眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の保管用ケース
【課題】眼鏡用プラスチックレンズ成形用の成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移し、生産性の向上を図る。
【解決手段】眼鏡用プラスチックレンズ成形用の成形型1を保管用ケース2に収納する収納ステップS1Aを有する。保管用ケース2は、成形型1を立てて上方から出し入れ可能に支持しかつレンズ成形面とは非接触で支持する。保管用ケース2の上に洗浄用ラック13を上下反転させて載せるラック接続ステップS2を有する。洗浄用ラック13は、成形型1を立てて上方から出し入れ可能に支持しかつレンズ成形面とは非接触で支持する。保管用ケース2と洗浄用ラック13とを上下反転させる移載ステップS3を有する。成形型1を洗浄する洗浄ステップS4と、成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップS5とを有する。
【解決手段】眼鏡用プラスチックレンズ成形用の成形型1を保管用ケース2に収納する収納ステップS1Aを有する。保管用ケース2は、成形型1を立てて上方から出し入れ可能に支持しかつレンズ成形面とは非接触で支持する。保管用ケース2の上に洗浄用ラック13を上下反転させて載せるラック接続ステップS2を有する。洗浄用ラック13は、成形型1を立てて上方から出し入れ可能に支持しかつレンズ成形面とは非接触で支持する。保管用ケース2と洗浄用ラック13とを上下反転させる移載ステップS3を有する。成形型1を洗浄する洗浄ステップS4と、成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップS5とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管用ケースから取出されて洗浄された成形型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを成形する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の保管用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法による従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に開示されている眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に用いる前記成形用の型は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するための成形型となる第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
【0005】
このように構成された成形用の型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形用の型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、レンズ面に研磨や表面処理を施す。
成形用の型の一部を構成する前記第1、第2のモールド部材は、ガラス材料によって形成されており、複数回にわたって繰り返して使用されるものである。このため、第1、第2のモールド部材は、成形用の型から取出された後に洗浄させられ、種類別に分類されて専用の保管用ケースに収納されている。
【0006】
前記保管用ケースは、複数の第1、第2のモールド部材をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で厚み方向に間隔をおいて並べて収納する保持部材を備えている。この保持部材は、発泡プラスチック等の柔軟性と弾性とを有する材料によって形成されており、第1、第2のモールド部材の外周部を溝に嵌合させて保持するものである。この保管用ケースには、同一種類の第1、第2のモールド部材が収納される。
【0007】
保管用ケースに収納された第1、第2のモールド部材は、使用時に作業者によって保管用ケースから取出され、洗浄用ラックに移される。そして、この第1、第2のモールド部材は、洗浄用ラックとともに洗浄液に浸漬されて洗浄され、洗浄後に上述したように円筒状の支持部材に組み込まれる。
眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の第1、第2のモールド部材は、洗浄され、前記保管用ケースに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法では、第1、第2のモールド部材を保管用ケースから洗浄用ラックに移すときに作業時間が著しく長くなり、生産性を高くするにも限界があった。前記作業時間が長くなる理由は、成形型を1枚ずつ保管用ケースから洗浄用ラックに移す必要があるからであり、しかも、成形型を慎重に扱わなければならないからである。成形型を慎重に扱わなければならない理由は、成形型のレンズ成形面に例えば他の成形型が当たることを防ぐためである。レンズ成形面は、他の成形型が接触しただけで傷つくことがある。レンズ成形面に傷を有する成形型で成形された眼鏡用プラスチックレンズは、不良品になってしまう。
【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができる眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、レンズ成形面を傷つけることなく成形型を取り扱うことができ、成形型の保管が容易な成形型の保管用ケースを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、保管用ケースにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがないように支持させて収納する収納ステップと、前記保管用ケースの上に、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下とが逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケース内から前記洗浄用ラックに移す移載ステップと、前記洗浄用ラックに移された前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとによって実施する。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記保管用ケースは、前記成形型を1枚だけ収納可能なケース本体を所定の個数だけ成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものであり、前記収納ステップと前記ラック接続ステップとの間に、前記成形型が収納された複数のケース本体を前記厚み方向に並べて互いに連結して保管用ケースを形成する連結ステップを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記連結ステップで使用するケース本体は、予め形成された他の保管用ケースから取出されたものであり、前記他の保管用ケースは、同一種類の成形型が収納された複数のケース本体を成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成され、前記他の保管用ケースからケース本体を取出すときは、この保管用ケースの一端部に位置する前記ケース本体を分離させて行い、眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型を収納したケース本体は、前記他の保管用ケースの他端部に位置するケース本体に連結される眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0014】
本発明は、上記発明の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の保管用ケースであって、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持する第1〜第3の支持部と、前記成形型の厚み方向とは直交する水平方向の両側から前記成形型と対向する一対の側壁部とを備え、前記第1の支持部は、前記水平方向の二箇所においてそれぞれ前記厚み方向に延び、かつ前記成形型の凸面と外周面とに挟まれた角部を上方から載せることができるように、上方に向かうにしたがって次第に前記凸面が指向する方向に傾斜して延びる一対の支持片によって構成され、前記第2の支持部は、前記一対の支持片どうしの間で下方に延びる成形型の下端部に前記凸面とは反対側から対向するように形成され、前記第3の支持部は、前記成形型の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに移すにあたって、成形型を手で持つ必要がなく、保管用ケースに洗浄用ラックを載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケースと洗浄用ラックは、成形型をレンズ成形面に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面が傷つくこともない。
したがって、本発明によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係る成形型の保管用ケースにおいては、第1の支持部と第2の支持部とによって、成形型が凸面側に傾斜することを規制することができる。また、前記第3の支持部は、成形型が前記凸面とは反対側に傾斜することを規制する。さらに、一対の側壁部は、成形型の厚み方向とは直交する水平方向に成形型が移動することを規制する。
したがって、この発明によれば、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で成形型を支持でき、しかも、レンズ成形面に接触することがない状態で成形型を支持できる保管用ケースを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】収納ステップを説明するための保管用ケースと成形型の正面図である。
【図3】ラック接続ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの正面図ずである。
【図4】移載ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの断面図である。
【図5】移載ステップにおいて反転作業が終了した後の状態の保管用ケースと洗浄用ラックの正面図である。
【図6】洗浄ステップを説明するための断面図である。
【図7】成形ステップを説明するための断面図である。
【図8】ケース本体の正面図である。
【図9】ケース本体の側面図である。
【図10】図8におけるケース本体のX−X線断面図である。
【図11】ケース本体の平面図である。
【図12】ケース本体の底面図である。
【図13】ケース本体の斜視図である。
【図14】保管用ケースの側面図である。
【図15】ハンドルを保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】洗浄用ラックの正面図である。
【図17】洗浄用ラックの一部の平面図である。
【図18】洗浄用ラックの側面図である。
【図19】保管庫の正面図である。
【図20】保管用ケースにケース本体を取付けたり取外すときの状態を説明するための側面図である。
【図21】ガイド部材を保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の保管ケースの一実施の形態を図1〜図21によって詳細に説明する。
本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、図1のフローチャートに示すように、保管ステップS1と、ラック接続ステップS2と、移載ステップS3と、洗浄ステップS4と、成形ステップS5とをこの順序で実施する方法である。
【0019】
[保管ステップS1]
前記保管ステップS1は、眼鏡用プラスチックレンズ(図示せず)のレンズ面を成形するための成形型1を後述する保管用ケース2(図2、図8〜図14参照)に収納した状態で保管するステップである。成形型1は、図7に示すように、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための型3の一部として使用するものである。
【0020】
図7に示す型3は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するために、成形型1として第1の成形型1Aと第2の成形型1Bとを備えている。前記型3は、これら第1、第2の成形型1A,1Bと、成形型1A,1Bどうしの相対的な移動を規制する支持部材4とを備えている。前記第1、第2の成形型1A,1Bは、ガラス材料によってそれぞれ円板状に形成されている。第1の成形型1Aは、眼鏡用プラスチックレンズの凸面を成形するためのもので、凹面からなるレンズ成形面5と、レンズ成形面ではない凸面6とが形成されている。第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの凹面を成形するためのもので、凸面からなるレンズ成形面7と、レンズ成形面ではない凹面8とが形成されている。
前記支持部材4は、第1、第2の成形型1A,1Bが嵌合する円筒状に形成されている。
【0021】
前記第1の成形型1Aと前記第2の成形型1Bは、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材4の中に装着される。このように支持部材4に両成形型1A,1Bを装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティ9が形成される。前記支持部材4には、キャビティ9内にレンズ材料を注入するために注入口4aが形成されているとともに、レンズ材料注入用の注入補助部材4bが取付けられている。
前記第1の成形型1Aと第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの成形工程が終了した後に前記支持部材4から取外され、洗浄させられる。その後、第1、第2の成形型1A,1Bは、図2に示すように、作業者によって保管用ケース2に収納される。
【0022】
前記保管ステップS1においては、先ず、保管用ケース2に成形型1を収納する収納ステップS1A(図1参照)が実施される。前記収納ステップS1Aで保管用ケース2に収納される成形型1は、上述したように眼鏡用プラスチックレンズの成形に使用した後のものや、新規に製造されたものなどである。
【0023】
この実施の形態で用いる保管用ケース2は、図8〜図14に示すケース本体11を所定の数だけ一列に並べて互いに連結することによって形成されている。この保管用ケース2は、詳細は後述するが、成形型1を保管庫12(図19参照)で保管するための機能と、後述する洗浄用ラック13(図16〜図18参照)に成形型1を移す治具としての機能とを有している。
【0024】
前記ケース本体11は、図8〜図14に示すように、成形型1(第1の成形型1Aまたは第2の成形型1B)をそのレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で1枚だけ収納できるように形成されている。図8には、外径が相対的に大きい成形型と、外径が相対的に小さい成形型とを図示してあるが、ケース本体11に支持できる成形型1の数は1枚である。図9〜図11および図14中に二点鎖線で示す成形型1は、第2の成形型1Bである。前記保管用ケース2は、複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に重ねて互いに連結させることによって形成されている。本明細書においては、前記厚み方向を指向する水平方向を便宜上、前後方向として説明する。また、以下においては、前記前後方向において、成形型1の凸面が指向する方向(例えば図9においては左方)を前方といい、これとは反対方向を後方という。さらに、前記前後方向において、成形型1の凸面側を前側といい、これとは反対側を後側という。
【0025】
この実施の形態によるケース本体11は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されている。このケース本体11には、後述する複数の機能部分が一体成形によって一体に形成されている。
前記複数の機能部分とは、図8に示すように、ケース本体11の最下部に位置する底壁部14と、この底壁部14の両端部分から上方に延びる一対の側壁部15と、これらの底壁部14と側壁部15とによって囲まれた位置にある第1〜第3の支持部16〜18などである。前記底壁部14は、ケース本体11を保管庫12や作業台(図示せず)などに載せたときの載置の安定を図る機能を有している。この実施の形態による底壁部14は、上方から見て成形型1の径方向に長い長方形状に形成されている。底壁部14の下面は平坦に形成されている。また、底壁部14には、図11および図12に示すように、二つの貫通孔19が形成されている。
【0026】
前記側壁部15は、前記底壁部14の長手方向の両端部分から上方に延びるように形成されている。すなわち、側壁部15は、ケース本体11に収納された成形型1の厚み方向(前後方向)とは直交する水平方向の両側から前記成形型1と対向している。これらの二つの側壁部15,15どうしの間隔は、最も外径が大きい成形型1の外径より大きくなるように形成されている。
この側壁部15は、成形型1がケース本体11内から前記水平方向の外側に脱落することを防ぐ機能と、他のケース本体11と連結する機能と、後述する搬送用ハンドル20(図15参照)を取付ける機能などを有している。
【0027】
これらの側壁部15の機能のうち、他のケース本体11と連結する機能は、図8および図9に示すように、側壁部15の外側部分に設けられた複数の突起21と複数の穴22とによって実現されている。複数の突起21は、各側壁部15において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられているとともに、前方へ突出するように設けられている。また、これらの突起21は、先端側が基端側より僅かに細い円柱状に形成されている。円柱の軸線方向は、前記前後方向と平行である。
【0028】
前記複数の穴22は、各側壁部15において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられている。また、これらの穴22は、他のケース本体11の突起21が嵌合するように形成されている。すなわち、各側壁部15に2つ設けられている突起21が他のケース本体11の穴22に嵌合することによって、2つのケース本体11どうしが互いに連結される。保管用ケース2は、図14に示すように、複数のケース本体11を互いに連結することによって構成されている。
【0029】
側壁部15の複数の機能のうち、搬送用ハンドル20を取付ける機能は、前記側壁部15の上端部に設けられた側面視U字状のリブ23によって実現されている。前記搬送用ハンドル20は、図15に示すように、パイプを所定の形状に折り曲げて形成されている。このハンドル20は、保管用ケース2の長手方向の両端側に位置する把持部20aと、これらの把持部20aどうしを接続する接続部20bとによって構成されている。前記接続部20bは、各ケース本体11の前記リブ23と、このリブ23の下方に位置する第1の凸部24との間に挿入されている。第1の凸部24は、前記側壁部15に前記リブ23の下方で側方に突出するように形成されている。第1の凸部24の前端部には、上側の前記突起21が形成され、後端部には上側の前記穴22が形成されている。この搬送用ハンドル20を保管用ケース2に取付けた状態においては、作業者が前記把持部20aを両手で把持して保管用ケース2を運ぶことができる。
【0030】
前記第1〜第3の支持部16〜18は、ケース本体11内で成形型1をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持するためのものである。
第1の支持部16は、図8、図10および図11に示すように、前記底壁部14から上方に延びる2枚の内側支持片25,25と2枚の外側支持片26,26とによって構成されている。これらの内側支持片25と外側支持片26は、それぞれ前記前後方向とは直交する水平方向の二箇所に対をなすように設けられている。
【0031】
前記内側支持片25は、外径が相対的に小さい成形型1を支持するためのものである。前記外側支持片26は、外径が相対的に大きい成形型1を支持するためのものである。
内側支持片25および外側支持片26の上端部には、それぞれ前記前後方向に延び、かつ上方に向かうにしたがって次第に前方に傾斜して延びる傾斜面25a,26aが形成されている。すなわち、傾斜面25a,26aは、いずれも前上がりに傾斜している。
【0032】
成形型1は、凸面が前方を指向する状態でケース本体11内に上方から挿入され、前記傾斜面25a,26aの上に載せられる。傾斜面25a,26aの傾斜角度は、成形型1の下端部後面が後述する第2の支持部17に接触している状態において、内側支持片25または外側支持片26が成形型1の凸面と接触することがない角度に設定されている。すなわち、成形型1が内側支持片25または外側支持片26に載せられたときに内側支持片25または外側支持片26と接触する部分は、成形型1の凸面と外周面とに挟まれた角部27(図10参照)である。言い換えれば、前記傾斜面25a,26aは、前記角部27のみが載せられるように前上がりに傾斜している。
【0033】
前記第2の支持部17は、図8、図10および図13に示すように、前記底壁部14から上方に延びる板によって形成されている。この第2の支持部17は、前記前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。また、この第2の支持部17は、図8に示すように、前記一対の内側支持片25どうしの間に形成されている。すなわち、第2の支持部17は、前後方向から見て前記一対の内側支持片25どうしの間で下方に延びる成形型1の下端部28に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0034】
前記第3の支持部18は、前記側壁部15からケース本体11の内側に延びる板状に形成されている。第3の支持部18は、前後方向において前記第2の支持部17と同じ位置で、前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。第3の支持部18の前記水平方向の幅と上下方向の長さは、図8に示すように、前後方向から見て、前記第1の支持部16に載せられた成形型1における前記水平方向の両端部と重なるように形成されている。すなわち、第3の支持部18は、前記成形型1の外周縁部に第2の支持部17より高い位置で前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0035】
この実施の形態による前記収納ステップS1Aは、図2に示すように、前記ケース本体11内に成形型1を上方から挿入して行う。このようにケース本体11内に成形型1を挿入すると、成形型1の下端部に位置する前記角部27が内側支持片25または外側支持片26に接触する。成形型1が内側支持片25または外側支持片26の上部に接触した場合は、成形型1を前記傾斜面25a,26aに沿って後斜め下に向けて滑らせ、成形型1の下端後縁を前方から第2の支持部17に接触させる。成形型1は、このように前記角部27が内側支持片25または外側支持片26に載せられている状態で凹面側の下端後縁が第2の支持部17に接触することによって、前方への傾斜が規制された状態で第1、第2の支持部16,17に保持される。
【0036】
この保持状態においては、第3の支持部18が第1、第2の支持部16,17より上方において、成形型1における凹面側の後縁と対向する。すなわち、成形型1の後方への傾斜は、第3の支持部18によって規制される。
このため、成形型1は、収納ステップS1Aにおいて、前方と後方への傾斜が規制された状態であって、レンズ成形面がケース本体11と接触することがない状態でケース本体11に支持される。
【0037】
この実施の形態においては、複数のケース本体11からなる保管用ケース2を用いているために、図1に示すように、収納ステップS1Aの後に第1の連結ステップS1Bが実施される。
第1の連結ステップS1Bにおいては、成形型1が収納されている複数のケース本体11を前後方向に並べて互いに連結する。この第1の連結ステップS1Bで使用するケース本体11は、眼鏡用プラスチックレンズの成形が終了して洗浄された後の成形型1を収納したケース本体11や、新品の成形型1を収納したケース本体11である。また、第1の連結ステップS1Bにおいては、同一種類の成形型1が収納された複数のケース本体11を用いて保管用ケース2が形成される。すなわち、第1の連結ステップS1Bで形成された保管用ケース2には、同一種類の成形型1のみが収納されることになる。第1の連結ステップS1Bで形成される保管用ケース2によって、請求項3記載の発明でいう「他の保管用ケース2」が構成されている。
【0038】
第1の連結ステップS1Bにおいて形成された保管用ケース2は、図19に示すように、保管庫12に収容されて保管される。すなわち、成形型1は、保管用ケース2毎に分類されて保管庫12に収容されている。この成形型1は、使用するときに保管庫12から保管用ケース2とともに取出される。
大量生産を行う場合などで保管用ケース2内の全ての成形型1を使用するときは、次のステップであるラック接続ステップS2を実施するために、この保管用ケース2を保管庫12から例えば作業台(図示せず)などの上に移す。
【0039】
多くの種類の成形型1を比較的少数ずつ使用して多品種少量生産を行う場合は、後述するラック接続ステップS2の準備ステップとして第2の連結ステップS2A(図1参照)が実施される。第2の連結ステップS2Aにおいては、多品種少量生産用の保管用ケース2が作られる。この第2の連結ステップS2Aにおいては、先ず、所望の種類の成形型1を保管用ケース2内から必要な個数だけ取出す。このように成形型1を保管用ケース2から取出すときは、図20に示すように、保管用ケース2の一端部2aに位置するケース本体11を保管用ケース2から分離させて行う。第2の連結ステップS2Aにおいては、保管用ケース2から分離された複数のケース本体11どうしを連結し、新たに多品種少量生産用の保管用ケース2を形成する。すなわち、多品種少量生産を行う場合は、第2の連結ステップS2Aで専用の保管用ケース2が形成される。この新たな保管用ケース2は、ラック接続ステップS2で洗浄用ラック13を接続するために前記作業台の上に移される。
【0040】
一方、使用後の成形型1(眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型であって保管庫12に戻される予定の成形型)や、補充のための新品の成形型1は、それぞれケース本体11に収納された後、同じ種類の成形型1が収容された保管用ケース2に戻される。このとき、使用後の成形型1や新品の成形型1を収納したケース本体11は、前記保管庫12に収容される保管用ケース2の他端部2bに位置するケース本体11に連結される。保管用ケース2には、図21に示すように、上述したように保管用ケース2の一端部2aからケース本体11を取出したり、保管用ケース2の他端部2bにケース本体11を連結する作業を容易に行うことができるように、一対のガイド部材31を取付けることができる。
【0041】
これらのガイド部材31は、それぞれ保管用ケース2の一端部2aから他端部2bまで延びる断面C字状の棒状に形成されており、各ケース本体11の両側部に形成された第2の凸部32を移動自在に保持している。第2の凸部32は、図8に示すように、前記側壁部15に前記第1の凸部24の下方で側方に突出するように形成されている。第2の凸部32の前端部には、下側の前記突起21が形成され、後端部には下側の前記穴22が形成されている。
【0042】
ガイド部材31を使用する場合、ケース本体11を保管用ケース2から取出すためには、各ケース本体11をガイド部材31に対して保管用ケース2の一端部2a側に移動させ、ガイド部材31から突出したケース本体11を分離させる。このようにすると、保管用ケース2の他端部2b側にガイド部材31が突出するようになり、2本のガイド部材31どうしの間に新たなケース本体11を挿入できるようにスペースが形成される。ケース本体11を保管用ケース2に取付ける場合は、ケース本体11を前記スペースに挿入して行う。
【0043】
[ラック接続ステップS2]
ラック接続ステップS2は、図3に示すように、後述する洗浄用ラック13を前記保管用ケース2に接続するステップである。洗浄用ラック13は、複数の成形型1を洗浄液中に浸漬させるためのものである。この実施の形態による洗浄用ラック13は、図16〜図18に示すように、成形型1を支持する第1〜第5の支持部33〜37と、これらの支持部33〜37を支える支持用フレーム38とによって構成されている。支持用フレーム38は、前側支持板39と後側支持板40(図18参照)とを4本のロッド41〜44で連結することによって形成されている。
【0044】
この実施の形態による前記第1〜第5の支持部33〜37は、それぞれ支持片45と、この支持片45を支持する支持用ロッド46とによって構成されている。前記支持片45は、プラスチック材料からなる板によって形成されている。この実施の形態による支持片45には、図17および図18に示すように、成形型1に向けて開くV字状を呈する切り欠き47が前後方向(成形型1の厚み方向)に等間隔に並ぶ状態で形成されている。切り欠き47が形成される間隔は、上述した保管用ケース2に収容された複数の成形型1が前後方向に並ぶ間隔、すなわち、ケース本体11の前後方向の幅と一致している。
前記切り欠き47は、成形型1のレンズ成形面とは離間する状態で成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、かつ成形型1が前後方向に傾斜(遊動)できるような形状に形成されている。
【0045】
この切り欠き47を有する支持片45は、前後方向に延びる前記支持用ロッド46に沿わせて固定されている。支持用ロッド46の両端部は、支持用フレーム38の前側支持板39と後側支持板40とに取付けられて支持されている。
前記支持片45と前記支持用ロッド46とからなる第1〜第5の支持部33〜37は、成形型1の周方向に所定の間隔をおいて離間する状態で配置されている。第1〜第5の支持部33〜37のうち、第3の支持部35は、成形型1の下端と対応する位置に配置され、第1の支持部33と第5の支持部37は、成形型1の上下方向の中央部と対応する位置に設けられている。第2の支持部34と第4の支持部36は、前記成形型1の下端と上下方向の中央部との間の中間となる位置に設けられている。
【0046】
また、第1〜第5の支持部33〜37の支持片45は、切り欠き47が成形型1の周方向に並ぶように位置付けられている。第1、第5の支持部33,37の支持片45は、図16に示すように、前後方向から見て成形型の中心より僅か上方を指向するように傾斜している。第2〜第4の支持部34〜36の支持片45は、前記前後方向から見て上下方向に延びるように設けられている。
【0047】
このように構成された洗浄用ラック13は、成形型1を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持するものとなる。また、この洗浄用ラック13は、V字状の切り欠き47に成形型1の外周部を挿入して成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径が変わったとしても支持状態が変化するようなことはない。
【0048】
ラック接続ステップS2においては、図3に示すように、上述したように構成された洗浄用ラック13を前記保管用ケース2の上に重ねて載せる。洗浄用ラック13を保管用ケース2に重ねるにあたっては、洗浄用ラック13の上部(成形型1を挿入する部分)が下に位置するように、洗浄用ラック13を上下方向に反転させた倒立状態で行う。また、このときの作業は、保管用ケース2内の成形型1と洗浄用ラック13の切り欠き47とが上下方向に並ぶように行う。
【0049】
[移載ステップS3]
移載ステップS3は、図4および図5に示すように、前記保管用ケース2に収納されている成形型1を前記洗浄用ラック13に移すステップである。この移載ステップS3においては、上述したラック接続ステップS2で保管用ケース2の上に洗浄用ラック13を重ねて載せた後、これらの保管用ケース2と洗浄用ラック13とを上と下とが逆に位置するように上下方向に反転させる。この反転作業は、図4に示すように、先ず、保管用ケース2の第2、第3の支持部17,18が下に位置するように保管用ケース2と洗浄用ラック13とを傾斜させ、成形型1を第2、第3の支持部17,18の上に載せる。
【0050】
そして、保管用ケース2と洗浄用ラック13とを洗浄用ラック13が下に位置するように更に傾斜させ、成形型1を第3の支持部18の上で滑らせて洗浄用ラック13の中に移動させる。その後、洗浄用ラック13の上に保管用ケース2が載るように洗浄用ラック13を起立させて正立の状態とし、この洗浄用ラック13の上から保管用ケース2を上方に外す。このように保管用ケース2が洗浄用ラック13から外されることによって、移載ステップS3が終了する。
【0051】
[洗浄ステップS4]
洗浄ステップS4は、図6に示すように、前記洗浄用ラック13に移された前記成形型1を洗浄液41中に浸漬させて洗浄するステップである。この洗浄ステップS4において、洗浄用ラック13は、洗浄装置42に支持されて洗浄槽43内に挿入される。洗浄槽43内には、予め所定の洗浄液41が溜められている。また、洗浄用ラック13は、洗浄装置42によって洗浄槽43内で前後方向または左右方向に揺動または水平移動させられる。なお、この洗浄槽43としては、超音波を発生させる装置を備えたものを用いることができる。
【0052】
成形型1は、洗浄液41中に浸漬された状態で洗浄用ラック13が揺れることによって、支持片45に支えられながら下端を支点として上部が前後方向に揺動するように遊動する。このため、成形型1と支持片45との接触点が一点に固定されることはなく、移り変わるようになる。このことは、成形型1の全ての部位を洗浄液41に晒すことができることを意味する。したがって、この洗浄ステップS4においては、洗浄液41で洗浄されることがない部位を残すことなく成形型1を洗浄することができる。
洗浄が終了した成形型1は、洗浄用ラック13に収納された状態で次の成形ステップS5を実施する成形装置(図示せず)に送られる。
【0053】
[成形ステップS5]
成形ステップS5は、前記洗浄用ラック13から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形するステップである。
この成形ステップS5は、図7に示すように、成形型1(第1の成形型1Aと第2の成形型1B)を支持部材4に組付け、支持部材4内に注入補助部材4bからレンズ材料(図示せず)を注入して実施する。
【0054】
したがって、この実施の形態で示した眼鏡用プラスチックレンズの製造方法においては、成形型1を保管用ケース2から洗浄用ラック13に移すにあたって、成形型1を手で持つ必要がなく、保管用ケース2に洗浄用ラック13を載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケース2と洗浄用ラック13は、成形型1をレンズ成形面に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面が傷つくこともない。
したがって、この実施の形態によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型1を保管用ケース2から洗浄用ラック13に速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0055】
この実施の形態による前記保管用ケース2は、前記成形型1を1枚だけ収納可能なケース本体11を所定の個数だけ成形型1の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものである。また、前記収納ステップS1Aと前記ラック接続ステップS2との間に、前記成形型1が収納された複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に並べて互いに連結する第1、第2の連結ステップS1B,S2Aを有している。
このため、成形型1をケース本体11で保護しながら保管用ケース2を形成することができる。したがって、この実施の形態によれば、レンズ成形面が傷つくことを確実に防ぐことが可能になる。
【0056】
この実施の形態による第2の連結ステップS2Aで使用するケース本体11は、予め形成された他の保管用ケース2から取出されたものである。前記他の保管用ケース2は、同一種類の成形型1が収納された複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成されたもので、保管庫12に収納するものである。前記他の保管用ケース2からケース本体11を取出すときは、この保管用ケース2の一端部2aに位置する前記ケース本体11を分離させて行っている。眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型1を収納したケース本体11は、前記他の保管用ケース2の他端部2bに位置するケース本体11に連結される。
このため、他の保管用ケース2(保管庫12に収納される保管用ケース2)から成形型1を取出すときは、この保管用ケース2に保管されている時間が最も長い成形型1が取出される。
【0057】
したがって、この実施の形態による眼鏡用プラスチックレンズの製造方法によれば、成形型1の使用履歴を管理することなく、全ての成形型1を略均等に使用することができる。成形型1の使用履歴を管理するためには、たとえばICタグやバーコードなどを用いて成形型1の使用履歴をその都度記録しなければならない。しかし、この実施の形態によれば、ICタグやバーコードなどを用いることなく全ての成形型1を略均等に使用することができる。
この結果、この実施の形態によれば、全ての成形型1を限界まで使用して眼鏡用プラスチックレンズの製造コストを低減することが可能になる。
【0058】
この実施の形態によるケース本体11の第1の支持部16と第2の支持部17とは、成形型1が凸面側に傾斜することを規制するものである。また、ケース本体11の前記第3の支持部18は、前記成形型1の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。この第3の支持部18は、成形型1が前記凸面とは反対側に傾斜することを規制するものである。これらの第1〜第3の支持部16〜18は、成形型1の外径に依存することなく成形型1を立てて支持することができるものである。
したがって、この実施の形態によれば、レンズ成形面に接触することなく、かつ外径の制約を受けることなく成形型1を支持でき、成形型1の保管を容易に行うことが可能な保管用ケースを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…成形型、2…保管用ケース、5,7…レンズ成形面、13…洗浄用ラック、11…ケース本体、2a…一端部、2b…他端部、16〜18…第1〜第3の支持部、15…側壁部、25…内側支持片、26…外側支持片、S1…保管ステップ、S1A…収納ステップ、S1B…第1の連結ステップ、S2…ラック接続ステップ、S2A…第2の連結ステップ、S3…移載ステップ、S4…洗浄ステップ、S5…成形ステップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管用ケースから取出されて洗浄された成形型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを成形する眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の保管用ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡用プラスチックレンズは、注型重合法によって形成されることが多い。この注型重合法とは、成形用の型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合法による従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に開示されている眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に用いる前記成形用の型は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するための成形型となる第1、第2のモールド部材と、これらのモールド部材どうしの相対的な移動を規制する支持部材とを備えている。前記第1、第2のモールド部材は、それぞれ円板状に形成されている。前記支持部材は、第1、第2のモールド部材が嵌合する円筒状に形成されている。
【0004】
前記第1のモールド部材と前記第2のモールド部材は、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材の中に装着される。このように支持部材に両モールド部材を装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティが形成される。前記支持部材には、キャビティ内にレンズ材料を注入するために注入口が設けられている。
【0005】
このように構成された成形用の型を用いて眼鏡用プラスチックレンズを製造するためには、先ず、前記キャビティ内にレンズ材料を注入し、レンズ材料が充填された成形用の型を加熱炉に入れてレンズ材料を重合させる。その後、前記型を分解して円板状のプラスチックレンズを取り出し、レンズ面に研磨や表面処理を施す。
成形用の型の一部を構成する前記第1、第2のモールド部材は、ガラス材料によって形成されており、複数回にわたって繰り返して使用されるものである。このため、第1、第2のモールド部材は、成形用の型から取出された後に洗浄させられ、種類別に分類されて専用の保管用ケースに収納されている。
【0006】
前記保管用ケースは、複数の第1、第2のモールド部材をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で厚み方向に間隔をおいて並べて収納する保持部材を備えている。この保持部材は、発泡プラスチック等の柔軟性と弾性とを有する材料によって形成されており、第1、第2のモールド部材の外周部を溝に嵌合させて保持するものである。この保管用ケースには、同一種類の第1、第2のモールド部材が収納される。
【0007】
保管用ケースに収納された第1、第2のモールド部材は、使用時に作業者によって保管用ケースから取出され、洗浄用ラックに移される。そして、この第1、第2のモールド部材は、洗浄用ラックとともに洗浄液に浸漬されて洗浄され、洗浄後に上述したように円筒状の支持部材に組み込まれる。
眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の第1、第2のモールド部材は、洗浄され、前記保管用ケースに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法では、第1、第2のモールド部材を保管用ケースから洗浄用ラックに移すときに作業時間が著しく長くなり、生産性を高くするにも限界があった。前記作業時間が長くなる理由は、成形型を1枚ずつ保管用ケースから洗浄用ラックに移す必要があるからであり、しかも、成形型を慎重に扱わなければならないからである。成形型を慎重に扱わなければならない理由は、成形型のレンズ成形面に例えば他の成形型が当たることを防ぐためである。レンズ成形面は、他の成形型が接触しただけで傷つくことがある。レンズ成形面に傷を有する成形型で成形された眼鏡用プラスチックレンズは、不良品になってしまう。
【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができる眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、レンズ成形面を傷つけることなく成形型を取り扱うことができ、成形型の保管が容易な成形型の保管用ケースを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、保管用ケースにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがないように支持させて収納する収納ステップと、前記保管用ケースの上に、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下とが逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケース内から前記洗浄用ラックに移す移載ステップと、前記洗浄用ラックに移された前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとによって実施する。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記保管用ケースは、前記成形型を1枚だけ収納可能なケース本体を所定の個数だけ成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものであり、前記収納ステップと前記ラック接続ステップとの間に、前記成形型が収納された複数のケース本体を前記厚み方向に並べて互いに連結して保管用ケースを形成する連結ステップを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記連結ステップで使用するケース本体は、予め形成された他の保管用ケースから取出されたものであり、前記他の保管用ケースは、同一種類の成形型が収納された複数のケース本体を成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成され、前記他の保管用ケースからケース本体を取出すときは、この保管用ケースの一端部に位置する前記ケース本体を分離させて行い、眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型を収納したケース本体は、前記他の保管用ケースの他端部に位置するケース本体に連結される眼鏡用プラスチックレンズの製造方法である。
【0014】
本発明は、上記発明の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の保管用ケースであって、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持する第1〜第3の支持部と、前記成形型の厚み方向とは直交する水平方向の両側から前記成形型と対向する一対の側壁部とを備え、前記第1の支持部は、前記水平方向の二箇所においてそれぞれ前記厚み方向に延び、かつ前記成形型の凸面と外周面とに挟まれた角部を上方から載せることができるように、上方に向かうにしたがって次第に前記凸面が指向する方向に傾斜して延びる一対の支持片によって構成され、前記第2の支持部は、前記一対の支持片どうしの間で下方に延びる成形型の下端部に前記凸面とは反対側から対向するように形成され、前記第3の支持部は、前記成形型の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに移すにあたって、成形型を手で持つ必要がなく、保管用ケースに洗浄用ラックを載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケースと洗浄用ラックは、成形型をレンズ成形面に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面が傷つくこともない。
したがって、本発明によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型を保管用ケースから洗浄用ラックに速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係る成形型の保管用ケースにおいては、第1の支持部と第2の支持部とによって、成形型が凸面側に傾斜することを規制することができる。また、前記第3の支持部は、成形型が前記凸面とは反対側に傾斜することを規制する。さらに、一対の側壁部は、成形型の厚み方向とは直交する水平方向に成形型が移動することを規制する。
したがって、この発明によれば、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で成形型を支持でき、しかも、レンズ成形面に接触することがない状態で成形型を支持できる保管用ケースを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】収納ステップを説明するための保管用ケースと成形型の正面図である。
【図3】ラック接続ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの正面図ずである。
【図4】移載ステップを説明するための保管用ケースと洗浄用ラックの断面図である。
【図5】移載ステップにおいて反転作業が終了した後の状態の保管用ケースと洗浄用ラックの正面図である。
【図6】洗浄ステップを説明するための断面図である。
【図7】成形ステップを説明するための断面図である。
【図8】ケース本体の正面図である。
【図9】ケース本体の側面図である。
【図10】図8におけるケース本体のX−X線断面図である。
【図11】ケース本体の平面図である。
【図12】ケース本体の底面図である。
【図13】ケース本体の斜視図である。
【図14】保管用ケースの側面図である。
【図15】ハンドルを保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】洗浄用ラックの正面図である。
【図17】洗浄用ラックの一部の平面図である。
【図18】洗浄用ラックの側面図である。
【図19】保管庫の正面図である。
【図20】保管用ケースにケース本体を取付けたり取外すときの状態を説明するための側面図である。
【図21】ガイド部材を保管用ケースに取付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法および成形型の保管ケースの一実施の形態を図1〜図21によって詳細に説明する。
本発明に係る眼鏡用プラスチックレンズの製造方法は、図1のフローチャートに示すように、保管ステップS1と、ラック接続ステップS2と、移載ステップS3と、洗浄ステップS4と、成形ステップS5とをこの順序で実施する方法である。
【0019】
[保管ステップS1]
前記保管ステップS1は、眼鏡用プラスチックレンズ(図示せず)のレンズ面を成形するための成形型1を後述する保管用ケース2(図2、図8〜図14参照)に収納した状態で保管するステップである。成形型1は、図7に示すように、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための型3の一部として使用するものである。
【0020】
図7に示す型3は、眼鏡用プラスチックレンズの2つのレンズ面を成形するために、成形型1として第1の成形型1Aと第2の成形型1Bとを備えている。前記型3は、これら第1、第2の成形型1A,1Bと、成形型1A,1Bどうしの相対的な移動を規制する支持部材4とを備えている。前記第1、第2の成形型1A,1Bは、ガラス材料によってそれぞれ円板状に形成されている。第1の成形型1Aは、眼鏡用プラスチックレンズの凸面を成形するためのもので、凹面からなるレンズ成形面5と、レンズ成形面ではない凸面6とが形成されている。第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの凹面を成形するためのもので、凸面からなるレンズ成形面7と、レンズ成形面ではない凹面8とが形成されている。
前記支持部材4は、第1、第2の成形型1A,1Bが嵌合する円筒状に形成されている。
【0021】
前記第1の成形型1Aと前記第2の成形型1Bは、所定の間隔をおいて互いに対向する状態で前記支持部材4の中に装着される。このように支持部材4に両成形型1A,1Bを装着することによって、これらの部材の中にプラスチックレンズ成形用のキャビティ9が形成される。前記支持部材4には、キャビティ9内にレンズ材料を注入するために注入口4aが形成されているとともに、レンズ材料注入用の注入補助部材4bが取付けられている。
前記第1の成形型1Aと第2の成形型1Bは、眼鏡用プラスチックレンズの成形工程が終了した後に前記支持部材4から取外され、洗浄させられる。その後、第1、第2の成形型1A,1Bは、図2に示すように、作業者によって保管用ケース2に収納される。
【0022】
前記保管ステップS1においては、先ず、保管用ケース2に成形型1を収納する収納ステップS1A(図1参照)が実施される。前記収納ステップS1Aで保管用ケース2に収納される成形型1は、上述したように眼鏡用プラスチックレンズの成形に使用した後のものや、新規に製造されたものなどである。
【0023】
この実施の形態で用いる保管用ケース2は、図8〜図14に示すケース本体11を所定の数だけ一列に並べて互いに連結することによって形成されている。この保管用ケース2は、詳細は後述するが、成形型1を保管庫12(図19参照)で保管するための機能と、後述する洗浄用ラック13(図16〜図18参照)に成形型1を移す治具としての機能とを有している。
【0024】
前記ケース本体11は、図8〜図14に示すように、成形型1(第1の成形型1Aまたは第2の成形型1B)をそのレンズ成形面5,7が上下方向に延びる状態で1枚だけ収納できるように形成されている。図8には、外径が相対的に大きい成形型と、外径が相対的に小さい成形型とを図示してあるが、ケース本体11に支持できる成形型1の数は1枚である。図9〜図11および図14中に二点鎖線で示す成形型1は、第2の成形型1Bである。前記保管用ケース2は、複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に重ねて互いに連結させることによって形成されている。本明細書においては、前記厚み方向を指向する水平方向を便宜上、前後方向として説明する。また、以下においては、前記前後方向において、成形型1の凸面が指向する方向(例えば図9においては左方)を前方といい、これとは反対方向を後方という。さらに、前記前後方向において、成形型1の凸面側を前側といい、これとは反対側を後側という。
【0025】
この実施の形態によるケース本体11は、プラスチック材料によって所定の形状に形成されている。このケース本体11には、後述する複数の機能部分が一体成形によって一体に形成されている。
前記複数の機能部分とは、図8に示すように、ケース本体11の最下部に位置する底壁部14と、この底壁部14の両端部分から上方に延びる一対の側壁部15と、これらの底壁部14と側壁部15とによって囲まれた位置にある第1〜第3の支持部16〜18などである。前記底壁部14は、ケース本体11を保管庫12や作業台(図示せず)などに載せたときの載置の安定を図る機能を有している。この実施の形態による底壁部14は、上方から見て成形型1の径方向に長い長方形状に形成されている。底壁部14の下面は平坦に形成されている。また、底壁部14には、図11および図12に示すように、二つの貫通孔19が形成されている。
【0026】
前記側壁部15は、前記底壁部14の長手方向の両端部分から上方に延びるように形成されている。すなわち、側壁部15は、ケース本体11に収納された成形型1の厚み方向(前後方向)とは直交する水平方向の両側から前記成形型1と対向している。これらの二つの側壁部15,15どうしの間隔は、最も外径が大きい成形型1の外径より大きくなるように形成されている。
この側壁部15は、成形型1がケース本体11内から前記水平方向の外側に脱落することを防ぐ機能と、他のケース本体11と連結する機能と、後述する搬送用ハンドル20(図15参照)を取付ける機能などを有している。
【0027】
これらの側壁部15の機能のうち、他のケース本体11と連結する機能は、図8および図9に示すように、側壁部15の外側部分に設けられた複数の突起21と複数の穴22とによって実現されている。複数の突起21は、各側壁部15において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられているとともに、前方へ突出するように設けられている。また、これらの突起21は、先端側が基端側より僅かに細い円柱状に形成されている。円柱の軸線方向は、前記前後方向と平行である。
【0028】
前記複数の穴22は、各側壁部15において上下方向に間隔をおいて離間するように設けられている。また、これらの穴22は、他のケース本体11の突起21が嵌合するように形成されている。すなわち、各側壁部15に2つ設けられている突起21が他のケース本体11の穴22に嵌合することによって、2つのケース本体11どうしが互いに連結される。保管用ケース2は、図14に示すように、複数のケース本体11を互いに連結することによって構成されている。
【0029】
側壁部15の複数の機能のうち、搬送用ハンドル20を取付ける機能は、前記側壁部15の上端部に設けられた側面視U字状のリブ23によって実現されている。前記搬送用ハンドル20は、図15に示すように、パイプを所定の形状に折り曲げて形成されている。このハンドル20は、保管用ケース2の長手方向の両端側に位置する把持部20aと、これらの把持部20aどうしを接続する接続部20bとによって構成されている。前記接続部20bは、各ケース本体11の前記リブ23と、このリブ23の下方に位置する第1の凸部24との間に挿入されている。第1の凸部24は、前記側壁部15に前記リブ23の下方で側方に突出するように形成されている。第1の凸部24の前端部には、上側の前記突起21が形成され、後端部には上側の前記穴22が形成されている。この搬送用ハンドル20を保管用ケース2に取付けた状態においては、作業者が前記把持部20aを両手で把持して保管用ケース2を運ぶことができる。
【0030】
前記第1〜第3の支持部16〜18は、ケース本体11内で成形型1をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持するためのものである。
第1の支持部16は、図8、図10および図11に示すように、前記底壁部14から上方に延びる2枚の内側支持片25,25と2枚の外側支持片26,26とによって構成されている。これらの内側支持片25と外側支持片26は、それぞれ前記前後方向とは直交する水平方向の二箇所に対をなすように設けられている。
【0031】
前記内側支持片25は、外径が相対的に小さい成形型1を支持するためのものである。前記外側支持片26は、外径が相対的に大きい成形型1を支持するためのものである。
内側支持片25および外側支持片26の上端部には、それぞれ前記前後方向に延び、かつ上方に向かうにしたがって次第に前方に傾斜して延びる傾斜面25a,26aが形成されている。すなわち、傾斜面25a,26aは、いずれも前上がりに傾斜している。
【0032】
成形型1は、凸面が前方を指向する状態でケース本体11内に上方から挿入され、前記傾斜面25a,26aの上に載せられる。傾斜面25a,26aの傾斜角度は、成形型1の下端部後面が後述する第2の支持部17に接触している状態において、内側支持片25または外側支持片26が成形型1の凸面と接触することがない角度に設定されている。すなわち、成形型1が内側支持片25または外側支持片26に載せられたときに内側支持片25または外側支持片26と接触する部分は、成形型1の凸面と外周面とに挟まれた角部27(図10参照)である。言い換えれば、前記傾斜面25a,26aは、前記角部27のみが載せられるように前上がりに傾斜している。
【0033】
前記第2の支持部17は、図8、図10および図13に示すように、前記底壁部14から上方に延びる板によって形成されている。この第2の支持部17は、前記前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。また、この第2の支持部17は、図8に示すように、前記一対の内側支持片25どうしの間に形成されている。すなわち、第2の支持部17は、前後方向から見て前記一対の内側支持片25どうしの間で下方に延びる成形型1の下端部28に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0034】
前記第3の支持部18は、前記側壁部15からケース本体11の内側に延びる板状に形成されている。第3の支持部18は、前後方向において前記第2の支持部17と同じ位置で、前後方向と直交する面に沿って水平方向と上下方向とに延びている。第3の支持部18の前記水平方向の幅と上下方向の長さは、図8に示すように、前後方向から見て、前記第1の支持部16に載せられた成形型1における前記水平方向の両端部と重なるように形成されている。すなわち、第3の支持部18は、前記成形型1の外周縁部に第2の支持部17より高い位置で前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。
【0035】
この実施の形態による前記収納ステップS1Aは、図2に示すように、前記ケース本体11内に成形型1を上方から挿入して行う。このようにケース本体11内に成形型1を挿入すると、成形型1の下端部に位置する前記角部27が内側支持片25または外側支持片26に接触する。成形型1が内側支持片25または外側支持片26の上部に接触した場合は、成形型1を前記傾斜面25a,26aに沿って後斜め下に向けて滑らせ、成形型1の下端後縁を前方から第2の支持部17に接触させる。成形型1は、このように前記角部27が内側支持片25または外側支持片26に載せられている状態で凹面側の下端後縁が第2の支持部17に接触することによって、前方への傾斜が規制された状態で第1、第2の支持部16,17に保持される。
【0036】
この保持状態においては、第3の支持部18が第1、第2の支持部16,17より上方において、成形型1における凹面側の後縁と対向する。すなわち、成形型1の後方への傾斜は、第3の支持部18によって規制される。
このため、成形型1は、収納ステップS1Aにおいて、前方と後方への傾斜が規制された状態であって、レンズ成形面がケース本体11と接触することがない状態でケース本体11に支持される。
【0037】
この実施の形態においては、複数のケース本体11からなる保管用ケース2を用いているために、図1に示すように、収納ステップS1Aの後に第1の連結ステップS1Bが実施される。
第1の連結ステップS1Bにおいては、成形型1が収納されている複数のケース本体11を前後方向に並べて互いに連結する。この第1の連結ステップS1Bで使用するケース本体11は、眼鏡用プラスチックレンズの成形が終了して洗浄された後の成形型1を収納したケース本体11や、新品の成形型1を収納したケース本体11である。また、第1の連結ステップS1Bにおいては、同一種類の成形型1が収納された複数のケース本体11を用いて保管用ケース2が形成される。すなわち、第1の連結ステップS1Bで形成された保管用ケース2には、同一種類の成形型1のみが収納されることになる。第1の連結ステップS1Bで形成される保管用ケース2によって、請求項3記載の発明でいう「他の保管用ケース2」が構成されている。
【0038】
第1の連結ステップS1Bにおいて形成された保管用ケース2は、図19に示すように、保管庫12に収容されて保管される。すなわち、成形型1は、保管用ケース2毎に分類されて保管庫12に収容されている。この成形型1は、使用するときに保管庫12から保管用ケース2とともに取出される。
大量生産を行う場合などで保管用ケース2内の全ての成形型1を使用するときは、次のステップであるラック接続ステップS2を実施するために、この保管用ケース2を保管庫12から例えば作業台(図示せず)などの上に移す。
【0039】
多くの種類の成形型1を比較的少数ずつ使用して多品種少量生産を行う場合は、後述するラック接続ステップS2の準備ステップとして第2の連結ステップS2A(図1参照)が実施される。第2の連結ステップS2Aにおいては、多品種少量生産用の保管用ケース2が作られる。この第2の連結ステップS2Aにおいては、先ず、所望の種類の成形型1を保管用ケース2内から必要な個数だけ取出す。このように成形型1を保管用ケース2から取出すときは、図20に示すように、保管用ケース2の一端部2aに位置するケース本体11を保管用ケース2から分離させて行う。第2の連結ステップS2Aにおいては、保管用ケース2から分離された複数のケース本体11どうしを連結し、新たに多品種少量生産用の保管用ケース2を形成する。すなわち、多品種少量生産を行う場合は、第2の連結ステップS2Aで専用の保管用ケース2が形成される。この新たな保管用ケース2は、ラック接続ステップS2で洗浄用ラック13を接続するために前記作業台の上に移される。
【0040】
一方、使用後の成形型1(眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型であって保管庫12に戻される予定の成形型)や、補充のための新品の成形型1は、それぞれケース本体11に収納された後、同じ種類の成形型1が収容された保管用ケース2に戻される。このとき、使用後の成形型1や新品の成形型1を収納したケース本体11は、前記保管庫12に収容される保管用ケース2の他端部2bに位置するケース本体11に連結される。保管用ケース2には、図21に示すように、上述したように保管用ケース2の一端部2aからケース本体11を取出したり、保管用ケース2の他端部2bにケース本体11を連結する作業を容易に行うことができるように、一対のガイド部材31を取付けることができる。
【0041】
これらのガイド部材31は、それぞれ保管用ケース2の一端部2aから他端部2bまで延びる断面C字状の棒状に形成されており、各ケース本体11の両側部に形成された第2の凸部32を移動自在に保持している。第2の凸部32は、図8に示すように、前記側壁部15に前記第1の凸部24の下方で側方に突出するように形成されている。第2の凸部32の前端部には、下側の前記突起21が形成され、後端部には下側の前記穴22が形成されている。
【0042】
ガイド部材31を使用する場合、ケース本体11を保管用ケース2から取出すためには、各ケース本体11をガイド部材31に対して保管用ケース2の一端部2a側に移動させ、ガイド部材31から突出したケース本体11を分離させる。このようにすると、保管用ケース2の他端部2b側にガイド部材31が突出するようになり、2本のガイド部材31どうしの間に新たなケース本体11を挿入できるようにスペースが形成される。ケース本体11を保管用ケース2に取付ける場合は、ケース本体11を前記スペースに挿入して行う。
【0043】
[ラック接続ステップS2]
ラック接続ステップS2は、図3に示すように、後述する洗浄用ラック13を前記保管用ケース2に接続するステップである。洗浄用ラック13は、複数の成形型1を洗浄液中に浸漬させるためのものである。この実施の形態による洗浄用ラック13は、図16〜図18に示すように、成形型1を支持する第1〜第5の支持部33〜37と、これらの支持部33〜37を支える支持用フレーム38とによって構成されている。支持用フレーム38は、前側支持板39と後側支持板40(図18参照)とを4本のロッド41〜44で連結することによって形成されている。
【0044】
この実施の形態による前記第1〜第5の支持部33〜37は、それぞれ支持片45と、この支持片45を支持する支持用ロッド46とによって構成されている。前記支持片45は、プラスチック材料からなる板によって形成されている。この実施の形態による支持片45には、図17および図18に示すように、成形型1に向けて開くV字状を呈する切り欠き47が前後方向(成形型1の厚み方向)に等間隔に並ぶ状態で形成されている。切り欠き47が形成される間隔は、上述した保管用ケース2に収容された複数の成形型1が前後方向に並ぶ間隔、すなわち、ケース本体11の前後方向の幅と一致している。
前記切り欠き47は、成形型1のレンズ成形面とは離間する状態で成形型1の外周部分を挿入可能な形状であって、かつ成形型1が前後方向に傾斜(遊動)できるような形状に形成されている。
【0045】
この切り欠き47を有する支持片45は、前後方向に延びる前記支持用ロッド46に沿わせて固定されている。支持用ロッド46の両端部は、支持用フレーム38の前側支持板39と後側支持板40とに取付けられて支持されている。
前記支持片45と前記支持用ロッド46とからなる第1〜第5の支持部33〜37は、成形型1の周方向に所定の間隔をおいて離間する状態で配置されている。第1〜第5の支持部33〜37のうち、第3の支持部35は、成形型1の下端と対応する位置に配置され、第1の支持部33と第5の支持部37は、成形型1の上下方向の中央部と対応する位置に設けられている。第2の支持部34と第4の支持部36は、前記成形型1の下端と上下方向の中央部との間の中間となる位置に設けられている。
【0046】
また、第1〜第5の支持部33〜37の支持片45は、切り欠き47が成形型1の周方向に並ぶように位置付けられている。第1、第5の支持部33,37の支持片45は、図16に示すように、前後方向から見て成形型の中心より僅か上方を指向するように傾斜している。第2〜第4の支持部34〜36の支持片45は、前記前後方向から見て上下方向に延びるように設けられている。
【0047】
このように構成された洗浄用ラック13は、成形型1を、レンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持するものとなる。また、この洗浄用ラック13は、V字状の切り欠き47に成形型1の外周部を挿入して成形型1を支持するものであるから、成形型1の外径が変わったとしても支持状態が変化するようなことはない。
【0048】
ラック接続ステップS2においては、図3に示すように、上述したように構成された洗浄用ラック13を前記保管用ケース2の上に重ねて載せる。洗浄用ラック13を保管用ケース2に重ねるにあたっては、洗浄用ラック13の上部(成形型1を挿入する部分)が下に位置するように、洗浄用ラック13を上下方向に反転させた倒立状態で行う。また、このときの作業は、保管用ケース2内の成形型1と洗浄用ラック13の切り欠き47とが上下方向に並ぶように行う。
【0049】
[移載ステップS3]
移載ステップS3は、図4および図5に示すように、前記保管用ケース2に収納されている成形型1を前記洗浄用ラック13に移すステップである。この移載ステップS3においては、上述したラック接続ステップS2で保管用ケース2の上に洗浄用ラック13を重ねて載せた後、これらの保管用ケース2と洗浄用ラック13とを上と下とが逆に位置するように上下方向に反転させる。この反転作業は、図4に示すように、先ず、保管用ケース2の第2、第3の支持部17,18が下に位置するように保管用ケース2と洗浄用ラック13とを傾斜させ、成形型1を第2、第3の支持部17,18の上に載せる。
【0050】
そして、保管用ケース2と洗浄用ラック13とを洗浄用ラック13が下に位置するように更に傾斜させ、成形型1を第3の支持部18の上で滑らせて洗浄用ラック13の中に移動させる。その後、洗浄用ラック13の上に保管用ケース2が載るように洗浄用ラック13を起立させて正立の状態とし、この洗浄用ラック13の上から保管用ケース2を上方に外す。このように保管用ケース2が洗浄用ラック13から外されることによって、移載ステップS3が終了する。
【0051】
[洗浄ステップS4]
洗浄ステップS4は、図6に示すように、前記洗浄用ラック13に移された前記成形型1を洗浄液41中に浸漬させて洗浄するステップである。この洗浄ステップS4において、洗浄用ラック13は、洗浄装置42に支持されて洗浄槽43内に挿入される。洗浄槽43内には、予め所定の洗浄液41が溜められている。また、洗浄用ラック13は、洗浄装置42によって洗浄槽43内で前後方向または左右方向に揺動または水平移動させられる。なお、この洗浄槽43としては、超音波を発生させる装置を備えたものを用いることができる。
【0052】
成形型1は、洗浄液41中に浸漬された状態で洗浄用ラック13が揺れることによって、支持片45に支えられながら下端を支点として上部が前後方向に揺動するように遊動する。このため、成形型1と支持片45との接触点が一点に固定されることはなく、移り変わるようになる。このことは、成形型1の全ての部位を洗浄液41に晒すことができることを意味する。したがって、この洗浄ステップS4においては、洗浄液41で洗浄されることがない部位を残すことなく成形型1を洗浄することができる。
洗浄が終了した成形型1は、洗浄用ラック13に収納された状態で次の成形ステップS5を実施する成形装置(図示せず)に送られる。
【0053】
[成形ステップS5]
成形ステップS5は、前記洗浄用ラック13から取出した前記成形型1を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形するステップである。
この成形ステップS5は、図7に示すように、成形型1(第1の成形型1Aと第2の成形型1B)を支持部材4に組付け、支持部材4内に注入補助部材4bからレンズ材料(図示せず)を注入して実施する。
【0054】
したがって、この実施の形態で示した眼鏡用プラスチックレンズの製造方法においては、成形型1を保管用ケース2から洗浄用ラック13に移すにあたって、成形型1を手で持つ必要がなく、保管用ケース2に洗浄用ラック13を載せて上下方向に反転させる簡単な作業で行うことができる。保管用ケース2と洗浄用ラック13は、成形型1をレンズ成形面に接触することがないように支持できるものであるから、レンズ成形面が傷つくこともない。
したがって、この実施の形態によれば、眼鏡用プラスチックレンズを成形するための成形型1を保管用ケース2から洗浄用ラック13に速くかつレンズ成形面を傷つけることなく移すことができ、生産性の向上を図ることが可能な眼鏡用プラスチックレンズの製造方法を提供することができる。
【0055】
この実施の形態による前記保管用ケース2は、前記成形型1を1枚だけ収納可能なケース本体11を所定の個数だけ成形型1の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものである。また、前記収納ステップS1Aと前記ラック接続ステップS2との間に、前記成形型1が収納された複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に並べて互いに連結する第1、第2の連結ステップS1B,S2Aを有している。
このため、成形型1をケース本体11で保護しながら保管用ケース2を形成することができる。したがって、この実施の形態によれば、レンズ成形面が傷つくことを確実に防ぐことが可能になる。
【0056】
この実施の形態による第2の連結ステップS2Aで使用するケース本体11は、予め形成された他の保管用ケース2から取出されたものである。前記他の保管用ケース2は、同一種類の成形型1が収納された複数のケース本体11を成形型1の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成されたもので、保管庫12に収納するものである。前記他の保管用ケース2からケース本体11を取出すときは、この保管用ケース2の一端部2aに位置する前記ケース本体11を分離させて行っている。眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型1を収納したケース本体11は、前記他の保管用ケース2の他端部2bに位置するケース本体11に連結される。
このため、他の保管用ケース2(保管庫12に収納される保管用ケース2)から成形型1を取出すときは、この保管用ケース2に保管されている時間が最も長い成形型1が取出される。
【0057】
したがって、この実施の形態による眼鏡用プラスチックレンズの製造方法によれば、成形型1の使用履歴を管理することなく、全ての成形型1を略均等に使用することができる。成形型1の使用履歴を管理するためには、たとえばICタグやバーコードなどを用いて成形型1の使用履歴をその都度記録しなければならない。しかし、この実施の形態によれば、ICタグやバーコードなどを用いることなく全ての成形型1を略均等に使用することができる。
この結果、この実施の形態によれば、全ての成形型1を限界まで使用して眼鏡用プラスチックレンズの製造コストを低減することが可能になる。
【0058】
この実施の形態によるケース本体11の第1の支持部16と第2の支持部17とは、成形型1が凸面側に傾斜することを規制するものである。また、ケース本体11の前記第3の支持部18は、前記成形型1の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されている。この第3の支持部18は、成形型1が前記凸面とは反対側に傾斜することを規制するものである。これらの第1〜第3の支持部16〜18は、成形型1の外径に依存することなく成形型1を立てて支持することができるものである。
したがって、この実施の形態によれば、レンズ成形面に接触することなく、かつ外径の制約を受けることなく成形型1を支持でき、成形型1の保管を容易に行うことが可能な保管用ケースを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…成形型、2…保管用ケース、5,7…レンズ成形面、13…洗浄用ラック、11…ケース本体、2a…一端部、2b…他端部、16〜18…第1〜第3の支持部、15…側壁部、25…内側支持片、26…外側支持片、S1…保管ステップ、S1A…収納ステップ、S1B…第1の連結ステップ、S2…ラック接続ステップ、S2A…第2の連結ステップ、S3…移載ステップ、S4…洗浄ステップ、S5…成形ステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、保管用ケースにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがないように支持させて収納する収納ステップと、
前記保管用ケースの上に、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、
前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下とが逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケース内から前記洗浄用ラックに移す移載ステップと、
前記洗浄用ラックに移された前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記保管用ケースは、前記成形型を1枚だけ収納可能なケース本体を所定の個数だけ成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものであり、
前記収納ステップと前記ラック接続ステップとの間に、前記成形型が収納された複数のケース本体を前記厚み方向に並べて互いに連結して保管用ケースを形成する連結ステップを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記連結ステップで使用するケース本体は、予め形成された他の保管用ケースから取出されたものであり、
前記他の保管用ケースは、同一種類の成形型が収納された複数のケース本体を成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成され、
前記他の保管用ケースからケース本体を取出すときは、この保管用ケースの一端部に位置する前記ケース本体を分離させて行い、
眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型を収納したケース本体は、前記他の保管用ケースの他端部に位置するケース本体に連結されることを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の保管用ケースであって、
前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持する第1〜第3の支持部と、
前記成形型の厚み方向とは直交する水平方向の両側から前記成形型と対向する一対の側壁部とを備え、
前記第1の支持部は、前記水平方向の二箇所においてそれぞれ前記厚み方向に延び、かつ前記成形型の凸面と外周面とに挟まれた角部を上方から載せることができるように、上方に向かうにしたがって次第に前記凸面が指向する方向に傾斜して延びる一対の支持片によって構成され、
前記第2の支持部は、前記一対の支持片どうしの間で下方に延びる成形型の下端部に前記凸面とは反対側から対向するように形成され、
前記第3の支持部は、前記成形型の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されていることを特徴とする成形型の保管用ケース。
【請求項1】
眼鏡用プラスチックレンズのレンズ面を成形する型となる円板状の成形型を、保管用ケースにレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持させかつレンズ成形面に接触することがないように支持させて収納する収納ステップと、
前記保管用ケースの上に、前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持しかつレンズ成形面に接触することがないように支持する洗浄用ラックを上と下とが逆に位置するように反転させた倒立状態で載せるラック接続ステップと、
前記保管用ケースと前記洗浄用ラックとをこれら両者どうしが接続された状態で上と下とが逆に位置するように反転させ、前記成形型を前記保管用ケース内から前記洗浄用ラックに移す移載ステップと、
前記洗浄用ラックに移された前記成形型を洗浄する洗浄ステップと、
前記洗浄用ラックから取出した前記成形型を使用して眼鏡用プラスチックレンズを成形する成形ステップとを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記保管用ケースは、前記成形型を1枚だけ収納可能なケース本体を所定の個数だけ成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することにより形成されたものであり、
前記収納ステップと前記ラック接続ステップとの間に、前記成形型が収納された複数のケース本体を前記厚み方向に並べて互いに連結して保管用ケースを形成する連結ステップを有することを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法において、前記連結ステップで使用するケース本体は、予め形成された他の保管用ケースから取出されたものであり、
前記他の保管用ケースは、同一種類の成形型が収納された複数のケース本体を成形型の厚み方向に並べて互いに着脱可能に連結することによって形成され、
前記他の保管用ケースからケース本体を取出すときは、この保管用ケースの一端部に位置する前記ケース本体を分離させて行い、
眼鏡用プラスチックレンズを成形した後の成形型を収納したケース本体は、前記他の保管用ケースの他端部に位置するケース本体に連結されることを特徴とする眼鏡用プラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の眼鏡用プラスチックレンズの製造方法に使用する成形型の保管用ケースであって、
前記成形型をレンズ成形面が上下方向に延びる状態で上方から出し入れできるように支持する第1〜第3の支持部と、
前記成形型の厚み方向とは直交する水平方向の両側から前記成形型と対向する一対の側壁部とを備え、
前記第1の支持部は、前記水平方向の二箇所においてそれぞれ前記厚み方向に延び、かつ前記成形型の凸面と外周面とに挟まれた角部を上方から載せることができるように、上方に向かうにしたがって次第に前記凸面が指向する方向に傾斜して延びる一対の支持片によって構成され、
前記第2の支持部は、前記一対の支持片どうしの間で下方に延びる成形型の下端部に前記凸面とは反対側から対向するように形成され、
前記第3の支持部は、前記成形型の上部の外周縁部に前記凸面とは反対側から対向するように形成されていることを特徴とする成形型の保管用ケース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−107274(P2013−107274A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253753(P2011−253753)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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