説明

眼鏡用レンズ前駆体、眼鏡用レンズ及び同レンズの加工方法

【課題】レンズ有効領域の外側に設けられる面取り部分を迅速に形成させることができる眼鏡用レンズの加工方法及びその加工方法で加工された眼鏡用レンズ前駆体、眼鏡用レンズを提供すること。
【解決手段】支持された材料ブロックをNC旋盤装置によって加工して材料ブロックの裏面を所定の3次元的な面形状に加工する眼鏡用レンズの加工方法であって、レンズ有効領域の外周部分に面取り部を形成する加工工程においてバイトに材料ブロックが一回転する間に材料ブロックの裏面に対して相対的に材料ブロックの周方向に設定された所定の加工基準位置P1(P2)において最も進出し、加工基準位置P1(P2)から離間するほど進出量が少なくなるとともに、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみ材料ブロックと接触して材料ブロックを加工させるようにして丸レンズ11を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡用レンズ前駆体、眼鏡用レンズ及び同レンズの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から眼鏡用レンズではレンズ裏面のレンズ有効領域の外側に面取り加工を施している。面取り加工はレンズの不要な部分の除去であり突起していると欠損しやすいという物理的な理由もあるが、実際にはレンズ自体の美観と、特に厚いレンズを使用している眼鏡使用者において自分と対面している第三者にいかにも厚いレンズを使用しているという印象を与えないようにすることを主眼に行われている。面取り加工は一般にグラインダー等の加工機械によって手作業あるいは自動化されて実行されているが、NC旋盤を使用してレンズ有効領域と併せて加工することも行われている。NC旋盤加工は支持されたレンズ基材を周方向に回転させ、その裏面側から加工工具によってレンズ基材の裏面を所定の3次元的な面形状に加工するものである。このようなNC旋盤による加工方法の一例として例えば特許文献1を挙げる。特許文献1にはレンズ有効領域の外側が所定の面取り面となるように切削加工あるいは研削加工する技術が開示されている。特許文献1のような加工方法によれば眼鏡用レンズの面取り面が滑らかで非常にきれいに仕上がるため好ましい。
【特許文献1】特開2002−239882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術は予定される形状になるように加工工具をレンズ裏面に常時接触させながら加工していく方式を採用している。つまり面取り位置として入力された所定の位置データに基づいてレンズ面を加工していくものであるため、滑らかで正確な加工ができるものの、常にレンズ面の全周を加工していかねばならないため加工時間が非常に長くかかってしまうこととなっていた。この場合に単純にレンズ基材の回転速度とこれに追随する加工工具の進退速度、つまり加工速度を上げれば加工時間が短縮できるわけであるが、加工速度が上がれば加工工具の進退の速度もそれに追随して上がることとなってしまうため加工工具にかかる進退時の加速度が大きくなって加工工具やNC旋盤の機構に過剰な負荷がかかってしまうこととなる。NC旋盤の出力や加工工具及び各機構の機械的強度は自ずと決まっているため加工速度を上げることで加工時間を短縮することには無理がある。そのため、従来のNC旋盤等の加工装置を従来の加工速度のままでも使用することが可能で、なおかつ加工時間が短縮できるような技術が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、レンズ有効領域の外側に設けられる面取り部分を迅速に形成させることができる眼鏡用レンズの加工方法及びその加工方法で加工された眼鏡用レンズ前駆体、眼鏡用レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、支持されたレンズ基材を周方向に回転させるとともに、前記レンズ基材の裏面側に加工工具を配置し、同加工工具を前記レンズ基材方向に同レンズ基材に対して相対的に進出させることで前記加工工具を前記レンズ基材の裏面に当接させて回転に伴って当該当接位置において同心状に所定のサグ量での加工を実行させるとともに、前記加工工具を前記レンズ基材の回転中心方向に対して接近あるいは離間するように前記レンズ基材に対して相対的に移動させることで前記レンズ基材の裏面を所定の3次元的な面形状に加工する眼鏡用レンズの加工方法であって、同加工方法は、眼鏡使用者に設定された矯正視力を得るために設計された第1の加工プログラムに基づいて前記レンズ基材の裏面にレンズ有効領域を加工する第1のレンズ加工工程と、
同第1のレンズ加工工程によって加工される前記レンズ有効領域の外周部分に面取り部を形成するために第2の加工プログラムに基づいて面取り加工を施す第2のレンズ加工工程とを備え、前記加工工具は前記第2のレンズ加工工程において前記レンズ基材が一回転する間に前記レンズ基材の裏面に対して相対的に同レンズ基材の周方向に設定された1又は複数の加工基準位置Pにおいて最も進出し、前記加工基準位置Pから離間するほど進出量が少なくなるとともに、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみ前記レンズ基材と接触して同レンズ基材を加工するように制御されることをその要旨とする。
また、請求項2に記載の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第2のレンズ加工工程において前記工具が前記レンズ基材が一回転する間に所定の軌道で進退するように制御するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項3に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記第2のレンズ加工工程において前記加工基準位置Pは前記レンズ基材の周方向における固定位置に設定されることをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記第2のレンズ加工工程において前記加工基準位置Pの異なる複数回の面取り加工を実行することをその要旨とする。
また、請求項5に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記第2のレンズ加工工程における前記加工基準位置Pは前記レンズ基材の回転に伴って変位することをその要旨とする。
【0005】
また、請求項6に記載の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記加工工具の一回転中での最大後退位置からの最大進出量は面取り動作中において一定であることをその要旨とする。
また、請求項7に記載の発明では請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1のレンズ加工工程及び前記第2のレンズ加工工程は単一のNC旋盤によってその加工が実行されることをその要旨とする。
また、請求項8に記載の発明では請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記レンズ基材は玉型加工して枠入れする際の上下位置となる部分については面取り加工を施さないことをその要旨とする。
また、請求項9に記載の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記レンズ有効領域と前記面取り部との境界部分は連続的な曲面で接続されることをその要旨とする。
また、請求項10に記載の発明では、支持されたレンズ基材を周方向に回転させるとともに、前記レンズ基材の裏面側に加工工具を配置し、同加工工具を前記レンズ基材方向に同レンズ基材に対して相対的に進出させることで前記加工工具を前記レンズ基材の裏面に当接させて回転に伴って当該当接位置において同心状に所定のサグ量での加工を実行させるとともに、前記加工工具を前記レンズ基材の回転中心方向に対して接近あるいは離間するように前記レンズ基材に対して相対的に移動させることで前記レンズ基材の裏面を所定の3次元的な面形状に加工する眼鏡用レンズの加工方法によって加工された眼鏡用レンズ前駆体であって、同眼鏡用レンズ前駆体は、前記レンズ基材の裏面にレンズ有効領域を備えるとともに、同レンズ有効領域の外周に周方向に沿って湾曲した面取り部を備え、
同面取り部は前記レンズ基材が一回転する間に前記加工工具が前記レンズ基材の裏面に対して相対的に同レンズ基材の周方向に設定された1又は複数の加工基準位置Pにおいて最も進出し、前記加工基準位置Pから離間するほど進出量が少なくなるとともに、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみ前記レンズ基材と接触して同レンズ基材を加工するような加工方法によって成形されていることをその要旨とする。
また、請求項11に記載の発明では請求項10に記載の発明の構成に加え、前記所定の加工基準位置Pとは前記レンズ基材を玉型加工して枠入れする際の耳側又は鼻側に対応する位置であることをその要旨とする。
また、請求項12に記載の発明では請求項11に記載の発明の構成に加え、前記眼鏡用レンズ前駆体を玉型加工して得ることをその要旨とする。
【0006】
上記のような構成では、回転するレンズ基材の裏面を加工工具によって所定の3次元的な面形状に加工する際に第1のレンズ加工工程によってレンズ有効領域が形成され第2のレンズ加工工程によってレンズ有効領域の外周部分に面取り部が形成されることとなる。第1のレンズ加工工程と第2のレンズ加工工程の加工順序は問わない。レンズ基材の裏面は当初から凹面形状であっても第1のレンズ加工工程で凹面形状に加工するような場合であってもどちらでもよい。第1のレンズ加工工程及び前記第2のレンズ加工工程は単一のNC旋盤によってその加工が実行されることが好ましい。
面取り加工動作中において加工工具は一回転の間にレンズ基材の周方向に設定された1又は複数の所定の加工基準位置Pにおいて最も進出し、加工基準位置Pから離間するほど進出量が少なくなるように制御される。つまり加工したいレンズ形状データとは無関係に加工工具は回転するレンズ基材に対して相対的な進退動作を行うだけの動作制御となる。そして、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみレンズ基材と接触してレンズ基材を加工することとなる。つまり、加工工具は常にレンズ基材と接触しているのではなく後退することでレンズ基材とは接触しなくなる。
加工基準位置Pとは加工工具がレンズ基材を周回すると考えた場合の所定の位相として理解することができる。ここに「最も進出」とは最大のストロークでそれ以上は進出しないことをいう。所定の加工基準位置Pが複数ある場合にはそれぞれ異なる進出量で最も進出する場合もありうる。加工工具がこの加工基準位置P(最大進出位置)でレンズ基材に接しなければ加工基準位置P以外の位置ではレンズ基材に接することはなく、加工工具がこの加工基準位置Pでレンズ基材に接しても加工基準位置P以外の位置でレンズ基材に接するとは限らない。すなわち加工基準位置Pはその周回における加工工具のレンズ基材へ最接近する位置である。
加工工具がこのような進出動作を行うとレンズ基材に対するサグ量が加工基準位置Pで最も多くなり加工基準位置Pから離間するほど少なくなるような加工がされることとなる。加工工具はレンズ基材の回転中心に対して接近あるいは離間するように移動する際に各周回において所定の進退動作を行う。尚、上記進出動作や移動動作はレンズ基材に対して相対的、つまり実際には加工工具側が固定されレンズ基材側が動いても構わない。
【0007】
加工工具は第2のレンズ加工工程においてレンズ基材が一回転する間に所定の軌道で進退するように制御されることが好ましい。この軌跡として例えば縦軸に振幅、横軸に時間を設定した正弦波や余弦波のような軌跡を想定することができる。このような三角関数を利用すれば加工工具は方向転換する際に速度を落とすことができ加速度を低減できるとともに、加工工具の制御を容易に実行することができる。
上記加工方法においては以下のような好ましい加工方法を挙げることができる。
まず加工工具への過剰な負荷を防止するためには第2のレンズ加工工程において加工基準位置Pは1つ又は2つに設定することが好ましい。加工基準位置Pを2つに設定する場合には相対する180度近い角度をもって配置することが加工工具にかかる加速度の低減という点から好ましい。
また、加工基準位置Pは前記レンズ基材の周方向における固定位置に設定されることが制御上好ましい。例えば加工基準位置Pを2つに設定した場合常に耳側と鼻側の180度程度周方向に離れた2箇所に固定して耳側と鼻側を最も進出する位置にするようなことが考えられる。
また上記加工方法においては前記加工基準位置Pの異なる複数回の面取り加工を実行することが好ましい。一回の面取り加工での加工基準位置Pは1つのみであっても複数であってもよい。これは選択されたある前記加工基準位置Pでn回目の面取り加工を実行した後、前記加工基準位置Pを他の位置に変位させn+1回目の面取り加工を実行するように異なる加工基準位置Pで複数回の面取り加工を実行することを意味する。これによって一回の面取り加工での加工領域は小さくともレンズ基材の周方向に沿って複数回数の面取り加工を実行することで多くの方向からの加工が可能となって所望の形状をレリーフ状にレンズ基材の裏面に形成させることができる。
また上記加工方法においては第2のレンズ加工工程における加工基準位置Pが前記レンズ基材の回転に伴って変位するように構成することが好ましい。
この方法においては加工基準位置Pを一回転ごとに変位させても複数回転ごとに変位させてもよい。このように加工基準位置Pを変位させることでより広い領域を一回の面取り加工で加工することができ、隣接する変位位置を近接させることで隣接する不連続面をより滑らかに接続させることができることとなる。
【0008】
上記加工においては前記加工工具の一回転中での最大後退位置からの最大進出量は面取り動作中において一定であることが好ましい。
つまり加工工具の前後進出量を一定化するということである。確かに進出量を変動させるようにすればレンズ基材と加工工具との接触頻度がますためより合理的な加工ができる。しかし、それは一方で加工工具の動作において過剰な加速度が発生じるものであり、更に有効領域の外側に段差やカドがついたような、不連続な形状が発生する可能性も生じるものである。このように構成することによって、加工工具は常に一定以下の加速度で動作させることができるため過剰な加速度となることが防止される。また、不連続な形状の発生も抑制される。更に、加工工具の移動量を固定化することによって計算が単純になり制御プログラムの作成が楽になる。
また、レンズ基材は玉型加工して枠入れする際の上下位置となる部分については面取り加工を施さないようにすることが好ましい。一般に耳側及び鼻側に比べて上下方向では面取り加工を施さないほうがレンズを枠入れした際の見栄えがよいと考えられるためである。フレーム形状によって上下方向の縁のレンズ厚みがある場合には面取り加工をしたほうがよいケースもある。
加工において不連続となる面同士の境界部分は連続的な曲面で接続されることが好ましい。少なくともレンズ有効領域と面取り部との境界部分についてはこのような加工がされることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明では、眼鏡用レンズを加工する際にレンズ有効領域の外側の面取り部分を迅速に形成させることができ、結果としてレンズ作成の低コスト化に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1の眼鏡用レンズ前駆体としての丸レンズ11は図1に示すようないわゆる「セミ」と呼ばれる十分な厚みを有する円筒状の材料ブロック12をNC(Numerical Control)装置にて切削加工あるいは研削加工して得られたものである。丸レンズ11は平面視において円形形状であって加工によってレンズ度数が得られていることと、その後にフレーム形状に加工して得られる玉型レンズとの外観上の違いから一般にそのように呼称されている。本実施例1における材料ブロック12は素材屈折率1.70で半径70mmの円筒体であって、表面は所定の曲率で凸状に形成され、裏面は所定の曲率で凹状に形成されている。図2の仮想線が丸レンズ11においてフレームに取り付ける部分であって、いわゆる玉型と称される部分となる領域である。以下この領域を玉型領域LAとする。
図1〜図3に示すように、丸レンズ11は材料ブロック12の裏面側が加工されてレンズ有効領域13及びレンズ非有効領域14が形成されている。本実施例1では丸レンズ11のレンズ度数はS−10.00Dで両面に回転対称非球面を有するレンズとして作製するものとする。
レンズ有効領域13は丸レンズ11の耳側に若干偏倚した上下方向に長径を有する楕円形状をなす凹形状の領域である。レンズ有効領域13は凸側と協調して所定のレンズ度数を発揮する。レンズ非有効領域14はレンズ有効領域13との境界部分において面取り部15が形成されている。図2に斜線で示す部分がレンズ非有効領域14である。面取り部15は耳側と鼻側の両側にそれぞれ第1の面取り部15aと第2の面取り部15bとして配置されている。図2に示すように、光学中心Oを通る水平線が耳側の周縁と交叉する位置を第1の加工基準位置P1とし、鼻側の周縁と交叉する位置を第2の加工基準位置P2とすると本実施例1では第1の面取り部15aは水平線を境界として上下対称形状であり、第2の面取り部15bは同じく水平線を境界として上下対称形状である。第1の面取り部15a及び第2の面取り部15bともに玉型領域LAに含まれる部分は実際の面取り部としてフレームに収まる部分であるが、玉型領域LAの外側部分は玉型加工においてカットされる不要部分となる。
【0011】
本実施例1の第1の面取り部15aは丸レンズ11を円錐形状の一部を周方向に沿って切り取ったような形状に近似した丸レンズ11の半径方向での断面において45度の角度で面取りされた面であって、丸レンズ11の耳側の縁に沿って上下方向寄りほど徐々に面取りした領域が少なくなるように、つまり平面視において三日月形状となるように構成されている。第1の面取り部15aは第1の加工基準位置P1の隣接する中央付近ではレンズ有効領域13と境界を接し、上下方向に向かって徐々にレンズ有効領域13から離間しレンズ非有効領域14と境界を接するようになっている。第1の面取り部15aとレンズ有効領域13との境界線B1部分及び第2の面取り部15bとレンズ有効領域13との境界線B2部分は共に不連続な部分がないように滑らかに接続されている。特に境界線B1部分は第1の面取り部15aとレンズ有効領域13とのなす角度が急であるのでこのような加工をすることは意義がある。
図4の光学中心Oと第1及び第2の加工基準位置P1,P2とを結ぶ線状での断面位置において、本実施例1ではヤゲン加工を施す必要から第1の面取り部15aのレンズ有効領域13縁から4.0mm外方の玉型領域LA縁での厚みを2.5mmとした。理論的には玉型領域LAから外側の第1の面取り部15aはカットしてしまう不要な領域であるためその形状は問わないが、ここでは45度の角度のまま連続的な面として面取りをした。但し、この角度のまま加工をすると周縁部分を完全にカットしてしまうこととなり取り扱い上不便である。そのため丸レンズ11として円形の外形形状を残す必要から周縁寄りを1mmの厚さとした。
【0012】
本実施例1の第2の面取り部15bは本実施例1の第1の面取り部15aは丸レンズ11を円錐形状の一部を周方向に沿って切り取ったような形状に近似した丸レンズ11の半径方向での断面において30度の角度で面取りされた面であって、第2の加工基準位置P2を基準としてレンズ有効領域13の縁に沿って上下方向寄りほど徐々に面取りした領域が少なくなるように、つまり第1の面取り部15aと同様平面視において三日月形状となるように構成されている。第2の面取り部15bは上下方向寄りで消滅し、そのためレンズ有効領域13の上下部分は第1及び第2の面取り部15a,15bのいずれにも境界を接していない部分とされている。
レンズ非有効領域14において第2の面取り部15bの外方を包囲する部分は表面の凸形状に沿った凹状に形成されてカーブに形成されている。ここではこの部分を1mmの厚さとした。
図4の光学中心Oと第1及び第2の加工基準位置P1,P2とを結ぶ線状での断面位置において、上記と同様第2の面取り部15aのレンズ有効領域13から4.0mm外方の玉型領域LA縁での厚みを2.5mmとした。鼻側は耳側に比べてレンズ有効領域13が狭く、光学中心Oから遠い部分は不要となるため耳側に比べてレンズ厚の薄い中央寄りで第2の面取り部15bを設けることができる。そのため、鼻側のレンズ厚は耳側に比べて薄くなる。理論的には玉型領域LAから外側、つまり第2の面取り部15bの外側のレンズ非有効領域14はカットしてしまう不要な領域であるためその形状は問わないが、ここでは比較的浅めの10度の角度を与え周縁部で丸レンズ11の形状を残すようにした。
実施例1の丸レンズ11は後述する加工方法において耳側と鼻側の対向する2方向から加工した結果得られたものである。
【0013】
(実施例2)
図5に示すように、実施例2は実施例1において第1の面取り部15aと第2の面取り部15bがそれぞれ上下端方向で多めの面積とされた例である。
実施例2の丸レンズ11は後述する加工方法において耳側と鼻側の対向する2方向においてそれぞれ実施例1と同じ加工を第1及び第2の加工基準位置P1,P2で行うとともにそれら基準位置P1,P2からそれぞれ上下周方向に若干ずれた(本実施例2では20度ずつ)第3〜第6の基準位置P3,P4,P5,P6の合計6方向から加工した結果得られたものである。
【0014】
次に、材料ブロック12から丸レンズ11を作製する加工方法について説明する。
本実施例では図6に示すNC旋盤装置30を使用して材料ブロック12を加工する。NC旋盤装置30の主軸31はテーブル32の面板33に回転可能に取り付けられている。主軸31はZ軸に平行に延出されている。主軸31は主軸回転モータ35によって回転させられる。主軸31の先端にはチャック部36が形成されている。材料ブロック12の凸面側には連結部を備えたパッド38が前もって貼着されており、材料ブロック12はパッド38の連結部を介してチャック部36に固定される。材料ブロック12は主軸31先端に固定された状態でその光学中心Oは主軸31の回転中心と一致する。主軸31と対向する位置には刃物台37が配設されている。刃物台37は複数の刃物台駆動モータ39によってX軸Z軸方向の2方向に対して移動可能とされている。X軸は刃物台37の主軸31に対する左右方向の直交方向、Z軸は刃物台37の主軸31に対する接離方向である。刃物台37のバイトチャック部40には加工工具としてのバイト41が着脱可能に取り付けられている。各モータ35,39はサーボモータから構成されており、それぞれアンプ42を介してコントローラ43に接続されている。尚、図6は簡略化した図であり、本発明と直接関係のない構成については省略されている。
【0015】
コントローラ43はCPUからなるNC旋盤装置30の制御部分であって、ROM44及びRAM45が接続されている。ROM44にはNC旋盤装置30のシステムプログラム、NC加工プログラム、CL(カッターロケーション)データ作成プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。また、コントローラ43にはキーボードやマウス等から構成される入力操作部46とモニター47が接続されている。
RAM45には製品データ、加工工具であるバイトデータ、加工条件データ、機械データ、CLデータ等が記憶されている。
製品データとは材料ブロック12の形状データ及び作製される丸レンズ11の形状データの両方を含む。バイトデータとは本実施例ではバイトは粗加工の場合と仕上げ加工の場合とでそれぞれ異なる種類を使用するため、それらの加工毎で取り替えるバイトの種類やサイズについての諸元データである。加工条件データとは一回転毎のバイトの送り量や送り速度等のデータであって、後述する第1〜第3の加工で異なる加工条件がバイトと関連づけされている。機械データは主軸31と刃物台37の位置関係や刃物台37におけるバイトチャック部39の位置関係等のNC旋盤装置30の機械要素の諸元データである。CLデータとはバイトの材料ブロック12に対する移動軌跡や移動速度等のデータであって、上記製品データ、バイトデータ、加工条件データ、機械データ等のデータに基づいてCLデータ作成プログラムによって作成される。更に、本実施例では面取り加工における一回転においてバイトをある加工基準位置Pにおいて最も進出させるような軌道で進退させる必要がある。このための必要なデータをバイト進退データとする。CLデータ作成用のデータにはバイト進退データも含まれるものである。
コントローラ43はCLデータに基づいてNC加工プログラムを実行させ、前記各モータ35,38を制御する。
【0016】
次に、このように構成されるNC旋盤装置30による丸レンズ11の作製手順について具体的に説明する。
図6に示すように、NC旋盤装置30の主軸31に取り付けられ回転する材料ブロック12に対してバイト41は上下方向において回転中心O位置であって材料ブロック12の外縁位置に配置される。この位置を加工開始位置とする。そして、バイト41は回転中心Oに向かってX軸方向を移動するとともにZ軸方向に進退させられて切削加工を行う。バイト41がX軸方向を移動して回転中心Oに達した位置を加工終了位置とする。加工開始位置から加工終了位置まで移動することを1回の加工工程と定義する。実際の加工では材料ブロック12が厚いため1回工程で加工することはできない。そのため、Z軸方向の進出量を分けて同じ軌跡(カッターロケーション)で数回の加工を繰り返すようにしている。従って、以下のレンズ有効領域を形成する第1の加工では都合4回の加工工程で加工を行い、面取り加工となる第2の加工では異なる2方向のカッターロケーションでそれぞれ都合4回の加工工程で加工を行う。仕上げ加工となる第3及び第4の加工では1回の加工工程である。
<第1の加工>
第1の加工とはレンズ有効領域を含む領域の粗加工である。まず、粗加工用のバイト41で材料ブロック12を切削する。この粗加工で図8(a)の状態から図8(b)のように材料ブロック12の凹面側が光学中心Oにおいて点対称に大きくえぐられることとなる。粗加工によってレンズ有効領域13を含む領域の加工が行われる。この加工は基本的に従来加工となる。
【0017】
<第2の加工>
第2の加工とは面取り加工である。つまり、図8(b)の状態の材料ブロック12を図8(c)のような面取りをした仕上げ加工をしていない丸レンズ11を作製する加工である。第2の加工の段階は未だ粗加工に含まれる。以下の説明では図8(a)に示すように、第1の加工の終わった材料ブロック12の耳側について所定の軌跡で加工し、次いで図8(b)に示すように鼻側について所定の軌跡で加工する。この順序は逆でも構わない。
(第2の加工の実施例1)
図2及び図4に示すように、耳側では第1の加工基準位置P1においてレンズ有効領域13縁から4.0mm外方の玉型領域LA縁での厚みが2.5mmとなるような軌跡で加工するものとする。図9及び図10は材料ブロック12の一回転においてバイト41が一回の進退動作を行っていることを模式的に表した図である。理解を容易にするためバイト41側が回転しているように作図しているが、実際には回転するのは材料ブロック12側である。図9及び図10に示すように、材料ブロック12の各周回では第1の加工基準位置P1が最も材料ブロック12側に進出し第1の加工基準位置P1と180度変位した位置で最も後退する。この進退量は適宜設定可能であるが、本実施例では10mmに設定している。
本実施例では下記の式によって一回転中のバイト41の材料ブロック12に対するある位相における進出量を計算するようにしている。下記の式は余弦波の関数式を式中に導入し、ブロック12の一回転中におけるバイト41の相対的な位相位置における進出量を決定するようにしている。
バイト進出量(L)=S×0.5×(1−cos(θ−θ0))
S:材料ブロックが一回転する間におけるバイトの最大進出位置と最大後退位置の差
θ:材料ブロックに対するバイトの位相角
θ0:ベース位相角
この式によれば−1<cos(θ−θ0)<1の値を取るためベース位相角(0度位置)において進出量は0であり最も進出する位置でSとなる。ここでは耳側の第1の加工基準位置P1がcos(θ−θ0)の最小値で最も進出する位置となる。バイト41は第1の加工基準位置P1を含む所定の範囲で材料ブロック12に接触して切削加工を施すとともに、ある位相状態で材料ブロック12から離間して図9及び図10のように空中を周回することとなる。
【0018】
本発明は求める加工面通りにバイト41を移動させていく従来のならい加工ではなく、バイト41を材料ブロック12の回転に伴って単純な動きで進退させているだけである。従って、レンズを削りすぎないようにするためには、バイト41を材料ブロック12に対してある一回転においてどこまで進出させるかの最大進出位置を適切に設定する必要がある。そのためにはバイト41が周回する際に最も進出する第1の加工基準位置P1が求める加工面の表面位置よりも進出しないような制御をする必要があるが、それだけでなくバイト41が周回する際にいたるすべての位置において求める加工面よりも進出することは許されない。
そのため、本実施例では各周回においてコントローラ43はCLデータ作成プログラムに次のようなシミュレーションを実行させて、作成されるCLデータに反映させるようにしている。
A.バイト41の刃の高さと、ある周回でのレンズ形状(これ以上深くカットしてはいけない仮想的な形状)の高さの差を求める。バイトの刃は位置によって材料ブロック12と接触する位置が違うため、バイト41の刃(本実施例では円形形状)のいたるところの高さを検討し、その差が最小になる値を採用する。
B.A.のバイト41の位置条件で、仮の軌道を想定する。この仮の軌道でカットしてはいけない仮想的な形状をえぐってしまっていれば、差の最小値はマイナスになり、バイト41がレンズ基材にあたっていなければ、差の最小値はプラスになる。
C.プラスマイナスがないように調整してバイトの軌道を全体に変位させてバイトの軌道が決定される。
【0019】
また、本実施例ではバイト41は加工開始位置からX軸方向を回転中心Oに向かって加工終了位置まで内側へと移動していくが、ある一回転から次の一回転へは少し小さな円の回転となるため、前周円と今周円との接続を円滑に行うため、本実施例では下記の式によってバイト41の前周円から今周円への円滑な接続を実行している。下記の式は前周円の終わり(最終位置)と今周円の始まり(初期位置)とが同じ位置となるように前周円が周回する間に回転中心O方向に移動する量(最終位置−初期位置)をバイト41の一回転中の位相に応じて振り分けるようにした式である。
X軸方向バイト位置(T)=初期位置+(最終位置−初期位置)×0.5×(1−cos(θ/2))
θ:材料ブロックに対するバイトの位相角
【0020】
上記のように耳側からの加工が完了すると、今度は図8(b)に示すように、鼻側から第2の加工基準位置P2を基準として面取り加工を行う。鼻側についても上記耳側の加工方法に準じた加工が実行される。
(第2の加工の実施例2)
上記実施例1では180度対向する耳側と鼻側の2方向からそれぞれ一回の面取り加工を実行したが、実施例2では図11のようにこれを一回のカッターロケーションで実行するものである。実施例2ではバイト41の最も進出する位置(第1及び第2の加工基準位置P1,P2)を材料ブロック12が一回転する間に180度ずれた2方向に設定したものである。実施例1に比べればバイト41にかかる加速度負荷は大きくなるが、実施例1と同様に従来の加工に比べて加工速度を向上させることができ、またNC旋盤装置30の制御も複雑ではない。
(第2の加工の実施例3)
上記実施例2では一回の回転で材料ブロック12の耳側と鼻側の両側の面取り加工を実行するようにしていたが、図12のように一回の回転での最も進出する位置は1つだけとし、一回回転毎に最も進出する位置を変化させるようにしてもよい。図12ではイ、ロ、ハ、ニ、ホの順で回転し、バイト41が最も進出する位置として第3の加工基準位置P3(イ)、第1の加工基準位置P1(ハ)、第2の加工基準位置P2(ホ)の順で一回転ごとに少しずつ周方向に変位させるようにしている。ここでは一回転毎に最も進出する位置が変更されているが、複数回転毎に変更するようにしてもよい。
(第2の加工の実施例4)
上記実施例1では180度対向する耳側と鼻側の2方向からそれぞれ一回の面取り加工を実行したが、図5のように第1の加工基準位置P1を周方向に20度ずつずらした第3及び第4の加工基準位置P3,P4を設定し、同じく第2の加工基準位置P2を周方向に20度ずつずらした第5及び第6の加工基準位置P5,P6を設定し、それら加工基準位置P3,P4,P5,P6をそれぞれバイトの最大進出位置として上記と同様の加工を実行したものである。第3及び第4の加工基準位置P2,P3での加工は第1の加工基準位置P1での加工を実行した後であるため、何度も行わず1回工程のみでもよい。第5及び第6の加工基準位置P5,P6での加工も同様である。このような加工とすればより滑らかな面取りが可能となる。
【0021】
<第3及び第4の加工>
第3及び第4の加工は図7(c)の粗加工状態の丸レンズ11の加工面全体に対して行なう仕上げ加工である。本実施例ではまず面取り加工をした部分について同様のカッターロケーションで第3の加工を行い、その後、レンズ有効領域13について第4の加工を行うものとする。第4の加工においてはバイト41はレンズ有効領域13の外側を通過するときは空振り(後退して空中に配置される)することとなる。仕上げ加工での切削量は本実施例では0.1mmとする。
【0022】
本実施例ではレンズ有効領域13と第1及び第2の面取り部15a,15bとの境界部分B1の内側及び外側のそれぞれ0.5mmの領域を緩衝帯BAとして連続的な曲面としている。この曲面の設計の一例として本実施例では下記のような手法を採用する。
図13は光学中心Oと第1及び第2の加工基準位置P1,P2とを結ぶ線状での断面位置の有効領域13と面取り部15aとの境界線B1部分の拡大図である。ここで緩衝帯BAにかけて滑らかな付加形状Δωを与えることを考える。
付加形状Δωを与えない場合の有効領域13と面取り部15aとの交叉位置をp1とし緩衝帯BAの内外縁を結ぶ補間直線と交叉位置p1から下ろした垂線との交叉位置1をp2とする。付加形状Δωはp12を中心にして、境界部分B1の内側及び外側の0.5mm位置から同じ関数を想定し、それらがp12で接続すると考える。
例えば、付加形状を3次関数 f(x)=ax3+bx2+cx+d
とおく。ここでxは緩衝帯BAが有効領域13と面取り部15aと接続する端の位置において0とする。
まず、緩衝帯BAが有効領域13と面取り部15aと接続する端の位置では段差のない接続とするため、f(0)=0でなければならず、従ってd=0である。また、この式を一階微分した導関数は、
f'(x)=3ax2+2bx+c
となるが、x=0における増加量はx方向0.5あたりにつき高さ方向2hなので、2h/0.5=4hとなる。したがって、
f'(0)=C=4h
p12位置での一階微分値が連続でなければならないので、
f'(0.5)=0.75a+b+4h=0
また、f(0.5)=0.125a+0.25b+2h=h であるから、0.5a+b+4h=0
これを解いて、a=0、b=−4h となる。
従って、f(x)=−4hx2+4hx となる。
【0023】
なお、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施例では図2に示す丸レンズ11において第1及び第2の面取り部15a,15bとレンズ有効領域13との境界線B1,B2部分を滑らかに接続させていたが、そのような加工をしなくとも構わない(つまり不連続に接続させてもよい)。
・上記実施例では主軸31に対して刃物台37がX軸及びZ軸方向の2方向に対して移動可能としていたが、これに限定されるものではない。例えば主軸31をX軸側に移動可能なように構成することも自由である。また、刃物台37がY軸方向にも移動するようなNC旋盤装置30であってもよい。
・上記実施例ではフィードバック制御において1度刻みで判断するような制御であったが、判断タイミングは所定の角度刻み、あるいは所定時間間隔で変更可能である。
・レンズとしてはSVレンズ、累進多焦点レンズ又はバイフォーカルレンズ等通常の眼鏡用レンズであればいずれに適用しても構わない。
・上記実施例では第1〜第4の加工を同じNC旋盤装置30で加工したが、別々のNC旋盤装置で行うようにしてもよい。NC旋盤装置30の制御方法は上記は一例である。
・上記実施例ではレンズ有効領域11、面取り部12及びカット部13を同じNC旋盤装置30で加工したが、別々のNC旋盤装置で行うようにしてもよい。
・上記実施例でのバイト41の進退量や進退させる際の軌道の式は一例にすぎない。
・面取り部(レンズ有効領域13と第1及び第2の面取り部15a,15bとの境界部分B1)の設計においては3次関数で設計することが最も好ましい。上記実施例ではたまたま3次の係数が0になって2次関数になったが、もちろん、当初からカーブ設定を2次関数で設定したり4次関数以上であっても構わない。
・上記実施例では耳側と鼻側の両側とも面取り加工するようにしていたが、例えば耳側だけ面取りしたり、鼻側の面取り量を耳側に比べて少なくするような加工方法を実行するようにしてもよい。
・上記実施例では耳側と鼻側を中心とした面取り加工をする例を挙げたが、レンズの上下方向からこのような面取り加工をすることも自由である。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に使用される材料ブロックと実施例の丸レンズの斜視図。
【図2】実施例1の丸レンズの平面図。
【図3】(a)は図2のA−A線での断面図、(b)は実施例1の丸レンズの側面図。
【図4】図3(a)を拡大して説明する説明図。
【図5】実施例2の丸レンズの平面図。
【図6】本実施例において使用されるNC旋盤装置の概略説明図。
【図7】(a)〜(c)は材料ブロックが丸レンズに作製される順序を説明する説明図。
【図8】(a)は第1の加工が終了した後に、耳側の面取り加工を行った状態、(b)はその後鼻側の面取り加工を行った状態をそれぞれ説明する説明図。
【図9】実施例1における材料ブロックの一回転におけるバイトの進退動作を説明する説明図。
【図10】実施例1における材料ブロックの一回転におけるバイトの進退動作を説明する説明図。
【図11】実施例2における材料ブロックの一回転におけるバイトの進退動作を説明する説明図。
【図12】実施例3における材料ブロックのバイトの進退動作を説明する説明図。
【図13】有効領域と面取り部の接続面の加工方法を説明する説明図。
【符号の説明】
【0025】
11…眼鏡用レンズ前駆体としての丸レンズ、12…レンズ基材、13…有効領域、15a,15b…面取り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持されたレンズ基材を周方向に回転させるとともに、前記レンズ基材の裏面側に加工工具を配置し、同加工工具を前記レンズ基材方向に同レンズ基材に対して相対的に進出させることで前記加工工具を前記レンズ基材の裏面に当接させて回転に伴って当該当接位置において同心状に所定のサグ量での加工を実行させるとともに、前記加工工具を前記レンズ基材の回転中心方向に対して接近あるいは離間するように前記レンズ基材に対して相対的に移動させることで前記レンズ基材の裏面を所定の3次元的な面形状に加工する眼鏡用レンズの加工方法であって、同加工方法は、
眼鏡使用者に設定された矯正視力を得るために設計された第1の加工プログラムに基づいて前記レンズ基材の裏面にレンズ有効領域を加工する第1のレンズ加工工程と、
同第1のレンズ加工工程によって加工される前記レンズ有効領域の外周部分に面取り部を形成するために第2の加工プログラムに基づいて面取り加工を施す第2のレンズ加工工程とを備え、
前記加工工具は前記第2のレンズ加工工程において前記レンズ基材が一回転する間に前記レンズ基材の裏面に対して相対的に同レンズ基材の周方向に設定された1又は複数の加工基準位置Pにおいて最も進出し、前記加工基準位置Pから離間するほど進出量が少なくなるとともに、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみ前記レンズ基材と接触して同レンズ基材を加工するように制御されることを特徴とする眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項2】
前記第2のレンズ加工工程において前記工具が前記レンズ基材が一回転する間に所定の軌道で進退するように制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項3】
前記第2のレンズ加工工程において前記加工基準位置Pは前記レンズ基材の周方向における固定位置に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項4】
前記第2のレンズ加工工程において前記加工基準位置Pの異なる複数回の面取り加工を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項5】
前記第2のレンズ加工工程における前記加工基準位置Pは前記レンズ基材の回転に伴って変位することを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項6】
前記加工工具の一回転中での最大後退位置からの最大進出量は面取り動作中において一定であることを特徴とする請求項1〜5に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項7】
前記第1のレンズ加工工程及び前記第2のレンズ加工工程は単一のNC旋盤によってその加工が実行されることを特徴とする請求項1〜6に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項8】
前記レンズ基材は玉型加工して枠入れする際の上下位置となる部分については面取り加工を施さないことを特徴とする請求項1〜7に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項9】
前記レンズ有効領域と前記面取り部との境界部分は連続的な曲面で接続されることを特徴とする請求項1〜8に記載の眼鏡用レンズの加工方法。
【請求項10】
支持されたレンズ基材を周方向に回転させるとともに、前記レンズ基材の裏面側に加工工具を配置し、同加工工具を前記レンズ基材方向に同レンズ基材に対して相対的に進出させることで前記加工工具を前記レンズ基材の裏面に当接させて回転に伴って当該当接位置において同心状に所定のサグ量での加工を実行させるとともに、前記加工工具を前記レンズ基材の回転中心方向に対して接近あるいは離間するように前記レンズ基材に対して相対的に移動させることで前記レンズ基材の裏面を所定の3次元的な面形状に加工する眼鏡用レンズの加工方法によって加工された眼鏡用レンズ前駆体であって、同眼鏡用レンズ前駆体は、前記レンズ基材の裏面にレンズ有効領域を備えるとともに、同レンズ有効領域の外周に周方向に沿って湾曲した面取り部を備え、
同面取り部は前記レンズ基材が一回転する間に前記加工工具が前記レンズ基材の裏面に対して相対的に同レンズ基材の周方向に設定された1又は複数の加工基準位置Pにおいて最も進出し、前記加工基準位置Pから離間するほど進出量が少なくなるとともに、最も進出した位置を含む所定の進出状態でのみ前記レンズ基材と接触して同レンズ基材を加工するような加工方法によって成形されていることを特徴とする眼鏡用レンズ前駆体。
【請求項11】
前記所定の加工基準位置Pとは前記レンズ基材を玉型加工して枠入れする際の耳側又は鼻側に対応する位置であることを特徴とする請求項10に記載の眼鏡用レンズ前駆体。
【請求項12】
前記眼鏡用レンズ前駆体を玉型加工して得られる請求項11に記載の眼鏡用レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−208175(P2009−208175A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51494(P2008−51494)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】