説明

着座センサ付きシートクッションパッド

【課題】 着座センサの縁部をパッド本体側に強固に連結でき、表皮をパッド本体に被せる工程や、シートクッションパッドの使用時において、着座センサの縁部、特に前部が不用意に捲れるのを防止することにより、着座センサの性能の低下を防止することを課題とする。
【解決手段】 パッド本体10の表面に着座センサ30を設けると共に、パッド本体10に被係止部材22を埋設する。該被係止部材22に固定具50を係止することにより、該着座センサ30の左右側の縁部をパッド本体10に連結する。また、前記着座センサ30の前縁部30Cの裏面に設けられた被係合面60が、前記パッド本体10の表面に設けられている面ファスナー等の係合部材50に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に使用される着座センサ付きシートクッションパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、自動車用シートは、一般に、着座者の背部を支持するシートバック部100と、臀部を支持するシートクッション部101とからなる。シートクッション部101は、シートフレーム105上に載せられるシートクッションパッド103の表面に、織編物や皮革等からなる表皮104を被せて構成されている。そして、シートクッションパッド103は、軟質ポリウレタンフォームなどの弾力性を有する発泡体からなるパッド本体106と、このパッド本体106の下面に一体化された補強布107とで構成されている。しかも、パッド本体106には係止用ワイヤ(図示省略)が適宜位置に埋設されており、表皮104はCリングを介して係止用ワイヤに連結されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、例えば、補助席等のシートに着座者が着座しているか否か等を判断し、エアバッグ等の部品の作動状態を制御するため、シート状の可撓性を有する着座センサが使用されている。かかる着座センサは、パッド本体の上面に敷設された状態で表皮が被せられ、表皮とパッド本体との間に介在されて使用される場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このように表皮は、着座センサをパッド本体の上面に敷設した状態でパッド本体に被せるため、着座センサはパッド本体からずれたり、折れ曲がったりしないようにするのが望ましい。そこで、着座センサは、その左右両縁部が前記係止用ワイヤにCリングを介して連結される。また、着座センサの前部は挿通孔が設けられ、この挿通孔に挿通された棒状クリップを、パッド本体に押しこむことにより、着座センサの前部をパッド本体に連結することが考えらていた。
【特許文献1】特開2005−452号公報
【特許文献2】特開2002−211297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように棒状クリップをパッド本体に押し込んで、着座センサの前部を固定する場合、パッド本体は発泡体からなるため、棒状クリップはパッド本体から容易に抜けてしまうことが多く、確実に固定できない欠点がある。この結果、表皮をパッド本体に被せる工程において、着座センサの前部が不用意に捲れて折れ曲がるおそれがある。仮に、クリップが着座センサの前部を押えた状態で、表皮をパッド本体に被せることができた場合であっても、棒状クリップはパッド本体から容易に抜けてしまうため、シートクッションパッドを自動車に取付けて長期に使用する場合、棒状クリップがパッド本体から抜けてしまう場合がある。着座センサの捲れは、着座センサの性能に悪影響を及ぼし、エアバッグが誤動作するおそれがある。
【0006】
本発明は、着座センサの縁部をパッド本体側に強固に連結でき、表皮をパッド本体に被せる工程や、シートクッションパッドの使用時において、着座センサの縁部、特に前縁部が不用意に捲れるのを防止することにより、着座センサの性能の低下を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の着座センサ付きシートクッションパッドは、弾力性を有する発泡体からなるパッド本体と、該パッド本体の表面に設けられた可撓性を有する着座センサとを備え、前記パッド本体には被係止部材が埋設され、該被係止部材に前記固定具を係止することにより、該着座センサの縁部をパッド本体に連結する着座センサ付きクッションパッドにおいて、前記被係止部材は、左右一対の縦線状部分と、該縦線状部分の間に位置する中線状部分とを備え、前記着座センサの左右側の縁部は、固定具を介して縦線状部分に連結され、前記着座センサの前縁部の裏面に設けられた被係合面に係合する面ファスナー等の係合部材が、前記パッド本体の表面に設けられていることにある。
【0008】
かかる本発明の着座センサ付きシートクッションパッドは、前記着座センサの被係合面を、前記パッド本体の係合部材に係合することにより、着座センサの前縁部もパッド本体に強固に連結できるようになる。また、従来の棒状クリップをパッド本体に押し込む場合に比し、棒状クリップを把持する作業が不要となり、作業性も向上する。
【0009】
しかも、本発明の着座センサ付きシートクッションパッドは、前記係合部材がパッド本体の発泡成形により、該パッド本体に一体的に設けるのが好ましい。かかる場合には、一体成形によりパッド本体に係合部材を効率よく安定して設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、着座センサの縁部をパッド本体側に強固に連結でき、着座センサの縁部が不用意に捲れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1〜図8に一実施形態の自動車用座席に使用されるシートクッションパッドを示す。このシートクッションパッド1は、図1〜図4に示すように、幅方向(左右方向、図2に示すE方向)中央の着座部2と、その左右両側において上方に隆起状に形成されたサイド部4,4とを備えている。なお、図2において矢印A方向が前方を、矢印L方向が左方向を、矢印R方向が右方向を示す。
【0012】
シートクッションパッド1は、軟質ポリウレタンフォームなどの弾力性を有する合成樹脂発泡成形体からなるパッド本体10と、このパッド本体10の下面の略全体にわたって一体化された補強布12とで構成されている。補強布12は、シートフレーム3と接触するパッド下面を補強し、異音の発生を防止するために設けられており、粗毛布、フェルト、不織布などからなり、パッド本体10とともに一体に発泡成形されている。
【0013】
パッド本体10の上面には複数の溝が設けられている。この溝は、着座部2とサイド部4の境界部に沿って前後方向(図2に示すD方向)に延びる左右一対の縦溝15,15と、この左右の縦溝15,15の後端を連結する後横溝16と、左右の縦溝15,15の前側を連結する前横溝17と、後横溝16および前横溝17の中間部を連結する中縦溝18とから構成されている。なお、前横溝17により着座部2は前後に区画され、前横溝17の前側が着座者の腿部を受け止め支持する腿受け部2A、前横溝17の後側が着座者の臀部を受け止め支持する尻受け部2Bとなっている。
【0014】
パッド本体10には、金属などの剛性線状体からなる被係止部材としての係止用ワイヤ20、21、22が、各溝に沿って設けられている。図8に示すように、係止用ワイヤ20は、左右の縦溝15、15に沿ってパッド前縁部から後縁部にかけて前後方向に延びる左右一対の縦線状部分20Aと、後横溝16に沿うように一対の縦線状部分20A、20Aの後端同士を連結する左右方向に延びる後横線状部分20Bとからなる。
【0015】
係止用ワイヤ21は、前横溝17に沿うように、一対の縦線状部分20A、20A間に位置する前横線状部分となる。係止用ワイヤ22は、中縦溝18に沿うように、前横線状部分21と後横線状部分20Bとの間に位置する中線状部分となる。各係止用ワイヤ20、21、22は、いずれも各縁部が折り返されて丸みが付けられて縁部処理が施されている。
【0016】
また、各係止用ワイヤ20、21、22は、各溝の底でかつ長手方向において断続的に露出した状態に埋設されている。より詳細には、各溝の長手方向の複数箇所において底の深い深底部15a、16a、17a、18aが設けられ、この深底部15a、16a、17a、18aでワイヤが溝内に露出するように埋設されている。なお。ワイヤが溝内に露出するとは、ワイヤの上面の一部が露出する場合や、ワイヤの全周が露出する場合をいう。
【0017】
尻受け部2Bの上面には、可撓性を有する着座センサ30が敷設されている。この着座センサ30は、例えばシート(フィルム)31上に印刷された複数個のセルによって構成され、所定値以上の圧力または変形を受けるとON信号を発生する感圧センサよりなる。また、着座センサ30はフィルム上に印刷された信号線を介してコネクタ32に接続されている。
【0018】
着座センサ30の左右側の縁部30A、30Bには、図2に示すように略C形の取付片34、34がそれぞれ突設されており、各取付片34が、縦線状部分20Aの露出部20A1に固定具としてのCリング35を介してそれぞれ連結されている。着座センサ30の左右方向の中央部で且つ前後方向には、帯状の開口部37が形成されている。この開口部37は、着座センサ30の前縁部30Cに連結部40を残すようにして形成されていると共に、開口部37の縁部から取付片39a、39bが突設されている。各取付片39a、39bは中線状部分(係止用ワイヤ)22の露出部22aにCリング36を介してそれぞれ連結されている。
【0019】
パッド本体10の上面(前記中縦溝18の底面18b)で且つ連結部40に対応する部分には、係合部材50が設けられている。かかる係合部材50は、例えば帯状の面ファスナーからなり、図7に示すように、ベース51の係合面52となる表面側に係合針53が多数突設されており、ベースの裏面には複数の凸条よりなるアンカー部54が設けられている。そして、面ファスナー50は、パッド本体10の発泡成形により、アンカー部54がパッド本体10に強固に埋設されるように、該パッド本体10に一体的に設けられている。
【0020】
また、前記着座センサ30の連結部40の裏面には、被係合面としての係合用パイル面60が付設され、この係合用パイル面60に対して、前記面ファスナー50の係合針53が係合するため、着座センサ30の前縁部30Cのパッド本体10への連結は強固なものとなる(図6(a)および(b)参照)。
【0021】
図3に示すように、表皮6は、表皮側のワイヤ7と固定具(Cリング)8を介して係止用ワイヤ20、21、22の露出部に適宜連結されるようになっている。着座センサ30のパッド本体10への連結は、Cリング35、36および面ファスナー50を介して強固なものとなっているため、表皮6をパッド本体10および着座センサ30に被せる場合には、着座センサ30(特に着座センサ30の前縁部30C)が捲れることはなく、表皮6を迅速且つ容易に被せることができ、一連の作業工程の作業性が向上する。
【0022】
なお、着座センサ30の後縁部30Dは、最後部の取付片39bを係止用ワイヤ22に連結するため、同様に不用意に捲れることはない。また、図6(b)に示すように、面ファスナー50は中縦溝18の底面18bに設けられるため、面ファスナー50に着座センサ30側の係合用パイル面60が係合しても、面ファスナー50および係合用パイル面60は、中縦溝18内に収まり、着座者が着座した際に、着座者に係合部材50および係合用パイル面60により不快感を与えるおそれもない。
【0023】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、係合用パイル面60および面ファスナー50は、左右方向にの間隔を有して複数個設けることが可能である。
【0024】
また、着座センサ30の後縁部30Dにも係合用パイル面を設け、且つパッド本体10の上面には、係合用パイル面に係合する面ファスナーを設けることも可能である。
【0025】
面ファスナー50および係合用パイル面の形状や大きさは任意に設定可能であり、面ファスナー50は、パッド本体10の発泡成形時に一体的に設ける以外に、発泡成形後のパッド本体10の所定位置に両面テープ等で固着してもよい。
【0026】
また、着座センサ30はパッド本体10の上面以外に下面に敷設する場合であってもよい。しかも、着座センサ30の表面にパッド本体10よりも低硬度の発泡体からなる表層部を設けてから表皮を被せることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るシートクッションパッドの分解斜視図である。
【図2】同シートクッションパッドの平面図である。
【図3】同シートクッションパッドの断面側面図である。
【図4】同パッド本体の平面図である。
【図5】同パッド本体内に一体成形された面ファスナーを含む断面斜視図である。
【図6】(a)同パッド本体の面ファスナーに、着座センサの被係合面部が係合する直前の要部を示す断面図、(b)同パッド本体の面ファスナーに、着座センサの被係合面部が係合した状態の要部を示す断面図である。
【図7】同パッド本体に設けられる係合部材の背面斜視図である。
【図8】同パッド本体に埋設される係止用ワイヤの平面図である。
【図9】従来のシートクッションパッドの断面斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 パッド本体
20 被係止部材
20A 縦線状部分
21 被係止部材
22 中線状部分(被係止部材)
30 着座センサ
30C 前縁部
35 固定具
40 連結部
50 面ファスナー(係合部材)
60 係合用パイル面(被係合面)
D 前後方向
E 左右方向
F 前方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する発泡体からなるパッド本体と、該パッド本体の表面に設けられた可撓性を有する着座センサとを備え、前記パッド本体には被係止部材が埋設され、該被係止部材に前記固定具を係止することにより、該着座センサの縁部をパッド本体に連結する着座センサ付きクッションパッドにおいて、
前記被係止部材は、左右一対の縦線状部分と、該縦線状部分の間に位置する中線状部分とを備え、前記着座センサの左右側の縁部は、固定具を介して縦線状部分に連結され、前記着座センサの前縁部の裏面に設けられた被係合面に係合する面ファスナー等の係合部材が、前記パッド本体の表面に設けられていることを特徴とする着座センサ付きシートクッションパッド。
【請求項2】
前記係合部材はパッド本体の発泡成形により、該パッド本体に一体的に設けられた請求項1に記載のシートクッションパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−50747(P2007−50747A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236610(P2005−236610)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】