説明

着物並びに着物の製造方法

【課題】着用者の体型に合う最適な形状に仕立てられた一部式の着物を安価に提供することができ、しかも、一人でも容易に着用することができる極めて実用性に優れた着物並びに着物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、前記上身頃1と前記下身頃2の少なくとも一方に身幅調整部3を設け、この身幅調整部3で身幅を調整してサイズの異なる前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着した着物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の体型にきちんと合った形状に仕立てた着物並びに着物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、着物とは、身丈や身幅が異なる様々な体型の人が着られるように構成されたものである。即ち、着物は、身丈は予め寸法を長く仕立てておいて、着用する際に着丈に合わせて、腰の位置で折りたたむお端折りをつくることにより調整し、身幅は直線裁ちで仕立てておき、着用する際に下前と上前の重ね合わせ量で調整したり、身八ツ口の下側を摘まんで重ね合わせたりすることで調整したり、或いは、着用者自体が自分の体型を着物の形状に合わせるための補正を行い、即ち、体型の凹凸を無くすために凹部にタオルなどを巻いたり、また、最近では補正用の下着などを着用して補正を行うことで、様々な人が同じサイズ(同じ着物)を着用することができるものであった。
【0003】
そのため、一般的に市販されている着物は、洋服と違って色々なサイズがなく、標準体型を基準とした標準寸法のものが数種類あるだけであった。即ち、身長と身幅を比例させた形状の着物しかなかった。
【0004】
ところが、最近の女性は、食文化の変化と共にその体型も変わってきており、身長が高く、手も長いが、体型は細身という身長と身幅が比例していない体型の女性が増えてきており、従来の着物の形状に合わない体型に変化してきている。
【0005】
このため、このような女性が従来の着物を着用すると着付けによる調整量が多くなり、重ね合わせた部分がゴロゴロして着心地が悪かったり、また、背縫いや脇縫いの位置が本来の位置からずれてしまい着姿が美しくなくなったりするなどの問題があった。
【0006】
また更に、着物は上述したように、ある程度の着丈と身幅の調整ができる構成となっているが故に、その着用の仕方(着付け方)も容易でなく、従来の着物は、一人で着ることは非常に困難であったため、専門の人や熟練者に着付けてもらうことが一般的であった。
【0007】
そのため、洋服のように誰もが容易に着用できるものではなく、普段着として着物を着用する人が年々減少してきているという問題もあった。
【0008】
しかし、近年は、誰もが簡単に着物を洋服感覚で着ることができる二部式の着物も提案されており(特許文献1)、従来に比べて気軽に着物を楽しむことができるようになってきている。
【0009】
しかしながら、この二部式着物は、簡単に着物が着られるといった利点がある反面、着用中に着崩れてしまい開け易いといった欠点もあり、また、この二部式着物においても一般的な既製品の場合は、標準的な体型に合ったサイズのものしかないので、この標準体型から外れた体型であった場合は上述した問題点と同様に、調整を行っても着物を美しく着ることができないという問題は解決されていない。即ち、身長の低い人に合わせた標準的な着物は、身丈寸法が短く、更に身幅寸法も狭いものとなっているので、例えば、身長が高く、手も長いが、体型は細身という人が、体型に合わせた着物を着ると、裄丈が足りず、見た目が悪くなり、また、身長に合わせた(手足の長さに合わせた)着物を着ると、身幅が余りすぎて着用した際に上前と下前の重ね合わせの部分が多くなりすぎて、これも見た目が悪くなり、更に、歩く際に上前と下前の重ね合わせが広がらずに歩きにくくなってしまったりする問題が生じてしまう。
【0010】
そのため、このような標準的な着物を着ることができない人は、自分の体型に合った着物をオーダーメイドで仕立ててもらうしかなく、この場合、既製品の値段に比べて非常に高いものとなってしまう。
【0011】
しかし、着物は洋服と違って一般的には身長(身丈、着丈、衿下、袖丈の寸法を決める)、腰まわり(前幅、後幅、衽幅の寸法を決める)、背中心から手首(裄の寸法を決める)の三箇所を採寸して仕立てている直線裁ちの形状なので、このオーダーメイドの着物でも身幅調整する量は限られており、いくらオーダーメイドといっても、着用者の体型に合う最適な形状に仕立てることは難しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−266115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、着用者の体型に合う最適な形状に仕立てられた一部式の着物を安価に提供することができ、しかも、一人でも容易に着用することができる極めて実用性に優れた着物並びに着物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0015】
身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、前記上身頃1と前記下身頃2の少なくとも一方に身幅調整部3を設け、この身幅調整部3で身幅を調整してサイズの異なる前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着したことを特徴とする着物に係るものである。
【0016】
また、前記身幅調整部3は、帯4を装着した際に、この帯4によって隠蔽される位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の着物に係るものである。
【0017】
また、身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、前記上身頃1の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着した折り返し重合部5を設けて、着用した際にこの折り返し重合部5がお端折りに見えるように構成し、この折り返し重合部5の内側に前記下身頃2の上端部を縫着して、前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着したことを特徴とする着物に係るものである。
【0018】
また、前記折り返し重合部5の内側上端部に遊離端部6を設け、この遊離端部6に前記下身頃2の上端部を縫着して、前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着したことを特徴とする請求項3記載の着物に係るものである。
【0019】
また、身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成する着物の製造方法であって、前記上身頃1と前記下身頃2とのサイズが異なるものが選択された際に、前記上身頃1と前記下身頃2の少なくともいずれかの身幅調整部3で身幅寸法を調整して、前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着することを特徴とする着物の製造方法に係るものである。
【0020】
また、前記身幅調整部3は、帯4を装着した際に、この帯4によって隠蔽される位置に配置することを特徴とする請求項5記載の着物の製造方法に係るものである。
【0021】
また、身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成する着物の製造方法であって、前記上身頃1の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着し、着用した際にお端折りに見える折り返し重合部5を形成し、この折り返し重合部5の内側に前記下身頃2の上端部を縫着して、前記上身頃1と前記下身頃2とを連結縫着することを特徴とする着物の製造方法に係るものである。
【0022】
また、前記上身頃1の前記折り返し重合部5の内側上端部に設けた遊離端部6を、前記下身頃2の上端部で抱持した状態で縫着することを特徴とする請求項7記載の着物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上述のように構成したから、着用者の上半身の体型及び下半身の体型に夫々合う最適な身幅寸法に形成した上身頃及び下身頃を上下連結した一部式の着物となるので、着用する際に、従来の着物の着付けのように着物の形状に合うように一々タオルなどを身体に巻いて体型を補正したり、重ね合わせて余りを詰めたり、更に、着丈もお端折りを形成して調整するといった面倒な着付け方をしなくとも、単に着物を羽織るだけの極めて容易に着付けることができる着物となる。
【0024】
しかも、着用した際は、着用者の体型にフィットすることで、着崩れが生じることもなく、更に、上前、下前の重なりも最適な重なり具合となっているので、例えば、重なりが多すぎて歩き難くなることもなく、着物を着ていてもスムーズな動作ができ、更に、皺が生じたり、背縫いや脇縫いの位置がずれたりするといったこともないので、着姿も美しく見える画期的な着物となる。
【0025】
しかも、オーダーを受けてから、従来のように、採寸した寸法に合わせて反物から裁断するところから作成するのではなく、身幅寸法の異なる複数の上身頃と身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者を採寸した寸法に合う身幅寸法の上身頃と下身頃、若しくは着用者を採寸した寸法に近似する身幅寸法の上身頃と下身頃とを選択して、この選択した上身頃と下身頃との少なくとも一方の身幅調整部で身幅を調整して連結縫着するだけで容易に着物が完成するので、例えば、身幅寸法の異なる複数の上身頃と身幅寸法の異なる複数の下身頃とを、S、M、Lなどのサイズで規格化することによって容易に大量生産することができるので、製造コストを削減することができ、更に、オーダーから完成までの期間が非常に短期間となるので、価格も納期も顧客が満足することができる極めて画期的な着物となる。
【0026】
従って、例えば、身長が高く、手足が長いが細身の体型をしている人でも、着用者本人の体型にフィットした着物を着ることができ、しかも、このように体型にフィットする着物がオーダーメイドというよりも、既製品を購入する感覚で気軽に購入することができるので、着物をお洒落感覚で普段着としても着用できる新しいスタイルの着物となる。
【0027】
また、請求項2記載の発明においては、身幅調整部を、帯を装着した際に、この帯によって隠蔽される位置に配置したので、外観上の美しさを保ったまま上身頃や下身頃の身幅を調整することができる機能性に優れた着物となる。
【0028】
また、請求項3記載の発明においては、あたかもお端折りを形成しているかのように見え、従来の着物を従来の着付け方で着用しているかのように見えるので、外観上、違和感を覚えさせない着物となる。
【0029】
また、請求項4記載の発明においては、上身頃と下身頃との連結縫着した縫い目が表側に出てこないので、外観を損ねず、着姿の美しさを保つ画期的な着物となる。
【0030】
また、請求項5記載の発明においては、着用者の体型に合う形状に仕立てるにもかかわらず、オーダーメイドのように採寸した寸法に合わせて反物から裁断する必要がなく、着用者を採寸した寸法に合うサイズの上身頃と下身頃とを夫々選択し、これらを身幅調整が必要な場合は身幅調整して上下連結縫着するだけの極めて簡易な製造方法となるので、仕立て工数が削減できることで納期の短縮が図られ、更に、製造コストも下げることができるので、安価に提供することができる極めて画期的な着物の製造方法となる。
【0031】
また、請求項6,8記載の発明においては、着物の外観を損ねずに、着姿を美しく保つことができる着物の製造方法となる。
【0032】
また、請求項7記載の発明においては、あたかもお端折りを形成しているかのように見える折り返し重合部を、極めて容易に形成することができる着物の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施例の上身頃の身幅調整前の状態を示す説明背面図である。
【図2】本実施例の下身頃の身幅調整前の状態を示す説明背面図である。
【図3】本実施例の上身頃の身幅調整後の状態を示す説明背面図である。
【図4】本実施例の下身頃の身幅調整後の状態を示す説明背面図である。
【図5】本実施例の上身頃と下身頃との連結縫着状態を示す正面図である。
【図6】本実施例の上身頃と下身頃との連結縫着状態を示す説明背面図である。
【図7】本実施例を示す正面図である。
【図8】本実施例を示す背面図である。
【図9】本実施例の上身頃と下身頃との連結縫着状態における要部を示す説明正面図である。
【図10】本実施例の上身頃と下身頃との連結縫着状態における要部を示す説明正面図である。
【図11】本実施例の上身頃の身幅調整部の身幅調整状態を示す説明図である。
【図12】本実施例の上身頃の身幅調整部の身幅調整状態を示す説明図である。
【図13】本実施例の上身頃と下身頃との連結縫着状態を示す説明断面図である。
【図14】別実施例の上身頃の身幅調整前の状態を示す説明背面図である。
【図15】別実施例の上身頃の身幅調整部の身幅調整状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0035】
着用者の上半身の体型に合った上身頃1を選択し、この選択した上身頃1を、身幅調整部3で着用者に合った身幅寸法にきちんと合わせることができるので、より一層着用者の上半身の体型にフィットする上身頃1となり、また、下身頃2も着用者の下半身の体型に合った下身頃2を選択し、この選択した下身頃2を身幅調整部3で着用者に合った身幅寸法にきちんと合わせることができるので、より一層着用者の下半身の体型にフィットする下身頃2となり、このように着用者の上半身及び下半身の体型に夫々フィットする上身頃1と下身頃2とを連結縫着することで、着用した際に、着用者の体型にフィットした一部式の着物となる。
【0036】
従って、着用者は着用する際に、着物の形状に合うように一々タオルなどを身体に巻いて体型を補正したり、重ね合わせて余りを詰めたり、更に、着丈もお端折りを形成して調整するといった面倒な着付け方をしなくとも、単に着物を羽織るだけの極めて容易に着付けることができる着物となる。しかも、着用した際は、体型にきちんと合うことで着崩れがなく、皺も生じず、背縫いや脇縫いの位置がずれたりするといったこともなくなり、着姿も美しく見える画期的な着物となる。
【0037】
また、本来、着用する際に、着丈調整をするために腰の位置でお端折りを形成するが、本発明は、着丈も着用者の寸法に合わせて仕立てているので、身丈調整をする必要は無いが、あらかじめ上身頃1の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着して形成した折り返し重合部5が、着用した際に、あたかもお端折りを形成したかのように見えるので、従来の着物を、従来の着付け方で着用しているかのように見え、外観上、違和感を覚えさせない着物となる。
【実施例】
【0038】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0039】
本実施例は、予め準備しておいた身幅寸法の異なる複数の上身頃1と、予め準備しておいた身幅寸法の異なる複数の下身頃2との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃1と、この着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の下身頃2とを夫々選択し、これらの選択した上身頃1と選択した下身頃2とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、上身頃1と下身頃2の少なくとも一方に身幅調整部3を設け、この身幅調整部3で身幅を調整してサイズの異なる上身頃1と下身頃2とを連結縫着した着物である。
【0040】
また更に、本実施例は、上身頃1の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着した折り返し重合部5を設けて、着用した際にこの折り返し重合部5がお端折りに見えるように構成し、この上身頃1の折り返し重合部5の内側に下身頃2の上端部を縫着して、上身頃1と下身頃2とを連結縫着した着物である。
【0041】
以下に、本実施例に係る製造方法を含めて、具体的に説明する。
【0042】
本実施例は、上身頃1と下身頃2は、前幅、後幅、衽幅からなる身幅の寸法を異ならせて形成したもの(上身頃1に関しては、裄寸法を異なる寸法に形成したものを含む)、例えば、洋服のサイズのようにSサイズ、Mサイズ、Lサイズのように区別をしたものをそれぞれ数種類ずつ、予め準備しておいたものの中から着用者の体型に合った身幅寸法の上身頃1と下身頃2、若しくは近似する身幅寸法の上身頃1と下身頃2を選んで、この選んだ上身頃1と下身頃2とを着用者の体型に合わせて仕立てた着物である。
【0043】
更に具体的に説明すると、上身頃1は、図1に示すように、衿7、袖8はサイズ毎の標準的な寸法で形成し、身頃に縫着して略仕上がった状態にしておき、オーダーが入った際に、着用者の体型に合わせて身幅調整を行うことができるように、前身頃9と後身頃10との境界で脇の下に設けられる身八ツ口11より下方側を未縫着状態にした身幅調整部3を設け、更に、この身八ツ口11下方側の身幅調整部3で身幅調整しきれない場合は、上身頃1下端側の身幅調整部3で身幅調整できる構成とし、また、丈は調整可能範囲を広くとるために、更には後述する折り返し重合部5を形成するために長めに設けた構成としている。
【0044】
この上身頃1の身幅調整を行う身幅調整部3は、大きな身幅調整は身八ツ口11下方側の身幅調整部3で行い、微調整を上身頃1下端側の身幅調整部3で行う構成としている。具体的には、身八ツ口11下方側の身幅調整部3は、図11(a)〜図12(f)に示すように、未縫着状態の前身頃9と後身頃10とを重ね合わせて縫着する際に、重ね合わせ方や重ね合わせ量を調整することで、上身頃1の形状調整や数センチ単位の身幅調整を行うことができ、また、上身頃1下端側の身幅調整部3は、図1や図8に示すように、生地を摘まんで縫着するタックを形成する構成とし、数ミリ〜1センチ程度の身幅調整を行うことができ、身幅調整量によって、前身頃9と後身頃10の両方に設けたり、或いは、後身頃10だけに設けた構成としても良い。
【0045】
更に、この身幅調整部3は、帯4を装着した際に、この帯4によって隠蔽される位置に設けているので、外観上の美しさを、即ち、着姿の美しさを損ねることもない。
【0046】
尚、上身頃1は、図14に示すように、後身頃10の形状を、下端側を幅広形状に形成し、身幅調整の際、上身頃1の下端側を広げることも可能な構成としても良い。
【0047】
また、下身頃2は、図2に示すように、左右の前身頃9、後身頃10、衽12を夫々縫着し、上端部以外は仕立て済みの状態のものである。また、この下身頃2も、前述した上身頃1と同じように、オーダーが入った際に、着用者の体型に合わせて身幅調整を行うことができるように下身頃2の上端側に身幅調整部3を設け、更に、身丈は、背の高い人から背の低い人まで幅広く対応できるよう調整可能範囲を広くとるために長めの丈に設定した構成としている。
【0048】
この下身頃2の身幅調整を行う身幅調整部3は、上身頃1の下端側に設けた身幅調整部3と同様、生地を摘まんで縫着するタックを形成する構成とし、数ミリ〜1センチ程度の身幅調整を行うことができ、帯4を装着した際に、この帯4によって隠蔽される位置に設けているので、着姿の美しさを損ねることがない構成としている。
【0049】
また、上述した状態までの上身頃1、下身頃2であれば、裄寸法、身幅寸法を規格化すること、例えば、S、M、L、LLの4種類とすることで、既製品として製造される着物と略同等の製造工程で製造(縫製)することができるので、容易に量産化することができ製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0050】
従って、本実施例は、規格化して低コストで製造した身幅調整可能な身幅寸法の異なる上身頃1とを身幅寸法の異なる身幅調整可能な下身頃2とを予め準備しておき、オーダーが入った際に、着用者を採寸し、着用者の裄及びバストの寸法から最適なサイズの上身頃1を選択し、着用者の胴回り、ヒップの寸法から最適なサイズの下身頃2を選択し、更に、着用者の体型にフィットするように前述した身幅調整部3で形状及び身幅寸法を調整することとなる。
【0051】
例えば、図11(a)若しくは(b)のように、上身頃1の前身頃9と後身頃10との重ね合わせを、下端側を多く重ねることで、図3に示すように、一般的な体型に沿った形状の上身頃1となる。
【0052】
また、図4は、上身頃1及び下身頃2の身幅調整後の状態を示したものである。即ち、従来の着物は、直線裁ちで仕立てられるため、上身頃1から下身頃2にかけて身幅が略一定の形状であり、これを着用者の体型に合わせるために、着用者がタオルなどを巻いて腰まわりの体型の凹凸を補正するか、或いは、着付けの際に、生地を重ね合わせて余りを詰めたりして面倒な作業をしなければならなかったが、本実施例では、身幅調整部3での身幅調整により体型に合う形状とすることが容易にできるので、面倒な着付けをしなくとも、単に着物を羽織るだけで容易に着付けることができる。
【0053】
また、従来、着付けの厄介な点の一つに着丈調整が挙げられ、着丈を調整するために腰の位置で余った部分を折り込み、お端折りを作りながら着付けていくが、この際に、皺を作らないようきれいに着付けることが非常に難しいものであったが、本実施例は、上述したように着用者の体型にフィットする形状に仕立てると共に、着丈も着用者の身長に合わせて仕立て、着用の際、着丈調整が不要な構成としている。
【0054】
即ち、本実施例は、従来、当たり前に行われた着丈調整をするためのお端折りの形成が無いこととなる。このお端折りは、一般的に、男性用の着物では元々無いものだが、女性用の着物ではお端折りが見えることは当然であり、このお端折りが帯の下から見えないと、外観上、違和感を覚えたり、着姿の美しさが損なわれてしまう感じがしたりするものである。
【0055】
そこで、本実施例では、予め上身頃1にお端折りに見える折り返し重合部5を形成した構成としている。この折り返し重合部5は、図13に示すように、上身頃1の下端側を内側に折り返して重合状態で縫着して形成したもので、この折り返し重合部5が、着用した際に、あたかもお端折りを形成しているかのように見えるので、従来の着物を、従来の着付け方で着用しているかのように見え、外観上、違和感を覚えさせない着物となる。
【0056】
しかも、この折り返し重合部5は、オーダーの際、着用者の好み位置に設けることができる、即ち、帯4を装着した際、この帯4の下から見えるお端折りの長さを好みの長さに形成することができるので、例えば、お端折りをあまり見せたくないという人には、折り返し重合部5の下端を上側に配置するように構成し、或いは、お端折りを多く見せたいという人には、折り返し重合部5の下端を下側に配置するように構成することができるので、より一層、着物をお洒落に着用することができる。
【0057】
また、この折り返し重合部5は、上身頃1の下端部を内側に折り返した側の内側上端部に遊離端部6を設けた構成としている。この遊離端部6と下身頃2の上端部とを連結縫着して上身頃1と下身頃2とを一体化した一部式の着物に形成している。
【0058】
上身頃1と下身頃2との連結縫着に関して具体的に説明すると、図13に示すように、上身頃1の下端側に形成した折り返し重合部5の内側上端に位置する遊離端部6を、下身頃2の上端部で挟持するように重合し、この重合状態の遊離端部6及び下身頃2の上端部を縫着している。従って、図9、図10に示すように、上身頃1と下身頃2との連結部は、折り返し重合部5の裏側に位置し、この折り返し重合部5によって隠蔽されることとなるので、見た目は、普通の一部式の着物のように見え、更に、上身頃1の折り返し重合部5に直接下身頃2を縫着する構成では無いので、縫い目が表側に出ず、見た目もスッキリしたものとなる。
【0059】
また、下身頃2の身丈は、前述したように、背の高い人から背の低い人まで幅広く対応できるよう調整可能範囲を広くとるために長めの丈寸法に設定しているので、上身頃1と下身頃2とを連結縫着する際の、身頃1の下端側に設けた遊離端部6を下身頃2の上端部で挟持するように重合する際に、下身頃2の上端部の折り返し長を調整して下身頃2の身丈を調整可能な構成とし、更に、この折り返し長が長すぎて、着用した際に、ゴロゴロした違和感が生じないように、下身頃2の上端側を最適寸法に裁断してから折り返して着丈調整できるよう、この下身頃2の上端側は未仕上げ状態としている。
【0060】
このように、本実施例は上述のような製造方法で、上述のように構成したので、以下のような作用効果が得られる。
【0061】
本実施例は、オーダーを受けてから、従来のように、採寸した寸法に合わせて反物から裁断するところから作成するのではなく、身幅寸法の異なる複数の上身頃と身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者を採寸した寸法に合う身幅寸法の上身頃と下身頃、若しくは着用者を採寸した寸法に近似する身幅寸法の上身頃1と下身頃2とを選択して、この選択した上身頃1と下身頃2との少なくとも一方の身幅調整部3で身幅を調整し、また、下身頃2の上端部で身丈調整をして連結縫着するだけで、容易に着用者の体型にフィットした着物が完成するので、従来のオーダーメイドの着物に比して非常に短い納期で製品を納めることが可能となる生産性に優れた画期的な着物の製造方法となる。
【0062】
しかも、予め準備する上身頃1と下身頃2との裄寸法、身幅寸法を規格化し、準備するサイズも、例えば、S、M、L、LLの4種類とすることで、既製品として製造される着物と略同等の製造工程で製造(縫製)することができるので、容易に量産化することができ製造コストの低減を図ることが可能となるので、オーダーメイドの着物よりも非常に安価な価格で市場に提供することが可能となる画期的な着物の製造方法となる。
【0063】
更に、このように安価な価格にも関わらず、オーダーメイドのように着用者の体型にフィットするように仕立てられており、着用者が着用する際には、従来の着物を着付けるときのように、着物の形状に合わせて一々タオルなどを身体に巻いて体型を補正したり、重ね合わせて余りを詰めたり、更に、着丈もお端折りを形成して調整するといった面倒な着付け方をしなくとも、単に着物を羽織るだけの極めて容易に着付けることができる着物となる。
【0064】
しかも、着用した際は、着用者の体型にフィットすることで、着崩れが生じることもなく、更に、上前、下前の重なりも最適な重なり具合となっているので、例えば、重なりが多すぎて歩き難くなることもなく、着物を着ていてもスムーズな動作ができ、更に、皺が生じたり、背縫いや脇縫いの位置がずれたりするといったこともないので、着姿も美しく見える画期的な着物となる。
【0065】
また更に、着用者の体型例を挙げて、具体的な上身頃1と下身頃2との組合せ例で作用効果を説明すると、例えば、着用者の体型が、身長が高く細身の場合は、身長が高い人は腕の長さも長いので、裄丈が長い上身頃1を選択する必要があるので、例えば、上身頃1はLサイズを選択し、身体の線は細身なので下身頃2はSサイズ若しくはMサイズを選択することとなる。
【0066】
しかし、上身頃1は、裄丈に合わせてLサイズを選択したため、身幅寸法は、着用者の体型に比べて大きい寸法のものとなる。このように時には、身八ツ口11の下方に設けた身幅調整部3の重ね合わせ量を多めにして前身頃9と後身頃10とを縫着することで、裄丈は長いままで、身幅だけを細身の着用者の体型に合った寸法に調整することができる。
【0067】
また更に、身八ツ口11の下方に設けた身幅調整部3の前身頃9と後身頃10との重ね合わせ方を、下方側を多く重ね合わせた形状にし、或いは、上身頃1の下端側の身幅調整部3でタックを形成して、下身頃2の身幅寸法に合うように調整することで、上身頃1の身幅寸法に対して下身頃2の身幅寸法が小さい場合であっても容易に合わせ込むことが可能となる。
【0068】
また、例えば、上半身は標準体型だが、ヒップが大きい人の場合は、例えば、上身頃1はMサイズを選択し、下身頃2はLサイズを選択することとなる。
【0069】
このように選択された際も、身幅調整の際に、身八ツ口11の下方に設けた身幅調整部3の重ね合わせ方を、下方側を少なく重ね合わせた形状にし、或いは、上身頃1の下端側の身幅調整部3は無調整とすることで、上身頃1の身幅寸法に対して下身頃2の身幅寸法が大きい場合であっても容易に合わせ込むことが可能となる。
【0070】
即ち、本実施例は、如何なる体型にも容易に合わせることができる生産性に優れた画期的な着物であり、このような着物がオーダーメイドではなく、既製品と略同じような感覚で購入することができる極めて実用性に優れた画期的な着物となる。
【0071】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0072】
1 上身頃
2 下身頃
3 身幅調整部
4 帯
5 折り返し重合部
6 遊離端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身幅寸法の異なる複数の上身頃と、身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃とを夫々選択し、これらの選択した上身頃と選択した下身頃とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、前記上身頃と前記下身頃の少なくとも一方に身幅調整部を設け、この身幅調整部で身幅を調整してサイズの異なる前記上身頃と前記下身頃とを連結縫着したことを特徴とする着物。
【請求項2】
前記身幅調整部は、帯を装着した際に、この帯によって隠蔽される位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の着物。
【請求項3】
身幅寸法の異なる複数の上身頃と、身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃とを夫々選択し、これらの選択した上身頃と選択した下身頃とを縫着して一部式着物に形成した着物であって、前記上身頃の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着した折り返し重合部を設けて、着用した際にこの折り返し重合部がお端折りに見えるように構成し、この折り返し重合部の内側に前記下身頃の上端部を縫着して、前記上身頃と前記下身頃2とを連結縫着したことを特徴とする着物。
【請求項4】
前記折り返し重合部の内側上端部に遊離端部を設け、この遊離端部に前記下身頃の上端部を縫着して、前記上身頃と前記下身頃とを連結縫着したことを特徴とする請求項3記載の着物。
【請求項5】
身幅寸法の異なる複数の上身頃と、身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃とを夫々選択し、これらの選択した上身頃と選択した下身頃とを縫着して一部式着物に形成する着物の製造方法であって、前記上身頃と前記下身頃とのサイズが異なるものが選択された際に、前記上身頃と前記下身頃の少なくともいずれかの身幅調整部で身幅寸法を調整して、前記上身頃と前記下身頃とを連結縫着することを特徴とする着物の製造方法。
【請求項6】
前記身幅調整部は、帯を装着した際に、この帯によって隠蔽される位置に配置することを特徴とする請求項5記載の着物の製造方法。
【請求項7】
身幅寸法の異なる複数の上身頃と、身幅寸法の異なる複数の下身頃との中から、着用者の上半身の体型に合う身幅寸法の前記上身頃と、前記着用者の下半身の体型に合う身幅寸法の前記下身頃とを夫々選択し、これらの選択した上身頃と選択した下身頃とを縫着して一部式着物に形成する着物の製造方法であって、前記上身頃の下端側を内側に折り返し重合状態で縫着し、着用した際にお端折りに見える折り返し重合部を形成し、この折り返し重合部の内側に前記下身頃の上端部を縫着して、前記上身頃と前記下身頃とを連結縫着することを特徴とする着物の製造方法。
【請求項8】
前記上身頃の前記折り返し重合部の内側上端部に設けた遊離端部を、前記下身頃の上端部で抱持した状態で縫着することを特徴とする請求項7記載の着物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−214197(P2011−214197A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84239(P2010−84239)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(500147805)株式会社 きものブレイン (13)
【Fターム(参考)】