着色スエード調合成皮革の製造方法
【目的】 高温で長時間光照射下に置かれても、変退色し難いスエード調合成皮革を提供する。
【構成】 合成繊維極細糸よりなる立毛繊維基材に、着色ポリウレタンを含浸させ、湿式凝固処理後毛羽露出処理をして、着色スエード調合成皮革を製造するに際し、該着色ポリウレタンの着色成分の一部として、900nmから1500nmの波長範囲の近赤外線反射率が、60%以上の黒色顔料を用い、得られる合成皮革の近赤外線反射率を60%以上にする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面に多数の極細糸の毛羽を有する、着色されたスエード調合成皮革の製造法に関し、特に光耐久性(変退色防止性)が顕著に優れた着色スエード調合成皮革の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維極細糸よりなる立毛繊維基材に着色ポリウレタンを含浸させ、湿式凝固処理後毛羽露出処理をして、着色スエード調合成皮革を製造する方法は、周知である。
【0003】これらスエード調合成皮革は、光変退色を受けやすいという欠点を持っており、従来から種々の対策がとられてきた。
【0004】光変退色現象は、紫外線、赤外線の照射により、それらの電磁波が樹脂や繊維着色材により吸収され、吸収されたエネルギーがこれらの物質を分解し、樹脂や毛羽の黄変及び着色材の変退色を引き起こす。この時起こる反応は、主に光熱による酸化・還元反応であり、紫外線は光エネルギーとして、赤外線は熱エネルギーとして反応に関与するものと考えられる。
【0005】スエード調合成皮革は、表面に毛羽空隙及び無数の微多孔部を有する為、放熱がしにくく、従って一般の織編物に比べて赤外線照射による蓄熱の影響を受けやすい。
【0006】従来の光変退色防止技術としては、耐光性に優れた染料や顔料を使用するもの(アンスラキノン、フタロシアニン、カーボンブラック、酸化鉄、チタン白等)、耐光性に優れた特殊なウレタン樹脂を使用するもの、及び劣化防止剤を使用するもの(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系等の光安定剤、酸化防止剤等)が知られている。
【0007】これら従来技術は、スエード表面を構成している各材料自身の耐光性を向上させるものであり、必要に応じ2種以上を組み合わせて用いられている。これら従来技術は、光の中でも主に紫外線に基づく分解劣化の防止に重点が置かれている。これら従来技術により、一般衣料やシューズ等での要求性能は、ほぼ満足させうるようになったが、車両内装材等の高温で長時間光照射にさらされる用途に対しては、不十分なものである。本発明者等は、上記の高温長時間光照射に相当する条件(フェードメーター又はキセノン光源、60℃以上、200時間以上)で評価した結果、従来技術はいずれも満足な耐久性を示さなかった。特に太陽光線に類似するキセノン光源の照射による促進テストでは、著しい変退色を示した。
【0008】本発明の目的は、上記したような高温長時間の光照射による変退色を、有効に防止する方法を提供することにある。
【0009】本発明者等は、上記キセノン光源での変退色作用の機構及び防止方法について研究を重ねた結果、効果の顕著な本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するるための手段】本発明は、合成繊維極細糸よりなる立毛繊維基材に着色ポリウレタンを含浸させ、湿式凝固処理後毛羽露出処理をして、着色スエード調合成皮革を製造するに際し、該着色ポリウレタンの着色成分の一部として、900nmから1500nmの波長範囲の近赤外線反射率が60%以上の黒色顔料を用い、得られる合成皮革の近赤外線反射率を60%以上に調整することを特徴とする、着色スエード調合成皮革の製造法である。
【0011】本発明のスエード調合成皮革の製造法における、合成繊維極細糸よりなる立毛繊維基材やポリウレタンの種類、湿式凝固処理及び毛羽露出処理条件は、従来周知の種類や条件を適宜採用できる。
【0012】本発明の構成上の特徴は、ポリウレタン樹脂の着色含浸時において、主要色材又は色相補正用色材として従来スエード調合成皮革において用いられたことのない特定の顔料を、特定の技術思想のもとに用いる点にある。
【0013】本発明で用いる顔料は、これを少なくとも50%含有する塗膜の近赤外線反射率が、900nmから1500nmの範囲において60%以上有するものであり、具体的にはペリレン系黒色顔料及びアゾメチンアゾ系黒色顔料が、好ましく用いられる。
【0014】ペリレン系黒色顔料は、式
【化1】
なる基本化学構造を有する。アゾメチンアゾ系黒色顔料は、共通発色団としてメチン基とアゾメチン基とを有する。これら顔料は、可視光線はよく吸収するが、900〜1500nmの近赤外線に対し、カーボンブラック等のこの種用途に従来から用いられている黒色顔料からは、予測し得ない高い反射率を示す。
【0015】これら顔料は、それのみで色材の全体を占めるものではなく、主要色材又は色相補正用色材として、他の色材と併用される。これら顔料は、得られる合成皮革の上記波長範囲の近赤外線反射率が60%以上、好ましくは75%以上になるような量関係で用いられる。
【0016】本発明方法で得られる着色スエード合成皮革は、高温長時間の光照射に対し、顕著に優れた耐久性を示し、車両用途や家具用途等の用途に有効に用いられる。
【0017】次に実験結果に基づいて本発明を説明する。
【0018】参考例1前記式を持つペリレンブラックとアゾメチンアゾブラックを、ウレタン系(及びアクリル系)ビヒクル及び溶剤(DMF)に分散させ、顔料濃度20%のペーストを作成し、白色ペーパー上に、乾燥後100μ厚さになる様に塗膜を形成させて、近赤外線の反射率を測定した結果は次の通りである。ペリレンブラックとして、N,N−ジフェチネル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシジイミドを用いた。
【0019】
【表1】
表に示した通り、カーボンブラックに比較して非常に高い近赤外線反射特性を持っている。そしてこれら顔料を使用して得られた合成皮革は、いずれも60%以上の高い近赤外線反射率を示した。
【0020】
【表2】
我々は、近赤外線反射率と、高温でのキセノン光源照射における変退色度との関係を実験によって確認した結果、変退色を防止する為には、近赤外線反射率が低くとも60%以上、できれば80%以上必要なことを見い出した。
【0021】またこの時、サーモラベルを照射サンプルの裏面に貼りつけて、キセノン照射時の内部温度の変化を調べた。近赤外線反射率の高いものは、低いものに比べてキセノン照射時の温度上昇は殆ど認められなかった。
【0022】実施例1フロント糸に、100%ポリエステル極細糸(単糸0.5デニール)使用のトリコット起毛布を以下の染料で130℃ラピット染色後、還元洗浄して、グレー色に均染した起毛布を得た(目付 約320g/m2)。
Suikaron UL yellow GL 3%o.w.
f Miketon Polyester yellow GRL 0.5% 〃 Terasil Pink 3GA 2.2% 〃 Terasil Blue BLFN 3.0% 〃 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.5% 〃
【0023】次いで、下記に示す方法で樹脂含浸を行った。
ポリカーボネート系難黄変ポリウレタン(DMF 30% sdu) 100部 凝固助剤 3 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 1 光安定剤(HALS) 1 酸化防止剤(AO) 1 ペリレン系黒色顔料 1.4 (N,N−ビス(P−メトキシベンジル)−3,4,9,10−ペリレン テトラカルボキシジイミド PU塗膜中濃度67%、100μ膜厚における近赤外線反射率62〜6 5%)
縮合アゾ系レッド「セイカセブンBS−113」大日精化製 4.0 フタロシアニンブルー「セイカセブンBS−675」 〃 2.0 DMF 200
【0024】上記分散液を十分攪拌、ナイフ・オン・ロールコーターを用いて、約500g/m2を均一に塗布、25℃の水溶液中に浸漬、PU重合体を凝固、脱溶剤、湯洗、乾燥して平滑な微多孔質皮膜層を形成。次に、この微多孔質シート材の皮膜表面を、粒度240番の研摩紙を巻き付けた回転ドラムシリンダーに押圧し、表面を研削、スエード調合成皮革を得た。
【0025】比較例1実施例1と同様に、染色された起毛布を用い、含浸樹脂分散液の組成のみ次の様に変更させ、樹脂含浸、湿式凝固、表面研削を行って、スエード調合成皮革を得た。
ポリカーボネート系難黄変ポリウレタン(DMF 30% sdu) 100部 凝固助剤 3 紫外線吸収剤 1 HALS(光安定剤) 1 AO(酸化防止剤) 1 カーボンブラック「セイカセブンBS−780」大日精化製 3.4部 (64%PU塗膜中濃度、100μ膜厚の近赤外線反射率 (900〜1,500nm) 1.5〜2.0%)
縮合アゾ系レッド「セイカセブンBS−113」大日精化製 2.5部 フタロシアニンブルー「セイカセブンBS−675」 〃 4.6部結果を次表に示す。
【表3】
【0026】実施例で得られたサンプルは、IR反射率は80%以上と高く、照射時の蓄熱による温度上昇も殆どなく、キセノン光源での変退色の程度は、ΔE*で2.5以上、1.5級程度向上していることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成繊維極細糸よりなる立毛繊維基材に、着色ポリウレタンを含浸させ、湿式凝固処理後毛羽露出処理をして、着色スエード調合成皮革を製造するに際し、該着色ポリウレタンの着色成分の一部として、900nmから1500nmの波長範囲の近赤外線反射率が60%以上の黒色顔料を用い、得られる合成皮革の近赤外線反射率を60%以上に調整することを特徴とする、着色スエード調合成皮革の製造法。
【請求項2】 黒色顔料がペリレン系黒色顔料又はアゾメチンアゾ系黒色顔料である、請求項1記載の着色スエード調合成皮革の製造法。
【公開番号】特開平5−321159
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
繊維;紙 | 繊維または類似のものの処理;ラウンドリー;他に分類されない可とう性材料 | 壁,床または類似の被覆材料,例.リノリュウム,オイルクロス,人造皮革,ルーフィングフェルト,高分子材料の層によって被覆された繊維ウェブからなるもの;他に分類されない柔軟なシート材料 | ポリウレタンによるもの
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 高分子化合物の組成物 | ポリウレタン
【出願番号】特願平4−165224
【出願日】平成4年(1992)5月14日
【出願人】(000107907)セーレン株式会社
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