説明

着色微粒子の水分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法

【課題】顔料などの水不溶性色材を用いており、また、インクとした際に、インクジェット記録に用いられるインクとしての特性を満足し、かつ高速定着性や高画質化に対応できる着色微粒子の水分散物を提供すること。
【解決手段】水性媒体、着色微粒子である水不溶性色材、及び該色材を水性媒体中に分散させる複数の分散樹脂を含んでなる水分散物であり、該複数の分散樹脂のいずれもが、少なくとも疎水性セグメントと、非イオン性の親水性ユニットとイオン性の親水性ユニットとからなる親水性セグメントとを有するブロック共重合体であり、かつ、それぞれの分散樹脂における、前記非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をB、前記イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をCとしたときに、X=B/(B+C)で求められるXの値が互いに異なることを特徴とする着色微粒子の水分散物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクとした際に、高速定着性に優れ、かつ高品位の画像を形成することが可能となる着色微粒子の水分散物に関する。また、本発明は、それを用いたインクジェット記録用インク、前記インクを反応せしめる反応液と前記インクとを具備するインクジェット記録用インクセット、及び前記インクセットを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録に用いられるインクは、一般に水を主成分とし、これに乾燥防止、目詰まり防止などの目的でグリコールなどの水溶性高沸点溶剤を含有させたものが一般的であった。しかしながら、このようなインクを用いて普通紙に記録を行った場合には、十分な定着性が得られなかったり、記録紙表面の填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像が発生したりすることがあった。特に、カラー画像を得ようとした場合には、複数の色のインクが紙に定着する以前に次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分では色が滲んだり、不均一に混ざり合ったりして(以下、この現象をブリーディングと呼ぶ)満足すべき画像が得られなかった。
【0003】
これに対し定着性を高める手段として、特許文献1に、インク中に界面活性剤などの浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されている。また、特許文献2には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。しかし、前者のインク中に界面活性剤などを添加する方法では、記録紙へのインクの浸透性が高まり、インクの定着性やブリーディングについてはある程度向上するものの、インク中の色材も記録紙の奥深くまで浸透してしまう。このため、画像濃度及び彩度が低下するなどの不都合が生じる。その他、インクの横方向に対する広がりも発生し、その結果、エッジのシャープさが低下したり、解像度が低下したりするなどの問題も発生した。一方、揮発性溶剤を主体としたインクを用いる後者の方法の場合には、上記した前者の場合と同様の不都合が生じるのに加え、記録ヘッドのノズル部での溶剤の蒸発による目詰まりが発生し易く、好ましくなかった。
【0004】
上述した問題点を改善するために、記録インクの噴射に先立って記録媒体上に、画像を良好にせしめる反応液を付着させる種々の方法が提案されている。特許文献3には、多価金属イオンとカルボキシル基の反応を利用してブリーディングを防止する方法が提案されている。さらには、特許文献4には、顔料と樹脂エマルジョンと多価金属塩による反応によりブリーディングを改善する方法も提案されている。これらの方法によれば、反応液を記録媒体に含浸させてから着色インクと反応させるために、ブリーディングはある程度抑えられる。しかしながら、着色インクが記録媒体に対して浸透性が高い場合には、発色性の低下及び裏抜けの問題が懸念され、逆に浸透性が低い場合には、インクの定着に時間がかかるという問題が懸念される。
【0005】
また、近年のインクジェット技術の進展により、多ノズル化、高速印字が進み、インクへの要求は益々増大している。そして、インクを吐出するノズルの高密度化、高速印字への対応によって、ノズルから吐出されたインクが、着弾後浸透する前に、隣接するノズルから吐出されたインクと接触する。このため、ドットの形状を保持できずに画像品位を悪化させる、所謂マイクロビーディングといわれる現象などが問題となってくる。
【0006】
また、インクジェットプリンタのビジネス分野への展開を考慮した時に、印字速度のより一層の向上が要求されてくるようになると考えられ、また、このような要求に対して、高速印字に対応する高速プリンタも考案されている。そして、高速プリンタにおける大きな課題の一つが、インクの記録媒体への定着性である。インクの定着性が悪い場合、先に排出された印字済みの記録媒体の表面に、後続の記録媒体が積層される過程において、先の記録媒体の表面の印字を汚損したり、或いは後続の記録媒体の裏面に先に排出された記録媒体のインクが付着したりするなどの事態が生じる。すなわち、高速プリンタを用いる場合においては、印字品位の低下や印刷物の美観を損ないかねないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−65269号公報
【特許文献2】特開昭55−66976号公報
【特許文献3】特開平5−202328号公報
【特許文献4】特開平9−207424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、特に、顔料などの水不溶性色材を用いたインクの調製に好適な着色微粒子の水分散物を提供することにある。具体的には、インクとした場合に、インクジェット記録用としての特性を満足する着色微粒子の水分散物を提供することにある。本発明は、高速定着性や高画質化に対応できるインクジェット記録用インク、該インクによって構成したインクジェット記録用インクセット、及びそれらを使用したインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一は、水性媒体、着色微粒子である水不溶性色材、及び該色材を水性媒体中に分散させる複数の分散樹脂を含んでなる水分散物であり、該複数の分散樹脂のいずれもが、少なくとも疎水性セグメントと、非イオン性の親水性ユニットとイオン性の親水性ユニットとからなる親水性セグメントとを有するブロック共重合体であり、かつ、それぞれの分散樹脂における、前記非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をB、前記イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をCとしたときに、下記式から求められるXの値が互いに異なることを特徴とする着色微粒子の水分散物。
(式)X=B/(B+C)
【0010】
本発明の第二は、前記着色微粒子の水分散物と、有機溶剤とを少なくとも含んでなることを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【0011】
本発明の第三は、前記インクジェット記録用インクを1種以上と、該インクの少なくとも1種と反応して該インクを凝集せしめる反応液との組み合わせを有することを特徴とするインクジェット記録用インクセットである。
【0012】
本発明の第四は、前記本発明のインクジェット記録用インクセットを用い、該インクセットを構成するインクジェット記録用インクと反応液とを、記録媒体上に付与し、これらを記録媒体上にて反応させて画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特に、顔料などの水不溶性色材を用いたインクの調製に好適な着色微粒子の水分散物が提供される。また、本発明によれば、インクとした場合に、インクジェット記録用としての特性を満足する着色微粒子の水分散物が提供される。さらに、本発明によれば、高速定着性や、濃度の高い高画質な印字物の出力に対応できるインクジェット記録用インク、該インクによって構成したインクジェット記録用インクセット、これを使用したインクジェット記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に用いるブロック共重合体の化学構造の一例を示す図である。
【図2】記録ヘッドを搭載可能なプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【図3】記録ヘッドを備えたカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の明細書の記載においては、「着色微粒子の水分散物」を「水分散物」と、「インクジェット記録用インク」を「インク」と、「インクジェット記録用インクセット」を「インクセット」とそれぞれ称する場合がある。
【0016】
<着色微粒子の水分散物、及び、インク>
(水不溶性色材)
本発明に用いる水不溶性色材としては、顔料が用いられるが、顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれでもよく、水分散物やインクに用いられる顔料としては、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いることができる。なお、上記に記した以外の色顔料、無色又は淡色の顔料、又は金属光沢顔料などを使用してもよい。また、本発明においては、従来からインクジェット用インクに用いられているような市販の顔料を用いてもよいし、或いは新規に合成した顔料を用いてもよい。また、染料と併用して用いてもよい。
【0017】
また、本発明の水分散物やインクでは、水に自己分散可能な顔料も使用できる。水に自己分散可能な顔料としては、顔料表面にポリマーを吸着させた立体障害効果を利用したものと、静電気的反発力を利用したものとがある。市販品としては、CAB−0−JET200、CAB−0−JET300(以上、キャボット社製)、Microjet Black CW−1(オリエント化学社製)などが挙げられる。
【0018】
本発明において、顔料の含有量は、水分散物をインクとした場合に、インク全質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下の範囲となる量であることが好ましい。顔料の含有量が、0.1質量%未満であると、十分な画像濃度を得られなくなり、30質量%を超えると顔料が凝集し分散できなくなる。さらに好ましい範囲としては0.5質量%以上10質量%以下の範囲である。さらに好ましくは0.7質量%以上7質量%以下の範囲である。本発明において、顔料の平均粒径としては、50nm以上200nm以下の範囲が好ましく、より良好な画質を得るためには100nm以下であることが好ましい。顔料の平均粒径の測定にはFPAR−1000(大塚電子社製)を用いて測定した。
【0019】
(分散樹脂)
本発明では、顔料粒子を水性媒体中に分散させる分散樹脂に複数のものを用いるが、これらが下記の構成を有することを特徴とする。先ず、複数の分散樹脂のいずれもが、少なくとも疎水性セグメントと、非イオン性の親水性ユニットとイオン性の親水性ユニットとからなる親水性セグメントとを有するブロック共重合体であることを要する。さらに、それぞれの分散樹脂における、前記非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をB、前記イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をCとしたときに、X=B/(B+C)から求められるXの値が、互いに異なる複数のものを用いる。これらについては、後述する。各分散樹脂の重量平均分子量は1,000以上30,000以下であることが好ましい。さらに、好ましくは、3,000以上15,000以下の範囲である。分散樹脂としては、例えば、以下に挙げるような単量体から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、又は、この塩などが挙げられる。単量体は、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステルなど、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体などである。また、分散樹脂としては、後述するポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有するトリブロック共重合体などが好適に用いられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。なお、これらの分散樹脂の含有量は、水分散物をインクとした場合に、インク全質量に対して、総量で、0.1質量%以上10質量%以下の範囲となる量であることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる水不溶性色材を分散させるためのブロック共重合体は、少なくとも疎水性セグメントと親水性セグメントとを有しており、さらに、該親水性セグメントは、非イオン性の親水ユニットとイオン性の親水性ユニットとからなる。そして、本発明においては、非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をB、イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をCとしたときに、X=B/(B+C)から求められるXの値が、それぞれ異なる複数の分散樹脂を用いる。すなわち、本発明では、水不溶性色材を水性媒体中に分散させる分散樹脂として複数のブロック共重合体を用い、これらを構成している親水性セグメントに占める、非イオン性の親水性ユニットの割合が、それぞれに異なるものを用いることを特徴とする。
【0021】
図1は、本発明に用いるブロック共重合体の化学構造の一例を示す図である。また、図1に例示されるブロック共重合体は、疎水性セグメント(Aセグメント)と、非イオン性の親水性ユニット(Bセグメント)と、イオン性の親水性ユニット(Cセグメント)とが順に並ぶ構造を有している。また、図1中、「−b−」はブロック共重合体であることを示す記号であり、「A」、「B」及び「C」は、それぞれ、各セグメントの単位ユニット数である。そして、本発明では、このような構造を有する分散樹脂において、親水性セグメント中の単位ユニット数の合計(すなわち(B+C))に対する、非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数Bの割合が異なっている、複数の分散樹脂を用いている。
【0022】
さらに、本発明においては、使用する複数の分散樹脂におけるXの値の差が0.17以上0.4以下の範囲であることが好ましい。また、本発明においては、Xの値が0.5以上0.73以下の範囲である分散樹脂と、Xの値が0.33以上0.5以下の範囲である分散樹脂とを少なくとも含む構成とすることが好ましい。
【0023】
上記構成に対し、本発明者らは、疎水性セグメントと親水性セグメントからなるブロック共重合体を分散樹脂として使用したとしても、単一の樹脂を用いて水不溶性色材を分散したインクでは、その構造によって、それぞれ下記のような課題があることを見出した。先ず、非イオン性の親水性ユニットの、親水性セグメントに占める割合が少ないと、立体障害効果が不十分なために、分散が不安定であったり、インクジェットヘッドによる吐出時に不具合を生じたりする場合がある。一方、非イオン性の親水性ユニットの、親水性セグメントに占める割合が多い場合には、インクが記録媒体に着弾しても凝集しないために、他色とのブリーディングを生じる場合がある。また、水不溶性色材が溶剤とともに記録媒体に浸透してしまうためにOD(光学濃度)が出にくいなどの問題を生じる場合がある。
【0024】
そこで、本発明では、これらの問題を解決するために、水不溶性色材を水性媒体中に分散させる分散樹脂に、上記したXの値が互いに異なる、疎水性セグメントと親水性セグメントからなるブロック共重合体を複数用いる。この結果、得られた着色微粒子の水分散物に有機溶剤を加えることで、吐出特性やブリード特性を悪化させることのないインクの調製が可能となる。また、形成した記録画像のODに到っては、単一の分散樹脂を用いたインクで形成した画像と比較して、大幅に向上することが確認された。また、特に、該インクと反応液とを用い、これらを記録媒体上にて反応させて凝集を促進させる記録方法に適用した場合に、上記効果が顕著に発揮される。この理由は明確ではないが、本発明においては、水分散物(インク)中に、前記した特性の異なる、着色微粒子を分散させる分散樹脂が混在することとなるので、反応液によるインクの凝集が促進されるようになるためと考えられる。
【0025】
本発明に用いるブロック共重合体としては、具体的な例を挙げると、以下に挙げられる、従来から知られているブロック共重合体を用いることができる。すなわち、アクリル、メタクリル系ブロック共重合体、ポリスチレンと他の付加重合系又は縮合重合系のブロック共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロック共重合体など。本発明に用いるブロック共重合体は、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有することが好ましい。また、本発明に用いるブロック共重合体における非イオン性の親水性ユニットは、エチレンオキサイド構造を含むことが好ましい。
【0026】
前記イオン性の親水性ユニット(Cセグメント)の繰り返し単位の具体的構造としては下記の一般式(1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0027】

(一般式(1)中、R0は−X−(COOH)r、−X−(COO−M)r又は−X2−(COO)2−M2を表す。Xは炭素数1乃至20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルカンジイル若しくはアルカントリイル基、又は−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−(CH2)m−CH3-r−若しくは−(CH2)m−(O)n−(CH2)q−CH3-r−。又は、それらのメチレン基の少なくとも一つがカルボニル基又は芳香環構造で置換された構造を表す。rは1乃至2を表す。X2はXのうちrが2の基を表す。pは1乃至18までの整数を表す。mは0乃至35までの整数を表す。nは1又は0を表す。qは0乃至17の整数を表す。Mは1価のカチオンを表す。M2は2価のカチオンを表す。R5及びR6はアルキル基を表す。R5、R6は同じでも又は異なっていてもよい。)
【0028】
前記イオン性の親水性ユニット(Cセグメント)を構成する一般式(1)で表される繰り返し単位構造の具体例を以下に挙げる。
【0029】

【0030】

【0031】
さらに、前記疎水性セグメント(Aセグメント)或いは非イオン性の親水性ユニット(Bセグメント)の繰り返し単位の具体的構造としては、下記の一般式(2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0032】

(一般式(2)中、R1は炭素数1乃至18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−Np、−(CH(R5)−CH(R6)−O)p−R7及び−(CH2)m−(O)n−R7から選ばれる基である。また、該基における、芳香環中の炭素原子に結合している水素原子は炭素数1乃至4の直鎖状又は分岐状のアルキル基と、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換していてもよい基を表す。pは1乃至18の整数、mは1乃至36の整数、nは0又は1を表す。R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子若しくは−CH3を表す。R5及びR6が複数ある場合はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R7は水素原子、炭素数1乃至18までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、−Ph、−Pyr、−Ph−Ph、−Ph−Pyr、−Np、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2及び−CO−C(CH3)=CH2から選ばれる基である。また、R7が水素原子以外である場合、R7中の炭素原子に結合している水素原子は炭素数1乃至4の直鎖状又は分岐状のアルキル基又は−F、−Cl、−Brと、また芳香環中の炭素原子は窒素原子とそれぞれ置換することができる。Phはフェニル基又はフェニレン基、Pyrはピリジル基、Npはナフチル基を表す。)
【0033】
前記疎水性セグメント(Aセグメント)を構成する一般式(2)で表される繰り返し単位構造の具体例としては、以下に記載したものが挙げられる。
【0034】

【0035】
前記非イオン性の親水性ユニット(Bセグメント)を構成する一般式(2)で表される単位構造の具体例としては以下に記載したものが挙げられる。
【0036】

【0037】
また、本発明に用いるブロック共重合体の各ブロックセグメント(ユニット)は単一の繰り返し単位からなるものでもよく、複数の繰り返し単位構造からなるものでもよい。複数の繰り返し単位からなるブロックセグメントの例としては、ランダム共重合体や徐々に組成比が変化するグラデュエイション共重合体がある。また、本発明に用いるブロック共重合体はブロック共重合体構造が他のポリマーにグラフト結合したポリマーであってもよい。
【0038】
ブロック共重合体中に含有される一般式(1)或いは一般式(2)で表される繰り返し単位構造の含有量は、ブロック共重合体全体に対して0.01mol%以上99mol%以下、好ましくは1mol%以上90mol%以下の範囲が好ましい。0.01mol%未満ではイオン性官能基或いは疎水性官能基或いは非イオン性親水性基の働くべき高分子相互作用が不充分な場合があり、99mol%を超えると逆に相互作用が働きすぎて機能が不充分な場合がある。本発明に用いるブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、200以上10,000,000以下の範囲であり、好ましく用いられる範囲としては1,000以上1,000,000以下である。10,000,000を超えると高分子鎖内、高分子鎖間の絡まりあいが多くなりすぎ、溶剤に分散しにくかったりする。200未満である場合、分子量が小さく高分子としての立体効果が出にくかったりする場合がある。各ブロックセグメントの好ましい単位ユニット数は3以上10,000以下である。さらに好ましくは5以上5,000以下である。さらに好ましくは10以上4,000以下である。なお、本発明において、単位ユニット数とは、疎水性セグメント、非イオン性の親水性ユニット及びイオン性の親水性ユニットをそれぞれ構成している、重合したモノマーの数のことをいう。
【0039】
また、分散樹脂であるブロック共重合体の合成方法は、特に制限はなく、様々な方法を用いることができる。例えば、青島らによるリビングカチオン重合による方法(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年、417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)などの方法を用いることができる。
【0040】
(着色微粒子の水分散物の製造方法)
本発明の着色微粒子の水分散物の製造方法としては、水不溶性色材と、分散樹脂とを原料として、通常の方法により容易に得ることができる。その際に、下記のようにして、1種類の分散樹脂によって、水不溶性色材を水性媒体中に分散させて水分散物を調製し、これとは異なる分散樹脂によって同様に水分散物を調製し、その後に、これらを複数混合して着色微粒子の水分散物を調製することが好ましい。
【0041】
各水分散物の具体的な調製方法としては、分散樹脂が水不溶性色材に物理吸着して水性媒体中に安定に微分散した状態にするため、サンドミル、ビーズミル、ニーダーなどの物理的処理する方法を用いることができる。また、その他にも、水不溶性色材と分散樹脂とを水性媒体中に共存させておき、水性媒体中にて分散樹脂の溶解度を低下させて水不溶性色材表面に析出させる方法。また、一旦、水不溶性色材を溶解させて再度水不溶性色材化する際に同時に分散樹脂による分散状態にする方法などの化学的処理方法などを用いることができる。本発明においては、上記に挙げた方法などから適宜選択すればよい。なお、本発明の水分散物においては、P/B(顔料濃度/分散樹脂濃度)が、0.5乃至5.0の範囲であることが好ましい。
【0042】
(水性媒体)
本発明の水分散物やインクに好適に用いられる水性媒体としては、水、緩衝液及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水及び緩衝液中に含まれる水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。また、本発明に用いられる水溶性有機溶剤としては、水に可溶である限り特に制限はないが、好ましくは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類が好ましく用いられる。その他、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0043】
また、本発明において、水溶性有機溶剤の含有量は、水分散物をインクとした場合に、インク全質量に対して、3質量%以上50質量%以下の範囲となる量であることが好ましい。また、水の含有量は、水分散物をインクとした場合に、インク全質量に対して、10質量%以上90質量%以下となる量であることが好ましい。
【0044】
(その他の成分)
本発明のインクは、さらに、所望の物性値を持つインクとするために、必要に応じて、その他の成分、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤などを含んでいてもよい。
【0045】
<インクセット>
(反応液)
本発明におけるインクセットは、本発明の着色微粒子の水分散物を用い、上記したようにして調製されたインクジェット記録用インクを1種以上と、該インクの少なくとも1種と反応して該インクを凝集せしめる反応液との組み合わせを有する。この際、反応液としては、多価金属イオンを含有するものが好適に用いられる。反応液は、透明でもよいし、着色されていてもよい。また、着色された反応液が画像形成に寄与しても構わない。反応液に用いる多価金属イオンとしては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn3+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co2+、Fe2+、La2+、Nd3+及びY3+からなる群から選ばれる少なくともいずれかが挙げられる。これらの陽イオンは、塩として反応液中に含有させればよい。上記した陽イオンと結合して塩を形成することができる、代表的で、かつ、好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl-、NO3-、I-、Br-、ClO3-、CH3COO-、SO3-があるが、これらに限定されるものではない。反応液中における多価金属塩の濃度は、0.01質量%以上10質量%以下の範囲であることが好ましい。より好ましい多価金属塩濃度の範囲は、1質量%以上5質量%以下である。さらに好ましい多価金属塩濃度の範囲は、1質量%以上3質量%以下である。
【0046】
前記反応液に用いる水性媒体としては、前記したものと同様のものを用いることができる。また、反応液中における水性媒体の含有量は、特に限定されないが、反応液全質量に対して、30質量%以上95質量%以下の範囲であることが好ましい。また、反応液中には、さらに、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤などの成分を含有させることができる。
【0047】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法では、前記本発明のインクと反応液とを記録媒体上に付与し、これらを反応させて、該インクを凝集せしめることにより画像を形成する。その際、反応液はローラなどで付与されてもよいし、インクジェットヘッドより、吐出させて、被反応側のインクの着弾位置に付与しておいてもよい。そして、本発明においては、反応液が、インクの付与に先立って、記録媒体に付与される工程を有することが好ましい。
【0048】
前述したように記録媒体上で反応液とインクとを反応させて画像を形成するため、記録媒体上でのそれぞれのインクや反応液の浸透性を制御することが好ましい。具体的には、前記のインクセットにおいては、反応液とインクとの表面張力を異ならせることが好ましい。インクと反応液は紙面上で反応させることから、先に付与される反応液の浸透性は低くし、後から付与されるインクは浸透性を高めておくことが好ましい。すなわち、反応液の表面張力が、インクの表面張力と比較して高いことが好ましい。インクや反応液の表面張力は界面活性剤の種類や添加量で調整される。反応液においては、その表面張力が30mN/m以上50mN/m以下程度に調整される。より好ましくは40mN/m以上50mN/m以下程度である。一方、インクの表面張力は25mN/m以上40mN/m以下程度に調整される。より好ましくは30mN/m以上35mN/m以下程度である。
【0049】
また、インクの吐出方式としては、ピエゾ方式など周知のいずれの方式のものも採用できる。最も好ましい形態は、熱エネルギーを利用してインクに気泡を生じさせ、この気泡の圧力によってインクを吐出させる方式が、インクが吐出するノズルの密度を高められるため好ましく用いられる。
【0050】
<インクジェット画像記録装置>
次に、本発明のインクジェット記録方法に好適なインクジェット画像記録装置について説明する。
図2は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式のインクジェットヘッド(記録ヘッド)としての液体吐出ヘッド及びこのヘッドを用いるインクジェット画像記録装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【0051】
図2において、インクジェットプリンタは、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を図中に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置1030を含んで構成されている。また、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に、ガイド軸1014に沿って略平行に往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
【0052】
上記搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。かかる構成により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、それぞれのローラユニット1022a及び1022bとローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、矢印P方向に間欠送りで搬送されることとなる。移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a及びプーリ1026bに巻きかけられるベルト1016を含んで構成される。また、ローラユニット1022a及びローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018を含んで構成されている。
【0053】
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。さらに、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0054】
記録部1010は、インクジェットカートリッジ1012Y、1012M、1012C及び1012Bが各色、例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック毎にそれぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。なお、以下の記載においては、インクジェットカートリッジを、単にカートリッジと記述する場合がある。そして、本発明に係るインクによる効果は、特定の色に限定されるものではなく、例えば上記イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクから選ばれる2つ以上が本発明に係るインクであることも好ましい態様の一つである。
【0055】
図3は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。図3に示すカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェットヘッド100と、インクなどの液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。
【0056】
インクジェットヘッド100は、液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インクなどの液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(不図示)へと導かれるようになっている。図3に示したカートリッジ1012は、インクジェットヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものである。また、この液体吐出ヘッド100に対して液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【実施例】
【0057】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載で「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
【0058】
<ブロック共重合体の合成>
疎水性セグメントが単位構造(20)又は単位構造(28)、非イオン性の親水性セグメントが単位構造(32)、イオン性の親水性セグメントが単位構造(11)のブロック共重合体をアルミニウム触媒を用いたリビングカチオン重合により計6種類合成した。
【0059】
具体的には、以下の方法でブロック共重合体をそれぞれ合成した。先ず、三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.1mmol、及びトルエン11mlにAセグメントのモノマーを加え、反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aセグメントの重合の完了を確認した。
【0060】
次いで、Bセグメントのモノマーを添加し、重合を続行した。GPCを用いるモニタリングによって、Bセグメントの重合の完了を確認した後、Cセグメント成分のトルエン溶液を添加して、重合を続行した。20時間後、重合反応を停止した。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール水溶液を加えて行った。反応混合物溶液をジクロロメタンにて希釈し、0.6M塩酸で3回、次いで蒸留水で3回洗浄した。得られた有機相をエバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させたものを、セルロースの半透膜を用いてメタノール溶媒中透析を繰り返し行い、モノマー性化合物を除去し、目的物であるトリブロックポリマーを得た。
【0061】
さらに、ここで得られたトリブロックポリマーをジメチルフォルムアミドと水酸化ナトリウム水混合溶液中で加水分解し、Cセグメント成分が加水分解され、ナトリウム塩化されたトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMR及びGPCを用いて行った。さらに、水分散液中で0.1Nの塩酸で中和してCセグメント成分がフリーのカルボン酸になったトリブロックポリマーを得た。化合物の同定は、NMR及びGPCを用いて行った。表1に今回作製したブロック共重合体の各セグメント毎の重合数(単位ユニット数)、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnのデータを示す。
【0062】

【0063】
<着色微粒子の水分散物の調製>
(Black顔料の水分散物)
上記で得た各ブロック共重合体を分散樹脂とし、該樹脂で顔料を分散してなるBlack顔料の水分散物を、それぞれ調製した。具体的には、以下のようにして調製した。先ず、超音波発生装置の槽内に機械的撹拌装置を備えた300mLコルベンを入れ、この中に上記で得たブロックポリマー12.0g、カーボンブラック12.0g、テトラヒドロフラン120mLを添加し、顔料表面が溶媒で十分濡れるまでよく混合した。次に、ブロックポリマーの中和率が100%になるだけのKOHを含むアルカリ水溶液を滴下注入することで転相させた。その後に、30分間プレミキシングを行い、ナノマイザYSNM−2000AR(吉田機械興業社製)を用いて、顔料の平均粒径が100nm以下になるまで分散を行った。ロータリエバポレータを用いて、この分散液からテトラヒドロフランを留去し、濃度調整を行って顔料濃度(P)6%、分散樹脂濃度(B)6%、P/B=1.0のBlack顔料の水分散物を得た。なお、上記で使用したカーボンブラックは、Monarch880(キャボット・スペシャル・ケミカルズ社製)である。
【0064】
〈実施例1〉
表1に示すBP1を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物と、表1に示すBP2を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物とを1:1の質量割合で混合して、実施例1の着色微粒子の水分散物を得た。
【0065】
〈実施例2〉
表1に示すBP1を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物と、表1に示すBP3を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物とを1:1の質量割合で混合して、実施例2の着色微粒子の水分散物を得た。
【0066】
〈実施例3〉
表1に示すBP4を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物と、表1に示すBP5を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物とを1:1の質量割合で混合して、実施例3の着色微粒子の水分散物を得た。
【0067】
〈実施例4〉
表1に示すBP5を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物と、表1に示すBP6を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物とを1:1の質量割合で混合して、実施例4の着色微粒子の水分散物を得た。
【0068】
〈実施例5〉
表1に示すBP2を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物と、表1に示すBP6を用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物とを1:1の質量割合で混合して、実施例5の着色微粒子の水分散物を得た。
【0069】
〈比較例1〜6〉
表1に示すB1〜B6をそれぞれに用いて上記の方法により調製したBlack顔料の水分散物を、比較例1〜6の着色微粒子の水分散物とした。
【0070】
<インクの調製>
前記で得た実施例及び比較例の着色微粒子の水分散物に、グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)を以下の表2、3に示す組成で添加し、Blackインクを調製した。また、インクのpHは、その全てのインクで、KOHを用いて9.5に調整した。また、インク組成中のイオン交換水の量を「残」としたが、これは、インク組成の合計量が100%となるようにイオン交換水で調整したことを意味している。
【0071】

【0072】

【0073】
<反応液の調製>
硝酸Mgと、グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)とを用い、イオン交換水で全量が100%にとなるようにして、以下に示す組成で反応液を調製した。また、反応液のpHは7.0に調整している。
・硝酸Mg 2.5%
・グリセリン 7.0%
・ジエチレングリコール 5.0%
・トリメチロールプロパン 7.0%
・アセチレノールEH 0.2%
・イオン交換水 残
【0074】
<インクセットの作製>
上記で得た各インクを、それぞれ、上記で得た反応液と組み合わせて、インクセットを作製した。
【0075】
<画像の評価>
作製した各インクセットを用いて画像を形成し、得られた画像について下記のようにして、色ムラ安定性、ブリーディング、ODに関する評価を行った。評価は、インクジェットプリンタBJF−930(キヤノン社製)に、上記で得たBlackインクと反応液、及び、染料Yellowインク(BCI−6Y、キヤノン社製)を搭載し、記録媒体にそれぞれ所定の条件で印刷して得られた画像について行った。記録媒体には、プロフェッショナルフォトペーパーPR101(キヤノン社製)を用いた。なお、インクジェットプリンタBJF−930による印字は、A4サイズ1枚当たり、10秒の高速印字となる。
【0076】
(色ムラ評価)
先ず、各Blackインクを用いて、A4サイズの記録媒体100枚に対し、100%dutyのベタ印字を行った。その後に、Blackインクを用いてベタパッチ(5×5cm)を印刷し、得られたベタパッチ画像について色ムラの有無を確認した。色ムラは以下の基準に基づき評価した。得られた評価結果を表4に示した。
評価A:色ムラが見えない。
評価B:若干の色ムラが発生している。
評価C:色ムラが顕著に発生している。
今回の評価では、評価B及びCにあたる結果の印字サンプルで発生した色ムラは、スジ状のムラであった。
【0077】
(ブリーディング評価)
Yellowインク(BCI−6Y、キヤノン社製)により形成したYellow印字部に隣接して、上記で得た各Blackインクを100%dutyで5mmの線幅で5mm間隔の格子状のパターンを印字した。得られたBlack印字部とYellow印字部とからBlack対Yellowの境界部の滲み、混色の度合いを評価した。なお、Black印字部には、予め、上記で得た、硝酸Mg2.5%を含む反応液を、25%dutyでBlackインクの印字パターンと同じパターンで印字してある。ブリーディングは以下の基準に基づき評価した。その評価結果を表4に示した。
評価A:各箇所とも他色間の境界が鮮明で、境界部に滲みや混色が見られない。
評価B:境界部に多少の滲み、混色が見られる。
評価C:境界部に滲み、混色が顕著に確認できる。
【0078】
(OD評価)
印字画像はブリーディング評価で使用したものと同じパターンを、反応液の有り無しの条件で印字し、Black印字部のODをRD−19(Gretag Macbeth社製)を用いて測定した。測定結果を表4に示した。
【0079】

【0080】
以上の評価結果より、本発明の実施例のインクを用いた画像は、いずれも、1種類のポリマーで顔料を分散してなる比較例のインクを用いた画像と比較して、吐出特性の悪化に伴う色ムラやブリード特性を低下させることなく、ODが向上していることが示された。特に、インクと共に反応液を用いて形成した画像の場合は、その効果が顕著であり、高い発色性が発揮され、また、高速印字したにもかかわらず、高い定着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体、着色微粒子である水不溶性色材、及び該色材を水性媒体中に分散させる複数の分散樹脂を含んでなる水分散物であり、該複数の分散樹脂のいずれもが、少なくとも疎水性セグメントと、非イオン性の親水性ユニットとイオン性の親水性ユニットとからなる親水性セグメントとを有するブロック共重合体であり、かつ、それぞれの分散樹脂における、前記非イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をB、前記イオン性の親水性ユニットの単位ユニット数をCとしたときに、下記式から求められるXの値が互いに異なることを特徴とする着色微粒子の水分散物。
(式)X=B/(B+C)
【請求項2】
水性媒体、着色微粒子である水不溶性色材、及び該色材を水性媒体中に分散させる分散樹脂を含んでなる水分散物を、複数混合してなる請求項1に記載の着色微粒子の水分散物。
【請求項3】
前記非イオン性の親水性ユニットが、エチレンオキサイド構造を含む請求項1又は2に記載の着色微粒子の水分散物。
【請求項4】
前記分散樹脂が、ポリビニルエーテル構造を繰り返し単位構造として含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の着色微粒子の水分散物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の着色微粒子の水分散物と、有機溶剤とを少なくとも含んでなることを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット記録用インクを1種以上と、該インクの少なくとも1種と反応して該インクを凝集せしめる反応液との組み合わせを有することを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
前記反応液が、多価金属イオンを含有する請求項6に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項8】
前記多価金属イオンが、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn3+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co2+、Fe2+、La2+、Nd3+及びY3+からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項7に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットを用い、該インクセットを構成するインクジェット記録用インクと反応液とを、記録媒体上に付与し、これらを記録媒体上にて反応させて画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記反応液が、前記インクの付与に先立って、記録媒体に付与される工程を有する請求項9に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−270206(P2010−270206A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122221(P2009−122221)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】