説明

着色アニオン電着塗料及び塗膜形成方法

【課題】陽極酸化皮膜の膜厚を5μm未満としたアルミニウム又はアルミニウム合金上においても、耐候性、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性及び意匠性に優れる塗装物品を提供すること。
【解決手段】カルボキシル基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)及び着色成分(D)を含有するアニオン電着塗料であって、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)の量が0.1〜10質量部、着色成分(D)の量が0.01〜30質量部であることを特徴とする着色アニオン電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性及び意匠性に優れ、特にアルミニウム又はアルミニウム合金の塗装に好適な着色アニオン電着塗料、及び該着色アニオン電着塗料を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用建材に用いられているアルミニウム又はアルミニウム合金は、脱脂、エッチング、中和を施し、陽極酸化処理(アルマイト処理)によってアルミニウム基材上に5〜15μm陽極酸化皮膜が形成される。その後、必要に応じて湯洗が行なわれた後、アニオン電着塗料を用いた電着塗装が行なわれている(図1参照)。
【0003】
このことによってアルミニウム又はアルミニウム合金の表面に、陽極酸化皮膜と、電着塗膜の複層被膜(図2、図3参照)を形成して、耐候性、塗膜硬度、付着性及び意匠性に優れた被膜が得られる。
【0004】
最近、大きく普及しているデジタルカメラや携帯電話などの電子機器類には、アルミニウム又はアルミニウム合金が多く使われるようになってきた。しかし、密着性を確保するためにアルミニウム基材上に5〜15μmの陽極酸化皮膜を施すと、陽極酸化皮膜が特定の色調を呈する為に、該皮膜上に着色アニオン電着塗膜を塗装すると意匠性が損なわれ、例えば意匠性が重視される電子機器への使用には問題があった。
【0005】
しかし、要求される色調を得るために陽極酸化皮膜を5μm未満とし、該皮膜上に着色アニオン電着塗膜を塗装して得られた塗膜は、付着性や耐衝撃性に問題があり、衣服と擦れたり、落としたり踏んだりすることが想定される電子機器類への使用には問題があった。
【0006】
特許文献1には、水酸基含有樹脂(A)、メラミン樹脂(B)、多価アルコール(C)、並びにリン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(D)を含有することを特徴とするアニオン電着塗料が開示されている。しかし、5μm未満の陽極酸化皮膜上にアニオン電着塗料を電着塗装して得られた塗膜は、付着性や耐衝撃性に問題があった。このような背景から、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を5μm未満であっても、付着性や耐衝撃性に優れるアニオン電着塗料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−320453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、陽極酸化皮膜の膜厚を5μm未満としたアルミニウム又はアルミニウム合金上においても、耐候性、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性及び意匠性に優れた塗膜が形成できる着色アニオン電着塗料を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)及びカルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル樹脂(C)(以下、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル樹脂(C)を「エポキシリン酸エステル樹脂(C)」と省略することがある)0.1〜10質量部、着色成分(D)0.01〜30質量部含有する着色アニオン電着塗料を電着塗装して塗膜を形成することによって、課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
1.カルボキシル基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、酸価5〜70mgKOH/gの分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)及び着色成分(D)を含有するアニオン電着塗料であって、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)の量が0.1〜10質量部、着色成分(D)の量が0.01〜30質量部であることを特徴とする着色アニオン電着塗料、
2.カルボキシル基含有樹脂(A)が、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合することによって得られるアクリル樹脂であって、これらラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、下記の式(1)で表される含窒素ラジカル重合性不飽和単量体(a)を0.1〜30質量%含有する1項に記載の着色アニオン電着塗料、
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は有機基、Rは、水素原子又はメチル基を表す)
3.陽極酸化皮膜厚さが5μm未満のアルミニウム基材に、1項又は2項に記載の着色アニオン電着塗料を電着塗装し、基材表面温度170〜220℃で10〜30分間加熱乾燥することを特徴とする塗膜形成方法、
4.3項の塗膜形成方法により得られる塗膜で覆われていることを特徴とする電子機器部品、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の着色アニオン電着塗料は、陽極酸化皮膜の膜厚を5μm未満としたアルミニウム又はアルミニウム合金上においても、耐候性、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性及び意匠性に優れる塗膜を得ることができる。このことから、衣服と擦れたり、落としたり踏んだりすることが想定される電子機器(例えば、デジタルカメラ、携帯電話用)の外装部品として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アルミニウム又はアルミニウム合金におけるライン工程の一例である。
【図2】従来の陽極酸化被膜と薄膜陽極酸化被膜のイメージ図である。
【図3】アルミニウム上に、陽極酸化皮膜を形成し、アニオン電着塗膜を塗装して得られた塗装物品の断面のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の着色アニオン電着塗料及び塗膜形成方法について説明する。
【0016】
[着色アニオン電着塗料]
本発明の着色アニオン電着塗料は、カルボキシル基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)及び着色成分(D)を含有するアニオン電着塗料であって、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)の量が0.1〜10質量部、着色成分(D)の量が0.01〜30質量部であることを特徴とする。
【0017】
カルボキシル基含有樹脂(A):
カルボキシル基含有樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するものであり、さらに好ましくは少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも耐候性、塗膜硬度、意匠性の面からアクリル樹脂が好適である。上記のアクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体及びその他のラジカル重合性不飽和単量体の混合物を共重合反応によって製造することができる。
【0018】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、
メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられる。
【0019】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を用いることができ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のC〜Cのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等;また、これら水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体とβ−プロピオラクトン、ジメチルプロピオラクトン、ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−カプリロラクトン、γ−ラウリロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトン等のラクトン類化合物との反応物等、商品名としては、プラクセルFM−1、プラクセルFM−2、プラクセルFM−3、プラクセルFA−1、プラクセルFA−2、プラクセルFA−3(以上、ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)等が挙げられる。また、その他のラジカル重合性不飽和単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のC〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類等、が挙げられる。また、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン、ビニルピリジン等のビニル芳香族化合物等が挙げられる。
【0020】
また、アルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体を用いることでき、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキキシプロピルジメチルメトキシシラン等;が挙げられる。
【0021】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する単量体を用いることができ、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート等;が挙げられる。本発明において、各化合物の語尾の「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0022】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、式(1)で表される(メタ)アクリルアミド系単量体(a)(以下、「単量体(a)」と略称することがある)を用いることができる。
【0023】
【化2】

【0024】
式(1)
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は有機基、Rは、水素原子又はメチル基を表す)
(メタ)アクリルアミド系単量体(a)としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ヘキソキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
本発明において、各化合物の語尾の「(メタ)アクリルアミド」は「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。(メタ)アクリルアミド系単量体(a)は、適宜に、単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
これらの単量体の配合割合としては、カルボキシル基含有アクリル樹脂を構成するラジカル重合性不飽和単量体の混合物の合計に対して、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体は1〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体は80〜99質量%、好ましくは82〜97質量%の割合で適宜に調整することによって、水分散性、安定性、耐候性、付着性を向上することができる。
また、カルボキシル基含有アクリル樹脂を構成するラジカル重合性不飽和単量体の混合物の合計に対して、(メタ)アクリルアミド系単量体(a)を0.1〜30質量%の範囲内で配合することにより、塗膜硬度が更に向上する。
【0026】
カルボキシル基含有樹脂(A)の製造は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体とその他のラジカル重合性不飽和単量体の混合物を窒素等の不活性ガスの存在下で50℃〜300℃、好ましくは60℃〜250℃に保持された有機溶剤中で、1時間〜24時間、好ましくは2時間〜10時間ラジカル重合反応させることによって得ることができる。
【0027】
ラジカル重合反応に使用する溶媒としては、例えば、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロパノキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0028】
また、これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類も併用することができる。
【0029】
ラジカル重合反応に用いる重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げらる。
【0030】
このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂(A)の「重量平均分子量」は5,000〜150,000、特に20,000〜100,000の範囲が好ましく、酸価は5〜180mgKOH/g、好ましくは10〜170mgKOH/gの範囲、水酸基価は3〜150mgKOH/g、好ましくは10〜130mgKOH/gの範囲が適している。
なお本明細書における重量平均分子量は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSK gelG4000HXL」、「TSK gelG3000HXL」、「TSK gelG2500HXL」、「TSK gelG2000HXL」(東ソー株式会社製)の4本を用いて、溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めた。
【0031】
アミノ樹脂(B)
アミノ樹脂(B)は、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、メラミン樹脂、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、該メチロール化アミノ樹脂のアルキルエーテル化物があげられる。
【0032】
上記メチロール化アミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂が好適であり、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の1種もしくは2種以上の1価アルコールで変性されたメラミン樹脂を使用することができる。
【0033】
上記のメラミン樹脂の市販品としては、例えば、ユーバン20SE−60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)などのブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM−100、スミマールM−40S、スミマールM−55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル232、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600、(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル235、サイメル202、サイメル232S、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0034】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)、及びアミノ樹脂(B)の配合割合は、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部を基準にして、カルボキシル基含有樹脂(A)50〜75質量部、好ましくは50〜65質量部、アミノ樹脂(B)25〜50質量部、好ましくは35〜50質量部となる範囲が、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性及び仕上り性の面から好ましい。
【0035】
分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)
分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)(以下、「エポキシリン酸エステル化合物(C)」と称することがある)は、エポキシ樹脂にリン酸化合物を付加することにより得られる。エポキシリン酸エステル化合物(C)中の水酸基とリン酸残基が、アルミニウム又はアルミニウム合金の陽極酸化皮膜が5μm未満であっ ても、塗膜の密着性を促進すると共に、仕上り性や安定性に寄与する。
上記、エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に変性剤を反応した変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応することにより得られる樹脂のいずれであってもよい。エポキシ当量としては、172〜4,000、好ましくは175〜1,000である。
【0036】
上記ビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができる。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0037】
上記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
リン酸化合物は、オルトリン酸、ピロリン酸が挙げられる。エポキシリン酸エステル化合物(C)の製造は、エポキシ樹脂にリン酸化合物を加え、例えば、イミダゾール類、ホスホニウム塩類等の触媒の存在下で、反応温度70〜150℃、好ましくは110〜130℃で、反応時間1〜8時間、好ましくは3〜6時間反応させて得ることができる。なおエポキシ樹脂のオキシラン基1モルに対して、リン酸化合物のHが、H/オキシラン基=0.5〜3、好ましくは1〜3の範囲で反応することが好ましい。
【0038】
このようにして得られたエポキシリン酸エステル化合物(C)の酸価は、5〜70mgKOH/g、好ましくは28〜60mgKOH/g、さらに好ましくは35〜57mgKOH/gの範囲であることが、5μm未満の陽極酸化皮膜であるアルミニウム又はアルミニウム合金において、塗膜の密着性向上の為に好ましい。
【0039】
なお、エポキシリン酸エステル化合物(C)の市販品は、例えばXU−8096.07、XU−71899.00、XQ−82908.00、XQ−82919.00、DER620−PP50、DER621−EB50、DER621−PP50(以上、ダウケミカル日本社製商品名)、エポトートZX1300、ZX1300−1(以上、東都化成社製商品名)などが挙げられる。
【0040】
このようなエポキシリン酸エステル化合物(C)の配合量は、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、0.1〜10.0質量部、好ましくは0.3〜8.0質量部、さらに好ましくは0.5〜6.0質量部の範囲で用いる。エポキシリン酸エステル化合物(C)が0.1質量部未満の場合、5μm未満の陽極酸化皮膜上における塗膜の密着性が十分でない。一方、10.0質量部を越えると塗料安定性や耐候性が低下するため好ましくない。
【0041】
着色成分(D)
意匠性を目的として着色成分(D)を配合する。着色成分(D)は、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、タートラジンレーキ、パーマネントイエロートナー、カドミウムイエロー、ベンジジンオレンジ、クロムバーミリオン、カドミウムオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ファーストオレンジレーキ、レーキレッドC、弁柄、ワッチングレッド、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、パーマネントレッド2B、パーマネントレッドFRLL、カーマインレーキ、キナクリドンレッド、メチルバイオレットレーキ、ファーストバイオレットB、キナクリドンバイオレット、インダスレンバイオレット、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、紺青、群青、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニングリーン、マーカライトグリーンレーキ、ピグメントグリーンB、ビリジアン、シェンナー、アンバー、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末など、有機顔料、無機顔料及び金属粉顔料や、染料や顔料を樹脂粉体と組み合わせた着色加工粉体及び蛍光顔料など、天然マイカの表面を金属酸化物で被覆したもの、合成マイカの表面を金属酸化物で被覆したパール顔料などを、適宣選択して用いることができる。
【0042】
着色成分(D)の中でも、特に、顔料を分散剤で分散させた加工顔料(d)を、塗料安定性、意匠性の面から好ましく用いることができ、例えば、ユニスパースイエロー10GN−S、ユニスパースDPPオレンジRA−S、ユニスパースレッド2G−S、ユニスパースバイオレットB−S、ユニスパースブルーB−S、ユニスパースグリーンG−S、ユニスパースブラックC−S(以上チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、コラニールイエロー10G130、コラニールレッドFGRG130、コラニールカーミンFB130、コラニールバイオレットRL130、コラニールブルーA2R200、コラニールブルーA2R130、コラニールブルーB2G130、コラニールグリーンGG131、コラニールブラックPR130、コラニールオキサイドブルーCD100、コラニールオキサイドグリーンG131、ホストファインブルーB2G、コラニールイエローHR、コラニールブラックT、(以上、クラリアント製)、EMFカラーイエロー3G、EMFオレンジO、EMFレッドHFB、EMFレッドHR、EMFブルーHG、EMFバイオレットHB(以上、東洋インキ製造(株)製)、NKW2103、NKW2104、NKW2105、NKW2117、NKW2167、NKW2108(以上、日本蛍光(株)製)などの市販品を例示することができる。
【0043】
着色成分(D)は、単独もしくは2種以上混合して使用することができ、その使用量は、使用目的によって異なるが、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01〜30質量部、好ましくは0.01〜25質量部、さらに好ましくは0.01〜10質量部の範囲内が、耐候性、耐衝撃性及び意匠性の面から適当である。
【0044】
なおカルボキシル基含有樹脂(A)の水分散化は、カルボキシル基含有樹脂(A)に、アミノ樹脂(B)及びエポキシリン酸エステル化合物(C)、必要に応じて、ブロック化ポリイソシアネート化合物を加えて、酸触媒、塩基性化合物、脱イオン水を加えてディスパーなどで攪拌しながら、水分散体を得ることができる。
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、従来から公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものを使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類などの有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同士の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0045】
ブロック化ポリイソシアネート化合物の市販品としては、バーノックD−750、バーノック−800、バーノックDN−950、バーノックDN−970もしくはバーノックDN15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、デスモジュールN、デスモジュールHL、デスモジュールILもしくはデスモジュールN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、タケネートD−202、タケネートD−110NもしくはタケネートD−123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、コロネートHL、コロネートEHもしくはコロネート203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)、デュラネート24A−90CX、デュラネートTPA−B80(旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0046】
上記の酸触媒は、例えば、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−アミノベンゼンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、n−オクタデシルベンゼンスルホン酸、n−ジブチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルナフタリンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
この中でも、ジノニルナフタレンスルホン酸が、良好な塗膜硬度を得る面からも好ましい。酸触媒の配合量としては、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01〜5質量部、好ましくは0.02〜1.0質量部、さらに好ましくは0.03〜0.2質量部が、硬化性と仕上り性の面から好ましい。
上記塩基性化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンがある。上記塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1〜1.2当量の範囲であることが好ましい。
【0048】
塗膜形成方法について
本発明の塗膜形成方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金に、脱脂、エッチング、中和を施し、次いで、陽極酸化(アルマイト)処理によって、アルミニウム又はアルミニウム合金上に5μm未満、好ましくは3μm未満の陽極酸化皮膜を形成する。
【0049】
その後、必要に応じて湯洗が行なわれた後、本発明の着色アニオン電着塗料を用いて、電着塗装を行う。次いで、水洗を行わず(ノンリンス)又は水洗(リンス)を行った後、
加熱乾燥することにより乾燥膜厚が30μm以下、好ましくは5〜20μm、さらに好ましくは8〜17μmの塗膜を得ることができる。なお、加熱乾燥条件は、通常、130〜200℃、好ましくは150〜190℃で、20〜50分間好ましくは25〜40分間である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0051】
製造例1 アクリル樹脂溶液No.1の製造例
反応容器中に混合溶剤(注1)21部を仕込み85℃に保持した中へ以下の「混合物(A)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行った後、混合溶剤(注1参照)にて固形分を調整し、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.1を製造した。アクリル樹脂No.1は、酸価33.9mgKOH/g、水酸基価52.0mgKOH/g、重量平均分子量35,000であった。
「混合物(A)」
スチレン 5.0部
メチルメタクリレート 36.0部
エチルアクリレート 37.5部
2−エチルヘキシルメタクリレート 4.0部
アクリル酸 5.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.0部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部。
【0052】
(注1)混合溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル/イソプロピルアルコー
ル/n−ブチルアルコール/エチレングリコールモノブチルエーテル=42部/42部/42部/84部。
【0053】
製造例2 アクリル樹脂溶液No.2の製造例
反応容器中に混合溶剤(注1)21部を仕込み85℃に保持した中へ以下の「混合物(B)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行った後、混合溶剤(注1参照)にて固形分を調整し、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.2を製造した。アクリル樹脂No.2は、酸価63mgKOH/g、水酸基価28mgKOH/g、重量平均分子量35,000であった。
「混合物(B)」
スチレン 13.0部
メチルメタクリレート 48.5部
エチルアクリレート 5.0部
アクリル酸 5.5部
n−ブチルアクリレート 11.0部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.0部
N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド 5.0部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部。
【0054】
比較製造例1 リン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂(特開2005−320453に準ずる)
温度計、還流冷却器、及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、jER828EL(注2)36.6部、ヤシ油脂肪酸19.2部を加えて90℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロマイド0.1部を加え、90℃で9時間反応させて、オルソリン酸モノブチルエステル14.1部を加える。その後90℃で1時間反応させて、固形分68%のリン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂No.1を得た。
なお、リン酸モノエステル及び一塩基酸で変性したエポキシ樹脂No.1の酸価は、5mgKOH/g未満であった。
【0055】
(注2)jER828EL:ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂、エ
ポキシ当量190、数平均分子量380。
【0056】
製造例3 エマルションNo.1の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂溶液No.1を92.9部(固形分65部)、サイメル232S(注3)35部(固形分35部)、DER621−PP50(注4)1.0部(固形分0.5部)、ジノニルナフタレンスルホン酸0.05部、トリエチルアミン1.9部、脱イオン水120.4部を加えて混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下して分散し、固形分を調整して40%のエマルションNo.1を得た。
【0057】
製造例4〜16 エマルションNo.2〜No.14の製造
表1の内容とする以外は、製造例3と同様に操作して、固形分40%のエマルションNo.2〜No.14を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
(注3)サイメル232S:三井サイテック社製、商品名、メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分100%
(注4)DER621−PP50:ダウケミカル社製、商品名、エポキシリン酸エステル化合物、酸価45mgKOH/g、固形分50.0%
(注5)DER621−EB50:ダウケミカル社製、商品名、エポキシリン酸エステル化合物、酸価35mgKOH/g、固形分50.0%
(注6)XU−7189.00:ダウケミカル社製、商品名、エポキシリン酸エステル化合物、酸価9.8mgKOH/g、固形分50.0%。
【0060】
製造例17 顔料分散ペーストNo.1の製造例
60%アミン中和アクリル樹脂系顔料分散樹脂(重量平均分子量36,000、水酸基価70mgKOH/g、酸価56mgKOH/g)9.6部(固形分5.8部)、CR−97(注7)10.0部、トリエチルアミン0.5部、脱イオン水19.4部を仕込み、ボールミルで20時間分散して固形分40%の顔料分散ぺーストNo.1を得た。
【0061】
製造例18〜22 顔料分散ペーストNo.2〜No.6の製造例
表2の配合内容とする以外は、製造例17と同様にして、固形分40%の顔料分散ぺーストNo.2〜No.6を得た。
【0062】
【表2】

【0063】
(注7)CR−97:石原産業社製、商品名、チタン白
(注8)カーボンブラックMA−100:三菱化学社製、商品名、カーボンブラック
(注9)メタシーンKM1000:東洋アルミニウム社製、商品名、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径11.1μm、粒子厚み0.025μm
(注10)SF640:東洋インキ製造社製、商品名、キナクリドン系の着色顔料、固形分36%、顔料分30%
(注11)EMF BLUE 2R:東洋インキ製造社製、商品名、フタロシアニンブルー系の着色顔料、固形分40%、顔料分28%
(注12)EMF YELLOW H2RN−2:東洋インキ製造社製、商品名、ジアゾイエロー系の着色顔料、固形分40%、顔料分32%。
【0064】
実施例1 アニオン電着塗料No.1の製造
上記、固形分40%のエマルションNo.4を251.2部(固形分100.5部)、顔料分散ペーストNo.1を39.5部(固形分15.8部)、脱イオン水1163.1部で希釈して固形分8%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0065】
実施例2〜13 アニオン電着塗料No.2〜No.13の製造
表3及び表4の配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、アニオン電着塗料No.2〜No.13を得た。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
比較例1〜6 アニオン電着塗料No.14〜No.19の製造
表5の配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、アニオン電着塗料No.14〜No.19を得た。
【0069】
【表5】

【0070】
試験板No.1の作成
#6063Sアルミニウム合金板に、脱脂、エッチング、中和処理を施し、次いで陽極酸化皮膜が10μmとなるように、陽極酸化処理を施した。さらに封孔処理(85℃の熱水に3分間浸漬)を施して、試験板No.1を得た。
【0071】
試験板No.2の作成
#6063Sアルミニウム合金板に、脱脂、エッチング、中和処理を施し、次いで陽極酸化皮膜が2μmとなるように、陽極酸化処理を施した。さらに封孔処理(85℃の熱水に3分間浸漬)を施して、試験板No.2を得た。
【0072】
実施例14 複層被膜No.1
試験板No.2が陽極となるようにアニオン電着塗料No.1の浴に浸漬し、150Vで2分間電着塗装を行った。次いで、190℃で20分間加熱乾燥して、乾燥膜厚15μmの複層被膜No.1を得た。
【0073】
実施例15〜28 複層被膜No.2〜No.15
表6及び表7に示す工程とする以外は、実施例1と同様にして、複層被膜No.2〜No.15を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
比較例7 複層被膜No.16
試験板No.1が陽極となるようにアニオン電着塗料No.14の浴に浸漬し、150Vで2分間電着塗装を行った。次いで、190℃で20分間焼付け乾燥して、乾燥膜厚15μmの複層被膜No.16を得た。
【0077】
比較例8〜18 複層被膜No.17〜No.27
表8に示す工程とする以外は、実施例1と同様にして、複層被膜No.17〜No.27を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0078】
【表8】

【0079】
(注13)耐候性:各複層被膜の光沢を、JIS H 8602 5.12(1992)に準拠(水スプレー時間12分間、ブラックパネル温度60℃)し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して測定して、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。
◎は、光沢保持率が80%を割る時間が1,500時間以上
○は、光沢保持率が80%を割る時間が1,000時間以上、かつ1,500時間未満
△は、光沢保持率が80%を割る時間が500時間以上、かつ1,000時間未満、
×は、光沢保持率が80%を割る時間が500時間未満。
【0080】
(注14)鉛筆硬度:各複層被膜について、JIS K 5600−5−4(1999)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、塗膜の傷痕による評価を行った。
【0081】
(注15)付着性:JIS K 5600−5−6(1999)碁盤目−テープ法に準じて、ナイフを使用して各複層被膜の素地に達するように約1mmの間隔で縦、横それぞれ平行に11本の切目を入れて100個のゴバン目を形成し、その表面にビニール粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した。
◎は、塗膜の剥離が全く認められない
○は、ナイフ傷の角の塗膜の一部にわずかに剥離が認められる
△は、100個のゴバン目のうち剥離したものが1〜20個である
×は、100個のゴバン目のうち剥離したものが21個以上である。
【0082】
(注16)耐衝撃性:各複層被膜を、温度20℃±1、湿度75±2%の恒温恒湿室に24時間置いた後、JIS K 5600−5−3(1999)に規定されるデュポン衝撃試験器に規定の大きさの受台と撃心を取り付け、試験板の塗面を上向きにして、その間に挟み、次に500gの重さのおもりを撃心(1/2インチ)の上に落とし、衝撃による塗膜(おもて面)にワレ、ハガレが発生する落下高さ(cm)を測定した。
【0083】
(注17)意匠性:塗膜表面を目視観察し、下記の基準で評価を行った。
◎は、塗膜に、にごり、色ムラ、色ボケのいずれの異常も認められない。
【0084】
〇は、塗膜に、にごり、色ムラ、色ボケのいずれかが、わずかに認められる。
△は、塗膜に、にごり、色ムラ、色ボケのいずれかが認められる。
×は、塗膜に、にごり、色ムラ、色ボケのいずれかの低下が著しい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の着色アニオン電着塗料は、陽極酸化皮膜の膜厚を5μm未満としたアルミニウム又はアルミニウム合金上においても、耐候性、塗膜硬度、付着性、耐衝撃性及び意匠性に優れた塗膜を形成してなる電子機器物品を提供できる。
【符号の説明】
【0086】
1.アルミニウム基材を示す
2.従来からの陽極酸化皮膜(10μm)を示す。
2−1.薄膜とした陽極酸化被膜(2μm)を示す。
3.アニオン電着塗膜を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、酸価5〜70mgKOH/gの分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)及び着色成分(D)を含有するアニオン電着塗料であって、カルボキシル基含有樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、分子中に水酸基とリン酸残基を有するエポキシリン酸エステル化合物(C)の量が0.1〜10質量部、着色成分(D)の量が0.01〜30質量部であることを特徴とする着色アニオン電着塗料。
【請求項2】
カルボキシル基含有樹脂(A)が、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合することによって得られるアクリル樹脂であって、これらラジカル重合性不飽和単量体の合計に対して、下記の式(1)で表される含窒素ラジカル重合性不飽和単量体(a)を0.1〜30質量%含有する請求項1に記載の着色アニオン電着塗料。
【化1】

式(1)
(式(1)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は有機基、Rは、水素原子又はメチル基を表す)
【請求項3】
陽極酸化皮膜厚さが5μm未満のアルミニウム基材に、請求項1又は2に記載の着色アニオン電着塗料を電着塗装し、基材表面温度170〜220℃で10〜30分間加熱乾燥することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項3の塗膜形成方法により得られる塗膜で覆われていることを特徴とする電子機器部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−138373(P2010−138373A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154566(P2009−154566)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】