説明

着色されたエスモロール濃縮物

希釈した形態の濃縮エスモロール製剤と識別可能な濃縮エスモロール製剤が提供される。一実施形態では、この濃縮エスモロール製剤によって、濃縮物をラベルの付いた最初の容器の外に移した後でも、濃縮物であることの識別が可能になる。濃縮エスモロール製剤は、約25〜約1000mg/mlのエスモロール塩酸塩と、緩衝剤と、着色添加剤とを含有するものでよい。インドシアニングリーン、フェノフェイレン、ヘモグロビン、シアノコバラミン、パテントブルー、インジゴカルミンビタミンB2、天然に存在するビタミンおよびミネラルなど、含めることのできる着色添加剤はいくつもある。製剤中に含める量は、選択される着色添加剤に応じて決まるところが大きい。着色添加剤は、濃縮エスモロール製剤が濃縮物の少なくとも約1:4の希釈物と容易に識別されるだけの十分な量で含めるべきである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色添加剤を含有する着色された強化された濃縮エスモロール製剤を対象とする。より詳細には、本発明は、好ましくは非経口投与用に認可され、好ましくは静脈内投与用に認可されている非毒性の着色添加剤を含む濃縮エスモロール製剤を対象とする。本発明は、少なくとも濃縮物約1部に対して希釈剤4部という比率(1:4)の濃縮物の希釈物が容易に識別されるだけの十分な色の付いている濃縮エスモロール製剤を対象とする。
【背景技術】
【0002】
適切な投与量の薬物の投与は、誤りが生じかねない部分である。大部分の薬物は、適切な投与量では安全かつ有効であるが、高次の投与量では有害な結果を招くことがある。場合によっては、誤投与は命を脅かす結果を招きかねない。
【0003】
誤投与は、様々な濃度で提供される液体薬物に関しては残念ながら起こり得る。このことは、ほとんど無色透明な液体の場合など、濃縮された形態の薬物が希釈された形態と視覚によって識別不可能である場合、特にあてはまる。液体薬物は、使用準備済の製剤として届く場合もあり、投与前に希釈が必要となる濃縮製剤で届く場合もある。通常、濃縮製剤と希釈製剤を区別する手段は、薬物を収めている容器の内容表示しかない。追加される予防策として、容器それ自体またはふたに、着色などの異なる特質を与えることができる。しかし、薬物はシリンジなどの第2の容器に移されることが多いので、誤りはそれでも起こる。
【0004】
医療実施者が潜在的に危険な濃縮塩化カリウム製剤を識別するのを助けるために、着色添加剤を含める試みがなされている。ある既知の着色された塩化カリウム濃縮物では、メチレンブルーを使用して、実施者が希釈された形態から濃縮物を識別するのを助けている。残念ながら、この着色された濃縮塩化カリウム製剤には不十分な点があるので、濃縮された医薬製剤の着色は、濃縮された形態がそのまま投与されると潜在的に危険になることがあり、かつ濃縮された形態の薬物が希釈された形態と実質的に識別不可能であるすべての薬物で採用されてはいない。
【0005】
一般に使用される安全かつ有効な液体薬物で、濃縮された形態では潜在的に危険となる場合があり、また濃縮液がその液体の希釈された形態と識別不可能なものは多い。濃縮形態と希釈された使用準備済形態のどちらで提供されることもある、広く使用されている一液体薬物が、メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオナート酸塩酸塩(エスモロール塩酸塩)である。
【0006】
エスモロール(およびその薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩)および類似の化合物は、β−アドレナリン作動薬阻害活性を有する。β遮断薬は、適切な投与量で投与されたとき、心臓の障害の治療および予防に治療上有効な薬剤である。しかし、高用量は、危険なことに低心拍出量を引き起こす場合がある。短時間作用性のβ遮断薬であるエスモロールは、救急治療の現場で、患者の心拍数を制御するのによく使用される。エスモロール塩酸塩および類似化合物の使用準備済等張性製剤および濃縮製剤は、参照により本明細書に援用される特許文献1、特許文献2、および特許文献3で開示されている。エスモロールおよび類似化合物の生成方法、ならびにそのような化合物を使用して心臓障害を治療または予防する方法は、参照により本明細書に援用される特許文献4および特許文献5で開示されている。
【0007】
エスモロール製剤はほとんど無色透明なので、濃縮製剤は、希釈された製剤と視覚によって識別不可能である。エスモロール塩酸塩は、濃縮物として提供されることも、使用準備済の濃度で提供されることもあるので、その最初の容器から取り出された後に濃縮物であることを識別する何らかの手段を講じることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,017,609号明細書
【特許文献2】米国特許第6,310,094号明細書
【特許文献3】米国特許第6,528,540号明細書
【特許文献4】米国特許第4,387,103号明細書
【特許文献5】米国特許第4,593,119号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
着色された濃縮物が希釈物と容易に識別可能な濃縮エスモロール製剤を提供することは、望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明の一態様では、着色された濃縮エスモロール製剤が提供される。着色された濃縮エスモロール製剤は、約25〜約1000mg/mlのエスモロール(または薬学的に許容されるその塩)と、約3.5〜約7.0の間にpH調整された約0.005〜約2Mの緩衝剤と、着色添加剤とを含む。
【0011】
本発明の別の態様では、医療用製品が提供される。この医療用製品は、約25〜約1000mg/mlのエスモロール(または薬学的に許容されるその塩)と着色添加剤とを含有する濃縮エスモロール製剤、説明書、ならびに着色された濃縮エスモロール製剤および説明書を収容する包装を含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、濃縮エスモロール製剤を識別する方法が提供される。この方法は、約25〜約1000mg/mlのエスモロール(または薬学的に許容されるその塩)と着色添加剤とを含有する着色された濃縮エスモロール製剤を準備するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の一実施形態では、着色されて、濃縮物であることの識別が可能になり、着色された濃縮物の希釈物と識別可能になり、また他の使用準備済のエスモロール製剤と識別可能になっている濃縮エスモロール製剤が提供される。着色された濃縮物は、適切な濃度に希釈されてしまえば非経口投与に適する。
【0014】
着色されたエスモロール濃縮物は、水溶液中にエスモロールまたは薬学的に許容されるその塩、例えば塩酸塩と、着色剤とを含有する。本明細書では、「エスモロール」とは、エスモロール遊離塩基および薬学的に許容される塩を指す。この溶液は、適切な容器に詰め、高圧蒸気滅菌によって最終滅菌することが好ましい。あるいは、着色されたエスモロール濃縮物は、無菌充填手順によって調製することもできる。着色されたエスモロール濃縮物中のエスモロール塩酸塩の濃度は、約25〜約1000mg/mlでよい。濃縮物製剤中のエスモロール濃度は、約50〜500mg/mlの範囲に及ぶことが好ましく、より好ましくは約100〜300mg/ml、最も好ましくは約250mg/mlである。
【0015】
着色された濃縮物は、pHを約3.5〜約7.0の範囲に保つための薬学的に許容される緩衝剤も含んでよい。pHは、約4.5〜約5.5、より好ましくは4.9〜5.1の間に保つことが好ましい。エスモロールの分解は、pHが4.0〜6.0の範囲外にあるとき最も急速に起こり、pH約5.0付近で最も安定である。
【0016】
適切な緩衝剤は、所望のpH範囲で十分な緩衝能を提供し、患者への注射が薬学的に許容される緩衝剤である。本発明において有用な緩衝剤の例には、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、およびグリシン、ならびにこれらの共役酸が挙げられるがこれに限らない。緩衝剤の濃度は、約0.005モル濃度(M)〜約2Mでよい。好ましい実施形態では、緩衝剤は、酢酸ナトリウムと氷酢酸の組合せを含む。緩衝剤の好ましい組合せとして、約0.005〜約0.3Mの酢酸ナトリウムと約0.05〜約0.3Mの氷酢酸を挙げることができる。
【0017】
着色された濃縮物の安定性を向上させるために、1種または複数のアルコールを含めることができる。1種または複数のアルコールは、アルコールまたはアルコールの混合物に応じて、約1〜約60体積%の濃度で含めることができる。好ましいアルコールはエタノールであり、約5〜約60体積%、より好ましくは約10〜約45体積%、より好ましくは約20〜約30体積%の濃度で含まれることが好ましい。別の好ましいアルコールはベンジルアルコールであり、約1〜約20体積%の濃度で含めることが好ましい。
【0018】
エスモロールの安定性を高めるために、着色されたエスモロール濃縮物は、多水酸基化合物を好ましくは約5〜約60体積%、より好ましくは約10〜約45体積%、さらにより好ましくは約20〜約30体積%の濃度で含有する生理学的に許容される液体でもよい。生理学的に許容される液体多水酸基化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの、2個以上の近接するヒドロキシル基を有する炭素原子1個〜約10個のアルキル、分子量が約200〜約600ダルトンであるポリエチレングリコール、およびグリセリンが挙げられるがこれに限らない。好ましい液体多水酸基化合物として、2個以上の近接するヒドロキシル基を有する炭素原子1個〜約10個のアルキル、および分子量が約200〜約600ダルトンであるポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい液体多水酸基化合物はプロピレングリコールである。好ましい実施形態では、液体多水酸基化合物は、エタノールと共に、濃縮エスモロール溶液を安定化するのに有用である。好ましい組合せとしては、エタノールとプロピレングリコールが挙げられる。好ましい組成物では、エタノール対プロピレングリコールの体積比は約1:1でよい。別の好ましい実施形態では、エタノールの濃度は約20〜約30体積%、好ましくは約26.5体積%であり、プロピレングリコールの濃度は約20〜約30体積%、好ましくは約25体積%である。
【0019】
着色された濃縮物は、1種または複数の非毒性または比較的非毒性の着色添加剤を含有する。本発明で使用する着色添加剤または着色剤は、静脈内投与を含めた非経口投与用に認可されていることが好ましい。着色剤としては、シアノコバラミン、インジゴカルミン、パテントブルー、インドシアニングリーン、フェノフェイレン(phenopheylene)、およびヘモグロビンが挙げられるがこれに限らない。米国食品医薬品局は、参照により本明細書に援用されるそのウェブサイトwww.cfsan.fda.gov/〜dms/opa−col2.htmlまたは後継のウェブサイトで、食品、薬品、および医療機器に使用されている一連の着色剤を発表し、一覧にしている。こうした着色添加剤は、すべてが非経口の使用向けにすべての国々で認可されているわけではないことを留意されたい。本発明においておそらく有用である好ましい一揃いの着色剤として、その限りでないがビタミンB12(シアノコバラミン−色はピンク)を含めたビタミン系物質が挙げられる。ビタミンB2(リボフラビン−色は橙)。他の好ましい着色剤としては、天然ミネラル系の着色剤を挙げることができる。FDAウェブサイトで挙げられている着色剤、およびそこで挙げられているものを含む着色剤は、その着色剤が透明な溶液に対して差異が認められる十分な色を呈し、かつ対象への非経口投与が薬学的に許容される限り、本発明において有用となり得る。
【0020】
着色添加剤の量は、選択された特定の着色剤に応じて決まるところが大きい。着色剤は、着色されたエスモロール濃縮物が、エスモロールを含有する希釈された製剤とはっきり識別されるだけの十分な量で加えるべきである。エスモロール溶液は、緩衝剤またはエタノールやプロピレングリコールなどのアルコールを上で開示した濃度で加えても、ほとんど無色透明である。また、着色剤は、着色されたエスモロール濃縮物の少なくとも約1:4の希釈物が、好ましくは、着色された出発濃縮物よりも無着色のエスモロール濃縮物に色が類似した、すなわちほとんど無色透明であるかまたは希釈剤の色をした、希釈されたエスモロール製剤となるような量で加えるべきである。
【0021】
一実施形態では、約0.002〜約0.003mg/ml、好ましくは0.0024mg/mlの濃度のシアノコバラミンを、着色エスモロール濃縮物の着色剤として含める。この濃度で、そうでなければ無色透明のエスモロール溶液に淡いピンク色が付く。リンガー液などの非経口投与または静脈内に適する希釈剤を用いて少なくとも1:4の比で希釈したとき、得られる溶液は、少なくともほとんど無色または希釈剤の色となる。
【0022】
別の実施形態では、約0.0005〜約0.001mg/ml、好ましくは0.0008mg/mlの濃度のインジゴカルミンを、着色エスモロール濃縮物の着色剤として含める。このような濃度で、そうでなければ無色透明のエスモロール濃縮溶液に淡い青色が付く。リンガー液などの非経口投与または静脈内に適する希釈剤を用いて少なくとも1:4の比で希釈したとき、得られる溶液は、ほとんど無色または希釈剤の色となる。
【0023】
別の実施形態では、約0.0001〜約0.0003mg/ml、好ましくは0.0002mg/mlの濃度のパテントブルーを、着色エスモロール濃縮物の着色剤として含める。この濃度で、そうでなければ無色透明のエスモロール濃縮溶液に淡い青色が付く。リンガー液などの非経口投与または静脈内に適する希釈剤を用いて少なくとも1:4の比で希釈したとき、得られる溶液は、少なくともほとんど無色または希釈剤の色となる。
【0024】
着色されたエスモロール濃縮物は、リンガー液などの等張液もしくは当業界で使用される他の希釈剤または注射用水で希釈すると、患者への非経口投与を可能にすることができる。例えば、希釈された組成物は、ボーラス注射または静脈内注入の形で投与することができる。非経口投与に適する経路として、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、および髄腔内が挙げられる。希釈された濃縮物は、静脈内注入によって投与することが好ましい。
【0025】
着色されたエスモロール濃縮物を収容するのに適する容器は、当業界で知られている。そのような容器としては、バイアル、シリンジ、袋、瓶、およびアンプルの体裁が挙げられ、これらは、視覚による色の識別を可能にするために透明であるかまたは透明な部分を有するべきである。容器は、高分子材料製またはガラス製でよい。好ましい高分子容器は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含まない。容器は、優れたバリア特性を有することが好ましい。好ましい容器は、バリア層または第2の包装を含むガラス容器や高分子容器などの水分バリアを保持するものである。アルミニウム外装パウチは、それ自体には水分バリアのない高分子容器の第2の包装として使用するのに好ましい水分バリアである。
【0026】
好ましい容器は、加圧滅菌などの最終滅菌に耐え得るものにすべきである。あるいは、着色された濃縮物を、無菌的に調製するか、または加圧滅菌によって別に最終滅菌し、次いで無菌的手順を使用して無菌容器に入れることもできる。最終製品の最終滅菌を実現するのに医薬品業界で使用される典型的な高圧蒸気滅菌サイクルは、121℃で15分間である。本発明の着色されたエスモロール濃縮物は、115〜130℃の範囲の温度で5〜40分の範囲の一定時間にわたり許容される安定性のもとで高圧蒸気滅菌することができる。高圧蒸気滅菌は、119〜122℃の温度範囲で10〜36分の範囲の一定時間にわたり実施することが好ましい。
【0027】
一実施形態では、着色された濃縮物は、透明なガラスまたは高分子を主体とするシリンジに収容し、最終滅菌する。こうした充填済のシリンジを様々な体積で提供すると、充填済シリンジの内容物を標準の充填済静脈内投与液袋に分注することによる、体積の小さいまたは大きい非経口投与量の迅速かつ容易な調製を可能にすることができる。これによって、適切な希釈を誤算するリスクが排除されることになる。別の実施形態では、充填済シリンジは、エスモロール濃度が約25〜1000mg/mlである着色されたエスモロール濃縮物を収容する。
【0028】
本発明の別の実施形態では、医療用製品は、単一の包装中に一緒に保持された、着色されたエスモロール濃縮物を収容する容器と説明書とを含む。容器は、無色透明であるか、または少なくとも無色透明な部分を含む。この説明書によって、濃縮製剤であることを示すために着色添加剤が加えられていることを実施者に知らせることができる。説明書には、無希釈の着色されたエスモロール濃縮物または推奨される1または複数回の希釈後の着色された濃縮物の色の説明または表示を設けることもできる。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態では、濃縮エスモロール製剤の識別を可能にする方法が提供される。この方法は、着色された濃縮エスモロール製剤を準備するステップを含んでよい。着色された濃縮エスモロールは、約25〜約1000mg/mlのエスモロールと着色添加剤とを含有してよい。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであるが、いかなる点でもその範囲を限定すると解釈すべきでない。
【0031】
(実施例1)
以下で、配合、容器詰め、および高圧蒸気滅菌器での滅菌後に250mg/mlのエスモロールHClと着色剤とを含有する着色されたエスモロール濃縮物の調製について述べる。組成物の各成分の濃度を以下のとおり表1に示す。
【0032】
【表1】

配合、濾過、および充填用の機器およびガラス器具は、適切に洗浄し、発熱物質を除去する。フィルター組立品、充填用チューブ組立品、他の部品および機器は滅菌する。
【0033】
最終体積80パーセント(80%)の注射用冷水を配合槽に集める。次いで氷酢酸および酢酸ナトリウムを槽に加える。エスモロール塩酸塩を秤量し、槽に加える。プロピレングリコールおよびエタノールを秤量し、槽に加える。必要な量の着色剤を秤量し、槽に加える。すべての医薬添加剤が溶解するまで溶液を攪拌する。次いで1.0N水酸化ナトリウムまたは塩酸で溶液をpH5.0に調整する。溶液を注射用水で最終体積とし、混合する。着色されたエスモロール濃縮物を容器に移し、高圧蒸気滅菌して、濃度が約250mg/mlであるエスモロール塩酸塩溶液を得る。
【0034】
色は淡いピンク色であり、水で1:4希釈した後、得られる50mg/mlのエスモロール溶液は無色透明であり、濃度約0.00048mg/mlのシアノコバラミンを含有する。
【0035】
(実施例2)
以下で、配合、容器詰め、および高圧蒸気滅菌器での滅菌後に250mg/mlのエスモロールHClと着色剤とを含有する着色されたエスモロール濃縮物の調製について述べる。組成物の各成分の濃度を以下のとおり表2に示す。
【0036】
【表2】

表2の製剤は、着色剤および濃度が異なることを除き、実施例1の製剤と同様に作製した。
【0037】
色は淡い青色であり、水で1:4希釈した後、得られる50mg/mlのエスモロール溶液は無色透明であり、濃度約0.000004mg/mlのパテントブルーを含有する。
【0038】
(実施例3)
以下で、配合、容器詰め、および高圧蒸気滅菌器での滅菌後に250mg/mlのエスモロールHClと着色剤とを含有する着色されたエスモロール濃縮物の調製について述べる。組成物の各成分の濃度を以下のとおり表3に示す。
【0039】
【表3】

表3の製剤は、着色剤および濃度が異なることを除き、実施例1の製剤と同様に作製した。
【0040】
(実施例4)
以下で、25〜1000mg/mlのエスモロールHCLとベンジルアルコールとを含有するエスモロール濃縮物の調製について述べる。組成物の各成分の濃度は以下のとおりである。
【0041】
【表4】

配合、濾過、および充填用の機器およびガラス器具は、適切に洗浄し、発熱物質を除去した。フィルター組立品、充填用チューブ組立品、他の部品および機器は滅菌する。
【0042】
最終体積80パーセント(80%)の注射用冷水を配合槽に集める。次いで氷酢酸および酢酸ナトリウムを槽に加える。エスモロール塩酸塩を秤量し、槽に加える。必要な量のベンジルアルコールを秤量し、槽に加える。すべての医薬添加剤が溶解するまで溶液を攪拌する。次いで1.0Nの水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いて溶液をpH5.0に調整する。溶液を注射用水で最終体積とし、混合する。
【0043】
本発明について、特定の好ましい実施形態に即して述べてきたが、好ましい実施形態は、本発明の理念の実例にすぎないことを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の真意および範囲から逸脱することなく、当業者によって改変および/または変更がなされても差し支えない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約25〜約1000mg/mlのエスモロールと、
b)約0.005〜約2Mの緩衝剤と、
c)インドシアニングリーン、フェノフェイレン、ヘモグロビン、シアノコバラミン、パテントブルー、インジゴカルミン、ビタミンB2、ならびに天然に存在するビタミンおよびミネラルからなる群から選択される着色添加剤と
を含み、pHが約3.5〜約7.0である、着色された濃縮エスモロール製剤。
【請求項2】
前記緩衝剤が、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、およびグリシン、ならびにこれらの共役酸のうち少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記緩衝剤が酢酸ナトリウムおよび酢酸を含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
約1〜約60体積%のエタノールおよび約5〜約60体積%のプロピレングリコールをさらに含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
約26.5体積%のエタノールおよび25体積%のプロピレングリコールを含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記着色剤がシアノコバラミンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記着色剤が、約0.002〜約0.003mg/mlのシアノコバラミン、約0.0005〜約0.001mg/mlのインジゴカルミン、および約0.0001〜約0.0003mg/mlのパテントブルーからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
a)約250mg/mlのエスモロールHCl、
b)約17mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、
c)約0.00715ml/mlの氷酢酸、
d)約0.265ml/mlのエタノール、
e)約0.25ml/mlのプロピレングリコール、および
f)約0.0024mg/mlのシアノコバラミン
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
a)約250mg/mlのエスモロールHCl、
b)約17mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、
c)約0.00715ml/mlの氷酢酸、
d)約0.265ml/mlのエタノール、
e)約0.25ml/mlのプロピレングリコール、および
f)約0.0002mg/mlのパテントブルー
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
a)約250mg/mlのエスモロールHCl、
b)約17mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、
c)約0.00715ml/mlの氷酢酸、
d)約0.265ml/mlのエタノール、
e)約0.25ml/mlのプロピレングリコール、および
f)約0.0008mg/mlのインジゴカルミン
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
a)容器に収容された、約25〜約1000mg/mlのエスモロール塩酸塩と、約0.005〜約2Mの緩衝剤と、インドシアニングリーン、フェノフェイレン、ヘモグロビン、シアノコバラミン、パテントブルー、インジゴカルミン、ビタミンB2、ならびに天然に存在するビタミンおよびミネラルからなる群から選択される着色添加剤とを含む、濃縮エスモロール製剤、
b)説明書、ならびに
c)該容器および説明書を収容する包装
を含む医療用製品。
【請求項12】
前記緩衝剤が、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、グリシン、およびこれらの共役酸のうち少なくとも1種を含む、請求項11に記載の医療用製品。
【請求項13】
前記緩衝剤が酢酸ナトリウムおよび酢酸を含む、請求項12に記載の医療用製品。
【請求項14】
約5〜約60体積%のエタノールおよび約5〜約60体積%のプロピレングリコールをさらに含む、請求項13に記載の医療用製品。
【請求項15】
約26.5体積%のエタノールおよび25体積%のプロピレングリコールを含む、請求項14に記載の医療用製品。
【請求項16】
前記着色添加剤が、約0.002〜約0.003mg/mlのシアノコバラミン、約0.0005〜約0.001mg/mlのインジゴカルミン、および約0.0001〜約0.0003mg/mlのパテントブルーからなる群から選択される、請求項11に記載の医療用製品。
【請求項17】
a)約250mg/mlのエスモロールHCl、
b)約17mg/mlの酢酸ナトリウム三水和物、
c)約0.00715ml/mlの氷酢酸、
d)約0.265ml/mlのエタノール、
e)約0.25ml/mlのプロピレングリコール、および
f)約0.0008mg/mlのインジゴカルミン、約0.0002mg/mlのパテントブルー、約0.0024mg/mlのシアノコバラミンからなる群から選択される着色添加剤および量
を含む、請求項11に記載の医療用製品。
【請求項18】
前記説明書によって、前記濃縮エスモロール製剤に着色添加剤が加えられていることを知らせる、請求項11に記載の医療用製品。
【請求項19】
a)約25〜約1000mg/mlのエスモロールと、インドシアニングリーン、フェノフェイレン、ヘモグロビン、シアノコバラミン、パテントブルー、インジゴカルミン、ビタミンB2、天然に存在するビタミンおよびミネラルからなる群から選択される着色添加剤とを含有する、着色された濃縮エスモロール製剤を準備するステップ
を含む、濃縮エスモロール製剤の容易な識別を可能にする方法。

【公表番号】特表2010−528001(P2010−528001A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509321(P2010−509321)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/075069
【国際公開番号】WO2008/143682
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】