説明

着用物品

【課題】おむつの外表面の感触が柔らかく、外観的にも柔らかな印象を与える着用物品を提供すること。
【解決手段】本発明の着用物品1は、外表面を形成する外層シート12及び内側シート13を有する外装体11を備え、腹側部A及び背側部Bの少なくとも何れか一方は、外層シート12に固定された弾性部材91によってウエストギャザーが形成されたウエスト領域A1、外層シート12に固定された弾性部材91によって下腹部ギャザーG3が形成された下腹部領域A3、及び前記領域A1,A3に位置し、外層シート12に弾性部材12が固定されていない上腹部領域A2を有し、上腹部領域A2における外層シート12に、着用物品の自然状態において、ウエストギャザーG1及び下腹部ギャザーG3により生じた複数本の襞16,16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツやおむつなどのように、着用者のウエストから股部にかけて覆うことができる着用物品に関し、好ましくはおむつなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型の使い捨ておむつのような着用物品においては、ウエスト周りや胴回りなどに、着用中のズレ落ち防止目的で、2枚のシート間に弾性部材を伸長状態で固定し、その弾性部材の収縮力を利用してギャザーを形成することが広く行われている。おむつを構成するシート材として、柔軟性の高い不織布を用いても、おむつとなった状態においては、ギャザー部で本来の柔らかさが損なわれることが多かった。
【0003】
パンツ型の使い捨ておむつにおいて、胴回り部に配する胴回り部弾性部材を、おむつの外表面を形成する最外層シート以外の部材に固定し、その胴回り弾性部材と最外層シートとの間に非接着領域を設けることによって、最外層シートの内方にギャザーを形成する一方、胴回り部の外表面にはギャザーが形成されないようにする技術が知られている(特許文献1参照)。
また、特許文献2には、伸縮性シートからなる最外層シートと、その内側の伸縮性の低いシートに部分的に固定し、最外層シートの収縮により、最外層シートと内側のシートとを一体的に凹凸形状に変形させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−4853号公報
【特許文献2】特開2007−111503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のおむつは、胴回り部の外表面にギャザーが形成されていないため、すっきりとした外観を呈する。しかし、ウエスト領域以外の略全域において、外表面にギャザーが形成されないようにしたため、最外層シートがその内側の部材から浮いた部分が生じたとしても、その浮きの程度が少なく、おむつの外表面の感触を柔らかくする観点からは不十分であった。
また、特許文献2の技術も、最外層シートと内側のシートとが一体的に凹凸形状に変形するため、最外層シートからなる外表面の感触を柔らかくする効果は不十分であった。
【0006】
従って、本発明の課題は、外表面の感触が柔らかく、外観的にも柔らかな印象を与える着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外表面を形成する外層シート及び該外層シートより内側に位置する内側シートを備え、腹側部と背側部の間を股部を介して延びる縦方向とこれに交差する幅方向を有する、着用者のウエスト部から股部にかけて覆うように装着される着用物品であって、前記腹側部及び前記背側部の少なくとも何れか一方は、前記外層シートに伸長状態で固定された弾性部材によってウエストギャザーが形成されたウエスト領域、前記外層シートに伸長状態で固定された弾性部材によって下腹部ギャザーが形成された下腹部領域、及び該ウエスト領域と該下腹部領域との間に位置し、前記外層シートに弾性部材が固定されていない上腹部領域を有しており、前記上腹部領域における前記外層シートに、着用物品の自然状態において、前記ウエストギャザー及び前記下腹部ギャザーにより生じた複数本の襞が形成されている、着用物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の着用物品は、外表面の感触が柔らかく、外観的にも柔らかな印象を与える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の着用物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における内面側を示す展開平面図である。展開且つ伸長状態とは、パンツ型の着用物品を展開状態とし、その展開状態の着用物品を、各部の弾性部材を伸長させて、設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
【図3】図3は、図2のI−I線断面図である。
【図4】図4は、図2のII−II線断面図である。
【図5】図5は、上腹部領域に形成された浮き部及び襞を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、図2に示すように、外装体11と、該外装体11の内面側に固定された吸収性本体10とを備えている。おむつ1は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、着用時に着用者の背側に配される背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置して、着用時に着用者の股間部に配される股部Cを有している。
【0011】
着用物品の縦方向とは、腹側部Aと背側部Bとの間を股部Cを介して延びる方向であり、図2中のY方向である。また、着用物品の幅方向は、前記縦方向と交差する方向であり、図2中のX方向である。展開且つ伸長状態のおむつ1において、おむつ1における幅方向Xは、前記縦方向Yと直交している。吸収性本体の縦方向及び幅方向は、それぞれ、着用物品の縦方向、幅方向と対応する方向である。また、腹側部A及び背側部Bのそれぞれにおいて、着用物品の縦方向は、着用時の上下方向であるため、腹側部A及び背側部Bの縦方向において、ウエスト開口縁W側を上、股部C側を下とも表現する。
【0012】
外装体11は、図2〜図4に示すように、外層シート12及び該外層シート12より内側に位置する内側シート13を有している。内側シート13は、外装体11の厚み方向Zにおいて、外層シート12よりも内側(着用時に着用者の肌に近い側)に配されている。
本実施形態のおむつ1は、内側シート13として、内層シート14、補助シート15を有し、更に外層シート12を構成するシート材がウエスト開口縁Wにおいて内面側に折り返されて形成された外層シート12の折り返し部分12a,12bを有している。外層シート12の折り返し部分12a,12bも内側シート13に該当する。外層シート12及び内層シート14は、それぞれ、腹側部A、股部C及び背側部Bに亘って連続しており、補助シート15は、背側部B及び腹側部Aにそれぞれ一枚配されている。
【0013】
外層シート12は、おむつ1の外表面を形成しており、内層シート14は、外層シート12に隣接させて該外層シート12の内面側に配されている。補助シート15は、図3及び図4に示すように、内層シート14のおむつ長手方向の端部14wの上下に亘って延在している。また、補助シート15は、おむつ1の幅方向中央部においては、図4に示すように、吸収性本体10の縦方向の端部10wの上下に亘って延在している。そのため、補助シート15は、外層シート12の内面と対向する部分と内層シート14の内面と対向する部分と吸収性本体10の内面と対向する部分とを有している。内面は、着用物品又はその構成部材における着用物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面である。
【0014】
図1に示すように、外装体11は、腹側部Aにおける両側縁部と、背側部Bにおける両側縁部とが互いに接合されており、その接合によって、おむつ1に、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6,6が形成されている。ウエスト開口縁Wは、ウエスト開口部5の周縁である。外装体11は、展開且つ伸長状態のおむつ1においては、図2に示すように、縦方向中央部が括れた砂時計状の形状をしている。
【0015】
図2〜図4に示すように、おむつ1における腹側部A及び背側部Bは、それぞれ、ウエスト開口縁W側から股部C側に向かって順に、ウエスト領域A1,B1、上腹部領域A2,B2及び下腹部領域A3,B3を有している。腹側部Aは、おむつ1の縦方向の一端側のウエスト開口縁Wからレッグ開口部6の上端Stまでの部位、背側部Bは、おむつ1の縦方向の他端側のウエスト開口縁Wからレッグ開口部6の上端Stまでの部位である。
以下、主として、おむつ1の腹側部Aにおけるウエスト領域A1、上腹部領域A2及び下腹部領域A3の構成について、図3及び図4を参照しつつ説明するが、背側部Bにおけるウエスト領域B1、上腹部領域B2及び下腹部領域B3も同様の構成を有している。
【0016】
ウエスト領域A1,B1は、腹側部A又は背側部Bにおいて、ウエスト開口縁Wに沿って、おむつ1の幅方向に延びている。また、ウエスト領域A1,B1には、ギャザー形成用の複数本(図示例は6本)のウエスト弾性部材51が、それぞれ、おむつ1の幅方向に延びて固定されている。また、ウエスト弾性部材51は、おむつ1の幅方向に伸長させた状態で、外層シート12の内面に固定されている。
【0017】
より具体的には、ウエスト弾性部材51は、ウエスト弾性部材51を挟む外層シート12と内側シート13との間に伸長状態で接着剤を介して固定されている。更に詳しくは、ウエスト開口縁W近傍の一部のウエスト弾性部材51は、外層シート12と、外層シート12の折り返し部分12aとの間に固定され、他のウエスト弾性部材51は、外層シート12と補助シート15との間に固定されている。また、おむつ1におけるウエスト弾性部材51は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、サイドシール部S,S間の全域に亘って配されている。そして、おむつ1の自然状態においては、伸長状態で固定されたウエスト弾性部材51の収縮により、外層シート12及び内側シート13に多数の襞ないし凹凸が生じて、ウエストギャザーG1が形成されている。
【0018】
下腹部領域A3,B3は、腹側部A又は背側部Bの縦方向Yにおいて、最も股部C寄りの部位に形成されている。下腹部領域A3,B3には、ギャザー形成用の複数本の下腹部弾性部材91が、それぞれ、おむつ1の幅方向に延びて固定されている。下腹部弾性部材91は、おむつ1の幅方向に伸長させた状態で、外層シート12の内面に固定されている。より具体的には、下腹部弾性部材91は、下腹部弾性部材91を挟む外層シート12と内側シート13である内層シート14との間に接着剤を介して接合されている。そして、おむつ1の自然状態においては、下腹部弾性部材91の収縮により、外層シート12及び内側シート13に多数の襞ないし凹凸が生じて、下腹部ギャザーG3,G3が形成されている。
【0019】
下腹部弾性部材91は、おむつ幅方向Xの中央部で左右に分割された状態で配されている。すなわち、下腹部領域A3,B3に配された下腹部弾性部材91は、吸収性本体10の両側縁の外方においては伸縮力を発現する一方、吸収性本体10と重なる部分のX方向中央部には、配されていないか、弾性伸縮性を発現しないようになされている。弾性部材が弾性伸縮性を発現しないようにする方法は、特に制限されず、各種公知の方法を採用し得るが、下腹部弾性部材91の一部を、弾性伸縮性を発現しなくなるように熱処理する方法や、下腹部弾性部材91を、伸長状態が解除された複数の断片が生じるように分断する方法等が挙げられる。
【0020】
上腹部領域A2,B2は、腹側部A又は背側部Bの縦方向Yにおいて、ウエスト領域A1,B1と下腹部領域A3,B3との間に位置している。上腹部領域A2,B2には、ギャザー形成用の複数本(図示例は3本)の内側弾性部材71が、それぞれ、おむつ1の幅方向に延びて固定されている。また、上腹部領域A2,B2においては、外層シート12と内層シート14との間が非接合状態となっており、外層シート12に、ギャザー形成用の弾性部材が固定されていない。
【0021】
より具体的には、最も下方(股部C側)に位置するウエスト弾性部材51の下方に、外層シート12と内層シート14との間が接合されていない非接合領域R1が形成されており、該非接合領域R1は、一対のサイドシール部S,S間の幅方向のほぼ全域に亘っている。ここで「ほぼ全域」とは、サイドシールS,S間の全幅に対して、外層シート12と内層シート14との接合が15%以下の範囲で設けられている場合を意味する。
【0022】
そして、上腹部領域A2における外層シート12には、ウエスト領域A1及び下腹部領域A3が幅方向Xに収縮することにより、すなわち、ウエストギャザーG1及び下腹部ギャザーG3によって、おむつ1の外方に立体的に浮き上がった部分F(以下、浮き部Fという)が生じており、その浮き部Fには、図5に示すように、複数本の襞16が形成されている。また、上腹部領域B2における外層シート12にも、同様に、ウエスト領域B1及び下腹部領域B3が幅方向Xに収縮することにより、浮き部Fが生じており、その浮き部Fにも、図5に示すように、複数本の襞16が形成されている。上腹部領域A2,B2に形成された襞16は、おむつの幅方向に沿う断面形状が、図5に示すように連続波形形状を有している。また、襞16は、腹側部A及び背側部Bをそれぞれの外面側から視たときに、概ねおむつ縦方向に沿って延びているが、厳密には、下側から上側に向かうほど、おむつ幅方向中央部側に近づくようにやや傾斜している。また、上腹部領域の襞16は、ウエストギャザーG1及び下腹部ギャザーG3よりも幅の大きい部分を備えたものとなっている。
【0023】
本発明における外装体11は、襞16が形成されている上腹部領域A2,B2に、外層シート12より内側に位置する内側シート13が存在することは必須ではない。また、上腹部領域A2,B2に、外層シート12より内側に位置する内側シート13が存在する場合においても、その内側シート13(内層シート14や補助シート15等)には、ギャザー形成用の弾性部材が固定されていても固定されていなくても良い。
【0024】
本実施形態のおむつ1における上腹部領域A2,B2は、外層シート12より内側に位置する内側シート13を有し、外層シート12に接合されていない内側シート13に、ギャザー形成用の内側弾性部材71が、おむつ幅方向Xに伸長させた状態で固定されている。より詳細には、内側弾性部材71は、内側弾性部材71を挟む内層シート14と補助シート15との間に接着剤を介して固定されている。また、おむつ1における内側弾性部材71は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおいて、サイドシール部S,S間の幅方向の全域に亘って配されている。
【0025】
上腹部領域A2,B2に形成された襞16が、ウエスト領域A1(B1)及び下腹部領域A3(B3)が、おむつ幅方向Xに収縮することにより生じたものであるか否か(あるいはウエストギャザー及び下腹部ギャザーによって生じたものであるか否か)は、例えば、上腹部領域A2,B2における内側シート13(内層シート14等)に固定された弾性部材71を、除去したり、多数箇所で切断して弾性伸縮性を発現しないようにしたときに、その襞16の形状が、概ねそのままの状態で維持されているか否かで判断することができる。また、上腹部の内側弾性部材71が存在しない場合では、ウエスト領域A1(B1)と下腹部領域A3(B3)を最大長さとなるまで伸長させて当該領域のギャザーを消失させたときに上腹部領域A2(B2)の襞がほぼ消失すれば、当該襞はウエスト領域及び下腹部領域の収縮によるもの(あるいはウエストギャザー及び下腹部ギャザーによって生じたもの)と判断可能である。なお、ここで「最大長さ」とは、外装シートを構成するシート材料が破壊(材破)されない条件で最大限伸長させたときの長さを言う。
【0026】
外装体11には、更に、レッグ部弾性部材61が配されている。レッグ部弾性部材61は、おむつ幅方向Xの両端部が腹側部A又は背側部Bに位置し、おむつ幅方向Xの中央側が股部Cに位置するように湾曲させて配されている。レッグ部弾性部材61は、外層シート12と内層シート14との間に、伸長状態で配されており、おむつ1のレッグ開口部6,6に、脚回りに沿って収縮するレッグギャザーを形成する。
【0027】
なお、本実施形態のおむつ1におけるウエスト弾性部材51及び内側弾性部材71は、個々の弾性部材51,71に塗工した接着剤を介して、それを挟む2枚のシート間に固定されており、おむつ縦方向に隣り合う弾性部材間にシート間が固定されていない領域を有している。他方、下腹部弾性部材91及びレッグ部弾性部材61は、それぞれ隣接する2枚のシート間に、一方又は双方のシートに塗工した接着剤を介して接合されており、弾性部材と弾性部材との間の中央位置においてもシートどうしが接合されている。ウエスト弾性部材51及び/又は内側弾性部材71を、本実施形態の下腹部弾性部材91及びレッグ部弾性部材61と同様の態様で固定してもよいし、下腹部弾性部材91及び/又はレッグ部弾性部材61を、本実施形態のウエスト弾性部材51及び内側弾性部材71と同様の態様で固定しても良い。
【0028】
図2及び図3に示すように、吸収性本体10は、おむつの縦方向Yと同方向に長い長方形状であり、液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性(撥水性等)の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収体4を有する。吸収体4は、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)からなる吸収性コア又はこれに吸水性ポリマーを保持させてなる吸収性コアを、コアラップシートで被覆してなるものや、コアラップシート内に吸収性ポリマーのみを配したものが挙げられる。コアラップシートとしては、例えばティッシュペーパのような薄紙や透水性の不織布等が好ましく用いられる。また、本おむつ1においては、図2に示すように、吸収性本体10の長手方向の左右両側に、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス8,8が形成されている。各側方カフス8の自由端部の近傍には、複数の側方カフス弾性部材81が伸張状態で配されている。側方カフス8は、おむつ着用時に起立して液の側方への流出を阻止する。
【0029】
本実施形態のおむつ1は、従来のパンツ型使い捨ておむつと同様に、レッグ開口部6,6に脚を通した後、上腹部領域A2,B2付近を持って引き上げることにより容易に装着することができる。
【0030】
本実施形態のおむつ1によれば、上腹部領域A2,B2における外層シート12に、ウエスト領域A1,B1及び下腹部領域A3,B3の収縮によって複数本の襞16が形成されているため、上腹部領域A2,B2における外層シート12が、外装体の厚み方向Zの押圧力に対して、柔軟に変形し且つ良好な圧縮回復性を示す。また、外観的にも、細かい襞や凹凸が形成されたウエストギャザーG1や下腹部ギャザーG3とは異なり、柔らかな印象を与える。
特に上腹部領域A2,B2は、おむつを引き上げる際に掴みやすい位置にあるため、着用者自身や介護者や幼児の親等が、おむつの柔らかな感触を認識し易い。
【0031】
また、おむつ外表面の広い範囲を、感触が柔軟な領域とし、柔らかさを実感し易いおむつとしたり、履き上げる際の操作性を向上させたりする観点から、上腹部領域A2,B2は、外層シート12とその内面側に位置する内側シート13との間が接合されていない領域(非接合領域)R1のおむつ縦方向の長さL2(図4参照)が、腹側部及び背側部のおむつ縦方向の長さL3(図2参照)の10〜60%、特に、20〜50%であることが好ましく、同様の観点から、おむつの縦方向の全長L(図2参照)の5〜40%、特に、8〜30%であることが好ましい。また、同様の観点から、前記長さL2は、成人用の場合、20〜100mm、特に30〜90mmであることが好ましく、幼児用の場合、15〜80mm、特に、20〜60mmであることが好ましい。
【0032】
おむつの外表面の感触の柔らかさをより実感できるようにする観点から、複数本の襞16を有する上腹部領域A2,B2は、該上腹部領域を有する腹側部又は背側部を、おむつ幅方向Xに120%伸長した時の圧縮仕事量が1.0gfcm/cm2以上であることが好ましい。この効果に加えて、本発明の着用物品の上にアウターを履いた場合の良好な着用感と装着操作時又は装着中の意図しない破れの防止の観点から、1.1〜5.0gfcm/cm2、更に1.1〜3.0gfcm/cm2であることが好ましい。
【0033】
ここで、上腹部領域A2,B2の前記圧縮仕事量は、以下のようにして測定される。
〔圧縮仕事量の測定方法〕
カトーテック社製KES−FB3(圧縮試験機)を用い、試験片を幅方向に120%伸張させた状態において測定する。着用物品から、ウエスト部、上腹部及び下腹部を含み、かつ幅方向に120%伸長できる領域を含むようにして試験片を採取する。例えば、大人用おむつの場合には、試験片として、おむつ3(着用物品)のウエスト部、上腹部及び下腹部が含まれるように、10cm×10cmの大きさに、着用物品から切り出したものを使用することができる。試験片に対して、2cm2の円形加圧板を用い、室温(25℃)湿度60±10%の条件下で、圧縮速度20μm/sec、圧縮最大荷重50gf/cm2で上腹部の厚み方向に荷重(圧力)を加えて、単位面積あたり(1cm2)の圧縮仕事量WCを測定する。
【0034】
おむつ外表面の感触を柔らかくする観点から、おむつ幅方向における隣り合った襞16の頂点間の距離P(図5参照)は、5〜30mm、特に7〜25mmであることが好ましく、おむつ厚み方向Zにおける襞16の高低差T(図5参照)は、2〜15mm、特に5〜12mmであることが好ましい。なお、このようなピッチP及び高低差Tを有する襞は上腹部領域A2(B2)に形成された全襞の80%以上であればよく、90%以上であることが好ましい。また、このような襞は上腹部領域A2(B2)の縦方向の中央領域に存在していればよく、上下端(ウエストG寄り部分及び下腹部G寄り部分)では必ずしも必要ではない。また、距離P、高低差Tともに均一である必要はない。
【0035】
また、本実施形態のおむつ1においては、前述の通り、上腹部領域A2,B2の内側に内側シート13(内層シート14と補助シート15)を有し、その内側シート13に伸長状態で固定された内側弾性部材71の収縮により、内側シート13(内層シート14と補助シート15)に多数の襞ないし凹凸が生じて、内側ギャザー(不図示)が形成される。
そのため、おむつの外表面の柔らかさを向上させつつ、着用者に対するフィット性やおむつのずり落ち防止性を向上させることができる。
なお、内側ギャザーは、外表面を形成するシートより内側に位置するシートが弾性部材によって襞寄せされて生じるギャザーである。
【0036】
肌に対するフィット性やずり落ち防止性を向上させる観点から、上腹部領域A2に配した内側弾性部材71の配設領域の幅(分布する幅)L21(図3,4参照)は、成人用のおむつにおいては25〜100mm、特に30〜80mmであることが好ましく、幼児用のおむつにおいては15〜50mm、特に20〜45mmであることが好ましい。上腹部領域B2における内側弾性部材71の配設領域の幅L21(図3,4参照)も同様の数値範囲内であることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態のおむつ1においては、腹側部A及び背側部Bのそれぞれにおいて、上腹部領域A2,B2の上端(ウエスト領域側の端)のおむつ幅方向Xの長さが、上腹部領域A2,B2の下端(下腹部領域側の端)のおむつ幅方向Xの長さよりも短くなっている。ここでいう、おむつ幅方向Xの長さは、おむつの自然状態における一対のサイドシール部間の直線距離である。このようにすることによって、浮き部の皺が下端部に向かって拡がるように湾曲した形状となるので、装着時に指が引っ掛け易くなって装着させ易くなる。また、着用中では大きな襞の形成によって外部へ物品内蒸気が逃げ易くなり、ムレの抑制に有効である。なお、このような襞を形成するには、ウエストギャザーを形成するウエスト弾性部材51の伸長率を、下腹部ギャザーG3を形成する下腹部弾性部材91の伸長率よりも大きくして外層シート12に接合すればよい。
【0038】
また、本実施形態のおむつ1によれば、前述のように、下腹部弾性部材91は、吸収性本体10と重なる部分の中央部に配されていないか、該中央部においては弾性伸縮性を発現しないようになされているため、吸収性本体や吸収体が縮んで、上腹部領域の内側ギャザーが過度に縮むことを防止することができる。そのため、 胴回りのフィット性を高めつつ、吸収性能を阻害しない。また、上腹部において襞が下腹部側に向かって湾曲しやすくなるので、結果として大きな襞が形成され易くなり、柔らかさ、着用時の摘み易さ、着用中のムレ抑制の観点から好ましい。
【0039】
ウエスト領域A1,B1に配するウエスト弾性部材51の本数は、それぞれ、2〜15本であることが好ましく、より好ましくは5〜12本である。上腹部領域A2,B2に配する内側弾性部材71の本数は、それぞれ、2〜10本であることが好ましく、より好ましくは3〜8本である。下腹部領域A3,B3に配する下腹部弾性部材91の本数は、それぞれ、2〜10本であることが好ましく、より好ましくは3〜8本である。なお、本実施形態における下腹部弾性部材ように、弾性部材が、おむつ幅方向に分割されて配されている場合、左右の2本を纏めて1本と数える。
【0040】
上述したおむつ1の各部の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、吸収体4、及び側方カフス8形成用シート等としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。裏面シート3は、透湿性を有するものでも有しないものでも良い。
【0041】
また、外層シート12,内層シート14,補助シート15としても、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられている各種のシート材を特に制限なく用いることができるが、不織布を用いることが好ましく、不織布としては、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布の単層の不織布又はこれらが2層以上に積層された積層不織布等が好ましい。また、外層シート12,内層シート14,補助シート15として、不織布とフィルムとを一体化したシート等を用いることもできる。
【0042】
外層シート12,内層シート14及び補助シート15は、それぞれ、スパンボンド不織布であることが好ましい。引っ張り強度に優れるスパンボンド不織布を使用することにより、各シートの目付の低減が可能であり、シートの剛性低下により、外層シート12と内側シート13との間に空間が形成されやすくなり、外表面の肌触りや柔軟性も向上する。一般的にスパンボンド不織布はエアースルー不織布等と比較して風合いが硬いとされているが、本発明によれば、スパンボンド不織布を使用した場合においても、おむつ外表面の感触を、充分に柔らかくすることができ
また、目付が20g/m2以下のスパンボンド不織布は、平滑性に優れるため、シートや弾性部材等からなる各部材間の接着性が向上し、接着剤の使用量を低減可能であるため、この観点からも、おむつ1の柔軟性の向上を図ることができる。また、通気性や透湿性が良好となるので好ましい。
スパンボンド不織布は、柔軟加工を施されたものが好ましい。柔軟加工としては、不織布への柔軟剤塗工、製造時のエンボス加工のほか、原料樹脂への柔軟剤練り込み等が挙げられる。
【0043】
また、外層シート12,内層シート14及び補助シート15、特に外層シート12には、非伸長性のシートを用いることが好ましい。「非伸長性のシート」は、少なくともおむつ(着用物品)の幅方向Xと同方向の最大伸度が10%以下である(長さが1.1倍までしか伸びない)ことが好ましい。
<最大伸度の測定方法>
長さ50mm、幅25mmのサンプル片を用意し、テンシロン装置を用いて、チャック間にサンプル片を固定し、300mm/minの速度で伸長させ、破断した時点の伸度を最大伸度とする。破断した時点とは、伸長率と荷重の関係曲線において引張荷重が最大値を示す点である。
【0044】
弾性部材51,61,71,81,91の形成素材としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。弾性部材の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、楕円形又は多角形状等の糸状(糸ゴム等)、若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。
【0045】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
【0046】
例えば、上述した実施形態のおむつ1においては、ウエスト開口縁W近傍の一部のウエスト弾性部材51は、外層シート12と、外層シート12の折り返し部分12aとの間に固定されていたが、これに代えて、内層シート14をウエスト開口縁W側に更に延在させ、総てのウエスト弾性部材51を、内層シート14と外層シート12との間に固定することもできる。
【0047】
また、上述した実施形態のおむつ1においては、背側部B及び腹側部Aの両方に、外層シート12に固定されたウエスト弾性部材51を有するウエスト領域、内側シート13に内側弾性部材71が固定された上腹部領域、及び外層シート12に固定された下腹部弾性部材91を有する下腹部領域が形成されていたが、上述した構成の、ウエスト領域、上腹部領域及び下腹部領域は、腹側部Aのみ又は背側部Bのみに存在していても良い。腹側部Aのみに存在する場合、背側部Bは、図3及び図4を参照して説明した腹側部Aの構成のうちの任意の一部のみの構成を有していても良い。背側部Bのみに存在する場合、腹側部Aは、図3及び図4を参照して説明した腹側部Aの構成のうちの任意の一部のみの構成を有していても良い。
【0048】
また、外装体は、外層シート12及び内層シート14が、それぞれ、腹側部A、股部C及び背側部Bに亘って連続しているものに代えて、腹側部A及び背側部Bに、互いに別体の外層シート12及び/又は内層シート14が配されているものであっても良い。
また、パンツ型の着用物品は、成人用又は幼児用のパンツ型使い捨ておむつの他、パンツ型の生理用ナプキン等であっても良い。
【0049】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【実施例】
【0050】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1〜4に示す外装体構造を備えたパンツ型おむつを作成した。外層シート12、内層シート14として坪量18g/cm2のポリプロピレン製スパンボンド不織布、補助不織布15として坪量20g/cm2のSMS不織布を使用した。吸収性本体、レッグ弾性部材、ウエスト弾性部材としては花王(株)製「リリーフ 抗菌消臭 うす型はつらつパンツ」と同じものを使用した。また、上腹部弾性部材と下腹部弾性部材については、上記商品の胴回りに配された弾性部材と同じものを使用した。また、図3において、L1=30mm、L2=60mm、L21=50mmとし、ウエスト弾性部材は10本、上腹部弾性部材は3本、下腹部弾性部材は6本とし、サイドシール間の非接着領域R1には外層シート12と内層シート14との接着部を設けなかった。また、ウエスト弾性部材は伸長率1.5倍、下腹部弾性部材は伸長率1.2倍で外層シート12に接着固定し、外層シートには細かいギャザーが形成され、その間の領域である上腹部領域には両ギャザーに挟まれて大きな皺が形成されていた。上腹部領域の圧縮仕事量を測定したところ、1.3gfcm/cm2であった。
本実施例のパンツおむつと市販の大人用パンツ型おむつ3品(いずれも、外層に、ウエストから下腹部にかけて配された弾性伸縮部材によるギャザーが形成されたおむつで、上腹部領域において外層と内層の間に浮きがないものであり、それぞれの圧縮仕事量は0.6、0.8、0.8gfcm/cm2)について比較を行ったところ、実施例のパンツおむつは着用操作がし易く、柔らかい外見とともに実際の風合いも柔らかいものであった。
【0051】
(実施例2)
外層シート12を坪量16g/cm2のポリプロピレン製スパンボンド不織布に変更し、非接着領域に外層シート12と内層シート14との部分的接着を合計で全幅の8%設けた以外は実施例1と同じパンツおむつを作成した。圧縮仕事量は1.7gcm/cm2であった。実施例1のおむつと同様に、着用操作がし易く、柔らかい外見と共に実際の風合いも柔らかいものであった。
【符号の説明】
【0052】
1 パンツ型の使い捨ておむつ(パンツ型の着用物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 ウエスト開口部
6 レッグ開口部
10 吸収性本体
11 外装体
12 外層シート
12a,12b 外層シートの折り返し部分
13 内側シート
14 内層シート
15 補助シート
16 襞
51 ウエスト弾性部材
61 レッグ部弾性部材
71 内側弾性部材
81 側方カフス弾性部材
91 下腹部弾性部材
A 腹側部
A1 ウエスト領域
A2 上腹部領域
A3 下腹部領域
B 背側部
B1 ウエスト領域
B2 上腹部領域
R1 非接合領域
B3 下腹部領域
C 股部
G1 ウエストギャザー
G3 下腹部ギャザー
F 浮き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を形成する外層シート及び該外層シートより内側に位置する内側シートを備え、腹側部と背側部の間を股部を介して延びる縦方向とこれに交差する幅方向を有する、着用者のウエスト部から股部にかけて覆うように装着される着用物品であって、
前記腹側部及び前記背側部の少なくとも何れか一方は、前記外層シートに伸長状態で固定された弾性部材によってウエストギャザーが形成されたウエスト領域、前記外層シートに伸長状態で固定された弾性部材によって下腹部ギャザーが形成された下腹部領域、及び該ウエスト領域と該下腹部領域との間に位置し、前記外層シートに弾性部材が固定されていない上腹部領域を有しており、
前記上腹部領域における前記外層シートに、着用物品の自然状態において、前記ウエストギャザー及び前記下腹部ギャザーによって生じた複数本の襞が形成されている、着用物品。
【請求項2】
前記上腹部領域は、該上腹部領域を有する腹側部又は背側部を前記幅方向に120%伸長した時の圧縮仕事量が1.0gfcm/cm2以上である、請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記上腹部領域においては、前記外層シートと前記内側シートとの間が非接合状態となっており、且つギャザー形成用の弾性部材が、該内側シートに前記幅方向に延びて固定されている、請求項1又は2記載の着用物品。
【請求項4】
着用物品の自然状態において、前記上腹部領域の上端の前記幅方向の長さが、該上腹部領域の下端の前記幅方向の長さより短い、請求項1又は2記載の着用物品。
【請求項5】
前記下腹部領域に配された前記弾性部材は、前記吸収性本体と重なる部分の中央部に配されていないか、該中央部においては弾性伸縮性を発現しないようになされている、請求項1〜4の何れか1項記載の着用物品。
【請求項6】
前記外層シートが、スパンボンド不織布からなる、請求項1〜5の何れか1項記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102885(P2013−102885A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247914(P2011−247914)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】