説明

着色ノズル及びその着色ノズルを有した着色ユニット

【課題】電線に向かって着色材を一定量ずつ確実に噴射できるとともに、噴射された着色材を素早く乾燥させることができかつノズル詰りを生じさせることのない着色ノズルを提供する。
【解決手段】着色ノズル15は、内側に着色材が流れるノズル部20と、ノズル部20の先端部20bを覆うノズルカバー21と、加圧気体供給源16とノズルカバー21内の空間Sとを連結した第1の配管7と、一端部が切替弁6を介して第1の配管7の中央部に連結されかつ他端部が洗浄液収容部18に連結された第2の配管8と、を有している。切替弁6は、ノズル部20の滴射時には加圧気体供給源16からの加圧気体のみをノズル部20側に通し、ノズル部20の滴射停止時には洗浄液収容部18からのノズル洗浄液のみをノズル部20側に通すように制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の芯線と、この芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを有した電線などの物品を着色する際に用いられる着色ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを有している。
【0003】
上記電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを有した被覆電線である。また、上記コネクタは、端子金具と、この端子金具を収容するコネクタハウジングとを有している。上記ワイヤハーネスは、コネクタハウジングが前述した電子機器などと結合することにより、端子金具を介して各電線が前述した電子機器と電気的に接続して、前述した電子機器に所望の電力や信号を伝える。
【0004】
上述したワイヤハーネスの電線は、芯線の大きさと、被覆部の材質(耐熱性の有無などによる材質の変更)と、使用目的などを識別する必要がある。なお、使用目的とは、例えば、エアバック、ABS(Antilock Brake System)や車速情報などの制御信号や、動力伝達系統などの電線が用いられる自動車の系統(システム)である。
【0005】
上記電線を識別可能にするために、本発明の出願人は、例えば、単色の電線を製造しておき、必要に応じて該電線の外表面を所望の色に着色してワイヤハーネスを組み立てることを提案している(特許文献1参照)。また、本発明の出願人は、前記単色の電線を着色する際に、液状の着色材を電線の外表面に向かって一定量ずつ滴射して、該着色材の液滴を電線の外表面に付着させることで電線を所望の色に着色する電線の着色装置を提案している(特許文献2参照)。
【0006】
上記着色装置は、ノズル滴射口の直下を電線が通過していく構成のものであるが、前記電線の径が極細である場合や前記電線の通過する速度が高速である場合に、該電線がその径方向に沿って揺れることから、前記ノズル滴射口から滴射される着色材が前記電線に付着し損ねたり、曲がって付着するなどして意匠不良を生じるという問題があった。また、前記電線の通過する速度が高速である場合は速乾性の着色材を使用する必要があるが、速乾性の着色材を使用するとノズル詰りが生じ易くなるという問題があった。
【0007】
上記問題を解決する手段として、霧化した着色材を広角に噴霧するノズル装置(図3,図4を参照。)が提案されている。図3に示すこのノズル装置115は、ノズル100内の着色材を高圧で押出して霧化するものである。また、図4に示すこのノズル装置215は、着色材を収容したノズル100の外側に筒状の部材101を設け、この筒状の部材101とノズル100との間に加圧気体を送り込み、該加圧気体の流速により着色材をノズル100外に吸引して前記加圧気体と混合し、着色材を霧化するものである。このようなノズル装置115,215は、霧化することにより遅乾性の着色材を使用しても瞬時に乾燥させることができ、かつ、広角に噴霧することにより電線を確実に着色することができる。
【0008】
しかしながら、図3に示した上記ノズル装置115は、噴霧開始時には着色材が霧化され難く、かつ、微量を噴霧する事が困難であるという問題を有していた。また、図4に示した上記ノズル装置215は、上記ノズル装置115と同様に微量を噴霧する事が困難であるという問題を有していた。即ち、これらのノズル装置115,215は、着色材を一定量ずつ間欠的に滴射するのには適していなかった。
【特許文献1】国際公開第03/019580号パンフレット
【特許文献2】特願2005−019081号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、物品に向かって着色材を一定量ずつ確実に噴射できるとともに、噴射された着色材を素早く乾燥させることができかつノズル詰りを生じさせることのない着色ノズル、及びその着色ノズルを有した着色ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、物品の外表面に向かって着色材を一定量ずつ噴射して、前記着色材を前記物品の外表面に付着させて該物品を着色する着色ノズルにおいて、円筒状に形成されかつ内側に前記着色材が流れるノズル部と、少なくとも前記ノズル部の先端部を覆うとともに、前記ノズル部から滴射された前記着色材が前記物品に付着することを許容するノズルカバーと、加圧気体を送出する加圧気体供給源と、前記ノズル部の先端部と前記ノズルカバーの間の空間と、を連結した第1の配管と、切替弁を介して前記第1の配管に連結されかつ、前記第1の配管と、ノズル洗浄液を収容した洗浄液収容部と、を連結した第2の配管と、を有し、前記切替弁が、前記ノズル部の滴射時には前記加圧気体のみを前記ノズル部側に通すとともに、前記ノズル部の滴射停止時には前記ノズル洗浄液のみを前記ノズル部側に通すように制御されていることを特徴とする着色ノズルである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記第1の配管を通された加圧気体またはノズル洗浄液が、前記ノズル部の流路方向と直交する方向に沿って前記空間内に噴射されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された着色ノズルを複数有して構成される着色ユニットであって、前記複数の着色ノズルが、前記物品としての電線を間に挟む格好で2列に配され、かつ、相対する列の着色ノズルと前記電線の長手方向に沿ってずれた位置に配されていることを特徴とする着色ユニットである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の本発明によれば、円筒状に形成されかつ内側に着色材が流れるノズル部と、少なくともノズル部の先端部を覆うとともに、ノズル部から滴射された着色材が物品に付着することを許容するノズルカバーと、加圧気体を送出する加圧気体供給源と、ノズル部の先端部とノズルカバーの間の空間と、を連結した第1の配管と、切替弁を介して第1の配管に連結されかつ、第1の配管と、ノズル洗浄液を収容した洗浄液収容部と、を連結した第2の配管と、を有し、切替弁が、ノズル部の滴射時には加圧気体のみをノズル部側に通すとともに、ノズル部の滴射停止時にはノズル洗浄液のみをノズル部側に通すように制御されていることにより、ノズル部から滴射された着色材がノズルカバー内で加圧気体と撹拌されて霧化され広角に噴射されるので、物品に向かって着色材を一定量ずつ確実に噴射できるとともに、噴射された着色材を素早く乾燥させることができる。よって、環境を考慮した水系もしくはアルコール系の遅乾性の着色材を用いることが可能になる。また、ノズル部がノズル洗浄液により洗浄されるので、ノズル詰りを防止できる。さらに、ノズル洗浄液が加圧気体と共通の第1の配管を通されることにより、着色ノズルの構成を簡素化できる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、第1の配管を通されたノズル洗浄液が、ノズル部の流路方向と直交する方向に沿って空間内に噴射されることにより、ノズル洗浄液がノズル部の内側に届き易くなり、ノズル部の洗浄性を高めることができる。よって、ノズル詰りをさらに防止できる。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、複数の着色ノズルが、物品としての電線を間に挟む格好で2列に配され、かつ、相対する列の着色ノズルと電線の長手方向に沿ってずれた位置に配されていることにより、この電線を全周に亘って着色することができるとともに、この着色材で相対する列の着色ノズルを汚すことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかる着色ノズル及び着色ユニットを有して構成される電線着色装置(以下単に着色装置と呼ぶ)1を図1及び図2に基づいて説明する。着色装置1は、物品としての電線3を所定の長さに切断して、この電線3の外表面3aをその全周に亘って着色する装置である。即ち、着色装置1は、電線3の外表面3aを着色する即ちマーキング(Marking)する装置である。
【0017】
上記電線3は、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。電線3は、図2に示すように、導電性の芯線4と、絶縁性の被覆部5とを備えている。芯線4は、複数の素線が撚られて形成されている。芯線4を構成する素線は、導電性の金属からなる。また、芯線4は、一本の素線から構成されても良い。被覆部5は、例えば、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる。また、前記ポリオレフィンは、難接着性を有した素材である。この被覆部5は、芯線4を被覆している。このため、電線3の外表面3aとは、被覆部5の外表面をなしている。また、被覆部5は、単色である。
【0018】
また、上記電線3の外表面3aには、上記被覆部5と異なる色の着色材により電線3の全周に亘ってリング状の印が形成される。この印が形成された電線3は、複数束ねられるとともに端部などにコネクタなどが取り付けられて前述したワイヤハーネスを構成する。コネクタが自動車などの各種の電子機器のコネクタにコネクタ結合して、ワイヤハーネス即ち電線3は、各電子機器に各種の信号や電力を伝える。
【0019】
また、上記リング状の印の色が種々の色に変更されることにより、電線3同士を識別可能としている。即ち、上記リング状の印は、ワイヤハーネスの電線3の線種、系統(システム)の識別などを行うために用いられる。
【0020】
また、本明細書でいう着色材とは、色材(工業用有機物質)が水、アルコール等の溶媒に溶解、分散した液状物質である。有機物質としては、染料、顔料(大部分は有機物であり、合成品)があり、時には染料が顔料として、顔料が染料として用いられることがある。より具体的な例として、着色材とは、着色液または塗料である。着色液とは、溶媒中に染料が溶けているもの又は分散しているものを示しており、塗料とは、分散液中に顔料が分散しているものを示している。このため、着色液が電線3の外表面3aに付着すると、染料が被覆部5内にしみ込み、塗料が電線3の外表面3aに付着すると、顔料が被覆部5内にしみ込むことなく外表面3aに接着する。即ち、電線3の外表面3aを着色するとは、電線3の外表面3aの一部を染料で染める(染色する)ことと、電線3の外表面3aの一部に顔料を塗ることとを示している。また、前記溶媒と分散液は、被覆部5を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。この場合、染料が被覆部5内に確実にしみ込んだり、顔料が外表面3aに確実に接着することとなる。
【0021】
また、本実施形態では、上記着色材として、環境保護を考慮して、水系もしくはエタノール濃度が90%以上のもので、粘度が1〜2mPa・s以下の着色材を用いる。
【0022】
上記着色装置1は、工場などのフロア上などに設置されかつ水平方向に伸びたフレームと、該フレームの一端部に回転自在に取り付けられるとともに上記リング状の印が形成されていない長尺状の電線3が巻き付けられたガイドロール11と、前記フレームの一端部側に配された搬送機構12と、前記フレームの他端部側に配された検尺機構13と、前記フレームの他端部に配された切断機構14と、搬送機構12と検尺機構13の間に配された着色ユニット2と、着色装置1全体の制御を司る制御装置17と、を備えている。この制御装置17は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えた制御ユニットと、後述の切替弁6などを駆動するための各種ドライバと、を有している。
【0023】
搬送機構12は、制御装置17と接続されたモータなどにより互いに逆方向に同回転数で回転される対に設けられた回転子間に電線3を挟み、該電線3をその長手方向に沿ってガイドロール11から引っ張るとともに検尺機構13に向かって図1中の矢印Kに沿って高速で送り出す装置である。即ち矢印Kは、電線3の移動方向をなしている。搬送機構12は、このように電線3の長手方向に沿って該電線3を高速度で移動させることで、後述する着色ノズル15と電線3とを電線3の長手方向に沿って、即ち電線3の移動方向Kに沿って、相対的に高速で移動させる。また、本実施形態では、秒速5m程度の速度で電線3を移動させる。
【0024】
検尺機構13は、搬送機構12から送られてきた電線3をモータなどにより互いに逆方向に同回転数で回転される対に設けられた回転子間に挟み、該電線3を切断機構14に向かって送り出すとともに、該電線3の矢印Kに沿った移動量に応じた情報を制御装置17に向かって出力する装置である。検尺機構13は、前記回転子が所定角度ずつ回転すると、前記回転子と電線3との摩擦により電線3の移動量に応じた情報を測定して、制御装置17に向かってパルス状の信号を出力する。
【0025】
切断機構14は、検尺機構13より電線3の移動方向Kの下流側に配されている。切断機構14は、一対の切断刃を備えている。一対の切断刃は、制御装置17からの指令により互いに近づいたり離れたりする。一対の切断刃は、互いに近づくと、検尺機構13によって送り出された電線3を互いの間に挟んで切断する。一対の切断刃は、互いに離れると、勿論、前記電線3から離れる。また、この制御装置17からの指令は、上記検尺機構13により測定された電線3の移動量に応じた情報に基づいて出されている。即ち、検尺機構13が測定した電線3の移動量に応じた情報により、搬送機構12が停止されるとともに切断機構14が駆動されて長尺状の電線3が所定の長さごとに切断される。
【0026】
着色ユニット2は、着色材を収容した着色材供給源と、4つの着色ノズル15と、これら着色ノズル15と接続された加圧気体供給源16及び洗浄液収容部18を有している。また、4つの着色ノズル15は、電線3を間に挟む格好で2列に配されている。それぞれの列の着色ノズル15(図示例では1列につき2つの着色ノズル15が並べられている。)は、電線3の長手方向、即ち電線3の移動方向K、に沿って並べられている。また、一方の列の着色ノズル15は、相対する他方の列の着色ノズル15と電線3の長手方向、即ち電線3の移動方向K、に沿ってずれた位置に配されている。即ち、4つの着色ノズル15は千鳥状に配されている。
【0027】
また、上記4つの着色ノズル15は全て同一構成であるので、代表して1つの着色ノズル15の構成を図2を参照して説明する。この着色ノズル15は、前記フレームに固定されたユニット本体に支持されている。また、この着色ノズル15は、上記着色材供給源と図示しない配管を介して連通した円筒状のノズル本体19と、該ノズル本体19の内側に収容されたインサート部材25と、ノズル部20と、弁体23と、ノズルカバー21と、第1の配管7と、第2の配管8と、切替弁6と、を有している。
【0028】
インサート部材25は、円筒状に形成されているとともに、内側に着色材を通す流路22が形成されている。流路22内は、上記着色材供給源から供給される加圧された状態の着色材で満たされる。
【0029】
ノズル部20は、円筒状に形成されているとともに、図2中上方に位置する一端部20aが上記インサート部材25に連なっている。このノズル部20は、流路22内に連通しており、流路22内の着色材を図2中下方に位置する他端部20bに向かって矢印Mに沿って導く。また、電線3は、ノズル部20の前記他端部20bと相対する位置に配される。即ち、着色ノズル15は、ノズル部20の軸心Qの延長上に電線3の最上部3bが位置する状態で、前記ユニット本体に支持されている。なお、軸心Qと矢印Mは同一方向である。
【0030】
弁体23は、流路22内に収容されているとともに、ノズル部20の一端部20aに接離自在に設置されている(接離とは、近づいたり離れたりすることである)。弁体23は、ノズル部20の一端部20aから離れることにより着色材をノズル部20内に通して電線3に向かって滴射させるとともに、ノズル部20の一端部20aに接触することにより着色材がノズル部20内に通され電線3に向かって滴射されることを規制する。このように弁体23は、ノズル部20の一端部20aに接離することで、ノズル部20から一定量の着色材を間欠的に滴射させる。また、本実施形態では、ノズル部20の1回当たりの滴射量が10〜100ml程度に設定されている。また、前記「滴射」とは、ノズル部20から液状の着色材が打ち出されることを意味する。
【0031】
ノズルカバー21は、円筒状に形成され、内側にノズル本体19及びノズル部20を収容する。また、ノズル部20の電線3側の他端部20bはノズルカバー21の電線3側の下端部よりも上方(電線3から離れた位置)に配されている。また、ノズルカバー21の内面とノズル本体19との間には、これらの間を水密に保つパッキン24が設けられている。また、ノズルカバー21とノズル部20とは互いに間隔をあけて配されている。また、ノズルカバー21は、下方、即ち電線3側、が開口している。このため、ノズルカバー21は、ノズル部20から滴射された着色材が電線3に付着することを妨げない(許容する)。また、ノズルカバー21の上方側は上述したようにパッキン24により封されているので、ノズルカバー21とノズル部20の他端部20bとの間の空間Sに向かって後述の第1の配管7から噴射される加圧気体及びノズル洗浄液は、このノズルカバー21の下方からノズルカバー21外に排出される。
【0032】
第1の配管7は、加圧気体供給源16と、ノズル部20の他端部(特許請求の範囲に記載した先端部を意味する。)20bとノズルカバー21の間の空間Sと、を連結している。また、この第1の配管7のノズルカバー21との連結部分7aは、ノズル部20内を流れる着色材の移動方向(流路方向)である矢印Mと直交する方向に配されている。このことにより、第1の配管7を通された後述の加圧気体及び後述のノズル洗浄液は、矢印Mと直交する方向に沿って空間S内に噴射される。
【0033】
本発明では、このように、ノズル洗浄液がノズル部20の流路方向と直交する向きでノズル部20の他端部20bに吹き付けられることにより、該ノズル洗浄液がノズル部20の内側に届き易くなり、ノズル部20の洗浄性を高めることができる。即ち、ノズル部20の他端部20bに着色材がこびり付くことを防止でき、ノズル詰りを防止できる。
【0034】
第2の配管8は、その一端部が切替弁6を介して上記第1の配管7の中央部に連結されているとともに、他端部が後述の洗浄液収容部18と連結されている。即ち、第2の配管8は、第1の配管7と後述の洗浄液収容部18とを連結している。
【0035】
切替弁6は、加圧気体供給源16からノズル部20に向かう方向、及び、第2の配管8から第1の配管7(ノズル部20)に向かう方向のみに加圧気体及びノズル洗浄液を流し、反対方向には流さない弁である。また、この切替弁6は、ノズル部20の着色材の滴射時には加圧気体供給源16からの加圧気体のみをノズル部20側に通すとともに、ノズル部20の着色材の滴射停止時には第2の配管8からのノズル洗浄液のみをノズル部20側に通すように制御装置17により制御されている。
【0036】
このように、本発明では、切替弁6を設け、加圧気体とノズル洗浄液とを適宜切り替えて第1の配管7に通せるようにしていることから、着色ノズル15の構成を簡素化することができる。
【0037】
加圧気体供給源16は、加圧された気体を第1の配管7と、洗浄液収容部18との双方に供給する。なお、洗浄液収容部18と加圧気体供給源16とは配管9により連結されている。加圧気体供給源16は、加圧された気体を第1の配管7、即ちノズルカバー21内、に供給することで、上述したノズル部20から滴射された着色材をノズルカバー21内で霧化(微細化)する。また、加圧気体供給源16は、加圧された気体を洗浄液収容部18に供給することで、洗浄液収容部18内のノズル洗浄液を加圧して、該ノズル洗浄液を第2の配管8及び第1の配管7、即ちノズルカバー21内、に向かって送り出す。
【0038】
このように、本発明では、ノズル部20から滴射された着色材をノズルカバー21内で霧化して電線3に向かって噴射するようにしていることから、着色材を広角に噴射することができる。よって、電線3が移動中にその径方向に沿って揺れた場合でも、この電線3に確実に着色材を付着させることができる。また、本実施形態に用いられる遅乾性の着色材を用いた場合でも、霧化することにより電線3への付着後、この着色材を素早く乾燥させることができる。
【0039】
洗浄液収容部18は、ノズル部20の他端部20bに付着した着色材を洗い流すノズル洗浄液を収容する容器である。この洗浄液収容部18内に収容されたノズル洗浄液は、上述した加圧気体供給源16から供給される加圧気体に加圧されることにより、ノズルカバー21とノズル部20の他端部20bとの間の空間S、即ちノズルカバー21内、に供給される。洗浄液収容部18は、各着色ノズル15に一つずつ対応して設けられても良く、全ての着色ノズル15に対応して一つ設けられても良く、複数の着色ノズル15に一つずつ対応して設けられても良い。
【0040】
また、上記「ノズル洗浄液」は、前述した着色材を構成する色材としての工業用有機物質が溶解、分散可能な溶媒又は分散液などの液体である。さらに、このノズル洗浄液は、特に常温で揮発しにくい液体であるのが望ましい。
【0041】
上述した構成の着色ユニット2は、各着色ノズル15が、ノズル部20から滴射される液状の着色材を霧化して電線3の外表面3aに向かって一定量ずつ噴射し、電線3の外表面3aを着色(マーキング)する。また、各着色ノズル15は、上述したように電線3を間に挟む格好に2列に配されていることから、これら2列に配された着色ノズル15間を移動される電線3は、その軸心を中心に0度と180度の2方向から着色が施される。そして、このように2方向から噴射された着色材が電線3の外表面3aを該電線3の軸心周りに沿って回り込むことにより、上述したリング状の印が形成される。
【0042】
前述した構成の着色装置1で、電線3の外表面3aにリング状の印を形成する即ち電線3の外表面3aを着色する際には、まず、ガイドロール11をフレームに取り付ける。そして、切断機構14の一対の切断刃を互いに離しておき、ガイドロール11に巻かれた電線3を搬送機構12の回転子間に挟むとともに検尺機構13の回転子間に挟む。
【0043】
そして、着色装置1の稼動を開始させると、搬送機構12が回転駆動して電線3をガイドロール11から引っ張るとともに検尺機構13に向かって搬送する。そして、検尺機構13からパルス状の信号が制御装置17に入力すると、制御装置17は、予め記憶された着色指示データにしたがってノズル部20から着色材を滴射させるとともに切替弁6に加圧気体を供給させ、着色ノズル15に、霧化された着色材を一定量ずつ電線3の外表面3aに向かって噴射させる。
【0044】
そして、電線3の外表面3aに付着した着色材から前述した溶媒または分散液が蒸発して、電線3の外表面3aを染料で染める又は外表面3aに顔料を塗る。こうして、上述したリング状の印が形成される。
【0045】
そして、検尺機構13などからの情報により、制御装置17が所定の長さの電線3を送り出したと判定すると、この制御装置17は、搬送機構12を停止させるとともに切断機構14に指令を送る。すると、切断機構14の一対の切断刃が互いに近づいて、これら切断刃間に電線3を挟んで切断する。こうして、所定の長さに切断された電線3が得られる。
【0046】
また、ノズル部20の着色材の滴射動作が停止すると、切替弁6は、制御装置17からの命令に基づいて、例えば10秒から20秒間などの制御装置17に予め記憶された所定時間、ノズルカバー21内にノズル洗浄液を供給する。また、ノズル部20の他端部20bを洗浄したノズル洗浄液は、ノズルカバー21の下方からノズルカバー21外に排出される。
【0047】
本実施形態によれば、ノズル部20から滴射された着色材がノズルカバー21内で加圧気体と撹拌されて霧化され広角に噴射されるので、電線3に向かって着色材を一定量ずつ確実に噴射できるとともに、噴射された着色材を素早く乾燥させることができる。よって、環境を考慮した水系もしくはアルコール系の遅乾性の着色材を用いることが可能になる。また、遅乾性の着色材を用いることにより、ノズル詰りを生じ難くすることができる。また、ノズル部20がノズル洗浄液により洗浄されるので、ノズル詰りをさらに防止できる。さらに、ノズル洗浄液が加圧気体と共通の第1の配管7を通されることにより、着色ノズル15の構成を簡素化できる。
【0048】
また、第1の配管7を通されたノズル洗浄液が、ノズル部20の流路方向と直交する方向に沿って空間S内に噴射されることにより、ノズル洗浄液がノズル部20の内側に届き易くなり、ノズル部20の洗浄性を高めることができる。よって、ノズル詰りをさらに防止できる。
【0049】
また、複数の着色ノズル15が、電線3を間に挟む格好で2列に配され、かつ、相対する列の着色ノズル15と電線3の長手方向に沿ってずれた位置に配されていることにより、この電線3を全周に亘って着色することができるとともに、この着色材で相対する列の着色ノズル15を汚すことがない。
【0050】
また、前述した実施形態では、自動車に配索されるワイヤハーネスを構成する電線3に関して記載している。しかしながら、本発明では、電線3を自動車に限らず、ポータブルコンピュータなどの各種の電子機器や各種の電気機械に用いても良いことは勿論である

【0051】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態にかかる着色ノズル及び着色ユニットを有して構成される電線着色装置の構成を示す概略説明図である。
【図2】図1に示された着色ユニットを示す断面図である。
【図3】従来のノズル装置を説明するための説明図である。
【図4】従来の他のノズル装置を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0053】
2 着色ユニット
3 電線(物品)
3a 外表面
6 切替弁
7 第1の配管
8 第2の配管
15 着色ノズル
16 加圧気体供給源
18 洗浄液収容部
20 ノズル部
20b 他端部(先端部)
21 ノズルカバー
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の外表面に向かって着色材を一定量ずつ噴射して、前記着色材を前記物品の外表面に付着させて該物品を着色する着色ノズルにおいて、
円筒状に形成されかつ内側に前記着色材が流れるノズル部と、
少なくとも前記ノズル部の先端部を覆うとともに、前記ノズル部から滴射された前記着色材が前記物品に付着することを許容するノズルカバーと、
加圧気体を送出する加圧気体供給源と、前記ノズル部の先端部と前記ノズルカバーの間の空間と、を連結した第1の配管と、
切替弁を介して前記第1の配管に連結されかつ、前記第1の配管と、ノズル洗浄液を収容した洗浄液収容部と、を連結した第2の配管と、を有し、
前記切替弁が、前記ノズル部の滴射時には前記加圧気体のみを前記ノズル部側に通すとともに、前記ノズル部の滴射停止時には前記ノズル洗浄液のみを前記ノズル部側に通すように制御されていることを特徴とする着色ノズル。
【請求項2】
前記第1の配管を通された加圧気体またはノズル洗浄液が、前記ノズル部の流路方向と直交する方向に沿って前記空間内に噴射されることを特徴とする請求項1に記載の着色ノズル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された着色ノズルを複数有して構成される着色ユニットであって、
前記複数の着色ノズルが、前記物品としての電線を間に挟む格好で2列に配され、かつ、相対する列の着色ノズルと前記電線の長手方向に沿ってずれた位置に配されていることを特徴とする着色ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−93617(P2008−93617A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280999(P2006−280999)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】