説明

眼血管形成の治療のためのIGF1RのRNAi媒介抑制

【課題】受容体型チロシンキナーゼ、具体的にはインスリン様増殖因子−1受容体の特異的な阻害のための手段を提供する。
【解決手段】本発明は、血管形成および血管透過性においてIGF1Rを標的とする干渉性RNAを提供する。本発明はまた、IGF1R mRNAの発現を沈黙させ、したがってIGF−1/IGF−1R結合複合体の活性を減少させ、かつ血管形成前および血管形成時の眼細胞活性を低下させることにより眼血管形成を治療する、干渉性RNAを対象とする。IGF−1Rは、この受容体の細胞外ドメインに対するIGF−1の結合により活性化される。このキナーゼの活性化は、様々な細胞内基質の刺激を次に起こす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年12月29日に出願された、同時係属中の米国仮特許出願第60/754,796号の利益を主張し、この仮出願の内容は、具体的に本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、IGF1R mRNAがコードするタンパク質である、インスリン様増殖因子−1受容体(IGF−1R)の発現を眼血管形成において抑制するための干渉性RNA組成物の分野に関し、該血管形成が、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)とIGF−1Rとの相互作用から生じ、例えば、眼血管新生、網膜浮腫、糖尿病性網膜症、網膜虚血関連続発症、後眼部血管新生および血管新生緑内障を直接的または間接的に起こす細胞変化を含む。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
糖尿病性網膜症(DR)は、血管内側を覆う細胞、即ち網膜微小血管内皮の変化により糖尿病で発症する眼疾患である。糖尿病の間に、高血糖症はいくつもの方法で障害を起こし得る。例えば、グルコースまたはグルコース代謝産物は、タンパク質のアミノ基に結合し、組織障害を起こす。その上、過剰のグルコースがポリオール経路に入り、ソルビトールの蓄積を起こす。ソルビトールは網膜細胞により代謝できず、高い細胞内浸透圧、細胞内浮腫、拡散障害、組織低酸素症、毛細血管細胞障害および毛細血管弱化の一因となり得る。糖尿病性網膜症は、毛細血管基底膜の肥厚を伴い、そのために、網膜毛細血管における主要な血管周囲細胞型の周皮細胞が、内皮細胞と接触することを妨げられる。糖尿病性網膜症の間に、周皮細胞および内皮細胞の細胞死がアポトーシス機構を介して起こり、周皮細胞の減少が毛細血管の透過性を恐らく高め、血管網膜関門の破壊および血流の調節不全を起こす。弱化した毛細血管は、動脈瘤の形成およびさらなる漏出を起こす。高血糖症のこうした作用は、網膜内の神経機能にも障害を与え得る。DRは、網膜微小動脈瘤、出血、滲出液、および増殖性網膜炎、即ち網膜の内表面上での新血管および結合組織の大規模増殖と関係している。糖尿病性網膜症は、微小動脈瘤、網膜内点状出血、黄蝋性滲出液、綿状白斑および黄斑浮腫を次第に特徴とする、バックグランド型の場合がある。これは、非増殖性糖尿病性網膜症と称する糖尿病性網膜症の初期段階である。
【0004】
糖尿病誘発微小血管病状が進行するにつれ、網膜毛細血管は最終的に閉塞し、網膜内に虚血性低酸素症の多発域を生じる。非浸潤組織における低酸素状態は、既存の血管からの新血管の異常成長(血管形成)を刺激できる増殖因子の産生を誘発する。病的なこうした新血管は、硝子体中に成長し、新血管が脆く、眼内に血液を漏出しがちなため、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)と称する状態の失明を起こす恐れがある。増殖型DRは、網膜および視神経円板の硝子体中に突出し得る新血管形成、線維組織の増殖、硝子体出血、ならびに網膜剥離を特徴とする。
【0005】
新血管形成は、結合組織および新血管の小柱網上での成長により眼圧が増加する、血管新生緑内障と称する型の緑内障でも起こる。血管新生緑内障は、眼房角における新血管形成を原因とする一種の続発性緑内障である。
【0006】
後眼部血管新生(PSNV)は、先進国における後天性失明の二大原因である、滲出性の加齢性黄斑変性(AMD)およびPDRの原因となる失明誘発性の病状である。最近まで、滲出性AMD中に起こるPSNVに対する唯一の認可治療は、レーザー光凝固またはVISUDYNETMを用いる光線力学療法であった。いずれの療法でも患部血管系が閉塞し、その結果、網膜に対する恒久的なレーザー誘発損傷を起こし、新血管形成の根本原因には対処していない。同区域から新血管形成を再発することが一般的である。PDRの患者にとっては、硝子体切除および網膜前膜除去を用いる外科的介入が、より多くの新血管の産生を予防するための広範囲網膜光凝固と称するレーザー療法と並んで、現在利用できる唯一の選択肢である。
【0007】
現在の医薬研究は、VEGFなどの強力な血管新生因子の作用を抑制することに専心してきた。最近では、抗VEGF抗体フラグメントであるLUCENTISTMの硝子体内注入が、AMDの治療に対して認可された。この抗体フラグメントは、新血管の形成を抑制するために、VEGFに結合し、それを阻害するように設計された。Lucentisは、糖尿病性黄斑浮腫の治療のためにも臨床試験中である。他の手法には、VEGFまたはその受容体を標的とした短分子干渉性RNAの使用が含まれる。
【0008】
成長ホルモン(GH)/IGF1軸は、進行中のDR患者由来の眼水および眼組織中にIGF1の増加を示す結果により証明されるように、DRに関与している。さらに、GH/IGF1軸を阻害するソマトスタチンアナログのオクトレオチドで皮下治療された患者は、糖尿病性黄斑浮腫およびPDRの改善を実験的に示している。マウスOIRモデルでは、GH阻害剤またはIGF1Rアンタゴニストによる治療で、網膜の新血管形成が減少する。マウス糖尿病モデルでは、プラスミド媒介IGF−1療法によって、糖尿病性の血管形成および動脈血流の増加が抑制された。
【0009】
IGF1Rは、受容体型チロシンキナーゼファミリーに属する。網膜血管新生および/または脈絡膜血管新生をマウスにおいて抑制する、小分子の受容体型チロシンキナーゼ阻害剤(RTKi)がいくつか記載されてきた。こうした分子は、それぞれ複数のキナーゼを阻害し、新血管形成の阻止に有効になり得るが、それぞれ有毒な副作用を起こす危険性を伴う。新血管形成の阻止に必要なキナーゼすべてを阻害すると見込まれる小分子薬物は、細胞の生存に必要なキナーゼも阻害する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、受容体型チロシンキナーゼ、具体的にはインスリン様増殖因子−1受容体の阻害のこの特異性の欠如に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、血管形成および血管透過性においてIGF1Rを標的とする干渉性RNAを提供する。
【0012】
本発明は、IGF1R mRNAの発現を沈黙させ、したがってIGF−1/IGF−1R結合複合体の活性を減少させ、かつ血管形成前および血管形成時の眼細胞活性を低下させることにより眼血管形成を治療する、干渉性RNAを対象とする。IGF−1Rは、この受容体の細胞外ドメインに対するIGF−1の結合により活性化される。このキナーゼの活性化は、様々な細胞内基質の刺激を次に起こす。
【0013】
本明細書で使用する場合の用語「眼血管形成」は、眼血管形成前の状態および眼血管形成時の状態を包含し、IGF−1とIGF−1Rとの相互作用から生じ、例えば、眼血管形成、眼血管新生、網膜浮腫、糖尿病性網膜症、網膜虚血関連続発症、PSNV、血管透過性および血管新生緑内障を直接的または間接的に起こす細胞変化を含む。本発明の干渉性RNAは、例えば、眼血管形成、眼血管新生、網膜浮腫、糖尿病性網膜症、網膜虚血関連続発症、後眼部血管新生(PSNV)、および血管新生緑内障の患者、またはそのような状態を発症する危険性のある患者の治療に有用である。
【0014】
本発明の一実施形態は、被験体におけるIGF1R mRNA標的の発現を弱める方法を提供する。この方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドのsiRNAなどの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物をその被験体へ投与することを含む。投与は、ヒトにおける眼血管形成標的の発現を弱めるために、その被験体の眼に対してなされる。
【0015】
本発明の一実施形態では、該干渉性RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含む。さらに、該アンチセンス鎖は、IGF1RをコードするセンスcDNA配列である配列番号1(GenBank受入番号NM_000875)に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。このような組成物の投与は、該被験体のIGF1R mRNAの発現を弱める。
【0016】
本発明の一実施形態では、干渉性RNAは、401、635、1062、1548、1604、1643、1766、1922、2012、2069、2210、2416、2423、2654、2909、3339、3416、3464、3476、3505、3512、3781、3782、3881、4064、4158、4411、4487、4904、4905、4909、3329、2323または2887のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計される。
【0017】
本発明は、第1の干渉性RNAに加えて、第2の干渉性RNAを被験体にさらに投与する方法を提供する。この方法は、19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含む第2の干渉性RNAをその被験体に投与することを含み、第2の干渉性RNAのアンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの第2の部分に生理条件下でハイブリッド形成し、該アンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの該第2のハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。さらに、第3、第4または第5などの干渉性RNAを同様に投与してもよい。
【0018】
本発明の別の実施形態は、被験体におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、この方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの1本鎖干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物をその被験体へ投与することを含む。
【0019】
IGF1R mRNAの発現を弱めるために、該1本鎖干渉性RNAは、401、635、1062、1548、1604、1643、1766、1922、2012、2069、2210、2416、2423、2654、2909、3339、3416、3464、3476、3505、3512、3781、3782、3881、4064、4158、4411、4487、4904、4905、4909、3329、2323または2887のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、該干渉性RNAは、配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。IGF1R mRNAの発現は、それにより弱められる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態は、眼血管形成の治療をその治療が必要な被験体において行う方法である。この方法は、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含む、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物をその被験体の眼に投与することを含む。該アンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの該ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する。眼血管形成は、それにより治療される。
【0021】
本発明の別の実施形態は、眼血管形成の治療をその治療が必要な被験体において行う方法であって、この方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物をその被験体の眼に投与することを含み、該干渉性RNAが、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含み、眼血管形成がそれにより治療される。
【0022】
本発明の別の実施形態は、被験体におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、この方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物をその被験体へ投与することを含み、該干渉性RNAが、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含む。
【0023】
本発明のさらなる実施形態では、連続ヌクレオチドの該領域は、当該配列識別子の配列に対応するmRNAの3’末端から2番目からの14ヌクレオチドに対して、少なくとも85%の配列相補性または少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続ヌクレオチド領域である。本発明のさらに別の実施形態では、連続ヌクレオチドの該領域は、当該配列識別子で識別される配列に対応するmRNAの3’末端から2番目からのそれぞれ15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15個、16個、17個または18個の連続ヌクレオチド領域である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、眼血管形成の治療をその治療が必要な被験体において行う方法であって、この方法は、RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする、2本鎖siRNA分子を含む組成物をその被験体へ投与することを含み、該siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、該siRNA分子の一方の鎖が、IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対してそれぞれ実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、該siRNA分子がRNA干渉を介してmRNAの切断を誘導する。
【0025】
19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つのヌクレオチド配列、またはその相補体を有する干渉性RNAと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物は、本発明の一実施形態である。一実施形態では、該干渉性RNAが単離されている。「単離されている」という用語は、該干渉性RNAがその全自然環境から解放されていることを意味する。
【0026】
本発明の別の実施形態は、RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする、2本鎖siRNA分子を含む組成物であって、この組成物において、該siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、該siRNA分子の一方の鎖が、IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対してそれぞれ実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、該siRNA分子がRNA干渉を介してmRNAの切断を誘導する。
【0027】
本発明は、現行の小分子療法の望ましからざる副作用、即ち特異性の欠如を克服することができるので、IGF−1Rの小分子阻害剤を凌ぐ利点を提供する。
【0028】
IGF1R mRNAの発現を弱める医薬の調製における本明細書記載の実施形態のいずれかの使用も、本発明の一実施形態である。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、
長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与すること
を含み、前記干渉性RNAは、
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、
前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、
それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる、方法。
(項目2)
眼血管形成の治療が必要な被験体において眼血管形成の治療を行うための薬剤の使用であって、前記使用は、
長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記被験体の眼へ投与すること
を含み、前記干渉性RNAは、
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、
前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、
それにより前記眼血管形成が治療される、使用。
(項目3)
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、
長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの1本鎖干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与すること
を含み、前記1本鎖干渉性RNAは、401、635、1062、1548、1604、1643、1766、1922、2012、2069、2210、2416、2423、2654、2909、3339、3416、3464、3476、3505、3512、3781、3782、3881、4064、4158、4411、4487、4904、4905、4909、3329、2323または2887のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、前記干渉性RNAは、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、
それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる、方法。
(項目4)
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、
長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与すること
を含み、前記干渉性RNAは、
配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含んでおり、
それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる、方法。
(項目5)
被験体における眼血管形成を治療する薬剤の調製における、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物の使用であって、前記干渉性RNAは、
配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含んでおり、
それにより前記眼血管形成が治療される、使用。
(項目6)
被験体における眼血管形成を治療する薬剤の調製における、
RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする、2本鎖siRNA分子
を含む組成物の使用であって、
前記siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、
前記siRNA分子の一方の鎖が、それぞれ前記IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対して実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、前記siRNA分子がRNA干渉を介して前記mRNAの切断を誘導する、使用。
(項目7)
19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域
を含む第2の干渉性RNAを前記発現系に投与することをさらに含み、
前記第2の干渉性RNAの前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの第2の部分に生理条件下でハイブリッド形成し、前記アンチセンス鎖は、配列番号1に対応するmRNAの前記第2のハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、
項目1、3または4のいずれかに記載の方法。
(項目8)
19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列、またはその相補体を含む干渉性RNAと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物。
(項目9)
RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする、2本鎖siRNA分子を含む組成物であって、
前記siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、
前記siRNA分子の一方の鎖が、前記IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対して実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、前記siRNA分子がRNA干渉を介して前記mRNAの切断を誘導する、組成物。
(項目10)
IGF1R mRNAを発現する被験体に対してIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、
長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記被験体へ投与すること
を含み、前記干渉性RNAは、
センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域
を含み、前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、
それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる、方法。
(項目11)
前記アンチセンス鎖は、401、635、1062、1548、1604、1643、1766、1922、2012、2069、2210、2416、2423または2654のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計される、項目1、3、4または10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記アンチセンス鎖は、2909、3339、3416、3464、3476、3505、3512、3781、3782、3881、4064、4158、4411、4487、4904、4905、4909、3329、2323または2887のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAを標的とするように設計される、項目1、3、4または10のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記組成物が、19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応する第2のmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも13個、14個、15個、16個、17個または18個の連続ヌクレオチド領域を含んだ第2の干渉性RNAをさらに含む、項目1、3、4または10に記載の方法、あるいは項目8または9に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の上記の様式ならびに他の充実および目的を実現するために、簡潔に前記した本発明を、添付の図面中に例示するその具体的実施形態を参照することにより、より詳細に説明する。こうした図面は、本発明の典型的な実施形態だけを表示し、したがってその範囲を限定するものと見なすべきではないことを理解した上で、添付の図面を使用してさらに明確、詳細に本発明を説明する。
【図1】この図は、IGF1R siRNAの#6、#8、#17および#18、ならびにRISC非含有コントロールsiRNAを各々10nM、1nMおよび0.1nMと、非標的用コントロールsiRNA(NTC2)10nMと、緩衝液コントロール(−siRNA)とでトランスフェクトしたHeLa細胞に関するIGF−1Rβウェスタンブロットを示す。矢印は、97kDaのIGF−1Rβ、200kDaのIGF−1R前駆体、および42kDaのアクチンの各バンドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本明細書に示す詳細説明は、本発明の好ましい実施形態の説明的考察を例示することだけを目的とし、本発明の多様な実施形態の原理および概念態様に関する最も有用で理解容易と考えられる説明をする動機から提示している。この点で、本発明の根本的理解に必要な以上に詳細に、本発明の構造的詳細を示そうとはしておらず、図面および/または実施例を用いた説明は、本発明のいくつかの形態を実際に具体化し得る次第を当業者に明らかにしている。
【0031】
以下の定義および説明は、以下の実施例において、またはその意味の適用のために任意の構成が無意味もしくは本質的に無意味となる際に、明確かつ明瞭に修正されない限り、今後の任意の構成において規制的なものであることを意味し、意図している。用語がその構成のために無意味または本質的に無意味となるような場合は、その定義をウェブスター辞書第3版から採用すべきである。
【0032】
本明細書で使用する場合、すべての比率(%)は、別途明記しない限り重量比率(%)である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「流体」とは、その分子が互いに相前後して自由に移動し、その容器の形状に従う傾向を示す連続的で無定形な物質、例えば液体または気体である。
【0034】
本明細書で使用する場合、「医療従事者」という用語は当技術分野で公知であり、具体的には内科医、薬剤を処方する(直接、間接を問わない)権限のある人、および獣医を包含する。ある種の実施形態では、医療従事者には、市販薬の提供など、処方箋なしに薬剤を提供する個人が含まれる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「被験体を特定する」および「診断する」という用語は、「素因」、「性向の増加」、「危険性」、「危険性の増加」などの検出に関して互換的に使用される。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「他の網膜または視神経疾患」とは、加齢性黄斑変性、白内障、急性虚血性視神経症(AION)、網膜振盪症、網膜剥離、網膜の裂傷もしくは裂孔、糖尿病性網膜症と医原性網膜症と他の虚血性網膜症もしくは視神経症、近視、網膜色素変性症などの少なくとも1種を意味し、言及する。
【0037】
RNA干渉(RNAi)は、2本鎖RNA(dsRNA)を使用して遺伝子発現を沈黙させる方法である。理論に拘ることは望まないが、RNAiは、RNaseIII様酵素、ダイサー(dicer)による、より長いdsRNAの短分子干渉性RNA(siRNA)への切断から始まる。siRNAは、長さが普通約19ヌクレオチド〜28ヌクレオチド、または20ヌクレオチド〜25ヌクレオチド、または21ヌクレオチド〜22ヌクレオチドであり、ヌクレオチド2個の3’オーバーハングならびに5’リン酸末端および3’ヒドロキシル末端をしばしば含有するdsRNAである。siRNAの一方の鎖は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られているリボ核タンパク質複合体中に組み込まれる。RISCは、このsiRNA鎖を使用して、組み込まれたそのsiRNA鎖に少なくとも部分的に相補的なmRNA分子を特定し、次いでこうした標的mRNAを切断するか、またはその翻訳を抑制する。したがって、RISC中に組み込まれるsiRNA鎖は、ガイド鎖またはアンチセンス鎖の名で知られている。パッセンジャー鎖またはセンス鎖の名で知られている他方のsiRNA鎖は、siRNAから除かれ、標的mRNAに少なくとも部分的に相同的である。当業者であれば、原理的には、siRNAのいずれの鎖もRISC中に組み込まれ、ガイド鎖として機能できることを認識されよう。しかし、siRNAの設計(例えば、アンチセンス鎖の5’末端におけるsiRNA二重鎖安定性の減少)により、アンチセンス鎖のRISC中への組込みを促進し得る。
【0038】
ガイド鎖に少なくとも部分的に相補的な配列を有するmRNAのRISC媒介切断は、そのmRNAおよびこのmRNAがコードする対応タンパク質の定常状態量を減少させる。あるいは、RISCは、標的mRNAを切断せずに、翻訳抑制を介して対応タンパク質の発現を減少させることもできる。他のRNA分子およびRNA様分子も、RISCと相互作用し、遺伝子発現を沈黙させ得る。RISCと相互作用できる他のRNA分子の例には、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、1本鎖siRNA、ミクロRNA(miRNA)およびダイサー−基質27マーの二重鎖が含まれる。本明細書で使用する場合の用語「siRNA」とは、別途注記しない限り2本鎖干渉性RNAを指す。RISCと相互作用できるRNA様分子の例には、1個もしくは複数の化学修飾ヌクレオチド、1個もしくは複数のデオキシリボヌクレオチド、および/または1個もしくは複数の非ホスホジエステル結合を含有するRNA分子が含まれる。本考察のために、RISCと相互作用し、遺伝子発現のRISC媒介変化に関与できるすべてのRNAまたはRNA様分子を、「干渉性RNA」と呼称することとする。したがって、siRNA、shRNA、miRNAおよびダイサー−基質27マーの二重鎖は、「干渉性RNA」のサブセットである。
【0039】
本発明の実施形態の干渉性RNAは、標的mRNAの切断のために触媒的に作用するようである、即ち、干渉性RNAは、化学量論的量未満で標的mRNAの阻害を起こし得る。アンチセンス療法と比較して、有意に少ない干渉性RNAで、このような切断条件下で治療効果を得るのに十分である。
【0040】
本発明は、インスリン様増殖因子−1受容体(IGF−1R)mRNAの発現を抑制し、したがってリガンド結合を妨害し、その後の増殖および血管形成を妨害するための干渉性RNAの使用に関する。本発明によれば、外因的に与え、または内因的に発現した干渉性RNAは、眼組織中でのIGF1R発現の沈黙を起こす。
【0041】
本明細書で引用した核酸配列は、別途指示しない限り、5’から3’の方向に書かれる。本明細書で使用する場合の用語「核酸」とは、DNA中(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、チミン「T」)もしくはRNA中(アデニン「A」、シトシン「C」、グアニン「G」、ウラシル「U」)に存在するプリンもしくはピリミジン塩基を含む、DNAもしくはRNAまたはその改変形を指す。本明細書に示す干渉性RNAは、「T」塩基が天然にはRNA中に存在しないとしても、特に3’末端に「T」塩基を含んでもよい。「核酸」は、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語を包含し、1本鎖分子または2本鎖分子を指すことができる。2本鎖分子は、A塩基とT塩基、C塩基とG塩基、およびA塩基とU塩基とのワトソン−クリック塩基対形成により形成される。2本鎖分子の各鎖は、相互に部分的、実質的または完全な相補性を有してもよく、塩基配列の相補性の性質および程度にその結合強度が依存する、二重鎖ハイブリッドを形成することになろう。
【0042】
mRNA配列は、対応するDNA配列の配列から容易に導かれる。例えば、配列番号1は、IGF1RのmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を提供する。このmRNA配列は、「T」塩基を「U」塩基で置き換えたDNAセンス鎖配列と同一である。したがって、IGF1RのmRNAは配列番号1から分かる。
【0043】
インスリン様増殖因子−1受容体mRNA(IGF1R):IGF−1Rは、受容体型チロシンキナーゼファミリーに属する。IGF−1R前駆体のタンパク分解切断は、細胞外のリガンド結合性αサブユニット、および細胞内チロシンキナーゼを含有する膜貫通βサブユニットを生成する。IGF−1Rは、ジスルフィド結合で連結されたαサブユニット2個およびβサブユニット2個を含む。リガンド結合は、自己リン酸転移を誘発し、増殖および細胞生存を促進する。
【0044】
インスリン様増殖因子−1の生物活性は、IGF−1Rを介して媒介される。IGF−1の増加は、進行中の糖尿病性網膜症の患者由来の眼水および眼組織中に認められてきた。インスリン様増殖因子−1を含めた多様な血管形成促進性増殖因子が、眼血管形成の患者由来の組織および体液中に見出されてきた。GH/IGF1軸を阻害するソマトスタチンアナログのオクトレオチドで皮下治療された患者は、DMEおよびPDRの改善を実験的に示している。マウスOIRモデルでは、GH阻害剤またはIGF−1Rアンタゴニストによる治療で、網膜の新血管形成が有意に減少する。IGF−1は、血管内皮増殖因子の網膜内皮産生をインビトロで刺激する。マウス糖尿病モデルでは、プラスミド媒介IGF−1療法によって、糖尿病性の血管形成および動脈血流の増加が抑制された。したがって、血管形成前および血管形成時の細胞活性を含めた眼血管形成を治療するために、IGF−1Rの発現抑制が本発明で提供される。
【0045】
ncbi.nlm.nih.govにあるNational Center for Biotechnology InformationのGenBankデータベースは、「配列表」に配列番号1で示したIGF1RのDNA配列を受入番号NM_000875として示している。配列番号1は、IGF1RをコードするmRNAに対応するDNAのセンス鎖配列を示す(「U」塩基の代わりに「T」塩基であることを別として)。IGF1Rのコード配列は46番〜4149番のヌクレオチドである。
【0046】
前記のIGF1R mRNA配列の同等配列は、スプライシング型、対立遺伝子型、アイソザイムまたはその同族体(cognate)である。同族体とは、別の哺乳動物種由来で、配列番号1に相同のIGF1R mRNA(オーソロガス体)である。
【0047】
mRNA発現の弱化:本明細書で使用する場合の語句「mRNA発現の弱化」とは、ある量の干渉性RNA(例えばsiRNA)を投与または発現することにより、mRNA切断または翻訳の直接抑制のいずれかを介して、標的mRNAのタンパク質への翻訳を低減することを意味する。標的mRNAまたは対応タンパク質の発現の低減は、通常「ノックダウン」と称し、非標的用コントロールRNA(例えば、非標的用コントロールsiRNA)の投与または発現後の存在量に比して報告されている。50%以上100%以下の発現量のノックダウンが、本発明における実施形態で想定されている。しかし、本発明の目的のためにこのようなノックダウン量を実現することは、必要ではない。一実施形態では、IGF1Rを標的とする単一の干渉性RNAを投与することにより、IGF1R産生を減少させ、それによりIGF1Rシグナル伝達経路を阻害する。他の実施形態では、IGF1R mRNAを標的とする2種以上の干渉性RNAを投与することにより、発現を減少させる。さらに他の実施形態では、IGF1R mRNAを標的とする第1の干渉性RNA、および別の受容体型チロシンキナーゼmRNAを標的とする第2の干渉性RNAを投与することにより、血管形成前および血管形成時の眼細胞活性を低下させる。
【0048】
ノックダウンは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の増幅を用いたmRNA量の測定、またはウェスタンブロットもしくは酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)によるタンパク質量の測定により、通常評価される。タンパク質量の分析により、mRNA切断、翻訳抑制双方の評価がなされる。ノックダウンを測定するさらなる技法には、RNA溶液ハイブリッド形成、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリッド形成、マイクロアレイを用いる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、放射免疫アッセイおよび蛍光活性化細胞分析が含まれる。
【0049】
本明細書で言及した標的の阻害は、例えば、網膜浮腫、糖尿病性網膜症、網膜虚血または後眼部血管新生(PSNV)の改善などの眼血管形成の改善を観察することにより、ヒトまたは哺乳動物においても推測される。
【0050】
干渉性RNA:本発明の一実施形態では、干渉性RNA(例えばsiRNA)は、センス鎖およびアンチセンス鎖を有し、該センスおよびアンチセンス鎖は、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含む。本発明のさらなる実施形態では、干渉性RNA(例えばsiRNA)は、センス鎖およびアンチセンス鎖を有し、それぞれについて、該アンチセンス鎖は、IGF1R mRNAの標的配列に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、該センス鎖は、IGF1R mRNAの標的配列に対して、少なくともほぼ完全に連続して同一の少なくとも19ヌクレオチドの領域を含む。本発明のさらなる実施形態では、該干渉性RNAは、連続ヌクレオチドが少なくとも13個、14個、15個、16個、17個または18個の領域であって、あるmRNA内の対応標的配列に対応するmRNAの3’末端から2番目からのそれぞれ13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドに対して、配列相補性比率(%)を有するか、または配列同一性比率(%)を有する該領域を含む。
【0051】
該干渉性RNAの各鎖の長さは、19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドを含み、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチドまたは49ヌクレオチドの長さを含んでもよい。
【0052】
siRNAのアンチセンス鎖は、該アンチセンス鎖がRISC中に組み込まれ、従って、該siRNAアンチセンス鎖に少なくとも部分的に相補的な標的mRNAを、切断または翻訳抑制のためにRISCが特定できるので、siRNAの活性なガイド剤である。
【0053】
本発明の実施形態では、標的mRNA配列内の干渉性RNA標的配列(例えばsiRNA標的配列)は、利用可能な設計ツールを用いて選択される。次いで、IGF1R標的配列に対応する干渉性RNAを、該標的配列を発現する細胞のトランスフェクションで試験し、その後、前記の通りノックダウンの評価を行う。
【0054】
siRNA用に標的配列を選択する技法は、ロックフェラー大学のウェブサイト上で入手できるTuschl,T.ら、「The siRNA User Guide」、2004年5月6日改訂;AmbionのウェブサイトにあるTechnical Bulletin #506、「siRNA Design Guidelines」、Ambion Inc.;および例えば、Invitrogen,Dharmacon,Integrated DNA Technologies,GenscriptまたはProligoのウェブサイトにある他のウェブ準拠設計ツールによって提供されている。最初のサーチパラメーターには、35%と55%との間のG/C含量および19ヌクレオチドと27ヌクレオチドとの間のsiRNA鎖長を含み得る。標的配列は、mRNAのコード領域または5’もしくは3’非翻訳領域中に位置してもよい。
【0055】
IGF1R mRNA用の19ヌクレオチドのDNA標的配列の一実施形態は、配列番号1の401番〜419番のヌクレオチドに次のように存在する。
【0056】
【化1】

配列番号2の対応mRNA配列を標的とし、21ヌクレオチド鎖およびヌクレオチド2個の3’オーバーハングを有する本発明のsiRNAは、次の通りである。
【0057】
【化2】

各「N」残基は、任意のヌクレオチド(A、C、G、U、T)または修飾ヌクレオチドでもよい。その3’末端は、個数1、2、3、4、5および6を含むいくつかの「N」残基を有し得る。各鎖上の「N」残基は、同一残基でも(例えば、UU、AA、CC、GGもしくはTT)、または異なってもよい(例えば、AC、AG、AU、CA、CG、CU、GA、GC、GU、UA、UCもしくはUG)。3’オーバーハングは同じでもよく、異なってもよい。一実施形態では、両鎖は3’UUオーバーハングを有する。
【0058】
配列番号2の対応mRNA配列を標的とし、21ヌクレオチド鎖および各鎖上に3’UUオーバーハングを有する本発明のsiRNAは、次の通りである。
【0059】
【化3】

該干渉性RNAは、ヌクレオチドの5’オーバーハングを有してもよく、または平滑末端を有してもよい。配列番号2の対応mRNA配列を標的とし、19ヌクレオチド鎖および平滑末端を有する本発明のsiRNAは、次の通りである。
【0060】
【化4】

2本鎖干渉性RNA(例えばsiRNA)の鎖同士は、連結してヘアピン即ちステム−ループ構造(例えばshRNA)を形成してもよい。配列番号1の対応mRNA配列を標的とし、19bp2本鎖ステム領域および3’UUオーバーハングを有する本発明のshRNAは、次の通りである。
【0061】
【化5】

Nは、ヌクレオチドA、T、C、G、U、または当業者に公知の修飾形である。ループ中のヌクレオチドNの個数は、3以上23以下、もしくは5以上15以下、もしくは7以上13以下、もしくは4以上9以下、もしくは9以上11以下であるか、またはヌクレオチドNの個数は9である。ループ中のヌクレオチドの一部は、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。このループの形成に使用できるオリゴヌクレオチドの例には、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.ら(2002年)Science 296巻、550頁)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.ら(2002年)RNA、8巻、1454頁)が挙げられる。生成する単鎖オリゴヌクレオチドが、RNAi機構部と相互作用できる2本鎖領域を含むステム−ループ即ちヘアピン構造を形成することは、当業者により認識されよう。
【0062】
前記に特定したsiRNA標的配列は、3’末端を伸長することによりダイサー−基質27マーの二重鎖の設計を促進し得る。IGF1R DNA配列(配列番号1)中に特定した19ヌクレオチドのDNA標的配列(配列番号2)をヌクレオチド6個伸長すると、配列番号1の401番〜425番のヌクレオチドに存在する25ヌクレオチドのDNA標的配列が次の通り得られる。
【0063】
【化6】

配列番号43の対応mRNA配列を標的とする本発明のダイサー−基質27マーの二重鎖は、次の通りである。
【0064】
【化7】

センス鎖の3’末端にあるヌクレオチド2個(即ち、配列番号44のGAヌクレオチド)は、プロセシングを促進するためにデオキシヌクレオチドでもよい。ここに示すような19ヌクレオチド〜21ヌクレオチドの標的配列からのダイサー−基質27マーの二重鎖の設計は、Integrated DNA Technologies(IDT)のウェブサイト、およびKim,D.−H.ら、(2005年2月)、Nature Biotechnology 23巻、2号、222〜226頁によりさらに考察されている。
【0065】
化学合成により干渉性RNAを作製する際、一方または両方の鎖(存在する場合)の5’末端にあるヌクレオチドの5’位でリン酸化すると、結合型RISC複合体のsiRNAとしての効果および特異性を増強できるが、リン酸化は細胞内で起こり得るので必要ではない。
【0066】
表1は、上記のようにして本発明のsiRNAがそれから設計される、配列番号1のIGF1R DNA標的配列の例を列挙している。IGF1Rは、上記の通りインスリン様増殖因子−1受容体をコードする。
【0067】
【表1】


【0068】
上記の例で言及したように、当業者は、表1に示した標的配列情報を使用して、配列番号1における配列位置を参照し、配列番号1に相補的またはほぼ相補的なヌクレオチドを付加または削除することにより、表1に示した配列より長いか短い長さを有する干渉性RNAを設計することができる。
【0069】
siRNAおよび他種の干渉性RNAにより導かれる標的RNA切断反応は、非常に配列特異的である。一般に、標的mRNAの一部分と配列が同一のセンスヌクレオチド鎖、および標的mRNAの一部分に厳密に相補的なアンチセンスヌクレオチド鎖を含有するsiRNAは、本明細書に言及するmRNA阻害のためのsiRNAの具体化である。しかし、アンチセンスsiRNA鎖と標的mRNAとの間、またはアンチセンスsiRNA鎖とセンスsiRNA鎖との間の100%配列相補性は、本発明の実施に必要ではない。したがって、例えば、本発明は、遺伝子変異、系統多型または進化的分岐により予想し得る配列変異を受け容れる。
【0070】
本発明の一実施形態では、siRNAのアンチセンス鎖は、標的mRNAと少なくとも19ヌクレオチドのほぼ完全な連続した相補性を有している。本明細書で使用する場合の「ほぼ完全な」とは、siRNAのアンチセンス鎖が標的mRNAの少なくとも一部分と「実質的に相補的」であり、siRNAのセンス鎖が同部分と「実質的に同一」であることを意味している。当業者に知られている「同一性」とは、配列同士間のヌクレオチドの順序および同一性を一致させることにより決定した際の、ヌクレオチド配列同士間の配列関連性の程度である。一実施形態では、標的mRNA配列に対して、80%の相補性および80%から100%までの相補性、例えば85%の相補性、90%の相補性または95%の相補性を有するsiRNAのアンチセンス鎖は、ほぼ完全な相補性と見なされ、本発明に使用し得る。「完全な」連続した相補性は、連続する塩基対の標準的ワトソン−クリック塩基対形成である。「少なくともほぼ完全な」連続した相補性は、本明細書で使用する場合「完全な」相補性を包含する。同一性または相補性を決定するコンピュータ法が、ヌクレオチド配列同士の最大の一致度を特定するために設計されており、BLASTNが一例である(Altschul,S.F.ら(1990年)J.Mol.Biol.215巻、403〜410頁)。
【0071】
用語「一致率(%)」とは、第1の核酸分子中にある連続ヌクレオチドが、第2の核酸分子中にある同じ長さの1組の連続ヌクレオチドに対して同じである比率(%)について示す。用語「相補率(%)」とは、第1の核酸分子中にある連続ヌクレオチドが、第2の核酸分子中にある1組の連続ヌクレオチドとワトソン−クリック式に塩基対を形成できる比率(%)について示す。
【0072】
標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの一方の鎖(そのセンス鎖)との関係は、同一性の関係である。siRNAのセンス鎖は、存在する場合、パッセンジャー鎖とも称する。標的mRNA(センス鎖)とsiRNAの他方の鎖(そのアンチセンス鎖)との関係は、相補性の関係である。siRNAのアンチセンス鎖は、存在する場合、ガイド鎖とも称する。
【0073】
5’から3’の方向に書かれる核酸配列中の最後から2番目の塩基は、最後の塩基の次、即ち3’塩基の次の塩基である。5’から3’の方向に書かれる核酸配列の最後から2番目からの13塩基は、3’塩基の次にあって3’塩基を含まない、最後の13塩基配列である。同様に、5’から3’の方向に書かれる核酸配列の最後から2番目からの14塩基、15塩基、16塩基、17塩基または18塩基は、3’塩基の次にあって3’塩基を含まない、最後のそれぞれ14塩基、15塩基、16塩基、17塩基または18塩基の配列である。
【0074】
「(配列識別子)のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドと、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド」という語句は、1つのヌクレオチド置換を受け容れる。2つのヌクレオチド置換(即ち、11/13=85%の同一性/相補性)は、このような語句に含まれない。
【0075】
本発明の一実施形態では、連続ヌクレオチドの領域は、各配列識別子で特定される配列に対応するmRNAの3’末端から2番目からの14ヌクレオチドと、少なくとも85%の配列相補性または少なくとも85%の配列同一性を有する少なくとも14個の連続ヌクレオチドの領域である。2つのヌクレオチド置換(即ち、12/14=86%の同一性/相補性)が、このような語句に含まれる。
【0076】
本発明のさらなる実施形態では、連続ヌクレオチドの領域は、各配列識別子の配列に対応するmRNAの3’末端から2番目からの14ヌクレオチドと、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも15個、16個、17個または18個の連続ヌクレオチドの領域である。3つのヌクレオチド置換がこのような語句に含まれる。
【0077】
配列番号1に対応するmRNA中の標的配列は、そのmRNAの5’または3’非翻訳領域、ならびにそのmRNAのコード領域にあってもよい。
【0078】
2本鎖干渉性RNAの鎖の一方または両方は、ヌクレオチド1〜6個の3’オーバーハングを有してもよく、そのヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたはその混合物でもよい。オーバーハングのヌクレオチドは、塩基対を形成していない。本発明の一実施形態では、該干渉性RNAはTTまたはUUのオーバーハングを含む。本発明の別の実施形態では、該干渉性RNAは少なくとも1つの平滑末端を含む。末端は普通、5’リン酸基または3’ヒドロキシル基を有する。他の実施形態では、アンチセンス鎖が5’リン酸基を有し、センス鎖が5’ヒドロキシル基を有する。さらに他の実施形態では、末端は、他の分子または官能基の共有結合的付加によりさらに修飾される。
【0079】
2本鎖siRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、前記のように2本の単鎖で二重鎖を形成してもよく、または相補性の領域が、塩基対を形成し、ヘアピンループで共有結合的に連結することにより、1本鎖を形成する単一分子でもよい。ヘアピンはダイサーという名称のタンパク質により細胞内で切断され、塩基対をなす2個の個別分子からなる干渉性RNAを形成すると考えられている。
【0080】
干渉性RNAは、ヌクレオチド1個または複数個の付加、欠失、置換または修飾により、天然RNAとは異なり得る。非ヌクレオチド性物質が、5’末端、3’末端、内部のいずれかで干渉性RNAと結合してもよい。このような修飾は、干渉性RNAのヌクレアーゼ耐性を高め、細胞取込を改善し、細胞標的の設定を増強し、干渉性RNAの追跡を補助し、安定性をさらに改善し、またはインターフェロン経路が活性化する可能性を低下させるために、通常設計される。例えば、干渉性RNAは、オーバーハングの末端にプリンヌクレオチドを含んでもよい。例えば、siRNA分子のセンス鎖の3’末端へピロリジンリンカーによりコレステロールを結合体することも、siRNAに安定性を付与する。
【0081】
さらなる修飾には、例えば、細胞浸透性を有することが知られている3’末端ビオチン分子、ナノ粒子、ペプチド模倣物質、蛍光色素、またはデンドリマーが挙げられる。
【0082】
ヌクレオチドは、分子の塩基部分、糖部分またはリン酸部分上で修飾を受け、本発明の実施形態において機能し得る。修飾には、例えば、アルキル、アルコキシ、アミノ、デアザ、ハロ、ヒドロキシル、チオールの各基、またはその組合せによる置換が含まれる。ヌクレオチドは、例えば、リボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで代替すること、または2’アミノ基、2’O−メチル基、2’メトキシエチル基もしくは2’−O,4’−Cメチレン架橋で代替した2’OH基などの糖修飾を有することなどの、安定性が増加するアナログで代用してもよい。ヌクレオチドのプリンまたはピリミジンアナログの例には、キサンチン、ヒポキサンチン、アザプリン、メチルチオアデニン、7−デアザ−アデノシン、O修飾およびN修飾ヌクレオチドなどが挙げられる。ヌクレオチドのリン酸基は、リン酸基の1個または複数の酸素を窒素または硫黄(ホスホロチオエート)で置換することにより、修飾してもよい。修飾は、例えば、機能の強化、安定性もしくは透過性の改善、または局在化もしくは標的誘導の指向に有用である。
【0083】
干渉性RNAのアンチセンス鎖には、配列番号1の一部に相補的でない1つまたは複数の領域があってもよい。非相補領域は、相補領域の3’末端、5’末端もしくは両末端、または2つの相補領域の間にあってもよい。
【0084】
干渉性RNAは、化学合成、インビトロ転写、またはダイサーもしくは類似活性の別の適当なヌクレアーゼによる、より長い2本鎖RNAの切断によって、外因的に生成してもよい。保護したリボヌクレオシドホスホロアミダイトから、従来のDNA/RNA合成装置を用いて作製される化学合成干渉性RNAは、Ambion Inc.(Austin,TX)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、またはDharmacon(Lafayette,CO)などの商業的供給業者から入手することもできる。干渉性RNAは、例えば、溶媒もしくは樹脂による抽出、沈殿、電気泳動、クロマトグラフィー、またはその組合せによって、精製してもよい。あるいは、干渉性RNAは、試料処理による損失を避けるために、ほとんど精製せずに使用してもよい。
【0085】
干渉性RNAは、例えば、プラスミドもしくはウイルス発現ベクターから、または1個もしくは複数のプロモーターおよび該干渉性RNAに対する1個もしくは複数の適当な鋳型を含むPCR生成フラグメントである、最小発現カセットから、内因的に生成することもできる。shRNA用の市販プラスミド系発現ベクターの例には、pSilencerシリーズのもの(Ambion,Austin,TX)、およびpCpG−siRNA(Invivogen,San Diego,CA)が含まれる。干渉性RNAの発現用ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス(例えば、HIV、FIVおよびEIAV)ならびにヘルペスウイルスを含めた、多様なウイルスから誘導し得る。shRNA発現用の市販ウイルスベクターの例には、pSilencerアデノ(Ambion,Austin,TX)、およびpLenti6/BLOCK−iTTM−DEST(Invitrogen,Carlsbad,CA)が含まれる。ウイルスベクターの選択、該ベクターから干渉性RNAを発現させる方法、およびウイルスベクターを送達する方法は、当業者の通常の技術内に入る。PCR生成shRNA発現カセットを作製するキットの例には、Silencer Express(Ambion,Austin,TX)、およびsiXpress(Mirus,Madison,WI)が含まれる。第1の干渉性RNAは、第1の干渉性RNAを発現できる第1の発現ベクターからインビボで発現させることを介して投与してもよく、第2の干渉性RNAは、第2の干渉性RNAを発現できる第2の発現ベクターからインビボで発現させることを介して投与してもよく、または両方の干渉性RNAを発現できる単一の発現ベクターからインビボで発現させることを介して、両方の干渉性RNAを投与してもよい。
【0086】
干渉性RNAは、U6プロモーターもしくはH1プロモーターなどのpol IIIプロモーター、またはサイトメガロウイルスプロモーターなどのpol IIプロモーターを含めた、当業者に公知の様々な真核プロモーターから発現し得る。当業者であれば、こうしたプロモーターも、干渉性RNAの誘導発現を可能とするように適合できることを認識されよう。
【0087】
生理条件下でのハイブリッド形成:本発明のある種の実施形態では、干渉性RNAのアンチセンス鎖は、RISC複合体の一部としてインビボでmRNAとハイブリッド形成をする。
【0088】
「ハイブリッド形成」とは、相補的またはほぼ相補的な塩基配列を有する1本鎖核酸同士が、相互作用してハイブリッドと称する水素結合複合体を形成する過程を指す。ハイブリッド形成反応は、感度良く選択的である。インビトロでのハイブリッド形成の特異性(即ち、ストリンジェンシー(stringency))は、例えば、予備ハイブリッド形成およびハイブリッド形成各溶液中の塩またはホルムアミドの濃度、ならびにハイブリッド形成温度で制御されるが、このような操作は当技術分野で周知のことである。詳細には、塩濃度の低下、ホルムアミド濃度の増加、またはハイブリッド形成温度の上昇により、ストリンジェンシーが増加する。
【0089】
例えば、高ストリンジェンシーの条件は、約50%のホルムアミド、37℃〜42℃で起こることができよう。低ストリンジェンシーの条件は、約35%〜25%のホルムアミド、30℃〜35℃で起こることができよう。ハイブリッド形成に対するストリンジェンシー条件の例は、Sambrook.J.、1989年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に示されている。ストリンジェントなハイブリッド形成条件のさらなる例には、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃もしくは70℃、12〜16時間の後、洗浄、または1XSSC中70℃もしくは1XSSC中50℃、50%ホルムアミドでハイブリッド形成の後、0.3XSSC中70℃で洗浄、または4XSSC中70℃もしくは4XSSC中50℃、50%ホルムアミドでハイブリッド形成の後、1XSSC中67℃で洗浄が含まれる。ハイブリッド形成の温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より約5℃〜10℃低く、Tは、次式の計算を用いて長さ19塩基対と49塩基対との間のハイブリッドについて決定され、T℃=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)、式中、Nはハイブリッド中の塩基数、[Na+]はハイブリッド形成緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である。
【0090】
上記のインビトロハイブリッド形成アッセイは、候補siRNAと標的との結合が特異性を有するか否かを予測する方法を提供する。しかし、RISC複合体に関しては、標的の特異的切断が、インビトロのハイブリッド形成で高ストリンジェンシーを示さないアンチセンス鎖でも起こり得る。
【0091】
1本鎖干渉性RNA:上記のように、干渉性RNAは最終的に1本鎖として機能する。1本鎖(ss)干渉性RNAは、2本鎖siRNAほどに有効ではないが、mRNAの沈黙を起こすことが判明した。したがって、本発明の実施形態は、生理条件下で配列番号1の一部分とハイブリッドを形成し、配列番号1のそのハイブリッド形成部分と少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有する、ss干渉性RNAの投与も提供する。該ss干渉性RNAは、上記のds siRNAについては19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有する。該ss干渉性RNAは、5’リン酸を有するか、または5’位でインサイチュもしくはインビボでリン酸化される。「5’リン酸化」という用語は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの5’末端に、糖(例えば、リボース、デオキシリボースまたはそのアナログ)のC5ヒドロキシルへエステル結合を介して結合するリン酸基を有する、該ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドについて述べるために使用される。
【0092】
ss干渉性RNAは、化学的に、もしくはインビトロ転写により合成され、またはds干渉性RNAについてはベクターもしくは発現カセットから内因的に発現される。5’リン酸基はキナーゼにより付加してもよいし、または5’リン酸はRNAのヌクレアーゼ切断の結果でもよい。送達は、ds干渉性RNAの場合と同じである。一実施形態では、保護末端およびヌクレアーゼ耐性修飾を有するss干渉性RNAが、沈黙のために投与される。ss干渉性RNAは、保存のために乾燥し、または水溶液中に溶解してもよい。該溶液は、アニーリング抑制または安定化のために緩衝剤または塩を含有してもよい。
【0093】
ヘアピン干渉性RNA:ヘアピン干渉性RNAは、ステム−ループ即ちヘアピン構造中に干渉性RNAのセンス鎖、アンチセンス鎖双方を含む単分子である(例えばshRNA)。例えば、shRNAは、センス干渉性RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドが、その逆方向相補的なアンチセンス干渉性RNA鎖をコードするDNAオリゴヌクレオチドと、短いスペーサーにより連結されているDNAベクターから発現させることができる。選定した発現ベクターに必要であれば、3’末端Tおよび制限酵素部位を形成するヌクレオチドを付加してもよい。生成するRNA転写物は、折り返されてステム−ループ構造を形成する。
【0094】
投与方式:干渉性RNAは、例えば、エアロゾル、口腔、皮膚、皮内、吸入、筋肉内、鼻腔内、眼内、肺内、静脈内、腹腔内、経鼻、経眼、経口、経耳、非経口、パッチ、皮下、舌下、局所または経皮投与で送達してもよい。
【0095】
干渉性RNAは、眼周囲、結膜、内側眼瞼靭帯下(subtenon)、眼房内、硝子体内、眼内、網膜下、結膜下、眼球後部または涙管内への注入などの眼組織注入;カテーテル、もしくは網膜ペレット、眼内インサート、坐剤などの他の留置用具、または多孔質、非多孔質もしくはゼラチン質材料から構成されるインプラントを用いた眼への直接施用;局所的な点眼用液滴または軟膏;あるいは盲管内の、または強膜に隣接して(経強膜)もしくは眼内に埋植した徐放用具により、眼に直接送達してもよい。眼房内注入は、角膜から前眼房内に薬剤が小柱網に到達できるように行い得る。涙管内注入は、シュレム管に排液する静脈集涙道またはシュレム管内に行い得る。
【0096】
被験体:眼血管形成の治療が必要であるか、または眼血管形成を発現する危険性のある被験体は、本明細書で言及するようなIGF−1Rの不要もしくは不適当な発現もしくは活性に関連する眼血管形成を有する、または眼血管形成を有する危険性のあるヒトまたは他の哺乳動物である。このような障害に関係する眼の構造には、例えば、眼、網膜、脈絡膜、水晶体、角膜、小柱網、虹彩、視神経、視神経乳頭、強膜、前眼部もしくは後眼部、または毛様体を包含し得る。被験体は、眼の細胞、細胞培養物、器官、またはエクスビボでの器官もしくは組織でもよい。
【0097】
処方物および投薬量:医薬処方物は、本発明の干渉性RNAまたはその塩99重量%までを、水、緩衝液、塩水、グリシン、ヒアルロン酸、マンニトールなどの生理的に受容可能なキャリアとの混合物として含む。
【0098】
本発明の干渉性RNAは、溶液、懸濁液または乳濁液として投与される。以下の表は、本発明により具体化される考えられ得る処方物の例である。
【0099】
【表2】


【0100】
一般的に、本発明の実施形態の干渉性RNAの有効量は、標的細胞表面において100pM〜1μM、または1nM〜100nM、または5nM〜50nM、または約25nMまでの細胞外濃度を生じる。この局所濃度の実現に必要な用量は、送達法、送達部位、送達部位と標的細胞または組織との間の細胞層数、送達の局所性または全身性如何などのいくつもの要因に依存して変化することになろう。送達部位における濃度は、標的細胞または組織の表面における濃度よりかなり高くなり得る。局所用組成物は、熟練臨床医の裁量に従って、毎日1〜4回、または毎日、毎週、隔週、毎月もしくはそれより長い頻度などの長期送達日程で標的器官の表面に送達される。処方物のpHは、約pH4〜9またはpH4.5〜pH7.4である。
【0101】
IGF1R mRNAに対する干渉性RNAを用いた患者の治療的処置は、作用の持続期間を増加させ、したがって投薬頻度の減少および患者コンプライアンスの増大を可能とすることによって、小分子処置より有益であると予想される。
【0102】
処方物の有効量は、例えば、被験体の年齢、人種および性別、眼血管形成の重度、標的遺伝子転写物/タンパク質代謝回転の速度、干渉性RNAの効力、干渉性RNAの安定性などの要因に依存し得る。一実施形態では、干渉性RNAは、局所の標的器官に送達され、網膜や視神経乳頭などのIGF1R mRNA含有組織に治療用量で到達することにより、眼血管形成関連疾患過程を軽減する。
【0103】
受容可能なキャリア:受容可能なキャリアとは、ひどくてもほとんどないしまったく眼の刺激を起こさず、必要であれば適切な保護をもたらし、本発明の1種または複数の干渉性RNAを均一な用量で送達するようなキャリアを指す。本発明の実施形態の干渉性RNAを投与するための受容可能なキャリアには、カチオン性脂質系トランスフェクション試薬のTransIT(登録商標)−TKO(Mirus Corporation,Madison,WI)、LIPOFECTIN(登録商標)、Lipofectamine、OLIGOFECTAMINETM(Invitrogen,Carlsbad,CA)、もしくはDHARMAFECTTM(Dharmacon,Lafayette,CO);ポリエチレンイミンなどのポリカチオン;Tat、ポリアルギニン、もしくはPenetratin(Antpペプチド)などのカチオン性ペプチド;またはリポソームが含まれる。リポソームは、標準的な小胞形成脂質およびコレステロールなどのステロールから形成され、例えば、内皮細胞表面抗原に結合親和性を有するモノクローナル抗体などの標的指向分子を含み得る。さらに、リポソームはPEG化リポソームでもよい。
【0104】
干渉性RNAは、溶液中、懸濁液中、または非生体浸食性送達用具中で送達してもよい。干渉性RNAは、単独で、または所定の共役結合性結合体の成分として送達することができる。干渉性RNAは、カチオン性脂質、カチオン性ペプチドもしくはカチオン性ポリマーと複合することもでき、タンパク質、融合タンパク質、もしくは核酸結合性のタンパク質ドメイン(例えば、プロタミン)と複合することもでき、またはナノ粒子もしくはリポソーム中に封入することもできる。組織特異的または細胞特異的送達は、抗体や抗体フラグメントなどの適当な標的指向性構成成分を含めることにより、実現させることができる。
【0105】
眼への送達については、干渉性RNAは、眼科的に許容できる防腐剤、共溶媒、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝剤、塩化ナトリウムまたは水を併用することにより、眼科用滅菌水性懸濁液または溶液を形成してもよい。溶液処方物は、生理的に受容可能な等張水性緩衝液中に干渉性RNAを溶解することにより、調製し得る。さらに、該溶液は、該阻害剤の溶解を補助するために、受容可能な界面活性剤を含んでもよい。ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの増粘剤を本発明の組成物に添加することにより、当該化合物の保持力を改善してもよい。
【0106】
眼科用滅菌軟膏処方物を調製するために、干渉性RNAは、鉱油、液体ラノリン、白色ワセリンなどの適当な媒体中の防腐剤と併用される。眼科用滅菌ゲル処方物は、例えばCARBOPOL(登録商標)−940(BF Goodrich,Charlotte,NC)などの組合せから調製される親水性基剤中に、当技術分野で公知の方法に従って干渉性RNAを懸濁することにより、調製し得る。眼内注入のために、例えばVISCOAT(登録商標)(Alcon Laboratories,Inc.,Fort Worth,TX)を使用してもよい。本発明の他の組成物は、干渉性RNAの眼内浸透性が不十分な場合、クレモフォア、TWEEN(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Sigma Aldrich,St.Louis,MO)などの浸透促進剤を含有してもよい。
【0107】
キット:本発明の実施形態は、本明細書に記載のようなmRNAの細胞内発現を弱めるために、そのための試薬を含むキットを提供する。該キットは、siRNAか、またはshRNA発現ベクターを含有する。siRNA、および非ウイルス性のshRNA発現ベクターについては、該キットは、トランスフェクション試薬または他の適切な送達媒体も含有する。ウイルス性のshRNA発現ベクターについては、該キットは、ウイルスベクター、および/またはウイルスベクター産生用の必要成分を含有し得る(例えば、パッケージング細胞株、ならびにパッケージング用のウイルスベクター鋳型および追加のヘルパーベクターを含むベクター)。該キットは、siRNAまたはshRNA発現ベクターのポジティブコントロールおよびネガティブコントロールも含有する(例えば、非標的指向性コントロールsiRNA、または無関係mRNAを標的とするsiRNA)。該キットは、狙った標的遺伝子のノックダウンを評価する試薬を含有してもよい(例えば、標的mRNAを検出する定量的PCR用のプライマーとプローブ、および/または対応タンパク質に対するウェスタンブロット用の抗体)。あるいは、該キットは、siRNA配列またはshRNA配列と、インビトロ転写によるsiRNAの生成またはshRNA発現ベクターの構築に必要な使用説明書および材料とを含んでもよい。
【0108】
包装式組合せで、収容手段を密接に詰めて受け容れるようになされた搬送手段と、干渉性RNA組成物および受容可能なキャリアを含む第1の収容手段とを含んだ、キット形式の医薬用組合せもさらに提供される。このようなキットは、当業者であれば容易に明らかであろうが、例えば、薬学的に受容可能なキャリアを1種または複数有する容器、追加の容器などの従来からの多様な医薬キット構成要素を1種または複数、所望であればさらに含むこともできる。投与すべき成分の量、投与指針、および/または成分混合の指針を示す、折込みあるいはラベルいずれかの使用説明書も、該キットの中に含み得る。
【0109】
例えばヒト眼細胞系における内因的標的遺伝子の発現量をノックダウンする、干渉性RNAの能力は、インビトロで以下のように評価される。ヒト形質転換細胞をトランスフェクションの24時間前に標準増殖培地(例えば、10%ウシ胎児血清補充DMEM)中に播種する。0.1nM〜100nMの範囲の干渉性RNA濃度で、製造業者の教示に従ってDharmafect 1(Dharmacon,Lafayette,CO)を用いてトランスフェクションを行う。非標的指向性コントロールのsiRNAおよびラミンA/C siRNA(Dharmacon)をコントロールとして使用する。標的mRNA量は、例えば、TAQMAN(登録商標)順方向および逆方向プラマーと、標的部位を包含するプローブ(Applied Biosystems,Foster City,CA)とを用いて、トランスフェクションの24時間後にqPCRによって評価される。標的タンパク質量は、例えばウェスタンブロットにより、トランスフェクションのおよそ72時間後(実際の時間はタンパク質の代謝回転速度に依存する)に評価し得る。培養細胞からのRNAおよび/またはタンパク質の標準的分離技法は、当業者に周知である。非特異的な標的外効果を減ずるために、標的遺伝子発現における所望のノックダウン量を生成するできる限り低濃度の干渉性RNAが使用される。
【0110】
IGF1Rタンパク質の発現量をノックダウンする、本発明の干渉性RNAの能力は、以下のように実施例1でさらに例示される。
【0111】
したがって、本明細書には少なくとも以下のことが開示されている:
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与することを含み、前記干渉性RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる方法。
【0112】
眼血管形成の治療をその治療が必要な被験体において行うための薬剤の使用であって、前記方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記被験体の眼へ投与することを含み、前記干渉性RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、それにより前記眼血管形成が治療される使用。
【0113】
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの1本鎖干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与することを含み、前記1本鎖干渉性RNAは、401、635、1062、1548、1604、1643、1766、1922、2012、2069、2210、2416、2423、2654、2909、3339、3416、3464、3476、3505、3512、3781、3782、3881、4064、4158、4411、4487、4904、4905、4909、3329、2323または2887のいずれかの番号のヌクレオチドを含む配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、前記干渉性RNAは、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる方法。
【0114】
発現系におけるIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記発現系へ投与することを含み、前記干渉性RNAは、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドに対して、少なくとも80%の配列相補性または少なくとも80%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含んでおり、それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる方法。
【0115】
被験体における眼血管形成を治療する薬剤の調製における、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物の使用であって、前記干渉性RNAは、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するmRNAの3’末端から2番目からの13ヌクレオチドに対して、少なくとも90%の配列相補性または少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも13個の連続ヌクレオチド領域を含んでおり、それにより前記眼血管形成が治療される使用。
【0116】
被験体における眼血管形成を治療する薬剤の調製における、RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする2本鎖siRNA分子を含む組成物の使用であって、前記siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、前記siRNA分子の一方の鎖が、前記IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対してそれぞれ実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、前記siRNA分子がRNA干渉を介して前記mRNAの切断を誘導する使用。
【0117】
19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの長さを有し、配列番号2および配列番号8〜配列番号40のいずれか1つに対応するヌクレオチド配列、またはその相補体を含む干渉性RNAと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物。
【0118】
RNA干渉を介してIGF1R遺伝子の発現をダウンレギュレートする2本鎖siRNA分子を含む組成物であって、前記siRNA分子の各鎖は独自に長さが約19ヌクレオチド〜約27ヌクレオチドであり、前記siRNA分子の一方の鎖が、前記IGF1R遺伝子に対応するmRNAに対して実質的な相補性を有するヌクレオチド配列を含むことにより、前記siRNA分子がRNA干渉を介して前記mRNAの切断を誘導する組成物。
【0119】
ならびに、
IGF1R mRNAを発現する被験体に対してIGF1R mRNAの発現を弱める方法であって、前記方法は、長さが19ヌクレオチド〜49ヌクレオチドの干渉性RNAの有効量と薬学的に受容可能なキャリアとを含む組成物を前記被験体へ投与することを含み、前記干渉性RNAは、センスヌクレオチド鎖、アンチセンスヌクレオチド鎖、および少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を含み、前記アンチセンスヌクレオチド鎖は、配列番号1に対応するmRNAの一部分に生理条件下でハイブリッド形成し、配列番号1に対応するmRNAの前記ハイブリッド形成部分に対して、少なくともほぼ完全に連続して相補的な少なくとも19ヌクレオチドの領域を有しており、それによりIGF1R mRNAの前記発現が弱められる方法。
【0120】
本発明は、その趣旨または本質的特性から逸脱せずに他の特定の形態で具体化してもよい。説明した実施形態は、あらゆる点で例示的に過ぎず、限定的ではないと見なすべきである。したがって、本発明の範囲は、前記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲により示される。請求項の意味および等価範囲の中に入る請求項に対するすべての変更は、その範囲内に包含すべきである。さらに、本明細書に記載の刊行されたすべての文書、特許および出願は、その全体が提示されているかのように、本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
IGF1Rを特異的に沈黙させるための干渉性RNA
本試験では、培養HeLa細胞における内因性IGF−1Rタンパク質の発現量に対するIGF1R干渉性RNAのノックダウン能を調べる。
【0122】
HeLa細胞のトランスフェクションは、各IGF1R siRNAの標準的インビトロ濃度(0.1nM〜10nM)、siCONTROLのRISC非含有siRNA#1、またはsiCONTROLの非標的指向性siRNA#2(NTC2)、およびDHARMAFECT(登録商標)#1トランスフェクション試薬(Dharmacon,Lafayette,CO)を用いて行った。すべてのsiRNAを、1XsiRNA緩衝液としての20mM KCl、6mM HEPES(pH7.5)、0.2mM MgClの水溶液中に溶解した。コントロール試料には、siRNAの容量を1XsiRNA緩衝液の等容量で代用した緩衝液コントロールを含めた(−siRNA)。IGF−1Rタンパク質の発現を評価するために、抗IGF−1Rβ抗体を用いたウェスタンブロットを行った。この抗体は、200kDaのIGF−1R前駆体、97kDaのIGF−1Rβタンパク質の両方を認識する。各IGF1R siRNAは、以下の標的に対して特異性を有する2本鎖干渉性RNAである。即ち、siIGF1R#6は配列番号38を標的とし、siIGF1R#8は配列番号39を標的とし、siIGF1R#17は配列番号13を標的とし、siIGF1R#18は配列番号40を標的とする。図のデータが示すように、siIGF1R#8およびsiIGF1R#17のsiRNAは、コントロールsiRNAに比して、濃度10nMおよび1nMでIGF−1Rタンパク質の発現を有意に低下させたので、これらのIGF1R siRNAが、siIGF1R#6およびsiIGF1R#18より有効であることを示している。siRNAのいずれも、0.1nMではIGF−1Rタンパク質の発現を有意に低下させなかった。
【0123】
本明細書で引用した参考文献は、本明細書に提示した例示的な手順上または他の詳細を補足する程度に、明確に参考として援用される。
【0124】
本開示に鑑みると、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに本明細書に開示した実施形態の明白な改変をなし得ることを理解されよう。本明細書に開示した実施形態はすべて、本開示に鑑みると、過度の実験をせずになし、実行することができる。本発明の全範囲は、この開示およびその等価な実施形態において明示されている。本明細書は、本発明がその資格を有する保護の全範囲を過度に狭めるものと見なすべきではない。
【0125】
本明細書に使用する場合で別途指示しない限り、用語「a」および「an」は、「1」、「少なくとも1」または「1もしくは複数」を意味するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−254095(P2012−254095A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−210913(P2012−210913)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2008−548873(P2008−548873)の分割
【原出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】