を求める。含水率(%)は、(質量差/水和した質量)×100である。
【0211】
(レンズの中心厚(CT)) CTを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、CTは、Rehder ETゲージ(Rehder Development Company、カストロバレー、カリフォルニア州、米国)を用いて求めることができる。
【実施例1】
【0212】
一連のコンタクトレンズを、下記の表1および表2に示されるように、重合可能なレンズ組成物によって調製した。成分を配合物中の成分の質量に基づいて表示された単位部で組み合わせることによって配合物を調製した。
【0213】
レンズ内に存在するボロン酸部分に結合するために用いるのに可能な物質の評価を行った。少なくとも1つのボロン酸部分、詳しくは用いられる配合物中のVPBを有する重合可能な物質を含有するレンズを、下記の表1および表2に示される成分と量を用いて調製し、次に、表3に示される種々の化合物の水溶液中でオートクレーブ処理して、どの化合物がレンズの表面に結合するかを求めた。カルボキシルメチルセルロースナトリウム(Na CMC)、寒天、グリセロール、およびポリビニルアルコール(PVOH)を評価した。配合物1に用いられる試料レンズ1-12、ここで、レンズを1.2mlの示された溶液中でオートクレーブ処理した。配合物2に用いられる試料13-16、ここで、レンズを2.4mlの表示された溶液中でオートクレーブ処理した。表3において、同じレンズに対して行われた2つの逐次試験についてデータを報告する。
【0214】
表1
【0215】
表2
【0216】
表示された試験溶液中でオートクレーブ処理した調製レンズに対するWBUT結果を下記の表3に示す。
表3
【0217】
デンプンおよび隣接する原子が原子の各々に結合したヒドロキシル基を有する構造を有する他の化合物、例えば隣接ジオールや1,2-ポリオール構造を有する化合物は、同様にボロン酸部分に結合すると思予想されたが、これがその場合であるとはわからなかった。ポリエーテルアミン、ポリ(ビニルピロリドン)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含む他の既知の快適さおよび/または水和性を高める物質を同様に評価し、レンズの表面に結合しないことがわかった。3つの炭素原子が右側の炭素原子、中央の炭素原子および左側の炭素原子として一列に結合し、ここで、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子におよび左側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基が中間の炭素原子に結合されていない、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールを含有する溶液のみが湿潤性レンズを得ることがわかった。理論に縛られるつもりはないが、多価アルコールのこの特定の構造が、ボロン酸の重合可能な形態を含む、眼科的に許容され得る酸の形態からなる表面と接触して配置される場合、予想外にこれらの表面に良く結合し、結果としてこれらの表面が長期間にわたって良好な湿潤性を示しかつ保持することになると思われる。この実験において、その構造を有するPVOHの形態が、重合されたボロン酸部分を含有するレンズを処理するために用いられた場合、湿潤性レンズ表面を得ることがわかった。これらの実験において、湿潤性レンズ表面の存在は、試験化合物(この実験の場合、1,3-ポリオール構造を有する多価アルコールは少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を含む、特にPVOHの形態)がレンズ表面上に存在したことを示すとみなした。
【実施例2】
【0218】
表6に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。表4に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。表示された単位部の成分を組み合わせることによって配合物を調製した。VPB量は、この評価のために異なる。
【0219】
本実験は、類似の配合物のレンズにおいて少なくとも1つのボロン酸部分を有する重合可能な物質の濃度の水のブレイクアップ時間(WBUT)に対する効果を評価するために行った。用いられるPBS(リン酸緩衝食塩水)は、20mM、pH=7.3であった。各タイプの1つのレンズを、続いての時点で繰り返し試験した; 報告したデータ(例えば: 5、6)は、同じレンズに対して行った第1および第2の試験についてである。WBUTの測定のために、レンズを5mlのPBSで簡単に洗浄した後、この時点のデータを、異なるレンズについて、次にその他の時点で集めた。1.2mLのPBSにおいて試験したレンズの試験条件に関して、レンズを1.2mlのPBSに入れ、37℃において100rpmの速度で振盪した。レンズのWBUTを、オートクレーブ処理後および6、12および24時間の振盪後に求めた。すべての配合物のレンズを、PBS中の2.4mlの0.50% PVOH(MW 146K〜186K、加水分解87-89%)溶液中でオートクレーブ処理した。
【0220】
表4
【0221】
表5
【0222】
表6
【0223】
眼科的に許容され得る酸(VPB、ボロン酸の重合可能な形態)の形態を含んでい含有する配合物から製造したレンズは、0.5% PVOH溶液中でオートクレーブ処理した後に良好な最初の表面水和性を示したが、眼科的に許容され得る酸、VPBを含有しない配合物から製造されたレンズは、0.5% PVOH溶液中でオートクレーブ処理した後、良好な最初の表面水和性を示さなかった。PVOHを含まないPBSの新鮮な試料を6時間の振盪した後、1%、2%および3% VPBを含有する配合物から製造したレンズは、良好な水和性を示した。新鮮なPVOHを含まないPBS中でさらに6または12時間振盪するとVPBを含有するレンズの表面水和性が減少したが、3% VPBを含有る配合物から製造したレンズは、実験終了後まだ良好な湿潤性を保持した。
【実施例3】
【0224】
配合物1の水和性に関する試験管内動力学実験を行った。コンタクトレンズを実施例2に記載されたレンズ配合物1によって調製した。対照として、市販のBIOFINITY(登録商標)コンタクトレンズを用いた(CooperVision Inc.、プレザントン、カリフォルニア州、米国)。配合物1レンズを、0.5% PVOH溶液(MW=146K-186K PVOH 加水分解87-89% 純度99.9%を用いて製造した)を有する1.2mlのPBS(20mM)に別々に包装し、オートクレーブ処理(30分、121℃)し、室温で2日間保持し、次にパッケージ当たり3.6mlのPBS(20mM)を用いて別々に包装した。1つのレンズについて、24時間試験を試験した。2つのレンズについて、48時間試験を試験した。すべてのレンズを、表示された時点に3.6mlのPBS中で35℃において100rpmの速度で振盪した。試験結果を表7に示す。
【0225】
表7
【0226】
表7の結果で示されるように、眼科的に許容され得る酸を含んでい含有する配合物から製造され、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液と接触させたレンズの静的接触角と前進接触角を求め、対照、すなわち、市販のBIOFINITY(登録商標)レンズにほぼ等価であることがわかった。
【実施例4】
【0227】
表8に示される重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。表示されたベース配合物は、実施例2に既に述べた。眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ配合物の水和性について、レンズが接触溶液中でオートクレーブ処理されるときの接触溶液濃度、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液を含む接触溶液の効果を評価するために本実験を行った。この実験について、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールは、質量平均分子量146K〜186K、加水分解87-89%を有するPVOHを用いた。レンズを3.6mlのPBSに入れ、37℃において100rpmで振盪した。レンズのWBUTを、オートクレーブ処理後かつ24時間の振盪後に求めた。
【0228】
表8
【0229】
PVOH溶液のすべての濃度においてオートクレーブ処理された配合物7のレンズは、オートクレーブ処理後のはじめに良好な水和性を示した。PVOHを含まないPBS中で24時間振盪した後、0.5%および0.25% PVOH中でオートクレーブ処理したレンズは、まだ許容され得る水和性を示した。
【実施例5】
【0230】
表9に示される重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。配合物8(対照)および配合物9として示した重合可能な組成物配合物を用いてレンズを調製した。成分を表示された単位部量を組み合わせることによって配合物を調製した。
【0231】
眼科的に許容され得る酸、特に、眼科的に許容され得る酸の重合可能な形態(VPB)を含む配合物から製造されるレンズから、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、特にPVOHの形態の取り込みと放出を評価した。
【0232】
表9
【0233】
得られた反応生成物(レンズ)を水和し、20mlのPBS中でオートクレーブ処理した。本実験のために、レンズを引き続きPBS(20ml)に3オートクレーブサイクル(1サイクルにつき20分)の間浸漬して、GPCクロマトグラフィによるPVOHの分析を妨げ得るレンズからの浸出可能な材料を除去した。製造のために、有機溶媒または有機溶媒の溶液で抽出することができるので、追加の3オートクレーブサイクルを省略することができる。はじめに、上記のように処理した3つのレンズを、PBS中の3mlの100ppm PVOH溶液(用いられるPVOHの形態は、MOWIOL(登録商標) PVOH、40-88 205K、加水分解88%であった)に浸漬した。実験の各時点で、レンズを新鮮な100ppm PVOH溶液に移し、レンズが移されたPVOH溶液の濃度を、標準法を用いるGPCによって定量化した。時点において溶液中に存在したままのPVOHの濃度に基づいて、レンズ当たりのPVOHの蓄積取り込み量を各時点について算出した。
【0234】
配合物8(対照)(“■”)および配合物9(“◆”)のレンズによるPVOH取り込みは、図3にプロットされている。図3の結果によって示されるように、少なくとも1つのボロン酸部分を有する重合可能な物質を含まずに、配合物8(対照)を用いて製造したレンズは、1日目の間に平均7.1μgのPVOH/レンズおよび1日目以後に0μg PVOH/レンズを吸収することがわかった。追加のPVOHがレンズによって吸収されなかったので、1日目と2日目のデータだけがグラフに含まれる。眼科的に許容され得る酸としてVPBを含有する、配合物9を用いて製造されたレンズは、実験した10日間かけて溶液から少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、特にPVOHを吸収し続けることがわかった。レンズが、10日間かかけて平均17.9μgのPVOH/レンズを吸収することがわかった。
【実施例6】
【0235】
実施例5に記載したような配合物8(対照)と配合物9の重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。本実験のために、配合物8および配合物9のレンズによるPVOH放出を評価した。配合物8と配合物9を用いて製造される16の個別に包装されたレンズを調製した。レンズを、PBS中の5000ppm PVOH溶液(用いられるPVOHの形態は、MOWIOL(登録商標) PVOH、40-88 205K、加水分解88%であった)に個別に浸漬した。オートクレーブ処理後の7日間レンズを浸漬して、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、本実験においてはPVOHの形態中でこれらを完全に飽和した。7日間浸漬した後、個々のレンズを拭いて、追加の溶液を除去し、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含有しない10mlのPBSに移し、実験の間、35℃で貯蔵した。時点の各々で、PBSの試料を各バイアルから取り出し、GPCを用いて分析した。分析後に残存する試料をバイアルに戻し、次の時点までバイアルを35℃で貯蔵に戻した。GPC分析を、標準法を用いて行い、100ppm、80.23ppm、51.03ppm、23.59ppm、および10.00ppm PVOHの校正標準を用いた。
【0236】
配合物8(“■”)と配合物9(“◆”)のレンズによるPVOH放出が図3にプロットされている。図3に示されるように、レンズは配合物9と配合物8を用いて製造されたレンズが共に最初の2時間以内に平均5.9μg PVOH/レンズを放出することがわかった。配合物9のレンズが実験の過程にわたってわずかにより多くのPVOHを放出したが著しい量ではなかった。配合物8の対照レンズは、後の時点でさらにPVOHを放出しなかった。レンズ取り込み実験からのデータには、配合物8のレンズが実験の最初の2時間で(実験の許容誤差内で)吸収したPVOHの全てを本質的に放出したことを示すことがこのプロットに含まれたが、少なくとも8時間後、配合物9のレンズは吸収したPVOHのほとんどを保持した(2時間後に放出された平均5.9μgのPVOH/レンズがない吸収された平均17.9μgのPVOH/レンズは、平均約12μgのPVOH/レンズが2時間後のレンズ内にまたはそれの上に残存したままであった。
【0237】
さらに、眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸(VPB)の重合可能な形態を含有しかつ少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液によって接触された、配合物9を用いて製造されたレンズが湿潤性であることがわかったが、眼科的に許容され得る酸を含有せずかつ少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液によって接触された、配合物8で製造されたレンズが湿潤性でないことがわかったことは注目された。
【実施例7】
【0238】
ベース配合物として、実施例2に記載された配合物1を用いて、表10に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。配合物1のレンズを、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの一連の溶液、この実験においては、変化に富む濃縮の変化に富む加水分解パーセント(モル%)が種々の濃度で異なった一連のPVOH溶液と接触したさせ、得られたレンズのWBUTを評価した。配合物1のレンズを、実施例2に記載されたように、調製し、表示されたタイプのPVOHを含有する1.2mlのPBSに表示された濃度で包装され、オートクレーブ処理され、室温で2日間維持した。次に、レンズパッケージを開き、レンズを3.6mlのPVOHを含まないPBSに移し、100rpmの速度と35℃の温度で表示された時間量振盪した。表示された時点で、レンズのための水のブレイクアップ時間を、静的接触角および前進接触角とともに求めた(いずれも捕捉気泡法を用いて求めた)。
【0239】
表10
【0240】
これらのレンズで評価したPVOH溶液の全ての使用が、良好なWBUTおよび良好な静的接触角と前進接触角を最高5日間維持されるレンズになることがわかり、レンズが実験の間、眼科的に湿潤性のままであることが示された。
【実施例8】
【0241】
眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸VPBの重合可能な形態を含有する、配合物1を用いた重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。レンズを、表11に示されるように、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含む溶液、特に平均分子量が異なるPVOH溶液と接触させた。表11に示されるPVOHグレードには、加水分解の程度(98%または99%)が含まれる。実施例2に記載されている配合物1のレンズを調製し、表示されたタイプPVOHを表示された濃度で含有する1.2mlのPBS中に包装し、オートクレーブし、室温で3日間維持した。次に、レンズパッケージを開き、レンズのWBUTまたは前進接触角(捕捉気泡法によって)を測定するためにレンズを試験した。レンズを、さらに3.6mlのPVOHを含まないPBSに移し、100rpmの速度および35℃の温度で24時間振盪し、その時間にレンズのWBUTおよび前進接触角(捕捉気泡法によって)を求めた。
【0242】
表11
【0243】
PVOHの形態の平均分子量がレンズの水のブレイクアップ時間に影響することを見出し、より高分子量形態によってより長いWBUTを有するレンズが得られる。
【実施例9】
【0244】
表12に示されるシリコーンを含まない重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。配合物を、成分を表示された単位部で組み合わせることによって調製した。シリコーンを含まないレンズ配合物を、眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸の重合可能な形態(VPB)を添加してまたは添加せずに調製した。
【0245】
表12
【0246】
シリコーンを含まないレンズ配合物の評価について引張強さ、モジュラス、伸び、およびPVOH取り込みを行った。レンズを0.5% MOWIOL(登録商標) 40-88(MW〜205k)を含有する1.2mlのPBSブリスタ溶液に室温で24時間入れた後、ブリスタ溶液からのPVOH取り込みをGPCによって求めた。表12の配合物を用いて調製したレンズの特性を表13に示す。
【0247】
表13
【0248】
眼科的に許容され得る酸(VPB)を含有する配合物から製造されたレンズを、PVOH溶液に24時間入れた後に溶液から著しくPVOHを吸収した。
【実施例10】
【0249】
表14および表15に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。一組の配合物(10〜13)は、配合物の最初のWBUT結果によって確認されるように、もう一組の配合物(14〜17)と比較して事実上より疎水性であった。双方の組の配合物における眼科的に許容され得る酸(VPB)の含量を変動させた(0%、1%、2%および3%のVPB)。少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール(PVOH)の経時取り込みレベルについて配合物の各々を評価した。
【0250】
表14
【0251】
表15
【0252】
得られたレンズを型抜し、脱レンズし、各レンズを個別の20mlのガラスバイアルに包装した。レンズを水和させるために、各バイアルを5mlのPBSで充填し、30分間水和させた。水和後、バイアルとレンズは3フラッシュサイクルを受け、各サイクルはレンズを60分間PBSに入れた後、5mlのPBSを5mlの新鮮なPBSに置き換えることからなる。レンズによるPVOH取り込みは、同じ配合物の20のレンズを組み合わせ、各レンズから表面水を拭き取り、20のレンズをPBS中の10mlの200ppm PVOH溶液に浸漬することによって実験した。各レンズをPVOH溶液に個別に添加して、レンズが全て一緒に粘着することを妨げた。用いられるPVOH溶液は、表示されるように、200ppmのMOWIOL(登録商標) 40-88 PVOH、MW 約205,000ダルトン、200ppmのMOWIOL(登録商標) 20-98 PVOH、約MW 146,000ダルトンであった。第1の時点(時間0)について、最後のレンズが添加された直後に、PVOH溶液から20のレンズを取り出した。残り試料を、表示された時点までRTで貯蔵した。残り試料について、1日目、2日目、3日目、7日目、10日目、および14日目の時点で、レンズをPVOH溶液の新鮮な試料に移し、古いPVOH溶液をGPC試験に保持して、PVOH溶液濃度を求めた。PVOH溶液の試料を、ウルトラハイドロゲル線形カラム(Waters Corporation、ミルフォード、マサチューセッツ州、米国)を用いて、H2O:10% MeOH中の90% 0.1M NaNO3の移動相で、0.8ml/分の流速で、200μlの注入量、45℃のカラム温度および屈折率(RI)検出器でGPCによって分析した。PVOHピークの1つの間で浸出した線状ポリマーピークと重なるため、ピーク面積よりもピーク高さを用いてPVOHを定量化した。PVOH取り込みに加えて、レンズ直径と水のブレイクアップ時間(WBUT)を0日目と14日目に測定した。最初(時間0)のWBUTをPBS中で測定し; 14日目のレンズをPBSに移し、PBS中に5日間貯蔵した後、WBUTを求めた。表16および表17におけるレンズ直径とWBUTに報告され値は、5レンズの試料サイズに基づく。
【0253】
表16
【0254】
表17
【0255】
評価した2つの形態のPVOH(MOWIOL(登録商標) 20-98 PVOHおよびMOWIOL(登録商標) 40-88 PVOH)の取り込み速度を疎水性配合物(10〜13)および親水性配合物(14〜17)について図4〜7に示す。PVOHの双方の形態については、最初の時点後にレンズによって吸収されたPVOHの全量は、疎水性配合物より大きかった。配合物中のより高レベルのVPB含量は、一般的には、より高レベルのPVOHがレンズによって吸収されることになることが見出されたが、全体の取り込み結果はPVOHのいずれかの形態を有する疎水性配合物、または20-98 PVOHを有する親水性配合物に直線的に濃度依存性でなかった。40-88 PVOHで試験した疎水性配合物について、PVOHの全体の取り込みは、配合物中に存在するVPB濃度に基づいて直線的に濃度依存性であった。2単位部より少ないVPBを含有する配合物のレンズによるPVOHの取り込みは、約100と150時間の間で定常状態に達するようであるが、3部のVPBを含有する配合物は、一般的には、定常状態に達するのに250時間以上を必要とした。
【実施例11】
【0256】
表18に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。これらの配合物において、異なるタイプの眼科的に許容され得る酸、特に異なる形態の重合可能な眼科的に許容され得る酸を用いた。これらの配合物に用いられる眼科的に許容され得る酸は、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB、Alfa Aesar、ウォードヒル、マサチューセッツ州、米国)、3-ビニルフェニルボロン酸(3-VPB、Sigma-Aldrich、アトランタ、ジョージア州、米国)、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸(MAPBA、Combi-Blocks Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)および3-アクリルアミドフェニルボロン酸(AAPBA、Frontier Scientific Inc.、ローガン、ユタ州、米国)を含有する。これらの重合可能なレンズ組成物から形成される結得られたレンズは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、この実験については、0.5% MOWIOL(登録商標) 20-98 PVOHの溶液と接触させた。眼科的に許容され得る酸を含む重合可能なレンズ組成物を重合しかつこれらを少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールと接触させた後、レンズを5mlのPBSで洗浄した。
【0257】
表18
【0258】
表19
【0259】
Combi-Blocksから購入したMAPBAは、原料が予想された白色粉末よりもむしろ色が橙色-赤色であった固体塊の材料であったので非常に低純度のようであった。このために、配合物19のレンズが実際に3単位部よりはるかに少ないMAPBAを含有し、PVOH溶液と接触させた場合に良好な水和性を示さず、PVOH溶液と接触させ、引き続きPBSで洗浄した後に、良好な水和性を保持しないレンズが得られたと考えられる。オフタルミン酸の重合可能な形態、特にボロン酸の重合可能な形態を含む重合可能な組成物から製造されたその他のレンズのすべては、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール(この実験においては、PVOH)と接触させた後に良好な水和性を示し、引き続きPBSで洗浄した後に良好な水和性を保持した。
【実施例12】
【0260】
表20に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。これらの重合可能な組成物から形成される得られた非錯体形成レンズ本体の特性を表21に示す。
【0261】
表20
【0262】
表21
【0263】
型抜きおよび脱レンズ後、表22に示されるように、配合物23の非錯体形成レンズ本体を、リン酸緩衝食塩水中に1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を含む多価アルコールからなる錯化溶液を用いて接触させた。p-GMA錯化溶液は、リン酸緩衝食塩水中のポリ(グリセリルモノメタクリレート)の0.5% wt/wt溶液からなる。0.5% GMA/MPC錯化溶液は、リン酸緩衝食塩水中のグリセリルモノメタクリレートと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのコポリマーの0.5% wt/wt溶液からなり、0.5% GMA/NVP錯化溶液は、グリセリルモノメタクリレートとビニルピロリドンのコポリマーの0.5% wt/wt溶液からなる。GMAホモポリマーおよびコポリマーは、97%の純粋なグリセリルモノメタクリレート(Monomer Polymer、Trevose、ペンシルバニア州、米国)を用いて社内で製造した。非錯体形成レンズ本体および錯体形成レンズ本体は、錯化溶液とともにブリスタパッケージに入れ、密封し、121℃で20分間オートクレーブ処理し、室温で48時間の平衡化した。水和した非錯体形成および錯体形成レンズ本体の前進接触角を、レンズ本体をPBS中で少なくとも6時間平衡化した後に捕捉気泡法を用いて求めた。
【0264】
表22
【0265】
各錯化溶液について試験した2つのレンズの平均値に基づいて、錯体形成レンズ本体は、非錯体形成レンズ本体の前進接触角より小さい約12%から約19%までの範囲にある前進接触角を有した。
【0266】
出願人は、特に、本開示に引用したすべての参考文献の全体の内容を組み込んでいる。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメータを、範囲、好適範囲、またはより上の好ましい値およびより低い好ましい値のリストとして示される場合には、特に、範囲が別々に開示されるかにかかわらず、上限または好適値と下限または好適値の対から形成されるすべての範囲を開示するものとして理解されるべきである。特に明記しない限り、数値の範囲が本願明細書に列挙される場合、範囲は、その終点、およびすべての整数および範囲内の分数を含くむものとする。範囲を区切る場合に列挙される個々の値に本発明の領域が限定されることは意図しない。
【0267】
本発明の他の実施態様は、本明細書に開示される本発明の本明細書および実施を考慮することから当業者に明らかである。本明細書および実施例が例示のみとしてみなされ、本発明の真の範囲および精神が以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示されることを意図する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和性ハイドロゲル機器、その機器を形成する組成物、およびコンタクトレンズ材料のような眼科用途におけるその使用に関する。特に、本発明は、レンズが長期の再充填可能な水和性を有することになるような表面を含むハイドロゲルコンタクトレンズに関する。本発明は、また、これらのレンズを含む包装システムならびにレンズを製造および再湿潤する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の親水性ポリマーまたはハイドロゲルレンズが有効かつ効果的であるにもかかわらず、時々、ある課題が存在する。例えば、従来の親水性コンタクトレンズは、レンズ装用者が不快感および/または眼刺激性を伴うことがあり、これによりレンズ装用者が彼/彼女の眼が乾燥していること感じることになる。“ドライアイ”徴候は、レンズ装用者によって点眼薬および/または潤滑剤で治療されてきた。
【0003】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、一般的に用いられるタイプのコンタクトレンズである。シリコーンハイドロゲルは、一般に、従来のハイドロゲルコンタクトレンズより高い酸素透過性を有する。さらに、シリコーンハイドロゲルは、典型的には、従来のハイドロゲルコンタクトレンズより疎水性材料を有するので、従来のハイドロゲルコンタクトレンズと比較して水和表面を有するコンタクトレンズを製造するのに追加の処理工程または配合成分が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商業的現実性、例えば、低商品コスト、良好な臨床的有用性、高い加工性を解決しつつ、水和性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することは依然として難題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本コンタクトレンズは、重合可能な組成物の反応生成物を含むレンズ本体からなる。コンタクトレンズのレンズ本体は、レンズ表面、例えば、前側のレンズ表面または後側のレンズ表面を有する。第1の多価アルコールは、レンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する。一例において、第1の多価アルコールは、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールを含み、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合された右側の炭素原子として鎖中に結合されており、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合されており、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、かつ1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。他の例では、第1の多価アルコールは、1,3-ジオール(すなわち、鎖中の1番目と3番目の炭素の各々に結合した1つのヒドロキシル基を有するジオール)からなる。他の例では、第1の多価アルコールは、1,3-ポリオール(すなわち、2つを超えるペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコール、1級ヒドロキシル基は鎖中の1番目の炭素に結合され、他の1級ヒドロキシル基は鎖中の3番目の炭素に結合され、鎖中の2番目の炭素はヒドロキシル基がそれに結合されていない)からなる。他の例では、多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールからなる。さらに他の例では、多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールからなり、ヒドロキシル基の2つは炭素鎖の1位と3位にある(すなわち、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール)。重合可能な組成物は、少なくとも1つの親水性モノマー、重合の間に少なくとも1つの親水性モノマーを架橋して第1のポリマー成分を形成する少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む。眼科的に許容され得る酸は、第1のポリマー成分の一部として、第2のポリマー成分として、またはこれらの双方として、レンズ本体内の反応生成物に、また、そのレンズ表面に分配され得る。レンズ表面は、100o未満の前進接触角および/または5秒を超える水のブレイクアップ時間(WBUT)を有し、これらは少なくとも6時間の試験管内試験を受けた後に維持されている。眼科的に許容され得る酸は、シリコーンハイドロゲルレンズ配合物またはシリコーンを含まないハイドロゲルレンズ配合物において使用し得る。
【0006】
コンタクトレンズ本体を製造するために用いられる重合可能な組成物中に少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が含まれると、多価アルコール(ポリオール)、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル(-OH)基を有する1,3-ポリオールが付着され得る少なくとも表面を有するレンズ構造が得られることがわかった。眼科的に許容され得る酸が、少なくともレンズ本体の表面の湿潤部分に含むレンズ本体において化学的に、物理的に、あるいは化学的かつ物理的に固定され得るので、酸(または少なくとも一部、または有効部分)が典型的な製造、貯蔵、および/または装用状態の間に抽出されず洗い流されもしない(例えば、レンズが形成されるときに存在する酸の少なくとも90質量%が後に残る、例えば、90wt%〜100wt%、95wt%〜99.99wt%、97wt%〜99wt%、98wt%〜99wt%)。レンズ本体内と少なくともレンズ表面上に供給される比較的少量の眼科的に許容され得る酸でさえポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールと相互作用(例えば、グラフト、反応、結合、または付着)して、湿潤性表面を得るのに充分であることがわかった。固定された眼科的に許容され得る酸が、使用の間、レンズ本体内とそのレンズ表面に存在したままであるので、ポリオールもまた、湿潤溶液または水溶液からレンズを取り出した後とレンズの使用(装用)の間の長期間レンズ本体の少なくとも表面上に存在したままであり得る。コンタクトレンズは、長期間にわたって試験管内法に基づいて高レベルの湿潤性を示すことができる。これらのコンタクトレンズは、また、使用期間の後にポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールの溶液にレンズを浸漬することによって、例えば、室温で一晩浸漬することによって再充填され得る。さらに、本レンズ配合物によって製造されたコンタクトレンズは、有機溶媒、有機溶媒の水溶液、または水による抽出を必要としないが、このように抽出することができ、滅菌する前に、例えばオートクレーブ処理する前に水溶液または水中で水和することもできる。例えば、本明細書に記載されるコンタクトレンズをレンズ金型から分離し(脱レンズ)、中間の洗浄工程を必要とせずにコンタクトレンズパッケージに入れて、レンズ本体から抽出物を除去することができる。従つて、コンタクトレンズは、レンズパッケージ内の水性液中で提供され得る。水性液は、包装溶液でもよい。しかしながら、必要により、コンタクトレンズを洗浄した後にコンタクトレンズを包装溶液中に入れることができる。コンタクトレンズを包装溶液中に入れた後に、パッケージを閉鎖または密閉し、滅菌することができる。
【0007】
本明細書に記載されるコンタクトレンズの例は、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物からなるレンズ本体を含む。レンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在するポリオールは、ポリビニルアルコール、例えば少なくとも5つのヒドロキシル基を有するものであり得る。ポリビニルアルコールのようなポリオールで形成または処理または再充填される本ハイドロゲルレンズは、最大48時間以上良好な水和性を維持し得る。さらに、高分子量形態のポリビニルアルコール、例えば、約100,000ダルトン以上の質量平均分子量を有するものの使用が、低分子量ポリビニルアルコールを含有する以外はポリビニルアルコール溶液中に同じ濃縮で同じ時間入れた同じ配合物のレンズに比べて、高分子量ポリビニルアルコールを含有する溶液からレンズを取り出した後により長時間湿潤状態でレンズを維持することができることがわかった。
コンタクトレンズの他の例は、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および重合可能な組成物に添加されるときに眼科的に許容され得る無機酸または有機酸の重合可能な形態または重合された形態であり得る少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物からなるレンズ本体を含む。眼科的に許容され得る無機酸は、例えば、ボロン酸、リン酸、またはこれらの双方の重合可能な形態または重合された形態であり得る。
本コンタクトレンズは、また、コンタクトレンズパッケージで提供され得る。本開示によるコンタクトレンズは、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物から形成されるコンタクトレンズからなる。コンタクトレンズは、コンタクトレンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する、ポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールを有する。
【0008】
コンタクトレンズを製造する方法もまた、開示される。重合可能な組成物から形成されるコンタクトレンズを製造する方法の例は、反応性成分を含む重合可能な組成物の反応生成物であるレンズ本体を調製する工程を含む。反応性成分には、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が含まれる。方法は、さらに、レンズ本体を水溶液からの少なくとも1つのポリオール、少なくとも5つのヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールと接触させて、多価アルコールを少なくともレンズ表面に付着させる工程を含む。
本コンタクトレンズを用いる方法もまた、開示される。例として、コンタクトレンズのレンズ表面を再湿潤させる方法は、コンタクトレンズを少なくとも第2のポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有するポリオールと接触させる工程を含む。そのように接触したコンタクトレンズは、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物で予備成形される。予備形成されたレンズは、はじめは、コンタクトレンズ本体の少なくともレンズ表面上に存在する、少なくとも1つのポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有する第1のポリオールを有することができる。再湿潤性レンズは、有機酸、無機酸、またはこれらの双方であり得る少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸が配合されたものを含む。再湿潤処理によって、コンタクトレンズの少なくともレンズ表面がレンズ装用者、例えば、レンズ装用者の目にレンズを装用することによる使用後に再湿潤または“再充填”させることができ、これはレンズ製品の耐用年数をさらに延長することができる。再湿潤は、失われたポリオールを置き換えさらに/またはレンズの少なくとも表面にポリオールをさらに添加して、レンズの湿潤性および/または他の性質を改善することができる。
【0009】
本発明の他の例において、眼科的に許容され得る酸は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態を含む。この例において、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態は、重合反応生成物に(すなわち、レンズ本体のバルク内およびそのレンズ表面に)第2のポリマー成分として分配され得るか、重合可能な組成物の重合可能な成分として存在し得るか、または重合可能な組成物の重合可能な成分として存在しかつ反応生成物の第2のポリマー成分として分配される双方であり得る。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態が重合可能な形でありかつ重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物を重合してコポリマーを含む重合反応生成物を形成した後、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態はコポリマーの重合単位として存在する。重合可能な組成物がボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー; および少なくとも1つの架橋剤を含む場合には; 重合反応生成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの形態の重合単位から形成されるコポリマー; 親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含む。
【0010】
この例では、重合反応生成物であるレンズ本体は、レンズ本体の少なくとも表面上に、レンズ本体のバルク内に、レンズ本体の表面上とレンズ本体のバルク内双方に存在するボロン酸部分を含むことができる。一例において、ボロン酸部分は、レンズ本体を形成するために用いられるコポリマー中に存在し得る。
【0011】
ボロン酸部分を含むレンズ本体は、少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールを有することができる。すなわち、レンズ本体のボロン酸部分は、多価アルコールが少なくとも1つのレンズ表面上に存在するように多価アルコールの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分と錯体形成することができ、錯体形成レンズ本体が形成される。少なくとも1つの多価アルコールは、前述したように、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有することができるか、または5つより少ないヒドロキシル基を有することができる(すなわち、多価アルコールは、少なくとも2つのペンダントヒドロキシル基を有することができる)。前述したように、本例の多価アルコールは、少なくとも1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる(すなわち、多価アルコールは少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有し、少なくとも3つの炭素原子は鎖中に中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子として結合されており、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合されており、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている)。さらに、本例の多価アルコールは、少なくとも1つの1,2-ジオール部分を有するか、または1,2-ジオールと1,3-ジオール部分双方を有する多価アルコールを含むことができる。少なくとも1つの多価アルコールは、少なくとも1つのレンズ表面上に存在することができるかまたは双方のレンズ表面に存在することができる(すなわち、前側のレンズ表面と後側のレンズ表面上双方に存在する)。ある例において、少なくとも1つの多価アルコールは、レンズ本体のバルクにおいてだけでなくレンズ表面上に存在し得る。多価アルコールが少なくとも1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールである例において、多価アルコールの溶液中に存在する1,2-ジオールまたは1,3-ジオールの少なくとも一部は、レンズ本体に存在する少なくとも一部のボロン酸(例えば、ボロン酸部分はレンズ表面上に、レンズ本体のバルク内に、またはこれらの双方に存在する; ボロン酸部分はレンズ本体を形成するコポリマー中に存在する等)と錯体形成することができる。
【0012】
あるいは、この例では、レンズ本体内に存在するボロン酸は、多価アルコールの1,2または1,3部分と錯体形成され得ない。すなわち、重合反応生成物であるレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。方法の一具体例において、非錯体形成レンズ本体は1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールと接触させることができ、レンズ本体内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部は溶液中に存在する多価アルコールの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分の少なくとも一部と錯体形成することができ、錯体形成レンズ本体が形成される。
【0013】
例は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法を含むことができる。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法は: (i)(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む重合可能な組成物を準備する工程; および(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、コポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合反応生成物を形成する工程であって、コポリマーが、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含む工程であって; 非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程を含むことができる。
【0014】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、下記構造を有するボロン酸の重合可能な形態を含むことができる:
【化1】
【0015】
重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含むことができる。
【0016】
重合可能な組成物は、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。この例では、重合可能な組成物に重合可能なシリコーン含有化合物が存在することにより、コポリマー中にシリコーン含有化合物の重合単位が存在することになる。すなわち、コポリマーは、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーは、約5,000ダルトンより大きい平均分子量を有することができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、その主鎖に、その側鎖に、またはその主鎖とその側鎖の双方に少なくとも約15エチレンオキシド(EO)単位を有するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、存在するエチレンオキシド単位数と存在するジメチルシロキサン(DMS)単位数との比が約0.20〜約0.55であるシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0017】
本例において、レンズ本体を注型するために用いられるコンタクトレンズ金型アセンブリは、前側表面と後側表面を含む、成形表面を含むことができる。金型アセンブリの少なくとも1つの成形表面は、熱可塑性樹脂を含むことができる。
本例において、非錯体形成レンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。他の例において、非錯体形成レンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル〜約100バレルの酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0018】
本例のハイドロゲルレンズ本体を製造する方法において、方法は、さらに、レンズ本体(すなわち、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を、ブリスタ溶液を有するコンタクトレンズのブリスタパッケージに入れる工程、およびブリスタパッケージを密封滅菌し、それによって、レンズ本体と包装溶液を滅菌する工程を含むことができる。
【0019】
方法は、さらに、非錯体形成レンズ本体を錯化溶液と接触させる工程、および錯化溶液中に存在する1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。錯化溶液は、少なくとも1つの1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなり得る。錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方が水和された後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験される場合、本例の錯体形成レンズ本体は、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも10%小さい前進接触角を有することができる。
【0020】
本例は、また、ハイドロゲルレンズ本体に関する。ハイドロゲルレンズ本体は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得るコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応した重合可能な組成物の注型重合反応生成物を含み、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー、および少なくとも1つの架橋剤を含み; ハイドロゲルレンズ本体は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態のコポリマーの重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する。
【0021】
ハイドロゲルレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。ハイドロゲルレンズ本体は、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコールに存在する1,2または1,3-ジオール部分と錯体形成されているレンズ本体であり得る。すなわち、レンズ本体は錯体形成レンズ本体である。
【0022】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、リン酸緩衝食塩水に浸漬した水和レンズ本体を少なくとも6時間試験することによって求められるように、少なくとも1つの多価アルコールに存在する1,2または1,3-ジオール部分と錯体形成されたコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部を含まない同じ組成物のレンズ本体の前進接触角より少なくとも10%小さい前進接触角を有することができる。
【0023】
ハイドロゲルレンズ本体は、熱可塑性樹脂から形成される金型表面を使用して注型され得る。
【0024】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0025】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa〜約1.0MPaのモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0026】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル未満の酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0027】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPa〜約0.7MPaのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレル未満の酸素透過性、および約40%〜65%の平衡含水率を有することができる。
【0028】
上記の一般的説明および下記の詳細な説明双方が単に典型的かつ説明的であり、また、特許請求される本発明の説明をさらに説明するものであることを理解すべきである。
【0029】
本出願の一部に組み込まれかつそれを構成している添付の図面は、本発明の各実施態様を例示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】図1Aは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1B】図Bは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1C】図1Cは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図1D】図1Dは、眼科的に許容され得る酸(すなわち、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB))のポリマーを形成し、かつポリオール(すなわち、5つ以上のヒドロキシル基を有する1,3-ポリビニルアルコール)を酸のポリマーに結合することになる重合反応を例示する一連のスキームである。
【図2】図2は、眼科的に許容され得る酸によって製造されるハイドロゲルコンタクトレンズ製品の経時ポリビニルアルコールおよび酸を含まずに製造された対照レンズの蓄積取り込み量を示すグラフである。
【図3】図3は、眼科的に許容され得る酸によって製造されるハイドロゲルコンタクトレンズ製品の経時ポリビニルアルコールおよび酸を含まずに製造された対照レンズのレンズの取り込み量と放出量を示すグラフである。
【図4】図4は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第1の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図5】図5は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第2の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図6】図6は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第1の形態の取り込み量を示すグラフである。
【図7】図7は、眼科的に許容され得る酸の0単位部〜3単位部を含有する一連の疎水性配合物から製造されたレンズによるポリビニルアルコールの第2の形態の取り込み量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
新規なコンタクトレンズが開示される。コンタクトレンズは、少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含むことができる。コンタクトレンズは、必要により、コンタクトレンズの少なくとも表面またはその部分上に存在する湿潤剤または成分を有することができる。湿潤剤または湿潤成分は、レンズ本体の少なくとも一部と結合することによって、例えば、グラフト、化学結合、共有結合によって、または化学的付着または物理的付着またはこれらの双方の他の形態によってコンタクトレンズの少なくとも表面上またはその一部分に存在し得る。コンタクトレンズの表面上に付着する湿潤剤は、例えば、試験管内試験または他の試験に基づき、長期間にわたって、たとえば、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間(例えば、約12時間から72時間以上まで)、湿潤性を保持する。湿潤剤は、例えば、ヒドロキシルまたはヒドロキシ含有湿潤剤であり得る。湿潤剤は、例えば化学的付着によって、コンタクトレンズで少なくとも表面上に、例えば、1つ以上の湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分)を経由してまたは通って付着する能力を有する。単に例示的である、例えば、図1A、1B、1C、1Dに示されるように、酸の重合可能な形態が反応して、レンズ本体に存在する酸の重合形態を形成することができる。次に、重合酸を含むレンズ本体は、湿潤剤、例えばポリオール、例えば、少なくとも5つのヒドロキシル基を有し、ポリビニルアルコールの形態を含むポリオールと接触させることができる。いかなる特定の理論または作用機序によっても縛られることなく、レンズ本体と湿潤剤とを接触させることによりレンズ本体の少なくとも表面に結合している湿潤剤が得られ、レンズ本体を水和性にする。湿潤剤が少なくともレンズ表面上に湿潤剤リンカーの少なくとも一部、例えば、レンズの表面上に含むレンズ内に存在する眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分と化学結合によって結合することが可能である。
【0032】
さらに、本コンタクトレンズは、コンタクトレンズを湿潤剤にさらすことによって再湿潤または再充填され得る少なくとも1つのレンズ表面を含み、使用または他の理由によって失われることになる前に結合された湿潤剤の少なくとも一部を置き換えさらに/またはレンズ表面上に追加の湿潤剤を添加する最初の湿潤剤と同じかまたは異なってもよい。1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上等)の眼科的に許容され得る酸は、レンズ組成物の一部としてレンズに存在し得る。さらに、1つ以上の湿潤剤は、レンズ表面、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上等に結合することができる。
【0033】
本開示によれば、コンタクトレンズは、重合組成物を含み、ここで、重合組成物には少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸または少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸の単位が含まれる。コンタクトレンズは、必要により、重合組成物の少なくとも一部に結合される湿潤剤またはその部分またはその基を含んでもよい。湿潤剤は、少なくとも1つのポリオールである場合があり、湿潤剤は、利用できる眼科的に許容され得る酸またはその基またはその部分の少なくとも一部に結合され得る。眼科的に許容され得る酸、またはそれの少なくとも相当な部分は、重合組成物中に存在し、レンズ加工または装用の間に実質的に抽出されずまたは洗い流されない。
【0034】
湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、全レンズ組成物の全体に存在することができかつレンズ組成物の一部であり得る。選択として、湿潤剤リンカーの濃度は、レンズ本体の非表面部分と比較して表面で異なり得る。湿潤剤リンカーの濃度の種々の勾配がレンズ組成物の全体に存在し得ると、湿潤剤リンカーの濃度はレンズの全体に均一であるかまたはレンズの全体に均一でない。湿潤剤リンカーの濃度は、レンズの全体に実質的に均一である場合があり、これはレンズを形成する組成物中に湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸を添加しかつレンズの形成前に組成物の全体に均一に湿潤剤リンカーを分配することによって達成され得る。選択として、特定の時間後、レンズ組成物を形成するその他の反応性成分の1つ以上が添加された後またはレンズ組成物における1つ以上の位置で、例えば、レンズ表面でより濃縮された湿潤剤リンカーを有するように重合が開始されるとすぐに、湿潤剤リンカーが添加され得る。
【0035】
いくつかの例において、選択として、湿潤剤リンカーは、レンズ表面上のコーティングまたは層としてのみ存在せず、全体のレンズ組成物の一体部分であるので、レンズ組成物から形成されるレンズである。湿潤剤リンカーを含有することができるレンズ表面上の追加層を含むことが選択できるが、これが必要でないことは理解すべきであり、実際に、全体のレンズ組成物の部分および全体のレンズの部分として組み込まれる湿潤剤リンカーを有することによって、湿潤される能力を強化するために酸または他の湿潤リンカーの別々のコーティングまたは層を有することは必要ない。さらに、コーティングまたは層のみを用いる場合、このコーティングまたは層は、装用されかつ取り外しを受けるので、置き換える必要があるが、本コンタクトレンズにおいて、全体のレンズ組成物中およびその部分、つまり、レンズ内に湿潤剤リンカーが組み込まれることによって、このリンカーが除去されたりなくなったりすることはない。
【0036】
さらに、選択として、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の形成後の後処理として単独で存在しない。言い換えれば、本コンタクトレンズについては、湿潤剤リンカーは、すでに形成されたレンズ本体上の後処理のために存在しない。前述のように、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の部分であり、レンズ本体の部分のままである。例えば、湿潤剤リンカーは、コンタクトレンズを形成するために重合される重合可能な組成物の成分として供給することができる。
【0037】
さらに、選択として、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸、またはその少なくとも大部分は、アルコールまたはクロロホルムで抽出可能でなく、これは10wt%未満、または5wt%未満、または1wt%未満、または0.5wt%未満、または0.1wt%未満の湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸が抽出によって除去することができることを意味する。例えば、ある実施態様において、形成時にレンズ内に存在する0.001wt%〜0.3wt%の湿潤剤リンカーのみが抽出によって経時除去される。
【0038】
前述のように、湿潤剤リンカー、例えば、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の単体構造の部分またはそれの中の部分である。一例において、酸は、レンズ本体を形成するレンズ組成物の重合生成物として存在する。
【0039】
本コンタクトレンズのある実施態様において、コンタクトレンズは、少なくともレンズ表面から付着した湿潤剤の時間放出を伴う。時間放出は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間以上であり得る。湿潤剤の時間放出は、時間放出時間にわたって一定であることができるかまたは前倒しすることができ、より大きいパーセントが初期に時間とともに放出される。一定放出速度の場合、放出プロファイルは、測定時間の間、実質的に直線であるように見える。湿潤剤がより短時間により多量に放出される実施態様においては、比較的急勾配の第1のプロファイル部と比較的勾配のない第2のプロファイル部またはプラトー部を有する放出プロファイルが確認され得る。本レンズのいくつかの実施態様は、形状がS字形である放出プロファイルを有することができる。すなわち、比較的遅い放出速度、続いてより速い放出速度、その後比較的より遅い放出速度が続く特徴を有する。従つて、放出プロファイルは、単相、二相、三相であり得る。
【0040】
本コンタクトレンズの他の態様は、非浸出酸含有コンタクトレンズであって、眼科的に許容され得る酸がレンズを形成するレンズ組成物の部分であり、非浸出特性がアルコールまたは水溶液中で少なくとも6時間にわたってアルコールまたは水溶液によってレンズから相当量の酸を浸出することができずかつ本明細書に記載される酸抽出可能含量が低いことについてのことである、前記コンタクトレンズに関する。一例において、眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る酸の重合可能な形態であり得る。レンズを形成する組成物の一部として含まれる場合、オフタルミン酸の重合可能な形態はレンズ本体の一部として重合させることができるので、重合レンズ本体内に本質的にまたは完全に結合することができ、レンズの硬化の間に形成されるポリマー結合を破壊することによってのみ除去され得る。
【0041】
一例において、湿潤剤リンカー、例えば眼科的に許容され得る酸は、レンズを形成する組成物、例えば、レンズを形成する重合組成物の一部であり、少なくとも1つのポリマー(例えば、少なくとも1つの親水性ポリマー、少なくとも1つの疎水性ポリマー、またはこれらの組み合わせ); 必要により少なくとも1つの架橋剤; 必要により少なくとも1つの開始剤; 必要により少なくとも1つの色味剤; 必要により少なくとも1つのUV遮断剤が含まれるが、これらに限定されないコンタクトレンズ、例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズに見られる1つ以上の従来の成分と存在することができ、ここで、重合組成物中に存在するポリマーはホモポリマー、コポリマー、相互侵入網目高分子(IPN)、ブロックポリマー、および/またはポリマーの他の形態であり得る。少なくとも1つのポリマーから形成される重合組成物の説明は、1つ以上のモノマー、例えば、1つ以上の親水性モノマー、1つ以上の疎水性モノマー、これらの組み合わせ等から形成され得るポリマーであることを理解すべきである。また、本明細書に記載される組成物から形成されるコンタクトレンズについては前側表面と後側表面を有するレンズ本体であり、後側表面がコンタクトレンズ装用者の眼の角膜と接触して配置されるように構成されると理解されるべきである。本発明のレンズ本体は、完全に透明であり得る。あるいは、コンタクトレンズがコンタクトレンズ装用者の虹彩の外観を変えるように構成される美容用レンズである場合、レンズ本体は眼の虹彩にかぶせるのに必要な大きさにされる美容用の部分によって外接される透明な視覚ゾーンを含むことができる。透明なレンズには、また、レンズに色を付けるためにハンドリングチントが含まれてもよい。
【0042】
一例として、延長されかつ再充填可能な湿潤性コンタクトレンズは、少なくとも表面が少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する第1の1,3-ポリオールで処理して、ポリオールをレンズに付着させる、少なくとも表面を含む、少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物を含むレンズ本体を備えている。眼科的に許容され得る酸は、そのレンズ表面で若干のさらされることを含むレンズ本体内の反応生成物に分配される。前側表面と後側表面を有する、レンズ本体の眼科的に許容され得る酸は、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオールと反応して、ポリオールを少なくともレンズ表面に結合させる。レンズ表面が処理された得られたレンズ本体は、良好な湿潤性を有し、例えば、100o未満の前進接触角および/または5秒を超える水のブレイクアップ時間(WBUT)によって示すことができ、これらは少なくとも6時間の間の試験管内試験後に維持される。装用された場合の本コンタクトレンズは、上皮組織または他の眼組織と接触している。本コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、または 軟らかい周辺部分が外接した剛性の中央部分からなるまたはハイブリッドコンタクトレンズであり得る。本明細書に用いられるソフトコンタクトレンズは、レンズ装用者の眼の角膜の形状に合致することができ、さもなければ破壊せずにそれ自体折りたたむことができるコンタクトレンズである。ハードコンタクトレンズは、破壊せずにそれ自体折りたたむことができないコンタクトレンズである。ソフトコンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ、すなわち、水を平衡状態で保持することができるコンタクトレンズであり得る。ハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンを含まないハイドロゲルコンタクトレンズまたはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであり得る。本コンタクトレンズの他の特徴および例は、下記の項に記載されている。
【0043】
本コンタクトレンズの例において、コンタクトレンズは、視力矯正を与え、視力を高めるか、または視力矯正を与えかつ視力を高めるように構成される少なくとも1つの視覚ゾーンを有するレンズである。例えば、視覚ゾーンは、球状補正、円環状補正、または三次以上の補正を与えるように構成され得る。視覚ゾーンは、近い視距離で、遠い視距離で、または近い視距離と遠い視距離双方で視力を高めるように構成され得る。本コンタクトレンズは、例えば、近視または遠視を補正するための、球状コンタクトレンズ; 例えば、乱視を補正するための、円環状コンタクトレンズ; 1つ以上の屈折力を与えるための多焦点コンタクトレンズ、例えば、二重焦点コンタクトレンズ、三焦点コンタクトレンズ等であり得る。
【0044】
組成物中またはコンタクトレンズ内に存在する眼科的に許容され得る酸は、選択として中和され得る(例えば、部分的にまたはさまざまな程度まで)。眼科的に許容され得る酸を含有する全体の組成物のpHは、制御または調整されて、多価アルコールに最適な結合pHを達成し、これは、存在する酸化学種のpKaより高いかまたは同じかまたは低いことができる。
【0045】
選択として、眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ本体は、まず、高温で、例えば50〜80℃以上で処理および/または再充填することができ、レンズ本体を処理および/または再充填する時間の量を有利に短縮するので、より急速におよび/またはより効果的に湿潤剤をレンズ表面上に配置することができる。
【0046】
多価アルコールを含有する点滴剤または同じ多価アルコールが少なくとも一部のレンズを再充填するために使用し得る。レンズが眼の上にある場合または眼にない場合、湿潤点滴剤をはレンズに導入することができる。これは、レンズの前側表面の再充填に特に有効である。
【0047】
(定義) 本説明および特許請求の範囲に関連して、後述する定義に従って以下の用語法が用いられる。
本明細書に用いられる用語“ハイドロゲル”は、ポリマー材料、水中で膨潤することができるかまたは水で膨潤することになる、典型的にはポリマー鎖の網目構造または基質を意味する。ハイドロゲルは、また、水を平衡状態で保持する材料であると理解することができる。網目構造または基質は、架橋されてもよく架橋されなくてもよい。ハイドロゲルは、水膨潤可能であるかまたは水膨潤されたコンタクトレンズを含むポリマー材料を意味する。従つて、ハイドロゲルは、(i)非水和性かつ水膨潤可能であってもよく、(ii)部分的に水和されかつ水で膨潤されてもよく、(iii)完全に水和されかつ水で膨潤されてもよい。ハイドロゲルは、シリコーンハイドロゲル、シリコーンを含まないハイドロゲル、または本質的にシリコーンを含まないハイドロゲルであり得る。
【0048】
用語“シリコーンハイドロゲル”または“シリコーンハイドロゲル材料”は、ケイ素(Si)含有成分またはシリコーン含有成分を含む特定のハイドロゲルを意味する。例えば、シリコーンハイドロゲルは、典型的には、ケイ素含有材料と従来の親水性ハイドロゲル前駆体とを組み合わせることによって調製される。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンハイドロゲル材料を含む、視力矯正コンタクトレンズを含む、コンタクトレンズである。
【0049】
“シリコーン含有成分”は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーにおいて、少なくとも1つの[-Si-O-Si-]結合を含有する成分であり、ここで、各ケイ素原子は、必要により、同じでも異なってもよい1つ以上の有機基の置換基(R1、R2)または置換された有機基の置換基、例えば、-SiR1R2O-を有してもよい。
【0050】
“本質的にシリコーンを含まないハイドロゲル”は、0.1%(w/w)未満のシリコーン含有成分を含有するハイドロゲルを意味する。
【0051】
本明細書に用いられる用語“リンカー”は、連続部分、例えば、ポリマー末端や反復単位のブロックを結合するために用いられる原子または原子の集まりを意味する。リンカー部分は、加水分解的に安定であってもよく、生理的に加水分解可能なまたは酵素学的に分解可能な結合を含んでもよい。リンカーは、加水分解的に安定であり得る。
【0052】
用語“長さ”は、例えば、長さが2〜50個の原子の範囲にある特定の原子長を有するリンカーの集まりの原子に関しては、置換基に関係なく、原子の集まりの最も長い鎖における原子数に基づく。例えば、-CH2CH2-は、各メチレン基自体が合計3つの原子を含有するとしても、水素原子が炭素上の置換基でありかつ鎖の全長を概算する点で考慮されないので、2つの炭素原子の長さを有するとみなされる。リンカー、-O-C(O)-CH2CH2C(O)NH-は、同様に、6つの原子の鎖長を有するとみなされる。
【0053】
“ポリビニルアルコール”または“ポリ(ビニルアルコール)”(“PVOH”と略記する)は、一般構造[-CH2-CH(OH)-]m(ここで、mは、1以上の値である)からなるポリマーの名称である。用語“ポリビニルアルコール”は、また、そのままのPVOHの1つ以上のペンダントヒドロキシル基を有する他の分子構造に結合される官能基としてのPVOHを意味することができる。PVOHと眼科的に許容され得る酸の相互作用に関連する“結合”は、特に明記しない限り、グラフト、錯体、結合(化学結合または水素)のいずれか、または付着を意味することができる。PVOH結合は、また、“半永久的”であることができ、例えば、必要により、使用の間、酸から結合したPVOHの緩慢な放出を可能にしてもよく、レンズ装用の間の快適性を高めることになる。
【0054】
本明細書に記載されるポリマーに関連して“分子質量”は、ポリマー(典型的には、サイズ排除クロマトグラフィ、光散乱技術、または1,2,4-トリクロロベンゼンにおける固有速度定量によって求められる、適度な平均分子質量を意味する。ポリマーに関連した分子量は、数平均分子量または質量平均分子量として表すことができ、ベンダー供給材料の場合には、供給元に左右される。典型的には、このような分子量測定の根拠は、包装材料に示されていないとしても、供給元によって容易に示され得る。典型的には、本明細書にマクロマーまたはポリマーの分子量について本明細書に述べることは、質量平均分子量にもあてはまる。双方の分子量測定、数平均と質量平均は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーまたは他の液体クロマトグラフィ技術を用いて測定することができる。分子量値を測定するための他の方法、例えば、数平均分子量を求めるために末端基分析の使用または束一性(例えば、凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定、または質量平均分子量を求めるために光散乱法、超遠心分離法または粘度測定法の使用も用いることができる。
【0055】
親水性ポリマーの“網目構造”または“マトリックス”は、典型的には、架橋がポリマー鎖間で共有結合によってまたは物理的結合、例えば水素結合によって形成されることを意味する。網目構造は、2つ以上のポリマー成分を含むことができ、1つのポリマーが第2のポリマーと物理的に絡み合っていると、これらの間の共有結合はあるとしてもわずかであるが、網目構造を破壊せずに相互に分離することができない、相互侵入網目構造高分子(IPN)を含むことができる。
【0056】
“親水性”物質は、好水性であるかまたは水に対して親水性を有するものである。親水性化合物は、水に親水性であり、通常は、荷電されるかまたは水を引きつける極性部分または基を有する。
【0057】
本明細書に用いられる“親水性ポリマー”は、水に対する親和性を有しかつ水を吸収することができるポリマーとして定義される。親水性ポリマーが、必ずしも水に可溶性ではない。
【0058】
“親水性成分”は、ポリマーでもよくポリマーでなくてもよい親水性物質である。親水性成分には、残りの反応性成分と組み合わせた場合、水和レンズに少なくとも約20%(w/w)、例えば、少なくとも約25%(w/w)の水分を与えることができるものが含まれる。親水性成分は、親水性モノマー、親水性マクロマー、親水性プレポリマー、親水性ポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。親水性マクロマー、親水性プレポリマー、および親水性ポリマーは、また、親水性部分と疎水性部分を有すると理解され得る。典型的には、親水性部分と疎水性部分は、マクロマー、プレポリマー、またはポリマーが親水性であるような相対量で存在する。
【0059】
“モノマー”は、重合可能である、比較的低分子量の化合物、例えば、約700ダルトン未満の平均分子量を有する化合物を意味する。一例において、モノマーは、他の分子と組み合わせて、ポリマーを形成するために重合することができる1つ以上の官能基を含有する分子の単一単位を含むことができ、その他の分子は、モノマーと同じかまたは異なる構造を有する。
【0060】
“マクロマー”は、更に重合が可能な1つ以上の官能基を含有することができる中分子量および高分子量の化合物またはポリマーを意味する。例えば、マクロマーは、約700ダルトンと約2,000ダルトンの間の平均分子量を有する化合物であり得る。
【0061】
“プレポリマー”は、重合性または架橋性の高分子量化合物を意味する。一例において、プレポリマーが一緒に結合した一連のモノマーまたはマクロマーであり得ると、全体の分子が重合性または架橋性のままである。例えば、プレポリマーは、約2,000ダルトンより大きい平均分子量を有する化合物であり得る。
【0062】
“ポリマー”は、1つ以上のモノマー、マクロマーまたはプレポリマーを重合することによって形成される材料を意味する。本明細書に用いられるポリマーは、重合されることが可能でなく、他のポリマー、例えば、重合可能な組成物中にまたはモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの反応の間に存在する他のポリマーに架橋されて、重合可能な組成物中の他のポリマーを形成する分子を意味すると理解される。
【0063】
“相互侵入網目構造高分子”または“IPN”は、網目構造形態における、2つ以上のポリマーの組み合わせを意味し、少なくとも一方がこれらの間に共有結合を含まずにもう一方の存在下で合成および/または架橋されている。IPNは、並んでまたは相互侵入していること以外は、2つの別々の網目構造を形成している2種類の鎖から構成され得る。IPNの例としては、連続IPN、同時IPN、セミIPNおよびホモIPNが挙げられる。
【0064】
“疑IPN”は、異なるポリマーの少なくとも1つが架橋され、少なくとも1つの他のポリマーが架橋されていない(例えば、線状または枝分かれ)であるポリマー反応生成物を意味し、ここで、架橋されていないポリマーが分子規模で架橋ポリマー内に分配されかつそれによって保持されると、架橋されていないポリマーは網目構造から実質的に抽出できない。
【0065】
“ポリマー混合物”は、異なるポリマーが実質的に架橋せずに共に線状または枝分かれであるポリマー反応生成物を意味し、ここで、得られたポリマーブレンドは分子規模でポリマー混合物である。
【0066】
“グラフトポリマー”は、主鎖と異なるホモポリマーまたはコポリマーを含む側鎖を有する枝分かれポリマーを意味する。
【0067】
“結合”は、特に明記しない限り、充填結合、グラフト、錯体、結合(化学結合または水素)のいずれか、または付着を意味することができる。
【0068】
本明細書に用いられる“眼科的に許容され得るレンズ形成成分”は、眼刺激等を含むレンズ装用者が相当な不快を受けるかまたは報告せずにハイドロゲルコンタクトレンズに組み込むことができるレンズ形成成分を意味する。眼科的に許容され得るハイドロゲルコンタクトレンズは、眼科的に許容され得る表面湿潤性を有し、典型的には著しい角膜膨潤、角膜脱水(“ドライアイ”)、上部角膜上皮弓状病変(“SEAL”)、または他の著しい不快の原因とならずまたはこれらを伴わない。
【0069】
追加の定義は、以下の項でも見出だすことができる。
【0070】
(レンズ製剤) ハイドロゲルは、本コンタクトレンズに用いられる材料の一種を表す。ハイドロゲルは、水を平衡状態で含有する水和された架橋ポリマー系からなる。したがって、ハイドロゲルは、1つ以上の親水性モノマーから調製されるコポリマーである。親水性モノマーは、架橋剤で架橋可能である。
【0071】
コンタクトレンズは、一般的には、シリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まない(または本質的にシリコーンを含まない)ハイドロゲルのレンズ材料を含むハイドロゲルコンタクトレンズに関係し得る。ハイドロゲルコンタクトレンズは、本発明のために共通したいくつかの特徴を有する。これらの特徴には、例えば、少なくとも1つの親水性モノマー、親水性モノマーを重合の間に架橋して、第1のポリマー成分を形成する少なくとも1つの架橋剤、および少なくとも1つの眼科的に許容され得る酸を含む重合可能な組成物の反応生成物を含むコンタクトレンズのレンズ本体が含まれる。眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体内の反応生成物中とそのレンズ表面にポリマー成分としてポリマーまたはマクロマーの形態で分配され得る。例えば、さらに、重合された組成物のレンズ本体は、さらに少なくとも1つのポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを少なくとも備えている。ポリオールは、眼科的に許容され得る酸によってレンズ本体の少なくともレンズ表面に付着されるかまたはそれの上に存在する。
【0072】
(親水性モノマー) 親水性モノマーは、例えば、親水性部分を有するシリコーン含有モノマー、シリコーンを含まない親水性モノマー、またはこれらの組み合わせであることができ、これは眼科的に許容され得る酸と適合する。親水性モノマーは、疎水性モノマーと組み合わせて使用し得る。親水性モノマーは、親水性と疎水性双方の一部または部分を有するモノマーであることができる。重合可能なレンズ組成物に用いられる親水性モノマーのタイプと量は、用いられる他のレンズ形成モノマーのタイプによって変動することができる。シリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まないハイドロゲルに用いられる親水性モノマーに関して本明細書に限定されない例が示される。
【0073】
(架橋剤) ハイドロゲルを調製するのに用いられるモノマー、マクロマーまたはこれらの双方のための架橋剤は、当該技術において既知であるものを含むことができ、架橋剤の例は、本明細書にも示される。適切な架橋剤としては、例えば、ジアクリレート(またはジビニルエーテル)官能基化エチレンオキシドオリゴマーまたはモノマー、例えば、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、およびトリメチレングリコールジメタクリレート(TMGDMA)が挙げられる。典型的には、架橋剤は、重合可能なシリコーンハイドロゲル組成物中に重合可能な組成物中比較的少ない合計量で、例えば、重合可能な組成物の約0.1質量%(w/w)から約10質量%(w/w)まで、または約0.5質量%(w/w)から約5質量%(w/w)まで、または約0.75質量%(w/w)から約1.5質量%(w/w)までの範囲にある量で存在する。
【0074】
(眼科的に許容され得る酸) 上述したように、眼科的に許容され得る酸は、レンズ本体の表面に少なくとも湿潤部分を含む、レンズ本体に、化学的に、物理的に、または化学的と物理的に固定されることができる酸である。重合したレンズ本体に存在する酸(または少なくとも一部、または有効部分)は、典型的な製造、貯蔵および/または装用状態の間に抽出または洗い流されない(例えば、レンズが形成される場合に存在する少なくとも90質量%の酸がその後に残存する、例えば90wt%から100wt%、95wt%から99.99wt%まで、97wt%から99wt%まで、または98wt%から99wt%まで)。
【0075】
一例において、眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る酸部分だけでなく、重合したコンタクトレンズ本体を作製するために用いられる条件下で他の分子と組み合わせるために重合させることができる少なくとも1つの官能基を含むモノマー、マクロマー、またはプレポリマーを含む、重合可能な酸である。他の例では、眼科的に許容され得る酸は、反応生成物を形成する重合可能な組成物の重合の間に重合可能な組成物中の他の成分と架橋することができるポリマーである。眼科的に許容され得る酸から供給される重合可能な組成物の成分はは、反応生成物(例えば、レンズ本体)を形成する重合可能な混合物に導入される予備成形ポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーであることができ、これは重合の後に反応生成物の中に分配され得る。他の例では、眼科的に許容され得る酸は、反応生成物の他のポリマー成分によって物理的に固定される眼科的に許容され得る酸のポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーとして反応生成物中に分配され得る。眼科的に許容され得る酸のポリマー、プレポリマー、マクロマーまたはモノマーの物理的固定は、IPN、擬IPNまたはポリマー混合物、またはこれらの組み合わせとしてあり得る。眼科的に許容され得る酸から供給される重合可能な組成物の成分は、レンズ本体の反応生成物の形成においてその場で形成することができる。眼科的に許容され得る酸は、例えば、重合可能な組成物中の他の重合可能な成分と共重合またはグラフトすることができる。
【0076】
眼科的に許容され得る酸は、眼科的に許容され得る無機酸または眼科的に許容され得る有機酸の重合可能な形体であり得る。眼科的に許容され得る無機酸は、例えば、ボロン酸またはリン酸の形態であることができ、その重合可能な形態および重合された形態が含まれる。ボロン酸は、例えば、ビニルフェニルボロン酸、その誘導体であり得る。ビニルフェニルボロン酸は、例えば、2-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸MIDAエステル、(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、2-(メタクリルアミド)フェニルボロン酸ピナコールエステル、または3-アクリルアミドアクリルアミドフェニルボロン酸、これらの組み合わせであり得る。ビニルフェニルボロン酸は、例えば、下記の構造(1)を有することができる:
【化2】
【0077】
用いることができる他のボロン酸としては、例えば、米国特許出願公開第2007/0030443号明細書、同第2007/0116740号明細書および同第2008/0151180号明細書に記載されているものが挙げられ、これらの明細書の記載は、全体として本願明細書に組み込まれるものとする。
【0078】
眼科的に受け入れられる有機酸は、例えば、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタール酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(+)、ショウノウ-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(dL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(dL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、ウンデシレン酸、上記の酸の1つの重合可能な形態、これらの組み合わせであり得る。
【0079】
眼科的に許容され得る酸がVPBでありかつ多価アルコールがPVOHである例において、充分なPVOHまたは他の多価アルコールを付着させて水和表面を得るレンズ表面を得るために、比較的少ないVPB量が重合可能なレンズ組成物に使用し得る。眼科的に許容され得る酸は、例えば、重合可能なレンズ組成物中だけでなく、レンズ表面上に、全レンズ配合物質量に基づき、約0.01%(w/w)から約10%(w/w)まで、または約0.05%から約5%(w/w)まで、または0.1%(w/w)から約0.5%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から0.3%(w/w)までの量で、または他の量で使用し得る。
【0080】
(多価アルコール) レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールであることができ、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合された右側の炭素原子として鎖内に結合され、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合され、ここで、1級ヒドロキシル基は右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基は中心の炭素原子には結合されず、1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。例えば、多価アルコールがジオールである場合にはジオールではなく、ここで、2つのヒドロキシル基は同一炭素原子上にある(すなわち、ジオールは、ジェミナルジオール、例えば、1,1-ジオールではない)。他の例では、多価アルコールはジオールではなく、ここで、2つのヒドロキシル基は隣接の炭素原子に結合される(すなわち、ジオールは、ビシナルジオール、例えば、1,2-オールではない)。他の例では、第1の多価アルコールは、ジオールを含み、ここで、2つのヒドロキシル基は少なくとも3つの炭素原子の主鎖に位置決めされており、少なくとも3つの炭素原子の3つが中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子と左側の炭素原子に結合した中心の炭素原子を含む3つの炭素原子の鎖であると、1つのヒドロキシル基が右側の炭素に結合されており、中心の炭素原子はそれに結合されたヒドロキシル基を有さず、第2のヒドロキシル基は鎖の左側の炭素に結合されている(すなわち、ジオールは、1,3-ジオールである)。
【0081】
他の例では、第1の多価アルコールは、2つを超えるペンダントヒドロキシル基が主鎖に結合した3つを超える原子の主鎖を有するポリオールを含むことができ、ここで、主鎖の3つの炭素原子は、中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子および左側の炭素原子に結合した中心の炭素原子からなる3つの炭素原子の鎖からなり、ここで、追加の原子は、3つの炭素原子の鎖の前か後の主鎖に存在することができ、ここで、3つの炭素原子の鎖が3つの炭素に結合した2つを超えるペンダントヒドロキシル基の2つだけを有すると、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子に結合し、ヒドロキシル基は中心の炭素原子に結合されず、第2の1級ヒドロキシル基は左側の炭素原子に結合されている。例えば、多価アルコールは、1,3-ポリオール、2,4-ポリオール、3,5-ポリオール等であり得る。他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する2,4-ポリオール、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する3,5-ポリオール等を含む。他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含み、ここで、ポリオールは、3つを超える炭素原子の主鎖を有し、1級ヒドロキシル基は、鎖中の第1の炭素に結合され、ヒドロキシル基は、鎖中の第2の炭素原子に結合されず、他の1級ヒドロキシル基は、鎖中の第3の炭素原子に結合され、残りの少なくとも2つのヒドロキシル基は、主鎖の第4の炭素の後の主鎖の原子に結合される(例えば、主鎖の第5、第6、第7の原子等)。さらに他の例では、第1の多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基に結合される3つを超える炭素原子の主鎖を有するポリオールを含み、ここで、少なくとも2つのヒドロキシル基が3つを超える炭素原子の鎖上に位置決めされると、一連の1級ヒドロキシル基を有する左側の炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない右側の炭素原子が反復している。このタイプの多価アルコールの例としては、1,3,5-ポリオール、2,4,6-ポリオール等が挙げられる。
【0082】
レンズ本体の少なくとも表面に供給される多価アルコールは、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり得る。一例において、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり、ここで、ペンダントヒドロキシル基の2つは、鎖中の第1と第3の炭素に結合されている(すなわち、多価アルコールは、3位の後の鎖に、例えば、9つ以上の炭素鎖については、5位、7位および9位等に結合された少なくとも3つの追加のヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールである)。
【0083】
さらに他の例において、レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも2つが3つを超える炭素原子の鎖に位置決めされると、各々1つのヒドロキシル基が2つの炭素に結合した2つの炭素の間の1つの炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素原子がある。例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、炭素鎖の第2と第4の炭素に結合した第1の2つのヒドロキシル基を有することができる、残りの少なくとも3つのヒドロキシル基は、第5の炭素、第6の炭素、第7の炭素等に結合されている。多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも5つが炭素鎖に沿ってどこかに結合されると、1つの炭素に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素が1つの炭素に結合した1つのヒドロキシル基を有する各炭素の間に存在している。多価アルコールは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであることができ、ここで、ヒドロキシル基の少なくとも2つが3つを超える炭素原子の鎖に位置決めされると、1つの炭素原子に結合したヒドロキシル基を含まない1つの炭素原子があり、炭素原子が2つの炭素原子の間に位置決めされ、2つの炭素原子の各々が2つの炭素原子に結合した1つのヒドロキシル基を有し、ここで、残りの3つのヒドロキシル基のいずれも、相互におよび第1の2つのヒドロキシル基双方に対してジェミナル位置にまたはビシナル位置にある。
【0084】
レンズ本体の少なくとも表面上に供給される多価アルコールは、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコール、例えば、少なくとも5、または6、または7、または8、または9、または10、または11以上のペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールであり得る。ヒドロキシル基の示された数は、レンズ本体において眼科的に許容され得る酸に結合される多価アルコール中に存在するヒドロキシル基を意味する。少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、少なくとも10,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、または少なくとも125,000(例えば、約10,000から約500,000まで、約50,000から約300,000まで、または約50,000から約200,000まで)の質量平均分子量を有することができる。
【0085】
少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、ポリビニルアルコールの形態であり得る。ポリビニルアルコールは、約4,000から約300,000ダルトンまでの範囲、または約60,000から約210,000ダルトンまでの範囲、または約80,000から約150,000ダルトン以上までの範囲、または約120,000から約210,000ダルトンまでの範囲、または約140,000から約190,000ダルトンまでの範囲にある質量平均分子量を有することができる。ポリビニルアルコールは、例えば、少なくとも50%(モル%)、少なくとも88%(モル%)または少なくとも98%加水分解(モル%)(例えば、50%〜99.9%、70%〜99%、75%〜99.5%(モル%))の程度まで加水分解され得る。20℃の水中の4%溶液の落球法を用いて求めたように、例えば、約50センチポアズから約70センチポアズまでの粘度を有するポリビニルアルコールの少なくとも1つの形態が使用し得る。
【0086】
ポリビニルアルコールは、典型的には、ビニルアルコールと異なり安定である、酢酸ビニルの重合によって製造される。得られたポリ酸酢ビニルは、次に、アルコール分解を受ける。ポリビニルアルコールの技術的特性が第一にモル質量およびアセチル含量に依存するので、工業製造プロセスはこれらのパラメータに対する正確な厳守を確実にするように設計されている。一般に、酸酢ビニルを部分的または完全に加水分解してアセテート基を除去することによってポリビニルアルコールが調製されるので、一般に、ポリビニルアルコールは、最終PVOH生成物(すなわち、部分的に加水分解されたタイプと完全に加水分解されたタイプにおいて達成された加水分解レベルに基づいて、2つのタイプに分けられ、ポリ酸酢ビニルがポリビニルアルコールに加水分解された後の分子内に残る残基のアセテート基のモルパーセント(モル%)に左右される。
【0087】
多価アルコール成分は、2つ以上の多価アルコールの混合物を含むことができる。混合物は、2つ以上のタイプの多価アルコール、例えば、ポリビニルアルコールと異なる多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、異なる平均分子量、例えば、約100,000ダルトンの平均分子量を有するポリビニルアルコールと約200,000ダルトンの平均分子量を有するポリビニルアルコールを有する同一タイプの2つ以上の多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、異なる粘度を有する2つ以上の多価アルコールの混合物であり得る。混合物は、加水分解レベルが異なる2つ以上の多価アルコールの混合物、例えば、加水分解レベルが89%のポリビニルアルコールと加水分解レベルが98%のポリビニルアルコールであり得る。2つ上の多価アルコールの混合物が2つの多価アルコールの混合物である場合、2つの多価アルコールは、約95:5(w:w)、約90:10(w:w)、約80:20(w:w)、約70:30(w:w)、約60:40(w:w)、または約50:50(w:w)の比で存在することができる。
【0088】
実施において水が一般にPVOHに用いられる溶媒であるが、多くの他の適切な溶媒または溶媒混合物が存在する。溶液が水以外の溶媒を除くことがあり得るが、他の溶媒が水の代わりに、またはそれと共に用いることができることが理解される。例えば、溶媒は緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)であることができ、30mM PBSが含まれる。PVOH溶液は、コンタクトレンズを湿潤するかまたは浸漬するために本発明において用いることができ、約0.01(w/w)から約15%(w/w)まで、または約0.05%(w/w)から約5%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から約3%(w/w)までのPVOH濃度を有することができる。PVOH溶液の例は、少なくとも0.05%(w/w)PVOHを有する水溶液または食塩水である。PVA溶液の他の例は、Kuraray(ヒューストン、テキサス州、米国)から市販されている、約0.25(w/w)〜約1%(wt/wt)のMOLWIOL 40-88 PVAの水溶液である。他のPVOH濃度が適切であってもよい。しかしながら、最適濃度がPVOHグレード、PVOHの分子量、またはこれらの双方に左右されることが認識される。その濃度は、日常的な試験による当業者によって明らかであるかまたは容易に決定可能である。
【0089】
一例において、PVOH溶液は、ホウ酸を含むことができる。ホウ酸が存在すると、PVOHをゲルにさせ、それによって、溶液の粘度が増加する。いかなる理論によっても縛られないが、溶液中にホウ酸を含むと、PVOHをそれ自体に少なくとも部分的に架橋させさせることができるので、レンズに付着させることができるPVOHの“層”の厚みを増加させることを可能にすると考えられる。さらに、架橋されたPVOHがレンズ表面からレンズのバルクに架橋されていないPVOHと比較してより少ない程度に移動すると考えられる。レンズ配合物および表面処理のために用いられるPVOHの形態によっては、レンズ表面からレンズのバルクへのPVOHの移動により、レンズ本体のいくつか特性、例えば、モジュラスや引張強さ、また、レンズ形状の変化が生じ得る。PVOHの単一“ストランド”をレンズに付着させる代わりに、少なくとも部分的に架橋されたPVOHの複数の“ストランド”をレンズに付着させることができるので、レンズ上のPVOH層の“深さ”を増加させ、より大きな架橋PVOHのためにレンズ本体に移動するのがより困難になる。例えば、ホウ酸は、0.0005%(w/w)と1%(w/w)の間または約0.01%(w/w)と約0.2%(w/w)の間の濃度でPVOHの溶液中に含むことができる。
【0090】
他の例では、PVOH溶液は、第2のポリマーを含むことができる。第2のポリマーには、例えば、ポリビニルピロリドンの形態、ホスホリルコリンのポリマー形態、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC、HEMA-PC)、またはヒドロキシルプロピルメチルセルロース(HPMC)のポリマー形態を含むことができる。PVOHと第2のポリマーを混合することにより、絡み合っている2つのポリマーを得ることができる。PVOHと第2のポリマー溶液を加熱して、絡み合いのレベルを高めることができる。第2のポリマーがPVOHと絡み合っているので、溶液が眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ本体の少なくとも表面を処理するために用いる場合、PVOHがオフタルミン酸に結合する場合、絡み合った第2のポリマーも同様に結合される。
【0091】
図1A、図1B、図1Cおよび図1Dは、眼科的に許容され得る酸を含有する表面上のポリオールの層の形成の限定されないスキームであり、ここで、5つ以上のヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールは4-ビニルフェニルボロン酸(VPB)のポリマーに結合されている。図1Aに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の形態が反応して、重合した反応生成物、例えば、コンタクトレンズ本体を形成する。ボロン酸基がレンズ本体の表面上に存在したレンズ本体が示されている。ボロン酸は、重合的に結合され得るので、レンズ本体のポリマーマトリックスの一部であり得る。あるいは、ボロン酸はレンズ本体を形成するために反応するモノマーミックスに分散させる非重合可能な形態であることができ、それによって、分散した酸が重合したレンズ本体にトラップされる。次に、レンズ本体をポリオール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Aに示されるように、PVOH分子は、次にレンズ本体の少なくとも表面上のボロン酸基に結合される。
【0092】
図1Bに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形態を反応させて、反応生成物中の酸のホモポリマーから構成されるレンズ本体を形成させる。次に、レンズ本体を少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Bに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖がレンズ本体の少なくとも表面上のホモポリマーの部分に結合される。
【0093】
図1Cに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形態は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)と反応して、酸とDMAのコポリマーから構成されたレンズ本体を形成する。次に、レンズ本体を少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Cに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖がレンズ本体の少なくとも表面上のコポリマーの部分に結合される。
【0094】
図1Dに示されるように、ビニルフェニルボロン酸の重合可能な形をDMAおよびエチレングリコールメチルエチルメタクリレート(EGMA)と反応させて、酸、DMA、EGMAのコポリマーから構成されるレンズ本体を形成する。次に、レンズ本体を、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリビニルアルコールを含有する溶液と接触させる。図1Dに示されるように、次に、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するPVOH鎖が、レンズ本体の少なくとも表面上のコポリマーの部分に結合される。
【0095】
一例において、レンズ本体は、ポリオールを含有する溶液中でオートクレーブ処理することができる。オートクレーブの条件は、例えば、約100℃から約150℃まで約20分から約40分までの時間であってもよく、約110℃から約130℃まで約25分から約35分までの時間であってもよい。
【0096】
(シリコーンハイドロゲルレンズ配合物) シリコーンハイドロゲルレンズ配合物は、レンズ表面に眼科的に許容され得る酸、少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つの架橋剤、および多価アルコールと適合する少なくとも1つのシリコーン含有成分を含んでいる。本明細書に述べられる重合可能なレンズ配合物に関して、“適合する”成分は、重合の前に重合可能な組成物中に存在する場合、組成物から重合したレンズ本体の製造を可能にするのに充分な時間安定である単相を形成する成分を意味する。いくつかの成分について、適合する濃度の範囲を見出すことができる。さらに、“適合する”成分は、重合したレンズ本体を形成するために重合される場合、コンタクトレンズとして用いられる充分な物理的特性(例えば、充分な透明性、モジュラス、引張強さ等)を有するレンズを生じる成分である。
【0097】
(シリコーン含有成分) シリコーン含有成分のSiと結合したO部分(Si-O部分)は、シリコーン含有成分の全分子量の20%(w/w)を超える、例えば30%(w/w)を超える量でシリコーン含有成分中に存在し得る。有効なシリコーン含有成分は、重合可能な官能基、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル官能基を含む。本明細書に記載されるように得られたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは、シリコーン含有モノマーおよび親水性モノマーまたはコモノマーに基づき得る。本明細書に記載されている式(I)によって表されるシリコーン含有化合物に加えて、本レンズに有効であり得る他のシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号明細書、同第4,120,570号明細書、同第4,136,250号明細書、同第4,139,513号明細書、同第4,153,641号明細書、同第4,740,533号明細書、同第5,034,461号明細書、同第5,496,871号明細書、同第5,959,117号明細書、同第5,998,498号明細書および同第5,981,675号明細書、米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に見出だすことができ、これらの明細書の記載は全て本願明細書に全体として組み込まれているものとする。シリコーン含有成分は、シリコーン含有モノマーまたはマクロマーであり得る。
【0098】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、例えば、下記の一般構造(II)を有することができる:
【化3】
(ここで、R5は、HまたはCH3であり、Xは、OまたはNR55(ここで、R55は、Hまたは炭素原子1〜4個を有する一価のアルキル基である)であり、aは、0または1であり、Lは、炭素原子1〜20個、または炭素原子2〜10個を含む二価の結合基であり、これは、必要により、エーテル基および/またはヒドロキシル基、例えば、ポリエチレングリコール鎖を含んでもよく、pは、1〜10、または2〜5であってもよく、R1、R2、およびR3は、同じでも異なってもよく、独立して炭素原子1〜約12個(例えば、メチル基)を有する炭化水素基、1つ以上のフッ素原子で置換された炭化水素基、シロキサニル基、およびシロキサン鎖含有部分より選ばれる基であり、ここで、R1、R2、およびR3の少なくとも1つは、少なくとも1つのシロキサン単位(-OSi)を含む)。例えば、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、-OSi(CH3)3および/または-OSi(R52R53R54)を含むことができる(ここで、R52、R53、R54は、独立して、エチル、メチル、ベンジル、フェニルまたはSi-O反復単位1〜約100個、または約1〜約50、または約1〜約20を含む一価のシロキサン鎖である)。
【0099】
R1、R2およびR3の1つ、2つ、または全3つは、また、他のシロキサニル基またはシロキサン鎖含有部分を含むことができる。構造(II)のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー内に存在する-X-L-の組み合わせ結合は、OまたはNであるヘテロ原子を1つ以上含有することができる。組み合わせ結合は、直鎖または分枝鎖であることができ、ここで、その炭素鎖セグメントは直鎖であり得る。組み合わせ結合-X-L-は、必要により、例えば、カルボキシル、アミド、カルバメート、およびカルボネートより選ばれる1つ以上の官能基を含有してもよい。その組み合わせ結合の例は、例えば、米国特許第5,998,498号明細書および米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に示されており、この開示内容のすべてが本願明細書に組み込まれているものとする。本発明のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、構造(II)に示される単一のアクリロイル基を含むことができ、必要により、2つのアクリロイル基、例えば、モノマーの各末端に1つを有してもよい。必要により、シリコーン含有成分の双方のタイプの組み合わせが、本発明の重合可能な組成物において用いられてもよい。
【0100】
構造(II)のシリコーン含有モノマーの分子量は、一般的には、約200から約2000ダルトンまで、または約300から約1500ダルトンまで、または約500から約1200ダルトンまでの範囲にあり得る。
【0101】
本発明のシリコーン含有成分の例としては、例えば、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチルメタクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシランが挙げられるが、これらに限定されないポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが含まれる。
【0102】
シリコーン含有成分の個々の例は、例えば、3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート(Gelest、Morrisvilleから入手可能な“トリス”)、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelest、Morrisville、ペンシルバニア州、米国から入手可能)であり得る。これらのシリコーン含有成分は、アルキレン基、二価の結合基(例えば、-(CH2)p-)として、“a”は構造(II)に関して0である、および少なくとも2つのシロキサニル基を有することができる。これらのシリコーン含有成分は、構造(A)クラスのシリコーン含有成分として本明細書に示す。これらのシリコーン含有成分の典型的な限定されない構造は、以下の通り示される:
【0103】
【化4】
および
【化5】
シリコーンC
【0104】
シリコーン含有成分の他の個々の例は、例えば、3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(“SiGMA”(Gelest、Morrisville、ペンシルバニア州、米国から入手可能)およびメチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート(“SiGEMA”)であり得る。これらのシリコーン含有成分には、構造(II)に示される二価の結合基Lに少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのエーテル基および少なくとも2つのシロキサニル基が含まれる。これらのシリコーン含有成分は、構造(B)クラスシリコーン含有成分として本明細書に示す。シリコーン含有成分のこの種類に関する追加の詳細は、例えば、米国特許第4,139,513号明細書に示されており、その明細書の記載は本願明細書に全体として組み込まれているものとする。SiGMAは、例えば、下記の例示的な限定されない構造によって表すことができる:
【化6】
【0105】
構造(A)および(B)のシリコーン含有成分は、本発明の重合可能な組成物において個々にまたはその組み合わせで使用し得る。構造(A)および/または(B)のシリコーン含有成分は、さらに、本明細書に記載されるように、少なくとも1つのシリコーンを含まない親水性モノマーと組み合わせて用いられる。組み合わせて用いられる場合、例えば、構造(A)のシリコーン含有モノマーの量は、例えば、約10%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約35%(w/w)まで、または約18%(w/w)から約30%(w/w)までであり得る。構造(B)のシリコーン含有成分の量は、例えば、約10%(w/w)から約45%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約20%(w/w)から約35%(w/w)までであり得る。
【0106】
他のシリコーン含有成分も使用し得る。例えば、他の適切なタイプには、例えば、ポリ(オルガノシロキサン)プレポリマー、例えば、α,ω-ビスメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンが含まれ得る。他の例は、mPDMS(モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサンである。他の有効なシリコーン含有成分には、1,3-ビス[4-(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブテ-1-イル]テトラメチルシロキサン、3-(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシシラン]、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート; トリメチルシリルエチルビニルカルボネート、およびトリメチルシリルメチルビニルカルボネートが挙げられるが、これらに限定されないシリコーン含有ビニルカルボネートモノマーまたはビニルカルバメートモノマーが含まれる。これらのシリコーン含有成分の1つ以上の例は、例えば、米国特許第5,998,498号明細書、米国特許出願公開第2007/0066706号明細書、同第2007/0296914号明細書、同第2008/0048350号明細書に示されているものであることができ、これらの開示内容はすべて本願明細書に組み込まれているものとする。
【0107】
シリコーンを含まないモノマー. シリコーンを含まない親水性モノマーは、本コンタクトレンズを製造するために用いられる重合可能な組成物に含まれる。シリコーンを含まないモノマーは、1つ以上のケイ素原子を含有する親水性化合物を除外する。シリコーンを含まない親水性モノマーは、シリコーンハイドロゲルを形成するために重合可能な組成物にシリコーン含有モノマーと組み合わせて使用し得る。シリコーンを含まない親水性モノマーは、シリコーンを含まないハイドロゲルを形成するために重合可能な組成物に、シリコーンを含まない親水性モノマーやシリコーンを含まない疎水性モノマーが含まれる他のシリコーンを含まないモノマーと組み合わせて使用し得る。シリコーンハイドロゲルにおいて、シリコーンを含まない親水性モノマー成分には、他の重合可能な組成物成分と組み合わせた場合に得られた水和レンズに対して少なくとも約10%(w/w)、または少なくとも約25%(w/w)もの水分を与えることができるものが含まれる。シリコーンハイドロゲルについては、合計のシリコーンを含まないモノマーは、重合可能な組成物の約25%(w/w)から約75%(w/w)まで、または約35%(w/w)から約65%(w/w)まで、または約40%(w/w)から約60%(w/w)までであり得る。
【0108】
シリコーンを含まないモノマーとして含まれ得るモノマーは、典型的には、少なくとも1つの重合可能な二重結合および少なくとも1つの親水性官能基を有する。重合可能な二重結合の例としては、例えば、ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチリル、イソプロペニルフェニル、O-ビニルカルボネート、O-ビニルカルバメート、アリル、O-ビニルアセチル、N-ビニルラクタムおよびN-ビニルアミドの二重結合が挙げられる。一例において、親水性モノマーは、ビニル含有(例えば、アクリル含有モノマーまたは非アクリルビニル含有モノマー)である。その親水性モノマーは、それ自体架橋剤として用いることができる。
【0109】
そのシリコーンを含まない親水性モノマーは、架橋剤であってもよいが、必ずしも架橋剤ではない。上記のようにアクリロイル部分のサブセットと考えれば、“アクリルタイプ”モノマーまたは“アクリル含有”モノマーまたはアクリレート含有モノマーは、アクリル基(CR'H=CRCOX)(ここで、Rは、HまたはCH3であり、R'は、H、アルキル、またはカルボニルであり、Xは、OまたはNである)を含有するモノマーであり、これらは容易に重合することも知られている。
【0110】
シリコーンハイドロゲルについては、シリコーンを含まない親水性成分は、アクリルモノマー(例えば、α-炭素位置にビニル基およびカルボン酸末端を有するモノマー、α-炭素位置にビニル基およびアミド末端を有するモノマー等)および親水性ビニル含有(CH2=CH-)モノマー(すなわち、アクリル基の一部でないビニル基を含有するモノマー)を含む非シリコーン含有モノマー成分を含むことができる。
【0111】
例示的アクリルモノマーとしては、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸、アクリル酸、メチルメタクリレート(MMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)およびこれらの混合物が挙げられる。一例では、全アクリルモノマー含量は、シリコーンハイドロゲルレンズ生成物を調製するために用いられる重合可能な組成物の約5%(w/w)から約50%(w/w)までの範囲にある量であり、重合可能な組成物の約10%(w/w)から約40%(w/w)まで、または約15%(w/w)から約30%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0112】
上述のように、シリコーンを含まないモノマーは、また、親水性ビニル含有モノマーを含むことができる。本レンズの材料に組み込まれ得る親水性ビニル含有モノマーとしては、以下が挙げられる: N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(NVP))、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステル。ビニル含有モノマーの一例は、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)である。VMAの構造は、CH3C(O)N(CH3)-CH=CH2に対応する。一例において、全ビニル含有モノマー含量は、重合可能な組成物のシリコーンハイドロゲルレンズ生成物を調製するために用いられる重合可能な組成物の約0%から約50%(w/w)までの範囲にある量であり、重合可能な組成物の約20%(w/w)から約45%(w/w)まで、または約28%(w/w)から約40%(w/w)までの量で存在することができる。当該技術において既知の他のシリコーン含まないレンズ形成親水性モノマーも適切で適切であり得る。
シリコーンハイドロゲルのための架橋剤には、上で示した架橋剤が含まれる。架橋剤に用いられるアクリレート官能基化エチレンオキシドオリゴマーの例には、オリゴエチレンオキシドジメタクリレートが含まれ得る。架橋剤は、TEGDMA、TEGDVE、EGDMA、TMGDMA、またはこれらの組み合わせであり得る。典型的には、架橋剤は、重合可能なシリコーンハイドロゲル組成物に重合可能な組成物中比較的少ない合計量で、例えば、重合可能な組成物の約0.1質量%(w/w)から約10質量%(w/w)まで、または約0.5質量%(w/w)から約5質量%(w/w)まで、または約0.75質量%(w/w)から約1.5質量%(w/w)までの範囲にある量で存在する。
【0113】
シリコーンを含まないハイドロゲルレンズ配合物. シリコーンを含まない親水性モノマーは、本発明のコンタクトレンズを調製するために用いられる重合可能な組成物にシリコーン含有モノマーを含まずに、または実質的に含まずに使用し得る。シリコーンを含まないハイドロゲルは、眼科的に許容され得る酸、他の親水性モノマーおよび架橋剤、および少なくともレンズ表面上の多価アルコールと適合する1つ以上のシリコーンを含まないモノマーを含む。
【0114】
シリコーンを含まない重合可能な組成物は、例えば、1つ以上のシリコーンを含まないモノマー、例えば、ヒドロキシアルキル(アルキル)アクリレート、およびメタクリレートホスホリルコリンモノマー単位、および架橋剤を含むことができる。HEMAベースの配合物が使用し得る。一例の配合物において、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-メタクリロイルオキシホスホリルコリン(MPC)、およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)が組み合わせて使用し得る。HEMAまたは他のヒドロキシアルキル(アルキル)アクリレートは、重合可能な組成物の約50%(w/w)から約90%(w/w)まで、または約65%(w/w)から約80%(w/w)まで、または約70%(w/w)から約80%(w/w)までの量で使用し得る。MPCまたは他のメタクリレートホスホリルコリンモノマー、HEMA、ならびには他のシリコーンを含まないモノマーは、組成物の約3%(w/w)から約20%(w/w)まで、または約6%(w/w)から約18%(w/w)まで、または約9%(w/w)から約15%(w/w)までの量で使用し得る。本明細書に示されるような架橋剤は、重合可能な組成物の約0.1%(w/w)から約5%(w/w)まで、または約0.3%(w/w)から約2.5%(w/w)まで、または約0.5%(w/w)から約1%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0115】
(追加のハイドロゲル成分) 本明細書に記載されるシリコーンハイドロゲルおよびシリコーンを含まないハイドロゲルレンズ重合可能な組成物には、また、追加の成分、例えば、1つ以上の開始剤、例えば1つ以上の熱開始剤、1つ以上の紫外線(UV)開始剤、可視光開始剤、これらの組み合わせ等、1つ以上のUV吸収剤または化合物、またはUV放射線またはエネルギー吸収剤、色味剤、色素、剥離剤、抗菌化合物、および/または他の添加剤が含まれ得る。本出願に関連して用語“添加剤”は、本重合可能なハイドロゲルコンタクトレンズの重合可能な組成物または予め抽出された重合ハイドロゲルコンタクトレンズ生成物に供給される化合物または化学薬品を意味するが、これはハイドロゲルコンタクトレンズの製造に必要ではない。
【0116】
重合可能な組成物は、1つ以上の開始剤化合物、すなわち、重合可能な組成物の重合を開始することができる化合物を含むことができる。熱開始剤、すなわち、“分解開始”温度を有する開始剤が使用し得る。例えば、本発明の本重合可能な組成物に使われる1つの例示的な熱開始剤は、2,2'-アゾビジネス(イソブチロニトリル)(VAZO(登録商標)-64)である。VAZO(登録商標)-64は、62℃の分解開始温度を有し、これは重合可能な組成物中の反応成分が重合し始める温度である。他の熱開始剤は、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)(VAZO(登録商標)-52)であり、これは約50℃の分解開始温度を有する。本発明の組成物に用いられるさらにもう1つの熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(VAZO(登録商標)-88)であり、これは90℃の分解開始温度を有する。本明細書に記載されるVAZO熱開始剤の全ては、DuPont(Wilmington、デラウェア州、米国)から入手可能である。追加の熱開始剤としては、亜硝酸塩、例えば、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)だけでなく、Sigma Aldrichから入手可能な他のタイプの開始剤が含まれる。眼科的に適合するシリコーンまたはシリコーンを含まないハイドロゲルコンタクトレンズは、0.05%(w/w)から約0.8%(w/w)まで、または約0.1%(w/w)から約0.6%(w/w)までのVAZO(登録商標)-64または他の熱開始剤を含む重合可能な組成物から得ることができる。
【0117】
UV吸収剤は、例えば、約320-380ナノメートルのUV-A範囲で比較的高い吸収値を示す強いUV吸収剤であり得るが、約380nmより上で比較的透過性である。例としては、光重合性ヒドロキシベンゾフェノンおよび光重合性ベンゾトリアゾール、例えば、Cytec Industries、West Paterson、ニュージャージー州、米国からCYASORB UV416として市販される2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシ)プロポキシベンゾフェノン、Noramco、Athens、ジョージア州、米国からからNORBLOC(登録商標) 7966として市販される光重合性ベンゾトリアゾールが挙げられる。本発明の使用に適している他の光重合性UV吸収剤としては、重合可能なエチレン系不飽和トリアジン、サリチル酸塩、アリール置換アクリレート、およびこれらの混合物が挙げられる。一般的に言って、UV吸収剤が存在する場合には、重合可能な組成物の約0.5質量パーセントから組成物の約1.5質量パーセントまでに対応する量で供給される。例えば、組成物には、約0.6%(w/w)から約1.0%(w/w)までの1つ以上のUV吸収剤が含まれ得る。
【0118】
本発明の重合可能な組成物は、また、色味剤を含むことができるが、着色および無色双方のレンズ生成物が企図される。一例において、色味剤は、得られたレンズ製品に色を与えるのに効果的な反応染料または色素である。色味剤には、例えば、VAT Blue 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9,14,18-テトロン)、1-アミノ-4-[3-(ベータ-スルファトエチルスルホニル)アニリオ]-2-アントラキノンスルホン酸(C. I. Reactive Blue 19、RB-19)、Reactive Blue 19とヒドロキシエチルメタクリレート(RB-19 HEMA)のコポリマー、1,4-ビス[4-[(2-メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノン(Reactive Blue 246、RB-246、Arran Chemical Company、アスローン、アイルランドから入手可能)、1,4-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-9,10-アントラセンジオンビス(2-pプロペン酸)エステル(RB-247)が含まれ得る。他の例示的チンド剤は、例えば、米国特許出願公開第2008/0048350号明細書に開示されており、この開示内容は本願明細書に組み込まれるものとする。本発明の使用に適切な他の色味剤は、フタロシアニン顔料、例えば、フタロシアニンブルーやフタロシアニングリーン、クロム-アルミナ-酸化第一コバルト、酸化クロム(II)、および赤色、黄色、褐色および黒色のための種々の酸化鉄である。二酸化チタンのようなオペーキング剤も組み込まれ得る。ある用途には、色の混合物を使うことができる。使われる場合には、色味剤は、約0.1%(w/w)から約15%(w/w)まで、または約1%(w/w)から約10%(w/w)まで、または約4%(w/w)から約8%(w/w)までの範囲にある量で存在することができる。
【0119】
本発明の重合可能な組成物は、また、離型助剤、すなわち、金型から硬化したコンタクトレンズの取り出しをより容易にするのに効果的な1つ以上の化合物を含むことができる。例示的な離型補助剤には、親水性シリコーン、ポリアルキレンオキシド、およびこれらの組み合わせが含まれる。重合可能な組成物は、さらに、ヘキサノール、エトキシエタノール、イソプロパノール(IPA)、プロパノール、デカノールおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる希釈液を含むことができる。希釈液が使われる場合には、典型的には、約10%(w/w)から約30%(w/w)までの範囲にある量で存在する。比較的高い濃度の希釈剤を有する組成物は、イオノフラックス値がより小さく、モジュラスが低く、伸びが大きいだけでなく、WBUTが20秒を超える傾向があるが、必ずしも有するというわけではない。ハイドロゲルコンタクトレンズの製造の使用に適している追加の材料は、米国特許第6,867,245号明細書に記載されており、この明細書の記載は本願明細書に組み込まれるものとする。しかしながら、ある実施態様において、重合可能な組成物は希釈剤を含まない。
【0120】
(レンズのための調製方法) スピンキャスティングおよびスタティックキャスティングを含む、コンタクトレンズの製造において重合可能な組成物を硬化するさまざまなプロセスが既知である。スピンキャスティング法は、モノマー混合物を金型に充填し、モノマー混合物をUV光にさらしつつ制御された方法で金型を回転させることを含む。スタティックキャスティング法は、モノマー混合物を2つの金型部分の間に充填し、一方の金型部分は前側のレンズ表面を形成する形状にされ、もう一方の金型部分は後側のレンズ表面を形成する形状にされており、モノマー混合物をUV光、熱、可視光、または他の放射線にさらすことによって硬化することを含む。コンタクトレンズを形成するための追加の詳細および方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0296914号明細書および同第2008/0048350号明細書に見出だすことができ、これらの各々の開示内容は本願明細書に組み込まれるものとする。
【0121】
反応混合物を硬化した後に、得られたポリマーは金型から分離される。いくつかの状況、例えば、スタティックキャスティングにおいて、2つの金型部材が最初に分離された後、ポリマーが金型から分離される。
【0122】
得られたポリマーは、また、溶媒で処理されて、希釈剤(用いられる場合)、未反応の成分、副生成物等を除去し、ポリマーを水和させて、ハイドロゲルを形成することができる。本重合可能な配合物を用いて製造されるレンズは、水和および包装の前に有機溶媒、有機溶媒を含有する水溶液、または水による抽出を必要としないが、これらはこのように抽出され得る。溶媒は、水(または水溶液、例えば、生理食塩水または界面活性剤の水溶液)であってもよく、または、希釈剤および残りの重合されていないモノマーの溶解度特性によっては、はじめに用いられた溶媒は有機液体、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、これらの混合物等、または1つ以上の有機液体と水との混合物であることができ、続いて純水(または生理食塩水または界面活性剤溶液)で抽出して、水で膨潤したポリマーを含むシリコーンハイドロゲルを得る。抽出プロセス、水和プロセス、またはこれらの双方の抽出および水和プロセスは、加熱液体、加圧液体、または減圧下の液体を用いて行うことができる。水和後のシリコーンハイドロゲルは、ハイドロゲルの全質量の20%(w/w)から80%(w/w)の水、例えば、30%(w/w)から70%(w/w)の水、または40%(w/w)から60%の(w/w)の水を含むことができる。水和後のシリコーンを含まないハイドロゲルは、ハイドロゲルの全質量の20%(w/w)から80%(w/w)の水、例えば、30%(w/w)から70%(w/w)の水、または40%(w/w)から60%(w/w)の水を含むことができる。
【0123】
(例示的な重合可能な組成物) 本重合可能な組成物のモノマーは、単独で重合されるかまたは他のモノマーと共重合されて、コンタクトレンズ材料を得ることができる。
本明細書に記載されかつシリコーンハイドロゲル配合物に基づくコンタクトレンズ材料のための一般配合物をは、表Iに示す。
【0124】
表I
【0125】
表II
【0126】
表III
【0127】
表IV
【0128】
表V
【0129】
コポリマーは、1つ以上のシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマー、例えば、第1と第2のシリコーン含有モノマー、例えば、構造(A)と(B)モノマーの組み合わせを、1つ以上のシリコーンを含まないコモノマー、例えば、表IIに記載されたものおよび架橋剤、例えば、表IIIに記載されたものとを組み合わせることによって調製することができる。表Vおよび重合開始剤、例えば、表IVに記載されたものの眼科的に許容され得る酸が混合物に添加される。
【0130】
コポリマーは、最初に表Iに示される成分を組み合わせることによって、適切なレンズ金型を用いたコンタクトレンズの形で、またはテフロン(登録商標)加工のガラススライドの間に製造されたフィルムの形で調製される。モノマー混合物は、金型またはスライドキャビティに分配され、開始剤は、例えば、適切な分解開始温度に加熱することによって、“分解開始”される。成形完了の後、金型が開かれ、レンズが金型から分離される。次に、レンズを多価アルコール溶液と接触させる。レンズは、多価アルコール溶液で処理する前に水溶液中で水和させることができる。必要により、レンズは、例えば、有機溶媒、例えば、揮発性アルコール、有機溶媒の水溶液で、または水和前に水溶液または水で抽出することができる。一方法において、レンズは、多価アルコールの水溶液中でオートクレーブ処理することができ、次にブリスタまたはブリスタパック、例えば、PBS溶液を用いたブリスタに包装されることができる。
【0131】
シリコーンを含まないハイドロゲル製剤に基づくコンタクトレンズ材料のための一般配合物を表VIに示す。
表VI
【0132】
本配合物によって製造されたコンタクトレンズは、例えば、その種々の特性、例えば、接触角、水のブレイクアップ時間(WBUT)、湿潤溶液の取り込み等によって示されるように湿潤性を高めることができる。
【0133】
(レンズの特性) コンタクトレンズのレンズ表面は、100o未満、または80o未満、または70o未満、または60o未満、または50o未満の前進接触角を有することができる。レンズ表面の前進接触角は、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含む、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有するポリオールである多価アルコールの形態を除く包装溶液における貯蔵の約6時間後、約24時間後、または約48時間後に約100o未満のままである。
【0134】
レンズ表面は、5秒を超える、または少なくとも10秒、または少なくとも15秒、または少なくとも20秒の水のブレイクアップ時間(WBUT)を有する。
【0135】
レンズ面は、少なくとも6時間、または少なくとも12時間、または少なくとも24時間、または少なくとも48時間の間の試験管内試験の後、100o未満の前進接触角および5秒を超える水のブレイクアップ時間を維持することができる。
【0136】
レンズ表面上にはじめに存在する多価アルコールの少なくとも1つの形の少なくとも30%、または少なくとも45%、または少なくとも60%は、試験管内試験の少なくとも6時間、または少なくとも12時間、または少なくとも24時間、または少なくとも48時間後に、また、生体内試験の少なくとも6時間、または少なくとも12時間後に定位置に残存する。
【0137】
重合可能な組成物中にはじめに存在する眼科的に許容され得る酸の少なくとも50質量%、または少なくとも60質量%、または少なくとも70質量%、または少なくとも80質量%(例えば、50質量%〜99.9質量%、60質量%〜95質量%、70質量%〜90質量%、75質量%〜95質量%、80質量%〜99質量%、85質量%〜99質量%)は、試験管内試験に基づき、約6時間後、または約12時間後、または24時間後、または48時間後、レンズ本体内におよび/またはのレンズ表面上に存在したままである。
【0138】
(コンタクトレンズパッケージ) 上記のようなコンタクトレンズ本体、および他の多価アルコール、例えば少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含む包装溶液を備えているコンタクトレンズパッケージが提供される。多価アルコールがレンズ表面上に存在するか、包装溶液中に存在するか、またはこれらの双方である場合、レンズは、包装材料成分に粘着しないことわかった。レンズ本体の表面上に供給される多価アルコールと包装溶液の多価アルコールは、同じでも異なってもよい。異なる多価アルコールは、同じかまたは異なる平均分子量を有することができる。異なる多価アルコールの一方または双方は、例えば、ポリビニルアルコールの形態であり得る。多価アルコール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールは、例えば、少なくとも約0.001質量%(w/w)、少なくとも約0.01質量%(w/w)、または少なくとも約0.1質量%(w/w)、または少なくとも約0.25質量%(w/w)、または少なくとも約0.5質量%(w/w)、または少なくとも約1質量%(w/w)、または少なくとも約2質量%(w/w)(例えば、約0.001%から約5%まで、上限は溶液の粘度によって決定されている)濃度で包装溶液中に存在することができる。
【0139】
コンタクトレンズパッケージに関して、パッケージは、さらに、コンタクトレンズ本体および包装溶液を保つように構成されたキャビティを有するベース部材、およびコンタクトレンズおよび包装溶液をコンタクトレンズの有効期間に等価な期間滅菌状態で維持するように構成されたベース部材に付着したシール部を備えることができる。コンタクトレンズ本体は、ベース部材またはシール部に付着せず、またはコンタクトレンズ本体は、多価アルコール、例えば、レンズ表面上に存在する少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含まない実質的に同じのコンタクトレンズ本体と比較してしばしばベース部材またはシール部に付着しない。コンタクトレンズ本体は、ベース部材またはシール部に付着せず、またはコンタクトレンズ本体は、包装溶液中に存在する少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含まない実質的に同じコンタクトレンズ本体と比較してしばしばベース部材またはシール部に付着しない。
【0140】
(再湿潤(再充填)レンズ) 本明細書に記載されるコンタクトレンズが使用者によって装用されるか、さもなければ多価アルコールが変性したレンズ表面で失われる方法で使用された後、レンズは、レンズ本体を多価アルコール、例えば、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する多価アルコールを含む水溶液に浸漬するかまたは浸水する(水中に沈める)ことによって少なくともレンズ表面で多価アルコール湿潤助剤によって再充填することができる。レンズ本体を一晩(約9-12時間)浸漬すると、レンズ表面を適切に再充填するのに充分であり得るので、レンズが再び眼科的に許容され得る水和表面を有する。
前述のように、本発明の他の例において、眼科的に許容され得る酸は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態を含む。この例では、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、レンズ内とそのレンズ表面に反応生成物の第2のポリマー成分として分配される代わりにまたはそれに加えて、重合可能な組成物の重合可能な成分として存在し、重合後に、重合された反応生成物のコポリマーの重合単位として存在する。
【0141】
この例では、重合された反応生成物であるレンズ本体は、少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールを有することができる。すなわち、レンズ本体は、錯体形成レンズ本体を備えることができる。少なくとも1つのレンズ表面上に存在する少なくとも1つの多価アルコールは、双方のレンズ表面(すなわち、前側のレンズ表面と後側のレンズ表面上に存在する)に存在することができる。いくつかの例において、少なくとも1つの多価アルコールは、レンズ本体のバルク内だけでなく、レンズ表面上に存在することができる。本例の多価アルコールは、少なくとも1つの1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる(すなわち、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコール、その少なくとも3つの炭素原子は中心の炭素原子に結合した右側の炭素原子として鎖内に結合され、中心の炭素原子は左側の炭素原子に結合され、ここで、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基が中心の炭素原子に結合されてなく、1級ヒドロキシル基が左側の炭素原子に結合されている)。さらに、本例の多価アルコールは、少なくとも1,2-ジオール部分を有するか、または1,2-ジオール部分と1,3-ジオール部分を有する多価アルコールを含むことができる。多価アルコールが少なくとも1,2-ジオールまたは1,3-ジオール部分を有する多価アルコールである例において、多価アルコール中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部は、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成した(例えば、ボロン酸部分は、レンズ表面上、レンズ本体のバルク内、またはこれらの双方に存在する)。さらに、この例では、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部(例えば、ボロン酸部分は、レンズ表面上に、レンズ本体のバルク内に、またはこれらの双方に存在する)は、多価アルコールの1,2部分または1,3部分と錯体形成することができない。すなわち、重合された反応生成物であるレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。方法の一具体例において、非錯体形成レンズ本体を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールと接触させることができ、レンズ本体のコポリマー内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が多価アルコールのそして、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部と錯体形成させることができ、錯体形成レンズ本体が形成される。
【0142】
例には、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法が含まれ得る。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法は: (i)重合可能な組成物を準備する工程であって、重合可能な組成物が(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む前記工程; および(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、コポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合された反応生成物を形成する工程であって、コポリマーが、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含み; ここで、非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程を含むことができる。
【0143】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸、ボロン酸無水物、またはボロン酸とボロン酸無水物の組み合わせの重合可能な形態を含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸を含む。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ボロン酸の重合可能な形態を含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、ビニルフェニルボロン酸(例えば、2-ビニルフェニルボロン酸、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、またはこれらの組み合わせを含むことができる。ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、下記構造を有するボロン酸の重合可能な形態を含むことができる:
【化7】
【0144】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態は、重合可能な組成物中に約0.1%から約10.0%まで、約0.5%から約5.0%まで、約1.0〜約2.0%までの濃度で存在することができる。
【0145】
重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの親水性モノマーは、複数の親水性モノマーを含むことができる。一例において、複数の親水性モノマーは、少なくとも1つのビニル部分を有する第1の親水性モノマー、および少なくとも1つのメタクリレート部分を有する第2の親水性モノマーを含むことができる。
【0146】
重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含むことができる。重合可能な組成物の少なくとも1つの架橋剤は、複数の架橋剤を含むことができる。一例において、複数の架橋剤は、少なくとも1つのビニル部分を有する第1の架橋剤、および少なくとも1つのメタクリレート部分を有する第2の架橋剤を含むことができる。
【0147】
重合可能な組成物は、さらに水を含むことができる。水は、重合可能な組成物中に1つのボロン酸部分と3つの水分子とのモル比で存在することができる。水は、重合可能な組成物中にボロン酸部分の無水環状三量体を3つの別々のボロン酸部分に変換するのに効果的な量で存在することができる。微量の水が重合可能な組成物の成分にすでに存在することがあり得るので、重合可能な組成物中に1:3のモル比の程度で存在するのに必要とされる追加の水の量は、例えば、カールフィッシャー法を用いて求めることができる。一例において、重合可能な組成物中に存在する下記構造IIIの無水環状三量体は、下記構造IVの3つの別々のボロン酸部分に変換することができる:
【化8】
【0148】
【化9】
【0149】
重合可能な組成物は、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。この例では、重合可能な組成物中に重合可能なシリコーン含有化合物が存在することにより、コポリマー中にシリコーン含有化合物の重合単位が存在することになる。すなわち、コポリマーは、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、シリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0150】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、約1,000ダルトンを超える、約2,500ダルトンを超える、約5,000ダルトンを超える、約7,000ダルトンを超える、約9,000ダルトンを超える、約10,000ダルトンを超える、または約12,000ダルトンを超える平均分子量を有することができる。平均分子量は、核磁気共鳴(NMR)によって測定される質量平均分子量であり得る。
【0151】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、エチレンオキシド(EO)単位がモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖または主鎖と側鎖の双方に存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、または少なくとも約40のエチレンオキシド(EO)単位を含むことができる。
【0152】
シリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーは、少なくとも約10、少なくとも約50、少なくとも約80、少なくとも約90、または少なくとも約100のジメチルシロキサン(DMS)単位がモノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖、または主鎖と側鎖の双方に存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含むことができる。
【0153】
シリコーン含有化合物が、モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの主鎖、側鎖、または主鎖と側鎖の双方にエチレンオキシド(EO)単位が存在するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む場合、シリコーン含有化合物は、存在するエチレンオキシド(EO)単位の数とジメチルシロキサン(DMS)単位の数との比率を有する。その例において、存在するエチレンオキシド単位の数とジメチルシロキサン単位の数との比率(EO/DMS比)は、約0.20から約0.55まで、約0.25から約0.50まで、または約0.35から約0.45まであり得る。
シリコーン含有化合物は、シリコーンA、米国特許出願公開第2009/0234089号明細書(Asahi Kasei Aime Co., Ltd.、神奈川、日本)の実施例2に記載されている親水性ポリシロキサンマクロモノマーAと同一か、または構造が似たシリコーン含有成分を含むことができる。
シリコーン含有化合物は、Silicone B、以下に示され、分子量が約1,500ダルトンであるシリコーン含有成分(America、Akron、OH、USAのShin-Etsu Silicones)を含むことができる。
【化10】
シリコーンB
【0154】
シリコーン含有化合物は、シリコーンC、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Gelest、Morrisville、ペンシルベニア州、米国)を含むことができる。その構造は、以下の通りである:
【化11】
シリコーンC
【0155】
シリコーン含有化合物は、単一のシリコーン含有化合物または複数のシリコーン含有化合物の組み合わせを含むことができる。シリコーン含有化合物は、重合可能な組成物中に約1%から約65%まで、約10%から約60%まで、または約20%から約55%までの濃度で存在することができる。
【0156】
重合可能な組成物は、さらに、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つのポリマーを含むことができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有するポリマーは、ポリマー湿潤剤を含むことができる。ポリマー湿潤剤は、レンズ本体内で相互侵入網目高分子(IPN)または擬IPNを形成することができる。
【0157】
重合可能な組成物は、さらに、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つのモノマーを含むことができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有するモノマーは、親水性モノマーを含むことができる。モノマーは、ホモポリマーとしてまたは重合可能な組成物の他の成分とのコポリマーとして重合して、レンズ本体内に相互侵入網目高分子(IPN)または擬IPNを形成することができる。
【0158】
重合可能な組成物は、さらに、非反応性希釈剤を含むことができる。非反応性希釈液は、水溶性非反応性希釈液、すなわち、水抽出媒体を用いてレンズ本体から抽出することができる希釈剤を含むことができる。具体例では、水溶性非反応性希釈剤は、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有することができる。1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する水溶性非反応性希釈剤は、グリコール、例えば、グリセリンであり得る。
【0159】
重合可能な組成物は、さらに、ホスホリルコリン成分、例えば、2-メタクリロイルオキシホスホリルコリンを含むことができる。ホスホリルコリンの形態は、ホスホリルコリンの重合可能な形態であり得るか、またはホスホリルコリンの重合された形態であり得る。ホスホリルコリンの重合可能な形態またはホスホリルコリンの重合された形態は、ホスホリルコリンの架橋可能な形態であり得る。ホスホリルコリン成分が重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態を含まないこと以外は同じ配合物を有する匹敵する重合可能な組成物と比較して、曇りがない場合があるかまたは曇りが少ない場合があり、かつ眼科的に許容され得る透明である重合された反応生成物を得ることができる(すなわち、コンタクトレンズとしての使用に充分に透明である)。ホスホリルコリン成分が重合可能な組成物中に存在する場合、重合可能な組成物は、合計5%(w/w)未満のC1-C10一価アルコール単一希釈剤、またはC1-C10一価アルコール希釈剤の組み合わせを含有することができる。
【0160】
重合可能な組成物は、さらに、開始剤を含むことができる。開始剤は、熱開始剤、UV開始剤、または熱開始剤とUV開始剤の組み合わせを含むことができる。
【0161】
重合可能な組成物は、さらに、色付け薬剤、UV遮断薬またはその組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせは、重合可能な色味剤、重合可能なUV遮断剤、または重合可能な色味剤と重合可能なUV遮断剤の組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせが重合可能な色味剤、重合可能なUV遮断剤、または重合可能な色味剤と重合可能なUV遮断剤の組み合わせを含む例において、レンズ本体のコポリマーは、さらに、色味剤の重合単位、UV遮断剤の重合単位、または色味剤とUV遮断剤の重合単位を含む。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせは、架橋性色味剤、架橋性UV遮断剤、または架橋性色味剤と架橋性UV遮断剤の組み合わせを含むことができる。色味剤、UV遮断剤、またはこれらの組み合わせが架橋性色味剤、架橋性UV遮断剤、または架橋性色味剤と架橋性UV遮断剤の組み合わせを含む例において、レンズ本体のコポリマーは、さらに、色味剤の架橋単位、UV遮断剤の架橋単位、または色味剤とUV遮断剤の架橋単位を含む。
【0162】
本実施例では、レンズ本体を注型するために用いられるコンタクトレンズ金型アセンブリは、前側面と後側表面を含む、成形表面を備えることができる。金型アセンブリの少なくとも1つの成形面は、熱可塑性樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂は、極性熱可塑性樹脂、無極性熱可塑性樹脂、または極性熱可塑性樹脂と無極性熱可塑性樹脂双方の組み合わせを含むことができる。極性熱可塑性樹脂の例としては、エチレンビニルアルコール(EVOH)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。無極性熱可塑性樹脂の例としては、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。熱可塑性樹脂は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分、例えば、PVOHを有する熱可塑性樹脂を含むことができる。少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分は、重合可能な組成物、重合された反応生成物、または重合可能な組成物および重合された反応生成物双方に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成することができることがあり得る。
【0163】
本例において、非錯体形成レンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有することができる。他の例において、非錯体形成レンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有することができる。
【0164】
方法は、さらに、非錯体形成レンズ本体を錯化溶液と接触させる工程、および錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。錯化溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなり得る。ボロン酸部分を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成することは、前述のように、眼科的に許容され得る酸をPVOHに“結合する”ことに等価である。錯体は、永続的または半永続的であることができ、例えば、必要により、使用の間、レンズ本体から錯体形成多価アルコールの緩慢な放出を可能にしてもよく、これはレンズ装用の間、快適さを高めることができる。
【0165】
接触させかつ錯体形成させる工程は、包装溶液を有するブリスタパッケージにレンズ本体を入れる前に行われるすすぎまたは浸漬プロセスの一部として行うことができる。あるいはまたはさらに、接触させかつ錯体形成させる工程は、包装溶液を有するブリスタパッケージにレンズ本体を入れる工程の一部として、レンズ本体を少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含む包装溶液と接触させ、ブリスタパッケージを密封しかつ滅菌することによって行うことができる。
【0166】
方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を洗浄溶液で洗浄する工程を含むことができる。レンズ本体を洗浄する工程は、レンズ本体と、水、揮発性アルコールの水溶液、または揮発性アルコールを本質的に含まない水溶液と接触させる工程を含むことができる。洗浄工程は、レンズ本体からダストまたはデブリを洗浄する段階、未反応のモノマー、部分的に反応したモノマー、希釈剤等の材料をレンズ本体から抽出する段階、レンズ本体を水和させる段階、またはこれらの組み合わせを含むことができる。洗浄溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。洗浄溶液は、レンズ本体を洗浄し、材料をレンズ本体から抽出し、レンズ本体を膨潤させ、レンズ本体を水和させ、かつこれらの組み合わせに効果的であり得る。洗浄工程は、レンズ本体を錯体形成させるのと同じ工程であり得る。洗浄工程は、1つ以上の処理工程の間、複数のレンズを保つように構成されるブリスタ包装においてまたはレンズトレーにおいて行うことができる。
【0167】
方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を水和溶液で水和させる工程を含むことができる。水和させる工程は、洗浄する工程、錯体形成させる工程、または入れる工程と別の工程を含むことができる。あるいは、水和させる工程は、レンズ本体を水または水溶液と接触させることを含むプロセスの他の工程に組み込むことができる。レンズ本体を水和させる工程は、レンズ本体を水またはレンズ本体を膨潤させるのに効果的な水溶液と接触させる段階を含むことができる。水溶液は、少なくとも1つの多価アルコール、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。水和させる工程は、レンズ本体を錯体形成させるのと同じ工程、レンズ本体を、包装溶液を有するブリスタパッケージに入れるのと同じ工程、またはこれらの双方であり得る。言い換えれば、レンズ本体は別の処理工程で水和させることができ、錯化溶液はレンズ本体を水和させるために用いることができ、包装溶液はレンズ本体を水和させるために用いることができ、または包装溶液はレンズ本体を錯体形成させかつ水和させる双方に用いることができる。
【0168】
本例のハイドロゲルレンズ本体を製造する方法において、方法は、さらに、レンズ本体(例えば、錯体形成レンズ本体または非錯体形成レンズ本体)を、ブリスタ溶液を有するコンタクトレンズブリスタパッケージに入れ、ブリスタパッケージを密封しかつ滅菌し、このことによりレンズ本体と包装溶液が滅菌される工程を含むことができる。一例において、密封され滅菌されたパッケージ内に存在するレンズ本体は、密封および滅菌後の非錯体形成レンズ本体である(すなわち、レンズ本体のコポリマーのボロン酸部分は、最終包装生成物において多価アルコールの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されない)。他の例において、密封され滅菌されたパッケージ内に存在するレンズ本体は、錯体形成レンズ本体である(すなわち、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部は、多価アルコールの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成する)。
【0169】
ボロン酸部分を1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成することは、前述のように、眼科的に許容され得る酸をPVOHに“結合する”ことに等価である。錯体は、永続的または半永続的であることができ、例えば、必要により、使用の間、レンズ本体から錯体形成多価アルコールの緩慢な放出を可能にしてもよく、これはレンズ装用の間、快適さを高めることができる。
【0170】
本例の錯体形成レンズ本体は、錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方を水和後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験した場合、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%小さい前進接触角を有することができる。
【0171】
本例の錯体形成レンズ本体は、錯体形成レンズ本体と匹敵するレンズ本体双方を水和後におよびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬した後に試験した場合、重合可能な組成物中少なくとも1つのボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせを含まない以外は同じ重合可能な組成物を用いて製造された匹敵するレンズ本体の前進接触角より少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%小さい前進接触角を有することができる。
【0172】
前述のように、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールは、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)の形態を含むことができる。PVOHは、PVOHの架橋された形態、例えば、ホウ酸で架橋されたPVOH、またはジアルデヒドまたはポリアルデヒドで架橋されたPVOH、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0173】
PVOHの形態は、低分子量を有するPVOHの形態、例えば、約75,000ダルトンより小さい分子量を有するPVOHの形態であり得る。低分子量形態のPVOHは、MOWIOL(登録商標) 4-88(MW=31,000ダルトン)またはMOWIOL(登録商標) 8-88(67,000ダルトン)(Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国)を含むことができる。
【0174】
PVOHの形態は、低加水分解レベルを有するPVOHの形態、例えば、約90%より低い加水分解を有するPVOHの形態であり得る。低分子量形態のPVOHは、MOWIOL(登録商標) 4-88(加水分解88%)またはMOWIOL(登録商標) 8-88(加水分解88%)(Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国)を含むことができる。
【0175】
錯体形成溶液の少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する多価アルコールは、カテコールまたはカテコール形態を含むことができる。カテコール形態は、重合されたカテコール形態を含むことができる。多価アルコールは、グリセリルモノメタクリレート(GMA)、またはグリセロールモノメタクリレート形態を含むことができる。グリセリルモノメタクリレート形態は、重合されたグリセリルモノメタクリレート形態を含むことができる。
【0176】
錯化溶液の多価アルコールは、少なくとももの1、2つのジオールまたは1つの、3つのジオール部分を有する第1のポリマーを含むことができる。第1のポリマーは、ビニルアルコールコポリマー、グリセリルモノメタクリレートコポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールおよび/またはグリセリルモノメタクリレートおよび親水性または疎水性モノマーの単位から形成されるコポリマーを含むことができる。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールおよび/またはグリセリルモノメタクリレート単位およびかさ高い側鎖を有するモノマーから形成することができる。かさ高い側鎖を有する多価アルコールのコポリマーは、ほぼ同じ分子量のビニルアルコールホモポリマーと比較して、レンズ本体のバルクにコポリマーの侵入を減少させるのに効果的であり得る。多価アルコールのコポリマーは、ビニルアルコールとビニルピロリドンコポリマー、ビニルアルコールとメタクリレートコポリマー、ビニルアルコールとグリセリルモノメタクリレートコポリマー、ビニルアルコールとホスホリルコリンコポリマー、グリセリルモノメタクリレートとビニルピロリドンコポリマー、グリセリルモノメタクリレートとホスホリルコリンコポリマー、これらの組み合わせ等を含むことができる。
【0177】
錯化溶液は、1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する第1のポリマー、および第1のポリマーと物理的に絡み合った(すなわち、架橋または化学結合されていない)第2のポリマーを含むことができる。第1のポリマー、第2のポリマー、または第1のポリマーと第2のポリマー双方は、レンズ本体の水和性を高めるのに効果的な湿潤剤、装用の間、レンズの快適さを高めるのに効果的な快適剤、またはこれらの双方を含むことができる。
【0178】
本例の方法は、また、ハイドロゲルレンズ本体を処理する方法を含むことができる。ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を処理する方法は: (i)(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含む重合可能な組成物を準備する工程; (ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合された反応生成物を形成する工程であって; 非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する、前記工程; および(iii)非錯体形成レンズ本体を少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含む第1の錯化溶液と接触させ、第1の錯化溶液中に存在する少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分の少なくとも1つをレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも1つと錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程を含むことができる。
【0179】
ハイドロゲルレンズ本体がハイドロゲルコンタクトレンズを含む具体例において、ハイドロゲルレンズ本体を処理する方法は、さらに、(iv)コンタクトレンズが第1の錯化溶液によって接触させられ、その後使用者によって装着された後、コンタクトレンズを少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなる第2の錯化溶液と接触させ、第2の錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3ジオール部分の少なくとも一部をレンズ本体内に存在するボロン酸部分の少なくとも一部で錯体形成させる工程を含むことができる。第1の錯化溶液の多価アルコールが第2の錯化溶液の多価アルコールと同じであってもよく、第1の錯化溶液の多価アルコールが第2の錯化溶液の多価アルコールと異なってもよい。
【0180】
この例は、また、ハイドロゲルレンズ本体に関する。ハイドロゲルレンズ本体は、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得るためにコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応させる重合可能な組成物の注型重合反応生成物を含み、重合可能な組成物は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; 少なくとも1つの親水性モノマー、および少なくとも1つの架橋剤を含み; ハイドロゲルレンズ本体は、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位; および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する。
【0181】
ハイドロゲルレンズ本体は、前側表面、後側表面、縁部および少なくとも1つの透明な視覚ゾーンを含むことができる。透明な視覚ゾーンは、正しい視野に構成され得る。
【0182】
ハイドロゲルレンズ本体は、非錯体形成レンズ本体であり得る。ハイドロゲルレンズ本体は、レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコール上に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されているレンズ本体(すなわち、錯体形成レンズ本体)であり得る。
【0183】
ハイドロゲルコンタクトレンズ本体は、熱可塑性樹脂から形成される金型表面を用いて注型することができる。
【0184】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa未満のモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有する。
【0185】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約100o未満の前進接触角、約0.3MPa未満のモジュラス、約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約110バレル未満の酸素透過性、および約35%から65%までの平衡含水率を有する。
【0186】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有する。
【0187】
錯体形成ハイドロゲルレンズ本体は、約60o未満の前進接触角、約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および約40%から65%までの平衡含水率を有する。
【0188】
本例は、また、ハイドロゲルコンタクトレンズパッケージに関する。ハイドロゲルコンタクトレンズパッケージは、(i)ハイドロゲルコンタクトレンズ体を得るためにコンタクトレンズ金型アセンブリにおいて反応させる重合可能な組成物の注型重合反応生成物、その重合可能な組成物が、(a)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態; (b)少なくとも1つの親水性モノマー、および(c)少なくとも1つの架橋剤を含み; そのハイドロゲルレンズ本体が、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位; 少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋を含むコポリマーから形成され; ここで、レンズ本体は、約120o未満の前進接触角、約1.6MPa未満のモジュラス、約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、約120バレル未満の酸素透過性、および少なくとも約30%の平衡含水率を有する; (ii)包装溶液; (iii)レンズ本体と包装溶液を保つように構成されたキャビティを有するコンタクトレンズパッケージベース部材; および(iv)コンタクト本体と包装溶液をコンタクトレンズパッケージの有効期間に等価な期間滅菌状態で維持するように構成されたベース部材に付着したシール部を含む。
【0189】
包装溶液は、少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールを含むことができる。
【0190】
少なくとも1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールは、錯化溶液、包装溶液、洗浄溶液、水和溶液、およびこれらの組み合わせ中に、約0.01%から約10%まで、約0.05から約5.0%まで、または約1.0%から約0.1%までの濃度で存在することができる。
【実施例】
【0191】
下記の実施例は、本発明のある態様および利点を具体的に説明するものであり、本発明がこのことにより制限されないことは理解されなければならない。各部、パーセントおよび比率は、特に明記しない限り質量による。
材料および方法
下記の略号および対応する化合物および構造を実施例において用いる。
SiGMA = (3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン。その構造は、以下の通りである:
【0192】
【化12】
シリコーンC = モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン。その構造は、以下の通りである:
【化13】
シリコーンC
【0193】
Tris = 3-[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート。その構造は、以下の通りである:
【化14】
【0194】
DMA =N,N-ジメチルアクリルアミド。
VMA =N-ビニル-N-メチルアセトアミド。
MMA = メチルメタクリレート。
HEMA =ヒドロキシエチルメタクリレート。
EGMA =エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート。
EGDMA =エチレングリコールジメタクリレート。
TEGDMA = トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート。
TEGDVE = トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル。
VAZO(登録商標) 64 = 2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)。
UV 416 = Cyasorb UV-416、Cytec製、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート。
VPB = 4-ビニルフェニルボロン酸。
PBS =リン酸緩衝食塩水(20mM、pH=7.3 )。
NaCMC =カルボキシルメチルセルロースナトリウム。
PEI 25K = ポリ(エチレンイミン)溶液 Mw〜2500。
PVOH = ポリビニルアルコール(例えば、MOWIOL(登録商標)シリーズポリビニルアルコール、Kuraray、ヒューストン、テキサス州、米国、MOWIOL(登録商標)、4-88(MW=31K)、MOWIOL(登録商標) 8-88(67K)、MOWIOL(登録商標) 18-88(130K)、MOWIOL(登録商標) 40-88(127K)、MOWIOL(登録商標) 40-88(205K); PVOH 98-99%(MW=146-186K)、PVOH 96%(85-124K)、PVOH 87-89%(13-23K)、PVOH 87-89%(31-50K)、PVOH 87-89%(85-124K)、87-89%(146-186K))。
JEFFAMINE(登録商標)ED-600 ポリエーテルアミン = プロピレンオキシドをキャップしたポリエチレングリコール(Huntsman Corporation、Woodlands、テキサス州、米国)から得られる脂肪族ポリエーテルジアミン。
PVP 1300K = ポリビニルピロリドンMw〜1300K
MPC = 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(Lipidure(登録商標)、NOF Corporation、東京、日本)。
VB6= VAT Blue 6(7,16-ジクロロ-6,15-ジヒドロアントラジン-5,9,14,18-テトロン)。
【0195】
コンタクトレンズの調製
下の表の一部によって示される成分および構成成分のさまざまな組み合わせを混合することによって重合可能なレンズ組成物を調製した。レンズ配合物を下記の一般方法でレンズに形成した。
【0196】
コンタクトレンズ金型を、従来の射出成形技術および設備を用いて無極性ポリプロピレン樹脂から射出成形した。各コンタクトレンズ金型には、コンタクトレンズの前面を形成する凹光学的特性表面を含む雌型部材およびコンタクトレンズの裏面を形成する凸光学的特性表面を含む雄型部材を含まれた。雌型部材は前面金型であると理解することができ、雄型部材は裏面金型であると理解することができる。
【0197】
重合可能なレンズ組成物の量(約60μl)を雌型部材の凹面上に配置した。雌型部材を雌型部材と接触させて配置すると、雌型部材の凹面と雄型部材の凸面の間に形成されたコンタクトレンズ形のキャビティ内に重合可能なレンズ組成物が位置した。雄型部材を雌型部材と雄型部材の周辺領域の間の締りばめによって適切な所に固定した。
【0198】
次に、重合可能なレンズ組成物を含有するコンタクトレンズ金型をオーブンに入れ、重合可能なレンズ組成物を約100℃の温度で約30分間硬化した。硬化後、コンタクトレンズ金型は、コンタクトレンズ形のキャビティ内に重合されたコンタクトレンズ生成物を含有した。
【0199】
コンタクトレンズ金型をオーブンから取り出し、室温(約20℃)に冷却した。コンタクトレンズ金型を機械的に型抜きし、雄型部材と雌型部材を相互に分離した。重合されたコンタクトレンズ生成物は、雄型部材に付着したままにした。
【0200】
次に、重合されたコンタクトレンズ生成物を雄型部材から機械的に脱レンズして、コンタクトレンズ生成物を雄型部材から分離した。次に、分離されたコンタクトレンズ生成物をブリスタ包装においてホウ酸塩緩衝食塩水中に封入して、包装された水和コンタクトレンズを形成した。ブリスタにおけるレンズを水溶液中でオートクレーブ処理することによって滅菌した。オートクレーブ処理に用いられる水溶液は、評価中湿潤剤を含むことができる。
【0201】
レンズ生成物を確認する方法
水のブレイクアップ時間(WBUT)。試験の前に、レンズを3mlの新鮮なPBSに少なくとも24時間浸漬する。試験直前に、レンズを振盪して、過剰のPBSを取り除き、水膜がレンズ表面から後退するのにかかる時間の長さを秒で求める(例えば、水のブレイクアップ時間(水BUTまたはWBUT))。
【0202】
(前進接触角/後退接触角) 前進接触角は、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、ここに示されるコンタクトレンズの前進接触角および後退接触角は、捕捉気泡法を用いて測定することができる。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの前進および後退水接触角は、Kruss DSA 100機器(Kruss GmbH、Hamburg)を用いて、D. A. Brandreth: "Dynamic contact angles and contact angle hysteresis", Journal of Colloid and Interface Science, vol. 62, 1977, pp. 205-212、R. Knapikowski, M. Kudra: Kontaktwinkelmessungen nach dem Wilhelmy-Prinzip-Ein statistischer Ansatz zur Fehierbeurteilung", Chem. Technik, vol. 45, 1993, pp. 179-185、米国特許第6,436,481号明細書に記載されているように求めることができ、すべて本願明細書に全体として組み込まれるものとする。
【0203】
一例として、前進接触角および後退接触角は、リン酸緩衝食塩水(PBS; pH=7.2)を用いた捕捉気泡法を用いて求めることができる。試験の前に、レンズをpH 7.2 PBS溶液に少なくとも30分間または一晩浸漬する。レンズを石英面上に平らにし、試験の前に10分間PBSで再水和する。気泡を自動シリンジシステムを用いてレンズ表面上に配置する。気泡のサイズは、増減することができ、後退角(気泡サイズを増大するときに得られるプラトー)および前進角(気泡サイズを減少するときに得られるプラトー)を得る。
(静的接触角) 静的接触角は、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、静的接触角は、捕捉気泡法を用いて、またはDSA 100drop shape analysis system(Kruss、Hamburg、Germany)を用いて求めることができる。試験の前に、レンズをpH 7.2 PBS溶液に少なくとも30分または一晩浸漬する。
【0204】
(モジュラス) レンズ本体のモジュラスは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、約4mmの幅を有するコンタクトレンズのピースをレンズの中心部から切断することができ、モジュラス(単位; MPa)は、インストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いて、空気中25℃における湿度少なくとも75%で10mm/分の速度の引張試験によって得られた応力-ひずみ曲線の初期傾斜から求めることができる。
【0205】
(PVOH取り込み) ブリスタ溶液からのPVOH取り込みは、レンズをPVOH溶液を含有するブリスタ溶液中に室温(RT)で所定の時間、例えば、48時間入れた後、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0206】
(イオノフラックス) 本レンズのレンズ本体のイオノフラックスを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、コンタクトレンズまたはレンズ本体のイオノフラックスを、米国特許第5,849,811号明細書に記載されている“イオノフラックス技術”と実質的に類似の技術を用いて測定することができる。例えば、測定されるレンズを、レンズ保持装置に、雄部と雌部の間に入れることができる。雄部と雌部は、レンズとそれぞれの雄部または雌部の間に位置決めされる可撓性シールリングを含む。レンズをレンズ保持装置に位置決めした後に、レンズ保持装置をネジ付きリッド内に置く。リッドをガラス管にネジでとめて、ドナーチャンバを形成する。ドナーチャンバを、16mlの0.1モルNaCl溶液で充填することができる。受容チャンバを、80mlの脱イオン水で充填することができる。導電率計のリード線を受容チャンバの脱イオン水に浸漬し、スターバーを受容チャンバに加える。受容チャンバをサーモスタットに入れ、温度を35℃に保持する。最後に、ドナーチャンバを受容チャンバに浸漬する。伝導率の測定は、ドナーチャンバを受容チャンバに浸漬した10分後に始めて、2分毎に約20分間測定することができる。伝導率と時間データは、実質的に直線でなければならない。
【0207】
(引張強さ) レンズ本体の引張強さは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、約4mmの幅を有するコンタクトレンズのピースをレンズの中心部から切断することができ、引張強さ(単位; MPa)をインストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いた試験から求めることができる。
【0208】
(伸び) レンズ本体の伸びを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、伸び(%)は、インストロン3342(Instron Corporation、ノーウッド、マサチューセッツ州、米国)を用いて求めることができる。
【0209】
(酸素透過性(Dk)) 本レンズのDkは、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、Dk値は、高伝達性ソフトコンタクトレンズのための酸素透過性(Dk)の1個のレンズでのポーラログラフ測定、M. Chhabra et al., Biomaterials 28 (2007) 4331-4342に記載されるように、変更ポーラログラフ法を用いて求めることができる。
【0210】
(平衡含水率(EWC)) 本レンズの含水率を、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、水和シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、水性液から取り出し、拭き取って、過剰の表面水を除去し、計量することができる。次に、計量したレンズを、減圧下で80℃のオーブン内で乾燥することができ、次に、乾燥したレンズを計量することができる。水和したレンズの質量から乾いたレンズの質量を減算することによって質量差を求める。含水率(%)は、(質量差/水和した質量)×100である。
【0211】
(レンズの中心厚(CT)) CTを、当業者に既知の通常の方法を用いて求めることができる。例えば、CTは、Rehder ETゲージ(Rehder Development Company、カストロバレー、カリフォルニア州、米国)を用いて求めることができる。
【実施例1】
【0212】
一連のコンタクトレンズを、下記の表1および表2に示されるように、重合可能なレンズ組成物によって調製した。成分を配合物中の成分の質量に基づいて表示された単位部で組み合わせることによって配合物を調製した。
【0213】
レンズ内に存在するボロン酸部分に結合するために用いるのに可能な物質の評価を行った。少なくとも1つのボロン酸部分、詳しくは用いられる配合物中のVPBを有する重合可能な物質を含有するレンズを、下記の表1および表2に示される成分と量を用いて調製し、次に、表3に示される種々の化合物の水溶液中でオートクレーブ処理して、どの化合物がレンズの表面に結合するかを求めた。カルボキシルメチルセルロースナトリウム(Na CMC)、寒天、グリセロール、およびポリビニルアルコール(PVOH)を評価した。配合物1に用いられる試料レンズ1-12、ここで、レンズを1.2mlの示された溶液中でオートクレーブ処理した。配合物2に用いられる試料13-16、ここで、レンズを2.4mlの表示された溶液中でオートクレーブ処理した。表3において、同じレンズに対して行われた2つの逐次試験についてデータを報告する。
【0214】
表1
【0215】
表2
【0216】
表示された試験溶液中でオートクレーブ処理した調製レンズに対するWBUT結果を下記の表3に示す。
表3
【0217】
デンプンおよび隣接する原子が原子の各々に結合したヒドロキシル基を有する構造を有する他の化合物、例えば隣接ジオールや1,2-ポリオール構造を有する化合物は、同様にボロン酸部分に結合すると思予想されたが、これがその場合であるとはわからなかった。ポリエーテルアミン、ポリ(ビニルピロリドン)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を含む他の既知の快適さおよび/または水和性を高める物質を同様に評価し、レンズの表面に結合しないことがわかった。3つの炭素原子が右側の炭素原子、中央の炭素原子および左側の炭素原子として一列に結合し、ここで、1級ヒドロキシル基が右側の炭素原子におよび左側の炭素原子に結合され、ヒドロキシル基が中間の炭素原子に結合されていない、少なくとも3つの炭素原子を含む主鎖を有する多価アルコールを含有する溶液のみが湿潤性レンズを得ることがわかった。理論に縛られるつもりはないが、多価アルコールのこの特定の構造が、ボロン酸の重合可能な形態を含む、眼科的に許容され得る酸の形態からなる表面と接触して配置される場合、予想外にこれらの表面に良く結合し、結果としてこれらの表面が長期間にわたって良好な湿潤性を示しかつ保持することになると思われる。この実験において、その構造を有するPVOHの形態が、重合されたボロン酸部分を含有するレンズを処理するために用いられた場合、湿潤性レンズ表面を得ることがわかった。これらの実験において、湿潤性レンズ表面の存在は、試験化合物(この実験の場合、1,3-ポリオール構造を有する多価アルコールは少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を含む、特にPVOHの形態)がレンズ表面上に存在したことを示すとみなした。
【実施例2】
【0218】
表6に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。表4に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。表示された単位部の成分を組み合わせることによって配合物を調製した。VPB量は、この評価のために異なる。
【0219】
本実験は、類似の配合物のレンズにおいて少なくとも1つのボロン酸部分を有する重合可能な物質の濃度の水のブレイクアップ時間(WBUT)に対する効果を評価するために行った。用いられるPBS(リン酸緩衝食塩水)は、20mM、pH=7.3であった。各タイプの1つのレンズを、続いての時点で繰り返し試験した; 報告したデータ(例えば: 5、6)は、同じレンズに対して行った第1および第2の試験についてである。WBUTの測定のために、レンズを5mlのPBSで簡単に洗浄した後、この時点のデータを、異なるレンズについて、次にその他の時点で集めた。1.2mLのPBSにおいて試験したレンズの試験条件に関して、レンズを1.2mlのPBSに入れ、37℃において100rpmの速度で振盪した。レンズのWBUTを、オートクレーブ処理後および6、12および24時間の振盪後に求めた。すべての配合物のレンズを、PBS中の2.4mlの0.50% PVOH(MW 146K〜186K、加水分解87-89%)溶液中でオートクレーブ処理した。
【0220】
表4
【0221】
表5
【0222】
表6
【0223】
眼科的に許容され得る酸(VPB、ボロン酸の重合可能な形態)の形態を含んでい含有する配合物から製造したレンズは、0.5% PVOH溶液中でオートクレーブ処理した後に良好な最初の表面水和性を示したが、眼科的に許容され得る酸、VPBを含有しない配合物から製造されたレンズは、0.5% PVOH溶液中でオートクレーブ処理した後、良好な最初の表面水和性を示さなかった。PVOHを含まないPBSの新鮮な試料を6時間の振盪した後、1%、2%および3% VPBを含有する配合物から製造したレンズは、良好な水和性を示した。新鮮なPVOHを含まないPBS中でさらに6または12時間振盪するとVPBを含有するレンズの表面水和性が減少したが、3% VPBを含有る配合物から製造したレンズは、実験終了後まだ良好な湿潤性を保持した。
【実施例3】
【0224】
配合物1の水和性に関する試験管内動力学実験を行った。コンタクトレンズを実施例2に記載されたレンズ配合物1によって調製した。対照として、市販のBIOFINITY(登録商標)コンタクトレンズを用いた(CooperVision Inc.、プレザントン、カリフォルニア州、米国)。配合物1レンズを、0.5% PVOH溶液(MW=146K-186K PVOH 加水分解87-89% 純度99.9%を用いて製造した)を有する1.2mlのPBS(20mM)に別々に包装し、オートクレーブ処理(30分、121℃)し、室温で2日間保持し、次にパッケージ当たり3.6mlのPBS(20mM)を用いて別々に包装した。1つのレンズについて、24時間試験を試験した。2つのレンズについて、48時間試験を試験した。すべてのレンズを、表示された時点に3.6mlのPBS中で35℃において100rpmの速度で振盪した。試験結果を表7に示す。
【0225】
表7
【0226】
表7の結果で示されるように、眼科的に許容され得る酸を含んでい含有する配合物から製造され、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液と接触させたレンズの静的接触角と前進接触角を求め、対照、すなわち、市販のBIOFINITY(登録商標)レンズにほぼ等価であることがわかった。
【実施例4】
【0227】
表8に示される重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。表示されたベース配合物は、実施例2に既に述べた。眼科的に許容され得る酸を含有するレンズ配合物の水和性について、レンズが接触溶液中でオートクレーブ処理されるときの接触溶液濃度、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液を含む接触溶液の効果を評価するために本実験を行った。この実験について、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールは、質量平均分子量146K〜186K、加水分解87-89%を有するPVOHを用いた。レンズを3.6mlのPBSに入れ、37℃において100rpmで振盪した。レンズのWBUTを、オートクレーブ処理後かつ24時間の振盪後に求めた。
【0228】
表8
【0229】
PVOH溶液のすべての濃度においてオートクレーブ処理された配合物7のレンズは、オートクレーブ処理後のはじめに良好な水和性を示した。PVOHを含まないPBS中で24時間振盪した後、0.5%および0.25% PVOH中でオートクレーブ処理したレンズは、まだ許容され得る水和性を示した。
【実施例5】
【0230】
表9に示される重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。配合物8(対照)および配合物9として示した重合可能な組成物配合物を用いてレンズを調製した。成分を表示された単位部量を組み合わせることによって配合物を調製した。
【0231】
眼科的に許容され得る酸、特に、眼科的に許容され得る酸の重合可能な形態(VPB)を含む配合物から製造されるレンズから、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、特にPVOHの形態の取り込みと放出を評価した。
【0232】
表9
【0233】
得られた反応生成物(レンズ)を水和し、20mlのPBS中でオートクレーブ処理した。本実験のために、レンズを引き続きPBS(20ml)に3オートクレーブサイクル(1サイクルにつき20分)の間浸漬して、GPCクロマトグラフィによるPVOHの分析を妨げ得るレンズからの浸出可能な材料を除去した。製造のために、有機溶媒または有機溶媒の溶液で抽出することができるので、追加の3オートクレーブサイクルを省略することができる。はじめに、上記のように処理した3つのレンズを、PBS中の3mlの100ppm PVOH溶液(用いられるPVOHの形態は、MOWIOL(登録商標) PVOH、40-88 205K、加水分解88%であった)に浸漬した。実験の各時点で、レンズを新鮮な100ppm PVOH溶液に移し、レンズが移されたPVOH溶液の濃度を、標準法を用いるGPCによって定量化した。時点において溶液中に存在したままのPVOHの濃度に基づいて、レンズ当たりのPVOHの蓄積取り込み量を各時点について算出した。
【0234】
配合物8(対照)(“■”)および配合物9(“◆”)のレンズによるPVOH取り込みは、図3にプロットされている。図3の結果によって示されるように、少なくとも1つのボロン酸部分を有する重合可能な物質を含まずに、配合物8(対照)を用いて製造したレンズは、1日目の間に平均7.1μgのPVOH/レンズおよび1日目以後に0μg PVOH/レンズを吸収することがわかった。追加のPVOHがレンズによって吸収されなかったので、1日目と2日目のデータだけがグラフに含まれる。眼科的に許容され得る酸としてVPBを含有する、配合物9を用いて製造されたレンズは、実験した10日間かけて溶液から少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、特にPVOHを吸収し続けることがわかった。レンズが、10日間かかけて平均17.9μgのPVOH/レンズを吸収することがわかった。
【実施例6】
【0235】
実施例5に記載したような配合物8(対照)と配合物9の重合可能なレンズ組成物によってコンタクトレンズを調製した。本実験のために、配合物8および配合物9のレンズによるPVOH放出を評価した。配合物8と配合物9を用いて製造される16の個別に包装されたレンズを調製した。レンズを、PBS中の5000ppm PVOH溶液(用いられるPVOHの形態は、MOWIOL(登録商標) PVOH、40-88 205K、加水分解88%であった)に個別に浸漬した。オートクレーブ処理後の7日間レンズを浸漬して、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、本実験においてはPVOHの形態中でこれらを完全に飽和した。7日間浸漬した後、個々のレンズを拭いて、追加の溶液を除去し、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含有しない10mlのPBSに移し、実験の間、35℃で貯蔵した。時点の各々で、PBSの試料を各バイアルから取り出し、GPCを用いて分析した。分析後に残存する試料をバイアルに戻し、次の時点までバイアルを35℃で貯蔵に戻した。GPC分析を、標準法を用いて行い、100ppm、80.23ppm、51.03ppm、23.59ppm、および10.00ppm PVOHの校正標準を用いた。
【0236】
配合物8(“■”)と配合物9(“◆”)のレンズによるPVOH放出が図3にプロットされている。図3に示されるように、レンズは配合物9と配合物8を用いて製造されたレンズが共に最初の2時間以内に平均5.9μg PVOH/レンズを放出することがわかった。配合物9のレンズが実験の過程にわたってわずかにより多くのPVOHを放出したが著しい量ではなかった。配合物8の対照レンズは、後の時点でさらにPVOHを放出しなかった。レンズ取り込み実験からのデータには、配合物8のレンズが実験の最初の2時間で(実験の許容誤差内で)吸収したPVOHの全てを本質的に放出したことを示すことがこのプロットに含まれたが、少なくとも8時間後、配合物9のレンズは吸収したPVOHのほとんどを保持した(2時間後に放出された平均5.9μgのPVOH/レンズがない吸収された平均17.9μgのPVOH/レンズは、平均約12μgのPVOH/レンズが2時間後のレンズ内にまたはそれの上に残存したままであった。
【0237】
さらに、眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸(VPB)の重合可能な形態を含有しかつ少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液によって接触された、配合物9を用いて製造されたレンズが湿潤性であることがわかったが、眼科的に許容され得る酸を含有せずかつ少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの溶液によって接触された、配合物8で製造されたレンズが湿潤性でないことがわかったことは注目された。
【実施例7】
【0238】
ベース配合物として、実施例2に記載された配合物1を用いて、表10に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。配合物1のレンズを、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールの一連の溶液、この実験においては、変化に富む濃縮の変化に富む加水分解パーセント(モル%)が種々の濃度で異なった一連のPVOH溶液と接触したさせ、得られたレンズのWBUTを評価した。配合物1のレンズを、実施例2に記載されたように、調製し、表示されたタイプのPVOHを含有する1.2mlのPBSに表示された濃度で包装され、オートクレーブ処理され、室温で2日間維持した。次に、レンズパッケージを開き、レンズを3.6mlのPVOHを含まないPBSに移し、100rpmの速度と35℃の温度で表示された時間量振盪した。表示された時点で、レンズのための水のブレイクアップ時間を、静的接触角および前進接触角とともに求めた(いずれも捕捉気泡法を用いて求めた)。
【0239】
表10
【0240】
これらのレンズで評価したPVOH溶液の全ての使用が、良好なWBUTおよび良好な静的接触角と前進接触角を最高5日間維持されるレンズになることがわかり、レンズが実験の間、眼科的に湿潤性のままであることが示された。
【実施例8】
【0241】
眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸VPBの重合可能な形態を含有する、配合物1を用いた重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。レンズを、表11に示されるように、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールを含む溶液、特に平均分子量が異なるPVOH溶液と接触させた。表11に示されるPVOHグレードには、加水分解の程度(98%または99%)が含まれる。実施例2に記載されている配合物1のレンズを調製し、表示されたタイプPVOHを表示された濃度で含有する1.2mlのPBS中に包装し、オートクレーブし、室温で3日間維持した。次に、レンズパッケージを開き、レンズのWBUTまたは前進接触角(捕捉気泡法によって)を測定するためにレンズを試験した。レンズを、さらに3.6mlのPVOHを含まないPBSに移し、100rpmの速度および35℃の温度で24時間振盪し、その時間にレンズのWBUTおよび前進接触角(捕捉気泡法によって)を求めた。
【0242】
表11
【0243】
PVOHの形態の平均分子量がレンズの水のブレイクアップ時間に影響することを見出し、より高分子量形態によってより長いWBUTを有するレンズが得られる。
【実施例9】
【0244】
表12に示されるシリコーンを含まない重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。配合物を、成分を表示された単位部で組み合わせることによって調製した。シリコーンを含まないレンズ配合物を、眼科的に許容され得る酸、特にボロン酸の重合可能な形態(VPB)を添加してまたは添加せずに調製した。
【0245】
表12
【0246】
シリコーンを含まないレンズ配合物の評価について引張強さ、モジュラス、伸び、およびPVOH取り込みを行った。レンズを0.5% MOWIOL(登録商標) 40-88(MW〜205k)を含有する1.2mlのPBSブリスタ溶液に室温で24時間入れた後、ブリスタ溶液からのPVOH取り込みをGPCによって求めた。表12の配合物を用いて調製したレンズの特性を表13に示す。
【0247】
表13
【0248】
眼科的に許容され得る酸(VPB)を含有する配合物から製造されたレンズを、PVOH溶液に24時間入れた後に溶液から著しくPVOHを吸収した。
【実施例10】
【0249】
表14および表15に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。一組の配合物(10〜13)は、配合物の最初のWBUT結果によって確認されるように、もう一組の配合物(14〜17)と比較して事実上より疎水性であった。双方の組の配合物における眼科的に許容され得る酸(VPB)の含量を変動させた(0%、1%、2%および3%のVPB)。少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール(PVOH)の経時取り込みレベルについて配合物の各々を評価した。
【0250】
表14
【0251】
表15
【0252】
得られたレンズを型抜し、脱レンズし、各レンズを個別の20mlのガラスバイアルに包装した。レンズを水和させるために、各バイアルを5mlのPBSで充填し、30分間水和させた。水和後、バイアルとレンズは3フラッシュサイクルを受け、各サイクルはレンズを60分間PBSに入れた後、5mlのPBSを5mlの新鮮なPBSに置き換えることからなる。レンズによるPVOH取り込みは、同じ配合物の20のレンズを組み合わせ、各レンズから表面水を拭き取り、20のレンズをPBS中の10mlの200ppm PVOH溶液に浸漬することによって実験した。各レンズをPVOH溶液に個別に添加して、レンズが全て一緒に粘着することを妨げた。用いられるPVOH溶液は、表示されるように、200ppmのMOWIOL(登録商標) 40-88 PVOH、MW 約205,000ダルトン、200ppmのMOWIOL(登録商標) 20-98 PVOH、約MW 146,000ダルトンであった。第1の時点(時間0)について、最後のレンズが添加された直後に、PVOH溶液から20のレンズを取り出した。残り試料を、表示された時点までRTで貯蔵した。残り試料について、1日目、2日目、3日目、7日目、10日目、および14日目の時点で、レンズをPVOH溶液の新鮮な試料に移し、古いPVOH溶液をGPC試験に保持して、PVOH溶液濃度を求めた。PVOH溶液の試料を、ウルトラハイドロゲル線形カラム(Waters Corporation、ミルフォード、マサチューセッツ州、米国)を用いて、H2O:10% MeOH中の90% 0.1M NaNO3の移動相で、0.8ml/分の流速で、200μlの注入量、45℃のカラム温度および屈折率(RI)検出器でGPCによって分析した。PVOHピークの1つの間で浸出した線状ポリマーピークと重なるため、ピーク面積よりもピーク高さを用いてPVOHを定量化した。PVOH取り込みに加えて、レンズ直径と水のブレイクアップ時間(WBUT)を0日目と14日目に測定した。最初(時間0)のWBUTをPBS中で測定し; 14日目のレンズをPBSに移し、PBS中に5日間貯蔵した後、WBUTを求めた。表16および表17におけるレンズ直径とWBUTに報告され値は、5レンズの試料サイズに基づく。
【0253】
表16
【0254】
表17
【0255】
評価した2つの形態のPVOH(MOWIOL(登録商標) 20-98 PVOHおよびMOWIOL(登録商標) 40-88 PVOH)の取り込み速度を疎水性配合物(10〜13)および親水性配合物(14〜17)について図4〜7に示す。PVOHの双方の形態については、最初の時点後にレンズによって吸収されたPVOHの全量は、疎水性配合物より大きかった。配合物中のより高レベルのVPB含量は、一般的には、より高レベルのPVOHがレンズによって吸収されることになることが見出されたが、全体の取り込み結果はPVOHのいずれかの形態を有する疎水性配合物、または20-98 PVOHを有する親水性配合物に直線的に濃度依存性でなかった。40-88 PVOHで試験した疎水性配合物について、PVOHの全体の取り込みは、配合物中に存在するVPB濃度に基づいて直線的に濃度依存性であった。2単位部より少ないVPBを含有する配合物のレンズによるPVOHの取り込みは、約100と150時間の間で定常状態に達するようであるが、3部のVPBを含有する配合物は、一般的には、定常状態に達するのに250時間以上を必要とした。
【実施例11】
【0256】
表18に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。これらの配合物において、異なるタイプの眼科的に許容され得る酸、特に異なる形態の重合可能な眼科的に許容され得る酸を用いた。これらの配合物に用いられる眼科的に許容され得る酸は、4-ビニルフェニルボロン酸(VPB、Alfa Aesar、ウォードヒル、マサチューセッツ州、米国)、3-ビニルフェニルボロン酸(3-VPB、Sigma-Aldrich、アトランタ、ジョージア州、米国)、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸(MAPBA、Combi-Blocks Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)および3-アクリルアミドフェニルボロン酸(AAPBA、Frontier Scientific Inc.、ローガン、ユタ州、米国)を含有する。これらの重合可能なレンズ組成物から形成される結得られたレンズは、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール、この実験については、0.5% MOWIOL(登録商標) 20-98 PVOHの溶液と接触させた。眼科的に許容され得る酸を含む重合可能なレンズ組成物を重合しかつこれらを少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオールと接触させた後、レンズを5mlのPBSで洗浄した。
【0257】
表18
【0258】
表19
【0259】
Combi-Blocksから購入したMAPBAは、原料が予想された白色粉末よりもむしろ色が橙色-赤色であった固体塊の材料であったので非常に低純度のようであった。このために、配合物19のレンズが実際に3単位部よりはるかに少ないMAPBAを含有し、PVOH溶液と接触させた場合に良好な水和性を示さず、PVOH溶液と接触させ、引き続きPBSで洗浄した後に、良好な水和性を保持しないレンズが得られたと考えられる。オフタルミン酸の重合可能な形態、特にボロン酸の重合可能な形態を含む重合可能な組成物から製造されたその他のレンズのすべては、少なくとも5つのペンダントヒドロキシル基を有する1,3-ポリオール(この実験においては、PVOH)と接触させた後に良好な水和性を示し、引き続きPBSで洗浄した後に良好な水和性を保持した。
【実施例12】
【0260】
表20に示される重合可能なレンズ組成物によって一連のコンタクトレンズを調製した。これらの重合可能な組成物から形成される得られた非錯体形成レンズ本体の特性を表21に示す。
【0261】
表20
【0262】
表21
【0263】
型抜きおよび脱レンズ後、表22に示されるように、配合物23の非錯体形成レンズ本体を、リン酸緩衝食塩水中に1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を含む多価アルコールからなる錯化溶液を用いて接触させた。p-GMA錯化溶液は、リン酸緩衝食塩水中のポリ(グリセリルモノメタクリレート)の0.5% wt/wt溶液からなる。0.5% GMA/MPC錯化溶液は、リン酸緩衝食塩水中のグリセリルモノメタクリレートと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのコポリマーの0.5% wt/wt溶液からなり、0.5% GMA/NVP錯化溶液は、グリセリルモノメタクリレートとビニルピロリドンのコポリマーの0.5% wt/wt溶液からなる。GMAホモポリマーおよびコポリマーは、97%の純粋なグリセリルモノメタクリレート(Monomer Polymer、Trevose、ペンシルバニア州、米国)を用いて社内で製造した。非錯体形成レンズ本体および錯体形成レンズ本体は、錯化溶液とともにブリスタパッケージに入れ、密封し、121℃で20分間オートクレーブ処理し、室温で48時間の平衡化した。水和した非錯体形成および錯体形成レンズ本体の前進接触角を、レンズ本体をPBS中で少なくとも6時間平衡化した後に捕捉気泡法を用いて求めた。
【0264】
表22
【0265】
各錯化溶液について試験した2つのレンズの平均値に基づいて、錯体形成レンズ本体は、非錯体形成レンズ本体の前進接触角より小さい約12%から約19%までの範囲にある前進接触角を有した。
【0266】
出願人は、特に、本開示に引用したすべての参考文献の全体の内容を組み込んでいる。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメータを、範囲、好適範囲、またはより上の好ましい値およびより低い好ましい値のリストとして示される場合には、特に、範囲が別々に開示されるかにかかわらず、上限または好適値と下限または好適値の対から形成されるすべての範囲を開示するものとして理解されるべきである。特に明記しない限り、数値の範囲が本願明細書に列挙される場合、範囲は、その終点、およびすべての整数および範囲内の分数を含くむものとする。範囲を区切る場合に列挙される個々の値に本発明の領域が限定されることは意図しない。
【0267】
本発明の他の実施態様は、本明細書に開示される本発明の本明細書および実施を考慮することから当業者に明らかである。本明細書および実施例が例示のみとしてみなされ、本発明の真の範囲および精神が以下の特許請求の範囲およびその等価物によって示されることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法であって:
(i)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態;
少なくとも1つの親水性モノマー、および
少なくとも1つの架橋剤
を含む重合可能な組成物を準備する工程; および
(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、
少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および
少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋
を含むコポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合反応生成物を形成する工程であって;
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約120o未満の前進接触角、
約1.6MPa未満のモジュラス、
7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約120バレル未満の酸素透過性、および
少なくとも約30%の平衡含水率
を有する、前記工程を含む、前記方法。
【請求項2】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態が、下記構造を有するボロン酸である、請求項1に記載の方法:
【化1】
【請求項3】
少なくとも1つの親水性モノマーが、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの架橋剤が、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
重合可能な組成物が、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含み、コポリマーが、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体が、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、約2,000ダルトンより大きい平均分子量を有するシリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、その主鎖、側鎖またはこれらの双方に少なくとも約10のエチレンオキシド(EO)単位を有するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、存在するエチレンオキシド(EO)単位の数と存在するジメチルシロキサン(DMS)単位の数との比率が約0.20から0.55までであるシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
コンタクトレンズ金型アセンブリの成形面が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約100o未満の前進接触角、
約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、
5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約110バレル未満の酸素透過性、および
約35%から65%までの平衡含水率
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約60o未満の前進接触角、
約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、
4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および
約40%から65%までの平衡含水率
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(iii)非錯体形成レンズ本体を少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなる錯化溶液と接触させ、錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
非錯体形成レンズ本体を、包装溶液を有するコンタクトレンズのブリスタパッケージに入れ、ブリスタパッケージを密封し、包装溶液とレンズ本体を滅菌する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方が、水和された後およびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間の浸漬した後に試験される場合、錯体形成レンズ本体の前進接触角が、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも10%小さい、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
コンタクトレンズ金型アセンブリ内で反応させて、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得る重合可能な組成物の注型重合反応生成物であって、重合可能な組成物が、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態;
少なくとも1つの親水性モノマー; および
少なくとも1つの架橋剤
を含む、前記注型重合反応生成物を含む、ハイドロゲルレンズ本体であって、ハイドロゲルレンズ本体が、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、
少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および
少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋
を含むコポリマーから形成され、ここで、レンズ本体が
約120o未満の前進接触角、
約1.6MPa未満のモジュラス、
約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約120バレル未満の酸素透過性、および
少なくとも約30%の平衡含水率
を有する、前記ハイドロゲルレンズ本体。
【請求項16】
レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコールについて存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成し、レンズ本体が錯体形成レンズ本体である、請求項1に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項17】
リン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬された水和レンズ本体を試験することによって測定されるように、錯体形成レンズ本体の前進接触角が、少なくとも1つの多価アルコールについて存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されるコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部を含まない以外は同じ組成物のレンズ本体の前進接触角より少なくとも10%小さい、請求項16に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項18】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態が、下記構造を有するボロン酸である、請求項15に記載のレンズ本体:
【化2】
【請求項19】
レンズ本体が、
約100o未満の前進接触角、
約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、
約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約110バレル未満の酸素透過性、および
約35%から約65%までの平衡含水率
を有する、請求項15に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項20】
錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体が、
約60o未満の前進接触角、
約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、
約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約55バレルから約110バレルまでの酸素透過性、および
約40%から約65%までの平衡含水率
を有する、請求項16に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項1】
ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を製造する方法であって:
(i)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物、またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態;
少なくとも1つの親水性モノマー、および
少なくとも1つの架橋剤
を含む重合可能な組成物を準備する工程; および
(ii)重合可能な組成物をコンタクトレンズ金型アセンブリに注型して、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、
少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および
少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋
を含むコポリマーから形成される非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体である重合反応生成物を形成する工程であって;
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約120o未満の前進接触角、
約1.6MPa未満のモジュラス、
7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約120バレル未満の酸素透過性、および
少なくとも約30%の平衡含水率
を有する、前記工程を含む、前記方法。
【請求項2】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態が、下記構造を有するボロン酸である、請求項1に記載の方法:
【化1】
【請求項3】
少なくとも1つの親水性モノマーが、少なくとも1つのビニル部分を有する親水性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの架橋剤が、少なくとも1つのビニル部分を有する架橋剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
重合可能な組成物が、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含み、コポリマーが、さらに、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーの重合単位を含み、非錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体が、非錯体形成シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ本体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、約2,000ダルトンより大きい平均分子量を有するシリコーン含有マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、その主鎖、側鎖またはこれらの双方に少なくとも約10のエチレンオキシド(EO)単位を有するシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが、存在するエチレンオキシド(EO)単位の数と存在するジメチルシロキサン(DMS)単位の数との比率が約0.20から0.55までであるシリコーン含有モノマー、マクロマーまたはプレポリマーを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
コンタクトレンズ金型アセンブリの成形面が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約100o未満の前進接触角、
約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、
5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約110バレル未満の酸素透過性、および
約35%から65%までの平衡含水率
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非錯体形成ハイドロゲルレンズ本体が、
約60o未満の前進接触角、
約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、
4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約55バレルから約100バレルまでの酸素透過性、および
約40%から65%までの平衡含水率
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(iii)非錯体形成レンズ本体を少なくとも1つの1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分を有する少なくとも1つの多価アルコールからなる錯化溶液と接触させ、錯化溶液中に存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジール部分の少なくとも一部をレンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部と錯体形成させて、錯体形成ハイドロゲルレンズ本体を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
非錯体形成レンズ本体を、包装溶液を有するコンタクトレンズのブリスタパッケージに入れ、ブリスタパッケージを密封し、包装溶液とレンズ本体を滅菌する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
錯体形成レンズ本体と非錯体形成レンズ本体双方が、水和された後およびリン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間の浸漬した後に試験される場合、錯体形成レンズ本体の前進接触角が、非錯体形成レンズの前進接触角より少なくとも10%小さい、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
コンタクトレンズ金型アセンブリ内で反応させて、ハイドロゲルコンタクトレンズ本体を得る重合可能な組成物の注型重合反応生成物であって、重合可能な組成物が、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態;
少なくとも1つの親水性モノマー; および
少なくとも1つの架橋剤
を含む、前記注型重合反応生成物を含む、ハイドロゲルレンズ本体であって、ハイドロゲルレンズ本体が、
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態の重合単位、
少なくとも1つの親水性モノマーの重合単位、および
少なくとも1つの架橋剤によって形成される架橋
を含むコポリマーから形成され、ここで、レンズ本体が
約120o未満の前進接触角、
約1.6MPa未満のモジュラス、
約7×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約120バレル未満の酸素透過性、および
少なくとも約30%の平衡含水率
を有する、前記ハイドロゲルレンズ本体。
【請求項16】
レンズ本体のコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部が少なくとも1つの多価アルコールについて存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成し、レンズ本体が錯体形成レンズ本体である、請求項1に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項17】
リン酸緩衝食塩水に少なくとも6時間浸漬された水和レンズ本体を試験することによって測定されるように、錯体形成レンズ本体の前進接触角が、少なくとも1つの多価アルコールについて存在する1,2-ジオール部分または1,3-ジオール部分と錯体形成されるコポリマー中に存在するボロン酸部分の少なくとも一部を含まない以外は同じ組成物のレンズ本体の前進接触角より少なくとも10%小さい、請求項16に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項18】
ボロン酸、ボロン酸エステル、ボロン酸無水物またはこれらの組み合わせの少なくとも1つの重合可能な形態が、下記構造を有するボロン酸である、請求項15に記載のレンズ本体:
【化2】
【請求項19】
レンズ本体が、
約100o未満の前進接触角、
約0.3MPaから約1.0MPaまでのモジュラス、
約5×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約110バレル未満の酸素透過性、および
約35%から約65%までの平衡含水率
を有する、請求項15に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【請求項20】
錯体形成ハイドロゲルコンタクトレンズ本体が、
約60o未満の前進接触角、
約0.4MPaから約0.7MPaまでのモジュラス、
約4×10-3 mm2/分未満のイオノフラックス、
約55バレルから約110バレルまでの酸素透過性、および
約40%から約65%までの平衡含水率
を有する、請求項16に記載のハイドロゲルレンズ本体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2013−505157(P2013−505157A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530963(P2012−530963)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/049596
【国際公開番号】WO2011/037893
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(508316416)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/049596
【国際公開番号】WO2011/037893
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(508316416)クーパーヴィジョン インターナショナル ホウルディング カンパニー リミテッド パートナーシップ (13)
【Fターム(参考)】
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