説明

着色樹脂被覆粒状肥料およびその製造方法

【課題】 樹脂被覆粒状肥料本来の肥料成分溶出性能を低下させることはなく、均一で目的とした色調の着色樹脂被覆粒状肥料を、用いる樹脂被覆粒状肥料の表面色調に影響されることなく任意に提供すること。
【解決手段】 粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材被覆層と熱硬化性樹脂からなる樹脂被覆層とを交互にそれぞれ3〜5層有する着色樹脂被覆粒状肥料であり、粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材を添加、被覆処理し、次いで液状の未硬化熱硬化性樹脂を添加、被覆した後、熱硬化させる処理を交互にそれぞれ3〜5回繰り返して行なうことによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩効性肥料として用いられる樹脂被覆粒状肥料を基材として用いてその表面を着色材で着色した着色樹脂被覆粒状肥料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業の省力化等の観点から粒状肥料を樹脂等で被覆して緩効性を付与した樹脂被覆粒状肥料が広く使用されており、種々の肥料成分溶出タイプの樹脂被覆粒状肥料が提案されている。省力化の為、一発型肥料として、種々の肥料成分溶出タイプを配合した混合肥料、またはこれらに化成肥料、有機質肥料等を配合した混合肥料が提案されており、これらの樹脂被覆粒状肥料は、混合時の製品の間違いを無くするために、着色を行なうことがある。
【0003】
樹脂被覆粒状肥料の着色技術として、染料または顔料等の着色材を被覆樹脂資材に均等に分散或いは溶解させたものを粒状肥料表面に添加被覆する方法が一般的に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法の問題点は、樹脂被覆粒状肥料において品質上最も重要な肥料成分の溶出性能が被覆樹脂資材に混合される着色材の種類と性状に大きく左右されることである。
すなわち、このような樹脂被覆粒状肥料は、一般に非透水性の樹脂を使用して粒状肥料表面に5〜15重量%程度被覆処理して作られているが、その樹脂被膜の厚さが、粒状肥料の代表的な平均粒径3mmのもので、約25〜75μmと極めて薄く、このため僅かなピンホール、亀裂、膜厚の凹凸等の被膜欠陥がその肥料成分溶出性能の低下の主な原因となっている。
上記の着色材を被覆樹脂資材に分散或いは溶解させたものを粒状肥料表面に添加被覆する方法は被膜欠陥が大きくなりやすく、着色材の被覆樹脂資材への分散或いは溶解が不十分であったり、分散或いは溶解がし難いものであったり、または固体着色材の粒径が大きい場合等においては、前記被膜欠陥が増大してしまう。
これらの問題を補うため被覆樹脂量を多くする方法、または着色材量を少なくする方法が採られるが、前者は肥料成分溶出性能を改善するまでには至らず、後者は目的とする色調のものが得られないという問題を有している。
【0004】
また、樹脂被覆粒状肥料の着色技術として、粒状肥料表面を水溶性の染料または顔料を塗布して乾燥した後、透明性を有する樹脂で被覆する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、このような方法は、着色材が粒状肥料にも取込まれることから、目的とした色調の着色粒状肥料を得るには比較的多量の着色材が必要となること、粒状肥料が有色で濃い色の場合も目的とした色調の着色固形肥料を得るにはより多量の着色材が必要となることから経済的に好ましくなく、また、樹脂被覆量が多くなると樹脂の色が重なってくるため、目的とした色調を保持するには透明性の高い樹脂しか使用出来ないという問題点を有している。
【特許文献1】特開昭50−134871号公報
【特許文献2】特公平2−44793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、樹脂被覆粒状肥料本来の肥料成分溶出性能を低下させることはなく、均一で目的とした色調の着色樹脂被覆粒状肥料を、用いる樹脂被覆粒状肥料の表面色調に影響されることなく任意に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる事情下に鑑み、本発明者は肥料成分溶出性能を低下させることなく目的とした色調の着色樹脂被覆粒状肥料を得る方法について鋭意検討した結果、粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材被覆層と、熱硬化性樹脂からなる樹脂被覆層を交互にそれぞれ交互に3〜5層設けることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材被覆層と熱硬化性樹脂からなる樹脂被覆層とを交互にそれぞれ3〜5層有する着色樹脂被覆粒状肥料である。
着色材被覆層の1層の量は樹脂被覆粒状肥料の0.01〜0.1重量%が、熱硬化性樹脂としてはウレタン樹脂が、樹脂被覆層の1層の量は樹脂被覆粒状肥料の0.1〜1重量%が好ましい。
このような着色樹脂被覆粒状肥料は、粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材を添加、被覆処理し、次いで液状の未硬化熱硬化性樹脂を添加、被覆した後、熱硬化させる処理を交互にそれぞれ3〜5回繰り返して行なうことによって製造される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の着色樹脂被覆粒状肥料は、樹脂被覆粒状肥料本来の肥料成分溶出性能を低下させることはなく、均一で目的とした色調の着色樹脂被覆粒状肥料を、用いる樹脂被覆粒状肥料の表面色調に影響されることなく任意に提供することができ、その産業上の利用価値は頗る大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いる樹脂被覆粒状肥料は、尿素、硝安、硫安、塩安、硝酸石灰、ウレアホルム等の窒素質、燐安、過燐酸石灰、重過燐酸石灰等の燐酸質、塩化加里、硫酸加里等の加里質の肥料原料物質の1成分系、肥料原料物質の組合わせによって得られる窒素−燐酸、窒素−加里、および燐酸−加里の2成分系、窒素−燐酸−加里の3成分系、あるいはこれらに苦土、マンガン、硼素等の植物の生育に必要な要素を含有させた従来の粒状肥料の表面に、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレンー酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、等の従来の樹脂被覆材料を使用して、目的とする緩効性に合わせて、それぞれの樹脂類に対応した公知の被覆法を採用して被覆処理された樹脂被覆粒状肥料である。中でも、本発明において着色材と交互に被覆する樹脂としてウレタン樹脂が好ましく用いられるので、ウレタン樹脂で被覆処理された樹脂被覆粒状肥料が好ましく用いられる。また、この樹脂被覆粒状肥料は、溶出性の調整の目的で、鉱産物粉末、界面活性剤、ワックス等の添加されたものでも良い。
【0010】
本発明で着色材として使用する顔料粉末としては、例えば、ウルトラマリン、群青、コバルトブルー、フタロシニアンブルー、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、パーマネットレッド、パーマネットエロー、ハンザエロー、三酸化第二鉄、酸化第二鉄(ベンガラ)、四三酸化鉄(鉄黒)および黄色酸化鉄、亜鉛華、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられ、これらは単独または二種以上を混合して使用される。
【0011】
着色材被覆層の1層の量は、通常、基材として用いる樹脂被覆粒状肥料の約0.01〜0.1重量%、好ましくは約0.03〜0.07重量%である。被覆量が少ない場合には着色度が低く、多すぎると着色度が高くなり過ぎるだけで実用的でなく、経済的に不利となる。
【0012】
樹脂被覆粒状肥料に対する着色材としての顔料粉末の被覆処理方法としては特に制限されるものではなく、当該分野で公知の方法が適用し得る。一般的には、温度制御可能な回転円筒や回転皿等の装置に、樹脂被覆粒状肥料を供給して転動させながら、これに顔料粉末を添加混合して被覆処理する方法が挙げられる。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が使用されるが、これらに限定されるものではない。中でもウレタン樹脂が好ましく用いられ、ウレタン樹脂はポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により3次元架橋することにより生成されるものである。また、ポリイソシアネート化合物を2種類以上および/またはポリオール化合物を2種類以上混合して用いることもできる。
【0014】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばトルエンジイソシアネート(以下、TDIと略称することがある)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと略称することがある)、ナフタレンジイソシアネート、トリジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を挙げることができ、必要に応じてこれらの混合物を用いることができる。中でも、MDI、TDIまたはこれらから誘導されるオリゴマー体(ポリメリックMDI、ポリメリックTDI等)が好適に用いられる。
【0015】
ポリオール化合物としては、例えばアミノアルコール、アミン等を開始材として用い、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドとを重付加して得られるポリエーテルポリオール、テトラヒドロフランを重合して得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル型ポリオール、イサノ油やひまし油等の水酸基を保有する天然油脂や多価アルコールとポリエーテルポリオールとカルボン酸化合物を反応させる等の方法で得られるポリエステル型ポリオール等が挙げられる。
【0016】
使用するポリイソシアネート化合物に由来するNCO基とポリオール化合物に由来するOH基の当量比、いわゆるNCO/OHは、通常0.9〜1.2の間で調整される。
【0017】
ウレタン樹脂原料の硬化促進の目的で、触媒をウレタン樹脂原料に添加し、該触媒共存下に硬化を行なうこともできる。触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、N,N−ジメチルモルフォリン、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール、エチルメチルイミダゾール、ジアザビシクロオクタン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノミチル)フェノール等のアミン系触媒;尿素等のアンモニア誘導体;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物;ジブチルスズラウレート、ジブチルスズマレート等の有機スズ化合物が挙げられる。中でもアミン系触媒が好適に用いられる。これら触媒を使用する場合の触媒の量はポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の総重量に対して、通常0.05〜5重量%程度である。
【0018】
樹脂被覆層の1層の量は、通常、基材として用いる樹脂被覆粒状肥料の約0.1〜1重量%、好ましくは約0.2〜0.5重量%である。被覆量が少ない場合には先に被覆された着色材被覆層の、基材として用いる樹脂被覆粒状肥料表面への付着保持が不十分となって着色材被覆層の剥れが起こるために色ムラを起こし好ましくなく、多すぎても被覆量に見合う大幅な着色材被覆層の樹脂被覆粒状肥料基材表面への付着保持効果は見られず、経済的に不利となる。
【0019】
基材として用いる樹脂被覆粒状肥料に対する樹脂の被覆処理方法としては特に制限されるものではなく、当該分野で公知の方法が適用し得る。一般的には着色材を、基材として用いる樹脂被覆粒状肥料に被覆処理する場合と同様、温度制御可能な回転円筒や回転皿等の装置に、樹脂被覆粒状肥料を供給して転動させながら、これに液状の熱硬化樹脂を添加被覆し、次いで熱硬化させて被覆処理する方法が挙げられる。
【0020】
本発明の着色樹脂被覆粒状肥料は、顔料粉末からなる着色材被覆層と、熱硬化性樹脂からなる樹脂被覆層とは、交互にそれぞれ3〜5層、好ましくは3〜4層有している。層数が少ない場合には着色の均一性および着色度が低く、多くても着色の均一性および着色度の大幅な向上は望めず、経済的に不利になる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は特記しない限りすべて重量部および重量百分率を示す。
【0022】
実施例1
(1)樹脂被覆粒状肥料の製造:
25℃の水中において尿素肥料成分の80%が凡そ100日で溶出するタイプのウレタン樹脂で被覆された樹脂被覆粒状肥料(以下、100日タイプ樹脂被覆尿素肥料と記す)を以下の方法で製造した。粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の被覆量は8%とした。
25℃でポリオール混合槽に分岐ポリエーテルポリオール(スミフェン(商標登録)TM、住友バイエルウレタン社製)417.7gと硬化触媒として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール7.9gを加え、30分撹拌し、混合物425.6gを得た(以下混合物Aと記す)。
温度制御可能な転動型の被覆装置に粒状尿素(平均粒径3.1mm)10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ粒状尿素を転動状態にした。該粒状尿素の温度を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、ポリイソシアネート化合物としてポリメリックMDI(スミジュール(登録商標)44V10、住友バイエルウレタン社製)374.4gと混合物A425.6gを混合して得られる液状の未硬化ウレタン樹脂組成物(以下液状樹脂組成物Aと記す)を除々に添加し熱硬化させながら被覆処理した。この被覆処理に要した時間は約50分であった。このようにしてウレタン樹脂被覆量8%の100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を得た。
【0023】
(2)樹脂被覆粒状肥料の茶色着色:
前記(1)で得た100日タイプ樹脂被覆尿素肥料に以下の方法で着色材被覆層、および樹脂被覆層を形成した。着色材被覆層および樹脂被覆層の1層の量は100日タイプ樹脂被覆尿素肥料のそれぞれ0.05%、0.3%とした。
前記(1)と同様な温度制御可能な転動型の被覆装置に該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を転動状態にした。該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、着色材として茶色着色用顔料粉末5g(酸化第二鉄2.94gと黄色酸化鉄1.76gとカーボンブラック0.3gの混合物)を添加し、3分間転動させた後、液状樹脂組成物A30gを添加し、3分間転動させて熱硬化させた。この顔料粉末添加、液状樹脂組成物添加、および熱硬化の操作を3回行ない100日タイプの茶色着色樹脂被覆尿素肥料を得た。
本実施例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%であった。
このようにして得た茶色着色樹脂被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
実施例2
樹脂被覆粒状肥料の緑色着色:
実施例1において、茶色着色用顔料粉末5gに代えて緑色着色用顔料粉末5g(黄色酸化鉄4.64gとフタロシアニンブルー0.26gとカーボンブラック0.1gの混合物)を使用する以外は、実施例1と同様な方法で100日タイプの緑色着色樹脂被覆尿素肥料を製造した。
本実施例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%と実施例1と同等とした。
このようにして得た緑色着色樹脂被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
顔料粉末全量を被覆用樹脂液全量に分散させ、粒状尿素に一度に全量添加被覆する方法で着色樹脂被覆粒状肥料を製造した。被覆樹脂は実施例1、2と同じウレタン樹脂を、粒状肥料は実施例1、2と同じ粒状尿素肥料を、顔料粉末は実施例1と同じ茶色着色用顔料粉末を使用した。
25℃でポリオール混合槽に分岐ポリエーテルポリオール(スミフェン(登録商標)TM、住友バイエルウレタン社製)467.9gと硬化触媒として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール8.9gと茶色着色用顔料粉末16g(酸化第二鉄9.41gと黄色酸化鉄5.65gとカーボンブラック0.94gの混合物)を加え、30分撹拌し、混合物492.8gを得た(以下混合物Bと記す)。
実施例1と同様の温度制御可能な転動型の被覆装置に粒状尿素(平均粒径3.1mm)10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ粒状尿素を転動状態にした。該粒状尿素の温度を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、ポリイソシアネート化合物としてポリメリックMDI(住友バイエルウレタン社製、商品名:スミジュール44V10)420.8gと混合物B492.8gを混合して得られる液状の顔料粉末含有未硬化ウレタン樹脂組成物を除々に添加し熱硬化させながら被覆処理した。この被覆処理に要した時間は約50分であった。このようにして茶色着色被覆尿素肥料を得た。
本比較例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%と実施例1と同等とした。
このようにして得た茶色着色被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
比較例2
顔料粉末を粒状尿素に一度に全量添加被覆し、次いで樹脂で被覆させる方法で着色樹脂被覆粒状肥料を製造した。被覆樹脂は実施例1、2と同じウレタン樹脂を、粒状肥料は実施例1、2と同じ粒状尿素肥料を、顔料粉末は実施例1と同じ茶色着色用顔料粉末を使用した。
25℃でポリオール混合槽に分岐ポリエーテルポリオール(住友バイエルウレタン社製、商品名:スミフェンTM)467.9gと硬化触媒として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール8.9gを加え、30分撹拌し、混合物476.8gを得た(以下混合物Cと記す)。
実施例1と同様の温度制御可能な転動型の被覆装置に粒状尿素(平均粒径3.1mm)10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ粒状尿素を転動状態にした。該粒状尿素の温度を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、茶色着色用顔料粉末16g(酸化第二鉄9.41gと黄色酸化鉄5.65gとカーボンブラック0.94gの混合物)を添加し、3分間転動させて茶色着色粒状尿素肥料を得た。
次いで、該茶色着色粒状尿素肥料に、ポリイソシアネート化合物としてポリメリックMDI(スミジュール(登録商標)44V10、住友バイエルウレタン社製)420.8gと混合物C476.8gを混合して得られる液状の未硬化ウレタン樹脂組成物を除々に添加し熱硬化させながら被覆処理した。この被覆処理に要した時間は約50分であった。このようにして茶色着色樹脂被覆尿素肥料を得た。
本比較例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%と実施例1と同等とした。
このようにして得た茶色着色樹脂被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
比較例3
実施例1と同様な方法で得た100日タイプ樹脂被覆尿素肥料の表面に顔料粉末全量を被覆用樹脂液に分散させ一度に添加して被覆させる方法で着色樹脂被覆粒状肥料を製造した。被覆樹脂は実施例1、2と同じウレタン樹脂を、顔料粉末は実施例1と同じ茶色着色用顔料粉末を使用した。
25℃でポリオール混合槽に分岐ポリエーテルポリオール(スミフェン(商標登録)TM、住友バイエルウレタン社製)47gと硬化触媒として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.88gと茶色着色用顔料粉末15g(酸化第二鉄8.82gと黄色酸化鉄5.3gとカーボンブラック0.88gの混合物)を加え、30分撹拌し、混合物62.88gを得た(以下混合物Dと記す)。
実施例1と同様の温度制御可能な転動型の被覆装置に該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を転動状態にした。該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、ポリイソシアネート化合物としてポリメリックMDI(スミジュール(登録商標)44V10、住友バイエルウレタン社製)42.12gと混合物D62.88gを混合して得られる液状の顔料粉末含有未硬化ウレタン樹脂組成物を一度に添加し、3分間転動させて熱硬化させた。このようにして100日タイプの茶色着色樹脂被覆尿素肥料を得た。
本比較例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%と実施例1と同等とした。
このようにして得た茶色着色樹脂被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
比較例4
実施例1と同様な方法で得た100日タイプ樹脂被覆尿素肥料の表面に顔料粉末を一度に全量添加被覆し、次いで樹脂で被覆させる方法で着色樹脂被覆粒状肥料を製造した。被覆樹脂は実施例1、2と同じウレタン樹脂を、顔料粉末は実施例1と同じ茶色着色用顔料粉末を使用した。
25℃でポリオール混合槽に分岐ポリエーテルポリオール(スミフェン(商標登録)TM、住友バイエルウレタン社製)47gと硬化触媒として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール0.88gを加え、30分撹拌し、混合物47.88gを得た(以下混合物Eと記す)。
実施例1と同様の温度制御可能な転動型の被覆装置に該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料10kgを仕込んだ。被覆装置の回転部を20〜30rpmで回転させ、仕込んだ該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を転動状態にした。該100日タイプ樹脂被覆尿素肥料を70〜75℃になるまで加熱保持しながら、茶色着色用顔料粉末15g(酸化第二鉄8.82gと黄色酸化鉄5.3gとカーボンブラック0.88gの混合物)を一度に添加し、3分間転動させた後、ポリイソシアネート化合物としてポリメリックMDI(スミジュール(登録商標)44V10、住友バイエルウレタン社製)42.12gと混合物E47.88gを混合して得られる液状の未硬化ウレタン樹脂組成物を添加し、3分間転動させて熱硬化させた。このようにして100日タイプの茶色着色樹脂被覆尿素肥料を得た。
本比較例の粒状尿素肥料に対するウレタン樹脂の総被覆量は約8.97%、および顔料粉末の総被覆量は約0.16%と実施例1と同等とした。
このようにして得た茶色着色樹脂被覆尿素肥料について、肥料成分溶出性能および色調を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


表中の括弧内数値は、基材として使用した100日タイプ被覆尿素肥料の肥料成分溶出量を示す。
本発明によれば、用いる樹脂被覆粒状肥料の肥料成分溶出性能を低下させることなく、色調が均一で、且つ着色度も充分な着色樹脂被覆粒状肥料が得られる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材被覆層と熱硬化性樹脂からなる樹脂被覆層とを交互にそれぞれ3〜5層有する着色樹脂被覆粒状肥料。
【請求項2】
着色材被覆層の1層の量が樹脂被覆粒状肥料の0.01〜0.1重量%である請求項1記載の着色樹脂被覆粒状肥料。
【請求項3】
熱硬化性樹脂がウレタン樹脂である請求項1記載の着色樹脂被覆粒状肥料。
【請求項4】
樹脂被覆層の1層の量が樹脂被覆粒状肥料の0.1〜1重量%である請求項1記載の着色樹脂被覆粒状肥料。
【請求項5】
粒状肥料表面を樹脂で被覆してなる樹脂被覆粒状肥料の表面に、顔料粉末からなる着色材を添加、被覆処理し、次いで液状の未硬化熱硬化性樹脂を添加、被覆した後、熱硬化させる処理を交互にそれぞれ3〜5回繰り返して行なうことを特徴とする着色樹脂被覆粒状肥料の製造方法。