説明

眼軟膏を眼瞼に塗布するための器具

【課題】誰でも簡単に眼軟膏を眼瞼に塗布することを可能にする器具を提供すること。
【解決手段】眼軟膏塗布器具1は、眼瞼縁10aに沿って眼軟膏塗布器具1をガイドするためのガイド部5と、所定の量の眼軟膏2を保持することが可能なように形成されたくぼみ部6とを有している。くぼみ部6に保持された眼軟膏2を眼瞼10に接触させながら眼軟膏塗布器具1をガイド部5に従って移動させることによって、眼軟膏2が眼瞼10に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誰でも簡単に眼軟膏を眼瞼に塗布することを可能にする器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼の病気を治療する薬物治療剤として、点眼薬が広く用いられてきた。最近では、点眼薬の代わりに、眼瞼に塗布するための眼軟膏が研究開発されている。例えば、眼感染症治療用の眼軟膏が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−10971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、専門の医師等の熟練者でなければ、眼軟膏を眼瞼にうまく塗布することが困難であるため、患者は、治療のたびに、専門の医師等のもとに通わなければならないという不便があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、専門の医師等に頼らなくても、誰でも簡単に眼軟膏を眼瞼に塗布することを可能にする器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の器具は、眼軟膏を眼瞼に塗布するための器具であって、前記眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドするためのガイド部と、所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されたくぼみ部とを有し、これにより、上記目的が達成される。
【0006】
前記くぼみ部は、前記くぼみ部に保持された前記眼軟膏を前記眼瞼に接触させながら前記器具を前記ガイド部に従って移動させる場合において、前記器具の移動につれて、余剰分の眼軟膏を前記くぼみ部から押し出すような形状を有していてもよい。
【0007】
前記くぼみ部の形状は、前記器具の先端部から前記器具の底部に向かってテーパー状に広がった形状であってもよい。
【0008】
前記器具は、前記器具の先端部と前記器具の底部との間においてくびれており、このくびれ部分が前記ガイド部として機能してもよい。
【0009】
前記器具によって眼の角膜が損傷することを防止するための保護部が前記器具の先端部に設けられていてもよい。
【0010】
前記眼軟膏が、前記くぼみ部に実際に保持されていてもよい。
【0011】
本発明の器具は、眼軟膏を複数の眼瞼に塗布するための器具であって、前記器具は、ガイド部と、複数のくぼみ部とを有し、前記ガイド部は、前記複数の眼瞼のうちの第1の眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドし、かつ、前記複数の眼瞼のうち前記第1の眼瞼とは異なる第2の眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドするためのものであり、前記複数のくぼみ部のうちの第1のくぼみ部は、前記第1の眼瞼用に所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されており、前記複数のくぼみ部のうち前記第1のくぼみ部とは異なる第2のくぼみ部は、前記第2の眼瞼用に所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されており、これにより、上記目的が達成される。
【0012】
前記第1の眼瞼および前記第2の眼瞼は、同一人物の右眼の下方の眼瞼および左眼の下方の眼瞼であってもよい。
【0013】
前記第2のくぼみ部は、前記第1のくぼみ部の反対側の位置に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誰でも簡単に眼軟膏を眼瞼に塗布することを可能にする器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏を右眼の下方の眼瞼10に塗布する様子を示す概略図である。眼軟膏としては、任意のタイプの眼軟膏を用いることができる。例えば、眼軟膏として、”ドライアイ”治療用の眼軟膏を用いることができる。
【0017】
眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏を眼瞼10に塗布する手順は、以下のとおりである。
【0018】
1.眼軟膏を眼瞼10に塗布する前に、適量の眼軟膏を眼軟膏塗布器具1に保持させる。
【0019】
2.眼軟膏塗布器具1に保持された眼軟膏が眼瞼10に塗布されるように、眼瞼10の縁に沿って眼軟膏塗布器具1を移動させる。
【0020】
ここで、眼軟膏塗布器具1が販売される時点で、眼軟膏が眼軟膏塗布器具1に保持されているか否かは問わない。眼軟膏塗布器具1が販売される時点で、眼軟膏が眼軟膏塗布器具1に保持されていてもよい(この方式を「プリセット方式」と呼ぶ)。プリセット方式の場合には、眼軟膏が眼軟膏塗布器具1に予めセットされた形態のパッケージとして販売されることになる。一方、眼軟膏塗布器具1が販売される時点で、眼軟膏が眼軟膏塗布器具1に保持されていなくてもよい(この方式を「非プリセット方式」と呼ぶ)。非プリセット方式の場合には、例えば、眼軟膏塗布器具1を購入した人が、自分自身で眼軟膏を眼軟膏塗布器具1にセットするようにすればよい。
【0021】
眼軟膏塗布器具1は、誰でも簡単に眼軟膏を眼瞼に塗布することを可能にするように設計されている。すなわち、眼軟膏塗布器具1は、患者自身が眼軟膏を自分の眼瞼に塗布することを可能にし、患者以外の人(必ずしも医師である必要はない)が眼軟膏を患者の眼瞼に塗布することを可能にする。この点について、図2を参照して詳しく説明する。
【0022】
図2は、眼軟膏塗布器具1の構成の一例を示す図である。図2は、眼瞼10を側面方向から見た図である。
【0023】
眼軟膏塗布器具1は、図2に示されるように棒状に延びている。説明の便宜上、眼軟膏塗布器具1を使用する場合において、眼軟膏塗布器具1の端部のうち、角膜に近い側の端部を先端部3といい、角膜から遠い側の端部を底部4という。眼軟膏塗布器具1は、眼軟膏塗布器具1を使用する人(以下、「ユーザ」という)が指で持つことができるように構成されている。また、眼軟膏塗布器具1は、先端部3と底部4との間でくびれており、このくびれ部分が眼瞼10の縁(以下、眼瞼縁10aという)に沿って眼軟膏塗布器具1をガイドするためのガイド部5として機能する。
【0024】
眼軟膏塗布器具1は、くぼみ部6をさらに有している。くぼみ部6は、適量の眼軟膏2を保持することが可能なようにくぼんでいる(すなわち、眼軟膏塗布器具1内にくぼみ部6として凹部が形成されている)。ここで、「適量」とは、眼軟膏2を眼瞼10に薄く塗布するために適切な量という意味である。「適量」は、眼軟膏2としてどの薬剤が用いられるかに合わせて予め決定される。従って、「適量」とは、眼軟膏2としてどの薬剤が用いられるかに合わせて予め決定された「所定の量」であるということもできる。眼軟膏塗布器具1のくぼみ部6の容量は、その「所定の量」の薬剤(眼軟膏2)を保持することが可能なように設計される。
【0025】
くぼみ部6に保持された眼軟膏2を眼瞼10に接触させながら眼軟膏塗布器具1をガイド部5に従って移動させることによって、眼軟膏2が眼瞼10に塗布される。なお、図2では、くぼみ部6が明示されるように、説明の便宜上、くぼみ部6が正面方向に向いた状態を図示しているが、眼軟膏2を眼瞼10に塗布する場合には、くぼみ部6は、下方向を向いた状態となり、その結果、くぼみ部6に保持された眼軟膏2が眼瞼10に接触することになる。図2では、眼軟膏2が塗布される領域(眼瞼縁10aの一部)は、斜線が付された領域12として示されている。
【0026】
くぼみ部6は、眼軟膏塗布器具1をガイド部5に従って移動させるにつれて、適量を超える余剰量の眼軟膏2をくぼみ部6から押し出すような形状を有するように設計されている。くぼみ部6の形状をこのような形状に設計しておくことにより、適量を超える量の眼軟膏2がくぼみ部6に保持された場合でも、余剰分の眼軟膏2は、眼軟膏2を眼瞼10に塗布する際に、くぼみ部6から押し出されることになる。これにより、くぼみ部6に保持される眼軟膏2の量を厳密に調整することをしなくても、「適量」の眼軟膏2を眼瞼10に塗布することが可能になる。くぼみ部6は、眼軟膏2の量が適量となるように自動的に調整する”自動調整機能”を有しているといえる。このように、眼瞼10に塗布される眼軟膏2の量が常に「適量」となるようにコントロールすることは非常に重要である。なぜなら、眼瞼10に塗布される眼軟膏2の量を「適量」にすることにより、眼軟膏2を眼瞼10に薄く塗布することが容易に達成されるということが本願発明者によって明らかにされたからである。また、くぼみ部6による眼軟膏2の量の”自動調整機能”は、上述した非プリセット方式の場合に特に有用である。なぜなら、非プリセット方式の場合には、仮にくぼみ部6がなかったとすると、ユーザ自身が「適量」の眼軟膏2を眼軟膏塗布器具1にセットすることが容易ではないからである。
【0027】
例えば、くぼみ部6の形状は、図2に示されるように、眼軟膏塗布器具1の先端部3から底部4に向かってテーパー状に広がった形状であり得る。くぼみ部6の形状をこのようなテーパー状に広がった形状とすることにより、余剰分の眼軟膏2は、くぼみ部6の狭い部分6aから広い部分6bに向かって流れることになる。これにより、くぼみ部6に保持される眼軟膏2の量を厳密に調整することをしなくても、「適量」の眼軟膏2を眼瞼10に塗布することが可能になる。
【0028】
眼軟膏塗布器具1の先端部3には、眼軟膏塗布器具1によって眼の角膜が損傷することを防止するための保護部7が設けられていることが好ましい。保護部7は、角膜損傷防止機能が達成される限り、任意の形状を有し得る。例えば、保護部7は、図2に示されるように、丸みを帯びた形状を有していてもよい。この場合、少なくとも保護部7およびガイド部5(くびれ部分)を一体的に成形して、図2に示されるようなマッシュルーム形状としてもよい。
【0029】
眼軟膏塗布器具1の材料としては、基本的には、任意の材料が使用され得る。ただし、市販用の眼軟膏塗布器具1の材料としては、例えば、プラスッチック等の加工がしやすい材料が好ましく、医師用の眼軟膏塗布器具1の材料としては、例えば、衛生面を考慮して金属製が好ましい。
【0030】
なお、上述した実施の形態では、眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏2を右眼の下方の眼瞼10に塗布する場合を例にとり説明したが、眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏2を左眼の下方の眼瞼20(図1)、右眼の上方の眼瞼30(図1)、左眼の上方の眼瞼40(図1)のいずれかに塗布することも可能であるし、眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏2を眼瞼10、20、30、40のうちのいくつかに塗布することも可能である。
【0031】
一本の眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏を複数の眼瞼に塗布するためには、一本の眼軟膏塗布器具1に複数個のくぼみ部6を設けるようにすればよい。例えば、一本の眼軟膏塗布器具1に第1のくぼみ部と第2のくぼみ部とを設ける場合において、第2のくぼみ部を第1のくぼみ部の反対側(裏側)に設けるようにしてもよい。これにより、ユーザは一本の眼軟膏塗布器具1を持ち替えることにより、第1のくぼみ部に保持された眼軟膏を第1の眼瞼(例えば、右眼の下方の眼瞼)に塗布し、第2のくぼみ部に保持された眼軟膏を第2の眼瞼(例えば、左眼の下方の眼瞼)に塗布することが可能になる。一本の眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏を同一人物の複数の眼瞼に塗布することができるので便利である。なお、一本の眼軟膏塗布器具1に設けられるくぼみ部6の数は、2個には限定されない。一本の眼軟膏塗布器具1には3個以上の任意の個数のくぼみ部6が設けられ得る。
【0032】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の眼軟膏塗布器具1を用いて眼軟膏2を右眼の下方の眼瞼10に塗布する様子を示す概略図
【図2】眼軟膏塗布器具1の構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0034】
1 眼軟膏塗布器具
2 眼軟膏
5 ガイド部
6 くぼみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼軟膏を眼瞼に塗布するための器具であって、
前記眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドするためのガイド部と、
所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されたくぼみ部と
を有する、器具。
【請求項2】
前記くぼみ部は、前記くぼみ部に保持された前記眼軟膏を前記眼瞼に接触させながら前記器具を前記ガイド部に従って移動させる場合において、前記器具の移動につれて、余剰分の眼軟膏を前記くぼみ部から押し出すような形状を有している、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記くぼみ部の形状は、前記器具の先端部から前記器具の底部に向かってテーパー状に広がった形状である、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記器具は、前記器具の先端部と前記器具の底部との間においてくびれており、このくびれ部分が前記ガイド部として機能する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記器具によって眼の角膜が損傷することを防止するための保護部が前記器具の先端部に設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記眼軟膏が、前記くぼみ部に実際に保持されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
眼軟膏を複数の眼瞼に塗布するための器具であって、
前記器具は、ガイド部と、複数のくぼみ部とを有し、
前記ガイド部は、前記複数の眼瞼のうちの第1の眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドし、かつ、前記複数の眼瞼のうち前記第1の眼瞼とは異なる第2の眼瞼の縁に沿って前記器具をガイドするためのものであり、
前記複数のくぼみ部のうちの第1のくぼみ部は、前記第1の眼瞼用に所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されており、前記複数のくぼみ部のうち前記第1のくぼみ部とは異なる第2のくぼみ部は、前記第2の眼瞼用に所定の量の眼軟膏を保持することが可能なように形成されている、器具。
【請求項8】
前記第1の眼瞼および前記第2の眼瞼は、同一人物の右眼の下方の眼瞼および左眼の下方の眼瞼である、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記第2のくぼみ部は、前記第1のくぼみ部の反対側の位置に形成されている、請求項7に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−178270(P2009−178270A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18377(P2008−18377)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(508030822)有限会社イゾウ (2)
【Fターム(参考)】