説明

眼障害を処置するためのミコフェノール酸ナトリウムのpH特異的な溶液

薬物の眼への眼内送達は、眼のユニークな解剖学的および生理学的な特性のために、進行中の挑戦である。pH6.0〜8.5を有する免疫抑制の抗炎症性化合物であるミコフェノール酸の溶液は、眼に局所適用された場合、改善された生物学的利用能を示すことが証明された。具体的には、そのような溶液の眼への局所適用は、前部および後部の眼構造に浸透する際に有効である。前記溶液は、いろいろな炎症性障害を処置するのに効果的であり、それは、ブドウ膜炎、アレルギー性結膜炎および乾性角結膜炎を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2008年7月9日に出願された出願第61/079,413号(この内容は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
眼の多くの炎症性疾患は、いろいろな全身性疾患(例えば、自己免疫疾患または感染症)に対して、新規に、または2次合併症として起こる。局所適用ステロイドの使用などの標準的な処置法は、眼の炎症性徴候をコントロールすることに向けられる。しかし、ステロイド処置による合併症は、かなりの割合の処置対象が眼内圧上昇に苦しみ、それは緑内障や白内障などの眼障害を悪化させる場合がある。ある場合には、眼障害は、局所的に適用されたステロイドの効果が無効である。
【0003】
ある場合には、抗炎症ステロイドまたは他の免疫抑制剤での全身的な処置は、眼の炎症を処置するのに用いられる。しかし、全身的な処置からの副作用は、それらの使用を制限することになる。副作用は、高血圧、高血糖、消化性潰瘍、骨粗鬆症、成長制限、筋障害、および腎臓機能不全を含むことができる。全身的ステロイド療法さえも、また、潜在的に視力を脅す副作用(例えば、緑内障、白内障、および眼感染症に対する罹病性)を有する。いくつかの代替療法(例えば、シクロスポリンA(RestasisTM、Allergan Inc.)の局所投与(非特許文献1)が、特定の眼障害の処置に使用することが承認されている。しかし、局所適用のシクロスポリンA(CsA)は、忍容性が低く、低い生物学的利用能を有することが指摘されている(非特許文献2)。したがって、炎症状態と自己免疫疾患を伴う眼障害を処置するのに使用できる他の療法を見つけることは望ましい。
【0004】
上記文献の引用は、前述のいずれもが当該従来技術であることを認めることを本出願では意図するものではない。これらの文献の日付に関する全ての記載または内容に関する記述は、出願人らに入手可能であった情報に基づくものであり、これらの文献の日付または内容の正確性に関して何ら是認するものではない。さらに、本出願を通して引用されるすべての文献は、引用によってそれらの全体が本明細書に取り込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tauber.J.、Adv Exp Med Biol.(1998)438:969〜72
【非特許文献2】Lallemandら、Eur J Pharm Biopharm.(2003)56(3):307−18
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.概要
本開示は、炎症および自己免疫状態を伴ういろいろな眼疾患を処置するための眼用溶液に関するものである。1態様において、眼用溶液は、ミコフェノール酸ナトリウム(NaMPA)から本質的になる組成物を有し、そこでは、溶液のpHは約6.0〜8.5である。NaMPAは、水溶液に非常に溶けるが、眼用溶液中のMPAは、眼に浸透して治療効果を有するのに十分なレベルを達成することが分かる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAならびに保存剤、粘性強化剤(viscosity enhancing agent)、湿潤剤、緩衝剤、滑沢剤、抗酸化剤、および張度作用物質(tonicity agent)から選択される1つ以上の添加剤から本質的になる組成物を有する。NaMPAのレベルは、示されたpH範囲で水溶液中の薬物の溶解限度までとすることができる。いくつかの実施形態では、溶液中のNaMPAの量は、最大4.5%(w/v)とすることができる。種々のの実施形態では、眼用溶液中のナトリウム濃度は、0.4〜2.0%(w/v)とすることができる。いくつかの実施形態では、等張状態(例えば、0.9%のNaClに等しい)より上のナトリウムレベルを使うことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAと保存剤を含む。特に、保存剤はEDTAであり、それは、約0.005〜約0.050%(w/v)、0.005〜約0.040%(w/v)、0.010〜約0.030%(w/v)、0.010〜約0.020%(w/v)、または約0.010〜約0.015%(w/v)で存在し得る。いくつかの実施形態では、EDTAは、0.005、0.01、0.012、0.014、0.016、0.018、0.020、0.030、0.040、または0.050%(w/v)で存在し得る。いくつかの実施形態では、EDTA(2ナトリウム塩の脱水物として)は、約0.012%(w/v)で存在する。
【0008】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPA、保存剤および緩衝剤を含む。このタイプの典型的な製剤は、上記した量で保存剤EDTA;ホウ酸塩またはトロメタミンの緩衝剤を含むことができ、緩衝剤の量は、0.01〜約0.1の緩衝能と約7.0〜8.0の溶液pHを提供する量である。
【0009】
眼用溶液は、いろいろな新規な炎症性眼障害または眼に影響を及ぼす自己免疫疾患または感染症と関連した障害を処置するのに用いることができる。いくつかの実施形態では、これらの眼の状態は、「眼の前部」障害を含み、例えば、眼瞼炎、角膜炎;虹彩ルベオーシス(rubeosis iritis);Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎;慢性ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎(季節性または四季を通じての結膜炎、春に起こる結膜炎、アトピー性結膜炎、および巨大乳頭結膜炎);乾性角結膜炎(ドライアイ症候群);虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼瘢痕性類天疱瘡(ocular cicatrcial pemphigoid);毛様体扁平部炎;Posner Schlossman症候群;Behcet病;Vogt−Koyanagi−Harada症候群;過敏性反応;結膜浮腫;結膜静脈性うっ血(conjunctival venous congestion);眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異性脈管炎;および類肉腫症が挙げられる。いくつかの実施形態では、眼の状態は、「眼の後部」障害を含み、例えば、黄斑浮腫;嚢胞様黄斑浮腫;網膜虚血および脈絡膜新血管形成;黄斑変性;網膜疾患(例えば、糖尿病性網膜症;糖尿病性網膜浮腫;網膜剥離);炎症性疾患(例えば、原因不明(突発性疾患)の、または全身性(例えば、自己免疫)疾患に関係したブドウ膜炎(汎ブドウ膜炎を含む)または脈絡膜炎(多巣性脈絡膜炎を含む));上強膜炎または強膜炎;散弾網脈絡膜症(Birdshot retinochoroidopathy);脈管疾患(例えば、網膜虚血、網膜脈管炎、脈絡膜脈管不全(choroidal vascular insufficiency)、脈絡膜血栓症(choroidal thrombosis));視神経新血管形成;および視神経炎が挙げられる。
【0010】
眼用溶液は、治療効果を提供するのに十分な用量で局所的に適用することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、1日につき1〜8回、罹患した眼に適用することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、1日につき1回または2回投与することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、眼障害を処置するために、必要に応じて、2日ごとに1回、4日ごとに1回、または1週間につき1回適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、眼に毎日8回14日間、局所投与した後のウサギで達成されたNaMPAとシクロスポリンの眼組織浸透の試験を示す。これらの試験では、動物はNaMPAまたはシクロスポリンのどちらかを両眼に適用される局所溶液として受けた。組織は、薬物の服用の最後である14日目に、分析のために採取された。データは、眼組織のグラム当たりηg(ηg/g)薬物として表記される。これらの試験は、NaMPA製剤が、前部組織(例えば、結膜,涙嚢、房水)および後部組織(例えば、網膜/脈絡膜)、特に房水;虹彩/毛様体;涙嚢;強膜;および網膜/脈絡膜を含む試験されたすべての眼組織に浸透することを証明した。
【図2】図2は、図1で記述された結果に由来し、比率として表記され、眼組織で測定されたNaMPAまたはシクロスポリンのレベルを示す。
【図3A】図3A、3Bおよび3Cは、組み合わされた1日試験のためのMPA塩(1%、2%、4%、w/v)に関する眼組織浸透データを示す:NaMPA;NaMPA+ホウ酸塩;トロメタミンMPA;およびモルホリンMPA。濃度は、μg/mLで記述されていることに注意する。処置群につき1匹の動物を無作為に選択し、安楽死させ、両眼がMPAレベル(取られた両眼の平均)を測定するために採取された。シクロスポリンのデータは、この表に示されていない。
【図3B】図3A、3Bおよび3Cは、組み合わされた1日試験のためのMPA塩(1%、2%、4%、w/v)に関する眼組織浸透データを示す:NaMPA;NaMPA+ホウ酸塩;トロメタミンMPA;およびモルホリンMPA。濃度は、μg/mLで記述されていることに注意する。処置群につき1匹の動物を無作為に選択し、安楽死させ、両眼がMPAレベル(取られた両眼の平均)を測定するために採取された。シクロスポリンのデータは、この表に示されていない。
【図3C】図3A、3Bおよび3Cは、組み合わされた1日試験のためのMPA塩(1%、2%、4%、w/v)に関する眼組織浸透データを示す:NaMPA;NaMPA+ホウ酸塩;トロメタミンMPA;およびモルホリンMPA。濃度は、μg/mLで記述されていることに注意する。処置群につき1匹の動物を無作為に選択し、安楽死させ、両眼がMPAレベル(取られた両眼の平均)を測定するために採取された。シクロスポリンのデータは、この表に示されていない。
【図4】図4は、コンカナバリンA(Con A)の両側涙腺注射によりドライアイが誘発されるウサギでの涙液層破壊時間(TBUT)値を示す。結果は、NaMPAまたはビヒクルで処置された0日目から17日目までのウサギに関するものである。Con Aは、8日目に注射された。ドライアイの誘発は、9〜12日目にわたる涙液層破壊時間(TBUT)値の減少により測定して観察された。TBUT値(例えば、14〜17日目)の統計的に有意な増加は、NaMPA群対ビヒクルに対して星印で示される。
【図5】図5は、図4で記述したと同じ試験からのRestasis(登録商標)、デキサメタゾンおよびビヒクル群に対するTBUT値を示す。TBUT値(例えば、14〜17日目)の統計的に有意な増加は、Restasis(登録商標)またはデキサメタゾン群対ビヒクルに対して星印で示される。
【図6】図6は、ブタクサアレルゲン(SRW)で第0日目に全身的に感作され、それから27日目にSRWで局所的な眼内チャレンジされた動物での結膜充血、結膜浮腫、排出物および眼瞼浮腫に対する0〜4スケール(参照:Grading Systems for Allergic Responsesで等級付された臨床スコアを示す。スコアリングは、SRWチャレンジの15分後になされた。各群は、NaMPA、Pred Forte(登録商標)(酢酸プレドニゾロン)またはビヒクルで21日目〜27日目に処置されたか、あるいは未処置のままにされた。結膜充血の統計的に有意な減少が、陰性対照群に対して、2%、1%および0.5%のNaMPA群とPred Forte(登録商標)群について見られた。また、Pred Forte(登録商標)群対陰性対照群の結膜浮腫において、統計的に有意な減少があった。
【図7】図7は、図6で示された同じ動物に対するSRWチャレンジの3、5、7および10分後における痒み感/洗顔行動に対する臨床スコアを示す。統計的に有意な減少が、2%と1%のNaMPA群対陰性対照群に関して10分間隔で見られた。
【図8】図8は、図6および7で記述されたと同じ動物(臨床スコアリングがなされた後、27日目に犠牲にされた)の結膜組織における、光学顕微鏡で見られた浸潤性CD4+細胞(CD4+T細胞)の数を示す。CD4+細胞に対する免疫染色は、Studies Based on Ragweed Induced Allergic Conjunctivitisに記載された標準的な手順によってなされた。統計的に有意な減少が、2%NaMPAとPred Forte(登録商標)群対陰性対照群について見られた。
【図9】図9は、図8で記述されたと同じ組織サンプルに関する結膜組織における、光学顕微鏡で見られた浸潤性マクロファージの数を示す。マクロファージに対する免疫染色は、Studies Based on Ragweed Induced Allergic Conjunctivitisに記載された通りになされた。統計的に有意な減少が、2%NaMPAとPred Forte(登録商標)群対陰性対照群について見られた。
【図10】図10は、化合物48/80で局所的な眼内チャレンジをした5、10、15、20および30分後の動物での結膜充血に対する臨床スコアを示す。動物は、NaMPA、Pred Forte(登録商標)またはビヒクルで処置されたか、あるいは1〜7日目は未処置のままにされ、それから化合物48/80で7日目にチャレンジされた。統計的に有意な減少が、15と20分の間隔で1%のNaMPA群対未処置群について見られた。
【図11】図11は、図10で記述された動物の同じ群に対して化合物48/80でチャレンジした5、10、15、20および30分後に、動物での排出物に関する臨床スコアを示す。統計的に有意な減少は、20または30分の時間間隔で、2%と1%のNaMPA群とPred Forte(登録商標)群対対照群において見られた。
【図12】図12は、図10および11で記述された動物の同じ群に対して化合物48/80でチャレンジした5、10、15、20および30分後に、結膜浮腫に対する臨床スコアを示す。統計的に有意な減少は、20および/または30分の時間間隔で、2%NaMPAとPred Forte(登録商標)群対ビヒクル対照において見られた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
5.詳細な説明
眼への薬物の送達は、眼への薬物化合物の眼内アクセスを制限する解剖学的および生理的障壁(例えば、低角膜透過性など)があるので、挑戦的である。生物学的利用能を強化するために、薬物は角膜と親油性内皮を通過する浸透性を高めるために脂質可溶性であるべきであることが示唆された(Ahmedら、1987,”Physicochemical determinants of drug diffusion across the conjunctiva,sclera,and cornea,”J Pharm Sci.76:583−586; Wangら、1991,”Lipophilicity influence on conjunctival drug penetration in the pigmented rabbit:a comparison with corneal penetration,”Curr Eye Res 10:571−579)。水溶液に低い溶解度を有する親油性分子(例えば、ステロイド)については、担体分子から親油性膜に分配することができるシクロデキストリンなどの薬物担体への複合体が、薬物を溶解して膜表面に送達するのに使用されてきた(Loftsson T and Masson M,2001,”Cyclodextrins in topical drug formulations:theory and practice,”Int J Pharm 212:29−40)。
【0013】
免疫抑制化合物ミコフェノール酸(MPA)およびそのエステルプロドラッグの形態ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は、同種間の臓器移植の拒絶反応を予防するために、そして、全身性エリテマトーデスおよび重症筋無力症などの特定の自己免疫疾患の処置に対して主に使用されてきた。MPAは、酵素イノシンモノリン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)を特異的に阻害することは知られており、これは、細胞複製のために要求される新規のグアノシンヌクレオチドを生成するために優先してT細胞とB細胞によって利用される。MMF(CellCept(登録商標))の承認された処方薬バージョンとMPA(Myfortic(登録商標))の腸溶性ナトリウム塩は、固形臓器移植の拒絶反応の防止のために市販されている。両方とも、全身性免疫抑制を達成するために、経口で与えられる。さらに、MMFとMPAは、抗炎症性の効果を含む他の生物学的効果を有することが知られている。その免疫抑制効果と抗炎症性効果のために、経口で投与されたMMFは、ブドウ膜炎や難治性の炎症性眼病などの特定の眼疾患の処置として試験されてきた(Zierhutら、2005,”MMF and eye disease,” Lupus 14 Suppl 1:s50−4;Choudharyら、2006,J Ocul Pharmacol Ther.22(3):168−75)。眼への局所投与のためのMMF製剤は、最近、報告されている(Knappら、2003,J Ocul Pharmacol Ther.19(2):181 −92)。少なくとも1つのマクロライドおよび/またはミコフェノール酸を含む眼用溶液は、PCT出願公開WO2005/030305A1に記述されている。MMFは、MPAよりも親油性であり、アルコールに可溶性であり、水にわずかに溶けるだけであるが(CellCept(登録商標)製品)、MPAのナトリウム塩は、生理的pHで水溶液に非常に良く溶けると指摘されている(Myfortic(登録商標)製品)。眼でのMMFの生物学的利用能を増加させるためにシクロデキストリンを用いて処方された(Knapp、上記)。
【0014】
生理的pHで処方されたMPAのナトリウム塩は、眼に局所的に適用したとき、前部および後部の眼の構造に浸透する際に有効であることが本発明者らによって、今回、知見された。この製剤で眼の構造内で達成されるMPAレベルは、治療効果を有するのに十分なレベルにあることができる。たとえMPAのナトリウム塩が、生理的pHで水溶液に非常に溶けて、MMFよりかなり親油性でないとしても、眼への浸透は起こる。したがって、本開示は、ミコフェノール酸を含む眼用溶液と、いろいろな眼障害を処置するための製剤を使用する方法を提供する。好ましくは、本開示は、いろいろな眼障害を処置するためのMPAのナトリウム塩を含む製剤を提供する。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で提供される記述に関して、単数形の「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「それ(the)」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば、「1つの薬剤(an agent)」への言及は、複数の薬剤への言及を含み、「1つの化合物(a compound)」への言及は、複数の化合物を意味する。
【0016】
いろいろな実施形態の説明が「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を使用する場合、いくつかの特定の場合には、1つの実施形態は、言語「〜からなる(consisting of)」を用いて代わりに記述しうることを当業者はさらに理解すべきである。
【0017】
前述の一般的な説明(図面を含む)と以下の詳細な説明の両方は、代表的で説明的なだけであって、本開示について制限的でないことを理解すべきである。
【0018】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、ミコフェノール酸ナトリウム(NaMPA)から本質的になる組成物であり、そこでは、溶液のpHは、約6.0〜約8.5とすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、ミコフェノール酸ナトリウムと、保存剤、粘性強化剤、湿潤剤、緩衝剤、滑沢剤、抗酸化剤、および張度作用物質から選択される1つ以上の添加剤とから本質的になる組成物であり、そこでは、溶液のpHは約6.0〜約8.5とすることができる。
【0019】
眼用溶液のNaMPAの量は、示されたpH範囲での薬物の水溶液中の溶解限度までとすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液のNaMPAの量は、最大4.5%(w/v)とすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.01%(w/v)〜約4.5%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.1%(w/v)〜約4.5%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.5%(w/v)〜約4.5%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.01%(w/v)〜約4.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.1%(w/v)〜約4.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.5%(w/v)〜約4.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.05%(w/v)〜約3.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.1%(w/v)〜約3.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.5%(w/v)〜約3.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.1%(w/v)〜約2.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約0.2%(w/v)〜約1.0%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAの約2%〜約4%(w/v)のNaMPAレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、NaMPAの眼用溶液は、0.05、0.06、0.08、0.1、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、または4.0%(w/v)から選択される薬物のレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、NaMPAレベルは、2.0、2.5、3.0、3.5、または4.0%(w/v)から選択される。選択されるNaMPAのレベルは、眼での治療的に有益なレベルを達成するのに必要な量に基づくことができる。MPAのナトリウム塩は、特にWO97/38689に記載されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、生理的pH(特に眼の外部環境の生理的pH)から、1.0〜1.5pH単位内とすることができる。ヒトの涙のpHは、約pH 7.4である。したがって、眼用溶液のpHは、pH7.4の上下の約1.0〜1.5pH単位とすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、約pH6.0〜約pH8.5である。いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、約pH6.0〜約pH8.0である。いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、約6.5〜約8.0である。いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、約7.0〜約8.0である。いくつかの実施形態では、眼用溶液のpHは、約7.0〜約7.5である。当業者は、指示されたpHでのNaMPA製剤の安定性と効能および自然の状態と異なるpHに対する眼の忍容性のバランスを取るpHを選択することができる。
【0021】
眼用溶液のいくつかの実施形態では、溶液中の総ナトリウムレベルは、約0.4〜約2.0%(w/v)である。いくつかの実施形態では、溶液中の総ナトリウムは、約0.4〜約1.0%(w/v)である。いくつかの実施形態では、溶液中の総ナトリウムは、約0.6〜約0.9%(w/v)である。いくつかの実施形態では、眼用溶液中のナトリウムの全レベルは、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8および2.0%(w/v)から選択される。一般に、ナトリウムのレベルは、NaMPAと、他のソース(例えば、保存剤として使用されるEDTAおよび/または眼用溶液のpHを調節するのに使用されるNaOH)から溶液に加えられる任意の付加的なNaイオンとにより寄与されたレベルである。いくつかの実施形態では、NaClは、ナトリウムレベルを調節するために加えることができる。いくつかの実施形態では、溶液中の全ナトリウムは、眼の自然環境と等張的な量とすることができる。一般に、涙液の等張性は、0.9%の塩化ナトリウム溶液のそれと対応する。しかし、眼は、著しい不快感なしで、0.6%の塩化ナトリウム溶液のものと同じくらい低い値、そして、2.0%の塩化ナトリウム溶液のものと同じくらい高い値を許容できる。通常の眼の涙の総モル浸透圧濃度は、311〜350mOsM/L(Ophthalmic Drug Delivery Systems,Ed.A Mitra,Dekker,1993)および284〜311mOsM/L(Farris R.,1986;Tr.Am.Ophth.Soc.VoI LXXXIV)の間であると報告されている。いくつかの実施形態では、モル浸透圧濃度は、約250〜約450mOsM/Lまたは約250〜約350mOsM/Lとすることができる。いくつかの実施形態では、ナトリウムのより高い濃度、例えば、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、または2.0%(w/v)などの0.9%(w/v)を超えるレベルは、眼用溶液中でイオン化していないMPA(例えば、NaMPA)のレベルを上昇させるのに用いることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、溶液のナトリウムに対する対イオンは、塩素イオン(chloride)である。いくつかの実施形態では、眼用製剤中の塩素イオンは、HCl(それは、眼用溶液のpHを調節するのに用いることができる)または塩化ナトリウム(それは、製剤の浸透圧を調節するのに用いられる)由来とすることができる。塩素イオン源の他の例としては、塩化カリウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、いろいろな緩衝剤は、また、さらに以下に記すように、他のタイプの対イオン源ともなり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAと、保存剤、粘性強化剤、湿潤剤、緩衝剤、滑沢剤、抗酸化剤、および張度作用物質などの1つ以上の添加剤とから本質的になることができる。一部の薬剤は複数のカテゴリーに分類されることができるように、薬剤のカテゴリーは、互いに排他的であることを意味しないことを理解すべきである。例えば、湿潤剤は、また、粘性強化特性も有することができ、したがって、湿潤剤ならびに粘性強化剤でありえる。
【0024】
いくつかの実施形態では、添加剤は、眼用溶液のpHを特定されたpH範囲に調節および/または維持するための1つ以上の緩衝剤でありうる。緩衝剤は、通常、弱酸または弱塩基とそのコンジュゲート塩からなり、そこでは、「緩衝能」βは、
【0025】
【数1】

として定義され、式中、ΔBは、緩衝液1LのpHを変える強酸/塩基のグラム当量であり、ΔpHは、強酸/塩基の添加により生じたpH変化である。緩衝能と緩衝濃度の関係は、以下の式によって定義することができる:
【0026】
【数2】

式中、Cは、総緩衝剤濃度(すなわち、酸と塩のモル濃度の合計)である。通常、緩衝能は、かなり長い貯蔵寿命で製品pΗを維持するために十分に大きくなければならないし、また、投与した際に生理的pΗに製品を迅速に再調整することを可能とする十分に低いものでなければならない。一般的に、約0.01〜0.1の緩衝能は、特に十分な緩衝能を提供し、副作用(例えば、眼の刺激)を最小にする濃度で眼科用溶液のために使用することができる。典型的な緩衝剤は、例示として、制限するものとしてではなく、以下のもののいろいろな塩類(例えば、ナトリウム、カリウム、その他)、酸または塩基を、必要に応じて含む:酢酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、4ホウ酸塩、二リン酸塩(biphosphate)、トロメタミン、ヒドロキシエチルモルホリン、およびTHAM(トリスヒドロキシメチルアミノ−メタン)。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約0.5mMから約100mM、約1mMから約50mM、約1mMから約40mM、約1mMから約30mM、約1mMから約20mM、または、約1mMから約10mMまで存在しうる。
【0027】
いくつかの実施形態では、NaMPAの眼用溶液は、眼に治療的に投与する際と同様に、保存の過程で、例えば、貯蔵寿命を延ばすか、溶液での細菌増殖を制限するために、1つ以上の保存剤を含むことができる。使用することができる保存剤は、特に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、チメロサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、メチル/プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、および過ホウ酸ナトリウムを含む。溶液中の保存剤の量は、貯蔵寿命を高めるか、細菌増殖を制限するか、さもなければ眼組織への最小毒性でもって眼用溶液を保存するレベルとすることができる(参照:例えば、The United States Pharmacopeia,22nd rev.,and The National Formulary, 17th ed.Rockville,MD:The United States Pharmacopeial Convention;pages 1692−3(1989))。眼用製剤の使用に適している保存剤の濃度は、当業者により決定することができる。いくつかの実施形態では、保存剤は、約0.001〜約1.0%(w/v)の量で使うことができる。例えば、保存剤は、EDTAなどの2価金属イオンキレート化剤であることができ、約0.005〜約0.050(w/v)、約0.005〜約0.040%(w/v)、約0.010〜約0.030%(w/v)、約0.010〜約0.020%(w/v)、または約0.010〜約0.015%(w/v)とすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液中の保存剤(例えば、EDTA)の量は、約0.005、0.01、0.012、0.014、0.016、0.018、0.020、0.030、0.040、または0.050%(w/v)とすることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、NaMPAの眼用溶液は、1つ以上の粘性強化剤を含むことができる。粘性強化剤は、一般的に、眼用溶液の粘性を高めて眼での溶液の保持時間を増加させ、ある場合には、眼の表面に保護層を提供する。いろいろな分子量でのいろいろな相容性の組み合わせで、粘性強化剤は、特に、カーボポールゲル、デキストラン40(40,000ダルトンの分子量)、デキストラン70(70,000ダルトンの分子量)、ゼラチン、グリセリン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(HPMC)メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポロキサマー407、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolodine)(ポビドン)を含む。溶液の粘性は、ポアズ単位で与えられ、約25〜50cpsの粘度が、眼科用溶液に適している。眼用製剤に用いられる薬剤の量は、当業者によって決定することができ、処置される状態および眼での溶液の所望の保持時間に適した15分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、6時間以上、8時間以上、12時間以上の眼における滞留時間を提供することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、NaMPAの眼用溶液は、1つ以上の抗酸化剤を含むことができる。適切な抗酸化剤は、例示として限定されるものではないが、EDTA(例えば、EDTA2ナトリウム)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素、およびアルファトコフェロールを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1つ以上の湿潤剤である。通常、湿潤剤は、眼の水分補給をし、眼の乾燥を制限することができる。湿潤剤は、一般に、親水性ポリマーであり、例示として限定されるものではないが、ポリソルベート20および80、ポロキサマー282、ならびにチロキサポールを含む。いくつかの実施形態では、湿潤剤は、また、特に、セルロース系ポリマー(例えば、HPMCとCMC);ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolodine);およびポリビニルアルコールを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1つ以上の滑沢剤である。眼用滑沢剤は、内因性の涙の稠度に近似させ、自然な涙の増強を助成することができる。滑沢剤は、非リン脂質系およびリン脂質系(phosphipid−based)の薬剤を含むことができる。非リン脂質系である眼用滑沢剤は、限定されるものではないが、プロピレングリコール;エチレングリコール;ポリエチレングリコール;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;デキストラン(例えば、デキストラン70);水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);ビニル重合体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン);ペトロラタム;鉱油;およびカルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、およびカルボマー974P)を含む。非リン脂質滑沢剤は、また、前述の薬剤のいずれかの相容性混合物を含むこともできる。
【0032】
いくつかの実施形態では、眼用滑沢剤は、リン脂質系滑沢剤である。本明細書で使用する場合、「リン脂質滑沢剤」は、1つ以上のリン脂質を含む水性組成物を指す。涙液膜は脂質層を含むことが示され、それは涙腺によって分泌されて、さまざまなタイプのリン脂質からなる(参照:例えば、McCulley and Shine,2003,The Ocular Surface 1:97−106)。リン脂質滑沢剤の製剤の例は、米国特許第4,804,539号;同第4,883,658号;同第4,914,088号;同第5,075,104号;同第5,278,151号;同第5,294,607号;同第5,371,108号;および同第5,578,586号に開示されたものを含む;それらの全ては、引用により本明細書に取り込まれる。リポソームに基づく滑沢剤の組成物は、米国特許第4,818,537号および米国特許第5,800,807号に記述されており、それらの開示は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、添加剤は、1つ以上の張度作用物質であり、組成物の浸透圧を例えば、自然の涙の浸透圧に調節するために使用できる。適切な張度作用物質は、例示として制限するものではないが、デキストラン(例えば、デキストラン40または70)、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、および塩化ナトリウムを含む。1つ以上の塩類の等価量は、陽イオン(例えば、カリウム、アンモニウムなど)と陰イオン(例えば、塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、重硫酸塩など)からなり;塩の硫化水素ナトリウムおよび硫酸アンモニウムも、また、使うことができる。張度作用物質の量は、添加される特定の薬剤に依存して異なる。しかし、一般に、組成物は、上で示したように、最終組成物が眼科学的に許容できるモル浸透圧濃度、例えば、約250〜約450mOsM/L、または約250〜約350mOsM/Lを有するようにするのに十分な量での張度作用物質を含むであろう。
【0034】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPAと保存剤の組成物である。特に、保存剤はEDTAであり、それは、約0.005〜約0.050%(w/v)、約0.005〜約0.040%(w/v)、約0.010〜約0.030%(w/v)、約0.010〜約0.020%(w/v)、または約0.010〜約0.015%(w/v)で存在することができる。いくつかの実施形態では、EDTAは、約0.005、0.01、0.012、0.014、0.016、0.018、0.020、0.030、0.040、または0.050%(w/v)で存在する。いくつかの実施形態では、EDTA(2ナトリウム塩脱水物として)は、約0.012%(w/v)で存在する。
【0035】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、NaMPA、保存剤、および緩衝剤を含む。このタイプの典型的な製剤は、上記した量での保存剤EDTA;0.01〜約0.1の緩衝能を提供する量での緩衝剤(例えば、ホウ酸塩またはトロメタミン);および約7.0〜8.0の溶液pHを含むことができる。
【0036】
本明細書における実施形態では、眼用溶液は、当該技術分野で知られている方法に従って製剤化することができる。ガイダンスは、Duvall and Kershner, Ophthalmic Medications and Pharmacology 2nd Ed,Slack Incorporated(2006);Ophthalmic Drug Facts(登録商標) 18th Ed,Wolters Kluwer(2007);Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.Gennaro AR,ed.Easton,PA:Mack Publishing,pages 1581−1959(1990);およびReynolds LA.,1991,”Guidelines for preparation of sterile ophthalmic products,”Am J Hosp Pharm.48:2438−9に見ることができる;その開示は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0037】
製剤中のNaMPAは、眼に浸透する能力を与えられるので、本明細書に記述される眼用溶液は、免疫抑制および抗炎症性化合物による処置に従っていろいろな眼性障害を処置するのに使用することができる。用語「眼科障害」、「眼障害」、「眼疾患」、および「眼の障害」は、本明細書では互換的に使用されて、特に、網膜、斑、窩などの眼の後部領域に関わる「眼の後部」疾患;および角膜、虹彩、毛様体、結膜、涙腺、その他などの組織に関わる疾患などの「眼の前部」疾患を含む。これらの状態および疾患は、痛み、不快感、組織損傷および罹患対象の眼の損なわれた視覚動作として現れる場合がある。
【0038】
「眼の後部」疾患の例は、特に、血管造影嚢胞様黄斑浮腫などの黄斑浮腫;網膜虚血および脈絡膜新血管形成;黄斑変性;網膜疾患(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜浮腫、網膜剥離);炎症性疾患(例えば、原因不明(突発性疾患)の、または全身性(例えば、自己免疫)疾患に関係したブドウ膜炎(汎ブドウ膜炎を含む)または脈絡膜炎(多巣性脈絡膜炎を含む));上強膜炎または強膜炎;散弾網脈絡膜症;脈管疾患(例えば、網膜虚血、網膜脈管炎、脈絡膜脈管不全、脈絡膜血栓症);視神経新血管形成;および視神経炎が挙げられる。
【0039】
「眼の前部」疾患の例は、特に、眼瞼炎、角膜炎;虹彩ルベオーシス;Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎;慢性ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎(季節性または四季を通じての結膜炎、春に起こる結膜炎、アトピー性結膜炎、および巨大乳頭結膜炎);乾性角結膜炎(ドライアイ症候群);虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼瘢痕性類天疱瘡(ocular cicatrcial pemphigoid);毛様体扁平部炎;Posner Schlossman症候群;ベーチェット病;Vogt−Koyanagi−Harada症候群;過敏性反応;結膜浮腫;結膜静脈性うっ血;眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異性脈管炎;および類肉腫症が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、眼疾患は、眼の炎症状態と関係している。これらの状態は、眼の前部と眼の後部に関する上記したいろいろな障害を含むが、これらに限定されず、例えば、黄斑浮腫を伴う炎症;網膜虚血;脈絡膜新血管形成、黄斑変性;糖尿病性網膜症;糖尿病性網膜浮腫;網膜剥離;炎症性疾患(例えば、原因不明(突発性疾患)の、または全身性(例えば、自己免疫)疾患に関係したブドウ膜炎(汎ブドウ膜炎を含む)または脈絡膜炎(多巣性脈絡膜炎を含む));上強膜炎または強膜炎;散弾網脈絡膜症;脈管疾患(網膜虚血、網膜脈管炎、脈絡膜脈管不全、脈絡膜血栓症);視神経新血管形成および視神経炎;眼瞼炎;角膜炎;虹彩ルベオーシス;Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎;慢性ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎(季節性または四季を通じての結膜炎、春に起こる結膜炎、アトピー性結膜炎、および巨大乳頭結膜炎を含む);乾性角結膜炎(ドライアイ症候群);虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼瘢痕性類天疱瘡(ocular cicatrcial pemphigoid);毛様体扁平部炎;Posner Schlossman症候群;ベーチェット病;Vogt−Koyanagi−Harada症候群;過敏性反応;結膜浮腫;結膜静脈性うっ血;眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異性脈管炎;および類肉腫症が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、眼用製剤で処置できる眼疾患は、乾性角結膜炎であり、これは、ドライアイ、乾性角膜炎、乾燥症候群、眼乾症、およびドライアイ症候群(DES)としても知られる状態であり、それは、異常な涙の組成のために、減少した涙液の産生および/または増加した涙液層の蒸発に起因しうる。障害は、環境化学薬品や感染症に起因する場合があるが、障害はまた、自己免疫疾患の関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、真性糖尿病およびSjoegren症候群を伴う。
【0042】
いくつかの実施形態では、製剤で処置することができる眼疾患は、自己免疫障害に伴う疾患である。これらの状態は、眼の後部と眼の前部に対する上記された様々な障害を含むことができ、これに限定されるものではないが、例えば、脈絡膜新血管形成;黄斑変性;糖尿病性網膜症;糖尿病性網膜浮腫;原因不明(突発性疾患)の、または全身性(例えば、自己免疫)疾患に関係したブドウ膜炎(汎ブドウ膜炎を含む)または脈絡膜炎(多巣性脈絡膜炎を含む);上強膜炎または強膜炎;散弾網脈絡膜症;視神経新血管形成、および視神経炎;眼瞼炎;角膜炎;虹彩ルベオーシス;Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎;慢性ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎(季節性または四季を通じての結膜炎、春に起こる結膜炎、アトピー性結膜炎、および巨大乳頭結膜炎を含む);虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼瘢痕性類天疱瘡(ocular cicatrcial pemphigoid);毛様体扁平部炎;Posner Schlossman症候群;ベーチェット病;Vogt−Koyanagi−Harada症候群;過敏性反応;結膜浮腫;結膜静脈性うっ血;眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異性脈管炎;および類肉腫症が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、眼用製剤で処置することができる自己免疫状態と関連した眼疾患は、ブドウ膜炎であり、これは、ブドウ膜の任意成分の炎症を記述するのに用いられる一般用語である。眼のブドウ膜は、虹彩、毛様体および脈絡膜からなる。下にある網膜の炎症(網膜炎と呼ばれている)、または視神経の炎症(視神経炎と呼ばれる)、または上にある強膜の炎症(強膜炎もしくは上強膜炎と呼ばれる)は、ブドウ膜炎を併って、あるいは伴うことなく起こる場合がある。ブドウ膜炎は、前部、中間、後部、または拡散などの罹患した眼のセグメントに基づいて分類されるか、あるいは虹彩炎、虹彩毛様体炎または脈絡膜炎などの関与した特定の解剖学的な部分に基づいて分類され得る。後部ブドウ膜炎は、以下でさらに説明されるように、網膜炎、脈絡膜炎、または視神経炎の多くの型のどれをも意味する。び慢性ブドウ膜炎は、一般的に、前部、中間、および後部の構造を含む眼の全ての部分に関与する炎症と関係する。ブドウ膜炎は、関節リウマチ;全身エリテマトーデス;Sjoegren症候群;真性糖尿病;類肉腫症;強直性脊椎炎;乾癬;多発性硬化症;Vogt−Koyanagi−Harada疾患;ベーチェット病;結節性多発動脈炎;巨細胞性動脈炎;および炎症性腸疾患を含む自己免疫疾患を伴う最も一般的な眼性障害のうちの1つである。
【0044】
いくつかの実施形態では、結膜炎、眼瞼炎;角膜炎;硝子体炎(vitirits);脈絡網膜炎;およびブドウ膜炎などの炎症性の眼の状態は、全身性または局所性の感染症を伴い、そこでは、NaMPAなどの免疫抑制薬が、眼の炎症を抑制するのに局所的に使用され得る。感染症は、細菌(例えば、Borrelia種、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Neisseria gonorrheae、Chlamydia trachomatis、Pseudomonas aeruginosa、その他)、ウイルス(例えば、Herpes simplex,Herpes zoster、サイトメガロウイルス、その他)、カビ(例えば、Aspergillus fumigatus、Candida albicans、Histoplasmosis capsulatum、Cryptococcus species、Pneumocystis carinii、その他)または寄生虫薬(例えば、Toxoplasmosis gondii、Trypanosome cruzi、Leishmania species、Acanthamoeba species、Giardia lamblia、Septata species、Dirofilaria immitis、その他)によるものでありえる。
【0045】
いくつかの実施形態では、眼用溶液は、一般に、処置を必要とする対象の特定の眼障害または眼疾患を処置するのに有効な量で使用されるであろう。眼用溶液は、治療利益を達成するために治療的に、あるいは予防利益を達成するために治療的に投与することが可能である。本明細書で使用する場合、「対象」は、通常、本明細書に記述される治療剤の投与から利益を得る可能性のある任意の動物である。治療剤は、哺乳類の対象(例えば、ヒトの対象)に投与されうる。いくつかの実施形態では、治療剤は、獣医学動物の対象、例えば、特に、マウス、ラット、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、その他に投与されてもよい。
【0046】
「処置すること」または「処置」は、徴候の予防、治癒、安定化、または寛解が起こるという意図でもって対象(例えば、患者)を医学的に管理することを意味する。処置は、積極的処置、すなわち、特に病気の改善に向けられた処置;対症処置(つまり、病気を治療することよりもむしろ徴候の軽減のために設計された処置);予防処置(つまり、病気の予防に向けられた処置);および支持的処置(つまり、病気の改善に向けられた別の特定療法を補うために使用される処置)を含む。このように、「処置」は、病気または障害の発症を遅らせるか、病気または障害を抑制するかして、予防的利益を提供することを指す。
【0047】
本明細書における実施形態では、治療有効量は、処置を必要とする対象の眼に局所的に適用される。「治療有効量」は、処置される病気または状態に対する治療効果または予防利益を誘導するのに十分である個々の化合物としての、または、他の化合物との組み合わせでの治療剤の量を意味する。この語句は、用量が病気を完全に根絶しなければならないことを意味すると理解してはならない。治療有効量は、とりわけ、本方法で使われる化合物の薬理学的特性、処置される状態、投与頻度、送達方法、処置すべき個体の特徴、病気の重症度、および患者の応答に依存して変動するであろう。当業者は、本明細書に記述する処置のための組成物を処方する際には、そのような要因を考慮することができ、その方法は、十分に当業者の技術範囲内である。
【0048】
眼疾患を処置するために、眼科用組成物は、罹患した1つまたは複数の眼に局所的に適用することができる。いくつかの実施形態では、眼用製剤は、定められた容量で、例えば、約10、20、50、75、100、150、もしくは200μl、またはそれ以上で適用することができる。適用頻度は、特に、処置されている眼疾患の種類、状態の重症度、患者の年齢と性別、製剤中のNaMPAの量、および処置すべき眼組織の薬物動態学的プロファイルに依存するであろう。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、1日につき複数回、投与できる。組成物が1日につき複数回、投与されるとき、投与頻度は、1日につき2回、3回、4回、最高8回とすることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、毎日1〜4回、投与されることができる。いくつかの実施形態では、眼用溶液は、2日ごとに1回適用されることができる。いくつかの実施形態では、眼用製剤は、4日ごとに1回適用されることができる。いくつかの実施形態では、眼用製剤は、毎週1回、投与されることができる。特定の眼障害のために投与される頻度と量を決定することは、主治医の技術と判断の十分に範囲内である。
【0049】
いくつかの実施形態では、眼用製剤は、キットの形態で提供されることができる。そのように、キットは、単回用量単位として、または、単一の溶液貯槽として、容器中に眼用製剤を含むことができる。キットは、また、正確な用量を分配するためのディスペンサー、ならびに製剤の服用と使用のための指示書を含むことができる。
【0050】
今や本発明を一般的に説明したので、同じことが、以下の実施例(これは、説明のために提供され、特に指定されない限り、本発明を制限することを意図するものではない)を参照してより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0051】
6.実施例
実施例1:NaMPAの眼用溶液の調製
眼科用溶液1。4%MPA眼科用溶液、ナトリウム塩
【0052】
【数3】

調製手順。精製水(最終容積の約80%)を約80℃まで加熱した。グリセリンとミコフェノール酸をその水に加え、混合して分散させた。加熱を止めて、NaOH10%をすぐにそのバッチに加えて、MPAが溶けるまで混合した。あるいはまた、精製水(最終容積の約80%)、NaOH10%およびグリセリンを混合し、約80℃まで加熱した。加熱を止めて、それから、ミコフェノール酸を加え、混合して溶解した。精製水をバッチ容積の約95%に加え、室温に冷却しながら、組成物を混合した。pHを較正されたpHメーターで測定し、そして、pHは必要に応じてNaOH/HClで調整された。精製水をバッチ容積の100%に加え、そして、モル浸透圧濃度を測定した。適切なフィルターが、清澄化と殺菌のために使われた。
【0053】
眼科用溶液2:4%のMPA眼科用溶液、トロメタミン塩
【0054】
【数4】

調製手順。精製水(最終容積の約80%)を約80℃まで加熱した。グリセリンとミコフェノール酸をその水に加え、混合して分散させた。加熱を止めて、トロメタミンをすぐにそのバッチに加えて、MPAが溶けるまで混合した。あるいはまた、精製水(最終容積の約80%)、トロメタミンおよびグリセリンを混合し、約80℃まで加熱した。加熱を止めて、それから、ミコフェノール酸を加え、溶液を混合してMPAを溶解した。精製水をバッチ容積の約95%に加え、室温に冷却しながら、溶液を混合した。pHを較正されたpHメーターで測定し、必要に応じて、pHは、NaOH/HClで調整された。精製水をバッチ容積の100%に加え、そして、モル浸透圧濃度が測定された。フィルターが、必要に応じて、清澄化と殺菌のために使われた。
【0055】
眼科用溶液3:3%のMPA眼科用溶液、(ヒドロキシエチルモルホリン塩)。
【0056】
【数5】

調製手順。精製水(最終容積の約80%)を約80℃まで加熱した。グリセリンとミコフェノール酸を水に加えて、混合して分散させた。加熱を止めて、ヒドロキシエチルモルホリンをそのバッチにすぐに加えて、MPAが溶けるまで混合した。あるいはまた、精製水(最終容積の約80%)、ヒドロキシエチルモルホリンおよびグリセリンを混合し、約80℃まで加熱した。加熱を止めて、ミコフェノール酸を加え、溶液を混合してMPAを溶解した。精製水をバッチ容積の約95%に加え、室温に冷却しながら、溶液を混合した。pHを較正されたpHメーターで測定し、必要に応じて、pHはNaOH/HClで調整された。精製水をバッチ容積の100%に加え、そして、モル浸透圧濃度が測定された。適切なフィルターが、清澄化と殺菌のために使われた。
【0057】
実施例2:EDTAを含む眼科用製剤
以下の表は、添加剤EDTAと様々なレベルのNaClを有するNaMPAの様々な眼科用製剤を提供する。
【0058】
【表1】

上記の表は、以下で説明される効力試験を含む動物実験で使用された眼科用NaMPA製剤を示す。最初の3つの成分(NaMPA、NaCl、およびエデト酸(EDTA)2ナトリウムは、1容積当たりの重さ(w/v)における最終的な%濃度として示されている。製剤は、NaOHまたはHClを使用して、示される望ましいpHに調整され、精製水によって100mlの最終的な容積とされる。眼科用NaMPA製剤の他の容積は、 表1に概説された処方を使用することで作ることができる。「NaMPA」の下では、MPAの最終的な濃度は、括弧内に示されている。 例えば、製剤3は、1%のNaMPA製剤を指す。1%のNaMPA製剤は、有効成分として1%のMPAの最終濃度を含む。
【0059】
上記溶液は、説明した方法で作られて、さらに以下に記すように、忍容性、組織浸透性、および効力について試験された。
【0060】
実施例3:シクロスポリンと比較した、MPA含有製剤の忍容性と眼組織浸透性に関する試験
この試験の目的は、1日間1日につき8回、ニュージーランド白ウサギの眼への局所的な滴下に続いて、8つのMPA製剤の眼の忍容性と眼組織浸透性を評価することであった。8つの試験品目の製剤、陰性対照品目(2.4%グリセリン)および陽性対照品目(Restasis(登録商標)、Allergan Inc.製、(Allergan) of Irvine,CA,US)は、表2に提供される。各フェーズで使われる4つの試験品目と両方の対照品目を用いて、試験は2つのフェーズで実施された。ナイーブな動物が、両方のフェーズで使われた。表2、3および4で注記されるように、動物は処置群に入れられた。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

フェーズ1およびフェーズ2試験
24匹の雌のニュージーランド白ウサギは、The Rabbit Source(Ramona,CA,US)から入手した。動物は15〜19週令であり、第1日目は、体重が2.16〜3.23kgであった。プロトコルによれば、試験動物は、第1日目は1.5〜2.5kgの重さであるという条件であったが、8匹のフェーズ1の動物とフェーズ2のすべての動物は、指定された最大値より0.06〜0.73kg重かった。この偏差は、試験の結果に影響を及ぼすとは思われなかった。動物は、耳標とケージカードで特定された。
【0064】
動物の検疫と世話は、実験室のための標準作業手順書(SOP)の下で実行された。到着と同時に、動物は8〜10日間検疫されて、彼らが健康であったことを保証するために調べられた。収容、衛生、および環境モニタリングは、SOPの下で実行された。動物は、個々の懸架式ステンレス鋼のケージに収容された。試験室温度は、30〜48%の相対湿度で72〜74°Fであった。動物は、Teklad Certified Hi Fiber Rabbit Dietと自由に水道水を毎日摂取した。
【0065】
試験に配置する前に、各々の動物の両眼は、刺激または不快の徴候に対して全体的に評価され、観察はSOPに従って採点され、標準化データ収集シートを使って記録された。眼の刺激のはなはだしい徴候のウサギは、本試験において使用されなかった。
【0066】
試験に配置する前に、各動物は、プレ処置眼科検査(フルオレセインを用いる細隙灯)を受けた。眼所見は、SOPに従って採点され、標準化データ収集シートを使用して記録された。試験での配置の受理基準は以下の通りであった:結膜充血と腫脹に対しては、≦1のスコア;および他のすべての観測変数に対しては、0のスコア。眼は、第1日目の投薬の直前に、フルオレセインを用いた細隙灯検眼鏡検査によって再評価された。投薬の直前に、いかなる眼の異常を有する動物も置き換えられた。
【0067】
各フェーズの投薬前に、12匹の動物は、体重が測定され、ランダムに6つの試験群に配属された。各ランダム化は、修正ラテン方格法に基づいた。投薬は、以下の通りに各フェーズの第1日目に実行された:試験品目および対照品目は、投薬前に室温とした。処置群の表で特定された適切な間隔で、40μLの試験品目または対照品目は、各々の動物の両眼に較正されたピペットを使って投与された。動物は、1時間±5分離れた目標間隔で投与された用量で8回投薬された。各々の投薬後に、眼瞼は10秒間、閉じたままにされた。各用量の投与時間が記録された。
【0068】
各動物の両眼は、第1日目の最初の服用の前に、そして各々の連続した服用の後の15〜30分の目標間隔で、刺激または不快感の徴候について全体的に評価された。総括的観察が、標準化データ収集シートを使って採点され、記録された。各々の服用の直後に観察された不快感の徴候は、試験記録に書き留められた。
【0069】
眼科検査(フルオレセインを用いる細隙灯)は、第1日目(最初の服用の前に、そして、最後の服用の後で)に、各動物の両眼に対して行われた。眼所見は、SOPに従って採点され、標準化データ収集シートを使って記録された。
【0070】
動物は、1日2回、死亡率/罹病率に関して観察された。動物は、ランダム化の際と第1日目(最初の服用の前に)に重さが量られた。
【0071】
各群からの1匹の動物は、眼組織採取のためにランダムに選択された。選ばれた動物は、最終的な眼科検査の後で、市販されている安楽死溶液の静脈注射により安楽死させた。安楽死は、SOPに従って実行された。残りの動物は、可能なさらなるフェーズの試験のために動物施設に戻された。
【0072】
眼組織は、各々の安楽死した動物から以下のように採取された:房水は、各々の眼から採取され、房水量が測定された。眼球と周囲組織(涙腺と眼瞼を含む)が採取された。涙腺と眼瞼は、1つの複合体として秤量された。結膜は、各眼球から採取され、秤量された。すべての採取した組織は、液体窒素で急速凍結された。凍結後に、以下の組織は、試験動物の眼から採取された:角膜、虹彩−毛様体複合体(iris−cilliary body complex)、水晶体、硝子体液、脈絡膜−網膜複合体、および強膜。組織は、SOPに従って採取された。群B〜EとH〜Kの眼球から解剖された眼組織は、秤量され、標識化され、凍結保存(−70℃)された。群B〜EとH K動物のすべての眼組織は、それから、MPA濃度の分析のためにドライアイス上でIASに送られた。群FとLの動物(Restasis(登録商標)投薬群)の眼組織は、BTCで凍結保存(−70℃)された。
【0073】
フェーズ3試験
方法は、フェーズ1とフェーズ2に対して上で提示されたものと類似していた。B〜F群からの各1匹の動物が、眼組織採取のためにランダムに選択された。選ばれた動物は、最終的な眼の検査の後で市販されている安楽死溶液の静脈注射により安楽死させた。安楽死は、SOPに従って実行された。残りの動物は、さらなるフェーズの試験のために動物施設に戻された。
【0074】
眼組織は、各々の安楽死した動物から以下のように採取された:房水は、各々の眼から採取され、房水量が測定された。眼球と周囲組織(涙腺と眼瞼を含む)が採取された。涙腺と眼瞼は、別々に秤量された。結膜は、各眼球から採取され、秤量された。すべての採取した組織は、液体窒素で急速凍結された。凍結後に、以下の組織は、B〜E群の動物の眼から採取された:角膜、虹彩−毛様体複合体(iris−cilliary body complex)、水晶体、硝子体液、脈絡膜−網膜複合体、および強膜。組織は、SOPに従って採取された。採取された眼組織は、秤量され、標識化され、そして、MPA濃度の分析のためにドライアイス上で輸送されるまで凍結保存(−70℃)された。
【0075】
フェーズ1とフェーズ2試験の結果
1%のMPAヒドロキシエチルモルホリン塩製剤を投薬された(フェーズ1)眼は、全般的な眼科検査で見られた充血と結膜浮腫を有した。これらの眼の充血と結膜浮腫は、Restasis(登録商標)を投薬された眼で見られる刺激に類似していた。2%のMPAヒドロキシエチルモルホリン塩製剤を投薬された(フェーズ2)眼は、用量投与後ただちに激しい急性の不快感を示した。しかし、これらの眼は、全般的な眼科検査では、充血またはうっ血なしで正常に見えた。
【0076】
フェーズ3試験の結果
すべての製剤は、適用後になされた全体的観察によれば、3%のMPAヒドロキシエチルモルホリン塩溶液(E群)を除いては、忍容性が良好であった。両方のE群の動物は、試験品目の滴下直後に、中程度の眼の不快感(瞬き、眼を閉じ続けること、および眼の足掻き)の徴候を示した。E群のウサギ1650番の左眼は、最後の3つの試験品目の滴下後に、全体的観察において眼の刺激(充血、結膜浮腫、および排出物)の徴候を示した。同じ眼は、試験の終りまでに地図状表在性角膜潰瘍を発症した。障害は、薬剤投与と関連している上皮毒性と一致した。
【0077】
眼組織のMPAレベル
上記したように、MPAまたはシクロスポリンを服用する群からの1匹の動物が、眼組織採取のためにランダムに選択された。採取された眼組織は、房水、結膜、角膜、眼瞼、虹彩−毛様体、涙腺、水晶体、網膜/脈絡膜、強膜、および硝子体液であった。涙腺は、フェーズ1とフェーズ2のシクロスポリン処置動物だけから採取され、そして、水晶体は、MPA処置動物だけから採取された。選択された動物は、最終的な眼科試験(それは8用量の後の約1時間)の後、市販の安楽死溶液の静脈注射により安楽死させた。
【0078】
一般に、以下の観察がなされた:(1)MPA濃度は、前部、外部の眼組織でより高く、後部、眼内組織でより低い;(2)製剤間では、眼の生物学的利用能に大きな違いがなかった;そして(3)適用溶液中のMPA濃度の増加により、いくつかの組織ではMPA濃度の増加が見られたが、他の組織では見られなかった。
【0079】
1つの外部の眼組織(角膜)と1つの眼内組織(虹彩−毛様体)でのMPAの平均組織濃度は、表5で示される。平均MPA濃度は、角膜で約20〜70mcg/g(6.4〜22.4μM)、虹彩/毛様体で0.50 5.0mcg/g(0.16 1.6μM)であった。
【0080】
【表5−1】

【0081】
【表5−2】

【0082】
【表5−3】

実施例4:シクロスポリンと比較したNaMPA含有製剤の浸透性に関する試験
この試験の目的は、1日につき2回、4回または8回の頻度で14日間、ニュージーランド白ウサギの眼への局所的な滴下の後で、3つの試験品目製剤の薬物動態学と眼への毒性を評価することであった。3つの異なる試験品目製剤、陰性対照品目(2.4%グリセリン)、および陽性対照品目(Restasis(登録商標)、Allergan Inc.製、Irvine、CA、US)は、表6に提供される。
【0083】
【表6】

動物は表7にみられるように処置群に割り当てられた。
【0084】
【表7】

試験品目と陰性対照は、室温に4日間保存し、それから冷凍保存(2〜8℃)に移した。陽性対照は、試験の間中、室温で保存した。
【0085】
44匹の雌のニュージーランド白ウサギは、The Rabbit Source(Ramona,CA,US)から入手した。動物は13〜21週令であり、第1日目は、体重が1.81〜2.90kgであった。動物の検疫と世話は、生物学的防除操作手順(BCOP)に従って実行された。到着と同時に、動物は10日間検疫されて、彼らが健康であったことを保障するために調べられた。収容、衛生、および環境モニタリングは、BCOPの下で実行された。動物は、個々の懸架式ステンレス鋼のケージに収容された。試験室温は、40〜70%の相対湿度で63〜76°Fであった。動物は、Teklad Certified Hi Fiber Rabbit Dietと自由に水道水を毎日摂取した。
【0086】
試験に配属される前に、各々の動物の両眼は、刺激または不快感の徴候について全体的に評価された。観察は、実験室標準作業手順書(SOP)に従って採点され、標準化データ収集シートを使って記録された。試験に配属される前に、各動物は、前処置の眼科検査(フルオレセインによる細隙灯)を受けた。眼所見は、標準化データ収集シートを使用するSOPに従って採点されて記録された。試験への配属の受理基準は以下の通りであった:結膜充血と腫脹に対しては、≦1のスコア;および他のすべての観察変数に対しては、0のスコア。眼は、第1日目に投薬直前にフルオレセインを用いた細隙灯検眼鏡検査によって再評価された。
【0087】
投薬前に、44匹の動物は、重さが量られ、ランダムに11の試験群に割り当てされた。ランダム化は、修正ラテン方格法に基づいた。処置群は、表7で示される。
【0088】
試験は、フェーズ1で処置された群B〜Gとフェーズ2で処置された群AおよびH〜Kを用いて、2つのフェーズで実施された。15匹の最初の試験動物(フェーズ1群の5匹とフェーズ2群の10匹)は、ランダム化の後、発現した結膜充血により置き換えられた。フェーズ2で使われるすべての動物は、重さが量られて、フェーズ2投薬の直前に群に再ランダム化された。
【0089】
投薬は、以下の通りに各フェーズの1〜14日目まで実施された:処置群の表で規定した適切な間隔で、試験品目または対照品目の40μLを、各々の動物の両眼に較正ピペットを使って投与した。各々の投薬後に、眼瞼は10秒間、閉じられたまま保持された。各々の用量の投与時間が記録された。
【0090】
用量は、毎日2回(7または8時間間隔で)、1日4回(2時間間隔で)、または毎日8回(1時間間隔で)投与された。プロトコルは、用量が、毎日2回(8時間±5分間隔で)、1日4回(2時間±5分間隔で)、または毎日8回(1時間±5分間隔で)投与されることを規定した。フェーズ1では、すべての用量は、指定された時間間隔内で投与された。フェーズ2では、用量は以下の通りに指定された間隔外で投与された:1〜14日目に、2回目の用量は、すべての群Hの眼に最初の投薬の7時間±5分後に与えられた。6日目に、6回目の用量が、1〜3分遅れて、17の眼(群A、JまたはK)に与えられた。8日目に、第2の用量が、1分遅れて2つの眼に与えられ、4回目の用量が、3分遅れて8つの眼(群I)に与えられ、6回目の用量が、1〜2分遅れて16の眼(群JまたはK)に与えられ、7回目の用量が、1〜4分遅れて18の眼(群A、JまたはK)に与えられ、そして、8回目の用量が、17分遅れて20の眼(群A、JまたはK)に与えられた。第9日目に、4回目の用量が、14分遅れて8つの眼(群I)に与えられ、6回目の用量が、1〜2分遅れて6つの眼(群K)に与えられ、7回目の用量が、1〜3分遅れて10の眼(群JまたはK)に与えられ、そして、8回目の用量が、1〜2分遅れて14の眼(群JまたはK)に与えられた。14日目に、2回目の用量が、1分早く8つの眼(群I)に与えられ、そして、3回目の用量が、1分早く14の眼(群AまたはK)に与えられた。投薬間隔のこれらの偏差は、試験の結果に最小の影響を及ぼすと思われる。
【0091】
1〜14日間、各々の動物の両眼は、その日の最初の服用の前とその日の最後の服用の15〜30分後に、痒みまたは不快の徴候に関して全体的に評価された。各用量の投与直後に眼の不快感の徴候と持続時間が記録された。全体的な観察は、SOPに従って採点され、標準化データ収集シートを使って記録された。
【0092】
眼科検査(フルオレセインを用いる細隙灯)が、1日目の最初の服用の前と、7日目および14日目の全体的眼観察の直後に、すべての眼に関して行われた。眼所見は、SOPに従って採点されて、標準化データ収集シートを使って記録された。
【0093】
動物は、1日2回、死亡率/罹病率に関して観察された。動物は、1日目(最初の服用の前に)と14日目(安楽死の前に)のランダム化の際に重さが量られた。
【0094】
血液サンプルは、14日目に安楽死の前に、すべての動物から採取された。動物は、0.1mL/kgでケタミン/キシラジン・カクテル(77mg/mLのケタミン、23mg/mLのキシラジン)の静脈注射で麻酔され、そして、7mLの血液が心臓穿刺により採取された。血液採取の時間が記録された。各サンプルは、最終的な服用の1時間±15分後に採取された。血液は、ラベンダー色のキャップのチューブに採取し、10秒間、ゆり動かして血液とエチレンジアミン4酢酸の十分な混合を促進し、次いで、凍結保存されるまで氷の上に置かれた。サンプルは、それから薬物動態学的分析のために輸送された。血液採取の後で、動物をSOPに従って、市販されている安楽死溶液の静脈注射により安楽死させた。
【0095】
1試験群につき2匹の動物は、眼組織の組織病理学的評価のために、ランダムに選択された。組織は、組織病理学的評価のために以下の通りに採取された:眼球除去の前に、両眼は、3〜5mLの平衡塩類溶液(BSS)で洗浄された。両方の眼球は、それから摘出された。涙腺および眼瞼を含む周囲組織が、1つの複合体として採取され、10%の中性緩衝ホルマリン中に入れられた。眼球は、Davidson溶液に約24時間、保存されて、それから70%のエタノールへ移された。眼球がDavidson溶液とエタノールに置かれた時間を記録した。眼球と涙腺/眼瞼が組織病理学的評価のために提出された。
【0096】
試験群につき残りの2匹の動物が、眼組織の薬物動態学分析のために使われた。薬物動態学分析のための組織は、以下の通りに採取された:眼球除去の前に、両眼は、3〜5mLのBSSで洗浄された。房水が各眼から採取され、房水の容積が測定された。両方の眼球と、涙腺および眼瞼を含む周囲組織が採取された。涙腺と眼瞼は、別々に秤量された。結膜は、各眼球から採取されて、秤量された。採取された組織は、すべて、液体窒素中で急速凍結された。凍結後に、以下の組織が、各眼球から採取された:角膜、虹彩/毛様体(cilliary)複合体、硝子体液、網膜/脈絡膜複合体、および強膜。組織は、SOPに従って採取された。眼球から解剖された組織は、重さが量られ、標識化され、そして凍結保存(−70℃)された。すべての眼組織は、MPA濃度の分析のために、ドライアイス上で輸送された。
【0097】
14日間にわたる4%のNaMPAまたは0.05%のシクロスポリンの局所投与(1日につき8回)の後で、MPAとシクロスポリンのレベルは、図1で示すように、異なる眼組織で測定された。スケールが対数であることに注意すべきである。高い薬物濃度は、前部または「眼の前部」構造(例えば、房水、結膜、眼瞼)に存在した。さらに、MPAの有意なレベルが、より後部または「眼の後部」組織(例えば、硝子体、網膜/脈絡膜)でも見られた。さらに、MPAが親水性および疎油性であり、そのために、角膜に浸透することが期待されないので、NaMPA製剤による局所投与の後の前部および後部眼組織へのMPAの浸透のこうした高いレベルは、予想外のことである。前部または後部であるにせよ、MPAのこうした組織でのレベルは、眼の炎症性疾患に対して薬理活性を有することが期待される。
【0098】
NaMPA製剤とシクロスポリンの間での相対的な眼組織浸透を比較し、活性薬物(すなわち、4%のNaMPA対0.05%のシクロスポリン)の濃度の違いを考慮して、達成された組織濃度の比率が図2に示される。一般に、これらのデータは、多くの眼組織(涙嚢、強膜、房水、虹彩/毛様体、および網膜/脈絡膜)では、局所投与後の眼内浸透が、シクロスポリンによるよりもNaMPA製剤で大きいことを示す。1日の急性試験では、MPAの組織浸透は、図3A、3Bおよび3Cで示すように、眼科用製剤(1%、2%、4%のNaMPA)においてNaMPAの濃度に依存することが観察された。
【0099】
実施例5:C57BL/6マウスのスコポラミン誘発ドライアイに関する試験
このドライアイモデルは、引用により本明細書に取り込まれるDe Paivaら、2006,Investigative Ophthalmology & Visual Science 47(7):2847−2856に記述されたモデルに基づいている。実験設計は、表8に要約される。試験は、各々10匹の雌のC57BL/6マウスの7つの群からなるものであった。0日目から初めて、群1〜6のマウスは、対象品目または試験品目の局所的な両側の眼内(OU)投与により、少なくとも2時間の間隔で、1日4回(QID)処置された。具体的には、群1〜6は、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%、または2.0%でのNaMPA;デキサメタゾン(0.1%);またはRestasis(登録商標)(0.05%のシクロスポリン)で投薬された。群7のマウスは、未処置の対照として用いられた。3日目に、スコポラミンパッチが、マウスの尾に配置されて、その後一日ごとに(Q2D)置き換えられた。3日目から12日目までは、マウスは、高容量気流(参照:下記の環境ストレスの章)の環境に維持された。剖検は、13日目に実行された。
【0100】
【表8】

NaMPA眼科用製剤。0.5%、1%および2%のNaMPA(w/v)を含む眼科用製剤が使用された(表1に従って調製)。すべてのNaMPA製剤は、2〜8℃で冷凍保存されて、光から保護された。
【0101】
陰性対照。陰性対照溶液は、NaMPA溶液を製剤化するのに使用されたビヒクルと同じあったが、NaMPAを欠いている。この溶液は、「ビヒクル」と呼ばれる。ビヒクルは、2〜8℃で冷凍保存され、光から保護された。
【0102】
陽性対照。最初の陽性対照は、0.1%デキサメタゾン(デキサメタゾン眼科用懸濁液USP、Henry Schein(Melville,NY)カタログ番号1033542)の眼科用懸濁液であった。デキサメタゾンは、メーカーの指示通りに制御された室温(20〜25℃)に保存された。
【0103】
第2の陽性対照は、0.05%のシクロスポリン(Restasis(登録商標);Allergan,Inc.,Irvine,CA)の眼科用エマルジョンであった。Restasis(登録商標)は、メーカーの指示通りに制御された室温(20〜25℃)に保存された。
【0104】
動物。到着時それぞれ16〜25gの合計78匹の雌のC57BL/6マウス(Mus musculus)は、試験で使用するためにCharles River Laboratories(Hollister,CA)から購入された。
【0105】
用量投与。投薬のそれぞれの日に(0〜12日目)、NaMPA製剤または対照製剤は、1日につき4回、処置(5μL/眼/用量、OU、QID)の間隔が最低2時間で、各々の動物の両眼に局所的に投与された。具体的には、群1〜6は、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%または2.0%のNaMPA;デキサメタゾン(0.1%);またはRestasis(登録商標)を服用した。群7のマウスは、未処置対照として用いられた。
【0106】
ドライアイの誘発。両側の、短期の、可逆的なドライアイが、スコポラミンの皮膚パッチ投与によって、3日目から12日目にかけて高容量気流の環境でマウスを維持することと組み合わせて、マウスで誘発された。
【0107】
脱毛。最初のスコポラミン服用(3日目)の前に、尾の付け根のあたりの毛が脱毛剤で除去された。
【0108】
スコポラミンの服用。スコポラミンパッチは、経皮性のスコポラミンパッチ(Henry Scheinのカタログ番号2482592)として入手した。フルサイズのパッチは、各々1.5mgのスコポラミンを含む;したがって、各々の服用のために、個々のパッチは2つに切られ、そして、半分のパッチ(〜0.75mg)が、各々の動物に適用された。
【0109】
投与のそれぞれの日に、マウスを簡単に拘束した。3日目から開始し(すなわち、NaMPAまたは対照製剤での眼の処置の4日目)、その後1日ごとに繰り返し(Q2D)、半分の経皮性のスコポラミンパッチは、尾に配置された。各々の適用後に、パッチは動物によって取り除かれるのを防ぐためにVetwrap(登録商標)で巻かれ、最高48時間そのままにした。パッチの適用後、動物は、尾とVetwrap(登録商標)の状態を含むどんな副作用に対してもモニタリングされた。
【0110】
環境ストレス。スコポラミン服用に続いて、マウスは、高容量気流(すなわち、層流フードで送風機が1の設定の気流)の環境下に、第3日目から12日目にかけて最大8時間/日置かれた。
【0111】
臨床観察。臨床観察(毒性効果または1つもしくは複数の薬理的効果の明白な徴候を含む)は、順化と処置期間の間に各々の動物について1日1回少なくとも実行された。すべての異常な臨床徴候は記録された。
【0112】
体重。すべての動物は、最初の試験/対照品目の服用前に量られ、その後、週2回量られ、そして剖検の際に量られた。
【0113】
眼科学。試験に含ませる前に、各々の動物の両眼は、検査された。予備投薬評価は、全体的な眼の観察;細隙灯角膜試験;そして、フェノールレッド綿糸涙液検査法を含んでいた。眼性刺激または異常の徴候を有するマウスは、試験に入れられなかった。試験/対照品目の服用の開始後、角膜試験が、8日目を除いて6日目から12日目にかけて1日に1回(QD、OU)実施された;涙液検査は、1日目から毎日実施された(QD、OU)。
【0114】
全体的な眼の観察。各々の動物の両眼は、刺激または不快の徴候に関して評価された。何らかの異常が観察されたら、そのような徴候は、標準化データ収集シートに記録された。
【0115】
細隙灯角膜試験。各々の動物の両眼は、局所適用されたフルオレセインを使って、細隙灯眼科検査により評価した。フルオレセイン染料は、角膜の表面を調べるのに用いられ、そして採点された。
【0116】
剖検。動物は、剖検の直前に安楽死させた。剖検で、各々の動物からの両眼は、眼球、眼瞼、涙腺、および結膜を含んで切除された。これらの組織は、10%の中性緩衝ホルマリンで固定された。
【0117】
病理学。固定の後で、顕微鏡評価は、各々の動物から両眼に対して行われた。少なくとも2つの切片レベルが、組織病理学的に各々の眼に対して調べられた。組織を脱水し、パラフィンに包埋し、連続切片(3〜5μmの厚さで)とし、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。委員会認定の獣医病理学者は、光学顕微鏡検査によりスライドを評価した。眼の全ての部分の詳細で完全な組織病理学的評価は、角膜、結膜と角膜の上皮(杯細胞を含む)、および涙腺への特別な注意をはらって実行されて、ドライアイ、角膜炎または角膜の他の変化(もし存在するならば)と一致する組織病理を確認した。
【0118】
眼は、連続的に切片化されて、調べられた。代表的な角膜は、0は正常、1は最小、2は軽度、3は中程度、そして、4は重度の0〜4のスケールに基づいて採点された。各々の角膜について、以下のパラメーターの各々にスコアが割り当てられた:(a)角膜浮腫(角膜実質の浮腫の存在);(b)表皮の厚み(基底細胞から表層細胞まで数えられた表皮層の上皮細胞の数);および(c)表皮細胞浮腫(上皮内細胞浮腫の存在)。表皮細胞の厚みに対するスコアは、所定の動物の集団のために存在する細胞層の平均数を表し、それは、この分析において2〜6の範囲であった。したがって、このパラメーターに対する最大のスコアは、4を超える場合がある。
【0119】
統計分析。計算と記述統計学(平均、標準偏差)は、Excel(登録商標)を使って実行された(Office 2007;Microsoft,Redmond,WA)。必要に応じて、推測統計学分析は、Excel(登録商標)またはPrism(登録商標)を使って実行された(バージョン5.01;GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)。0.05未満(P<0.05)のp値は、統計的に有意であると考えられた。
【0120】
連続的正常データ。2群より多い群では、等分散に関するBartlett検定が、複数回投与群からのデータの均一性を決定するのに用いられた。分散が均一である場合は、、一元配置分散分析(ANOVA)が使われ、そして、ANOVAが有意であるならば、Tukeyの多重比較事後検定が続いた。非均一な分散に対しては、Kruskal−Wallis(ノンパラメトリック)検定が使われ、そして、Kruskal−Wallis検定が有意であるならば、Dunnのポスト検定が続いた。
【0121】
カテゴリーデータ。組織病理学障害データは、研究病理学者によって分析された。必要に応じて、組織病理学重症度のスコアは、ノンパラメトリック検定を使って、統計学的に分析された。
【0122】
結果。眼科用NaMPA製剤は、この試験において使われる最大濃度においてでさえ、13日間1日4回局所的に投与されるとき、何らの顕著な眼性刺激または副作用の臨床徴候を生じなかった。したがって、これらの眼科用NaMPA製剤は、ドライアイの臨床徴候が存在した時と同様に、ドライアイ誘発の前に(すなわち、通常の条件下で)、マウスで十分に忍容性であった。
【0123】
組織病理学分析(参照:表9)では、2%のNaMPA群での角膜損傷の減少があった。この効果は、角膜浮腫対ビヒクル対照、そして、未処置群に対する上皮細胞の厚さに関して、統計的有意差(p<0.05)に到達した。上皮細胞浮腫に関しては、2%のNaMPA群における平均スコアは、ビヒクル対照群におけるそれらの約63%まで低下したが、この減少は統計的有意差に到達しなかった。全体的に見て、2%のNaMPA群における組織病理学的所見の減少は、生物学的に有意であると考えられた。
【0124】
陽性対照のデキサメタゾンは、また、角膜に対する損傷を減少させた。この効果は、ビヒクル対照に対する角膜浮腫と上皮細胞の厚み、そして、未処置群に対する角膜浮腫、上皮細胞の厚みおよび上皮細胞浮腫に関して、統計的有意差(p<0.05)に達した。しかし、副作用に関して、デキサメタゾン処置動物は、試験の終り(13日目)までに、他の群と比較して、約20%の体重減少を経験した。第2の陽性対照(Restasis(登録商標))は、測定パラメーターのどれによっても、本試験で予防効果を有しなかった。
【0125】
2%のNaMPA眼科用製剤は、ドライアイのスコポラミン誘発モデルで有効であることが証明された。この有効性は、組織病理学分析に基づき、そこでは、陰性対照に対する角膜浮腫と上皮細胞の厚みの統計的に有意な減少が観察された。また、1%のNaMPA群について、組織病理学的スコアの減少に向かう傾向は、用量応答効果を示唆した。したがって、このデータは、眼科用NaMPA製剤は、ドライアイのラットモデルで眼組織病理を減少させることに有効であり、ドライアイの徴候が存在するときでも十分に忍容性であることを示す。このデータは、眼科用NaMPA製剤は、ヒトでのドライアイの処置に対する可能性があることを証明する。
【0126】
【表9】

実施例6:Con−A誘発ドライアイを用いた試験
NaMPA含有眼用溶液の活性を評価するために、ドライアイは、コンカナバリンA(Con−A)の涙腺への両側注入によってウサギで誘発された。眼用溶液による処置は、以下に記載されるとおりである。眼検査、臨床試験、および組織病理学は、ドライアイの処置効果を評価するために実施された。
【0127】
実験設計は、表10に要約される。試験は、各々6匹の雄のNZWウサギの7群からなるものであった。群割当ての前に、動物は、獣医学的および眼科学的な検査により調べられた;どんな異常な徴候のウサギも除外された。群1〜5の動物は、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%、または2.0%(w/v)でのNaMPA;または0.05%のシクロスポリン(Restasis(登録商標))で投薬された。これらの動物は、0〜14日目にかけて、それぞれのNaMPA/対照溶液の最後の2用量だけが投与された第8日目を除き、両側の眼への局所適用(OU点眼)により1日4回(QID;各服用の間隔は少なくとも2時間)服用された。群6の動物は、9〜14日目に、OU QID 0.1%のデキサメタゾン目薬で投薬された。群7のウサギは目薬投与を受けないで、未処置の対照として用いた。8日目に、すべての動物(群1〜7)は、副涙腺への注射により投与されたCon Aの眼につき、300μg(50μLで)が両側の眼に投薬された(参照:下記のCon A注射手順)。
【0128】
臨床観察は、局所的な眼への投薬の開始前(0日目前)に、1日1回記録された;NaMPAまたは対照溶液(0〜16日目)の第1および第4の毎日の服用の前後に直ちに記録された;そして、犠牲(17日目)の前に記録された。異常(特に眼性炎症または刺激)のどんな徴候でも記録された。涙液層破壊時間試験(TBUT)は、以下の通りに実施された:NaMPAまたは対照溶液での服用の開始前の連続した3日間(−2日目から0日目)の間;Con A注射の前の最初の週(1〜7日目)の間の3回;そして、Con A注射の後の間隔(9〜17日目)で1日1回。TBUTは、Con A注射の日(8日目)には、行われなかった。体重は、局所的な眼への投薬前に記録された;処置期間中は毎週2回記録された(0〜16日目);そして、犠牲(17日目)の前に記録された。17日目に、ウサギを安楽死させた。
【0129】
【表10】

コンカナバリンA(Con A、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,カタログ番号C5275)が、この試験で使用された。Con Aは、−20℃で保存された。
【0130】
0.5%、1%、および2%のNaMPA(w/v)を含む眼科用製剤、(表1に従って調製される)が、この試験で使用された。すべてのNaMPA溶液は、2〜8℃で冷凍保存し、光を遮断した。
【0131】
陰性対照。最初の陰性対照は、NaMPA溶液を製剤化するのに使用されるビヒクルと同じであったが、NaMPAを欠いている。この対照溶液は、「ビヒクル」(またはいくつかの例では「V−NE」)と呼ばれた。ビヒクルは、2〜8℃で冷凍保存し、光を遮断した。
【0132】
第2の陰性対照は、リン酸緩衝食塩水(PBS、MP Biomedicals、Solon、OH、カタログ番号1860454;マグネシウムとカルシウムのないDulbecco処方)であった。PBSは、2〜8℃で冷凍保存された。
【0133】
陽性対照。最初の陽性対照は、0.1%デキサメタゾン(USP、Henry Schein、Melville、NY、カタログ番号1033542)の眼科用懸濁液であった。デキサメタゾンは、メーカーの指示通りに制御された室温(20〜25℃)に保存された。第2の陽性対照は、0.05%のシクロスポリン(Restasis(登録商標),Allergan,Inc.,Irvine,CA)の眼科用エマルジョンであった。Restasis(登録商標)は、メーカーの指示通りに制御された室温(20〜25℃)に保存された。
【0134】
用量の調合。製剤化と服用で使用する前に、無菌のPBSのpHは、〜6.8に調整されて、2−μmフィルターを通してフィルター滅菌された。pHが調整されたPBSを、使用前に実験台上で室温(最大1時間)に加温した。Con Aは、処方され、6mg/mLの最終濃度に無菌のPBS(pH6.8)で希釈された。Con Aの服用溶液は、使用の前に物理的な状態(濁っている、透明である、その他)について検査されたが、ろ過はされなかった。各用量の投与直前に、Con A溶液は、溶液/懸濁液がよく混合されることを確実とするために穏やかにひっくり返された。
【0135】
動物。合計46匹の雄のNZWウサギ(Oryctolagus cuniculus)(到着時それぞれ2.4〜2.6kg)は、試験で使用するためにMyrtle’s Rabbitry(Thompsons Station、TN)から購入された。
【0136】
最終的な選択と群の割当て。順化後に、そして、用量の投与開始前に、体重は記録され、そして、動物は、全体的な眼の観察、細隙灯角膜試験、およびTBUTを含む前処置の獣医学的および眼科的な評価に付された。評価後に、動物は、試験で使用するために解放された。望ましい重さの範囲にいた動物のうちの42匹が選択されて、各々6匹のウサギの7つの試験群に任意に割り当てられた。動物は、体重と通常の臨床的および眼の症状に基づいて選択された。また、動物は、3つのベースライン試験期間の間に「正常範囲内」および「より少ない変数」のベースラインTBUT値に基づく試験に含まれるように選択された。
【0137】
用量の投与。群1〜5の動物は、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%、または2.0%(w/v)でのNaMPA;または0.05%のシクロスポリン(Restasis(登録商標))で投薬された。これらの動物は、両側の眼への局所適用(OU点眼)により、1日4回(QID;各服用の間隔は少なくとも2時間)、0〜16日目にかけて、それぞれのNaMPA/対照溶液の最後の2用量だけが投与された第8日目を除き、服用された。群6の動物は、9〜14日目に、OU QID 0.1%のデキサメタゾン目薬で投薬された。群7のウサギは目薬投与を受けないで、未処置の対照として用いた。
【0138】
前処置眼科検診。動物は、既存の眼の病態を有する動物を除外するために、最初の用量を投与する前に、スクリーニングされた。すべての動物が、眼科的に正常範囲内にあることが分かり、試験に編入させるために開放された。
【0139】
ドライアイの誘発。両側の、短期の、可逆的なドライアイは、涙腺にCon Aを注射(8日目に)することによって、NZWウサギで誘発された。
【0140】
Con A注射手順。ウサギは、ケタミン:キシラジン(45:5のmg/kg)で短時間、麻酔した。Con Aは、1つの眼当たり300μg(6mg/mLで50μL)の用量で、各々の動物の両眼に注射された。Con Aは、30ゲージ(1.5インチ針)を有する1mlのツベルクリン注射器を用いて、結膜嚢を通して涙腺の両方に注射された。針はわずかに引っ込められた下眼瞼に沿った鼻眼角から1cmで約15mmの深さに、眼窩下のスペースに導入された。眼窩の内側の下方に、それから眼の後の周囲に注射した。投与方法は、試験の間中、首尾一貫していた。
【0141】
臨床観察。臨床観察(毒性効果または1つもしくは複数の薬理的効果の明白な徴候を含む)は、局所的な眼への投薬開始の前に1日1回記録された;試験品目または対照品目の第1および第4の毎日の服用の直前または直後に記録された(0〜14日目);そして、犠牲(15日目)となる前に記録された。異常のどんな徴候(特に眼の炎症または刺激)も記録された。
【0142】
体重。すべての動物は、最初の局所的な眼への用量の投与前に量られ、その後、週2回量られ、そして犠牲の際に量られた。デキサメタゾンを投薬したウサギの重さを必要に応じてより頻繁に量り、可能な減量を評価した。
【0143】
眼科学。試験に含ませる前に、各々の動物の両眼を検査して眼が正常な範囲内にあることを確かめた。予備投薬評価(1日目)は、全体的な眼の観察;細隙灯角膜試験;そして、TBUTを含んでいた。異常な前区を有するウサギは、試験に含まれなかった。
【0144】
0〜16日目の間、全体的な眼の観察は、臨床観察(すなわち、1日に最高4回)の一部として実行された。0〜17日目の間、TBUT試験は、以下の通りに実施された:NaMPAまたは対照品目での服用の開始前の連続した3日間(−2日目から0日目まで)の間;Con A注射の前の週(1〜7日目)の間の3回;そして、Con A注射の後(9〜17日目)で1日1回。TBUT試験は、Con A注射の日(8日目)には、行われなかった。TBUT試験は、局所的投薬の前に行われた。
【0145】
全体的な眼の観察。各々の動物の両眼は、刺激または不快の徴候について評価された。何らかの異常が観察されたら、そのような徴候は、標準化データ収集シートに記録された。
【0146】
涙液層破壊時間試験(TBUT)。TBUT値は、眼球表面中に均一に2%の無菌フルオレセインナトリウムの5μLをしみ込ませた後に測定された。眼瞼はそれから一度手を使って瞬きさせ(涙液層で均等にフルオレセインを分配するために)、そして、眼瞼を開いたままに保った(さらに瞬くことを防ぐために)。各々の眼は、コバルト色の明るい照明の下で照らされ、そして、細隙灯は、1つ以上の暗い穴または線が眼を覆うフルオレセイン涙液層に現れるのに必要な時間(秒で)を測定するのに使用された。
【0147】
統計分析。C57BL/6マウスでの「Studies on Scopolamine Induced Dry Eye(スコポラミンによって誘発されたドライアイの試験)」で記述されるように、すべての統計分析が行われた。
【0148】
結果:この実施例では、Con−A誘発ドライアイモデルは、ウサギで実行された(Nagelhoutら、2005,Journal of Ocular Pharmacology and Therapeutics 21(2):139−148)。ドライアイの臨床測定は、涙液層破壊時間(TBUT)アッセイを用いて行われた。ビヒクル、NaMPA、およびRestasis(登録商標)による局所処置は、0日目から17日目まで行われ、一方、デキサメタゾンが9日目から17日目まで与えられた。1日に2回投薬される1日(8日目)を除いては、処置は1日4回実施された。ドライアイ誘導は、コンカナバリンA(Con A)の両側涙腺注射によって、8日目に開始された。
【0149】
眼科用NaMPA製剤は、17日間局所投与されるとき、この試験で使われる最大濃度においてでさえ、何らの顕著な眼性刺激や不利な臨床徴候を生じなかった。
【0150】
Con A注射の後で、ドライアイは、11日目に始まり、試験の終わり(17日目)まで続くビヒクル群でのTBUT値の減少で示されるように、誘発された。14日目から17日目まで、TBUT値は、ビヒクル群と比較して、2%のNaMPAと1%のNaMPA群で有意に増加した(P<0.05からP<0.001)。15日目には、TBUT値は、ビヒクル群と比較して、0.5%のNaMPA群で有意に増加した(P<0.05)(表11と図4)。
【0151】
同様に、14日目から17日目においては、TBUT値は、ビヒクル群と比較して、Restasis(登録商標)とデキサメタゾン群では、有意に増加した(P<0.01からP<0.001)(表12と図5)。このデータは、NaMPA眼科用溶液のすべての3つの濃度の局所投与が、ドライアイの誘発の間、TBUT値の有意な改善をもたらしたことを示す。14日目〜17日目の期間で注目されるTBUT値の増加は、NaMPA群では用量応答性であり、17日目までにCon A注射の前に観察されるベースライン値に戻るか、あるいは近づいた。そのうえ、2%と1%のNaMPA群に対して14日目〜17日目にわたって観察されたTBUT値の改善は、2つの陽性対照、デキサメタゾンおよびRestasis(登録商標)について見られるそれと類似していた。
【0152】
これらの結果は、眼科用NaMPA製剤が、このモデルでのドライアイのTBUTパラメーターを修正する際に非常に活性であり、眼科用ステロイド、デキサメタゾンと同様にヒトのドライアイ処置のために承認された処方薬(Restasis(登録商標))に対する有効性と等しいことを示す。TBUTの測定は、ヒトのドライアイの診断のために認められた臨床基準である(Report of the International Dry Eye Workshop(DEWS).The Ocular Surface.April 2007,Vol.5,No.2 pg.65−152)。TBUTは、涙液層の安定性の標準的な測定値であり、そして、それは今度はムチンと脂質を含む涙液層の組成に関連がある。涙液層の時期尚早な離散(それは減少したTBUT値によって反映される)は、ドライアイの任意の形態の特徴でもある(Kallarackalら、Eye(2002)16:594−600)。涙液層の質の異常は、水性涙の産生量が標準的であるときにさえ、徴候的なドライアイをもたらす(Lempら、1971,Trans Am Acad Ophthalmol Otolaryngol 75:1223−1227)。したがって、TBUTの変化は、分離の際でさえ、ドライアイで臨床的に重要である。NaMPA処置によるTBUT値の改善は、したがって、ヒトのドライアイでの有効性を予測するものである。このドライアイモデルに効果的であることに加えて、眼科用NaMPA製剤は、通常の条件下およびドライアイの徴候が存在した期間(すなわち、TBUTの減少)、動物は十分に忍容性であった。このことは、眼科用処置に対する重要な考察であり、そこでは、局所的薬物の忍容性は、ヒトのドライアイの症例がそうであるように、眼性炎症疾患で減少する場合がある。まとめると、このデータは、ヒトでのドライアイの処置における眼科用NaMPA製剤の可能性を示す。
【0153】
【表11】

【0154】
【表12】

実施例7:Lewisラットでのウシ眼性メラニン誘発ブドウ膜炎を用いる試験
この試験は、ブドウ膜炎の処置の眼用溶液を含むNaMPAの活性を評価した。ブドウ膜炎は、動物にウシの眼のメラニンを注射することによって、Lewisラットで誘発された。処置は、下記のようにされた。眼の検査と組織病理学は、ブドウ膜炎に関しての処置効果を評価するために実施された。
【0155】
実験設計は、表13に要約される。試験は、雄のLewisラットの8群(すなわち、各々16匹のラットの7つの群(群1〜7)と8匹のラットの1つの群(群8)からなるものであった。0日目に、ブドウ膜炎は、ウシの眼のメラニン、完全Freundアジュバント(CFA)および百日咳毒素のエマルジョンで、皮内(ID)注射によって、各々の動物で誘発させた。同日(0日目)にスタートして、以下の通りにNaMPAまたは対照溶液による処置を開始した。群1〜5と8のラットは、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%、または2.0%でのNaMPA;デキサメタゾン(0.1%);またはRestasis(登録商標)(0.05%のシクロスポリンA(CsA))を用いて、少なくとも2時間の間隔で、1日4回(QID)の局所的両眼投与を受けた。群6のラットは、CsA(Sandimmune(登録商標))の筋肉内(IM)注射を1日に1回受けた。群5、6および8のラットは、陽性対照(シクロスポリンAおよびデキサメタゾン)として、群7のラットは、未処置対照として使用された。
【0156】
【表13】

NaMPA製剤。0.5%、1%および2%のNaMPA(w/v)の眼用製剤(表1に従って調製される)が、この試験で使用された。NaMPA溶液は、2〜8℃で冷凍保存され、光を遮断した。
【0157】
陰性対照。陰性対照は、NaMPA溶液を製剤化するのに使用されるビヒクルと同じであったが、NaMPAを欠いている。この対照は、「ビヒクル」(またはいくつかの例では「V−NE」)と呼ばれる。ビヒクルは、2〜8℃で冷凍保存し、光を遮断した。
【0158】
陽性対照。最初の陽性対照は、0.1%のデキサメタゾン(USP、Henry Schein(Melville、NY)、カタログ番号1033542)の眼用懸濁液であった。デキサメタゾンは、メーカーの指示通りに制御された室温(20〜25℃)に保存された。
【0159】
第2の陽性対照は、50mg/mlのシクロスポリンA(シクロスポリン注射(Sandimmune(登録商標))、USP、Henry Schein (Melville, NY)、カタログ番号1100667)の注射用エマルジョンであった。注射用シクロスポリンは、メーカーの指示通りに制御された室温(20−25℃)に保存された。
【0160】
第3の陽性対照は、0.05%のシクロスポリン(Restasis(登録商標)、Allergan,Inc.,Irvine,CA)の眼用エマルジョンであった。Restasis(登録商標)は、メーカーの指示通りに制御された室温(20−25℃)で保存された。
【0161】
動物。合計124匹の雄のLewisラット(Rattus norvegicus;株LEW/SsNHsd)、到着時それぞれ160〜180gは、試験で使用するためにHarlan Laboratories(Indianapolis,IN)から購入された。
【0162】
眼への局所投与。群1〜5と8の動物は、(それぞれ)ビヒクル;0.5%、1.0%、または2.0%でのNaMPA;デキサメタゾン(0.1%);またはRestasis(登録商標)(0.05%のCsA)を投薬された。投薬のそれぞれの日に、NaMPAまたは対照溶液は、処置の間の間隔が最低2時間であって1日につき4回、各々の動物の両眼に局所的に投与された(10μL/眼/用量、OU、QID)。15/16日目には、群5に対する投薬計画は、試験の残存期間の間はBIDに減少させた。これは、この群における有意な体重減少に対応するものであった。
【0163】
非経口投与。群6のラットは、15mg/kgでのCsAの1日1回の筋内注射を受けた。注射は、ごく最近の体重に基づいて定期的に再計算され、左右の後肢に交互の日に投与される服用量を用いて、0.3mL/kgで送達された。
【0164】
ブドウ膜炎の誘発。両側の実験的な自己免疫前部ブドウ膜炎は、ウシの眼の抽出物(Broekhuyseら、1991、Exp Eye Res 52:465−474)を含むエマルジョンの全身的な投与によって、ラットで誘発された。ここに、この製剤は、「メラニン関連抗原」(MAA)とも呼ばれる。MAAは、ウシの眼から単離されて、リン酸緩衝食塩水(PBS)により1.468mg/mLの濃度で希釈され、−20℃で保存された。
【0165】
エマルジョン。免疫の日(0日目)に、MAA、CFAおよび百日咳毒素からなる免疫原性エマルジョンは、以下の通りに調製された。CFA(4mg/mlの加熱殺菌Mycobacterium tuberculosis(MTB))を含む)は、Chondrex(Redmond,WA)からカタログ番号7001として購入された。CFAは、免疫化の使用まで4℃に保存された。百日咳毒素は、Sigma−Aldrich (St.Louis,MO)からカタログ番号P7208(Bordetella pertussisからの百日咳毒素)として購入された。毒素は、免疫化の使用まで2〜8℃に冷凍保存された。使用の直前に、各バイアルの内容物は、滅菌水の0.5mL(すなわち、100μg/mL)で再構成された。エマルジョンの調製のために、MAA、CFAおよび毒素は、7:7:1の比率(それぞれ2.34mL:2.34mL:0.33mL)で配合し、そして、少なくとも30分間、Hamiltonの乳化針装置を複数回通過させて乳化した。
【0166】
注射。ラットを簡単に拘束し、エマルジョンを尾根に皮内(ID)注射した(〜150μL/ラット)。上で処方されるように、この注射剤は、100μgのMAA、292μgのMTBおよび1μgの毒素の1ラット当たりの用量に対応した。
【0167】
眼科学。試験に含ませる前に、各々の動物の両眼を検査して眼が正常な範囲内にあることを確かめた。眼の刺激または異常の徴候を有するラットは、試験に入れなかった。処置期間の7日目から、そして、生前の間中、細隙灯試験が週につき3回実行された。
【0168】
眼の観察。各々の動物の両眼は、刺激または不快の徴候について評価された。観察は、標準化データ収集シートを使って採点された。
【0169】
細隙灯眼検査。各々の動物の両眼は、細隙灯眼検査により評価された。各々の眼の前区は、調べられ、そして、どんな変化でも記録されて、標準化データ収集シートを使って充血と混濁に関して記録された。
【0170】
統計分析。すべての統計分析は、C57BL/6マウスでのスコポラミン誘発ドライアイの研究(Studies on Scopolamine Induced Dry Eye)に記載されているように行われた。
【0171】
結果:この実施例では、実験的なメラニン誘発ブドウ膜炎(EMIU)のモデルは、Lewisラットで実行された(Smithら、2008,Ophthalmic Research 40:136−140)。このモデルでは、前部ブドウ膜炎が、ウシの眼のメラニン関連抗原(MAA)を用いる全身的な免疫化によって誘発される。
【0172】
眼科検査により決定されるように、前区炎症の出現は、一般的に14〜15日目頃に始まって、16〜18日目頃に最大のスコア値に達し、19〜20日目に一定に達し、そして、その後28/29日目(観察の最後の日)まで低下した。
【0173】
眼用NaMPA製剤は、本試験において使われる最大濃度においてでさえ、最大30日間1日4回局所的に投与されるとき、何らの顕著な眼性刺激または副作用の臨床徴候を生じなかった。したがって、これらの眼用NaMPA製剤は、ブドウ膜炎の臨床徴候の出現前(すなわち、正常な状態で)、ならびに前区の均一で活発な炎症が、眼科検査により決定されるように存在するとき、ブドウ膜炎の間中、ラットで十分に忍容性であった。
【0174】
陽性対照デキサメタゾンとシクロスポリンの投与(筋肉内注射)ならびに2%のNaMPAの投与は、ビヒクル対照に対する充血と角膜混濁の両方(P<0.05)についての眼のスコアの統計的に有意な減少をもたらす(表14と15)。2%のNaMPAの場合、この減少は、ブドウ膜炎観察期間(28/29日目)後半に起き、このことは、前部炎症のわずかにより急速な回復を示した。デキサメタゾンと非経口シクロスポリンの場合、減少が、観察期間の初期(14/15日目および17/18日目)、ならびに後期(28/29日目)の両方で観察され、このことは、ブドウ膜炎のピークスコアの低減ならびに前部炎症の急速な回復を示した。しかし、デキサメタゾン処置ラットは、試験の間、有意な薬物関連の体重減少を経験し、この眼科用ステロイドで処置されたマウスでも観察が認められた(参照:Studies on Scopolamine Induced Dry Eye in C57BL/6 Mice)。さらに、Restasis(登録商標)(局所的な0.05%シクロスポリン)群(18日後に犠牲にされた)において、何らの前区炎症の眼科用スコアパラメーターに関する有意な効果も存在しなかった。
【0175】
前区炎症の充血と角膜混濁パラメーターに関する眼用2%NaMPA製剤の統計的に有意な効果に基づき、前部ブドウ膜炎のラットでの良好な忍容性プロファイルと組み合わされて、これらの結果は、局所的NaMPA製剤はヒトのブドウ膜炎に対する治療剤として可能性があることを証明する。
【0176】
【表14】

【0177】
【表15】

実施例8:モルモットのオバルブミン誘発ブドウ膜炎を用いる試験
この試験は、モルモットのブドウ膜炎のモデルにおける眼用溶液の活性を評価する。ブドウ膜炎は、0日目にオバルブミンを足蹠に注射することによって動物で誘発される。処置は、下記のように行われる。眼の検査と組織病理学は、炎症への試験品目効果を評価するために、以下でさらに詳細に説明されるように行われる。
【0178】
動物(6匹の雄のモルモット/群)は、試験の開始時には約5〜7週令であり、そして、単独で、または、一対ずつHEPAフィルター装備の靴箱型ケージに寝具、飼料および自由に水が与えられて収容され、12時間の明サイクルに曝される。
【0179】
試験は、以下の動物群が関係する:群1−ビヒクル対照;群2−低用量NaMPA;群3−中用量NaMPA;群4−高用量NaMPA;群5−デキサメタゾン陽性対照;群6−未処置対照。1つのタイプの処置計画では、動物の群は、0日目頃から始めて、それから実験の終わり(30日目頃)まで毎日続けて、眼用溶液で適宜、処置することができる。陽性対照群(群5)に対する服用計画は、ビヒクル対照(群1)およびNaMPA群(群2、3、4)のそれとは異なり、7〜15日目頃から始めて、30日目頃まで続く服用のより短い期間を含む。第2のタイプの処置計画では、動物は、眼用溶液で、適宜、約7〜15日目から始めて、それから実験の終わり(約30日目)まで毎日続けて処置することができる。陽性対照に対する服用計画は、ビヒクル対照およびNaMPA群のそれとは異なり、約7〜21日目から始めて、それから約30日目まで続く服用のより短い期間を含む。すべてのタイプの処置計画では、投薬頻度は、1日1回から1日8回までとすることができる。
【0180】
ブドウ膜炎は、Imject alum(Thermal)とコンジュゲートされたオバルブミン(Ova grade V、Sigma)を0日目と7日目に足蹠に皮下注射することによって動物で誘発される(100μl容積中1mg)。動物は、オバルブミン目薬(PBS中50μg)を14日目に(場合により、21日目まで延ばしてもよい)投与することによりオバルブミンでチャレンジされてもよい。臨床観察は、少なくとも1日1回行われ、体重は、試験の前、週2回、および剖検のときに、評価される。前区の検査と眼底検査は、7日目から始めて剖検まで毎日行われる。
【0181】
剖検は、30日目に行われるか、あるいは、試験に対して必要に応じて実行される。剖検は、改変Davidson溶液での両眼の固定により、または1つの眼を固定して他方の眼のOCTでの凍結による両眼の摘出を含む。血液は、分析のための剖検(EDTAの全血1ml、血漿、凍結)の後で採取される。
【0182】
眼の全ての部分の詳細で完全な組織病理学的評価は、いろいろな炎症性細胞浸潤の重症度と発生率を採点することを含む。特別な注意は、結膜と前区の細胞浸潤に払われる。細胞浸潤は、標準的なヘマトキシリンとエオシン染色を使用して評価されるか、あるいは、他の公知の染色技術(例えば、May Grunwald染色、Giemsa染色、 PAS染色)を用いて評価される。いろいろな炎症性細胞の計数は、400倍率での正方形格子の接眼レンズを使用して、病理学者によって盲検で実行され、そして、細胞数データは、それぞれの試験群の平均と標準偏差のために分析される。
【0183】
実施例9:ブタクサ誘発アレルギー性結膜炎に基づく試験
この試験では、能動アナフィラキシーのラットモデルは、アレルギー性結膜炎に関して眼用NaMPA溶液の有効性を評価するのに使用された(Magnoneら、1998, ”A novel murine model of allergic conjunctivitis,” Clinical Immunology and Immunopathology.87:75−84;Miyazakiら、2000,”Prevention of acute allergic conjunctivitis and late−phase inflammation with immunostimulatory DNA sequences,”Investigative Ophthalmology and Visual Science 41:3850−3855)。実験的な手順のスケジュールは、表16で示される。
【0184】
【表16】

感作。ケタミン(80mg/kg)/キシラジン(10mg/kg)の麻酔下、動物は、短いブタクサアレルゲン(SRW,Greer,Lenoir,NC,USA) の50μgと1mgの水酸化アルミニウム25μLのPBS中の懸濁液を含む足蹠注射を両後肢に受けた。
【0185】
チャレンジ。27日目に、処置の最後の用量を受けた後に、動物は各々の眼で、5μlのPBS中の1000μgのSRW懸濁液の局所用量でチャレンジされた。SRWは、毎日、新鮮に調製され、均一性を確実にするために投与前によく混合し、混合後3時間以内に使用された。
【0186】
【表17】

NaMPA製剤。この試験で使用される眼科用NaMPA製剤は、表1に従って調製される2%、1%および0.5%のNaMPA(w/v)溶液からなるものであった。NaMPA溶液は、暗がりに5℃±3℃で保存された。
【0187】
陽性対照。この試験で使用される陽性対照は、1%の酢酸プレドニゾロン(Pred Forte(登録商標)、Allergan、ロット番号57284)からなるものであった。Pred Forte(登録商標)は、メーカーの指示に従って25℃±3℃に保存された。
【0188】
陰性対照。この試験で使用される陰性対照は、NaMPA溶液を調製するのに用いられる製剤と同じであるが、NaMPAを欠いている。この陰性対照は、「ビヒクル」と呼ばれる。ビヒクルは、5℃±3℃で保存された。
【0189】
動物。56匹の雌のBalb/Cマウスが、この試験(Harlan Laboratories)において使われた。マウスは、到着時、約6〜8週令であった。
【0190】
投薬。21〜27日目に、マウスは、表17に特定されるように、NaMPA、陽性対照、またはビヒクルで1日4回、両眼に投薬された。マウスは、較正されたマイクロピペットを使って、各々の眼の処置に5μL滴で中心角膜に局所的に投薬された。27日目に、マウスは、4用量を受けて、最後の服用の15分後に、SRWでチャレンジされた。
【0191】
臨床観察。動物は、充血、膨張、および排出物などの眼の所見に特別な注意を払って、毎日観察された。
【0192】
動物は、また、痒みを示す洗顔行動の割合に関して、27日目のチャレンジの3、5、7、および10分後に観察された。これらの時点の各々で、マウスは、完全に1分間観察されて、Grading Systems for Allergic Responseに記述されたスケールに従って等級付けされた。
【0193】
眼科学。眼科検査は、眼が眼性刺激の少しの徴候も示さなかったことを確かめるために、ベースラインで実行された。眼科検査は、初回用量の投与前の投薬初日と最後の用量の後の27日目に再び繰り返された、眼科検査は、アレルゲン誘発の15分後、27日目にも実行された。
【0194】
組織採取と維持。ペントバルビタールナトリウムの致死量を用いて安楽死させた直後に、すべての眼は、いくつかの周囲組織を含む各々の眼の区画を切除することによって採取された。
【0195】
組織学と組織病理学。組織学的評価は、以下の細胞タイプの密度等級づけを含んでいた:好酸球、好中球、CD4+細胞(すなわち、CD4+T細胞)、およびマクロファージ。評点者は、処置群に対してマスクされた。凍結組織ブロックは、クリオスタットを使って10μmの切片に切断し、以下の通りに各々の細胞タイプに特異的な1次抗体で染色した:抗マウス主要塩基性タンパク質(好酸球);抗マウスNIMP−R14(好中球);抗マウスF4/80(単球/マクロファージ系統);抗マウスCD4(CD4+細胞)。1次抗体によるインキュベーションの後で、切片は洗浄されて、そして、適切な蛍光で標識された2次抗体でインキュベーションした。さらに洗浄ステップの後で、切片は免疫蛍光顕微鏡検査によって観るための準備が完了した。免疫蛍光は、Olympus顕微鏡を使って200倍の倍率で調べられた。細胞は、表面の上皮の基底膜と平行に300μmの間質の深さまで、円蓋部結膜の3つの別々の視野で各々の動物の1つの眼において手動で数えた。3つの視野の平均は、各々の眼に対して算出された。
【0196】
統計分析。各々の動物の両眼は、平均化され、そして、1群内のすべての動物は、各測定パラメーターについて、処置群ごとの平均スコアを得るために平均化された。群間の統計的な有意差は、両側2標本t−検定を用いて決定した。
【0197】
結果:27日目のプレチャレンジ試験で、NaMPAの全3つの濃度は、マウスで十分に忍容性であったことを明らかにした。
【0198】
図6は、結膜充血、結膜浮腫、排出物および眼瞼浮腫に対するポストチャレンジ結果を表す。データは処置群につきすべての動物の両眼のための平均的臨床スコア(平均の標準誤差(SEM)で)として示され、そして、各々の眼でプレチャレンジのベースラインスコアのために修正された:V+S=処置されたビヒクル、SRW感作;NT+S=未処理、SRW感作;V+NS=処置されたビヒクル、未感作。
【0199】
臨床スコアは、SRWでチャレンジする直前に、あるいはSRWでチャレンジされた15分後に、0〜4のスケールで等級付けされた(参照:Grading Systems for Allergic Response)。
【0200】
図6で示すように、ポストチャレンジ試験は、他の全てのビヒクル群または未処置対照群(群5〜7)と比べて、すべてのNaMPA処置群とPred Forte(登録商標)処置群(群1〜4)では、結膜充血がより少なかったことを明らかにした。この減少は、群6および7に対する2.0%のNaMPA群の場合、統計的に有意(p<0.05)であったし、群7に対する1.0%と0.5%のNaMPA群とPred Forte(登録商標)群の場合、統計的に有意(p<0.02)であった。ビヒクルと未処置の対照群よりわずかに少ない結膜浮腫がNaMPA処置群に見られたが、これらの減少は、統計的に有意ではなかった。Pred Forte(登録商標)群は、最低の結膜浮腫を示したが、これは、群6(p<0.001)と群7(p<0.02)に対して統計的に有意であった。群間では涙を流すこと/排出物における一貫した違いはなかった。
【0201】
2%のNaMPA群は、Pred Forte(登録商標)を含む他の全ての群よりも、最低の眼瞼浮腫を示した。この減少は、未処置/感作群(群6)に対して、統計的に有意(p<0.01)であった。
【0202】
図7は、痒みと洗顔行動の試験結果を示す。データは、両眼におけるSRWでのチャレンジの3、5、7および10分後に観察された平均の痒みと洗顔行動のスコア(平均の標準誤差、SEM)として示される。ビヒクル群(V+S p<0.02)、未処置群(NT+S p<0.001)および未感作群(V+NS p<0.05)に対する2%のNaMPA群では、そしてビヒクル群(p<0.05)、および未処置群(p<0.01)に対する1%のNaMPA群では、10分でのスコアに統計的に有意な減少があった:図7で示すように、NaMPAの全3つの濃度による処置は、Pred Forte(登録商標)を含むすべての非NaMPA群で、痒み/洗顔行動が劇的に増加したとき、他の全ての群よりも、特に、10分の時点で、痒み/洗顔行動のより低い発生率をもたらした。Pred Forte(登録商標)群での痒み/洗顔行動は、他の対照群よりわずかに低かったが、しかし、この差は統計的に有意ではなかった。
【0203】
図8は、SRWチャレンジ後の結膜での浸潤性CD4+細胞の数を表す。データは、3つの別々の視野のCD4+細胞の平均数である。群平均は、左の図に示される;各々の動物からの個々のデータ(3つの視野の平均)は、右側に示される。
【0204】
図8で示すように、浸潤性CD4+細胞(すなわち、CD4+T細胞)の数は、2%のNaMPA群およびPred Forte(登録商標)群で最も少なかった。これらの減少は、2%のNaMPA群対群7(V+NS;p<0.01)の場合に、そして、Pred Forte(登録商標)群と群6(NT+S;p<0.05)と群7(p<0.01)の間では、統計的に有意差があった。
【0205】
図9は、SRWチャレンジ後の結膜の浸潤性マクロファージの数を表す。データは3つの別々の視野のマクロファージの平均数である。群平均は、左の図に示される;各々の動物からの個々のデータ(3つの視野の平均)は、右側に示される。群1(2%のNaMPA)対群6(NT+S;p<0.05)と群7(V+NS;p<0.01)では、そして群4(Pred Forte(登録商標))と群7(p<0.05)の間では、浸潤性マクロファージの数は、統計的に有意に減少した。
【0206】
NaMPAは、この試験において使われる最大濃度においてでさえ、何らの顕著な眼性刺激または副作用の臨床徴候をもたらさないでマウスで十分に忍容性であった。痒み/洗顔行動、臨床応答の複数のパラメーター、および浸潤性炎症性細胞の数の統計的に有意な減少は、局所的なSRWチャレンジに応じてNaMPA処置群で観察された。このモデルとその改変は、アレルギー性結膜炎を証明する際に効果的であることを複数の研究所で示されており、眼性アレルギーの基礎をなしている免疫学的メカニズムを解明するのを助けるのに役立っている(Magoneら、1998,Clin Immunol Immunopath 87:75−84;Gronebergら、2003,Allergy 58:1101−1113;Miyazakiら、2000,Invest Ophthalmol Vis Sci 41:3850−3855;Fukushimaら、2006,MoI Vision 12:310−317;Fukushimaら、2005,J Immunol 175:4897−4903;Sternら、2005,Invest Ophthalmol Vis Sci 46:3239−3246)。マウスのBalb/C株は、複数の研究において、このモデルで適切であることが示された(Fukushimaら、2006;Fukushimaら、2005;Sternら、2005)。まとめると、このデータは、眼科用NaMPA製剤には、アレルギー性結膜炎のモデルで臨床徴候と組織病理学的所見を減らすのに効果的であり、したがって、ヒトでのアレルギー性結膜炎の予防と処置へのかなりの可能性があることを示す。
【0207】
実施例10:アレルギー性結膜炎の化合物48/80誘発徴候のウサギモデルを用いる試験
この試験は、ニュージーランド白(NZW)ウサギで化合物48/80によって誘発されるアレルギー性結膜炎のモデルを使用して、アレルギー反応の眼性徴候の発症を予防する際の眼用NaMPA溶液の効果を評価した。
【0208】
眼性アレルギーは、肥満細胞によって主に媒介され、それは、炎症誘発性メディエーターを含む免疫細胞である。IgEの架橋結合による脱顆粒の際に、肥満細胞は、ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、走化因子、インターロイキン、ならびに他のサイトカインや血管作用性アミンを放出する。これらの物質(例えば、ヒスタミンおよびプロスタグランジン)の一部は、直接血管と神経に直接的に影響を及ぼすが、他のものは好中球、好酸球およびマクロファージなどの炎症性細胞の遊走をもたらす。同時に、これらのメディエーターは、眼性アレルギーの徴候と症候を引き起こす。
【0209】
化合物48/80は、Nメチル−p−メトキシフェネチルアミンとホルムアルデヒドの縮合生成物であり、抗原抗体結合なしで肥満細胞の脱顆粒を起こす。それは、潜在的抗アレルギー性化合物のための予備スクリーニングとして広く使われている(Abelson ら、1983,”Conjunctival Eosinophils in compound 48/80 rabbit model,”Arch Ophthalmol.101:631−633;Khosraviら、1995,”Allergic conjunctivitis and uveitis models:Reappraisal with some marketed drugs,”Inflamm Res.44:47−54;Udellら、1981,”Animal and Human ocular surface response to a topical nonimmune mast−cell degranulating agent(compound 48/80),”Amer Jour Ophthalmol.91:226−230)。さらに、化合物48/80は、特にヒトの鼻粘膜、皮膚および他の組織に位置する肥満細胞と対照的に結膜肥満細胞の脱顆粒を誘発する際に効果的であることが示された(参照:Abelsonら、上記;Churchら、1991,”Biological properties of human skin mast cells,”Clin Exp Allergy 21:Suppl 3:1−9)。
【0210】
NaMPA。この試験において使われる眼科用NaMPA製剤は、表1に従って調製される2%、1%および0.5%のNaMPA(w/v)溶液からなるものであった。NaMPA溶液は、暗所に5℃±3℃で保存された。
【0211】
陽性対照。この試験において使われる陽性対照は、1%の酢酸プレドニゾロン(Pred Forte(登録商標)、Allergan、ロット番号57284)からなるものであった。Pred Forte(登録商標)は、メーカーの指示に従って25℃±3℃に保存された。
【0212】
陰性対照。この試験において使われる陰性対照は、NaMPAを欠くこと以外は、NaMPA溶液を調製するのに用いられる製剤と同じであった。この陰性対照は、「ビヒクル」と呼ばれる。ビヒクルは、5℃±3℃で保存された。
【0213】
動物。36匹のニュージーランド白色(NZW)成熟雄ウサギ(Oryctolagus cuniculus)が、この試験において使われた。ウサギは、重量約1.5〜2.5kgであったし、到着時には、少なくとも11週令であった。ウサギは、登録された商業畜産家から得た。
【0214】
【表18】

化合物48/80のチャレンジ。7日目に、処置の最後の用量を受けた15分後に、較正されたマイクロピペットを使って、動物は、両眼で化合物48/80の30mg/mLの25μl局所的用量でチャレンジされた。化合物48/80は、チャレンジの日に新しく調製され、混合の3時間以内に使われて、均一性を確実にするために投与前によく混合された。
【0215】
【表19】

投薬。1〜7日目に、ウサギは、NaMPA、陽性対照またはビヒクルを用いて、1日に4回、表19に特定されるように、局所的に両眼に投薬された。ウサギは、較正されたマイクロピペットを使って、各々の眼の処置に40μLの目薬で投薬された。7日目に、動物は、4用量を受けて最後の用量の15分後にチャレンジされた。すべての用量は、用量間隔が少なくとも2時間はある状態で送達された。
【0216】
眼科学。眼科検査は、眼が眼性刺激の少しの徴候も示さなかったことを確かめるために、ベースライン(試験参加)で実行された。4回目の服用が動物の忍容性を試験するために投与された後、それらは1日目に再検査された。
【0217】
7日目に、試験は、チャレンジ直前に、そしてチャレンジの5、10、15、20および30分後に、繰り返された。スコアリングは、Grading Systems of the Allergic Response(アレルギー反応の等級付けシステム)に従って行われた。臨床徴候(3つの血管床の結膜注射、結膜浮腫、および排出物)が等級付けされた。
【0218】
組織採取と保存。眼球は犠牲の後ですぐに摘出し、少なくとも10時間、しかし、24時間を超えることなく、Alcoholic Bouin’s/Duboscq−Brazil Fluid固定液で固定され、それから70%エタノールへ移した。組織は包埋されて、中央垂直平面で切断(厚さ5μm)されて、評価のために染色された。
【0219】
統計分析。各々の動物の両眼に対するスコアのデータは、平均化されて、そして、群内のすべての動物のためのデータは、各測定パラメーターごとに各処置群の平均スコアを得るために平均化された。群間の統計的な有意差は、両側2−標本t検定を使って決定された。
【0220】
結果:NaMPAは、この試験において使われる最大濃度においてでさえ、1日4回、局所的に7日間投与されるとき、何らの眼性刺激または副作用の臨床徴候をもたらさず、ウサギで十分に忍容性であった。
【0221】
図10は、結膜充血の分析を示す。データは、両眼での化合物48/80による局所的チャレンジの5、10、15、20、および30分後の平均の結膜充血スコア(スケール=0〜4)である。
【0222】
図10で示すように、他の全ての処置群(図2)と比較すると、わずかに少ない結膜充血がほとんどの時点の1.0%のNaMPA群で存在していた。その減少は、チャレンジ後の20分および30分では、未処置群に対して統計的に有意であった(p<0.05)。チャレンジ後の10分、20分および30分では、Pred Forte(登録商標)群は、ビヒクルと比較して、下方の上強膜充血が統計的に有意に減少した。
【0223】
図11は、排出物スコアを示す。データは、両眼での化合物48/80による局所的チャレンジの5、10、15、20、および30分後の平均の排出物スコア(スケール=0〜4)である。統計的に有意な減少が、20分の1.0%NaMPA群対未処置群(P<0.05)で、30分の2%NaMPA群対ビヒクル群(p<0.05)で、そして、30分のPred Forte(登録商標)群対ビヒクル群(p<0.02)にあった。
【0224】
図12は、結膜浮腫分析を示す。データは、両眼での化合物48/80による局所的チャレンジの5、10、15、20、および30分後の平均の結膜浮腫スコア(スケール=0〜4)である。統計的に有意な減少が、20分(p<0.001)および30分(p< 0.05)の2.0%NaMPA群対ビヒクル群、ならびに20分(p<0.05)のPred Forte(登録商標)群対ビヒクル群にあった。
【0225】
NaMPAは、この試験において使われる最大濃度においてでさえ、1日4回、局所的に7日間投与されるとき、何らの顕著な眼性刺激または副作用の臨床徴候をもたらさず、ウサギで十分に忍容性であった。
【0226】
これらの結果は、眼科用NaMPA製剤がウサギで化合物48/80によって誘発される結膜充血、結膜浮腫および排出物の臨床徴候を減らすことに効果的だったことを示す。これは、NaMPAの抗炎症性効果の徴候でありえて、さらにNaMPAがアレルギー反応の後期段階と関連した炎症を減らすことに効果的である可能性を示唆し、そこでは、リンパ球(例えば、CD4+T細胞)が突出した役割を果たしうる。NaMPAの2つの最大濃度によるこれらのパラメーターの減少は、おそらく、より決定的な抗炎症性効果が、NaMPAのより高濃度、拡大服用計画および/または異なる製剤とともに見られるかもしれないことを示す。
【0227】
要約すると、結果は、眼性炎症性疾患の複数のモデルで、眼科用NaMPA製剤の効果を証明している。データの標準的な統計分析を使って、有効性が臨床観察(例えば、結膜充血、眼瞼浮腫)、痒み/洗顔行動、結膜浮腫、排出)、機能的な評価(例えば、TBUT)または組織学的評価(組織病理学、細胞浸潤)によって証明された。NaMPAは、ドライアイとアレルギー性結膜炎のモデルにおいて、多くの場合、陽性対照のデキサメタゾンとRestasis(登録商標)の効力に匹敵あるいは凌駕して、非常に有効であった。そのうえ、NaMPA活性は、組織病理学的所見に基づき、前部ブドウ膜炎のモデルで証明された。試験されるあらゆるモデルと種において、眼科用NaMPA製剤の局所投与は、通常の状況の下で、そして、眼性炎症疾患の臨床徴候の間、十分に忍容性であった。合わせて考えると、眼科用NaMPA製剤の局所投与が、眼性炎症疾患のこれらのモデルの複数の眼組織の臨床徴候、眼の機能および組織病理学に有益な効果を有することをデータは示す。これらの知見は、局所投与の後で眼科用NaMPA製剤によって複数の眼組織の浸透を示す、図1、2、3および表4に示されるデータと一致している。
【0228】
実施例11:アレルギー応答に対する等級付けシステム
以下の等級付けシステムが、前述の実施例でのアレルギー応答を評価するために使用された。
【0229】
結膜充血(結膜、毛様体、上強膜血管床の等級付け)
0.0 正常な血管の結膜が角膜輪部への注射なしで見える。
1.0−少量の限局性注射
2.0−結膜の白色領域の半分未満をカバーする血管の深紅色の注射
3.0−結膜の大部分をカバーする注射であるが、白色可視領域がまだある。血管を多少まだ区別できる。
4.0−ほとんど全ての結膜をカバーしている拡散性の牛肉様赤色の注射。ほとんど別の血管を識別することは不可能。
【0230】
結膜浮腫
0.0−結膜の非腫脹
1.0−結膜のわずかな拡散または領域的腫脹。血管はまだ非常によく見える。
2.0−結膜の明らかな一般的腫脹。血管はまだ識別可能である。
3.0−結膜の非常に著しい腫脹。深い血管を見ることは困難
4.0−混濁結膜。血管の間の完全分離。表在性血管は見ることができない。瞬膜と瞼板の膨れと腫脹。
【0231】
涙を流すこと/排出
1.0−涙三角のわずかな突出
2.0−涙三角または涙を流すことの中程度の突出
3.0−涙三角または涙を流すことの顕著な突出
4.0−涙三角および眼から涙が著しくあふれ出る顕著な突出
眼瞼浮腫。
1.0−眼瞼縁のわずかな腫れ
2.0−眼瞼裂のわずかな減少
3.0−眼瞼裂(閉じてはいない)の著しい減少
4.0−腫れて閉じた眼瞼
顔面洗浄行動/痒み感
0−痒み感/顔面洗浄行動がない
2−5秒間につき、頭を>10回拭う、1分間につき>3回
1−5秒間につき、頭を>10回拭う、1分間につき<3回
注−0.5単位が任意の眼のスコアに考慮される。
【0232】
本出願で引用されるすべての刊行物、特許、特許出願および他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願または他の文書がすべての目的のために引用によって取り込まれると同程度に、すべての目的のためにその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0233】
いろいろな特定の実施形態が例示されて記述されたが、1つまたは複数の本発明の精神と範囲から逸脱することなく、いろいろな変化がなされうることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミコフェノール酸ナトリウム(NaMPA)から本質的になる眼用溶液であって、該溶液のpHが、約6.0〜約8.5である、眼用溶液。
【請求項2】
ミコフェノール酸ナトリウム(NaMPA)と;保存剤、粘性強化剤、湿潤剤、抗酸化剤、緩衝剤、滑沢剤、および張度作用物質から選択される1つ以上の添加剤とから本質的になる眼用溶液であって、該溶液のpHが、約6.0〜約8.5である、眼用溶液。
【請求項3】
前記ミコフェノール酸ナトリウムが、約0.01%(w/v)〜約4.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項4】
前記ミコフェノール酸ナトリウムが、約0.05%(w/v)〜約3.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項5】
前記ミコフェノール酸ナトリウムが、約0.1%(w/v)〜約2.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項6】
前記ミコフェノール酸ナトリウムが、約1.0%(w/v)〜約4.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項7】
pHが約7.0〜約8.0である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項8】
pHが約7.0〜約7.5である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項9】
前記溶液中の全ナトリウムが、約0.4〜約2.0%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項10】
前記溶液中の全ナトリウムが、約0.9%(w/v)である、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項11】
前記添加剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、チメロサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、メチル/プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、および過ホウ酸ナトリウムから選択される保存剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項12】
前記添加剤が、カルボポールゲル、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポロキサマー407、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolodine)(ポビドン)から選択される粘性強化剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項13】
前記添加剤が、酢酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、4ホウ酸塩、二リン酸塩、トロメタミン、ヒドロキシエチルモルホリン、およびトリスヒドロキシメチルアミノ−メタン(THAM)から選択される緩衝剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項14】
前記添加剤が、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、および塩化ナトリウムから選択される張度作用物質である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項15】
前記添加剤が、ポリソルベート20および80、ポロキサマー282、チロキサポール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ポビドン、およびポリビニルアルコールから選択される湿潤剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項16】
前記添加剤が、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ペトロラタム、鉱油、およびカルボマーから選択される滑沢剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項17】
前記添加剤が、リン脂質ベースの滑沢剤である、請求項2に記載の眼用溶液。
【請求項18】
ナトリウム対イオンが、塩素イオンである、請求項1または2に記載の眼用溶液。
【請求項19】
前記塩素イオンが、HCl由来である、請求項18に記載の眼用溶液。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の溶液を罹患した眼に局所的に投与することを含む、炎症または自己免疫状態と関係する眼障害を処置する、方法。
【請求項21】
前記眼障害が、眼の前部に影響を及ぼす、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記眼の前部に影響を及ぼす眼障害が、眼瞼炎、角膜炎;虹彩ルベオーシス;Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎;慢性ブドウ膜炎または前部ブドウ膜炎;結膜炎;アレルギー性結膜炎;乾性角結膜炎;虹彩毛様体炎;虹彩炎;強膜炎;上強膜炎;角膜浮腫;強膜疾患;眼瘢痕性類天疱瘡(ocular cicatrcial pemphigoid);毛様体扁平部炎;Posner Schlossman症候群;ベーチェット病;Vogt−Koyanagi−Harada症候群;結膜浮腫;結膜静脈性うっ血;眼窩周囲蜂巣炎;急性涙嚢炎;非特異性脈管炎;および類肉腫症から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記眼障害が、眼の後部に影響を及ぼす、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記眼の後部に影響を及ぼす眼の障害が、黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫;網膜虚血;および脈絡膜新血管形成;黄斑変性;糖尿病性網膜症;糖尿病性網膜浮腫;網膜剥離;ブドウ膜炎;汎ブドウ膜炎;脈絡膜炎;上強膜炎;強膜炎;散弾網脈絡膜症;網膜脈管炎;脈絡膜脈管不全;脈絡膜血栓症;視神経新血管形成;および視神経炎から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記眼障害が、ブドウ膜炎である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記眼障害がアレルギー性結膜炎である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記眼障害が、乾性角結膜炎である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記溶液が毎日1〜4回投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記溶液が2日ごとに1回投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記溶液が4日ごとに1回投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記溶液が毎週1回投与される、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−527339(P2011−527339A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517270(P2011−517270)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006683
【国際公開番号】WO2010/004435
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511008377)アスプレバ インターナショナル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】