説明

着色剤組成物及びその製造方法、並びに当該着色剤組成物を用いた着色方法及びシーリング材の製造方法

【課題】有機溶剤の大気中への揮散による環境汚染を発生させることなく、耐ブリード汚染性に優れたシーリング材を提供するための着色剤組成物を提供する。
【解決手段】水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体と、顔料とを含有する着色剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブリード汚染性に優れ、調色が容易な着色剤組成物及びその製造方法、並びに当該着色剤組成物を用いた着色方法及びシーリング材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーリング材、防水材、接着剤、及び塗料などの調色において、ベース樹脂に粉体状の顔料を直接添加し混合する方法が知られている。
【0003】
しかし、ベース樹脂に顔料を直接添加する場合、顔料の分散に時間を要する。そこで、有機溶剤や可塑剤などの液体(分散媒)に予め顔料を分散した着色剤組成物を使用することが多い。着色剤組成物は、分散媒に単色または数色の顔料を所望の割合で混合分散したもので、場合により他の配合剤と混合され、使用されているものである。着色剤組成物と、基材となるシーリング材、防水材、接着剤、又は塗料等を混合して、目的とする色調のシーリング材、防水材、接着剤、又は塗料等を製造する方法は、多数の色調のものを効率的に製造できるという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、外壁材のシーリングなどに使用される硬化性シリコーン組成物を製造するに際し、変成シリコーンポリマーなどのベース材と、硬化触媒と、着色剤組成物を調製して混合することが記載されている。特許文献1の実施例には、着色剤組成物としてカーボンブラックとフタル酸ジオクチル(DOP)と25:75の比で混合したものが記載されている(段落0014参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−106519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来技術の着色剤組成物を用いると、得られるシーリング材等の上塗り塗料(仕上げ塗料)に対してブリード汚染を引き起こすという問題があった。これは、分散媒として使用しているDOP等の高沸点の溶剤や可塑剤が、上塗り塗料の表面に移行していることが原因と考えられる。一方、分散媒として低沸点の有機溶剤を用いると、有機溶剤の揮散による環境汚染が問題となる。そこで、本発明が解決しようとする課題は、有機溶剤の大気中への揮散による環境汚染を発生させることなく、耐ブリード汚染性に優れた着色剤組成物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体と、顔料とを含有する着色剤組成物が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。尚、本発明において、「着色」には「調色」の意味も含むものとする。
(1)水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体と、顔料とを含有する着色剤組成物。
(2)前記水酸基含有ポリエーテル誘導体が、水酸基含有ポリエーテルの水酸基と有機イソシアネートを反応させて得られるウレタン結合を有する化合物である、(1)に記載の着色剤組成物。
(3)前記水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体が、ポリオキシアルキレン鎖を有し、数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000である、(1)に記載の着色剤組成物。
(4)前記水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体の分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする、(3)に記載の着色剤組成物。
(5)前記有機イソシアネートが脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機ジイソシアネートである、(2)に記載の着色剤組成物。
(6)含水率が0.05質量%以下である、(1)〜(5)いずれかに記載の着色剤組成物。
(7)水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体に顔料を混合分散させた後に、当該組成物を脱水することによって、含水率を0.05質量%以下にすることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の着色剤組成物の製造方法。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の着色剤組成物を用いて基材を着色する方法。
(9)(1)〜(6)のいずれかに記載の着色剤組成物を用いることを特徴とするシーリング材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の着色剤組成物を用いることにより、大気中への揮散による環境汚染を発生させることなく、耐ブリード汚染性に優れたシーリング材、防水材、接着剤、及び塗料等を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、実施形態に即して詳細に説明する。
[着色剤組成物]
本発明の着色剤組成物は、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体と、顔料とを含有する。以下、本発明に係る着色剤組成物の構成成分について詳述する。
【0010】
(水酸基含有ポリエーテル)
水酸基含有ポリエーテルとしては、水酸基を少なくとも1個以上有するポリエーテル化合物であってポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオール、ポリアセタール樹脂、フェノキシ樹脂(高分子量ポリヒドロキシポリエーテル)などを挙げることができる。尚、ポリオールとは複数のアルコール性水酸基をもつ化合物のことをいう。
【0011】
ポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールは、公知の製造方法で得られる。例えば、水酸化カリウムおよび水酸化セシウム等のアルカリ触媒、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ならびに複合金属シアン化物錯体等からなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを開環重合反応させて製造することができる。アルキレンオキシドは単独又は2種以上を組み合わせて開環付加重合させることができる。
【0012】
開始剤としては、水酸基を1個以上含有する化合物などが挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノール等の、炭素数1〜10のアルキルモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコール類、ソルビトール、シュークロース、グルコース、ラクトース、ソルビタン等の糖類系多価アルコール類、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等のアミノアルコール類などである。
【0013】
アルキレンオキシドとしては、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜5)のアルキレンオキシド例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0014】
ポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールとして、具体的には、ポリオキシエチレンのポリオールやモノオール、ポリオキシプロピレンのポリオールやモノオール、ポリテトラメチレンエーテルのポリオールやモノオール、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)−ランダム或いはブロック共重合のポリオールやモノオール、ポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシブチレン)−ランダム或いはブロック共重合のポリオールやモノオールなどを挙げることができる。粘度が低く、耐ブリード汚染性に優れる点で、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系モノオールが好ましく、さらにポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレンモノオールが好ましい。
【0015】
ポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールは、数平均分子量が500〜50,000、更に1,000〜20,000、特に1,000〜10,000のものが好ましい。数平均分子量が500未満では、得られる着色剤組成物の耐ブリード汚染性が低下し、50,000を超えると粘度が高くなるおそれがあり好ましくない。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mnが1.6以下、特に1.0〜1.3が好ましい。分子量分布が狭いものを用いると、着色剤組成物の粘度を低く抑えることができる。さらに、着色剤組成物や着色剤組成物を含むシーリング材などの作業性が優れる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はポリスチレン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された値である。
【0016】
ポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールの総不飽和度は0.1meq/g以下、さらに0.07meq/g以下、特に0.04meq/g以下のものが好ましい。総不飽和度が0.1meq/gを超えると耐候性の低下や耐ブリード汚染性の低下が生じるおそれがあり好ましくない。総不飽和度はJIS K1557−3:2007により測定される。
【0017】
ポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールは、分子1モルの水酸基を除いた部分の50質量%以上、更に80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエーテル、ウレタン、エステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていてもよい。水酸基を除いた分子の95質量%以上がポリオキシアルキレンからなるポリオールやモノオールが最も好ましい。
【0018】
(水酸基含有ポリエーテル誘導体)
水酸基含有ポリエーテル誘導体としては、前記水酸基含有ポリエーテルの水酸基をエーテル化やエステル化、ウレタン化等した、分子内にエーテル基、エステル基、ウレタン基などの極性基を有するものが挙げられる。極性基は誘導体中に1種類でもよいし、数種類でもよい。また、極性基の個数は誘導体中に1つでもよいし、複数でもよい。特に、貯蔵安定性の観点から、水分や酸素と反応して硬化しない化合物が好ましい。
【0019】
具体的には、極性基としてウレタン基を導入した化合物が好ましい。ウレタン基を導入した化合物は、粘度が低く、着色剤組成物にした際に耐ブリード汚染性に優れる。また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び架橋性シリル基含有樹脂と相溶性が良好である。さらに、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び架橋性シリル基含有樹脂を硬化成分とするシーリング材などに配合したときの作業性が良好である。
【0020】
極性基としてウレタン基を導入した化合物は、前記水酸基含有ポリエーテルと有機イソシアネートとを反応させることにより製造することができる。前記水酸基含有ポリエーテルはポリオキシアルキレン系のポリオールやモノオールであることが好ましい。具体的には、ポリオキシアルキレン系モノオールと有機ジイソシアネート、または、ポリオキシアルキレン系ポリオールと有機モノイソシアネートとを反応させることにより製造した、実質的にイソシアネート基又は水酸基を含有しないポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂であることが好ましい。本発明において、前記「実質的にイソシアネート基又は水酸基を含有しない」とは、イソシアネート基又は水酸基を完全に含有しない場合のみに限定する意味ではない。すなわち、ポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂の合成の際に、イソシアネート基と水酸基の当量比によっては、イソシアネート基又は水酸基が少量残存する場合があるが、当該残存量が、水酸基含有ポリエーテル誘導体としての効果と、これを配合して得られる着色剤組成物の各種性能に対する悪影響が無視できる範囲であれば、前記「実質的にイソシアネート基又は水酸基を含有しない」に含まれるものである。この様な、イソシアネート基又は水酸基の含有量として、例えば、ポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂中に0.05mmol/g未満である。
【0021】
イソシアネート基/水酸基の当量比は1.1/1.0以下となる範囲で反応させるのが好ましい。当量比が1.1/1.0を上回るとイソシアネート基の含有量が多くなり、保存中に空気中の水分と反応して増粘し作業性や貯蔵安定性を悪化させる。本発明の着色剤組成物を、イソシアネート基含有プレポリマーを含有するシーリング材などに用いる場合は、イソシアネート基/水酸基の当量比が0.9/1.0〜1.1/1.0となる範囲で反応させることが好ましく、1/1で反応させることがもっとも好ましい。当量比が0.9/1.0を下回ると水酸基の含有率が多くなるため、本発明の着色剤組成物をイソシアネート基含有プレポリマーに配合したとき、イソシアネート基と反応し増粘し、作業性や貯蔵安定性を悪化させる点で好ましくない。水酸基当量は、JIS K1557−1:2007により求められる。
【0022】
有機イソシアネートとしては、具体的には、有機ポリイソシアネート、有機モノイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート類、2,4,6−トリメチルフェニル−1,3−ジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニル−1,3−ジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート類、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート類などの芳香脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。更に、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートも使用できる。また、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、ウレア結合などを1以上含有する変性イソシアネートも使用できる。
【0024】
有機モノイソシアネートとしては、例えば、n−ブチルモノイソシアネート、n−ヘキシルモノイソシアネート、n−ヘキサデシルモノイソシアネート、n−オクタデシルモノイソシアネート、p−イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p−ベンジルオキシフェニルモノイソシアネートが挙げられる。
【0025】
これらのうち、粘度を低くでき、黄変を防止する点で、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましい。特に、m−キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレン系ウレタン樹脂の合成には、公知のウレタン化触媒を反応触媒として用いることができる。具体的には、オクチル酸第一錫、オクテン酸錫などの、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄などの金属とオクチル酸、オクテン酸、ナフテン酸などの有機酸との金属塩、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、錫系キレート化合物であるEXCESTAR C−501(旭硝子社製)などの金属キレート化合物、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の有機アミンやその塩等を用いることができる。これらのうち金属有機酸塩や有機金属化合物が好ましい。また、水酸基やイソシアネート基と反応性を有しない公知の有機溶剤を反応溶媒として使用することは、大気中への揮散による環境汚染を発生させることとなり好ましくない。
【0027】
なお、水酸基含有ポリエーテル誘導体の数平均分子量は、上記と同様の理由から、500〜50,000、更に1,000〜20,000、特に1,000〜10,000のものが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mnが1.6以下、特に1.0〜1.3が好ましい。
【0028】
(顔料)
本発明における顔料としては、特に限定されず、いずれも公知の顔料を使用できる。具体的には、白色、黄色、赤色、青色、緑色、黒色などの有色がある。本発明においては、単一の顔料からなるものであっても、複数の顔料を混合したものであってもよい。白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトポンなどが挙げられる。黄色顔料としては、酸化鉄イエロー、黄鉛、亜鉛黄、ベンジジンイエロー、オーラミンレーキなどが挙げられる。赤色顔料としては、鉛丹、酸化鉄レッド(ベンガラ)、塩基性クロム酸鉛、朱、カドミウム赤、ブリリアントスカーレットなどが挙げられる。青色顔料としては、コバルト青(アルミン酸コバルト)、群青、紺青、フタロシアニンブルーなどが挙げられる。緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ジンクグリーン、ピグメントグリーンなどが挙げられる。黒色顔料としては、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛などが挙げられる。顔料の配合量は、水酸基含有ポリエーテル又は水酸基含有ポリエーテル誘導体100質量部に対して10〜300質量部が好ましく、特に25〜150質量部が好ましい。
【0029】
[着色剤組成物の製造方法]
本発明の着色剤組成物の製造方法は、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体中に顔料を均一に分散できる方法であればどの様な方法を用いてもよい。例えば、プラネタリーミキサー、ニーダー、アジター、ナウタミキサー、ラインミキサーなどステンレス製や鉄製の公知の攪拌、混合装置を用いて、顔料と水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体を混合、分散することにより製造される。
【0030】
必要に応じて着色剤組成物中の含水率を低くする為に脱水工程を加えても良い。水分量はカールフィッシャー法で測定することができる。脱水方法は、どのような方法を用いても良く、例えば、脱水した顔料を水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体に分散する方法、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体中に顔料を分散した後に脱水する方法が挙げられる。後者の方法を用いる場合は、水酸基含有ポリエーテル中に顔料を分散した後に脱水し、有機イソシアネートなどを加えて反応させて水酸基含有ポリエーテルを誘導体化する方法、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテルの誘導体に顔料を分散した後に脱水する方法のどちらでもよい。取扱いが容易な点で水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体に顔料を分散した後に必要に応じて脱水する方法が好ましい。具体的には、顔料を分散した後に、減圧又は/及び加熱することによって脱水することができる。
【0031】
脱水工程を加える場合は、脱水工程後の着色剤組成物の含水率は1.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。含水率を少なくすることにより、着色剤組成物の粘度を低くすることができる。着色剤の粘度を低くすると、従来用いられている着色剤組成物と同程度の粘度でも顔料の高濃度化が可能となり、同量の顔料を添加する場合に分散媒の量を低減することができるため、分散媒による基材の物性変化を少なくすることができると共に、該着色剤組成物を用いて着色する際に、攪拌、混合装置の制限を受けず、簡易に着色できるという利点がある。また、該着色剤組成物を湿気により硬化する一液型の樹脂組成物に加えた時の、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0032】
なお、本発明の着色剤組成物には、上記の成分に加え、例えば酸化防止剤や紫外線吸収剤や光硬化性化合物などの耐候性安定剤、貯蔵安定性改良剤、分散剤、充填剤、揺変剤等の各種添加剤を配合しても良い。これらの添加剤を配合する場合には、水酸基含有ポリエーテル又は水酸基含有ポリエーテル誘導体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、特に0.1〜3.0質量部が好ましい。なお、これらの添加剤については、下記で詳述する。
【0033】
[基材の着色方法]
本発明の基材の着色方法は、上述の着色剤組成物を用いることを特徴とする。着色剤組成物を、基材となるシーリング材、防水材、接着剤、又は塗料等を混合して、シーリング材、防水材、接着剤、又は塗料等を目的とする色調にすることができる。なお、着色剤組成物は1種類でも数種類を混合して用いてもよい。また、本発明の着色剤組成物は、通常、基材100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲内で用いられる。
【0034】
[シーリング材の製造方法]
シーリング材の製造方法は、シーリング基材を本発明の着色剤組成物を用いて所望の色調に調色するものである。具体的な方法としては、着色剤組成物とシーリング基材を均一に混合、分散できる方法であればどの様な方法を用いてもよい。例えば、プラネタリーミキサー、ニーダー、アジター、ナウタミキサー、ラインミキサーなどステンレス製や鉄製の公知の攪拌、混合装置を用いて、着色剤組成物とシーリング基材を混合、分散することがあげられる。
【0035】
シーリング基材としては特に限定されない。例えば、アクリル系基材、シリコーン系基材、変成シリコーン系基材、ポリサルファイド系基材、アクリルウレタン系基材、ポリウレタン系基材、ポリイソブチレン系基材、フッ素系基材および変性ポリサルファイド基材系などが挙げられる。これらは1成分型でも2成分型でもよい。
【0036】
前記シーリング基材は、公知の方法によって製造されるが、プラネタリーミキサー、ニーダー、アジター、ナウタミキサー、ラインミキサーなどステンレス製や鉄製の公知の攪拌、混合装置を用いて、硬化性樹脂と添加剤等を混合、混練することにより製造される。なお、硬化性樹脂、添加剤はそれぞれ、1種であっても2種以上使用してもよい。
【0037】
硬化性樹脂は、公知のものを使用することができるが、湿気により硬化する一液型の樹脂が好ましく、架橋性シリル基含有樹脂又はイソシアネート基含有プレポリマーが最も好ましい。
【0038】
架橋性シリル基含有樹脂は、一般に変成シリコーン樹脂と呼ばれているものであり、湿気(水)と反応してシロキサン結合を形成することにより架橋してゴム状硬化物を形成する、分子内にシリル基を1個以上含有する樹脂である。このような架橋性シリル基含有樹脂としては、例えば、特開昭52−73998号公報、特開昭55−9669号公報、特開昭59−122541号公報、特開昭60−6747号公報、特開昭61−233043号公報、特開昭63−112642号公報、特開平3−79627号公報、特開平4−283259号公報、特開平5−70531号公報、特開平5−287186号公報、特開平11−80571号公報、特開平11−116763号公報、特開平11−130931号公報中に開示されているものを挙げることができる。本発明における架橋性シリル基含有樹脂としては具体的には、分子内に1個以上の架橋性シリル基を含有する、主鎖がそれぞれオルガノシロキサンを含有していてもよい、ポリオキシアルキレン重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン重合体、ビニル系重合体、ポリエステル重合体、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、これらの共重合体等が挙げられる。架橋性シリル基は、シーリング材の硬化性や硬化後の物性等の点から、分子内に1〜5個含まれるのが好ましい。さらに、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい次の一般式で示されるものが好ましい。
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、Rは炭化水素基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Xで示される反応性基はハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる基であり、Xが複数の場合には、Xは同じ基であっても異なった基であってもよい。このうちXはアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が最も好ましい。aは0、1又は2の整数であり、0又は1が最も好ましい。)
【0041】
架橋性シリル基含有樹脂の主鎖は、硬化後の引張接着性、モジュラス等の物性の点から、オルガノシロキサンを含有していてもよい。具体的には、ポリオキシアルキレン重合体及び/又はビニル変性ポリオキシアルキレン重合体が好ましい。ポリオキシアルキレン重合体としては、ポリオキシプロピレン重合体が好ましい。ビニル変性ポリオキシアルキレン重合体としては、アクリル変性ポリオキシプロピレン重合体、メタクリル変性ポリオキシプロピレン重合体が好ましい。ビニル変性ポリオキシアルキレン重合体は、分子内に1個以上の架橋性シリル基を含有する。ポリオキシアルキレン重合体の存在下で、ラジカル重合開始剤の添加あるいは紫外線照射などの通常のラジカル重合方法により、1種又は2種以上のビニル系単量体を重合させる等して得ることができる(特開昭59−78223号公報、特公平2−42367号公報等参照)。
【0042】
本発明において、架橋性シリル基含有樹脂の数平均分子量は1,000以上、特に6,000〜30,000がよい。分子量分布は1.6以下が好ましい。硬化前の粘度が低いので取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が好適である。
【0043】
イソシアネート基含有プレポリマーは、有機ポリイソシアネートと活性水素化合物とを活性水素(基)に対してイソシアネート基過剰、好ましくはイソシアネート基/活性水素(基)(当量比)が1.2〜4.0、更には1.3〜3.0、特に1.3〜2.0となるような割合で反応させて得られるものが好ましい。イソシアネート当量は上記と同様の方法で求めることができ、活性水素当量は水酸基価、アミン価等により求められる。
【0044】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、およびこれらジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、二量体、三量体、または、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)などが挙げられる。これらのうち、芳香族ジイソシアネートが好ましく、MDIとTDIが更に好ましい。
【0045】
前記活性水素化合物としては、ポリオール、アミノアルコール、ポリアミンなどが挙げられる。これらの化合物のうち、高分子のポリオールが好適である。
【0046】
高分子のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素系ポリオール等が挙げられ、数平均分子量500以上のものである。ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、それらの酸エステル、酸無水物等と、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、クオドロールあるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の低分子ポリオール、あるいはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の低分子ポリアミン、モノエタノールアミン等のアミノアルコール等の単独、又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。さらに、ε−カプロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール等が挙げられる。ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記のポリエーテルポリオールと前記のジカルボン酸、酸無水物等とから製造される化合物が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記のポリエステルポリオールの製造に用いる低分子ポリオールとジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との反応から得られる化合物が挙げられる。ポリオールとしては更に、前記ポリエステルポリオールの製造原料として挙げた数平均分子量500未満の低分子ポリオールが挙げられる。
【0047】
ポリアミンとしては、ポリプロピレングリコールの末端ジアミノ化物などの、数平均分子量500以上でポリエーテルポリオールの末端がアミノ基となったポリエーテルポリアミン等の高分子ポリアミンが挙げられる。ポリアミンとしては更に、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン等の数平均分子量500未満の低分子ポリアミンが挙げられる。
【0048】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0049】
また、一般にポリウレタン工業において公知の活性水素基を含有する、数平均分子量500以上の、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等も挙げられる。
【0050】
イソシアネート基含有プレポリマーのイソシアネート基(NCO)濃度は、0.3〜35質量%であることが好ましく、更には0.3〜10質量%、特に0.3〜5質量%であることが好ましい。濃度が10質量%を超えると、発泡、硬化物の物性低下を引き起こすおそれがあり、0.3質量%未満であると、高粘度化、作業性の低下等を招来するおそれがある。
【0051】
添加剤としては、例えば酸化防止剤や紫外線吸収剤や光硬化性化合物などの耐候性安定剤、貯蔵安定性改良剤(脱水剤)、分散剤、充填剤、揺変剤等を挙げることができる。
【0052】
耐候安定剤は、水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテルの誘導体の酸化や光劣化、熱劣化を防止して、耐候性だけでなく耐熱性を向上させるためにも使用する。
【0053】
酸化防止剤としては具体的には、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤を挙げることができ、ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。また、三共社製の商品名サノールLS−292などの他、旭電化工業社製の商品名アデカスタブシリーズのLA−52、LA−57、LA−62、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87などの分子量1,000未満の低分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤、同じくLA−63P、LA−68LD或いはチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名CHIMASSORBシリーズの119FL、2020FDL、944FD、944LDなどの分子量1,000以上の高分子量ヒンダードアミン系酸化防止剤なども挙げられる。
【0054】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノールなどが挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0056】
光硬化性化合物としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等の光によって反応硬化する基を分子内に1個以上含有する化合物が挙げられ、具体的には例えば、イソシアネート基含有ウレタン樹脂に水酸基含有アクリレート化合物や水酸基含有メタクリレート化合物を反応させたウレタンアクリレートやウレタンメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレート等のエステルアクリレートやエステルメタクリレート、ポリエチレンアジペートポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエステルアクリレートやポリエステルメタクリレート、ポリエーテルポリオールのアクリレートやメタクリレート等のポリエーテルアクリレートやポリエーテルメタクリレート、或いはポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂などが挙げられ、分子量10,000以下、更に分子量5,000以下の単量体、オリゴマーが好ましく、特にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1分子当たり平均して2個以上含有する物が好ましい。
【0057】
貯蔵安定性改良剤(脱水剤)としては、水分と反応するビニルトリメトキシシランなどの低分子の架橋性シリル基含有化合物、p−トルエンスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0058】
分散剤としてはアニオン系、カチオン系、両性、或いはノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0059】
充填剤としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、スレート粉、マイカ、カオリン、ゼオライト、珪藻土、有機、無機のバルーン等が挙げられ、粒径1〜100μmのものが好ましく、このうち炭酸カルシウムがさらに好ましい。
【0060】
揺変剤としては、コロイダルシリカ、石綿粉等の無機揺変剤、有機ベントナイト、変性ポリエステルポリオール、脂肪酸アマイド等の有機揺変剤が挙げられ、揺変剤兼充填剤として脂肪酸処理炭酸カルシウム等が挙げられ、このうち脂肪酸処理炭酸カルシウムが好ましい。
【0061】
これらの添加剤の配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に0.1〜3.0質量部の範囲が好ましい。
【0062】
上記のような、場合により各種添加剤が配合されたシーリング基材100質量部に対し、本発明の着色剤組成物を、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下を混合分散させることにより、着色/調色されたシーリング材を製造することができる。着色剤組成物の配合量が20質量部を超えると、耐ブリード汚染性の低下や硬化物物性の低下が生じるおそれがある。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各実施例において分子量の測定条件、イソシアネート基濃度の測定方法、粘度の測定条件、及び水分含有量の測定方法は以下のとおりである。
【0064】
(分子量測定)
GPC測定装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHM−M、TSKgel SuperH2000
測定温度:40℃
展開溶媒:THF
溶質濃度:10mg/ml
流速:0.6ml/min
検出装置:RI
標準試料:ポリスチレン
(イソシアネート基濃度の測定方法)
JIS K1603−1:2007のB法に準拠して測定した。
(粘度の測定条件)
B8U型回転粘度計(東機産業社製TV−20、ローターNo.7、5rpm)を用いて25℃における粘度を測定した。
(水分含有量の測定方法)
電量滴定法を用いたカールフィッシャー水分計(型式;MKC−610型、京都電子工業社製)に水分気化装置(ADP−611型、京都電子工業社製)を接続した装置により、カールフィッシャー試薬を、クーロマットA及びクーロマットCGとして、着色剤組成物中の水分量を求めた。
【0065】
(1)水酸基含有ポリエーテル誘導体及びシーリング基材の合成例
合成例1;水酸基含有ポリエーテルの誘導体U−1の合成
攪拌機、温度計、窒素シール管及び加温・冷却装置の付いた反応容器に、窒素気流下で、ポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子社製XS−M3000、数平均分子量3,300、分子量分布(Mw/Mn)1.0〜1.1)300g(OH当量:0.091)を仕込み、攪拌しながらジブチル錫ジラウレート0.1gとm−キシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製タケネート500、分子量188)9.1g(NCO当量:0.0968)(R値(NCO当量/OH当量)=1.06)を加えた後、加温して70〜80℃で4時間攪拌して、イソシアネート基含有量が理論値(0.08質量%)以下となった時点で反応を終了し、ポリオキシプロピレン系ウレタン樹脂U−1を製造した。U−1は、滴定による実測イソシアネート基濃度0.06質量%、粘度3,200mPa・s/25℃、数平均分子量7000、分子量分布(Mw/Mn)1.05の常温で透明な液体であった。
【0066】
合成例2;ウレタンシーリング基材BU−1の合成
攪拌機、温度計、窒素シール管及び加温・冷却装置の付いた反応容器に、窒素気流下で、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子社製エクセノール−3021、数平均分子量3,300)599.2g(OH当量:0.363)と、ポリオキシプロピレントリオール(三井武田ケミカル社製MN−4000、数平均分子量4,000、分子量分布1.0〜1.1)284.5g(OH当量:0.213)を仕込み、攪拌しながら4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製ミリオネートMT、分子量250)116.2g(NCO当量:0.93)(R値(NCO当量/OH当量)=1.60)とジブチル錫ジラウレート0.1gを加えたのち、加温して70〜80℃で2時間攪拌して、イソシアネート基含有量が理論値(1.47質量%)以下となった時点で常温まで冷却して反応を終了させて、イソシアネート基含有ポリオキシプロピレン系ウレタンプレポリマーP−1を製造した。P−1は、滴定による実測イソシアネート基含有量1.38質量%の常温で粘稠な液体であった。
【0067】
調製混練装置(井上製作所社製、プラネタリーミキサーPLM型)に、前記イソシアネート基含有ポリオキシプロピレン系ウレタンプレポリマーP−1を436g、ビニルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS210)10.5g、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)5.5g、脂肪酸(表面)処理炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、カルファイン200M)266g、炭酸カルシウム274.5gを仕込み、30〜40℃で30分間攪拌して、内容物が均一になるまで混合、分散してウレタンシーリング基材BU−1を得た。
【0068】
合成例3;変成シリコーンシーリング基材BS−1の合成
前記合成例2において、イソシアネート基含有ポリオキシプロピレン系ウレタンプレポリマーP−1に替えて、架橋性シリル基含有ポリオキシプロピレン重合体(旭硝子社製、ES−S3630)を用いた以外は同様にして変成シリコーンシーリング基材BS−1を得た。
【0069】
(2)着色剤組成物の調製
実施例1(黒色の着色剤組成物1の調製)
混練装置(井上製作所社製、プラネタリーミキサーPLM型)に、ポリオキシプロピレンモノオール(旭硝子社製XS−M3000、数平均分子量3,300、分子量分布(Mw/Mn)1.0〜1.1)500g及びカーボンブラック(旭カーボン社製、サーマルブラック、黒色顔料)500gを仕込み、30〜40℃で30〜40分間攪拌して、内容物が均一になるまで混合、分散した。この時の脱水前のカールフィッシャー法による水分は0.103質量%であった。次いで、110℃、20mmHg減圧下で1時間、攪拌・加熱し脱水操作を行った後、冷却して黒色着色剤組成物1(黒色1)を得た。脱水後の水分は0.012質量%であった。
【0070】
実施例2(黒色の着色剤組成物2の調製)
実施例1において、ポリオキシプロピレンモノオールに替えて合成例1の水酸基含有ポリエーテルの誘導体U−1を使用した以外は同様にして黒色着色剤組成物2(黒色2)を調製した。脱水後の水分は0.012質量%であった。
【0071】
実施例3(黒色の着色剤組成物3の調製)
実施例2において、脱水工程を行わない以外は同様にして黒色着色剤組成物3(黒色3)を調製した。水分は0.102重量%であった。
【0072】
実施例4(赤色の着色剤組成物1の調製)
実施例1において、カーボンブラックに替えて酸化鉄レッド(バイエル社製、バイフェロックスレッド、赤色顔料)を使用した以外は同様にして赤色着色剤組成物1(赤色1)を調製した。脱水前の水分は0.104重量%、脱水後の水分は0.013質量%であった。
【0073】
実施例5(赤色の着色剤組成物2の調製)
実施例4において、ポリオキシプロピレンモノオールに替えて合成例1の水酸基含有ポリエーテルの誘導体U−1を使用した以外は同様にして赤色着色剤組成物2(赤色2)を調製した。脱水後の水分は0.012質量%であった。
【0074】
実施例6(黄色の着色剤組成物1の調製)
実施例1において、カーボンブラックに替えて酸化鉄イエロー(バイエル社製、バイフェロックスイエロー、黄色顔料)を使用した以外は同様にして黄色着色剤組成物1(黄色1)を調製した。脱水前の水分は0.296重量%、脱水後の水分は0.018質量%であった。
【0075】
実施例7(黄色の着色剤組成物2の調製)
実施例6において、ポリオキシプロピレンモノオールに替えて合成例1の水酸基含有ポリエーテルの誘導体U−1を使用した以外は同様にして黄色着色剤組成物2(黄色2)を調製した。脱水後の水分は0.016質量%であった。
【0076】
実施例8(黄色の着色剤組成物3の調製)
実施例7において、脱水工程を行わない以外は同様にして黄色着色剤組成物3(黄色3)を調製した。水分は0.290重量%であった。
【0077】
実施例9(白色の着色剤組成物1の調製)
実施例1において、カーボンブラックに替えて酸化チタン(石原産業社製、タイペークR−830、白色顔料)を使用した以外は同様にして白色着色剤組成物1(白色1)を調製した。脱水前の水分は0.363重量%、脱水後の水分は0.012質量%であった。
【0078】
実施例10(白色の着色剤組成物2の調製)
実施例9において、ポリオキシプロピレンモノオールに替えて合成例1の水酸基含有ポリエーテルの誘導体U−1を使用した以外は同様にして白色着色剤組成物2(白色2)を調製した。脱水後の水分は0.014質量%であった。
【0079】
実施例11(白色の着色剤組成物3の調製)
実施例10において、脱水工程を行わない以外は同様にして白色着色剤組成物3(白色3)を調製した。水分は0.366重量%であった。
【0080】
比較例1(黒色の着色剤組成物4の調製)
実施例1において、脱水工程を行わず、ポリオキシプロピレンモノオールに替えてフタル酸ジオクチルを使用した以外は同様にして黒色着色剤組成物4(黒色4)を調製した。
【0081】
比較例2(赤色の着色剤組成物3の調製)
実施例5において、脱水工程を行わず、ポリオキシプロピレンモノオールに替えてフタル酸ジオクチルを使用した以外は同様にして赤色着色剤組成物3(赤色3)を調製した。
【0082】
比較例3(黄色の着色剤組成物4の調製)
実施例8において、脱水工程を行わず、ポリオキシプロピレンモノオールに替えてフタル酸ジオクチルを使用した以外は同様にして黄色着色剤組成物4(黄色4)を調製した。
【0083】
比較例4(白色の着色剤組成物4の調製)
実施例11において、脱水工程を行わず、ポリオキシプロピレンモノオールに替えてフタル酸ジオクチルを使用した以外は同様にして白色着色剤組成物4(白色4)を調製した。
【0084】
比較例5〜8(黒色の着色剤組成物5、赤色の着色剤組成物4、黄色の着色剤組成物5、白色の着色剤組成物5の調製)
比較例1〜4において、各顔料を125g使用した以外は同様にして黒色の着色剤組成物5(黒色5)、赤色の着色剤組成物4(赤色4)、黄色の着色剤組成物5(黄色5)、白色の着色剤組成物5(白色5)を調製した。
【0085】
上記実施例1〜実施例11及び比較例1〜比較例8の着色剤組成物の組成を色毎にまとめて表1及び表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
(3)シーリング材の調製方法
実施例12 調色したウレタンシーリング材(PU−1)
調製混練装置(井上製作所社製、プラネタリーミキサーPLM型)に、合成例3のウレタンシーリング基材BU−1を1,000g、実施例2で調製した黒色の着色剤組成物2を10g、実施例5で調製した赤色の着色剤組成物2を20g仕込み、実施例7で調製した黄色の着色剤組成物2を50g、実施例10で調製した白色の着色剤組成物2を120g加え、30〜40℃で30〜40分間攪拌して、内容物が均一になるまで混合、分散して調色したウレタンシーリング材(PU−1)を得た。
【0089】
実施例13〜15(PU−2、MS−1,2)
前記実施例12において、各シーリング基材及び各色の着色剤組成物の量を表3に示す配合量とした以外は同様にして、調色したウレタンシーリング材(PU−2)及び調色した変成シリコーンシーリング材(MS−1,2)を得た。
【0090】
比較例9〜12(PU−3,4、MS−3,4)
前記実施例12において、各シーリング基材及び各色の着色剤組成物の量を表3に示す配合量とした以外は同様にして、調色したウレタンシーリング材(PU−3,4)及び調色した変成シリコーンシーリング材(MS−3,4)を得た。
【0091】
(4)シーリング材の評価方法
(4−1)外観
目視観察により評価した。発泡、ブツがないかわずかに認められるとき○、発泡、ブツが多数認められるとき×とした。
(4−2)スランプ
JIS A1439:2004「建築用シーリング材の試験方法」の「5.1スランプ試験」に準拠して、スランプ(縦)を測定した(試験温度23℃)。2mm以内のスランプを○、2mmを超えるスランプを×と評価した。
(4−3)H型物性
JIS A1439:2004「建築用シーリング材の試験方法」の「5.20引張接着性試験」に準拠して試験した(試験温度23℃)。なお、試験体は、スレートをプライマー(OP2531、オート化学工業社製)で処理し、上記で製造したシーリング材を打設し、打設後の試験体を23℃、50%相対湿度で14日間、30℃で14日間養生して作製した。
(4−4)耐ブリード汚染性
厚さ5mmのスレート板を使用し、深さ5mm、幅25mm、長さ150mmの目地を作製した。その目地に上記で製造したシーリング材を打設し、余分のシーリング材をヘラでかきとり、表面を平らにしたものを、23℃、50%相対湿度で7日間養生硬化した。次に、目地上に水性アクリル塗料(日本ペイント社製、タイルラック 水性トップスーパーホワイト)を塗布し、23℃、50%相対湿度で更に7日間養生して、試験体を作製した。養生後の試験体を50℃の恒温器に入れ、10日間加熱処理した後、恒温器より取り出し、上塗りした塗料表面に黒色珪砂(粒径70〜110μm)を振り掛け、直ちに試験体を裏返し、底面を手で軽く叩き余分な黒色珪砂を落とした。表面に付着して残った黒色珪砂(汚れ)の状態を目視で観察し、汚染性を判定した。
【0092】
判定基準:〇;シーリング材に上塗りした塗料の表面に黒色珪砂の付着がなくきれいな状態、×;シーリング材に上塗りした塗料の表面に黒色珪砂が多量に付着し黒く汚れた状態
表3に結果を示す。
【0093】
【表3】

【0094】
表3から明らかなとおり、同じ基材を使い、ほぼ同量の顔料を含有する実施例13及び比較例9、並びに、実施例15及び比較例11を比較すると、比較例の方が50%モジュラス(M50)及び破断時強度(Tb)が低く、破断時伸び(Eb)が高くなっていることが分かる。
【0095】
また、それぞれ、実施例13及び実施例15の倍量の着色剤を使用した実施例12及び14においてもこれらの値に変化はほとんどみられず、本発明の実施例では硬化物の物性に与える影響が少ないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体と、顔料とを含有する着色剤組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有ポリエーテル誘導体が、水酸基含有ポリエーテルの水酸基と有機イソシアネートを反応させて得られるウレタン結合を有する化合物である、請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体が、ポリオキシアルキレン鎖を有し、数平均分子量(Mn)が1,000〜10,000である、請求項1に記載の着色剤組成物。
【請求項4】
前記水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体の分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする、請求項3に記載の着色剤組成物。
【請求項5】
前記有機イソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の有機ジイソシアネートである、請求項2に記載の着色剤組成物。
【請求項6】
含水率が0.05質量%以下である、請求項1〜5いずれかに記載の着色剤組成物。
【請求項7】
水酸基含有ポリエーテル及び/又は水酸基含有ポリエーテル誘導体に顔料を混合分散させた後に、当該組成物を脱水することによって、含水率を0.05質量%以下にすることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色剤組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色剤組成物を用いて基材を着色する方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色剤組成物を用いることを特徴とするシーリング材の製造方法。

【公開番号】特開2012−51982(P2012−51982A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194072(P2010−194072)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000103541)オート化学工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】