説明

着色感光性樹脂組成物、カラーフィルター、及び液晶表示ディスプレイ

【課題】塗膜を減圧乾燥したときの塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することが可能な着色感光性樹脂組成物、その着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルター、及びそのカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、着色剤(C)、及び溶剤(S)を含有する。溶剤(S)は、大気圧における沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(L)と、大気圧における沸点が170℃以上180℃未満である1種以上の第1の高沸点溶剤(H1)と、大気圧における沸点が180℃以上である1種以上の第2の高沸点溶剤(H2)とからなり、溶剤(S)中の前記第1の高沸点溶剤(H1)の割合は60質量%以上であり、前記溶剤(S)中の前記第2の高沸点溶剤(H2)の割合は0.1〜8質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性樹脂組成物、その着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルター、及びそのカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ等の表示体は、互いに対向して対となる電極が形成された2枚の基板の間に、液晶層を挟みこむ構造となっている。そして、一方の基板の内側には、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)等の各色の画素領域からなるカラーフィルターが形成されている。このカラーフィルターにおいては、通常、赤色、緑色、及び青色の各画素領域を区画するように、ブラックマトリクスが形成されている。
【0003】
一般に、カラーフィルターはリソグラフィ法により製造される。このリソグラフィ法では、まず、基板上に黒色の着色感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を真空乾燥装置(VCD)により減圧乾燥した後、露光・現像し、ブラックマトリクスを形成する。次いで、赤色、緑色、及び青色の各色の着色感光性樹脂組成物毎に、塗布、乾燥、露光、及び現像を繰り返し、各色の画素領域を所定の位置に形成してカラーフィルターを製造する。
【0004】
また、近年では、カラーフィルターの生産性を向上させるために、インクジェット方式でカラーフィルターを製造する方法が検討されている。このインクジェット方式では、まず、リソグラフィ法によりブラックマトリクスを形成する。次いで、ブラックマトリクスによって区画された各画素領域に、赤色、緑色、及び青色の各色の着色感光性樹脂組成物をインクジェットノズルから吐出し、溜められた着色感光性樹脂組成物を熱又は光で硬化させることにより、カラーフィルターを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のとおり、基板上に着色感光性樹脂組成物を塗布した後は、塗膜を真空乾燥装置(VCD)により減圧乾燥することになるが、塗膜を減圧乾燥すると、溶剤の突沸や着色剤の凝集等が原因となり、塗膜に表面欠陥や表面荒れが生じるという問題があった。
【0007】
そこで従来、溶剤の突沸を防止するために、溶媒中にジプロピレングリコールジメチルエーテルを5質量%以上40質量%以下の割合で含む着色感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、この特許文献1で開示されている溶剤組成によってもなお、塗膜に生じる表面欠陥や表面荒れの抑制効果が十分でなかった。特に、着色剤の含有量が多い場合や、タクト短縮のために減圧速度を上げた場合には、塗膜の表面欠陥や表面荒れが目立つようになる。
【0009】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、塗膜を減圧乾燥したときの塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することが可能な着色感光性樹脂組成物、その着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルター、及びそのカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた。その結果、着色感光性樹脂組成物中の溶剤を特定の組成にすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
本発明の第一の態様は、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、着色剤(C)、及び溶剤(S)を含有する着色感光性樹脂組成物であって、前記溶剤(S)は、大気圧における沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(L)と、大気圧における沸点が170℃以上180℃未満である1種以上の第1の高沸点溶剤(H1)と、大気圧における沸点が180℃以上である1種以上の第2の高沸点溶剤(H2)とからなり、前記溶剤(S)中の前記第1の高沸点溶剤(H1)の割合が60質量%以上であり、前記溶剤(S)中の前記第2の高沸点溶剤(H2)の割合が0.1〜8質量%である着色感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第二の態様は、本発明に係る着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルターである。
【0013】
本発明の第三の態様は、本発明に係るカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗膜を減圧乾燥したときの塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することが可能な着色感光性樹脂組成物、その着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルター、及びそのカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
<着色感光性樹脂組成物>
本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、着色剤(C)、及び溶剤(S)を含有するものである。以下、着色感光性樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0017】
[(A)光重合性化合物]
光重合性化合物(A)としては、エチレン性不飽和基を有する樹脂又はモノマーが好ましく、これらを組み合わせることがより好ましい。エチレン性不飽和基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有するモノマーとを組み合わせることにより、硬化性を向上させ、パターン形成を容易にすることができる。なお、本明細書では、エチレン性不飽和基を有する化合物のうち、質量平均分子量が1000以上のものを「エチレン性不飽和基を有する樹脂」と称し、質量平均分子量が1000未満のものを「エチレン性不飽和基を有するモノマー」と称することとする。
【0018】
(エチレン性不飽和基を有する樹脂)
エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。
【0019】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を好適に用いることができる。
その中でも、下記式(a1)で表される化合物が好ましい。この式(a1)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化1】

【0020】
上記式(a1)中、Xは、下記式(a2)で表される基を表す。
【化2】

【0021】
上記式(a2)中、R1aは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、R2aは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Wは、単結合又は下記式(a3)で表される基を表す。
【化3】

【0022】
また、上記式(a1)中、Yは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0023】
また、上記式(a1)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a1)中、mは、0〜20の整数を表す。
【0024】
エチレン性不飽和基を有する樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜110mgKOH/gであることがより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上とすることにより、現像液に対する十分な溶解性が得られる。また、酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、十分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができる。
【0025】
また、エチレン性不飽和基を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。質量平均分子量を1000以上とすることにより、耐熱性、膜強度を向上させることができる。また、質量平均分子量を40000以下とすることにより、現像液に対する十分な溶解性を得ることができる。
【0026】
(エチレン性不飽和基を有するモノマー)
エチレン性不飽和基を有するモノマーには、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
光重合性化合物(A)の含有量は、着色感光性樹脂組成物の固形分に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、及び解像性のバランスがとり易い傾向がある。
【0029】
[光重合開始剤(B)]
光重合開始剤(B)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、及び2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等を用いることができる。これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤を用いることが、感度の面で特に好ましい。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
光重合開始剤(B)の含有量は、着色感光性樹脂組成物の固形分に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、及び耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0031】
[着色剤(C)]
着色剤(C)としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているもの等を用いることができる。この着色剤は、単独で用いてもよく、色調を整えるために2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様で番号のみ記載する)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様で番号のみ記載する)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様で番号のみ記載する)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様で番号のみ記載する)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様で番号のみ記載する)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
【0033】
また、カラーフィルターにおけるブラックマトリクスを形成する場合には、着色剤(C)として黒色顔料が用いられる。
【0034】
黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックを用いることが好ましい。この他、Cu、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、V、Zn、Se、Mg、Ca、Sr、Ba、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Pb、Bi、Si、及びAl等の各種金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、又は金属炭酸塩等の無機顔料も用いることができる。
【0035】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、特にチャンネルブラックは遮光性に優れることから好適に用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを用いることもできる。具体的には、カーボンブラックと、カーボンブラック表面に存在するカルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基との反応性を有する樹脂とを混合し、50〜380℃で加熱して得た樹脂被覆カーボンブラックや、水−有機溶剤混合系、又は水−界面活性剤混合系にエチレン性モノマーを分散し、重合開始剤の存在下でラジカル重合又はラジカル共重合させて得た樹脂被覆カーボンブラック等が挙げられる。この樹脂被覆カーボンブラックは、樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、カラーフィルターに用いた場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力の液晶表示ディスプレイが形成できる。
【0036】
また、上記の無機顔料に補助顔料として有機顔料を加えてもよい。有機顔料は無機顔料の補色を呈するものを適切に選択して加えることにより、次のような効果が得られる。例えば、カーボンブラックは赤みがかった黒色を呈する。したがって、カーボンブラックに補助顔料として赤色の補色である青色を呈する有機顔料を加えることにより、カーボンブラックの赤みが消え、全体としてより好ましい黒色を呈する。有機顔料は、無機顔料と有機顔料との総和100質量部に対して10〜80質量部の範囲で用いることが好ましく、20〜60質量部の範囲がより好ましく、20〜40質量部の範囲が最も好ましい。
【0037】
上記の無機顔料及び有機顔料としては、分散剤を用いて顔料を適当な濃度で分散させた溶液を用いることができる。例えば、無機顔料としては、御国色素社製のカーボン分散液CFブラック(カーボン濃度20%含有)、御国色素社製のカーボン分散液CFブラック(高抵抗カーボン24%含有)、御国色素社製のチタンブラック分散液CFブラック(黒チタン顔料20%含有)等が挙げられる。また、有機顔料としては、例えば、御国色素社製のブルー顔料分散液CFブルー(ブルー顔料20%含有)、御国色素社製のバイオレット顔料分散液(バイオレット顔料10%含有)等が挙げられる。また、分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤が好ましく用いられる。
【0038】
着色剤(C)の含有量は、着色感光性樹脂組成物の固形分に対して1〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、硬化不良を起こすことを抑制しながら着色性能を向上させることができる。
【0039】
また、着色剤(C)として黒色顔料を用いる場合には、形成される膜の膜厚1μmあたりのOD(Optical Density)値が3.5以上、好ましくは4.0以上となるように調整することが好ましい。膜厚1μmあたりのOD値が3.5以上あれば、カラーフィルターのブラックマトリクスとして用いた場合に、十分な表示コントラストを得ることができ、必要な性能が得られる。
【0040】
[溶剤(S)]
溶剤(S)としては、沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(L)と、沸点が170℃以上180℃未満である1種以上の第1の高沸点溶剤(H1)と、沸点が180℃以上である1種以上の第2の高沸点溶剤(H2)とからなるものが用いられる。なお、本明細書で示す沸点は、大気圧における値である。溶剤(S)がこのような組成であることにより、着色感光性樹脂組成物の塗膜を減圧乾燥したときの塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することができる。
【0041】
低沸点溶剤(L)の沸点は170℃未満であり、160℃以下であることが好ましい。また、沸点は130℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。このような低沸点溶剤(L)として具体的には、シクロヘキサノン(AN)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の中から選ばれる1種以上が好ましい。この中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)がより好ましい。
【0042】
低沸点溶剤(L)の含有量は、溶剤(S)の全量に対して35質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。また、含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。低沸点溶剤(L)は、着色感光性樹脂組成物を塗布した際に最初に揮発するため、このような含有量で含有することにより、着色感光性樹脂組成物の塗膜を減圧乾燥させる際の効率を高めることができる。
【0043】
第1の高沸点溶剤(H1)の沸点は170℃以上180℃未満である。このような第1の高沸点溶剤(H1)として具体的には、3−メトキシブチルアセテート(MA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、及びシクロヘキサノールアセテート(CHXA)の中から選ばれる1種以上が好ましい。この中でも、3−メトキシブチルアセテート(MA)及びシクロヘキサノールアセテート(CHXA)がより好ましく、3−メトキシブチルアセテート(MA)が特に好ましい。
【0044】
第1の高沸点溶剤(H1)の含有量は、溶剤(S)の全量に対して60質量%以上であり、63質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。また、含有量は90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
第2の高沸点溶剤(H2)の沸点は180℃以上であり、190℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。また、沸点は250℃以下であることが好ましい。このような第2の高沸点溶剤(H2)として具体的には、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(BGDA)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)の中から選ばれる1種以上が好ましい。この中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート(BGDA)及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)が特に好ましい。
【0046】
また、第2の高沸点溶剤(H2)の100℃における重量変化率は、15TG%以下が好ましく、10TG%以下がより好ましく、8TG%以下であることがさらに好ましい。また、重量変化率は2TG%以上が好ましく、4TG%以上がより好ましい。ここで、「100℃における重量変化率」とは、単位時間当たりの溶剤の重量変化を指す。本明細書では、100℃に保温した熱天秤に溶剤を添加し、大気中において、溶剤の重量の変化量を求めることにより、測定されたものである。
【0047】
また、第2の高沸点溶剤(H2)は、溶解パラメーターが8.7(cal/cm1/2以上であることが好ましい。第2の高沸点溶剤(H2)は、溶剤(S)の中で最も揮発しにくいため、真空乾燥装置(VCD)等を用いて着色感光性樹脂組成物の塗膜を減圧乾燥させる際に、最後まで塗膜中に残る。このとき第2の高沸点溶剤(H2)の溶解パラメーターが8.7(cal/cm1/2以上であると、減圧乾燥の最後まで着色剤(C)の分散性が良好に保たれ、塗膜の表面欠陥や表面荒れが抑制される。この溶解パラメーターは、11(cal/cm1/2以下であることが好ましく、10(cal/cm1/2以下であることがより好ましい。
【0048】
第2の高沸点溶剤(H2)の含有量は、溶剤(S)の全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましい。
【0049】
溶剤(S)の平均沸点は、165℃以上であることが好ましく、167℃以上であることがより好ましく、168℃以上であることがさらに好ましい。また、平均沸点は200℃以下であることが好ましく、185℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、175℃以下であることが特に好ましい。ここで、「平均沸点」とは、各溶剤の沸点に溶剤(S)の全量に対するその溶剤の含有割合を乗じて平均化したものである。
【0050】
溶剤(S)の含有量は、着色感光性樹脂組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。上記の範囲とすることにより、着色感光性樹脂組成物における膜形成能や塗布性を良好に保つことができる。
【0051】
[その他の成分]
本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。添加剤としては、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤、増感剤、硬化促進剤、光架橋剤、分散剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等が挙げられる。
【0052】
[着色感光性樹脂組成物の調製方法]
本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、上記各成分を全て撹拌機で混合することにより得られる。なお、得られた混合物が均一なものとなるようフィルターを用いて濾過してもよい。
【0053】
本発明に係る着色感光性樹脂組成物によれば、減圧乾燥時の塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することが可能である。中でも、着色剤(C)として黒色顔料を用いた場合には、特に有効である。黒色顔料を含有する着色感光性樹脂組成物は、上述したように高OD値を有することが好ましいが、溶剤(S)が上記の条件を満たすことにより、高OD化のために黒色顔料の含有量を増加させても、表面欠陥や表面荒れの発生リスクを効果的に抑えることが可能である。
【0054】
<カラーフィルター>
本発明に係るカラーフィルターは、本発明に係る着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するものである。このカラーフィルターは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0055】
まず、本発明に係る着色感光性樹脂組成物を、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて基板上に塗布する。基板の材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0056】
次いで、着色感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥し、その後、ホットプレートにて80〜120℃、好ましくは90〜100℃の温度にて60〜120秒間乾燥する方法が挙げられる。本発明に係る着色感光性樹脂組成物によれば、このように塗膜を減圧乾燥しても、塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することができる。
【0057】
次いで、この塗膜に、ネガ型のマスクを介して紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して選択的に露光する。照射するエネルギー線量は、着色感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30〜2000mJ/cmであることが好ましい。
【0058】
次いで、露光後の塗膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0059】
次いで、現像後のパターンを220〜250℃程度、好ましくは230〜240℃程度でポストベークを行う。この際、形成されたパターンを全面露光することが好ましい。以上により、所定のパターン形状を有するブラックマトリクスを形成することができる。
【0060】
以上の操作を、赤色、緑色、及び青色の各色の着色感光性樹脂組成物について行い、各色の画素パターンを形成する。これにより、カラーフィルターが形成される。
【0061】
なお、カラーフィルターの製造に際しては、ブラックマトリクスによって区画された各画素領域に、赤色、緑色、及び青色の各色のインクをインクジェットノズルから吐出し、溜められたインクを熱又は光で硬化させることもできる。
【0062】
<液晶表示ディスプレイ>
本発明に係る液晶表示ディスプレイは、本発明に係るカラーフィルターを有するものである。この液晶表示ディスプレイを製造するには、まず、一方の基板上に上記のカラーフィルターを形成し、次いで、電極、スペーサー等を順次形成する。そして、他方の基板上に電極等を形成し、両者を張り合わせて所定量の液晶を注入、封止すればよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
<実施例1>
[光重合性化合物の合成]
まず、500mlの四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)とテトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90℃〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全に溶解させた。ここで溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、ビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0065】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3−メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g、及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110℃〜115℃で4時間反応させた。酸無水物の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、樹脂A−1(質量平均分子量:3400)を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
【0066】
[着色感光性樹脂組成物の調製]
以下の成分を固形分濃度が18質量%となるように混合し、撹拌機で2時間撹拌した後、5μmメンブランフィルターで濾過し、着色感光性樹脂組成物を得た。着色感光性樹脂組成物の調製に用いた各溶剤の、大気圧下における沸点、溶解パラメーター、及び100℃における重量変化率は、表1に示すとおりである。
(A):樹脂A−1(固形分:55%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)・・・23.6質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・・・4.8質量部
(B):IRGACURE OXE 02(チバスペシャルティケミカルズ社製)・・・1.4質量部
(C):カーボン分散液(「CFブラックEX−1455」、御国色素社製、高抵抗カーボン:24%、分散剤:5%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)・・・100質量部
(S):3−メトキシブチルアセテート/シクロヘキサノン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/1,3−ブチレングリコールジアセテート=65:15:13:7(質量比)
【0067】
<実施例2〜12,比較例1〜11>
溶剤(S)の組成を表2,3のように変更したほかは、実施例1と同様にして着色感光性樹脂組成物を調製した。なお、実施例・比較例に用いた着色感光性樹脂組成物のOD値は4.5である。着色感光性樹脂組成物の調製に用いた各溶剤の、大気圧下における沸点、溶解パラメーター、及び100℃における重量変化率は、表1に示すとおりである。
【0068】
【表1】

【0069】
ここで、重量変化率は、100℃に保温した熱天秤(「TG/DTA6200(商品名)」、SIIナノテクノロジー社製)に溶剤を添加し、大気中において、溶剤の重量の変化量を求めることにより、測定した。
【0070】
<評価>
実施例1〜12、比較例1〜11で調製した着色感光性樹脂組成物を、680mm×880mmのガラス基板上に塗布した後、66Paで30秒間減圧乾燥し、次いで110℃で120秒間プリベークして、約1.0μmの膜厚を有する塗膜を得た。この塗膜について、表面欠陥及び表面荒れを以下のようにして評価した。
【0071】
[表面欠陥の評価]
表面欠陥測定装置(製品名:「KLA−213X」、KLA−Tencor社製)を用いて、塗膜表面の欠陥数を測定した。結果を表2,3に示す。
【0072】
[表面荒れの評価]
原子間力顕微鏡(SIIナノテクノロジー社製)を用いて、塗膜の表面荒れ(Ra)を評価した。結果を表2,3に示す。なお、比較例3〜11では、塗膜表面の欠陥数が著しく多かったため、表面荒れの評価を行わなかった。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表2,3から分かるように、沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(L)と、沸点が170℃以上180℃未満である1種以上の第1の高沸点溶剤(H1)と、沸点が180℃以上である1種以上の第2の高沸点溶剤(H2)とからなり、かつ、第1の高沸点溶剤(H1)の割合が60質量%以上である溶剤(S)を含有する実施例1〜12の着色感光性樹脂組成物を用いた場合には、塗膜を減圧乾燥したときの塗膜の表面欠陥や表面荒れを効果的に抑制することができた。特に、第2の高沸点溶剤(H2)の割合を増加させることにより、表面欠陥や表面荒れの抑制効果が向上した(実施例1〜4、実施例5〜7)。
【0076】
一方、第2の高沸点溶剤(H2)を含有しない比較例1〜5,10の着色感光性樹脂組成物を用いた場合には、塗膜を減圧乾燥したときに、塗膜の表面欠陥や表面荒れが顕著に発生した。また、第2の高沸点溶剤(H2)を含有したとしても、第1の高沸点溶剤(H1)の割合が55質量%である比較例6〜9の着色感光性樹脂組成物を用いた場合には、塗膜を減圧乾燥したときに、塗膜の表面欠陥が顕著に発生した。このうち比較例8,9の着色感光性樹脂組成物は、例えば実施例1,5よりも溶剤(S)の平均沸点が高いが、このように平均沸点が高くても、第1の高沸点溶剤(H1)の割合が60質量%未満である場合には、塗膜の表面欠陥や表面荒れを抑制することができなかった。また、第1の高沸点溶剤(H1)を含有せず、低沸点溶剤(L)の割合が95質量%である比較例11の着色感光性樹脂組成物を用いた場合にも、塗膜を減圧乾燥したときに、塗膜の表面欠陥が顕著に発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、着色剤(C)、及び溶剤(S)を含有する着色感光性樹脂組成物であって、
前記溶剤(S)は、
大気圧における沸点が170℃未満である1種以上の低沸点溶剤(L)と、
大気圧における沸点が170℃以上180℃未満である1種以上の第1の高沸点溶剤(H1)と、
大気圧における沸点が180℃以上である1種以上の第2の高沸点溶剤(H2)とからなり、
前記溶剤(S)中の前記第1の高沸点溶剤(H1)の割合が60質量%以上であり、
前記溶剤(S)中の前記第2の高沸点溶剤(H2)の割合が0.1〜8質量%である着色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2の高沸点溶剤(H2)の溶解パラメーターが8.7(cal/cm1/2以上である請求項1記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤(S)の平均沸点が165℃以上である請求項1又は2記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1の高沸点溶剤(H1)が、3−メトキシブチルアセテート(MA)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMM)、及びシクロヘキサノールアセテート(CHXA)の中から選ばれる1種以上であり、
前記第2の高沸点溶剤(H2)が、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、ガンマブチロラクトン(GBL)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(BGDA)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)の中から選ばれる1種以上である請求項1から3のいずれか1項記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記低沸点溶剤(L)が、シクロヘキサノン(AN)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の中から選ばれる1種以上である請求項1から4のいずれか1項記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記着色剤(C)が、黒色顔料を含有する請求項1から5のいずれか1項記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンを有するカラーフィルター。
【請求項8】
請求項7記載のカラーフィルターを有する液晶表示ディスプレイ。

【公開番号】特開2013−109368(P2013−109368A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22792(P2013−22792)
【出願日】平成25年2月8日(2013.2.8)
【分割の表示】特願2008−197276(P2008−197276)の分割
【原出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】