説明

眼科装置

【課題】 被検眼の検査と聴力検査とを簡易的に行うことができる。
【解決手段】 被検眼に光を投光し、その反射光を受光して眼の検査を行う検査光学系を内蔵する装置本体を備える眼科装置において、被検者の老人性難聴に関する聴力を検査するための所定周波数の検査音を出力する検査音出力部とを備える。さらに、4kHzより小さい低周波数を第1の検査音として設定すると共に、4kHz以上の高周波数を第2の検査音として設定する設定手段と、設定手段によって設定された検査音の中から一つの検査音を選択的に出力するための選択スイッチと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の検査を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼眼底に測定光束を投光し、その反射光を受光して被検者眼の検査を行う眼科測定装置が知られている。例えば、オートレフラクトメータ、が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に高齢者は、眼と耳の両機能が衰えるため、眼鏡とともに補聴器が必要となる場合がある。このため、眼鏡店等では、眼鏡の販売に加えて、補聴器の販売も取り扱う場合があり、被検眼の検査とともに、聴力検査を続けて行う。
【0005】
しかしながら、眼科装置と聴力検査装置が別であるため、検者は、次の検査を行うために、移動をしなければならない。このとき、検者が高齢者であったり、車椅子等を使用していたりする場合には、移動に不便であり、検者に負担もかかる。
【0006】
また、眼鏡店等のように多くの人が来店する場所においては、一般的な聴力検査のように種々の周波数音での聴力を検査することは、検査に時間がかかり、スムーズに処方を進めることができない。さらに、本来補聴器が不要な被検者に対して複雑な聴力検査を強いることは、被検者にとって負担である(特に老人の場合)。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、被検眼の検査と聴力検査とを簡易的に行うことのできる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】
(1) 被検眼に光を投光し、その反射光を受光して眼の検査を行う検査光学系を内蔵する装置本体を備える眼科装置において、被検者の老人性難聴に関する聴力を検査するための所定周波数の検査音を出力する検査音出力部を備えることを特徴とする。
(2) 4kHzより小さい低周波数を第1の検査音として設定すると共に、4kHz以上の高周波数を第2の検査音として設定する設定手段と、前記設定手段によって設定された検査音の中から一つの検査音を選択的に出力するための選択スイッチと、を備えることを特徴とする(1)の眼科装置。
(3) 前記設定手段は、一般的な会話音に対応する低周波数帯の周波数を第1の検査音として設定すると共に、老人性難聴検査に対応する高周波数帯の周波数を第2の検査音として設定することを特徴とする(1)〜(2)のいずれかの眼科装置。
(4) 前記設定手段は、一般的な会話音に対応する低周波数帯の上限に対応する3kHzを第1の検査音として設定すると共に、老人性難聴検査に対応する第2の検査音として8kHz以上の周波数を設定することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの眼科装置。
(5) 前記設定手段は、老人性難聴検査に対応する第2の検査音として8kHzを検査音として設定することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの眼科装置。
(6) 前記検査音出力部は、前記装置本体の被検者側筐体面に近接する位置に設けられていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの眼科装置。
(7) 検査光学系は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定光学系であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの眼科装置。
(8) 遠方視下における眼屈折力の測定結果に基づいて、被検眼の近方位置に指標を呈示可能な指標投影光学系を備えることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの眼科装置。
(9) 前記検査音出力部は、前記検査光学系による被検眼の検査に関連する音を出力する音源して兼用されることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの眼科装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検眼の検査と聴力検査とを簡易的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る眼科装置の外観図である。1は基台であり、基台1には被検者の顔を固定するための顔支持ユニット2が固設されている。3は測定部であり、ジョイスティック4の操作により図示なき移動機構によって基台1に対して水平(XZ)方向に摺動するようになっている(なお、測定部3自体を検者が動かしても水平方向に移動可能である)。測定部3には、被検眼に光を投光し、その反射光を受光して眼の検査を行う検査光学系(測定光学系)10が内蔵されている。測定部3は、周知のアライメント用移動機構により、被検者眼Eに対して三次元的に移動されてもよい。また、手持ちタイプ(ハンディタイプ)であってもよい。また、測定部3には、検査音出力部9が内蔵されている。
【0012】
測定部3には、例えば、眼屈折力測定光学系や角膜形状測定光学系などが考えられる。また、ジョイスティック4に設けられた回転ノブを回転操作することにより、モータ等からなる上下(Y)方向駆動機構が作動し、測定光学系10は測定部3の上部ユニット3aと共に、測定部3の下部ユニット3bに対して上下に移動する。
【0013】
7は表示モニタであり、装置を挟んで被検者と対面する検者が表示画面を見られるよう測定部3の検者側上部に設けられている。なお、表示モニタ7には、被検眼やアライメント情報、検眼結果等が表示される。
【0014】
以下、本実施形態において、眼科装置として、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定装置(オートレフラクトメータ)を例として挙げて説明する。
【0015】
概して、眼屈折力測定装置は、被検眼眼底に測定光束を投光し、その眼底反射光束を指標パターン像として二次元撮像素子に撮像させる眼屈折力測定光学系を備え、二次元撮像素子に撮像された各指標パターン像に基づいて被検眼の眼屈折力を測定する。
【0016】
図2は、本装置の光学系及び制御系の概略構成図である。測定部3は、測定光学系10を収納する。測定光学系10は、眼Eの瞳孔中心部を介して眼Eの眼底Efにスポット状の測定光束(測定指標)を投影する投光光学系(投影光学系)10aと、眼底Efから反射された眼底反射光を瞳孔周辺部を介してリング状に取り出し、二次元撮像素子に指標パターン像(リング状の眼底反射像)を受光(撮像)させる受光光学系10bと、から構成される。
【0017】
投影光学系10aは、測定光学系10の光軸L1上に配置された,測定光源11,リレーレンズ12,ホールミラー13,及び対物レンズ14を含む。光源11は、正視眼の眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。また、ホールミラー13の開口は、眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。
【0018】
受光光学系10bは、投影光学系10aの対物レンズ14,ホールミラー13が共用され、ホールミラー13の反射方向の光軸L1上に配置された,リレーレンズ16及び全反射ミラー17と、全反射ミラー17の反射方向の光軸L1上に配置された受光絞り18,コリメータレンズ19,リングレンズ20,及びエリアCCD等からなる二次元撮像素子22を含む。受光絞り18及び撮像素子22は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成され、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。撮像素子22からの出力は、画像メモリ71を介して演算制御部70に入力される。
【0019】
なお、測定光学系10は上記のものに限らず、瞳孔周辺部から眼底Efにリング状の測定指標を投影し、瞳孔中心部から眼底反射光を取り出し、二次元撮像素子にリング状の眼底反射像を受光させる構成等、周知のものが使用できる。また、連続的なリング像でなく、間欠的なリング像を取り出す構成であってもよく、点像が略リング状に並べられた眼底反射像を取り出す構成であってもよい。
【0020】
対物レンズ14とホールミラー13との間には、固視標呈示光学系30からの固視標光束を眼Eに導き、被検眼Eの前眼部からの反射光を観察光学系50に導くダイクロイックミラー29が配置されている。ダイクロイックミラー29は、測定光学系10に用いられる測定光束の波長を透過する。
【0021】
固視標呈示光学系30は、固視標呈示用可視光源31,固視標を持つ固視標板32,投光レンズ33,ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、を含む。光源31及び固視標板32は、光軸L2方向に移動されることにより、被検眼Eの雲霧を行う。
【0022】
眼Eの前眼部の前方には、眼Eの角膜Ecにリング指標を投影するための近赤外光を発するリング指標投影光学系45と、眼Eの角膜Ecに無限遠指標を投影することにより被検眼に対する作動距離方向のアライメント状態を検出するための近赤外光を発する作動距離指標投影光学系46が観察光軸に対して左右対称に配置されている。なお、リング投影光学系45は、眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。また、角膜形状測定用の指標としても利用できる。
【0023】
観察光学系50は、固視標呈示光学系30の対物レンズ14、ダイクロイックミラー29が共用され、ハーフミラー35、撮像レンズ51、及び二次元撮像素子52を備える。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これにより、被検眼Eの前眼部像は二次元撮像素子52により撮像され、モニタ7上に表示される。なお、この観察光学系50は被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によりアライメント指標像の位置が検出される。
【0024】
検査音出力部(以下、音出力部と記載する)9は、例えば、被検者の老人性難聴に関する聴力を検査するための所定周波数の検査音、一般的難聴に関する聴力を検査するための所定周波数の検査音、等を出力する。音出力部9は、測定部3内に内蔵されており、測定光学系10によって眼が測定される被検者に検査音が聞こえやすくなるように、装置本体の被検者側筺体面3cに近接する位置に設けられている。
【0025】
音出力部9には、音を被検者側に向けて開放(出力)する孔部9aが設けられている。そして、制御部70から音の出力を開始する信号が出力され、音出力部9が出力信号を受信すると、音出力部9は孔部9aより音を出力する。
【0026】
なお、音出力部9は、聴力検査に関連する検査音を出力する音源の他に、被検眼を測定する場合に関連する音を出力する音源して兼用してもよい。例えば、音出力部9は、聴力検査用の音源として用いる他、眼を測定する際の測定開始音や測定エラー音の出力を兼用する。測定開始音や測定エラー音には、例えば、2.5kHz〜2.7kHzの周波数の音が用いられる。
【0027】
制御部70には、画像メモリ71、撮像素子52、メモリ75、モニタ7、音出力部9、複数のスイッチを持ち測定の各種設定に用いられる操作部80等が接続されている。制御部70は、装置全体の制御を行うと共に、眼屈折値の算出や角膜形状の算出等を行う。また、聴覚の検査を行うための音の出力を制御する。
【0028】
なお、メモリ75には、測定光学系10により眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力検査モードと、音出力部9により聴力を自覚的に検査する聴力検査モードと、に対応する演算プログラム等が記憶される。また、予め、所定の周波数の音が聴力検査の検査音として設定され、記憶されている。各モード間の切換は、操作部80に設けられたモード切換スイッチ80aを操作することによって行われる。
【0029】
以上のような構成を備える装置の測定動作について説明する。初めに、眼屈折力検査モードについて説明する。
【0030】
<眼屈折力検査モード>
検者によってモード切換スイッチ80aが操作され、眼屈折力検査モードに設定される。まず、被検者の顔を図示なき顔支持ユニットに固定させ、固視標32を固視するよう指示した後、被検眼に対するアライメントを行う。
【0031】
制御部70は、測定開始信号の入力に基づき光源11を点灯させる。光源11から出射された測定光は、リレーレンズ12から対物レンズ14までを介して眼底Efに投影され、眼底Ef上で回転するスポット状の点光源像を形成する。
【0032】
眼底Ef上に形成された点光源像の光は、反射・散乱されて被検眼Eを射出し、対物レンズ14によって集光され、ダイクロイックミラー29から全反射ミラー17までを介して受光絞り18の開口上で再び集光され、コリメータレンズ19にて略平行光束(正視眼の場合)とされ、リングレンズ20によってリング状光束として取り出され、リング像として撮像素子22に受光される。
【0033】
このとき、はじめに眼屈折力の予備測定が行われ、予備測定の結果に基づいて光源31及び固視標板32が光軸L2方向に移動されることにより、被検眼Eに対して雲霧がかけられる。その後、雲霧がかけられた被検眼に対して眼屈折力の測定が行われる。
【0034】
図3は、測定の際に撮像素子22に撮像されたリング像である。撮像素子22からの出力信号は、画像メモリ71に画像データ(測定画像)として記憶される。その後、制御部70は、画像メモリ71に記憶された測定画像に基づいて各経線方向にリング像の位置を特定(検出)する。この場合、制御部70は、輝度信号の波形を所定の閾値にて切断し、その切断位置での波形の中間点や、輝度信号の波形のピーク、輝度信号の重心位置などを求めることによりリング像の位置を特定する。次に、制御部70は、特定されたリング像の像位置に基づいて、最小二乗法等を用いて楕円を近似する。そして、制御部70は、近似した楕円の形状から各経線方向の屈折誤差が求め、これに基づいて被検眼の眼屈折値、S(球面度数)、C(柱面度数)、A(乱視軸角度)の各値が演算し、測定結果をモニタ7に表示する。もちろん、測定結果を出力して、プリントアウトしてもよい。
【0035】
なお、測定光学系10は上記のものに限らず、被検眼眼底に向けて測定光を投光する投光光学系と、測定光の眼底での反射によって取得される反射光を受光素子によって受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。例えば、眼屈折力測定光学系は、シャックハルトマンセンサーを備えた構成であってもよい。もちろん、他の測定方式の装置が利用されてもよい(例えば、スリットを投影する位相差方式の装置)。
【0036】
<聴力検査モード>
検者によってモード切換スイッチ80aが操作され、聴力検査モードに設定されると、制御部70は、モニタ7上の表示を聴力検査用の画面へと切り換える(図4参照)。また、制御部70は、予め、設定され、メモリ75に記憶されていた周波数の音を検査音として設定する。
【0037】
聴力検査用の画面へと切り換えられると、操作部80の各スイッチの横のモニタ7の画面上に、聴力を検査に用いる所定の周波数値が表示される。操作部80の各スイッチとモニタ7上に表示された周波数値はそれぞれ対応付けされている。すなわち、スイッチは、制御部70によって設定された検査音の中から一つの検査音を選択的に出力するために用いられる。そして、検者によって、スイッチが押されることにより、所定の周波数を選択することができる。
【0038】
一般的な聴力検査においては、7つの周波数にて聴力を検査しているが、本発明においては、眼屈折力の測定に合わせて、一般的な難聴(例えば、伝音性難聴)と老人性難聴に関するスクリーニング検査をスムーズに行うため、2つの周波数を検査音として設定した。例えば、予め、4kHzよりも小さい低周波数を第1の検査音とすると共に、4kHz以上の高周波数を第2の検査音として、メモリ75に記憶させておく。そして、聴力検査モードへの切り換えが行われた場合に、制御部70は、メモリ75に記憶された第1の検査音と第2の検査音をスクリーニング検査の検査音として設定する。
【0039】
より好ましくは、第1の検査音は、一般的な会話音に対応する低周波数帯における周波数とする。例えば、一般的な会話音に対応する低周波数帯の上限に対応する3kHzを第1の検査音として設定する。また、第2の検査音は、老人性難聴検査に対応する高周波数帯における周波数とする。例えば、老人性難聴検査に対応する第2の検査音として8kHz以上の周波数を設定する。
【0040】
そして、聴力検査モードへの切り換えが行われた場合に、制御部70は、予め設定された周波数の第1の検査音と第2の検査音を出力可能に設定する。
【0041】
以下の説明では、3kHzと8kHzの2つの周波数を予め設定しメモリ75に記憶させておく(詳しくは後述する)。そして、聴力検査モードへの切り換え時に、制御部70によって、検査音としてそれぞれ設定され、検査に用いられる。
【0042】
図4に示すように、聴力検査モードに切り換えが行われると、モニタ7上には3kHz又は8kHzの聴力検査に用いる周波数値が表示される。また、音の出力を停止させるためのOFF表示が表示される。
【0043】
そして、検者によって、例えば、8kHzの横に備えられている操作スイッチ80bが押されると、制御部70は、測定部3内に設けられた音出力部9を制御し、音出力部9に設けられた孔部9aより8kHzの周波数の音を出力させる。これにより、8kHzの周波数による聴力の検査が可能となる。また、OFF表示の横に備えられている操作スイッチ80cが押されると、制御部70は、測定部3内に設けられた音出力部9を制御し、音出力部9に設けられた孔部9aより音が出力されることを停止させる。なお、音の出力の停止は、これに限定されず、例えば、所定の時間経過後に、音の出力が停止される構成としてもよい。
【0044】
ここで、本発明において、用いられた音の出力について説明する。本発明においては、聴力検査の音として、3kHz及び8kHzの周波数の音が用いられる。
【0045】
3kHzは、主として、第1の検査音として、一般的な会話の音を聞き取ることが可能であるか否かの診断を行うために用いる。すなわち、一般的な難聴の診断に用いる。一般的な会話は、0.5kHzから3kHzの間で行われていると言われている。そこで、0.5kHzから3kHzの内で、もっとも周波数の高い3kHzの周波数の音が聞こえるか否かによって、聴力低下の診断を行う。このように、0.5kHzから3kHzの間の周波数では、一般的に、高い周波数になるほど、老人性難聴の影響を大きく受けるため、一般的な会話の音に対応する周波数帯の中で、老人性難聴による聴力低下をもっとも診断しやすい周波数として、3kHzの周波数を用いた。
【0046】
8kHzは、主として、第2の検査音として、老人性難聴検査に対応する検査音として老人性難聴の診断を行うために用いられる。老人性難聴は、老化現象であり、年齢変化に伴う生理的な聴力変化をいう。老人性難聴は、周波数にして、8kHzや4kHzの高音域での聴力低下が顕著であるという特徴がある。そして、特に、8kHz以上の周波数では、老化の始まる年齢以前から聴力が低下し始めるため、老化による聴力の低下を早期に判断しやすいと言われている。そこで、老人性難聴による聴力低下をもっとも診断しやすい周波数として、8kHzを用いた。なお、8kHz以下は、年齢に関係なく、全年代が聴き取れるとされる周波数であり、8kHz以上は、年齢の増加に応じて聞き取りにくくなると言われている。
【0047】
以上のような構成を備えた装置を用いて、検者は、3kHzと8kHzの周波数の音を被検者に聞かせ、被検者に対して、音を聞き取ることができるか否かの問診を行うことによって、簡易的に聴力低下の検査を行う。もちろん、被検者が音を聞き取ることができたか否かをこたえるためのスイッチ等を設けることにより、検査を行ってもよい。この場合、好ましくは、スイッチ等が被検者側に配置される方が好ましい。
【0048】
例えば、被検者が3kHz音のみ聞こえる場合、老人性難聴の疑いがあると考えられる。また、被検者が8kHz音のみ聞こえる場合、一般的な難聴(例えば、伝音性難聴)の疑いがあると考えられる。また、被検者がどちらの音も聞きとることができない場合には、老人性難聴が進行している可能性が高いと考えられる。
【0049】
このようなスクリーニング検査において、聴力異常の疑いがある場合には、一般的なオージオメータによって、より詳細な聴力検査が行われる。
【0050】
このように、3kHzと8kHzにて聴力検査を行うことにより、難聴の簡易的な検査を行うことができ、特に、加齢に伴って生じる老人性難聴の早期発見に有用である。このような周波数帯でのスクリーニングは、老眼に対する眼屈折力検査と合致する。このため、老眼鏡の処方と補聴器の処方につながる。
【0051】
また、上記スクリーニング検査によれば、詳細な聴力検査が必要であるか否かを検査することができ、詳細な聴力検査を必要としない被検者がオージオメータによって検査される手間を省くことができる。
【0052】
なお、聴力検査の結果を装置に記憶できる構成を設けてもよい。この場合、検者は、聴力検査の結果を操作部90やタッチパネル等を用いることに装置に入力する。もちろん、入力した検査結果は、プリントアウト可能な構成としてもよい。
【0053】
なお、本実施形態においては、一般的な会話音に対応する低周波数帯(約0.5kHz〜約3kHz)と、老人性難聴検査に対応する高周波数帯(約4kHz以上)の2つの検査音を設定したが、これに限定されない。例えば、一般的な会話音に対応する1つの周波数(例えば、3kHz)と、老人性難聴検査に対応する2つの周波数(例えば、4kHz、8kHz)を設定できるようにしてもよい。老人性難聴検査に特化させ、老人性難聴における聴力低下が顕著な2つの周波数(例えば、4kHz、8kHz)のみの検査を行うようにしてもよい。
【0054】
なお、測定光学系10において、遠方視下における眼屈折力の測定結果に基づいて、被検眼の近方位置に指標を呈示可能な指標投影光学系を設けることにより、近方視での見え方を確認できるようにすれば、老眼と老人性難聴のスクリーニングに有用である。例えば、制御部70は、呈示光学系30を制御し、遠方位置に固視標を呈示することにより遠方視下における眼屈折力を測定する。その後、遠方視下における眼屈折力に対応する指標位置に対して所定量(+3D)近方に指標を移動させることにより、被検者は、近方視下で指標が見えるかどうかを確認できる。もちろん近方視下において眼屈折力を他覚的に測定するようにしてもよい。
【0055】
なお、本実施形態においては、眼科測定装置として、測定光学系が被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定光学系を例として挙げて説明したがこれに限定されない。その他の眼科測定装置に本発明は適用可能である。例えば、眼底撮影装置、断層像撮影装置、眼軸長測定装置、角膜形状測定装置等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る眼科装置の外観図である。
【図2】本装置の光学系及び制御系の概略構成図である。
【図3】測定の際に撮像素子に撮像されたリング像を示す図である。
【図4】聴力検査モードにおける画面表示の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
3 測定部
4 ジョイスティック
7 表示モニタ
9 検査音出力部
10 測定光学系
30 固視標呈示光学系
45 リング指標投影光学系
46 作動距離指標投影光学系
50 観察光学系
70 制御部
75 メモリ
80 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に光を投光し、その反射光を受光して眼の検査を行う検査光学系を内蔵する装置本体を備える眼科装置において、
被検者の老人性難聴に関する聴力を検査するための所定周波数の検査音を出力する検査音出力部を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
4kHzより小さい低周波数を第1の検査音として設定すると共に、4kHz以上の高周波数を第2の検査音として設定する設定手段と、
前記設定手段によって設定された検査音の中から一つの検査音を選択的に出力するための選択スイッチと、
を備えることを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記設定手段は、一般的な会話音に対応する低周波数帯の周波数を第1の検査音として設定すると共に、老人性難聴検査に対応する高周波数帯の周波数を第2の検査音として設定することを特徴とする請求項1〜2のいずれかの眼科装置。
【請求項4】
前記設定手段は、一般的な会話音に対応する低周波数帯の上限に対応する3kHzを第1の検査音として設定すると共に、老人性難聴検査に対応する第2の検査音として8kHz以上の周波数を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの眼科装置。
【請求項5】
前記設定手段は、老人性難聴検査に対応する第2の検査音として8kHzを検査音として設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの眼科装置。
【請求項6】
前記検査音出力部は、前記装置本体の被検者側筐体面に近接する位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの眼科装置。
【請求項7】
検査光学系は、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する眼屈折力測定光学系であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの眼科装置。
【請求項8】
遠方視下における眼屈折力の測定結果に基づいて、被検眼の近方位置に指標を呈示可能な指標投影光学系を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの眼科装置。
【請求項9】
前記検査音出力部は、前記検査光学系による被検眼の検査に関連する音を出力する音源して兼用されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの眼科装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232035(P2012−232035A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103895(P2011−103895)
【出願日】平成23年5月7日(2011.5.7)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】