説明

眼鏡レンズおよびその製造方法

【課題】光照射下で部分的に発色しグラデーションカラーを呈し得るフォトクロミックレンズを提供すること。
【解決手段】光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を有する眼鏡レンズ。前記フォトクロミック層は、一部領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性が低下ないし消失していることで、光照射下で層内に色の濃淡が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズおよびその製造方法に関するものであり、詳しくは、光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を有する眼鏡レンズ(フォトクロミックレンズ)であって、光照射下でグラデーションカラーを呈し得る眼鏡レンズおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機フォトクロミック染料を応用したフォトクロミックレンズが眼鏡用として市販されている(例えば特許文献1および2参照)。これらは明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズと同様な防眩効果を有し、室内に移ると高い透過率を回復するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/001578A1
【特許文献2】特開平8−254603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のフォトクロミックレンズは光照射下でレンズ全面が一様に発色するため、装用者は明るい屋外で眩しさは解消できるものの、視界全域が暗くなるため物が見えづらくなるという課題がある。
【0005】
上記課題はフォトクロミックレンズを光照射下で部分的に発色させることが可能となれば解決することができる。また、この課題が解決されることで、光照射下でグラデーションレンズのように発色する、今までにない斬新な美観を有するフォトクロミックレンズを実現することも可能となる。
【0006】
この点に関し特許文献2には、フォトクロミックレンズの下方部位に紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層を設けることで、レンズ下方部位におけるフォトクロミック色素の発色を防ぎ可視光透過性を維持することが提案されている。しかし特許文献2に記載の方法では、紫外線吸収層を部分的に形成するため、該層の厚みによってレンズ表面に段差ができてしまう。この段差によるレンズ面内の高低差が目視で確認できるほど鮮明に現れてしまうと、レンズの美観が損なわれることになる。
【0007】
そこで本発明の目的は、特許文献2に記載の方法のように部分的な層の形成によることなく、光照射下で部分的に発色しグラデーションカラーを呈し得るフォトクロミックレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、フォトクロミックレンズにおいて、フォトクロミック層の一部分でフォトクロミック色素の光発色性を低下ないし消失させることで、特許文献2に記載の方法のように新たな層の形成によることなく、光照射下で部分的に発色するフォトクロミックレンズが得られること、およびフォトクロミック層を部分的に酸処理することで上記フォトクロミックレンズを得ることができることを新たに見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち上記目的は、下記手段によって達成された。
[1]光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を有する眼鏡レンズであって、
前記フォトクロミック層は、一部領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性が低下ないし消失していることで、光照射下で層内に色の濃淡が生じることを特徴とする、前記眼鏡レンズ。
[2][1]に記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を形成すること、および、
形成したフォトクロミック層の一部領域を酸溶液と接触させることで、該領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性を低下ないし消失させること、
を特徴とする、前記製造方法。
[3]前記接触を、形成したフォトクロミック層を、その表面を液面に対して略垂直な状態として酸溶液に浸漬し次いで引き上げることで行う[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光照射下でグラデーションカラーを呈する眼鏡レンズを得ることができる。本発明の眼鏡レンズは、防眩効果と良好な視界を両立するとともに、今までにはない斬新なファッション性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の工程の説明図である。
【図2】実施例により得られた眼鏡レンズの光照射下での発色状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を有する眼鏡レンズに関する。本発明の眼鏡レンズは、前記フォトクロミック層において一部領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性が低下ないし消失していることで、光照射下で層内に色の濃淡が生じるものである。
以下、本発明の眼鏡レンズについて、更に詳細に説明する。なお以下において、フォトクロミック色素の光発色性が低下ないし失われることを「不能化」という。
【0013】
フォトクロミックレンズとしては、レンズ基材上にフォトクロミック色素を含む樹脂コーティングを設けたもの、レンズ基材にフォトクロミック色素を含浸または練りこんだものがあり、本発明の眼鏡レンズはいずれの態様であってもよい。前者の態様では、前記フォトクロミック層はレンズ基材上に設けられた樹脂コーティングであり、後者の態様ではレンズ基材である。後者の態様では、フォトクロミック色素がレンズ基材内で良好な光発色性を発揮するために適切な基材材料を選択すべきであるが、基材材料には屈折率等の光学特性の観点からの制約がある。したがって後者の態様では、使用可能な基材材料が限られる。これに対し前者の態様は、フォトクロミック色素との組み合わせに関する基材材料への制約がない点で好ましい。
【0014】
レンズ基材材料は、上記の点を除けば特に限定されるものではなく、プラスチック、無機ガラス等の通常のレンズ基材材料を用いることができる。プラスチックとしては、例えばメチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エピチオ基を有する化合物を材料とする重合体、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、スルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリジスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体等などが挙げられる。レンズ基材の厚さは、通常1〜30mm程度であるが、特に限定されるものではない。レンズ基材の直径は、例えば50mm〜100mm程度、通常の眼鏡レンズでは70〜80mm程度である。また、レンズ基材の表面形状は特に限定されず、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。
【0015】
フォトクロミック色素としては、公知のものを使用することができ、例えば、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物等のフォトクロミック色素が挙げられ、本発明においては、これらのフォトクロミック色素を特に制限なく使用することができる。その詳細については、例えばWO2008/001578A1段落[0076]〜[0088]を参照できる。前記のレンズ基材上に樹脂コーティングとしてフォトクロミック層を有する態様では、フォトクロミック層の厚さは通常、フォトクロミック特性を良好に発現させる観点から、10μm以上であることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。また、フォトクロミック層中のフォトクロミック色素の濃度は、樹脂成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることが更に好ましい。
【0016】
フォトクロミックレンズは、光に応答して発色する性質(光発色性)を有するフォトクロミック色素が応答波長域の光(通常、紫外線)の照射下に置かれると発色する現象を利用し、明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズと同様な防眩効果を発揮し、室内に移ると高い透過率を回復するものである。ただし、前述のようにレンズ全面が高濃度に発色すると、視界全体が暗くなり物が見えづらくなる。これに対し本発明の眼鏡レンズでは、フォトクロミック層の一部領域においてフォトクロミック色素の光発色性が低下ないし消失しているため、光照射下において当該領域は発色しないか、または他の領域と比べて低濃度で発色する。そのため装用者は、光照射下で当該領域に視線を移すことで物を鮮明に見ることができ、高濃度に発色した他の領域において防眩効果を得ることができる。こうして本発明の眼鏡レンズによれば、防眩効果と良好な視界を両立することができる。
【0017】
フォトクロミック層において、一部領域のフォトクロミック色素を不能化する方法としては、層内の色素を分解する方法、色素をイオンにより錯体化する方法などが挙げられる。これら方法等により色素分子の構造を変化させることで、その光発色性を低下ないし消失させることができる。好ましい方法としては、フォトクロミック層の一部領域を酸溶液と接触させる方法を挙げることができる。層内のフォトクロミック色素の構造を酸によって変化させることで、その光発色性を低減ないし失わせることができる。また、上記方法は、高濃度の酸溶液を使用するほど、または酸溶液と長時間接触させるほど、接触した領域のフォトクロミック色素の光発色性を大きく低減させる(または失わせる)ことができ、光発色性の制御が容易である。
【0018】
即ち本発明によれば、
光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を形成すること(以下、「工程1」という)、および、
形成したフォトクロミック層の一部領域を酸溶液と接触させることで、該領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性を低下ないし消失させること(以下、「工程2」という)、
を特徴とする本発明の眼鏡レンズの製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)も提供される。
以下、本発明の製造方法について更に詳細に説明する。
【0019】
工程1では、通常のフォトクロミックレンズの製造と同様の方法でフォトクロミック層を形成すればよい。例えば先に説明した、レンズ基材上に樹脂コーティングを設ける態様では、フォトクロミック色素と硬化性成分を含む塗布液(フォトクロミック液)をレンズ基材上に直接または任意に設けられる他の層を介して間接的に塗布した後に硬化処理を施すことによって、硬化体(樹脂成分)全体にわたりフォトクロミック色素が分散したフォトクロミック層を形成することができる。
【0020】
フォトクロミック層形成のために使用可能な硬化性成分は、特に限定されず、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基、スチリル基等のラジカル重合性基を有する公知の光重合性モノマーやオリゴマー、それらのプレポリマーを用いることができる。その詳細については、WO2008/001578A1段落[0049]〜[0075]を参照できる。
【0021】
フォトクロミック液には、通常、硬化性成分とともに重合開始剤が含まれる。重合開始剤は、重合方法に応じて、公知の熱重合開始剤および光重合開始剤から適宜選択することができる。それらの詳細については、WO2008/001578A1段落[0089]〜[0090]を参照できる。
【0022】
更にフォトクロミック液には、フォトクロミック色素の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。その詳細については、WO2008/001578A1段落[0092]〜[0097]を参照できる。
【0023】
以上説明した成分を含むフォトクロミック液を塗布および硬化することにより、レンズ基材上にフォトクロミック層を形成することができる。フォトクロミック液の塗布は、スピンコート法、ディップコート法等の公知の塗布方法によって行うことができる。硬化処理としては、フォトクロミック液に含まれる硬化性成分の種類に応じて加熱、光照射等)を施す。本発明の製造方法では、こうして形成されたフォトクロミック層が工程2に付されることで一部領域のフォトクロミック色素の光応答性が低下ないし失われる結果、光照射下で層内に色の濃淡が生じるフォトクロミックレンズを得ることができる。
【0024】
工程2で使用される酸溶液としては、フォトクロミック色素の構造変化を起こすことができるものであればよく特に限定されるものではないが、高揮発性の酸溶液が好ましい。工程2の終了後もフォトクロミック層内に酸が多量に残留していると、残留した酸によってフォトクロミック色素が所望の程度を超えて過剰に不能化されることが懸念されるのに対し、高揮発性の酸溶液であればフォトクロミック層から容易に取り除かれるからである。また、高沸点の酸では、水などの溶媒が揮発し除去された後にもフォトクロミック層内に残留することで上記と同様の点が懸念される。したがって酸溶液中の酸は、比較的低沸点のものが好ましい。加えて酸化性の高い酸では、フォトクロミック色素以外の成分が変質する可能性があるため、酸化性の高い酸の使用は好ましくない。以上記載した揮発性、沸点、酸化性の点から好ましい酸溶液としては、フッ化水素酸等のハロゲン化水素酸および塩酸を挙げることができる。酸溶液の酸濃度は、例えば1〜30質量%程度とすることができるが、不能化の程度は酸濃度とともに酸溶液との接触時間によっても制御可能であるため、上記範囲に限定されるものではない。
【0025】
本発明の製造方法では、例えばフォトクロミック層の表面の一部に酸溶液を噴霧した後に乾燥させる方法(スプレー法)、フォトクロミック層を部分的に酸溶液中に浸漬し次いで引き上げる方法(ディッピング法)等によって、フォトクロミック層と酸溶液を接触させることができる。例えば、先に説明したレンズ基材がフォトクロミック層である態様では、レンズ基材を部分的に酸溶液中に浸漬し、レンズ基材上に樹脂コーティングとしてフォトクロミック層を有する態様では、フォトクロミック層を形成したレンズ基材を部分的に酸溶液中に浸漬する。ディッピング法では、通常のディップコート法に準じて、工程1で形成したフォトクロミック層を、その表面を液面に対して略垂直な状態として酸溶液に浸漬し(ただしフォトクロミック層を完全には浸漬せず)次いで引き上げることで、浸漬した部分のみを選択的に酸溶液と接触させることができる。なお、ここで「略」とは、±15°程度異なることを含む意味とする。上記ディッピング法によれば、下方の部分ほど長時間酸溶液と接触することとなるため、フォトクロミック色素の不能化の程度を漸次変化させることも可能である。これにより、酸処理を施した領域において光照射下で色が連続的に変化する(グラデーションカラーを呈する)眼鏡レンズを実現することができる。
【0026】
以上の工程1および2を経て形成されたフォトクロミック層上には、必要に応じて公知のハードコート膜、反射防止膜、撥水層、プライマー層等の機能性膜を形成することができる。また、レンズ基材とフォトクロミック層との間に公知の機能性膜を有する態様も、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例により本発明を更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
(1)プライマー層の形成
プラスチックレンズ基材として、メニスカス形状のポリチオウレタンレンズ(HOYA(株)製 商品名EYAS、中心肉厚2.0mm厚、直径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)を使用し、レンズ基材の凸面上に、プライマー液としてポリウレタン骨格にアクリル基を導入したポリウレタンの水分散液(ポリカーボネートポリオール系ポリウレタンエマルジョン、粘度100mPa・s、固形分濃度38質量%)をスピンコート法により塗布した後、温度25℃湿度50%RHの雰囲気下で15分風乾処理し、厚さ約7μmのプライマー層を形成した。
【0029】
(2)フォトクロミックコーティング液の調製
プラスチック製容器にトリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、BPEオリゴマー(2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン)35質量部、EB6A(ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート)10質量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート10質量部からなるラジカル重合性組成物を調製した。このラジカル重合性組成物100質量部に対し、フォトクロミック色素として下記クロメン1を3質量部、光安定化剤LS765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート)を5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製イルガキュア245)を5質量部、紫外線重合開始剤としてCGI−1870(BASF社製)0.6質量部を添加して十分に攪拌混合を行った組成物に、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM503)を攪拌しながら6質量部滴下した。その後、自転公転方式攪拌脱泡装置にて2分間脱泡することで、フォトクロミック性を有する硬化性組成物を得た。
【0030】
【化1】

【0031】
(3)フォトクロミック層の形成
上記(1)で形成したプライマー層上に、(2)で調製した硬化性組成物をスピンコート法でコーティングした。その後、このレンズを窒素雰囲気中(酸素濃度500ppm以下)にて、UVランプ(Dバルブ)で波長405nmの紫外線を積算光量で1800mJ/cm2(100mW/cm2、3分)照射し、さらに、100℃、60分間硬化処理を行い、厚さ40μmのフォトクロミック層を形成した。
【0032】
(4)ディッピング法による酸処理
上記(3)でフォトクロミック層を形成したレンズ基材を、酸溶液として5質量%弗化水素酸を満たした浸漬槽内に、液面に対してフォトクロミック層表面を垂直な状態として面の半分まで30分間浸漬し、次いで引き上げた。引き上げた後に風乾することで酸溶液を除去した。
【0033】
以上の工程により、フォトクロミック層の半分に酸処理が施されたフォトクロミックレンズを得た。
【0034】
(5)光発色性の確認
得られたフォトクロミックレンズをUVランプ照射下にて観察したところ、図2に模式的に示すように、酸溶液に浸漬しなかった領域(以下、「未浸漬領域」という)では高濃度に発色したのに対し、酸溶液に浸漬した領域(以下、「浸漬領域」という)では未浸漬領域と比べて発色濃度が低いことが目視で確認された。また、浸漬領域内では、発色濃度が上方から下方に向かって連続的に低下し、酸溶液からの引き上げ時に下方に位置していた部分ほど発色濃度が低いことも確認された。
【0035】
[実施例2]
実施例1において、工程(4)で使用する酸溶液として5質量%弗化水素酸に代えて10質量%塩酸を使用した点以外は実施例1と同様の処理を行った。得られたフォトクロミックレンズでは、実施例1と同様の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、フォトクロミックレンズの製造分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光発色性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を有する眼鏡レンズであって、
前記フォトクロミック層は、一部領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性が低下ないし消失していることで、光照射下で層内に色の濃淡が生じることを特徴とする、前記眼鏡レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法であって、
光応答性を有するフォトクロミック色素を含むフォトクロミック層を形成すること、および、
形成したフォトクロミック層の一部領域を酸溶液と接触させることで、該領域に含まれるフォトクロミック色素の光発色性を低下ないし消失させること、
を特徴とする、前記製造方法。
【請求項3】
前記接触を、形成したフォトクロミック層を、その表面を液面に対して略垂直な状態として酸溶液に浸漬し次いで引き上げることで行う請求項2に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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