説明

着脱式防煙垂壁

【課題】建築資材や搬送車両等が衝突しても破損することなく簡単に修復できる着脱式防煙垂壁を提供する。
【解決手段】不燃シート3の上端部が挿入される挿入空間Sが形成された天井レール2を天井面Cに取り付け、この挿入空間Sに不燃シート3の上端部を挿入し、この挿入空間S内に弾性部材4を挿入する。すると、弾性部材4の弾性復元力により不燃シート3の上端部が天井レール2に押圧されるため、不燃シート3が着脱可能に天井レール2に保持される。これにより、不燃シート3に建築資材や搬送車両等が衝突すると、不燃シート3が天井レール2から外れて防煙垂壁の破損が防止され、天井レール2から不燃シート3が外れても、簡単に元の状態に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災時などに発生する煙の流動を一時的に遮断する防煙垂壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防煙垂壁は、天井に設けられた天井レールにガラスパネルの上端部を嵌め込むと共に、この天井レールに取り付けた吊り下げボルトに固定された下部受金物にガラスパネルの下端部を嵌め込むように、順次ガラスパネルを建て込んで固定する方法で施工が行われている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような防煙垂壁は、建築物に固定されているため、地震などで面内変形や面外変形を受けた際に、ガラスパネルがこれらの変形に耐えられず、ガラスパネルが破損する可能性がある。
【0003】
この点、特許文献2には、天井に設けられた取り付けフレームに不燃材を設けた保持フレームを吊下支持するとともに、保持フレームの両側端部と建物の壁部との間に緩衝壁を設けることで、地震などで面内変形や面外変形を受けた際の耐震性を向上させる防煙垂壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3045590号公報
【特許文献2】特開2007−082759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の防煙垂壁は、地震などの揺れに対応可能となったが、本発明者らが防煙垂壁の施工された現場を観察して回ったところ、地震などの揺れにより防煙垂壁が破損する以外に、人が建築材料を運搬する際や工事車両等が通行する際にも、建築材料や工事車両等が衝突して防煙垂壁が頻繁に破損する問題があることを突き止めた。
【0006】
このような問題は当業界においても全く知られていない。このため、特許文献2でも、頻繁に建築材料や工事車両等が衝突することまでは想定されておらず、繰返し衝撃を受けても破損しない構造や、衝撃を受けても簡単に修復することができる構造については、全く考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は、繰返しの衝撃によっても破損することなく簡単に修復可能な着脱式防煙垂壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る着脱式防煙垂壁は、可撓性を有する不燃シートと、天井面に取り付けられて、対向する一対の側壁により不燃シートの上端部が下方から挿入される挿入空間が形成される天井レールと、天井レールの一対の側壁のうち何れか一方の側壁と、挿入空間に挿入された不燃シートの上端部との間の位置に挿入されて、不燃シートを天井レールに対して着脱可能に保持する弾性部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る着脱式防煙垂壁によれば、天井レールに不燃シートを吊り下げた状態において、弾性部材が、天井レールの側壁の内面と不燃シートとの間の位置に挿入されることにより、天井レールの一方の側壁の内面と協働して不燃シートを動かないように拘束する。そして、建築材料や工事車両等との衝突のように直接的に不燃シートに水平方向の大きな力が入力されると、水平方向の力を受けた不燃シートにより弾性部材が弾性変形することにより、不燃シートの一部又は全部が側壁から離れて、不燃シートと側壁との接触面積が小さくなるため、不燃シートと側壁との間に生じる摩擦力が小さくなり、天井レールから不燃シートが外れる。このため、繰返しの衝撃によっても防煙垂壁が破損するのを防止することができる。しかも、天井レールに対する不燃シートの保持は、弾性部材の弾性復元力を利用した簡易な構造によるものであるため、天井レールから不燃シートが外れても、簡単に修復することができる。
【0010】
この場合、弾性部材としては、弾性復元力を有するものであればどのようなものでもよく、例えば、球状のゴム、ゴム管、樹脂製のスポンジなどが挙げられる。その中でも、弾性部材は、鋼製の板バネであることが好ましい。このように、板バネで弾性部材を構成することで、弾性部材が弾性変形しても不燃シートと弾性部材との接触面積は殆ど変わらないため、不燃シートと弾性部材との接触面積に起因する摩擦力の影響を排除することができる。このため、ゴム管のように弾性変形すると不燃シートとの接触面積が増加する弾性部材を用いた場合と比べて、不燃シートに水平方向の大きな力が入力される場合に、不燃シートを外れやすくすることができる。
【0011】
また、一対の側壁における挿入空間を形成する内面に、弾性部材を係止する山状の係止部が形成されていることが好ましい。このように、側壁の内面に山状の係止部を形成することで、弾性部材が挿入空間から脱落するのを防止することができ、弾性部材が挿入空間から脱落することにより不燃シートが天井レールから外れることも防止することができる。
【0012】
更に、不燃シートは、ガラス繊維強化シートであることが好ましい。このように、ガラス繊維強化シートで不燃シートを構成することで、不燃シートに適度な剛性を持たせることができるため、建築材料や工事車両等が衝突しても不燃シートを破損させることなく天井レールから外すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、繰返しの衝撃によっても破損することなく簡単に修復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る防煙垂壁を示す断面図である。
【図2】不燃シートに水平方向の大きな力が作用したときの状態を示す図である。
【図3】本実施形態に係る他の防煙垂壁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る着脱式防煙垂壁の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る防煙垂壁を示す正面図である。本実施形態に係る防煙垂壁1は、天井面Cに沿って水平方向に延在するとともに、壁面に沿って天井面Cから鉛直方向に向けて垂下されることで、火災時などに発生する煙の流動を一時的に遮断するものである。図1に示すように、防煙垂壁1は、天井レール2と、不燃シート3と、弾性部材4と、を備える。
【0017】
天井レール2は、不燃シート3を着脱可能に保持して吊り下げるものである。天井レール2は、不燃性のアルミやステンレスなどの金属材で長尺のレール状に形成されており、全長に亘って略同一断面の型材で形成される。そして、天井レール2は、対向する一方の壁面から他方の壁面まで水平方向に直線状に延在するように、天井面Cに対するネジ留めなどにより天井面Cに配設されている。
【0018】
この天井レール2は、鉛直方向下方に向けて開口した断面コ字状に形成されており、天井面Cに取り付けられる天井部2aと、天井部2aから鉛直方向下方に向けて直線状に延びる一対の対向する側壁部2b及び側壁部2cと、が形成されている。そして、側壁部2bと側壁部2cとの間に、不燃シート3が挿入される挿入空間Sが形成されている。
【0019】
この一対の側壁部2b及び側壁部2cには、挿入空間Sを形成する内面に、山状の1又は複数の係止部2dが形成されている。係止部2dは、弾性部材4を鉛直方向下方から係止するものであり、三角形断面、台形断面、円形断面など、様々な形状に形成される。なお、係止部2dは、側壁部2b及び側壁部2cの内面を削り出すことに形成してもよく、側壁部2b及び側壁部2cの内面を隆起させることにより形成してもよい。
【0020】
不燃シート3は、煙の流動を一時的に遮断するものである。不燃シート3は、不燃性及び可撓性を有する素材によりシート状に形成されており、例えば、ガラス繊維強化シートが用いられる。このガラス繊維強化シートは、ガラス繊維織物と、このガラス繊維織物に樹脂を含浸及び硬化させた樹脂被覆層と、により構成される。ガラス繊維織物の織組織は、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。ガラス繊維強化シートを構成する樹脂被覆層を構成する樹脂は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。なお、樹脂被覆層として、上記樹脂に、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤などの添加物を含めるのが好ましい。
【0021】
そして、ガラス繊維強化樹脂シートは、不燃性及び剛性を向上させるため、以下のものであることが好ましい。すなわち、ガラス繊維織物を構成するガラス繊維糸の番手は、5〜70texが好ましく、10〜35texが更に好ましい。また、ガラス繊維糸に含まれるフィラメント(ガラス繊維)の直径は、1〜20μmが好ましく、3〜12μmが更に好ましい。また、単位面積当たりのガラス繊維織物の質量は、10〜300g/mが好ましく、20〜300g/mが更に好ましい。また、単位面積当たりの樹脂被覆層の質量は、10〜500g/mが好ましい。なお、ガラス繊維織物には、ガラス繊維処理剤で表面処理するのが好ましい。
【0022】
このように構成される不燃シート3は、その上端部が天井レール2の挿入空間Sに挿入され、弾性部材4により天井レール2に対して着脱可能に保持される。なお、不燃シート3の両側端部及び下端部は、自由端とすることが好ましいが、不燃シート3の両側端部は、磁石などを用いて対向する両壁部に着脱可能に取り付けてもよい。
【0023】
弾性部材4は、不燃シート3の上端部が挿入されている天井レール2の挿入空間Sにおける、天井レール2の側壁部2b又は側壁部2cと挿入空間Sに挿入された不燃シート3の上端部との間の位置に挿入されて、不燃シートを天井レール2に対して着脱可能に保持するものである。弾性部材4は、1枚の薄鋼板を屈曲させた板バネにより構成されている。この弾性部材4は、第一板バネ部4aと、第二板バネ部4bと、第一板バネ部4aと第二板バネ部4bとを鋭角に屈曲して接続する屈曲部4cと、を備える。第一板バネ部4aは、平板状に形成されている。第二板バネ部4bは、断面くの字状に形成されており、その先端部が、屈曲部4dにより屈曲されて第一板バネ部4a側に折り返されている。
【0024】
なお、弾性部材4及び挿入空間Sの寸法は、特に限定されるものではないが、挿入空間Sに挿入された弾性部材4が挿入空間Sから脱落しないように、弾性部材4の自然状態における幅d(第一板バネ部4aから第二板バネ部4bの屈曲部4dに至る寸法)は、挿入空間Sの幅D(側壁部2bと側壁部2cとの離間距離)以上であることが好ましい。また、挿入空間Sの開口から挿入空間Sに挿入された弾性部材4を見え難くするために、弾性部材4の長さl(第一板バネ部4aの長さ又は第二板バネ部4bの長さの何れか長い方)は、一対の側壁部2b及び側壁部2cで形成される挿入空間Sの深さL(側壁部2b及び側壁部2cの長さ)未満であることが好ましい。
【0025】
そして、このように構成される弾性部材4を、不燃シート3の上端部が挿入されている天井レール2の挿入空間Sに挿入すると、弾性部材4は、弾性変形して第一板バネ部4aと第二板バネ部4bとの屈曲角度が小さくなる。このため、第一板バネ部4aと第二板バネ部4bとの屈曲角度を元に戻そうとする弾性部材4の弾性復元力により、挿入空間Sに挿入されている不燃シート3の上端部が、側壁部2b又は側壁部2cに付勢され、不燃シート3の上端部と側壁部2b又は側壁部2cとが面接触した状態で、不燃シート3が天井レール2に対して保持される。
【0026】
このとき、挿入空間Sに対する弾性部材4の挿入方向は、特に限定されるものではなく、第一板バネ部4a側に不燃シート3が配置されるように弾性部材4を挿入空間Sに挿入してもよく、第二板バネ部4b側に不燃シート3が配置されるように弾性部材4を挿入空間Sに挿入してもよい。
【0027】
第一板バネ部4a側に不燃シート3が配置されるように弾性部材4を挿入空間Sに挿入すると、弾性部材4は、第一板バネ部4aにおいて不燃シート3と面接触し、第二板バネ部4bの屈曲部4dにおいて側壁部2b又は側壁部2cと点接触する。そして、第二板バネ部4bの屈曲部4dが、側壁部2b又は側壁部2cに形成された係止部2dに鉛直方向下方から係止される。
【0028】
第二板バネ部4b側に不燃シート3が配置されるように弾性部材4を挿入空間Sに挿入すると、弾性部材4は、第一板バネ部4aにおいて側壁部2b又は側壁部2cと面接触し、第二板バネ部4bの屈曲部4dにおいて不燃シート3と点接触する。そして、弾性部材4の弾性復元力により第二板バネ部4bの屈曲部4dが不燃シート3を側壁部2b又は側壁部2cに押圧することで、第二板バネ部4bの屈曲部4dが、不燃シート3を介して、側壁部2b又は側壁部2cに形成された係止部2dに鉛直方向下方から係止される。
【0029】
なお、弾性部材4は、連続的に挿入空間Sに挿入してもよいが、不燃シート3を歪ませずに弾性部材4を挿入空間Sに挿入するのが困難になるため、間欠的に挿入空間Sに挿入することが好ましい。この場合、弾性部材4の挿入間隔は、弾性部材4の材質や、挿入空間Sの開口幅などを考慮して適宜設定することができ、例えば、200mm以上1000mm以下であることが好ましい。1000mmより広いと、不燃シート3が弛む可能性があり、見た目が悪くなる。一方、200mmより狭いと、不燃シート3は弛まないが、弾性部材4を挿入空間Sに挿入する手間が面倒であるため、作業性が悪くなる。
【0030】
次に、図2を参照して、天井レール2から吊り下げられた不燃シート3に外力が作用したときの防煙垂壁1の動作状態について説明する。図2は、不燃シートに水平方向の大きな力が作用したときの状態を示す図であり、図2(a)は、第一板バネ部4aと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置した場合の状態を示しており、図2(b)は、第二板バネ部4bの屈曲部4dと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置した場合の状態を示している。
【0031】
まず、地震時の揺れのように直接的に不燃シート3に力が加わることなく不燃シート3に水平方向の弱い力が入力される場合を考える。この場合、第一板バネ部4aと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置しても(図2(a)参照)、第二板バネ部4bの屈曲部4dと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置しても(図2(b)参照)、不燃シート3が撓むことにより水平方向の力を逃がすことができるため、天井レール2から不燃シート3が外れにくい。
【0032】
次に、地震時の揺れのように直接的に不燃シート3に力が加わることなく不燃シート3に鉛直方向の力が入力される場合や、不燃シート3に直接的に鉛直方向の力が入力される場合など、不燃シート3に鉛直方向の力が入力される場合を考える。この場合、第一板バネ部4aと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置しても(図2(a)参照)、第二板バネ部4bの屈曲部4dと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置しても(図2(b)参照)、不燃シート3と側壁部2b又は側壁部2cとの接触面積が変わらず、不燃シート3と側壁部2cとの間に大きな摩擦力が働くため、天井レール2から不燃シート3が外れにくい。
【0033】
次に、図2に示すように、建築材料や工事車両等との衝突のように直接的に不燃シート3に大きな水平方向(図に示す矢印方向)の力が入力される場合を考える。
【0034】
この場合、図2(a)に示すように、第一板バネ部4aと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置すると、水平方向の力を受けた不燃シート3により第一板バネ部4aが第二板バネ部4b側に押圧されるため、第一板バネ部4aと第二板バネ部4bとの屈曲角度が小さくなるように弾性部材4が弾性変形する。このとき、不燃シート3と第一板バネ部4aとの接触面積は殆ど変わらないが、不燃シート3の一部が側壁部2cから離れるため、不燃シート3と側壁部2cとの接触面積が小さくなる。このため、不燃シート3と側壁部2cとの間に生じる摩擦力が小さくなり、天井レール2から不燃シート3が外れる。
【0035】
一方、図2(b)に示すように、第二板バネ部4bの屈曲部4dと側壁部2cとの間に不燃シート3を配置すると、水平方向の力を受けた不燃シート3により第二板バネ部4bの屈曲部4dが第一板バネ部4a側に押圧されるため、第一板バネ部4aと第二板バネ部4bとの屈曲角度が小さくなるように弾性部材4が弾性変形する。このとき、不燃シート3と第二板バネ部4bの屈曲部4dとの接触面積は殆ど変わらないが、不燃シート3の一部が側壁部2cから離れるため、不燃シート3と側壁部2cとの接触面積が小さくなる。このため、不燃シート3と側壁部2cとの間に生じる摩擦力が小さくなり、天井レール2から不燃シート3が外れる。
【0036】
なお、不燃シート3に図2に示す矢印と逆の方向の力が作用した場合は、不燃シート3が揺り戻される際に、不燃シート3の一部が側壁部2cから離れるため、上記同様、不燃シート3と側壁部2cとの間に生じる摩擦力が小さくなり、天井レール2から不燃シート3が外れる。
【0037】
そして、天井レール2から不燃シート3が外れると、再度、不燃シート3の上端部を天井レール2の挿入空間Sに挿入し、この挿入空間Sに弾性部材4を挿入することで、防煙垂壁1を元の状態に戻すことができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る防煙垂壁1によれば、天井レール2に不燃シート3を吊り下げた状態において、弾性部材4が、天井レール2の側壁部2b又は側壁部2cの内面と不燃シート3との間の位置に挿入されることにより、天井レール2の側壁部2b又は側壁部2cの内面と協働して不燃シート3を動かないように拘束する。このため、建築材料や工事車両等との衝突のように直接的に不燃シート3に水平方向の大きな力が入力されると、天井レール2から不燃シート3が外れるため、繰返しの衝撃によっても不燃シート3が破損するのを防止することができる。しかも、天井レール2に対する不燃シート3の保持は、弾性部材4の弾性復元力を利用した簡易な構造によるものであるため、天井レール2から不燃シート3が外れても、簡単に修復することができる。
【0039】
また、弾性部材4を板バネとすることで、弾性部材4が弾性変形しても不燃シート3と弾性部材4との接触面積は殆ど変わらないため、不燃シート3と弾性部材4との接触面積に起因する摩擦力の影響を排除することができる。このため、ゴム管のように弾性変形すると不燃シートとの接触面積が増加する弾性部材を用いた場合と比べて、不燃シートに水平方向の大きな力が入力される場合に、不燃シート3を外れやすくすることができる。
【0040】
また、側壁部2b及び側壁部2cの内面に山状の係止部2dを形成することで、弾性部材4が挿入空間Sから脱落するのを防止することができ、弾性部材4が挿入空間Sから脱落することにより不燃シート3が天井レール2から外れることも防止することができる。
【0041】
また、不燃シート3をガラス繊維強化シートとすることで、不燃シート3に適度な剛性を持たせることができるため、建築材料や工事車両等が衝突しても不燃シート3を破損させることなく天井レール2から外すことができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、弾性部材は構成の板バネであるものとして説明したが、弾性を有する部材であって、弾性復元力により不燃シート3を側壁部2b又は側壁部2cに付勢することができれば如何なる部材を用いてもよい。このため、弾性部材としては、例えば、球状のゴム、ゴム管、樹脂製のスポンジなどを用いることができる。
【0043】
また、上記実施形態において、弾性部材4は、第一板バネ部4aを平板状とし、第二板バネ部4bを断面くの字状とするものとして説明したが、何れも平板状であるものや、何れも断面くの字状であるものとしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態において、天井レールは、図1に示されるような部材を用いるものとして説明したが、図3に示すように、システム天井に用いられる天井レール12など、様々な種類の部材を用いることができる。図3に示す防煙垂壁の天井レール12は、鉛直方向下方に向けて開口した断面変形コ字状に形成されており、建物の構造物に吊り下げられる吊下部12aと、吊下部12aから二又に分岐した一対の対向する側壁部12b及び側壁部12cと、が形成されている。一対の側壁部12b及び側壁部12cは、鉛直方向下方に向けて延びるとともに、天井材15を載置するためにその下端部が互いに離間する方向に膨らんでいる。そして、この側壁部12bと側壁部12cとの間に形成される挿入空間Sに、不燃シート3及び弾性部材4が挿入されることで、不燃シート3が天井レール12に着脱可能に保持される。
【符号の説明】
【0045】
1…防煙垂壁(着脱式防煙垂壁)、2…天井レール、2a…天井部、2b…側壁部、2c…側壁部、2d…係止部、3…不燃シート、4…弾性部材、4a…第一板バネ部、4b…第二板バネ部、4c…屈曲部、4d…屈曲部、12…天井レール、12a…吊下部、12b…側壁部、12c…側壁部、15…天井材、C…天井面、S…挿入空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する不燃シートと、
天井面に取り付けられて、対向する一対の側壁により前記不燃シートの上端部が下方から挿入される挿入空間が形成される天井レールと、
前記天井レールの前記一対の側壁のうち何れか一方の側壁と、前記挿入空間に挿入された前記不燃シートの上端部との間の位置に挿入されて、前記不燃シートを前記天井レールに対して着脱可能に保持する弾性部材と、
を有することを特徴とする着脱式防煙垂壁。
【請求項2】
前記弾性部材は、鋼製の板バネである請求項1に記載の着脱式防煙垂壁。
【請求項3】
前記一対の側壁における前記挿入空間を形成する内面に、前記弾性部材を係止する山状の係止部が形成されている請求項1又は2に記載の着脱式防煙垂壁。
【請求項4】
前記不燃シートは、ガラス繊維強化シートである請求項1〜3の何れか1項に記載の着脱式防煙垂壁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−217800(P2012−217800A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90098(P2011−90098)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)