説明

着色偽造防止構造体および着色偽造防止媒体

【課題】意匠性および/またはセキュリティ性の優れる偽造防止構造体を提供する。
【解決手段】少なくともレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層および保護層をこの順で積層した偽造防止構造体であって、前記レリーフ形成層の片側は可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有するレリーフ構造を有し、前記第1反射層、機能性薄膜層がレリーフ構造の凹凸に沿って全面で設けられ、前記第2反射層はレリーフ構造の凹凸の一部分を覆う任意の領域に設けられ、前記保護層は前記第2反射層の領域のみを覆うように設けられ、かつ前記第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3つの層が可視光の少なくとも一部領域を干渉させることを特徴とする偽造防止構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止および変造防止効果の高い偽造防止構造体および着色偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造防止構造体は、有価証券やブランド品、証明書、個人認証媒体等の偽造を防止するために使用され、真性品であることを証明する機能を有する。
【0003】
近年では、特殊な光学効果を一瞥にて判別可能であることから、回折格子、ホログラム等の光学素子を利用した偽造防止構造体が様々な物品に対して使用されている。光学素子の多くは、回折格子、ホログラムおよびレンズアレイ等の微細構造を含んでいる。これら微細構造は、解析することが困難である。また、微細構造を含む光学素子は電子線描画装置等を用いて製造されるため、優れた偽造防止効果を発揮できる。
【0004】
しかしながら、銀色の金属光沢を有するホログラムは、パッケージ用途や遊戯用途として市場に出回り、セキュリティ性が低くなりつつある。この状況に対応するため、例えば特許文献1は更に偽造防止効果の高いホログラムとして部分的に反射層を有するホログラムが提案されている。微細パターンの反射層を有するホログラムは偽造が困難とされている。
【0005】
他方では、銀色以外の鮮やかな色調の金属光沢を有するホログラムの提案もなされている。例えば、特許文献1は所望の色調が得られ、意匠性および/またはセキュリティ性の優れたホログラム構造が提案されている。この方法を用いることで多少の色調を付与することが可能である。しかしながら、高輝度インキ層の反射率はアルミニウム蒸着膜の反射率より低く散乱傾向がある。このため、着色された金属光沢、例えば金や銅のような鮮やかな色調の金属光沢が得られないという欠点がある。
【0006】
また、特許文献1の方法ではホログラムに対して部分的に着色された反射層を設けることが困難である。これは、着色層をパターン印刷した後に、高輝度インキを着色層に対して高い位置精度で同一パターンの反射層を重ね刷りすることが困難であることに起因する。
【0007】
また、色鮮やかな反射層として金や銅を真空蒸着法やスパッタ法で形成し、エッチングによりパターニングする方法が考えられる。しかしながら、エッチングにより微細パターンを有する貴金属反射層を設けることは高価で生産性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-162260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、意匠性および/またはセキュリティ性の優れる偽造防止構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面によると、少なくともレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層および保護層をこの順で積層した偽造防止構造体であって、
前記レリーフ形成層の片側は可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有するレリーフ構造を有し、
前記第1反射層、機能性薄膜層がレリーフ構造の凹凸に沿って全面に設けられ、
前記第2反射層はレリーフ構造の凹凸の一部分を覆う任意の領域に設けられ、
前記保護層は前記第2反射層の領域のみを覆うように設けられ、かつ
前記第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3つの層が可視光の少なくとも一部領域を干渉させることを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0011】
本発明の第2側面によると、少なくともレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層および保護層をこの順で積層した偽造防止構造体であって、
前記レリーフ形成層の片側は、可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有する、第1レリーフおよび第2レリーフを持つレリーフ構造を有し、
前記第1レリーフ表面は前記第2レリーフ表面と比較して凹凸表面積が小さく、
前記第1反射層および前記機能性薄膜層がレリーフ構造の凹凸に沿って全面に設けられ、
前記第2反射層および保護層は前記第1レリーフの前記機能性薄膜層表面のみを覆うように設けられ、
前記第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3つの層が可視光の少なくとも一部領域を干渉させることを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0012】
本発明の第3側面によると、前記第1または第2の側面において、前記第1反射層は、タンタル酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、酸化インジウム錫、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物およびハフニウム酸化物の群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止構造体が提供される。
【0013】
本発明の第4側面によると、前記第1ないし第3の側面のいずれか1つにおいて、前記第1反射層は高屈折微粒子からなる高輝度透明反射塗料により形成されることを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0014】
本発明の第5側面によると、前記第1ないし第4の側面のいずれか1つにおいて、前記レリーフ構造は回折構造、ホログラム、集光レンズアレイ、拡散レンズアレイおよび散乱構造の少なくとも1つを少なくとも部分的に同一平面で有することを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0015】
本発明の第6側面によると、前記第1ないし第5の側面のいずれか1つにおいて、少なくとも支持基材に積層された偽造防止構造体であって、前記支持基材上にレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層、保護層および接着層をこの順序で積層したステッカー構成であることを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0016】
本発明の第7側面によると、前記第1ないし第5の側面いずれか1つにおいて、少なくとも支持基材を有し、前記支持基材上にレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層、保護層および接着層をこの順序で積層し、かつこの積層物が前記基材に対して剥離可能な転写箔構成であることを特徴とする偽造防止構造体が提供される。
【0017】
なお、前記第7、第8の側面において、必要に応じて支持基材とレリーフ形成層の間に剥離保護層を設けてもよい。剥離保護層は、支持基材から円滑かつ安定に剥がすための層であり、支持基材に対して離型性が良好な材料を選択すればよい。
【0018】
本発明の第8側面によると、前記第1ないし第7の側面のいずれか1つの偽造防止構造体を貼付した偽造防止媒体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、意匠性および/またはセキュリティ性の優れる偽造防止構造体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る偽造防止構造体を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る偽造防止構造体の製造工程を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る偽造防止構造体の別の態ようを示す断面図である。
【図4】第1実施形態に係る偽造防止構造体の別の態ようを示す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る偽造防止構造体を示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る偽造防止構造体の製造時の一工程を示す断面図である。
【図7】比較例1の偽造防止構造体の製造時の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る偽造防止構造体を図面を参照して詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る偽造防止構造体における断面図である。
【0022】
偽造防止構造体1は、レリーフ形成層2、第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5および保護層6をこの順序で積層されている。レリーフ形成層2の片側は、微細凹凸パターンを持つレリーフ構造7を有する。レリーフ構造7は、可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有する。第1反射層3、機能性薄膜層4はレリーフ構造7の凹凸に沿って全面で設けられている。第2反射層5はレリーフ構造7の任意の領域(第1領域)8においてレリーフ構造7の凹凸の一部分を覆って設けられている。保護層6は、第2反射層5のみを覆うように設けられている。
【0023】
第1領域8は、レリーフ形成層2の凹凸表面に第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5および保護層6がこの順序で積層された領域で、第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5からなる3つの層で可視光の少なくとも一部領域を干渉させる、着色反射層が得られる。3つの層は、観察角度によって色調が変化する反射層を得ることも可能で、色鮮やかな反射層を有するレリーフ構造を設計することが可能である。
【0024】
着色された反射層は、第1領域8部分にのみ存在し、パターン化された第2反射層5のみが着色される。第1領域8において、パターン化された第2反射層5そのものが着色される。その結果、第2反射層5そのものが着色パターンであるため、着色インキをパターン化して印刷し、この着色パターンに合致するように反射層を形成する従来方法のような着色パターンと反射層の間での位置ずれを回避できる。
【0025】
第2領域9は、第2反射層5および保護層6が存在せず、第1反射層3および機能性薄膜層4からなる領域である。このため、第2領域9においても、レリーフ構造による無彩色の光学効果を得ることが可能である。
【0026】
なお、3層干渉膜の典型的な理論については特開2010−175812号公報に記載されている。この特許公報は、3層以上の多層干渉膜について記載されている。これに対し、第1実施形態に係る偽造防止構造体では3層干渉膜に限定する。すなわち、反射層の総数を増加させる程、干渉色の反射を増大できる長所がある。しかしながら、この場合には第1領域だけではなく、最上層の反射層が存在しない第2領域も少なくとも2層の反射層が存在するため干渉により着色する問題がある。つまり、5層以上の多層膜では最上層の高屈折反射層が有る部分(第1領域)と無い部分(第2領域)とで、類似の干渉色が生じる。このため、5層以上の多層膜を第1実施形態に係る偽造防止構造体に適用すると、第1領域8と第2領域9が類似の色調傾向となる。
【0027】
第1実施形態に係る偽造防止構造体は、3層干渉膜に限定することによって第2反射層5が有る部分(第1領域8)では干渉による着色がなされ、第2反射層5が無い部分(第2領域9)で干渉がなく無彩色になり、第1領域8と第2領域9の間で十分な色調差を発現できる。
【0028】
したがって、第1実施形態に係る偽造防止構造体1は第1領域8における着色反射レリーフ構造と、第2領域9における無彩色反射レリーフによる精密で複雑化した光学効果が得られるために、高い偽造防止効果を発現できる。
【0029】
次に、第1実施形態に係る偽造防止構造体の製造方法を図2の(a)〜(c)を参照して説明する。
【0030】
1)第1工程
図2の(a)に示すように支持基材11上の全面にレリーフ形成層2を形成する。レリーフ形成層2は、支持基材11上にコーティング、例えばウェットコーティングすることにより形成できる。また、レリーフ形成層は支持基材自体でもよい。
【0031】
次いで、凹凸形状を有する金属または樹脂からなるレリーフ原版を用意し、この原版の凹凸形状をレリーフ形成層2の表面に形状転写して凹凸面を持つレリーフ構造7をレリーフ形成層2に形成する(同図2の(a)図示)。
【0032】
形状転写の方法は、後述するプレス法、キャスティング法、フォトポリマー法等の公知の方法や、これらの方法を組み合わせたハイブリッド法であってもよい。
【0033】
(第2工程)
図2の(b)に示すようにレリーフ形成層2のレリーフ構造7表面に第1反射層3、機能性薄膜層4および第2反射層用薄膜層12をこの順序で形成する。
【0034】
第1反射層3、機能性薄膜層4は、公知のウェットコーティングまたはドライコーティングで形成できる。第2反射層用薄膜層12はドライコーティングで形成することが好ましい。
【0035】
(第3工程)
第2反射層用薄膜層12上にエッチングマスクとして機能する保護膜6を形成する。つづいて、保護膜6をマスクとして第2反射層用薄膜層12をエッチング処理剤で選択的にエッチング除去して第2反射層5を形成する。すなわち、保護膜6下の領域(第1領域8)に第2反射層用薄膜層12を残して第2反射膜5とし、これ以外の領域(第2領域9)の第2反射層用薄膜層12を除去する。ここで、エッチングによって第1反射層3を除去しないことが必要である。
【0036】
具体的には、機能性薄膜層4上に第2反射層用薄膜層12を全面に形成した後、第2反射層用薄膜層12上に保護層6を公知のウェット印刷法によって形成する。その後、保護層6をエッチングマスクとして第2反射層用薄膜層12を選択的にエッチング処理することによって、パターン化した第2反射層5を形成する。
【0037】
以上の第1工程〜第3工程によって、第1実施形態に係る偽造防止構造体が製造されるが、これに限定されない。 次に、第1実施形態に係る偽造防止構造体を構成する各層の材質、必要な特性、および詳細な製造方法について更に詳しく説明する。
【0038】
(支持基材)
前述した製造方法で用いる支持基材は、フィルム基材が好ましい。フィルム基材は、微細凹凸パターン(レリーフ構造)の成形時に加えられる熱、圧力、電磁波によって変形、変質の少ない材料を用いることが望ましい。フィルム基材は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などのプラスチックフィルムを用いることができる。必要によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を支持基材として用いてもよい。
【0039】
(レリーフ形成層)
レリーフ形成層は、その片面に微細凹凸パターンを持つレリーフ構造を連続的かつ大量に複製することが好ましい。代表的な手法としては、特許第4194073号公報に記載の「プレス法」、実用新案登録第2524092号公報に記載の「キャスティング法」、特許第4088884号公報に記載の「フォトポリマー法」等の形状転写が採用される。
【0040】
中でも「フォトポリマー法」(2P法、感光性樹脂法)は、放射線硬化性樹脂をレリーフ型(微細凹凸パターンの復製用型)と平担な基材(プラスチックフィルム等)との間に流し込み放射線で硬化させた後、この硬化膜を基板ごと、複製用型から剥離する方法である。この方法によって高精細な微細凹凸パターンを持つレリーフ構造を得ることができる。このような方法によって得られたレリーフ構造は、熱可塑樹脂を使用する「プレス法」や「キャスト法」に比べて微細凹凸パターンの成形精度が高く、耐熱性や耐薬品性に優れる。
【0041】
また、新しいレリーフ構造をもつレリーフ形成層の作製方法としては、常温で固体状または高粘度状の光硬化性樹脂を使用して成形する方法や、離型材料を添加する方法もある。
【0042】
レリーフ形成層に使用される材料は、例えばアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂;反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂;メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂を単独もしくはこれらを複合したものを使用できる。微細凹凸パターンが形成可能な材料であれば、前記以外のものも使用できる。
【0043】
前記フォトポリマー法に適用されるレリーフ形成層の材料は、例えばエチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を使用できる。モノマーは、例えば1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を使用できる。オリゴマーは、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。ポリマーは、例えばウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂を使用できる。
【0044】
光カチオン重合を利用するレリーフ形成層の材料は、例えばエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、オキセタン骨格含有化合物、ビニルエーテル類を使用できる。前記電離放射線硬化性樹脂は、紫外線等の光によって硬化させる場合、光重合開始剤を添加することができる。樹脂に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、その併用型(ハイブリッド型)を選定することができる。
【0045】
なお、エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を混合して使用すること、これらに予め反応基を設け、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で互いに架橋すること、これらに予め反応基を設け、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で、その他の樹脂骨格と架橋すること、も可能である。このような方法によれば、エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基をもつポリマーの使用において、常温にて固形で存在し、タックが少ないために成形性が良好で原版汚れの少ないポリマーを得ることも可能である。
【0046】
前記光ラジカル重合開始剤は、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトン等を使用できる。
【0047】
前記光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤は、例えば芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用できる。光ラジカル重合と光カチオン重合を併用する、いわゆるハイブリッド型材料の場合、それぞれの重合開始剤を混合して使用できる。また、1種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を使用できる。
【0048】
放射線硬化樹脂と光重合開始剤を含む樹脂組成物において、光重合開始剤の配合割合は材料によって適宜選択すればよいが、一般に0.1〜15質量%配合する。樹脂組成物は、さらに光重合開始剤と組み合わせて増感色素を併用してもよい。樹脂組成物は、必要に応じて染料、顔料、各種添加剤(重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物など)、架橋剤(例えば、エポキシ樹脂など)等を含んでもよい。また、成形性向上のために非反応性の樹脂(前述の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含む)を添加してもよい。
【0049】
前述した製造方法において、レリーフ形成層の材料は成型可能なある程度の流動性を有すること、および成型後の塗膜が所望する耐熱性や耐薬品性が得られること、を考慮して選択すればよい。
【0050】
レリーフ形成層を形成する工程では、コーティング法を利用してよい。その場合には支持基材上にレリーフ形成層の材料をコーティングすればよい。特に、ウェットコーティングであれば低コストで形成できる。また、レリーフ形成層の形成において溶媒で希釈したものを塗布し、乾燥してその厚さを調整してもよい。
【0051】
レリーフ形成層の厚さは、例えば0.1〜10μmの範囲にすることが好ましい。前述したレリーフ形成層の作製方法にもよるが、厚くし過ぎると、レリーフ構造の転写のための加工時の加圧による樹脂のはみ出し、シワの原因となる。他方、薄くし過ぎると、レリーフ構造の転写時における流動性が乏しくなって、十分な成型ができなくなるおそれがある。また、微細凹凸パターンの転写性はその形状によって変化するが、レリーフ形成層の厚さは所望する凹凸深さの1〜10倍、より好ましくは3〜5倍であることが望ましい。
【0052】
レリーフ形成層は、所望するレリーフ構造を有するレリーフ原版と接触させた後、必要であれば熱、圧力、電磁波を利用してレリーフ原版の形状をレリーフ形成層の片側に形状転写させる。なお、レリーフ形成層は片側のみならず両側、つまり表裏にレリーフ構造を形成してもよい。
【0053】
使用するレリーフ原版の製作方法は、公知の方法を利用すればよく、ロール状の原版であれば連続成型が可能である。
【0054】
(第1反射層)
第1反射層は、電磁波を反射させる機能を有する。支持基材および微細凹凸パターンを持つレリーフ構造を有するレリーフ形成層を透過した光を反射させる場合は、支持基材またはレリーフ形成層の屈折率よりも高い高屈折率材料を使用する。この場合、第1反射層とレリーフ形成層の屈折率の差は、0.2以上であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることによって、レリーフ形成層と第1反射層との界面で屈折および反射が起こる。なお、レリーフ構造を覆う第1反射層は、その微細凹凸構造による光学効果を強調することも可能である。
【0055】
第1反射層の材料は、例えばAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体、またはこれらの化合物等を使用することができる。
【0056】
第1反射層は、透過率が40%以下であることが好ましい。第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3層干渉膜による干渉色を生じさせることから、第1反射層は透明性を持ち、かつレリーフ形成層および機能性薄膜層に対して0.2以上の屈折率差を有し、両界面において反射を生じさせることが好ましい。
【0057】
このような透明性を持つ第1反射層は、前述の金属材料の単体または化合物の薄膜から形成することによって実現可能である。
【0058】
前記金属、化合物以外に透明性を持つ第1反射層として使用できる材料の例を以下に挙げる。カッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスは、例えばSb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(5.0)、WO3(5.0)、SiO(5.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5.0)、MgO(1.0)、SiO2(1.45)、Si22(10)、MgF2(4.0)、CeF3(1.0)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.0)、Al23(1.0)、GaO(2.0)等を使用できる。有機ポリマーは、例えばポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等を使用できる。
【0059】
第1反射層は、前述した製造方法における第2反射層のパターン加工を施す際に使用するエッチング処理剤に対して耐性を必要とする。例えばエッチング処理剤に対して溶解、腐食、変質、剥離等により第2領域における第1反射層の反射率が変化せず、安定であることが必要であるため、前記材料の中から適宜選択すればよい。場合によっては複数の材料を使用してもよい。
【0060】
なお、第2領域における第1反射層のエッチング処理剤に対する耐性は、第1反射層を覆うように配置された機能性薄膜層によって強化してよい。つまり、第1反射層がエッチング処理剤に対する耐性が低くても、機能性薄膜層との複層化により第1反射層をエッチング処理剤から保護することによって、第2領域における第1反射層の反射機能の低下を防止できる。
【0061】
第1反射層は、前述した製造方法においてレリーフ形成層の微細凹凸面に均一な厚さで薄膜形成するために、ドライコーティング法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法を採用することが好ましい。
【0062】
また、第1反射層は前記金属、セラミックス、または有機ポリマーの微細な粉末やゾルまたは金属ナノ粒子などを有機高分子樹脂に分散して得られる高輝性光反射インキ、有機ポリマーや有機ポリマーの微粒子を使用することもできる。この第1反射層は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法など公知の印刷法により形成できる。このような印刷方により第1反射層を設ける場合には、乾燥後の膜厚が0.001〜10μm程度になるように調整すればよい。
【0063】
(機能性薄膜層)
機能性薄膜層は、支持基材、微細凹凸パターンを持つレリーフ構造を有するレリーフ形成層および第1反射層を透過した光を透過させる機能を有する。また、第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3層干渉膜による干渉色を生じさせることから、機能性薄膜層は3層干渉膜の中間層である。一般的に3層干渉膜は、高屈折層、低屈折層、高屈折層の積層体で構成されるため、中間層の機能性薄膜は第1反射層、第2反射層の屈折率に比べて0.2以上低い屈折率であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることによって、レリーフ形成層と第1反射層との界面で屈折および反射を起こさせることが可能になる。
【0064】
なお、第2領域においては第1反射層、機能性薄膜層の2つの層の積層であるため、干渉色が得られない。
【0065】
機能性薄膜層は、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層の3層干渉膜の中間層であるため、透明性の高い低屈折膜であることが好ましい。具体的には機能性薄膜層は第1反射層と同じかまたは低い屈折率を有し、両界面において反射を生じさせることが可能になる。
【0066】
透明性を持つ機能性薄膜層として使用できる材料の例を以下に挙げる。カッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスは、例えばSb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(5.0)、WO3(5.0)、SiO(5.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5.0)、MgO(1.0)、SiO2(1.45)、Si22(10)、MgF2(4.0)、CeF3(1.0)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.0)、Al23(1.0)、GaO2(2.0)等を用いることができる。有機ポリマーは、例えばポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等を用いることができる。
【0067】
機能性薄膜層は、3層干渉膜の中間層であり、干渉色をコントロールする光路差調整層の働きをするため、レリーフ形成層の微細凹凸面に沿って均一な厚さで薄膜形成することが好ましい。このため、機能性薄膜層の形成にあたっては気相法(ドライコーティング法)、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等を採用することが好ましい。
【0068】
(第2反射層)
第2反射層はレリーフ構造に沿って設けられ、レリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層を透過した光を反射させる。第2反射層は機能性薄膜の屈折率よりも高屈折率を持つ材料が使用される。この場合、両層の屈折率の差は、0.2以上であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることによって、機能性薄膜層と第2反射層との界面で屈折および反射を起こさせることが可能になる。
【0069】
第2反射層の材料は、例えばAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agのような金属材料の単体、またはこれら金属の化合物を使用できる。
【0070】
前記金属、化合物以外に透明性を持つ第2反射層として使用できる別の材料例を以下に挙げる。カッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスは、例えばSb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(5.0)、WO3(5.0)、SiO(5.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5.0)、MgO(1.0)、SiO2(1.45)、Si22(10)、MgF2(4.0)、CeF3(1.0)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.0)、Al23(1.0)、GaO(2.0)を使用することができる。有機ポリマーは、例えばポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)を使用することができる。
【0071】
第2反射層は、前述した製造方法において例えばエッチング処理剤で溶解、腐食、又は変質により反射率または透明性を変化させることでパターン化することを考慮し、前記材料の中から適宜選択すればよい。場合によっては複数の材料を使用してもよい。なお、第2反射層をパターン化する際には第1反射層の反射効果を低下させない材料および工程を適宜選択することが好ましい。
【0072】
第2反射層を溶解により反射率または透過率を変化させる方法は、前述した金属または金属酸化物からなる第2反射層をウェットエッチング処理する方法が採用できる。エッチングに使用する処理剤は、公知の酸やアルカリ、有機溶剤や酸化剤、還元剤などを使用することができる。第2反射層の材料によっては、ドライエッチング法を利用してもよい。このような第2反射層のパターン化工程においても、第2反射層のみがパターン化され、第1反射層には変化が無いことが好ましい。
【0073】
第2反射層を変質により反射率または透過率を変化させる方法は、例えば銅から作られる第2反射層を酸化剤により酸化させて酸化第一銅に変化させる、アルミニウムから作られる第2反射層を酸化剤によって酸化させてベーマイトに変化させる、等の方法を採用できる。このような第2反射層のパターン化工程においても、第2反射層のみがパターン化され、第1反射層には変化が無いことが好ましい。
【0074】
第2反射層の溶解特性や変質特性を変化させる方法以外にも、屈折率、反射率、透過率などの光学特性や、耐候性、層間密着性などの実用耐久性を変化させることも可能である。
【0075】
第2反射層は、前述した製造方法においてレリーフ形成層の微細凹凸面に均一な厚さで薄膜形成するために、ドライコーティング法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法を採用することが好ましい。
【0076】
(保護層)
保護層は、光透過性を有すると共に第2反射層をパターン形成する際のマスク層として機能する。
【0077】
保護層に用いる材料は、第2反射層をエッチングする際のエッチング処理剤に対して耐性を持つ材料を使用すればよく、耐性が確保できるような膜厚で設ければよい。例えば、印刷のようなウェットコーティングで保護層を形成する場合には例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が使用できる。具体的には、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂を挙げることができる。また、滑剤、例えばポリエチレンパウダー、カルナバロウ等のワックスを添加してもよい。滑剤は、白濁しない程度の20重量部までの量で添加することが可能である。このような樹脂は、溶媒で希釈することにより適切な粘度にしてウェットコーティングに適用される。他方、ドライコーティングで保護層を形成する場合には、例えばシリカ、アルミナのような透明な無機材料が用いられる。これら以外の保護層の材料は、感光性樹脂を使用できる。
【0078】
図1に示す偽造防止構造体の保護層は、前記ウェットコーティングで形成することが好ましい。
【0079】
保護層を用いた第2反射層のパターン形成法は、前述したように溶解、腐食もしくは変質により第2反射層の反射率または透明性を変化させることによってパターン形成する方法を採用できる。
【0080】
典型的には、ウェットエッチングやドライエッチングが想定され、このような第2反射層のパターン形成方法では残存させる部分の第2反射層パターン部分に保護層を形成すればよい。
【0081】
以上、第1実施形態に係る偽造防止構造体を構成する各層について詳細に説明したが、傷つき防止のために最表面に表面保護膜を設けること、光学特性を向上させるために最表面に反射膜を設けることも可能である。なお、表面保護膜または反射膜は公知のコーティング方法を使用することが可能である。
【0082】
また、層間の密着を向上させるために、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、プライマー塗工を施すこと、光学特性を向上させるために最表層に反射防止処理を付与することが可能である。
【0083】
さらに、意匠性を向上させるために、層を着色すること、反射層を多層構成にすることで、多層干渉膜としてもよい。
【0084】
次に、第1実施形態に係る偽造防止構造体の別の態様を図3および図4を参照して説明する。なお、前述した図1と同様な部材は同符号を付して説明を省略する。
【0085】
図3は、偽造防止ステッカーを示す断面図である。偽造防止ステッカー21は、支持基材22、レリーフ形成層2、第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5、保護層6、接着層23をこの順で積層した構造を有するである。
【0086】
前記構造の偽造防止ステッカー21は、レリーフ形成層2、第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5、保護層6を別の基材(被転写体)に転写するときに使用され、接着層23は別の基材に接着するために用いられる。転写後には支持基材21を剥離することもできる。
【0087】
このような偽造防止ステッカー21の使用により偽造防止構造体が貼着された偽造防止媒体を得ることが可能になる。
【0088】
図4は、偽造防止転写箔を示す断面図である。偽造防止転写箔31は、剥離可能な支持基材32、レリーフ形成層2、第1反射層3、機能性薄膜層4、第2反射層5、保護層6、接着層33をこの順で積層した構造を有する。
【0089】
前記偽造防止転写箔31は、熱ロール、熱板等の加熱媒体を支持基材32に圧接し、転写温度に加熱して被転写体である別の基材に接着層を圧着させると共に支持基材32とレリーフ形成層2の界面で支持基材32を剥離する。
【0090】
このような偽造防止転写箔31の使用により被転写体に偽造防止構造体が貼着された偽造防止媒体を得ることが可能になる。
【0091】
前述した図3、図4の偽造防止構造体において、必要に応じて支持基材とレリーフ形成層の間に剥離保護層を設けてもよい。剥離保護層は、支持基材から円滑かつ安定に剥がすための層である。このため、剥離保護層は支持基材に対して離型性が良好な材料から作られる。
【0092】
なお、偽造防止ステッカーおよび偽造防止転写箔に用いられる支持基材は前述したようにフィルム基材が好ましい。フィルム基材は、微細凹凸パターン(レリーフ構造)の成形時に加えられる熱、圧力、電磁波によって変形、変質の少ない材料を用いることが望ましい。フィルム基材は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などのプラスチックフィルムを用いることができる。必要によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を支持基材として用いてもよい。
【0093】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る偽造防止構造体を示す断面図である。
【0094】
偽造防止構造体41は、レリーフ形成層42、第1反射層43、機能性薄膜層44、第2反射層45、保護層46をこの順で積層した構造を有する。レリーフ形成層42の片側は可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有する、微細凹凸パターンを持つ第1レリーフ47および第2レリーフ48を持つレリーフ構造を有する。第1レリーフ47表面は第2レリーフ48表面と比較して凹凸表面積が小さくなっている。つまり、第1レリーフ47は凹部、凸部がなだらかな形状を有し、凹凸の間隔は広くなっている。他方、第2レリーフ48は第1レリーフ47に比べて凹部、凸部が急峻な形状を有し、第1レリーフ47に比べて凹凸の間隔が狭くなっている。
【0095】
第1反射層43および機能性薄膜層44は、レリーフ構造(第1、第2のレリーフ47,48)の微細な凹凸面に沿って全面に設けられている。第2反射層45および保護層46は第1レリーフ47の機能性薄膜層44表面のみを覆うように設けられている。
【0096】
すなわち、第1領域49はレリーフ形成層42の第1レリーフ47の凹凸表面に第1反射層43、機能性薄膜層44、第2反射層45および保護層46がこの順序で積層された領域で、第1反射層43、機能性薄膜層44、第2反射層45からなる3つの層で可視光の少なくとも一部領域を干渉させる、着色反射層が得られる。3つの層は、観察角度によって色調が変化する反射層を得ることも可能で、色鮮やかな反射層を有するレリーフ構造を設計することが可能である。
【0097】
着色された反射層は、第1領域49にのみ存在し、パターン化された第2反射層45のみが着色される。第1領域49において、パターン化された第2反射層45そのものが着色される。その結果、第2反射層45そのものが着色パターンであるため、着色インキをパターン化して印刷し、この着色パターンに合致するように反射層を形成する従来方法のような着色パターンと反射層の間での位置ずれを回避できる。
【0098】
第2領域50は、レリーフ形成層42の第2レリーフ48の微細な凹凸表面に第1反射層43および機能性薄膜層44のみを積層し、第2反射層45および保護層46が存在しない領域である。このため、第2領域50においても、レリーフ構造による無彩色の光学効果を得ることが可能である。
【0099】
また、第1領域49と第2領域50はレリーフ構造が異なる(第1領域49:第1レリーフ47、第2領域50:第2レリーフ48、凹凸表面積:第1レリーフ47表面<第2レリーフ48表面)ために、異なる光学効果を得ることが可能である。例えば両構造が回折格子のレリーフで、凹凸表面積が異なるため、異なるカラーチェンジ効果の領域となる。
【0100】
さらに、偽造防止構造体41は第1領域49と第2領域50の境界が異なるレリーフ構造の境界であることから、第2反射層45のパターンと着色されたパターンと第1領域49のレリーフ構造のパターン(第1レリーフ47)との間に位置ずれがない。
【0101】
したがって、第2実施形態に係る偽造防止構造体41は第1領域49における着色反射レリーフ構造と、第2領域50における無彩色反射レリーフ、または第1、第2の領域49,50間の異なるカラーチェンジ効果によって、一層精密で複雑な光学効果が得られるため、さらに高い偽造防止効果を発現できる。
【0102】
次に、第2実施形態に係る偽造防止構造体の製造方法を説明する。
【0103】
1)第1工程
支持基材上の全面にレリーフ形成層を形成する。レリーフ形成層は、支持基材上にコーティング、例えばウェットコーティングすることにより形成できる。また、レリーフ形成層は支持基材自体でもよい。
【0104】
次いで、凹凸形状を有する金属または樹脂からなるレリーフ原版を用意し、この原版の凹凸形状をレリーフ形成層の表面に形状転写して凹凸を持つ第1レリーフおよび第2レリーフを持つレリーフ構造をレリーフ形成層に形成する。ここで、第1レリーフ表面は第2レリーフ表面と比較して凹凸表面積が小さくなっている。つまり、第1レリーフはその凹凸の間隔が第2レリーフの凹凸の間隔より広くなっている。
【0105】
形状転写の方法は、前記第1実施形態で説明したプレス法、キャスティング法、フォトポリマー法等の公知の方法や、これらの方法を組み合わせたハイブリッド法であってもよい。
【0106】
(第2工程)
レリーフ形成層のレリーフ構造表面に第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層用薄膜層をこの順序で形成する。
【0107】
第1反射層、機能性薄膜層は、公知のウェットコーティングまたはドライコーティングで形成できる。第2反射層用薄膜層はドライコーティングで形成することが好ましい。
【0108】
(第3工程)
第2反射層用薄膜層上にエッチングマスクとして機能する保護膜を形成する。つづいて、保護膜をマスクとして第2反射層用薄膜層をエッチング処理剤で選択的にエッチング除去して第2反射層を形成する。すなわち、保護膜下の領域(第1領域49)に第2反射層用薄膜層を残して第2反射膜を形成し、これ以外の領域(第2領域50)の第2反射層用薄膜層を除去する。ここで、エッチングによって第1反射層を除去しないことが必要である。
【0109】
以上の第1工程〜第3工程によって、第2実施形態に係る偽造防止構造体が製造されるが、これに限定されない。 前記保護膜および第2反射膜のパターン化は、次のような別の方法によっても形成することが可能である。これを図6を参照して説明する。機能性薄膜層44上に第2反射層用薄膜層51を真空蒸着法やスパッタ法などの気相法によって全面に形成した後、保護膜46を真空蒸着法やスパッタ法などの気相法によって全面に形成する。このとき、図6に示すようにレリーフ形成層42のレリーフ構造は第1レリーフ47およびこのレリーフ47より凹凸の間隔が狭い第2レリーフ48を有するため、第2反射層用薄膜層51および保護層46は第1レリーフ47が位置する第1領域49において十分な厚さで形成され、他方第2レリーフ48が位置する第2領域50において凹凸形状の凸部先端のみに薄く形成される。このため、その後の全面エッチング処理を施すと、第2領域50の凹凸形状の凸部先端のみに薄く形成された保護層46および第2反射層用薄膜層51が優先的にエッチング除去され、第1領域49のみに第2反射層用薄膜層51(第2反射層45として機能する)および保護層46が残存してパターン形成される。
【0110】
前記保護層46の材料はシリカ、アルミナのような透明無機材料を用いる。
【0111】
このような方法によると、予め設定した第1、第2のレリーフ47,48の形状に従って、第1レリーフ(第1領域)に第2反射層45(および保護層46)をセルファラインで形成できるため、第1領域にのみ着色を施すことが可能で、かつ第1領域と第2領域の異なるレリーフの光学効果を得ることが可能である。
【0112】
なお、第2実施形態に係る偽造防止構造体を構成する各層の材質、必要な特性は第1実施形態で説明したのと同様である。
【0113】
また、第2実施形態に係る偽造防止構造体は前述した図3(偽造防止ステッカー)および図4(偽造防止転写箔)のような別の態様であってもよい。このような偽造防止ステッカーおよび偽造防止転写箔の使用により偽造防止構造体が貼着された偽造防止媒体を得ることが可能になる。
【0114】
以下、本発明の実施例を説明する
(実施例1)
実施例1は、図3の構成を代表例として説明する。厚さ25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体11に下記組成物からなるインキを乾燥後の膜厚が2μmとなるように塗布、乾燥してレリーフ形成層2を形成した。つづいて、レリーフ形成層2表面にロールエンボス法により回折格子のレリーフパターンを形成した。レリーフ形成層2に酸化チタン(TiO2)を真空蒸着してレリーフパターンに沿う50nmの膜厚の第1反射層3を形成し、さらに第1反射層3上にシリカ(SiO2)を真空蒸着して130nmの膜厚の機能性薄膜層4を形成した。ひきつづき、機能性薄膜層4上にアルミニウムを真空蒸着して50nmの膜厚のアルミニウム層を形成した。次いで、アルミニウム層上に下記組成物からなるインキをグラビア印刷法にて印刷し、星型パターンの保護層6を形成した。保護層6の厚さは乾燥膜厚で1μmとした。その後、保護層6をエッチングマスクとしてアルカリエッチング処理を施して露出したアルミニウム層部分をエッチングして星型パターンの第2反射層5を形成した。その後、保護層6を含む機能性薄膜層4上に下記組成物からなるインキをグラビア印刷法で印刷し、乾燥して膜厚3μmの接着層23を形成し、偽造防止ステッカー21を得た。
【0115】
「レリーフ形成層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「保護層インキ組成物」
ポリアミド樹脂 20.0重量部
エタノール 50.0重量部
トルエン 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
アクリル粘着剤 50重量部
シリカ 10重量部
メチルエチルケトン 40重量部
(比較例1)
図7の(a)に示すように支持基材101上に下記組成物からなるインキをグラビア印刷法にて印刷し星型パターンの着色層102を形成した。つづいて、着色層102を含む基材101上に実施例1と同様な方法によりレリーフ形成層103を形成し、レリーフ形成層103の片面に微細な凹凸を持つレリーフ構造104を形成した。ひきつづき、レリーフ形成層103にアルミニウムを真空蒸着して50nmの膜厚のアルミニウム層(図示せず)を形成した。次いで、アルミニウム層上に実施例1と同様な保護層インキ組成物をグラビア印刷法にて印刷し、星型パターンの保護層105を形成した。保護層105の厚さは乾燥膜厚で1μmとした。次いで、保護層105をエッチングマスクとしてアルカリエッチング処理を施して露出したアルミニウム層部分をエッチングして反射層106を形成した(図7の(b)図示)。その後、図示しないが実施例1と同様に保護層を含むレリーフ形成層の凹凸面に実施例1と同様な接着層インキ組成物をグラビア印刷法で印刷し、乾燥して膜厚3μmの接着層を形成し、偽造防止ステッカーを得た。
【0116】
なお、星型パターンの着色層と星型パターンの保護層は、グラビア印刷機の追い刷り(重ね見当印刷)により見当を極力合わせた。
【0117】
「パターン着色層インキ組成物」
ウレタン印刷インキ/黄色 50.0重量部
メチルエチルケトン 25.0重量部
酢酸エチル 25.0重量部
得られた実施例1および比較例1の偽造防止ステッカーについて偽造防止性の評価を行った。
【0118】
[偽造防止性の評価]
マイクロスコープによる拡大写真を撮影した後、写真画像解析ソフトによって星型パターンの「着色反射層面積」と「反射層面積(実施例1は第2反射層面積、比較例1は反射層面積)」との面積比率(着色反射層面積mm2/反射層面積mm2(実施例1は第2反射層面積、比較例1は反射層面積))を評価した。また、マイクロスコープによる拡大写真を撮影した後に、写真画像解析を行い、「着色反射層面積」と「第2反射層面積」との位置ズレ幅(mm)を測定した。
【0119】
面積比率(mmm2/mmm2)、位置ズレ幅(mm)は、それぞれ20箇所を測定し、平均値と最大値を求めた。
【0120】
その結果を下記表1に示す。
【表1】

【0121】
前記表1から明らかなように実施例1の偽造防止構造体は、面積比率1.00、位置ズレが0.00mm(測定限界以下の0.01mm未満)で良好であるのに対し、比較例1の偽造防止構造体は面積比率1.02、最大で1.00mmの位置ズレが生じる。
【0122】
また、比較例1の偽造防止構造体の目視観察においても、反射層に対する着色層のズレが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、意匠性が高く、セキュリティ性が高い偽造防止構造体に関し、所望の色調の反射層を任意のパターンで設けることが可能であり、意匠性及び/又はセキュリティ性の優れる偽造防止構造体を提供することが可能であることから、有価証券やブランド品、証明書、個人認証媒体等に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1,41…偽造防止構造体,2,42…レリーフ形成層,3,43…第1反射層,4,44…機能性薄膜層,5,45…第2反射層,6,46…保護層,8,49…第1領域,9,50…第2領域,47…第1レリーフ、48…第2レリーフ、11,22,32…支持基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層および保護層をこの順で積層した偽造防止構造体であって、
前記レリーフ形成層の片側は可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有するレリーフ構造を有し、
前記第1反射層、機能性薄膜層がレリーフ構造の凹凸に沿って全面で設けられ、
前記第2反射層はレリーフ構造の凹凸の一部分を覆う任意の領域に設けられ、
前記保護層は前記第2反射層の領域のみを覆うように設けられ、かつ
前記第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3つの層が可視光の少なくとも一部領域を干渉させることを特徴とする偽造防止構造体。
【請求項2】
少なくともレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層および保護層をこの順で積層した偽造防止構造体であって、
前記レリーフ形成層の片側は、可視光の少なくとも一部の波長領域を回折、散乱、吸収、偏光分離する効果を有する、第1レリーフおよび第2レリーフを持つレリーフ構造を有し、
前記第1レリーフ表面は前記第2レリーフ表面と比較して凹凸表面積がより大きく、
前記第1反射層および前記機能性薄膜層がレリーフ構造の凹凸に沿って全面に設けられ、
前記第2反射層および保護層は前記第2レリーフの前記機能性薄膜層表面のみを覆うように設けられ、
前記第1反射層、機能性薄膜層および第2反射層の3つの層が可視光の少なくとも一部領域を干渉させることを特徴とする偽造防止構造体。
【請求項3】
前記第1反射層は、タンタル酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物、酸化インジウム錫、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物およびハフニウム酸化物の群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止構造体。
【請求項4】
前記第1反射層は、高屈折微粒子からなる高輝度透明反射塗料により形成されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の偽造防止構造体。
【請求項5】
前記レリーフ構造は、回折構造、ホログラム、集光レンズアレイ、拡散レンズアレイおよび散乱構造の少なくとも1つを少なくとも部分的に同一平面で有することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の偽造防止構造体。
【請求項6】
少なくとも支持基材に積層された偽造防止構造体であって、前記支持基材上にレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層、保護層および接着層をこの順序で積層したステッカー構成であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の偽造防止構造体。
【請求項7】
少なくとも支持基材を有し、前記支持基材上にレリーフ形成層、第1反射層、機能性薄膜層、第2反射層、保護層および接着層をこの順序で積層し、かつこの積層物が前記基材に対して剥離可能な転写箔構成であることを特徴とする請求項ないし5いずれか1項記載の偽造防止構造体。
【請求項8】
少なくとも請求項1ないし7のいずれか1項記載の偽造防止構造体を貼着した偽造防止媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−247483(P2012−247483A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116827(P2011−116827)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】