眼科装置
【課題】 顎受け台の上下方向の位置から推定される被検者の瞳孔間距離に基づいて、少なくとも左右方向に関しては被検眼位置を予測して検眼部を誘導可能な装置を提供する。
【解決手段】 被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、検眼を行なう検眼手段と、前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、前記検眼手段を移動する駆動手段と、前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有する。
【解決手段】 被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、検眼を行なう検眼手段と、前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、前記検眼手段を移動する駆動手段と、前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に対して検査部(例えば、被検眼を検査するための測定系、被検眼を観察・撮影するための観察系等)を所定の位置にアライメントして検査を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼屈折計等の多くの眼科装置は、被検眼に位置合わせを行なうために被検眼の観察像が表示されるとともに検眼部が三次元的に移動可能とされ、検者は観察画面に表示される被検眼像を確認しながら操作稈を傾斜・回転等させて検眼部を移動させて被検眼に位置合わせを行なう構成となっている。しかしながら、従来の装置は被検者あるいは被検眼の左右が変わる度に左右方向に関わる位置合わせが必要であることと、操作稈による位置合わせにはある程度熟練を要することから、検者の経験が少ない場合には位置合わせに時間を要してしまい、検者だけでなく被検者にも負担がかかっていた。そのため、検眼部の移動機構にモータ等の駆動手段を設け、被検者の左右両眼間の距離(以後『瞳孔間距離』と記載)に基づいて左右方向の移動を制御して被検眼に検眼部を誘導する装置が作られている。
【0003】
また、一方の眼に対する検眼が行われた際の位置情報と装置の左右方向の基準位置との位置関係に基づいて他方の眼の位置情報を算出することにより、被検者毎に異なる瞳孔間距離に影響されず被検眼に検眼部を誘導する装置も提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3610133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、瞳孔間距離に基づいて左右方向の移動を行なう従来の装置では、瞳孔間距離としておよそ60mm(大人の平均値)が設定されていることが多く、前述の平均値から離れた瞳孔間距離の被検者(例えば子供)を検眼する際に検眼部を被検眼に適切に誘導できない問題が生じる。
また、前述の特許文献1に記載された装置は、一方の眼に対する位置合わせが完了された状態で初めて効果を得られるものであり、被検者が替わった直後にいずれかの眼に対して位置合わせを行なうことはできない。さらに、被検者が顔当接部材に対して傾斜した状態で当接している場合には、左右の被検眼は基準に対して対称に位置しないため、瞳孔間距離に基づき移動を行なう装置と同様に検眼部を被検眼に適切に誘導できない問題が生じる。
【0006】
前述のように検眼部が被検眼に適切に誘導されない場合、検眼部の位置が被検眼に対して大きくずれてしまうと、被検眼像が観察画面に収まらなくなり、検者は観察画面の被検眼像に基づく位置合わせを行なえない。
【0007】
本発明は、瞳孔間距離と被検者の顔の大きさの間には少なからず比例関係が認められる点に着目して成されたもので、具体的には、被検者が顔を固定するために顎を載置する顎受け台の上下方向の位置から推定される被検者の瞳孔間距離に基づいて、少なくとも左右方向に関しては観察画面内に被検眼像の少なくとも一部が誘導される装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備えることを特徴とする。
【0009】
被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、検眼を行なう検眼手段と、前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、前記検眼手段を移動する駆動手段と、前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検者の顎が載置された顎受け台の上下方向の位置情報に基づいて被検者の瞳孔間距離の推測値を算出することにより、被検者が代わった際も被検眼の左右方向における概略位置を特定できるため、被検眼近傍に検眼部を駆動して誘導可能となるため、従って、被検者が代わった際も顎受けの上下方向の位置調整を実施することで検眼部を被検眼近傍に駆動によって移動できるため、手動操作により検眼部を位置合わせすることが不要となり検者の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る眼科装置の斜視図である。
【図2】図1に示す眼科装置の正面図である。
【図3】図1に示す眼科装置の側面図である(ただし、顎受けの図示を省略している)。
【図4】操作パネルを拡大して示した図である。
【図5】顎受けと測定ユニットとジョイスティック装置の位置関係を示す図である。
【図6】駆動装置を被検者側から見た一部破断断面図である。
【図7】駆動装置の側面図である。
【図8】駆動装置の背面図である。
【図9】ジョイスティック装置の斜視図である。
【図10】ジョイスティック装置を検査者側から見た図である。
【図11】ジョイスティック装置の側面図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】ジョイスティックを被検者側からみたときの断面図である。
【図14】回転ノブのグリップへの組付け状態を拡大して示す図である。
【図15】本実施形態の眼科装置を制御する制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】タッチパネルに表示される画面を示す図である。
【図17】コントローラで行われる処理手順を示すフローチャートである。
【図18】顔当て部の部分拡大断面図である。
【図19】動受け台の高さと被検者の瞳孔間距離の関係を説明する図である。
【図20】左右方向の移動制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る眼科装置について図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る眼科装置の斜視図であり、図2は図1に示す眼科装置の正面図であり、図3は図1に示す眼科装置の側面図である。図1〜3によく示されるように、本実施例の眼科装置10は、ベース12と、ベース12上に立設された支持部14と、支持部14上に配設された測定部16等を備えている。
【0013】
ベース12の一端には顔受け20が設けられている。顔受け20は、被検者の顎が載せられる顎受け台21と(図3参照)、被検者の額が当てられる額当て22から構成されている。被検者が顔受け20に顔を固定することで、ベース12に対して被検者の顔(すなわち、被検眼)が固定される。
【0014】
ベース12の他端には、ジョイスティック装置24が設けられている。ジョイスティック装置24の上端には測定スイッチ30が設けられ、ジョイスティック装置24の基部にはスライド部材28が固定されている。後で詳述するように、検査者がジョイスティック装置24及びスライド部材28を操作することで、測定部16が被検眼(すなわち、顔受け20に固定された被検者)に対してX方向(左右方向),Y方向(上下方向),Z方向(前後方向)に移動する。また、検査者が測定スイッチ30を操作すると、被検眼に対して測定(検査)が行われるようになっている。
【0015】
ジョイスティック装置24の側方で、ベース12の上面には、操作パネル31が設けられている。図4に示すように、操作パネル31には種々のスイッチ32〜39が設けられている。各スイッチ32〜39には、各スイッチの機能を表すシンボルが描かれている。例えば、スイッチ33は梱包スイッチであり、梱包スイッチ33が操作されると測定部16は予め設定された梱包位置に移動する。また、スイッチ34a,34bは顎受け台21を上下動させるための顎受け台上下操作スイッチであり、顎受け台上下操作スイッチ34a,34bを操作することで顎受け台21の高さを調整することができる。ここで、スイッチ32a,32bは測定する眼の選択ボタンであり、32aは左眼、32bは右眼に対して測定部16を位置合わせするように駆動制御が行われる。
【0016】
測定部16の検査者側にはタッチパネル18が配されている。タッチパネル18は、モニタと、モニタ上に配置されたパネルセンサ(請求項でいう位置検出手段に相当)によって構成されている。パネルセンサは、タッチパネル18の画面に検査者の指等が触れたとき(タッチしたとき)に、その触れた位置を検知する。パネルセンサには、圧力式、静電容量式、光センサ方式等の種々の方式のものを使用することができる。パネルセンサからの検知信号は、後述するコントローラ200に入力する。
図2に示すように、測定部16のアライメント時にはタッチパネル18に被検眼が表示される。被検眼とのアライメントを行う際は、被検眼がタッチパネル18の測定中心位置指標Aに位置するように、検査者はジョイスティック装置24を操作、あるいは、タッチパネル18を指でタッチして、被検眼に対する測定部16の位置を調整する。すなわち、本実施例では、ジョイスティック装置24の操作の他、タッチパネル18を指でタッチすることによっても測定部16のアライメントを行うことができる。
図16には測定部16のアライメント時にタッチパネル18に表示される画像が示されている。図16に示すように、タッチパネル18には、測定部16をX方向(左右方向)に移動させるためのX方向タッチボタン202a,202bと、Z方向(前後方向)に移動させるためのZ方向タッチボタン204a,204bと、Y方向(上下方向)に移動させるためのY方向タッチボタン201a,201bが表示される。X方向タッチボタン202a,202bを指でタッチすると測定部16はX方向に移動し、Z方向タッチボタン204a,204bを指でタッチすると測定部16はZ方向に移動し、Y方向タッチボタン201a,201bを指でタッチすると測定部16はY方向に移動する。すなわち、タッチパネル18の各ボタン201a,201b,202a,202b,204a,204bを指でタッチすることで、検査者は所望の方向に測定部16を移動させることができる。さらに、タッチパネル18には眼科装置10の各種設定を行うための設定ボタン206a,206bが設けられている。
なお、上述した各ボタン201a,201b,202a,202b,204a,204b,206a,206b以外の部分がタッチされると、コントローラ200はタッチアライメント処理を実行する。
【0017】
次に、上述した測定部16を移動させる駆動装置40と、検査者によって操作されるジョイスティック装置24について説明する。図5に示すように、ベース板26(ベース12内に収容される)の一端には顎受け台21が配設され、その他端にはジョイスティック装置24が配設される。そして、顎受け台21とジョイスティック装置24の略中間に駆動装置40が配設されている。駆動装置40上には測定ユニット42が載置されている。駆動装置40は支持部14内に収容され、測定ユニット42は測定部16内に収容されている。測定ユニット42は、被検眼の眼屈折力や角膜形状等を測定するための光学系や、被検眼の前眼部像を撮影する撮影系を有している。測定ユニット42で撮影された被検眼の前眼部像は、前述したようにタッチパネル18に表示されるようになっている。
【0018】
まず、駆動装置40について説明する。図6は駆動装置40を被検者側から見た一部破断断面図であり、図7は駆動装置40を側方から見た一部破断断面図、図8は駆動装置40の背面図である。
図6に示すように、駆動装置40は中空状の支柱74を備えている。支柱74の下端はベース12(詳しくは、ベース板26)に固定されている。支柱74の内部で、その下端には送りナット76が嵌合している。支柱74の内部で、その上端にはスライドブッシュ82が嵌合している。スライドブッシュ82には、軸80が上下方向に移動可能に組付けられている。軸80の下端と送りナット76との間にはスプリング78が介装されている。スプリング78は、軸80に作用する下方向の力を受けるための部材である。軸80の上端には第1板部材58が固定されている。第1板部材58は、第1板部材58から垂下した回転止め106(図7,8参照)が支柱74に固定された回転受け105(図7,8参照)で保持されることで、支柱74に対して回転することが規制されている。
【0019】
図6に示すように、第1板部材58の下面にはモータ88(ステッピングモータ)が固定されている。モータ88の出力軸は第1板部材58の上方に突出し、その出力軸にプーリ90が固定されている。プーリ90の回転はタイミングベルト92によってプーリ94に伝達される。プーリ94には、送りネジ70の上端が固定されている。送りネジ70は、ベアリング86によって軸80に対して回転可能に組みつけられている。送りネジ70の下端にはネジが形成されており、そのネジが形成された部分が送りナット76に螺合している。したがって、モータ88が回転するとプーリ90が回転し、プーリ90の回転がタイミングベルト92によってプーリ94に伝達される。プーリ94が回転すると送りネジ70が回転する。上述したように、第1板部材58は回転止め106によって支柱74に対する回転が規制されている。このため、送りネジ70の回転に応じて第1板部材58は上下方向(図中のU−D方向)に移動することとなる。
【0020】
なお、第1板部材58の支柱74に対する上下方向の位置は、センサ取付け部材63を介して第1板部材58に取り付けられた位置センサ65によって検出される(図7参照)。位置センサ65は、発光体(例えば、LED)と、その発光体からの光を受光する受光体(例えば、フォトトランジスタ)によって構成される。図7に示すように、支柱74にはリセット板67が固定されており、そのリセット板67を挟むように位置センサ65の発光体と受光体が配される。リセット板67は、第1板部材58がリセット位置(中心位置)にあるか否かを検出するための板である。位置センサ65によって第1板部材58がリセット位置にあることが検出されると、その位置を基準にモータ88(ステッピングモータ)を駆動するためのパルス信号の数に基づき第1板部材58の位置制御が行われる。
【0021】
図6,7によく示されるように、上述した第1板部材58の上面にはレール56が配設されている。レール56は前後方向(図中のF−B方向)に伸びている。レール56にはブロック54が係合し、ブロック54は第2板部材52の下面に固定されている。したがって、第2板部材52は、レール56に案内されて前後方向に移動することができる。
図7によく示されるように、第2板部材52には送りナット51が固定されている。送りナット51は、第1板部材58と第2板部材52の間に配された送りネジ50と螺合する。送りネジ50の一端にはプーリ69が固定され(図7参照)、プーリ69にタイミングベルト60によってプーリ66の回転が伝達される。プーリ66にはモータ68の出力軸が固定されている。モータ68も第1板部材58の下面に固定されている。モータ68が回転するとプーリ66が回転し、プーリ66の回転によって送りネジ50が回転する。送りネジ50が回転すると、送りネジ50に螺合する送りナット51(すなわち、第2板部材52)が前後方向に移動する。
なお、図6,8によく示されるように、第2板部材52の第1板部材58に対する前後方向の位置は、第2板部材52の下面に取り付けられた位置センサ62と、第1板部材58の上面に取り付けられたリセット板64によって検出される。位置センサ62及びリセット板64の構成は、上述した位置センサ65及びリセット板67と同様である。
【0022】
図6〜8に示すように、上述した第2板部材52の上面にはレール48が配設されている。レール48は左右方向(図中のR−L方向)に伸びている。レール48にはブロック46が係合し、ブロック46は第3板部材44の下面に固定されている。したがって、第3板部材44は、レール48に案内されて左右方向に移動することができる。第3板部材44の上面には測定ユニット42が載置されている。
図7,8によく示されるように第3板部材44には、送りナット96が左右方向にスライド不能で、かつ、前後方向にスライド可能に取付けられている。送りナット96は、第1板部材58と第3板部材44の間に配された送りネジ98と螺合する。送りネジ98の一端にはプーリ101が固定され(図8参照)、このプーリ101にタイミングベルト103によってプーリ102の回転が伝達される。プーリ102にはモータ104の出力軸が固定されている。モータ104も第1板部材58の下面に固定されている。モータ104が回転するとプーリ102が回転し、プーリ102の回転によって送りネジ98が回転する。送りネジ98が回転すると、送りネジ98と螺合する送りナット96(すなわち、第3板部材44)が左右方向に移動する。
なお、図7によく示されるように、第3板部材44の第2板部材52に対する左右方向の位置は、第3板部材44の下面に取り付けられた位置センサ43と、第2板部材52の上面に取り付けられたリセット板45によって検出される。位置センサ43及びリセット板45の構成は、上述した位置センサ65及びリセット板67と同様である。また、リセット板45によって設定されるリセット位置と顔受け20の左右方向の中心位置が一致するように構成されている。
【0023】
上述した説明から明らかなように、第1板部材58は支柱74に対して上下方向(Y方向)に移動し、その第1板部材58に対して第2板部材52は前後方向(Z方向)に移動する。そして、第3板部材44は、第2板部材に対して左右方向(X方向)に移動する。したがって、第3板部材44は、支柱74(すなわち、ベース12)に対して上下方向、前後方向及び左右方向に移動することができる。第3板部材44には測定ユニット42が載置されることから、測定ユニット42もベース12に対して上下方向、前後方向及び左右方向に移動する。
【0024】
次に、ジョイスティック装置24について説明する。図9はジョイスティック装置24の斜視図、図10は検査者側から見た図、図11は側面図、図12は図11の断面図、図13は被検者側からみたときの断面図である。
図9〜11によく示されるように、ジョイスティック装置24は、ベース板26(図5参照)の上面に固定される取付け板146を備える。取付け板146の上面にはレール150が配設されている。レール150は取付け板146上を左右方向に伸びている。レール150にはブロック152が係合している。ブロック152は、第1スライド板148の下面に固定されている。したがって、第1スライド板148は、レール150に案内されて左右方向に移動することができる。
なお、第1スライド板148の取付け板146に対する左右方向の移動量は位置センサ154で検出される。位置センサ154は、投光部と受光部を持ち、対象物(反射板)に当てている反射光から得られる受光部の電圧に基づいて対象物との距離を測定する光センサである。本実施例では、第1スライド板148に位置センサ154が取付けられる一方、取付け板146に反射板147が取付けられ、取付け板146に対する第1スライド板148の移動量が検出される。
また、図13に示すように、第1スライド板148の下方には軸160が配設されている。軸160にはスプリング162が遊嵌されている。第1スライド板148が左右に移動すると、スプリング162が圧縮されるようになっている。これによって、第1スライド板148には中立位置に復帰するような付勢力が働くこととなる。
【0025】
図9〜11によく示されるように、第1スライド板148の上面にはレール142が配設されている。レール142は第1スライド板148上を前後方向に伸びている。レール142にはブロック140が係合している。ブロック140は、第2スライド板144の下面に固定されている。したがって、第2スライド板144は、レール142に案内されて前後方向に移動することができる。なお、第2スライド板144の第1スライド板148に対する前後方向の移動量は位置センサ156で検出される。位置センサ156は、上述した位置センサ154と同様に構成されている。すなわち、位置センサ156は、第1スライド板148に取付けられ、第2スライド板144には反射板157が設けられる。位置センサ156は、反射板157からの反射光の強度に基づいて、第1スライド板148に対する第2スライド板144の移動量を検出する。
また、図12に示すように、第2スライド板144の下方には軸166が配設されている。軸166にはスプリング164が遊嵌されている。第2スライド板144が前後に移動すると、スプリング164が圧縮されるようになっている。これによって、第2スライド板144には中立位置に復帰するような付勢力が働くこととなる。
【0026】
上述した説明から明らかなように、第1スライド板148は取付け板146に対して左右方向に移動し、この第1スライド板148に対して第2スライド板144が前後方向に移動する。第2スライド板144にはスライド部材28が固定される(図1参照)。したがって、検査者はスライド部材28を前後・左右に移動させることができ、その移動量が位置センサ154,156によって検出される。
【0027】
図12,13によく示されるように、第2スライド板144の上面には、前後方向及び左右方向に傾動可能に操作桿軸114が取付けられている。操作桿軸114には回転軸121が組み付けられている。操作桿軸114が前後に傾動すると、回転軸121が回転するようになっている。回転軸121の一端にはギア118が固定され、ギア118にはギア122が噛合している(図9参照)。ギア122の回転軸には回転角センサ124(例えば、ボリューム,ロータリエンコーダ等)が配設されている。したがって、操作桿軸114が前後に傾動するとギア118,122が回転し、ギア122の回転角が回転角センサ124で検出される。このため、回転角センサ124によって操作桿軸114の前後方向の傾動角度を検出することができる。
図11によく示すように、回転軸121の他端は把持部材134によって把持されている。把持部材134には割り溝が形成されており、回転軸121を把持する力を調整できるようになっている。回転軸121が把持部材134に把持されることで、回転軸121と把持部材134との間に摩擦力が発生する。この摩擦力によって、操作桿軸114を傾動した状態に保つことが可能となる。
【0028】
また、図12,13によく示されるように、操作桿軸114には回転軸131が組み付けられている。操作桿軸114が左右に傾動すると、回転軸131が回転するようになっている。回転軸131の一端にはギア132が固定され、ギア132にはギア128が噛合している(図9参照)。ギア128の回転軸には回転角センサ126(回転角センサ124と同一部材)が配設されている。したがって、操作桿軸114が左右に傾動するとギア132,128が回転し、ギア128の回転角が回転角センサ126で検出される。このため、回転角センサ126によって操作桿軸114の左右方向の傾動角度を検出することができる。
なお、図10によく示すように、回転軸131の他端は把持部材116によって把持されている。把持部材116によって回転軸131の一端を把持することで、回転軸131と把持部材116との間に摩擦力が発生し、操作桿軸114を傾動した状態に保つことが可能となる。
【0029】
操作桿軸114の上端には、検査者によって握られるグリップ112が取付けられている。グリップ112には、回転ノブ110が設けられている。回転ノブ110は、グリップ112に対して回転し、また、軸方向にスライド移動可能となっている。
【0030】
回転ノブ110のグリップ112への組付け状態について図14を参照して説明する。図14に示すように、グリップ112を形成するハウジング190には上軸受け部材178と、下軸受け部材179が組み付けられている。上軸受け部材178と下軸受け部材179には回転軸172が回転可能に支持されている。回転軸172の下端にはディスク170が取り付けられており、ディスク170の回転が回転角センサ168(LEDとフォトトランジスタからなる)によって検出されるようになっている(図12参照)。したがって、回転軸172の回転角を回転角センサ168によって検出することができる。
【0031】
図14に戻って、上軸受け部材178と回転軸172との間には、スプリング192とワッシャ194が配されている。スプリング192は予め圧縮された状態で配設されるため、ワッシャ194から回転軸172に対してはスラスト荷重が作用する。このため、回転軸172とワッシャ194との間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって回転軸172が容易に回転しないようになっている。
【0032】
上述した回転軸172には、回転ノブ110が軸方向にスライド可能で、かつ、回転方向には相対移動不能に組み付けられている。このため、回転ノブ110を回転させると回転軸172も回転する一方、回転ノブ110を軸方向に移動させても回転軸172は移動しないこととなる。回転ノブ110と回転軸172が一体となって回転することから、回転ノブ110の回転角は回転角センサ168によって検出されることとなる。また、回転軸172には摩擦力が作用しているため、回転ノブ110もある程度の力が作用しないと回転しないこととなる。
回転ノブ110の上面には蓋体174が取付けられている。回転ノブ110と蓋体174との間には、座金184を介してスプリング180が収容されている。座金184及びスプリング180の内部には回転軸172が挿通している。図から明らかなように、回転ノブ110が軸方向に移動すると、一方の座金184は回転ノブ110と共に移動するが、他方の座金184はスペーサ177によって移動することができない。このため、回転ノブ110が軸方向に移動すると、スプリング110によって回転ノブ110は中立位置に付勢される。
なお、下軸受け部材179には、回転ノブ110の軸方向の移動量(位置)を検出するための位置センサ182が配置されている。位置センサ182は、投光部と受光部を持つ光センサである。投光部は対象物(反射板)に光を照射し、受光部は対象物から反射される反射光を受光する。そして、受光部から出力される信号の電圧から対象物との距離を測定する。本実施例では、回転ノブ110の底面に反射板が取付けられており、その反射板との距離を位置センサ182で検出している。
【0033】
次に、顔受け20の構成について説明する。図18は顔受け20の部分拡大断面図であり、フレーム270に滑り軸受271が圧入固定され、滑り軸受271には前述の顎受け台21を支持した中空の支柱272が上下動自在に嵌合されている。支柱272の一部にはキー溝272aが上下方向に向けて形成され、支柱272の内周面には雌ねじ部272bが加工されている。支柱272のキー溝272aにはフレーム270に支持されたピン273が嵌入され、支柱272の雌ねじ部272bにはねじ軸274の雄ねじ部274aが螺合されている。ねじ軸274の下端部の近傍のフレーム270には、顎受け台21の最降下位置を検出するためのリミットスイッチ275が組み込まれている。
【0034】
ねじ軸274の下端部は、駆動モータ276の出力軸276aにカップリング277を介して連結されている。駆動モータ276の出力軸276aには、スリット孔を放射状に有する位置検出手段の円板278が同軸で組み込まれている。円板278と共働して位置検出手段を構成するフォトカプラ279は、光束が円板278のスリット孔を通過するようにフレーム270に取り付けられている。これにより、駆動モータ276の回転に伴うパルス信号が検出され、後述のコントローラによって顎受け台21の移動速度と移動距離を検出するようになっている。
【0035】
図15は、眼科装置10を制御する制御系の構成を示すブロック図である。眼科装置10はコントローラ200によって制御される。コントローラ200は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。コントローラ200には、測定スイッチ30や操作パネル31等のスイッチ類が接続され、また、測定ユニット42,タッチパネル18及びモータ68,88,104等が接続されている。測定スイッチ30が操作されると、コントローラ200は、測定ユニット42を作動させて被検眼の検査を行う。操作パネル31のスイッチ類33〜39が操作されると、コントローラ200は、操作されたスイッチに対応したプログラムを実行する。例えば、梱包スイッチ33が操作されると、コントローラ200は、モータ68,88,104を駆動して測定ユニット42(測定部16)を所定の梱包位置に移動させる。ここで、コントローラ200はモータ68,88,104の駆動信号(パルス数)の情報に基づいて基準位置からのズレ量(言い換えれば現在位置)を把握可能になっている。
なお、コントローラ200を複数のマイクロプロセッサによって構成し、これらマイクロプロセッサが相互に通信を行い、協同して眼科装置10を制御するようにしてもよい。例えば、コントローラ200を、ジョイスティック装置24の検知を行うマイクロプロセッサと、モータ68,88,104を駆動するマイクロプロセッサと、タッチパネル18の検知等を行うマイクロプロセッサによって構成することができる。
【0036】
また、コントローラ200には、回転ノブ110の回転量を検出する回転角センサ168と、回転ノブ110の軸方向の移動量(位置)を検出する位置センサ182が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ168で検出された回転ノブ110の回転量又は位置センサ182で検出された回転ノブ110の軸方向の移動量に基づいてモータ88を駆動する。したがって、検査者は回転ノブ110を回転又は軸方向にスライド移動させることで、測定ユニット42(測定部16)を上下方向に移動することができる。
【0037】
測定ユニット42の前後方向の移動も、上述した測定ユニット42の上下方向の移動と同様に、微動操作と粗動操作が可能となっている。すなわち、コントローラ200には、ジョイスティック装置24(すなわち、操作桿軸114)の前後方向の傾動角度を検出する回転角センサ124と、ジョイスティック装置24(すなわち、第2スライド板144)の前後方向の位置を検出する位置センサ156が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ124で検出された傾動角度又は位置センサ156で検出されたスライド位置に基づいてモータ68を駆動する。したがって、検査者はジョイスティック装置24を前後方向に傾動又はスライドさせることで、測定ユニット42を前後方向に移動することができる。
【0038】
同様に、測定ユニット42の左右方向の移動も微動操作と粗動操作が可能となっている。すなわち、コントローラ200には、ジョイスティック装置24の左右方向の傾動角度を検出する回転角センサ126と、ジョイスティック装置24の左右方向の位置を検出する位置センサ154が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ126で検出された傾動角度又は位置センサ154で検出されたスライド位置に基づいてモータ104を駆動する。したがって、検査者はジョイスティック装置24を左右に傾動又はスライドさせることで、測定ユニット42を左右に移動することができる。
【0039】
さらに、コントローラ200には、顎受け台21の最降下位置を検出するリミットスイッチ275と、顎受け台21を上下方向に駆動する駆動モータ276と、顎受け台21の位置検出に使用するフォトカプラ279が接続されている。
【0040】
上述の眼科装置10では、検査者はジョイスティック装置24のグリップ112を手で握り、スライド部材28の上に手を置くことで、ジョイスティック装置24(操作桿軸114)を前後左右のそれぞれの方向に傾動及びスライドさせることができる。さらに、眼科装置10では、測定ユニット42の前後方向・左右方向及び上下方向の移動を、タッチパネル18の画面を指でタッチすることによって行うことができる。なお、ジョイスティック装置24およびタッチパネル18の操作に基づく測定ユニット42の移動制御に関しては本出願人による特開2006−288610号公報に記載があるためここでは割愛する。
【0041】
続いて、本発明の特徴である顎受け台21の高さに基づいて測定ユニット42を被検眼Eの近傍に誘導する手順を図17のフローに基づいて説明する。本実施例の眼科装置10のように、被検者の顔を固定する顔受け機構を有する装置においては、まず被検者が顎を顎受け台21に載せるとともに額を額当て22に当接する(S10)。
【0042】
一般的な顔受けには、測定ユニット42の上下方向の可動範囲のほぼ中央に該当する位置にマーカーが付けられており、検者は前述のスイッチ34(図4参照)を操作して、マーカーと被検眼の高さが同じとなるように顎受け台21の調整を行なう(S20)。図19は、被検者の顔の大きさと顎受け台21の高さの関係を説明するもので(a)は大人,(b)は子供(顔が小さい例)が被検者である場合を示している。これは、顔が大きいほど顎受け台21の位置は低くなることを意味している。
【0043】
ところで、顔の大きさに応じて瞳孔間距離も変化し、傾向としては顔が大きい場合は瞳孔間距離も大きくなる。従って、図19に示した顎下を基準とする眼の高さhe,he’を取得することにより被検者の瞳孔間距離PD,PD’を推定して、測定ユニット42の左右方向の位置合わせに利用することが期待される。顔の大きさと瞳孔間距離の関係については臨床データの統計的な処理に基づいて導き出すことが望ましい。導き出された関係に基づいて顎受け台21の位置情報から顎下を基準とする眼の高さheを特定して被検者の瞳孔間距離PDの推定値を算出する(S30)。
ここで、顎下を基準とする眼の高さheの算定について説明する。コントローラ200はフォトカプラ279の出力により顎受け台21の位置情報を常に検出している。ここで、顎受け台21の位置情報の基準を顎受け台21の可動範囲の最下部とした場合、検出される位置情報は図19のhcに該当する。従って、マーカーMeの位置が顎受け台21の可動範囲の最下部から距離hとされている場合は、
he = h − hc
の関係によりheを算定でき、コントローラ200は算定されたheから被検者の瞳孔間距離PDの推定値を算定する。
図20は、被検眼Eと測定ユニット42の左右方向の位置関係を上から観察したものである。ここで、直線LHは測定ユニット42の左右方向の移動範囲の中央に該当するとともに、図示しない顔受けの左右方向の中央にも一致している。従って、被検者の顔が顔受けに適切な状態で当接している場合、左右の被検眼EL,ERの中間点は直線LH上に存在することになる。顎受け台21の位置に基づいて推定された被検眼EL,ERの瞳孔間距離をPDとすると、被検眼EL,ERはそれぞれ直線LHから距離PD/2だけ左右方向に平行移動した直線LLあるいは直線LRの近傍に存在していると推定される。
【0044】
続いて、測定・検査の対象となる被検眼を選択する(S40)。ここで、選択は図4に示した操作パネル31に設けられた被検眼選択スイッチ32a,32bを押すことで行なわれる。
【0045】
被検眼の選択が行われると、コントローラ200は現在の測定ユニット42の少なくとも左右方向の位置情報を取得する(S50)。ここで、測定ユニット42を左右方向に駆動するモータ104は直線LHを基準とする制御が行なわれているため、位置情報は被検眼の位置情報と同じく直線LHを基準とする情報(図20においては距離Lx)として取得される。
【0046】
次に、S40において選択された被検眼の推定位置を特定する(S60)。図20においては、選択された被検眼が左眼である場合は直線LLの位置、右眼である場合は直線LRの位置が特定される。なお、所得される位置情報は直線LHの位置を基準(ゼロ)として直線LL側が正、直線LR側が負になるように設定されている。(逆でも良い)
【0047】
S50とS60により、測定ユニット42の現在位置ならびに移動先位置の情報が取得されると、コントローラ200は測定ユニット42を移動させるためにモータ104を駆動させる。図20において、左眼が選択された場合、移動方向は直線LHから離れる方向で移動量Lは
L = PD/2 − Lx
となる。逆に、右眼が選択された場合、移動方向は直線LHに向かう方向で移動量Lは
L = PD/2 + Lx
となる。こうして取得された方向および移動量に基づいてモータ104を駆動することにより測定ユニット42は被検眼の近傍に移動させることが可能となる。
【0048】
以上、本発明のいくつからの実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した実施例では、被検眼の選択を操作パネル上のスイッチ32a,32bにより行なう構成としているが、図16に示すようにタッチパネル18にX方向タッチボタン202a,202bとY方向タッチボタン201a,201bを表示し、測定ユニット42を位置合わせする被検眼を選択するようにしても良い。
【0049】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
10・・眼科装置
12・・ベース
16・・測定部
18・・モニタ
20・・顎受け
24・・ジョイスティック装置
28・・スライド部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に対して検査部(例えば、被検眼を検査するための測定系、被検眼を観察・撮影するための観察系等)を所定の位置にアライメントして検査を行う眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼屈折計等の多くの眼科装置は、被検眼に位置合わせを行なうために被検眼の観察像が表示されるとともに検眼部が三次元的に移動可能とされ、検者は観察画面に表示される被検眼像を確認しながら操作稈を傾斜・回転等させて検眼部を移動させて被検眼に位置合わせを行なう構成となっている。しかしながら、従来の装置は被検者あるいは被検眼の左右が変わる度に左右方向に関わる位置合わせが必要であることと、操作稈による位置合わせにはある程度熟練を要することから、検者の経験が少ない場合には位置合わせに時間を要してしまい、検者だけでなく被検者にも負担がかかっていた。そのため、検眼部の移動機構にモータ等の駆動手段を設け、被検者の左右両眼間の距離(以後『瞳孔間距離』と記載)に基づいて左右方向の移動を制御して被検眼に検眼部を誘導する装置が作られている。
【0003】
また、一方の眼に対する検眼が行われた際の位置情報と装置の左右方向の基準位置との位置関係に基づいて他方の眼の位置情報を算出することにより、被検者毎に異なる瞳孔間距離に影響されず被検眼に検眼部を誘導する装置も提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3610133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、瞳孔間距離に基づいて左右方向の移動を行なう従来の装置では、瞳孔間距離としておよそ60mm(大人の平均値)が設定されていることが多く、前述の平均値から離れた瞳孔間距離の被検者(例えば子供)を検眼する際に検眼部を被検眼に適切に誘導できない問題が生じる。
また、前述の特許文献1に記載された装置は、一方の眼に対する位置合わせが完了された状態で初めて効果を得られるものであり、被検者が替わった直後にいずれかの眼に対して位置合わせを行なうことはできない。さらに、被検者が顔当接部材に対して傾斜した状態で当接している場合には、左右の被検眼は基準に対して対称に位置しないため、瞳孔間距離に基づき移動を行なう装置と同様に検眼部を被検眼に適切に誘導できない問題が生じる。
【0006】
前述のように検眼部が被検眼に適切に誘導されない場合、検眼部の位置が被検眼に対して大きくずれてしまうと、被検眼像が観察画面に収まらなくなり、検者は観察画面の被検眼像に基づく位置合わせを行なえない。
【0007】
本発明は、瞳孔間距離と被検者の顔の大きさの間には少なからず比例関係が認められる点に着目して成されたもので、具体的には、被検者が顔を固定するために顎を載置する顎受け台の上下方向の位置から推定される被検者の瞳孔間距離に基づいて、少なくとも左右方向に関しては観察画面内に被検眼像の少なくとも一部が誘導される装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備えることを特徴とする。
【0009】
被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、検眼を行なう検眼手段と、前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、前記検眼手段を移動する駆動手段と、前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検者の顎が載置された顎受け台の上下方向の位置情報に基づいて被検者の瞳孔間距離の推測値を算出することにより、被検者が代わった際も被検眼の左右方向における概略位置を特定できるため、被検眼近傍に検眼部を駆動して誘導可能となるため、従って、被検者が代わった際も顎受けの上下方向の位置調整を実施することで検眼部を被検眼近傍に駆動によって移動できるため、手動操作により検眼部を位置合わせすることが不要となり検者の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る眼科装置の斜視図である。
【図2】図1に示す眼科装置の正面図である。
【図3】図1に示す眼科装置の側面図である(ただし、顎受けの図示を省略している)。
【図4】操作パネルを拡大して示した図である。
【図5】顎受けと測定ユニットとジョイスティック装置の位置関係を示す図である。
【図6】駆動装置を被検者側から見た一部破断断面図である。
【図7】駆動装置の側面図である。
【図8】駆動装置の背面図である。
【図9】ジョイスティック装置の斜視図である。
【図10】ジョイスティック装置を検査者側から見た図である。
【図11】ジョイスティック装置の側面図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】ジョイスティックを被検者側からみたときの断面図である。
【図14】回転ノブのグリップへの組付け状態を拡大して示す図である。
【図15】本実施形態の眼科装置を制御する制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】タッチパネルに表示される画面を示す図である。
【図17】コントローラで行われる処理手順を示すフローチャートである。
【図18】顔当て部の部分拡大断面図である。
【図19】動受け台の高さと被検者の瞳孔間距離の関係を説明する図である。
【図20】左右方向の移動制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る眼科装置について図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る眼科装置の斜視図であり、図2は図1に示す眼科装置の正面図であり、図3は図1に示す眼科装置の側面図である。図1〜3によく示されるように、本実施例の眼科装置10は、ベース12と、ベース12上に立設された支持部14と、支持部14上に配設された測定部16等を備えている。
【0013】
ベース12の一端には顔受け20が設けられている。顔受け20は、被検者の顎が載せられる顎受け台21と(図3参照)、被検者の額が当てられる額当て22から構成されている。被検者が顔受け20に顔を固定することで、ベース12に対して被検者の顔(すなわち、被検眼)が固定される。
【0014】
ベース12の他端には、ジョイスティック装置24が設けられている。ジョイスティック装置24の上端には測定スイッチ30が設けられ、ジョイスティック装置24の基部にはスライド部材28が固定されている。後で詳述するように、検査者がジョイスティック装置24及びスライド部材28を操作することで、測定部16が被検眼(すなわち、顔受け20に固定された被検者)に対してX方向(左右方向),Y方向(上下方向),Z方向(前後方向)に移動する。また、検査者が測定スイッチ30を操作すると、被検眼に対して測定(検査)が行われるようになっている。
【0015】
ジョイスティック装置24の側方で、ベース12の上面には、操作パネル31が設けられている。図4に示すように、操作パネル31には種々のスイッチ32〜39が設けられている。各スイッチ32〜39には、各スイッチの機能を表すシンボルが描かれている。例えば、スイッチ33は梱包スイッチであり、梱包スイッチ33が操作されると測定部16は予め設定された梱包位置に移動する。また、スイッチ34a,34bは顎受け台21を上下動させるための顎受け台上下操作スイッチであり、顎受け台上下操作スイッチ34a,34bを操作することで顎受け台21の高さを調整することができる。ここで、スイッチ32a,32bは測定する眼の選択ボタンであり、32aは左眼、32bは右眼に対して測定部16を位置合わせするように駆動制御が行われる。
【0016】
測定部16の検査者側にはタッチパネル18が配されている。タッチパネル18は、モニタと、モニタ上に配置されたパネルセンサ(請求項でいう位置検出手段に相当)によって構成されている。パネルセンサは、タッチパネル18の画面に検査者の指等が触れたとき(タッチしたとき)に、その触れた位置を検知する。パネルセンサには、圧力式、静電容量式、光センサ方式等の種々の方式のものを使用することができる。パネルセンサからの検知信号は、後述するコントローラ200に入力する。
図2に示すように、測定部16のアライメント時にはタッチパネル18に被検眼が表示される。被検眼とのアライメントを行う際は、被検眼がタッチパネル18の測定中心位置指標Aに位置するように、検査者はジョイスティック装置24を操作、あるいは、タッチパネル18を指でタッチして、被検眼に対する測定部16の位置を調整する。すなわち、本実施例では、ジョイスティック装置24の操作の他、タッチパネル18を指でタッチすることによっても測定部16のアライメントを行うことができる。
図16には測定部16のアライメント時にタッチパネル18に表示される画像が示されている。図16に示すように、タッチパネル18には、測定部16をX方向(左右方向)に移動させるためのX方向タッチボタン202a,202bと、Z方向(前後方向)に移動させるためのZ方向タッチボタン204a,204bと、Y方向(上下方向)に移動させるためのY方向タッチボタン201a,201bが表示される。X方向タッチボタン202a,202bを指でタッチすると測定部16はX方向に移動し、Z方向タッチボタン204a,204bを指でタッチすると測定部16はZ方向に移動し、Y方向タッチボタン201a,201bを指でタッチすると測定部16はY方向に移動する。すなわち、タッチパネル18の各ボタン201a,201b,202a,202b,204a,204bを指でタッチすることで、検査者は所望の方向に測定部16を移動させることができる。さらに、タッチパネル18には眼科装置10の各種設定を行うための設定ボタン206a,206bが設けられている。
なお、上述した各ボタン201a,201b,202a,202b,204a,204b,206a,206b以外の部分がタッチされると、コントローラ200はタッチアライメント処理を実行する。
【0017】
次に、上述した測定部16を移動させる駆動装置40と、検査者によって操作されるジョイスティック装置24について説明する。図5に示すように、ベース板26(ベース12内に収容される)の一端には顎受け台21が配設され、その他端にはジョイスティック装置24が配設される。そして、顎受け台21とジョイスティック装置24の略中間に駆動装置40が配設されている。駆動装置40上には測定ユニット42が載置されている。駆動装置40は支持部14内に収容され、測定ユニット42は測定部16内に収容されている。測定ユニット42は、被検眼の眼屈折力や角膜形状等を測定するための光学系や、被検眼の前眼部像を撮影する撮影系を有している。測定ユニット42で撮影された被検眼の前眼部像は、前述したようにタッチパネル18に表示されるようになっている。
【0018】
まず、駆動装置40について説明する。図6は駆動装置40を被検者側から見た一部破断断面図であり、図7は駆動装置40を側方から見た一部破断断面図、図8は駆動装置40の背面図である。
図6に示すように、駆動装置40は中空状の支柱74を備えている。支柱74の下端はベース12(詳しくは、ベース板26)に固定されている。支柱74の内部で、その下端には送りナット76が嵌合している。支柱74の内部で、その上端にはスライドブッシュ82が嵌合している。スライドブッシュ82には、軸80が上下方向に移動可能に組付けられている。軸80の下端と送りナット76との間にはスプリング78が介装されている。スプリング78は、軸80に作用する下方向の力を受けるための部材である。軸80の上端には第1板部材58が固定されている。第1板部材58は、第1板部材58から垂下した回転止め106(図7,8参照)が支柱74に固定された回転受け105(図7,8参照)で保持されることで、支柱74に対して回転することが規制されている。
【0019】
図6に示すように、第1板部材58の下面にはモータ88(ステッピングモータ)が固定されている。モータ88の出力軸は第1板部材58の上方に突出し、その出力軸にプーリ90が固定されている。プーリ90の回転はタイミングベルト92によってプーリ94に伝達される。プーリ94には、送りネジ70の上端が固定されている。送りネジ70は、ベアリング86によって軸80に対して回転可能に組みつけられている。送りネジ70の下端にはネジが形成されており、そのネジが形成された部分が送りナット76に螺合している。したがって、モータ88が回転するとプーリ90が回転し、プーリ90の回転がタイミングベルト92によってプーリ94に伝達される。プーリ94が回転すると送りネジ70が回転する。上述したように、第1板部材58は回転止め106によって支柱74に対する回転が規制されている。このため、送りネジ70の回転に応じて第1板部材58は上下方向(図中のU−D方向)に移動することとなる。
【0020】
なお、第1板部材58の支柱74に対する上下方向の位置は、センサ取付け部材63を介して第1板部材58に取り付けられた位置センサ65によって検出される(図7参照)。位置センサ65は、発光体(例えば、LED)と、その発光体からの光を受光する受光体(例えば、フォトトランジスタ)によって構成される。図7に示すように、支柱74にはリセット板67が固定されており、そのリセット板67を挟むように位置センサ65の発光体と受光体が配される。リセット板67は、第1板部材58がリセット位置(中心位置)にあるか否かを検出するための板である。位置センサ65によって第1板部材58がリセット位置にあることが検出されると、その位置を基準にモータ88(ステッピングモータ)を駆動するためのパルス信号の数に基づき第1板部材58の位置制御が行われる。
【0021】
図6,7によく示されるように、上述した第1板部材58の上面にはレール56が配設されている。レール56は前後方向(図中のF−B方向)に伸びている。レール56にはブロック54が係合し、ブロック54は第2板部材52の下面に固定されている。したがって、第2板部材52は、レール56に案内されて前後方向に移動することができる。
図7によく示されるように、第2板部材52には送りナット51が固定されている。送りナット51は、第1板部材58と第2板部材52の間に配された送りネジ50と螺合する。送りネジ50の一端にはプーリ69が固定され(図7参照)、プーリ69にタイミングベルト60によってプーリ66の回転が伝達される。プーリ66にはモータ68の出力軸が固定されている。モータ68も第1板部材58の下面に固定されている。モータ68が回転するとプーリ66が回転し、プーリ66の回転によって送りネジ50が回転する。送りネジ50が回転すると、送りネジ50に螺合する送りナット51(すなわち、第2板部材52)が前後方向に移動する。
なお、図6,8によく示されるように、第2板部材52の第1板部材58に対する前後方向の位置は、第2板部材52の下面に取り付けられた位置センサ62と、第1板部材58の上面に取り付けられたリセット板64によって検出される。位置センサ62及びリセット板64の構成は、上述した位置センサ65及びリセット板67と同様である。
【0022】
図6〜8に示すように、上述した第2板部材52の上面にはレール48が配設されている。レール48は左右方向(図中のR−L方向)に伸びている。レール48にはブロック46が係合し、ブロック46は第3板部材44の下面に固定されている。したがって、第3板部材44は、レール48に案内されて左右方向に移動することができる。第3板部材44の上面には測定ユニット42が載置されている。
図7,8によく示されるように第3板部材44には、送りナット96が左右方向にスライド不能で、かつ、前後方向にスライド可能に取付けられている。送りナット96は、第1板部材58と第3板部材44の間に配された送りネジ98と螺合する。送りネジ98の一端にはプーリ101が固定され(図8参照)、このプーリ101にタイミングベルト103によってプーリ102の回転が伝達される。プーリ102にはモータ104の出力軸が固定されている。モータ104も第1板部材58の下面に固定されている。モータ104が回転するとプーリ102が回転し、プーリ102の回転によって送りネジ98が回転する。送りネジ98が回転すると、送りネジ98と螺合する送りナット96(すなわち、第3板部材44)が左右方向に移動する。
なお、図7によく示されるように、第3板部材44の第2板部材52に対する左右方向の位置は、第3板部材44の下面に取り付けられた位置センサ43と、第2板部材52の上面に取り付けられたリセット板45によって検出される。位置センサ43及びリセット板45の構成は、上述した位置センサ65及びリセット板67と同様である。また、リセット板45によって設定されるリセット位置と顔受け20の左右方向の中心位置が一致するように構成されている。
【0023】
上述した説明から明らかなように、第1板部材58は支柱74に対して上下方向(Y方向)に移動し、その第1板部材58に対して第2板部材52は前後方向(Z方向)に移動する。そして、第3板部材44は、第2板部材に対して左右方向(X方向)に移動する。したがって、第3板部材44は、支柱74(すなわち、ベース12)に対して上下方向、前後方向及び左右方向に移動することができる。第3板部材44には測定ユニット42が載置されることから、測定ユニット42もベース12に対して上下方向、前後方向及び左右方向に移動する。
【0024】
次に、ジョイスティック装置24について説明する。図9はジョイスティック装置24の斜視図、図10は検査者側から見た図、図11は側面図、図12は図11の断面図、図13は被検者側からみたときの断面図である。
図9〜11によく示されるように、ジョイスティック装置24は、ベース板26(図5参照)の上面に固定される取付け板146を備える。取付け板146の上面にはレール150が配設されている。レール150は取付け板146上を左右方向に伸びている。レール150にはブロック152が係合している。ブロック152は、第1スライド板148の下面に固定されている。したがって、第1スライド板148は、レール150に案内されて左右方向に移動することができる。
なお、第1スライド板148の取付け板146に対する左右方向の移動量は位置センサ154で検出される。位置センサ154は、投光部と受光部を持ち、対象物(反射板)に当てている反射光から得られる受光部の電圧に基づいて対象物との距離を測定する光センサである。本実施例では、第1スライド板148に位置センサ154が取付けられる一方、取付け板146に反射板147が取付けられ、取付け板146に対する第1スライド板148の移動量が検出される。
また、図13に示すように、第1スライド板148の下方には軸160が配設されている。軸160にはスプリング162が遊嵌されている。第1スライド板148が左右に移動すると、スプリング162が圧縮されるようになっている。これによって、第1スライド板148には中立位置に復帰するような付勢力が働くこととなる。
【0025】
図9〜11によく示されるように、第1スライド板148の上面にはレール142が配設されている。レール142は第1スライド板148上を前後方向に伸びている。レール142にはブロック140が係合している。ブロック140は、第2スライド板144の下面に固定されている。したがって、第2スライド板144は、レール142に案内されて前後方向に移動することができる。なお、第2スライド板144の第1スライド板148に対する前後方向の移動量は位置センサ156で検出される。位置センサ156は、上述した位置センサ154と同様に構成されている。すなわち、位置センサ156は、第1スライド板148に取付けられ、第2スライド板144には反射板157が設けられる。位置センサ156は、反射板157からの反射光の強度に基づいて、第1スライド板148に対する第2スライド板144の移動量を検出する。
また、図12に示すように、第2スライド板144の下方には軸166が配設されている。軸166にはスプリング164が遊嵌されている。第2スライド板144が前後に移動すると、スプリング164が圧縮されるようになっている。これによって、第2スライド板144には中立位置に復帰するような付勢力が働くこととなる。
【0026】
上述した説明から明らかなように、第1スライド板148は取付け板146に対して左右方向に移動し、この第1スライド板148に対して第2スライド板144が前後方向に移動する。第2スライド板144にはスライド部材28が固定される(図1参照)。したがって、検査者はスライド部材28を前後・左右に移動させることができ、その移動量が位置センサ154,156によって検出される。
【0027】
図12,13によく示されるように、第2スライド板144の上面には、前後方向及び左右方向に傾動可能に操作桿軸114が取付けられている。操作桿軸114には回転軸121が組み付けられている。操作桿軸114が前後に傾動すると、回転軸121が回転するようになっている。回転軸121の一端にはギア118が固定され、ギア118にはギア122が噛合している(図9参照)。ギア122の回転軸には回転角センサ124(例えば、ボリューム,ロータリエンコーダ等)が配設されている。したがって、操作桿軸114が前後に傾動するとギア118,122が回転し、ギア122の回転角が回転角センサ124で検出される。このため、回転角センサ124によって操作桿軸114の前後方向の傾動角度を検出することができる。
図11によく示すように、回転軸121の他端は把持部材134によって把持されている。把持部材134には割り溝が形成されており、回転軸121を把持する力を調整できるようになっている。回転軸121が把持部材134に把持されることで、回転軸121と把持部材134との間に摩擦力が発生する。この摩擦力によって、操作桿軸114を傾動した状態に保つことが可能となる。
【0028】
また、図12,13によく示されるように、操作桿軸114には回転軸131が組み付けられている。操作桿軸114が左右に傾動すると、回転軸131が回転するようになっている。回転軸131の一端にはギア132が固定され、ギア132にはギア128が噛合している(図9参照)。ギア128の回転軸には回転角センサ126(回転角センサ124と同一部材)が配設されている。したがって、操作桿軸114が左右に傾動するとギア132,128が回転し、ギア128の回転角が回転角センサ126で検出される。このため、回転角センサ126によって操作桿軸114の左右方向の傾動角度を検出することができる。
なお、図10によく示すように、回転軸131の他端は把持部材116によって把持されている。把持部材116によって回転軸131の一端を把持することで、回転軸131と把持部材116との間に摩擦力が発生し、操作桿軸114を傾動した状態に保つことが可能となる。
【0029】
操作桿軸114の上端には、検査者によって握られるグリップ112が取付けられている。グリップ112には、回転ノブ110が設けられている。回転ノブ110は、グリップ112に対して回転し、また、軸方向にスライド移動可能となっている。
【0030】
回転ノブ110のグリップ112への組付け状態について図14を参照して説明する。図14に示すように、グリップ112を形成するハウジング190には上軸受け部材178と、下軸受け部材179が組み付けられている。上軸受け部材178と下軸受け部材179には回転軸172が回転可能に支持されている。回転軸172の下端にはディスク170が取り付けられており、ディスク170の回転が回転角センサ168(LEDとフォトトランジスタからなる)によって検出されるようになっている(図12参照)。したがって、回転軸172の回転角を回転角センサ168によって検出することができる。
【0031】
図14に戻って、上軸受け部材178と回転軸172との間には、スプリング192とワッシャ194が配されている。スプリング192は予め圧縮された状態で配設されるため、ワッシャ194から回転軸172に対してはスラスト荷重が作用する。このため、回転軸172とワッシャ194との間に摩擦力が発生し、この摩擦力によって回転軸172が容易に回転しないようになっている。
【0032】
上述した回転軸172には、回転ノブ110が軸方向にスライド可能で、かつ、回転方向には相対移動不能に組み付けられている。このため、回転ノブ110を回転させると回転軸172も回転する一方、回転ノブ110を軸方向に移動させても回転軸172は移動しないこととなる。回転ノブ110と回転軸172が一体となって回転することから、回転ノブ110の回転角は回転角センサ168によって検出されることとなる。また、回転軸172には摩擦力が作用しているため、回転ノブ110もある程度の力が作用しないと回転しないこととなる。
回転ノブ110の上面には蓋体174が取付けられている。回転ノブ110と蓋体174との間には、座金184を介してスプリング180が収容されている。座金184及びスプリング180の内部には回転軸172が挿通している。図から明らかなように、回転ノブ110が軸方向に移動すると、一方の座金184は回転ノブ110と共に移動するが、他方の座金184はスペーサ177によって移動することができない。このため、回転ノブ110が軸方向に移動すると、スプリング110によって回転ノブ110は中立位置に付勢される。
なお、下軸受け部材179には、回転ノブ110の軸方向の移動量(位置)を検出するための位置センサ182が配置されている。位置センサ182は、投光部と受光部を持つ光センサである。投光部は対象物(反射板)に光を照射し、受光部は対象物から反射される反射光を受光する。そして、受光部から出力される信号の電圧から対象物との距離を測定する。本実施例では、回転ノブ110の底面に反射板が取付けられており、その反射板との距離を位置センサ182で検出している。
【0033】
次に、顔受け20の構成について説明する。図18は顔受け20の部分拡大断面図であり、フレーム270に滑り軸受271が圧入固定され、滑り軸受271には前述の顎受け台21を支持した中空の支柱272が上下動自在に嵌合されている。支柱272の一部にはキー溝272aが上下方向に向けて形成され、支柱272の内周面には雌ねじ部272bが加工されている。支柱272のキー溝272aにはフレーム270に支持されたピン273が嵌入され、支柱272の雌ねじ部272bにはねじ軸274の雄ねじ部274aが螺合されている。ねじ軸274の下端部の近傍のフレーム270には、顎受け台21の最降下位置を検出するためのリミットスイッチ275が組み込まれている。
【0034】
ねじ軸274の下端部は、駆動モータ276の出力軸276aにカップリング277を介して連結されている。駆動モータ276の出力軸276aには、スリット孔を放射状に有する位置検出手段の円板278が同軸で組み込まれている。円板278と共働して位置検出手段を構成するフォトカプラ279は、光束が円板278のスリット孔を通過するようにフレーム270に取り付けられている。これにより、駆動モータ276の回転に伴うパルス信号が検出され、後述のコントローラによって顎受け台21の移動速度と移動距離を検出するようになっている。
【0035】
図15は、眼科装置10を制御する制御系の構成を示すブロック図である。眼科装置10はコントローラ200によって制御される。コントローラ200は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。コントローラ200には、測定スイッチ30や操作パネル31等のスイッチ類が接続され、また、測定ユニット42,タッチパネル18及びモータ68,88,104等が接続されている。測定スイッチ30が操作されると、コントローラ200は、測定ユニット42を作動させて被検眼の検査を行う。操作パネル31のスイッチ類33〜39が操作されると、コントローラ200は、操作されたスイッチに対応したプログラムを実行する。例えば、梱包スイッチ33が操作されると、コントローラ200は、モータ68,88,104を駆動して測定ユニット42(測定部16)を所定の梱包位置に移動させる。ここで、コントローラ200はモータ68,88,104の駆動信号(パルス数)の情報に基づいて基準位置からのズレ量(言い換えれば現在位置)を把握可能になっている。
なお、コントローラ200を複数のマイクロプロセッサによって構成し、これらマイクロプロセッサが相互に通信を行い、協同して眼科装置10を制御するようにしてもよい。例えば、コントローラ200を、ジョイスティック装置24の検知を行うマイクロプロセッサと、モータ68,88,104を駆動するマイクロプロセッサと、タッチパネル18の検知等を行うマイクロプロセッサによって構成することができる。
【0036】
また、コントローラ200には、回転ノブ110の回転量を検出する回転角センサ168と、回転ノブ110の軸方向の移動量(位置)を検出する位置センサ182が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ168で検出された回転ノブ110の回転量又は位置センサ182で検出された回転ノブ110の軸方向の移動量に基づいてモータ88を駆動する。したがって、検査者は回転ノブ110を回転又は軸方向にスライド移動させることで、測定ユニット42(測定部16)を上下方向に移動することができる。
【0037】
測定ユニット42の前後方向の移動も、上述した測定ユニット42の上下方向の移動と同様に、微動操作と粗動操作が可能となっている。すなわち、コントローラ200には、ジョイスティック装置24(すなわち、操作桿軸114)の前後方向の傾動角度を検出する回転角センサ124と、ジョイスティック装置24(すなわち、第2スライド板144)の前後方向の位置を検出する位置センサ156が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ124で検出された傾動角度又は位置センサ156で検出されたスライド位置に基づいてモータ68を駆動する。したがって、検査者はジョイスティック装置24を前後方向に傾動又はスライドさせることで、測定ユニット42を前後方向に移動することができる。
【0038】
同様に、測定ユニット42の左右方向の移動も微動操作と粗動操作が可能となっている。すなわち、コントローラ200には、ジョイスティック装置24の左右方向の傾動角度を検出する回転角センサ126と、ジョイスティック装置24の左右方向の位置を検出する位置センサ154が接続されている。コントローラ200は、回転角センサ126で検出された傾動角度又は位置センサ154で検出されたスライド位置に基づいてモータ104を駆動する。したがって、検査者はジョイスティック装置24を左右に傾動又はスライドさせることで、測定ユニット42を左右に移動することができる。
【0039】
さらに、コントローラ200には、顎受け台21の最降下位置を検出するリミットスイッチ275と、顎受け台21を上下方向に駆動する駆動モータ276と、顎受け台21の位置検出に使用するフォトカプラ279が接続されている。
【0040】
上述の眼科装置10では、検査者はジョイスティック装置24のグリップ112を手で握り、スライド部材28の上に手を置くことで、ジョイスティック装置24(操作桿軸114)を前後左右のそれぞれの方向に傾動及びスライドさせることができる。さらに、眼科装置10では、測定ユニット42の前後方向・左右方向及び上下方向の移動を、タッチパネル18の画面を指でタッチすることによって行うことができる。なお、ジョイスティック装置24およびタッチパネル18の操作に基づく測定ユニット42の移動制御に関しては本出願人による特開2006−288610号公報に記載があるためここでは割愛する。
【0041】
続いて、本発明の特徴である顎受け台21の高さに基づいて測定ユニット42を被検眼Eの近傍に誘導する手順を図17のフローに基づいて説明する。本実施例の眼科装置10のように、被検者の顔を固定する顔受け機構を有する装置においては、まず被検者が顎を顎受け台21に載せるとともに額を額当て22に当接する(S10)。
【0042】
一般的な顔受けには、測定ユニット42の上下方向の可動範囲のほぼ中央に該当する位置にマーカーが付けられており、検者は前述のスイッチ34(図4参照)を操作して、マーカーと被検眼の高さが同じとなるように顎受け台21の調整を行なう(S20)。図19は、被検者の顔の大きさと顎受け台21の高さの関係を説明するもので(a)は大人,(b)は子供(顔が小さい例)が被検者である場合を示している。これは、顔が大きいほど顎受け台21の位置は低くなることを意味している。
【0043】
ところで、顔の大きさに応じて瞳孔間距離も変化し、傾向としては顔が大きい場合は瞳孔間距離も大きくなる。従って、図19に示した顎下を基準とする眼の高さhe,he’を取得することにより被検者の瞳孔間距離PD,PD’を推定して、測定ユニット42の左右方向の位置合わせに利用することが期待される。顔の大きさと瞳孔間距離の関係については臨床データの統計的な処理に基づいて導き出すことが望ましい。導き出された関係に基づいて顎受け台21の位置情報から顎下を基準とする眼の高さheを特定して被検者の瞳孔間距離PDの推定値を算出する(S30)。
ここで、顎下を基準とする眼の高さheの算定について説明する。コントローラ200はフォトカプラ279の出力により顎受け台21の位置情報を常に検出している。ここで、顎受け台21の位置情報の基準を顎受け台21の可動範囲の最下部とした場合、検出される位置情報は図19のhcに該当する。従って、マーカーMeの位置が顎受け台21の可動範囲の最下部から距離hとされている場合は、
he = h − hc
の関係によりheを算定でき、コントローラ200は算定されたheから被検者の瞳孔間距離PDの推定値を算定する。
図20は、被検眼Eと測定ユニット42の左右方向の位置関係を上から観察したものである。ここで、直線LHは測定ユニット42の左右方向の移動範囲の中央に該当するとともに、図示しない顔受けの左右方向の中央にも一致している。従って、被検者の顔が顔受けに適切な状態で当接している場合、左右の被検眼EL,ERの中間点は直線LH上に存在することになる。顎受け台21の位置に基づいて推定された被検眼EL,ERの瞳孔間距離をPDとすると、被検眼EL,ERはそれぞれ直線LHから距離PD/2だけ左右方向に平行移動した直線LLあるいは直線LRの近傍に存在していると推定される。
【0044】
続いて、測定・検査の対象となる被検眼を選択する(S40)。ここで、選択は図4に示した操作パネル31に設けられた被検眼選択スイッチ32a,32bを押すことで行なわれる。
【0045】
被検眼の選択が行われると、コントローラ200は現在の測定ユニット42の少なくとも左右方向の位置情報を取得する(S50)。ここで、測定ユニット42を左右方向に駆動するモータ104は直線LHを基準とする制御が行なわれているため、位置情報は被検眼の位置情報と同じく直線LHを基準とする情報(図20においては距離Lx)として取得される。
【0046】
次に、S40において選択された被検眼の推定位置を特定する(S60)。図20においては、選択された被検眼が左眼である場合は直線LLの位置、右眼である場合は直線LRの位置が特定される。なお、所得される位置情報は直線LHの位置を基準(ゼロ)として直線LL側が正、直線LR側が負になるように設定されている。(逆でも良い)
【0047】
S50とS60により、測定ユニット42の現在位置ならびに移動先位置の情報が取得されると、コントローラ200は測定ユニット42を移動させるためにモータ104を駆動させる。図20において、左眼が選択された場合、移動方向は直線LHから離れる方向で移動量Lは
L = PD/2 − Lx
となる。逆に、右眼が選択された場合、移動方向は直線LHに向かう方向で移動量Lは
L = PD/2 + Lx
となる。こうして取得された方向および移動量に基づいてモータ104を駆動することにより測定ユニット42は被検眼の近傍に移動させることが可能となる。
【0048】
以上、本発明のいくつからの実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した実施例では、被検眼の選択を操作パネル上のスイッチ32a,32bにより行なう構成としているが、図16に示すようにタッチパネル18にX方向タッチボタン202a,202bとY方向タッチボタン201a,201bを表示し、測定ユニット42を位置合わせする被検眼を選択するようにしても良い。
【0049】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
10・・眼科装置
12・・ベース
16・・測定部
18・・モニタ
20・・顎受け
24・・ジョイスティック装置
28・・スライド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、
前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、
検眼を行なう検眼手段と、
前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、
前記検眼手段を移動する駆動手段と、
前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、
前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする眼科装置。
【請求項1】
被検者の少なくとも前頭部ならびに顎部を当接して被検者の顔を固定する顔固定手段と、
前記顔固定手段において上下方向に移動可能である被検者の顎部を当接する顎受け手段と、
検眼を行なう検眼手段と、
前記検眼手段において観察される被検眼観察像を表示する表示手段と、
前記検眼手段を移動する駆動手段と、
前記検眼手段の位置を検出する検眼手段位置検出手段とを有する眼科装置において、
前記顎受け手段の移動位置を検出する顎受け位置検出手段と前記顎受け位置検出手段の情報に基づいて前記駆動手段の制御を行なう制御手段とを有することを特徴とする眼科装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−245282(P2012−245282A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121157(P2011−121157)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(501299406)株式会社トーメーコーポレーション (48)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(501299406)株式会社トーメーコーポレーション (48)
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