説明

着色液体、及び分離液状着色組成物

【課題】 分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供する。
【解決手段】 外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用し、非極性溶媒及び着色剤を含む着色液体であって、前記着色剤が、少なくとも樹脂、水溶性有機溶剤、及び顔料を含む混合物を、密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練して得た着色剤である着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電場を利用して液体を移動させる変調方式、特にエレクトロウエッティングデバイスに使用する着色液体、及び分離液状着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
外部電場を利用して液体を移動させる変調方式は、画像表示デバイス、あるいは光学シャッタ、光ピックアップ装置、液体光学レンズ等の光学素子として検討されている。これらの変調方式の代表的なものとしては、電気浸透(electroosmosis)方式、電気泳動(electrophoretic)方式、エレクトロフルイディック(electrofluidic)方式、エレクトロウエッテイング(electrowetting)方式等がある。
【0003】
この中でエレクトロウエッティング方式は、高いコントラスト比と広い視野角を有し、フロントライトやバックライトを必要としないため、消費電力のかからない画像表示デバイスとして検討がなされている。その原理は特許文献1及び2に記載されているように、「電気毛管」と呼ばれる概念に基づき、電圧の印加非印加により、非着色液体中に存在する着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小(あるいは、着色液体中に存在する非着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小)することで、着色画像を形成するものである。
【0004】
このような、分離液状の非着色液体と着色液体とからなる液体(以下、分離液状着色液体と称す)は、分離即ち混和しない必要があることから、一般に、シリコンオイル等の非極性溶媒と、水やアルコール、エチレングリコール等の極性溶媒とが使用され、そのいずれかに着色剤が添加されている。
例えば極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献3には、極性溶媒中に、カチオンとアニオンとを組み合わせた常温溶融塩を含有するイオン性液体と、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン基、水酸基、リン酸基などの官能基を有する自己分散型顔料を添加した着色液体を使用することが開示されている。また特許文献4には、特定の粘度と表面張力を有する極性溶媒中に顔料や染料を添加されてなる、特定の電気伝導度とイオン半径を有する着色液体を使用することが開示されている。
また、非極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献5には、デカン、デカリンもしくはテトラリン等の非極性溶媒中に、有機顔料および/または無機顔料、溶媒可溶性のまたは溶媒分散可能なポリマー分散剤、及び、アルデヒド樹脂またはケトン樹脂を添加した着色液体を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−39800号公報
【特許文献2】特開平10−74055号公報
【特許文献3】特開2008−203282号公報
【特許文献4】WO2011/017446号公報
【特許文献5】特表2011−510336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、使用する着色剤として、特定の混練方法により樹脂で被覆された顔料を使用することで、前記課題を解決することを見出した。
【0008】
即ち本発明は、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用し、非極性溶媒及び着色剤を含む着色液体であって、前記着色剤が、少なくとも樹脂、水溶性有機溶剤、及び顔料を含む混合物を、密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練して得た着色剤である着色液体を提供する。
【0009】
また本発明は、前記記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色剤としての使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(非極性溶媒)
本発明の着色液体で使用する非極性溶媒は、エレクトロウエッティングデバイスにおいて通常使用されている非極性溶媒であれば、特に限定はなく公知のものを使用できる。具体的には例えば、非水性の直鎖状および/または分枝状または環状の炭素原子数4〜30のアルカン、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、メチルシクロへキサン、特に好ましくは、デカン、ウンデカンおよびドデカンまたはこれらの任意の比率の混合物;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数1〜30のハロアルカン、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロシクロヘキサン、およびそれらの位置異性体;炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、またはこれらの任意の比率の混合物;あるいは水素添加された炭素原子数10〜22の芳香族化合物、好ましくは、テトラリン、シス−デカリンおよびトランス−デカリン、またはこれらの任意の比率の混合物、特に好ましくは、シス−デカリンおよびトランス−デカリン;
【0013】
ハロゲン化炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはジフルオロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはトリフルオロベンゼン、クロロナフタレンまたはフルオロナフタレン、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数4〜22のアルコール、好ましくは、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、またはシクロオクタノール、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状のエーテル、好ましくは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、tert−アミルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグリム、トリグリム、フラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロメチルフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、メトキシベンゼン、メチルチオベンゼン、エトキシベンゼン、およびそれらの位置異性体;
【0014】
直鎖状および/または分枝状および/または環状のケトン、好ましくは、アセトン、トリクロロアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセチルアセトン、およびそれらの位置異性体;
直鎖状および/または分枝状および/または環状のニトロアルカン、好ましくは、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロシクロへキサン、およびそれらの位置異性体;
炭素原子数6〜22のニトロ芳香族化合物、好ましくはニトロベンゼン;直鎖状および/または分枝状および/または環状のアミン、好ましくは、tert−ブチルアミン、ジアミノエタン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルアニリン、およびN,N−ジメチルアニリン、およびそれらの位置異性体;ヘキサメチルジシラン、ジフェニルジメチルシラン、クロロフェニルトリメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、 フェネチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ポリジメチルシロキサン、テトラフェニルテトラメチルトリシロキサン、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン)、3,5,7−トリフェニルノナメチルペンタシロキサン、3,5−ジフェニルオクタメチルテトラシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−1,3,3,5−テトラメチル−トリシロキサン、およびヘキサメチルシクロトリシロキサン;ハイドロフルオロエーテル、クロロジフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、オクタフルオロプロパン、または上記溶媒の任意の比率での混合物が包含される。
中でも、デカン、ドデカン、デカリン、テトラリン、またはそれらの混合物、またはそれらの物質を主成分として含むものが特に好ましい。
【0015】
(着色剤)
本発明で使用する着色剤は、少なくとも樹脂、水溶性有機溶剤、及び顔料を含む混合物を、密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練して得た着色剤である。
【0016】
(着色剤:樹脂)
本発明で使用する樹脂は特に限定はなく各種樹脂を使用することができる。例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系高分子化合物等が挙げられる。これらの樹脂は、得られる着色剤の分散安定性や長期保存安定性の観点から、親水性基と疎水性基を含むことが好ましい。親水性基や疎水性基が導入容易な樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリビニール酢酸系樹脂、ポリビニールスルフォン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ポリピロリドン樹脂、セルロース系樹脂などを挙げることができる。
【0017】
(着色剤:水溶性有機溶剤)
本発明で使用する水溶性有機溶剤は特に限定はなく公知のものを使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0018】
中でも、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0019】
本願においては、前記水溶性有機溶剤が、前記樹脂を溶解、一部溶解若しくは膨潤させると考えられ、該樹脂が溶解、一部溶解若しくは膨潤した状態で顔料と混練することで、顔料の表面に樹脂の均一な被膜を容易に形成することができると考えられる。したがって、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体が得られるものと推定している。
【0020】
このような観点から、前記水溶性有機溶剤は、質量比で後述の顔料の1/5以上使用することが好ましく、1/3以上使用することが最も好ましい。水溶性有機溶剤を質量比で顔料の1/3以上使用することにより、混練工程における開始時から終了時に至るまで、常に一定量の溶剤の存在のもとに混練を進行させることができる。これにより、常に樹脂を溶解状態に保持する事はもとより、樹脂によっては半溶解もしくは膨潤状態に保持しつつ混練工程を進行させることができ、顔料表面への樹脂被覆が良好に行われると推定される。
【0021】
一方、前記樹脂に対する量は任意であるが、質量比で前記樹脂の1/2〜5/1程度、好ましくは1/1〜4/1となるように仕込むことが好ましい。質量比が前記樹脂の1/2未満では、樹脂の種類によっては溶解、部分溶解、または膨潤させることが困難となる場合がある。一方質量比が前記樹脂の5/1を超える量では、得られる混練物の粘度が低下しすぎてしまい十分な混練が行えず、所望の顔料の分散性が得られないおそれがある。
【0022】
(着色剤:顔料)
本発明で使用する顔料は、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。
【0023】
有機顔料としては、例えば、ペリレン・ペリノン系化合物顔料、キナクリドン系化合物顔料、フタロシアニン系化合物顔料、アントラキノン系化合物顔料、フタロン系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料、イソインドリノン系化合物顔料、イソインドリン系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、不溶性アゾ系化合物顔料、溶性アゾ系化合物顔料、縮合アゾ系化合物顔料、アニリンブラック顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例を挙げると、例えば次の通りである。
ペリレン・ペリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentViolet 29、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、C.I.Pigment Black 31、同32、C.I.Pigment Orange 43等の顔料が挙げられる。
キナクリドン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 19、同42、C.I.Pigment Red 122、同202、同206、同207、同209、C.I.Pigment Orange 48、同49等の顔料が挙げられる。
フタロシアニン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、C.I.Pigment Green 7、同36等の顔料が挙げられる。
アントラキノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Yellow 24、同108、C.I.Pigment Red 168、同177、C.I.Pigment Orange 40等の顔料が挙げられる。
フタロン系化合物顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138等の顔料が挙げられる。
ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37等の顔料が挙げられる。
イソインドリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 109、同110、同173、C.I.Pigment Orange 61等の顔料が挙げられる。
イソインドリン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentYellow 139、同185、C.I.Pigment Orange 66、C.I.Pigment Brown 38等の顔料が挙げられる。
ジケトピロロピロール系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentRed 254、同255等の顔料がある。
不溶性アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同97、同130、同151、同152、同154、同156、同165、同166、同167、同170、同171、同172、同174、同175、同176、同180、同181、同188、C.I.Pigment Orange 16、同36、同60、C.I.Pigment Red5、同22、同31、同112、同146、同150、同171、同175、同176、同183、同185、同208、同213、C.I.PigmentViolet 43、同44、C.I.Pigment Blue 25、同26等の顔料が挙げられる。
溶性アゾ系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 53:1、同57:1、同48等の顔料がある。
縮合アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 93、同94、同95、同128、同166、C.I.PigmentOrange 31C.I.Pigment Red 144、同166、同214、同220、同221、同242、同248、同262、C.I.Pigment Brown 41、同42等の顔料がある。
アニリンブラック顔料としては、C.I.Pigment Black 1があげられる。
【0024】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、カーボンブラック、鉄黒、チタンブラック、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー等が挙げられる。
【0025】
前記顔料の前記混合物に対する仕込み量は、なるべく多くすることで、混練物の不揮発分の顔料濃度を高くすることができる。このような観点から仕込み量は、前記混合物全量に対して35質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上であることがなお好ましい。また仕込み量を多くすることで相対的に樹脂仕込み量を減らすことができ、顔料の被覆に寄与しない余剰の樹脂を低減することができる。余剰の樹脂は混練後残存樹脂となって存在するおそれがあり、着色液体とした後非極性溶媒に溶解あるいは膨潤する恐れがあり、着色液体自体の粘度増加や分散性に悪影響を与える恐れがある。
【0026】
また、前記顔料と前記樹脂の含有比率は、質量比で10/0.5〜10/20であることが好ましく、より好ましくは10/0.5〜10/10である。前記樹脂が前記比率よりも少ない場合、得られる着色液体の分散安定性が低下するおそれがあり、一方樹脂が前記比率よりも多いと、遊離樹脂が増加しデバイスとしたときに、着色液体の粘度が必要以上に増加するおそれがある。
【0027】
前記混合物中の固形分比率は、高いほうが、混練中の混練物の粘度を高く保ち、混練中に混練機によって混練物にかけられるシェア(剪断力)を大きくして、混練物中の顔料の粉砕と顔料の樹脂による被覆を同時に進行させることができる。このような観点から、固形分比率は40質量%以上が好ましく、50質量%以上がなお好ましい。
また、粘度を高く一定に保つ観点からも、後述の混練方法は、閉鎖型の混練機を使用し、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練することが必要となる。
【0028】
(着色剤:混練方法)
前記混合物を、密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練することで、本願で使用する着色剤が得られる。
本発明において「閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練する」とは即ち、水溶性有機溶剤等が実質的に蒸発しない様に混練することを意味する。このようにすることで、混練開始から終了までの間、該混合物中に常に一定量の水溶性有機溶剤が存在することとなる。これにより、混練初期に顔料の表面を濡らした水溶性有機溶剤が、当該溶剤によって好ましくは溶解、膨潤あるいは部分溶解した樹脂に置き換えられ、顔料の樹脂による被覆がスムーズに進行し、樹脂で十分に被覆された顔料を得ることができるものと推定している。また、混練終了後においても溶剤が混練開始時とほぼ同量残っており、混練後の混合物の溶解、分散を極めて短時間に進行させることができる。
前記混練中の前記混合物の質量は、質量の変化率が小さいほど混練中の混練条件が一定に保たれるため好ましく、95質量%以上の範囲で維持されるように混練するとなお好ましい。
【0029】
また、撹拌羽根は1軸または多軸であればよいが、高い混練作用を得るためには二つ以上の撹拌羽根のものが好ましい。この様な構成の混練機を用いると、水性顔料分散液用混練物を製造した後、これを同一撹拌槽中で直接水溶性溶剤で希釈し、分散させて、水性顔料分散液を製造することができる。
【0030】
この様な装置としてはヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示される。本発明においては、前記混練機がプラネタリーミキサーであることが好ましい。プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を使用して、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有しており、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少ない。また、羽根の形状が肉厚で、高負荷をかけることができるが、一方では撹拌羽根を撹拌槽中で回す通常の撹拌機の様に使用することも出来る。このため高負荷領域から低負荷領域まで、混練対象にすることができる被混練物の幅が広く、混練終了後の混練物に、そのまま水と水溶性有機溶剤の一方あるいは両方を添加して希釈、撹拌、分散の全てを、混練物をプラネタリーミキサーから取り出さずに、該同じミキサーの中で行うことができる。
また本発明の混練物は、顔料と樹脂からなる固形分比率が高い状態で混練するため、混練物の混練状態に依存して粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは低粘度から高粘度まで広範囲に対応することが可能である。
【0031】
図1〜図3はプラネタリーミキサーの構成の一例を示したものである。図中符号1は撹拌槽であって、この中空円筒形の撹拌槽1は上下に略二分割されている。撹拌槽1の上方部材2の上面の内側には図2に拡大図で示した様に、枠型ブレードからなる撹拌羽根4、5が回転自在に設けられている。
【0032】
そして、撹拌時には上方部材2と下方部材3とが一体化し、閉鎖系となる。そして、図3に示した様に、攪拌羽根4と5の回転軸自体がローター6によって互いに一つの共通な軸の周りを同一方向に位相を180度ずらして回転(公転)するとともに、2本の撹拌羽根4、5がそれぞれ回転(自転、すなわち遊星運動(プラネタリー運動))しながら撹拌槽1内部に装填された混練対象物の混練が行われる。なお、図3に示したのは撹拌槽1の公転1回転における2本の撹拌羽根4、5の先端の軌跡である。このような攪拌羽根の運動により、攪拌羽根の回転軸位置が固定された混練装置よりもさらに優れた混練効率と均一な混練を実施できる。
【0033】
プラネタリーミキサーにおいては、この様な撹拌羽根4、5のプラネタリー運動により、撹拌羽根4、5相互間、および撹拌羽根4、5と撹拌槽1内面との間で強力な剪断力が作用し、高度の撹拌、混練、分散作用が得られる。
【0034】
ここでプラネタリーミキサーで使用される羽根は、フック型、枠型、捻り型等、様々な羽根形状が提案されているが、本発明においては、どのような羽根でも使用可能であり、特定されることは無いが、混練物粘度に耐え得る強度を有することが必要であり、枠型が強度、混練性等の面から好ましい。
【0035】
また、自転、公転の方向、については、同方向、異方向等が考えられるが、使用される原材料の特性により種々使い分けられる。自転、公転の回転数比についても種々の組み合わせが考えられるが、使用される原材料の特性により各々の回転数、及び回転数比を選択することができる。
【0036】
なお、プラネタリーミキサーなどの閉鎖系の混練機を用いて混練すると、時間とともに消費電流が徐々に増加し、およそ30分以内に極大値に達した後、徐々に減少する。
【0037】
すなわち、所定の温度(樹脂の種類などにもよるが、例えば40〜70℃)に加温しつつ、樹脂と、水溶性有機溶剤および顔料を混ぜ合わせていると、樹脂が水溶性有機溶剤にて溶解、一部溶解あるいは膨潤し、粘ちょうとなり、顔料と混合されることにより、撹拌羽根4、5の回転に大きな負荷がかかる。このとき、撹拌羽根4、5相互間およびこれら撹拌羽根4、5と撹拌槽1との間において、材料に大きな剪断力が印加され、顔料の微粉砕が行われるとともに、顔料は材料中に、充分に分散、混合され、樹脂にて被覆される。そして、特にプラネタリーミキサーの様に閉鎖系の混練機を用いると、効果的な混練が行われるため、およそ30分以内に樹脂、顔料、水溶性有機溶剤がほぼ完全に混ざり合い、撹拌羽根4、5にかかる負荷が小さくなる。そのため、消費電流が徐々に減少する。
【0038】
この様に本発明において、プラネタリーミキサーなどの閉鎖系の混練機を用いて混合を行うと、混練時間と混練機(プラネタリーミキサー)の消費電力との関係のグラフにおいて、1つ以上の消費電力の極大値が得られるという特徴が見られる。
【0039】
本発明の混練工程で作製された混練物は、顔料が微粒子化されるとともに、樹脂によって被覆されていることから、前期混練物をそのまま加熱、乾燥、粉砕することで、着色剤を得ることが出来る。乾燥には、箱型乾燥機、真空乾燥機、バンド乾燥機等の公知の乾燥装置を使用することができる。また粉砕には、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の粉砕装置を使用することができる。
【0040】
より強固な被覆状態の着色剤を得たいときは、混練物に水性媒体を添加、混合、撹拌して液体化、低粘度化し水性媒体中に樹脂に被覆された顔料を分散させる混合工程を行うことが好ましい。混合工程では、水性媒体の添加を一括で行うことにより一度に液体化を行ってもよいが、全添加量を分割して添加し、添加後の撹拌で混合物全体が均一になってから後にその次の撹拌を行うようにすることが均一な液体化の実現のためには好ましい。あるいはこのように水性媒体を分割して添加した場合に、必要となる混合工程の時間全体にわたって、少量の水性媒体を連続して添加してもよい。特に水性媒体を添加、混合、撹拌するときの混合物の容量が大きく、撹拌した水性媒体が一様に混合するための期間が係る場合には、水性媒体を分割して添加したり、少量づつ連続添加することが好ましい。
【0041】
ここで使用される水性媒体とは、水、または水と相溶する水溶性有機溶剤を主成分とするものである。またここで用いる水溶性有機溶剤としては、混練工程において使用した水溶性有機溶剤と同様のものを用いることが出来る。
このような水性媒体の添加により、混合物の固形分比は低下し高粘度の液体となる。
本工程においては通常の攪拌機による混合、撹拌のみによって混練物を水性媒体中に分散させることが可能であるが、水性媒体の添加、混合、撹拌を行った後、分散装置を用いて高剪断力をともなう分散処理を行ってもよい。そのような分散装置としては、公知の分散装置を用いることが出来、メディアを用いたものではペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどが挙げられる。またメディアを用いないものとしては、ジュースミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などがあげられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。
混合工程後、ろ過および水洗を行って含水ケーキを得る。ろ過方法としては、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心分離などの公知の方法が使用できる。この含水ケーキを、加熱、乾燥、粉砕することで、着色剤を得ることが出来る。乾燥には、箱型乾燥機、真空乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等の公知の乾燥装置により乾燥することができる。また粉砕には、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の粉砕装置を使用することができる。
【0042】
(着色剤:配合量)
前記非極性溶媒に対する前記着色剤の添加量は1〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10重量%の範囲である。
【0043】
エレクトロウエッティング用の非極性着色液体に使用する着色剤は導電性ができるだけ低いことが望まれるが、例えばカーボンブラックや鉄黒、弁柄、クロムイエローなどの顔料は高い導電性を有するために、そのまま使用すると得られる着色液体の電気伝導度が高くなりすぎてしまう。本願で使用する着色剤は、樹脂で被覆されていることから、得られた着色液体の電気伝導度を低減させることができる。特に、顔料がカーボンブラックや鉄黒などの顔料の場合、デバイスを通過する光の明るさを変調するエレクトロウエッティング方式のデバイスに有用である。
【0044】
(その他の添加物)
本発明の着色液体には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。これらは、導電率を増加させない程度にとどめておくことが望ましい。例えば使用可能な界面活性剤としては、ポリアルキレングリコール及びそれらの誘導体等が挙げられる。また分散剤としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、polyvinyloxazolidones、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリウレタン、およびポリビニルハロゲン等が挙げられる。
【0045】
分散剤としては、一般に顔料分散に使用されている公知の顔料分散剤を使用することができる。例を挙げれば、界面活性剤、顔料の中間体もしくは誘導体、染料の中間体もしくは誘導体、あるいは、ポリエチレンイミン等のポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂などの樹脂型分散剤が挙げられる。これは合成して使用することもできるし、樹脂型分散剤として市販されているものを適宜使用することもできる。
樹脂型分散剤の市販品としては、例えば、ビックケミー社製品の「DISPERBYK−130」、「DISPERBYK−161」、「DISPERBYK−162」、「DISPERBYK−163」、「DISPERBYK−166」、「DISPERBYK−170」、「DISPERBYK−171」、「DISPERBYK−174」、「DISPERBYK−180」、「DISPERBYK−182」、「DISPERBYK−183」、「DISPERBYK−184」、「DISPERBYK−185」、「DISPERBYK−2000」、「DISPERBYK−2001」、「DISPERBYK−2050」、「DISPERBYK−2070」、「DISPERBYK−2096」、「DISPERBYK−2150」、「DISPERBYK−2155」、BASF社製品の「EFKA1503」、「EFKA4008」、「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4020」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4050」、「EFKA4060」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4510」、「EFKA4520」、「EFKA4530」、「EFKA5054」、「EFKA6220」、「EFKA6225」、「EFKA7411」、「EFKA7422」、「EFKA7431」、「EFKA7441」、「EFKA7461」、「EFKA7496」、「EFKA7497」、ルーブリゾール社製品の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37000」、「ソルスパース38000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース42000」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース46000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」、味の素ファインテクノ株式会社製品のアジスパー「PB−711」、「アジスパーPB−821」、「アジスパーPB−822」、「アジスパーPB−814」、「アジスパーPB−824」、エボニック社製品の「TEGO Dispers610」、「TEGO Dispers610S」、「TEGO Dispers630」、「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers651」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers710」、「TEGO Dispers715W」、「TEGO Dispers740W」、「TEGO Dispers750W」、「TEGO Dispers752W」、「TEGO Dispers755W」、「TEGO Dispers760W」、などを用いることができる。
【0046】
(着色液体の製造方法)
本発明の着色液体は、公知の顔料分散体の製造方法によって得ることができる。一例を挙げると、前記着色剤、及び非極性溶媒、必要に応じ前記添加剤を加えた混合物をビーズミル等の通常の分散機を用いて前記樹脂で被覆された色素を分散することで得ることができる。また、予め、ビーズミル等の通常の分散機を用いて高濃度の分散液(ミルベース)を作製後、更に非極性溶媒で所望の粘度に混合攪拌して、希釈することで調整できる。添加剤の添加のタイミングは、種類によって分散する前や分散する後等、適宜選択することができる。
【0047】
顔料を分散させるための攪拌・分散装置としては、ビーズミルの他、たとえば超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなど、公知慣用の各種分散機を使用することができる。
【0048】
このようにして得られた着色液体の比誘電率は25未満であることが好ましい。また、低粘度である方が光変調のスイッチングにおける応答速度を向上させることができる。このためには、着色液体の粘度が25℃において300mPa・s未満、より好ましくは100mPa・s未満が好ましい。
【0049】
(極性溶媒)
本発明の分離液状着色組成物は、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する。
混和しない極性溶媒としては水、グリコール、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、ケトン、アセタール、ケタール、ラクトン類、炭酸塩、ラクタム、ウレタン(カルバメート)、尿素、ピロリジン、ピロリドン、スルホン、スルホキシド、アミド等であり、具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,2−シクロヘキサンカーボネート、グリセリンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトン、アセトフェノン、ピリジン、ジメチルマロン酸、ジアセトンアルコール、ヒドロキシプロピルカルバメート、β−ヒドロキシエチルカルバメート、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、アセトアセトン、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテート、エチル−L−乳酸、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、4H−ピラン−4−オン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、モルホリン、N−エチルモルホリン、N −ホルミルモルホリン、β−プロピオラクトン、β−バレロラクトン、β−ヘキサラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、およびそれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0050】
これらの極性溶媒は、着色液体よりも高い比誘電率を示すことが好ましい。またより高い比誘電率を付与する目的で、極性溶媒中でイオン解離をする塩等の電解質を添加することもできる。イオンは、陽イオンであっても陰イオンであってもよい。具体的には、例えば、ピラゾリン、2−イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾリン−2−チオン、1,2,3−チアゾール、1,2,4−チアゾール、IH−テトラゾール、オキサゾリン、5−オキサゾロン、イソキサゾール、オキサゾール、2−チアゾリン、イソチアゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾすなわち、1,2,4−オキサジアゾすなわち、1,2,5 −オキサジアゾすなわち、1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、LH−ピリジン−2−オン、ピペラジン、ピリジジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、オキサジン、チオモルホリン、オキサジアジン、オキサチアゾン、インドリン、インドール、カルバゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、キノキサリン、フタラジン、1,5−ナフチリジン、フェナジン、ベンゾチアゾール、2H−lの1,4−ベンゾオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン等のカチオンを含む塩を使用することができる。
添加量としては、所望の比誘電率に応じて適宜選択することができる。例えば10重量%以内の範囲内で使用することができる。
【0051】
(着色剤)
前記極性溶媒は、必要に応じて着色されていてもよい。着色剤は色剤として使用されているものなら特に限定はなく、前述の着色剤として使用する有機顔料、無機顔料等が使用できる。
デバイスとして使用する場合は、前記非極性溶媒に使用する色味とは異なる色味の色素を選択することが好ましい。中でも色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好ましい。また、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、必要に応じて緑や白等に着色した液体とし、前記着色液体として黒顔料を使用した変性顔料を使用したブラック(K)に着色した液体をエレクトロウエッティングデバイスのピクセルに導入したものを使用することで、フルカラーの画像表示をさせることも可能である。
【0052】
また前記極性溶媒には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。例えば使用可能な界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体などのノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
(エレクトロウエッティング方式のデバイス)
本発明の着色液体は、外部電場を利用して着色液体を移動させるエレクトロウエッティング方式のデバイスに好適に使用可能である。特に色素として顔料を使用しているので耐光性等に優れる。中でも、画像表示デバイスに使用すること、本発明の効果である分散安定性により、長期間にわたるデバイスの安定駆動を最大限に発揮でき好ましい。
前記非導電性の着色液体を使用できるエレクトロウエッティング方式のデバイスの一例を挙げる。即ち、電極を設けた層の間に表示用空間を備え、該表示用空間には、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。
前記表示用空間の表示側の前記層は着色液体が透視できる透明等の層とされる一方、非表示側の前記層は光散乱層とされ、前記着色液体への電圧印加時に前記表示側空間に前記着色液体がエレクトロウエッティング現象で移動され或いは表示側の表面積を増大させて着色表示させる。
【0054】
前記極性溶媒中に光散乱分子を配合して光散乱流体とすると、前記非表示側の層に光散乱層を配置しない構成とすることができる。
【0055】
具体的には、表示側となる上部層と、貫通孔を有する光散乱体からなる中間層と、下部層とを備え、上部層と中間層との間に表示側上部空間、中間層と下部層との間に下部空間を設け、下部空間、貫通孔、上部空間を密閉された連通流路からなる液体貯留部とする。液体貯留部に、前記前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。これら上下空間を前記貫通孔で連通した着色液体の通路を備え、前記着色液体への電圧の印加の有無で表示側上部空間へ着色液体をエレクトロウエッテイング方式で流入・流出させる。
流入時には光が透過せずに着色画像が表示され、流出時には光が透過し前記光散乱体の光散乱による白色表示が行われ、即ち通過する光の明るさを変調して表示が行われる。
【0056】
前記デバイスでは、上部層に電極を配置すると共に、貫通孔の内面に電極を配置した2端子構造とし、該2端子をスイッチを介して接続し、該スイッチをオン・オフすることで前記表示側の上部空間に着色液体を流入させて着色画像の表示すると共に、前記上部空間から着色流体を流出させて白色散乱画面に切り替えることができる。あるいは、前記2端子構造に代えて、3端子構造としてもよい。
前記3端子構造では、上部空間の上面あるいは/および下面に上部電極、下部空間の上面あるいは/および下面に下部電極、前記白色散乱シートの貫通孔の内面に沿って配置される共通電極を設け、共通電極と上部電極、該共通電極と下部電極に接続すると共に回路開閉手段がそれぞれ介設された上部側電源回路と下部側電源回路を備え、上部側電源回路の回路開閉手段と下部側電源回路の回路開閉手段とを交互に開閉させ、前記上部空間への前記着色液体の流入・流出が切り替えられる表示装置としてもよい。
該3端子構造とすると、上部空間への着色液体の流入・流出を上部側電源回路と下部側電源回路との交互の開閉による行うため、上部空間への着色液体の流入・流出速度を迅速に行うことができる。
【0057】
前記デバイスを前記いずれの構成としても、前記電極の導電性着色液体と接する側には誘電体層を配置することもできる。該誘電体層には、例えば、パリレンあるいは酸化アルミナを含有させ、その層厚を1〜0,1μm程度とすることが好ましい。
また、該誘電体層の表面に、電圧の印加時には親水層となる撥水膜を積層し、着色液体に撥水膜が接触する構成とすると、導電性着色液体を高速で移動あるいは表面積を増減できるため、動画表示として好適とものとできる。
【0058】
前記デバイスは、前記表示用空間を各画素毎に仕切壁で仕切り、各画素毎に用いる前記着色液体はR,G,Bのいずれかの着色液体あるいはC、M、Y,Kのいずれかの液体とし、表示用空間に着色液体が導入されて広がることにより、フルカラーの画像表示をさせ、かつ、該イオン性液体を高速移動させることで、フルカラーの動画表示を行う構成としている。
【0059】
また前記デバイスは、前記表示用空間を光が通過する前後において、R,G,BあるいはC、M、Y,Kのいずれかのカラーフィルターを形成し、さらに光変調を行う構成とすることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下実施例中にあるg、%は質量換算である。
【0061】
(ポリイミド系樹脂(X)の合成方法 ポリエステル(A)の合成)
温度計、撹拌機、窒素導入口、還流管及び水分離器を備えた反応フラスコ内に、キシレン(純正化学製)300.0g、12−ヒドロキシステアリン酸(純正化学製)300.0g及びテトラブチルチタネート(東京化成製)0.1gを仕込み、窒素気流下で160℃まで4時間かけて昇温した。
さらに160℃で4時間加熱し、加熱反応中に生じた水を溜去しポリエステル(A)のキシレン溶液を得た。ポリエステル(A)のキシレン溶液は、固形分濃度が48重量%、数平均分子量が1100で酸価が25mg KOH/gであった。
【0062】
次に、撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、ポリエチレンイミン(エポミンSP−006,日本触媒化学工業(株)製,平均分子量約600)8g、及び、前記ポリエステル(A)のキシレン溶液192gを仕込み、窒素気流下撹拌しながら160℃で4時間反応させた。得られた反応物から減圧下(5mmHg,80℃に加熱)にて揮発分を除去し、数平均分子量が1800、酸価が1mgKOH/g、アミン価が60mgKOH/gである、褐色の粘稠な変性ポリエチレンイミンであるポリイミド系樹脂(X)100gを得た。
【0063】
(実施例1 着色液体)
スチレン/メタクリル酸(MAA)/アクリル酸(AA)=87.7/8.1/4.2(質量比)、酸価=93mgKOH/g、重量平均分子量=7500、ガラス転移点温度:107℃の樹脂(P)360g、三菱化学製のカーボンブラック「#995B」1200g、ジエチレングリコール600gを3Lの加圧ニーダーに仕込み、ニーダーの内温が60℃になるまで加温した。加圧ニーダーの内温が60℃になった時点で混練を開始し30分混練を継続した。この混練物を150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥し、乾燥前後の質量変化により固形分濃度を求めたところ73%であった。従ってこれを仕込み時の固形分濃度と比較し、混練前後の質量変化を算出すると、仕込み時の97.8%の質量が維持されていることになる。
取り出した混練物55.15gをイオン交換水30g、水酸化カリウム0.87g、DEG16.87gの水溶液に加え、分散撹拌機で攪拌、分散した後、下記条件で、アイメックス株式会社製サンドグラインダーにて分散を行い、顔料分散液(A)を得た。
サンドグラインダー条件
ベッセル容量 :800ml
ビーズ :φ2.5mmジルコニアビーズ 640g
回転数 :2500r.p.m.
ジャケット温度 :10℃
分散時間 :3時間
得られた顔料分散液(A)を通常の方法によりろ過、水洗を行った後、150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥後粉砕して、着色剤(A)50gを得た。
【0064】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(A)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(A)を得た。得られた着色液体(A)は流動性に優れた安定な液体であった。
【0065】
(実施例2 着色液体)
実施例1で用いた樹脂(P)を1500g、三菱化学製カーボンブラック#「995B」5000g、8N−水酸化カリウム水溶液428g、ジエチレングリコール3000gを容量50Lのプラネタリーミキサー「PLM−V−50V」(株式会社井上製作所製)に仕込み、ジャケットを60℃に加温し、自転回転数60回転/分、公転回転数20回転/分で撹拌した。
この混練物を150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥し、乾燥前後の質量変化により固形分濃度を求めたところ68.2%であった。従ってこれを仕込み時の固形分濃度と比較し、混練前後の質量変化を算出すると、仕込み時の96.0%の質量が維持されていることになる。
3.5時間混練を継続した後、60℃に加温したイオン交換水を徐々に加えた。最終的にイオン交換水15000gを加え、カーボンブラック濃度が約20%の顔料分散液Cを得た。得られた顔料分散液Cを通常の方法によりろ過、水洗を行った後、150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥後粉砕して、着色剤(B)50gを得た。
【0066】
着色剤(B)を実施例1と同様の方法によりキシレンに分散させ、着色液体(B)を得た。得られた着色液体(B)は、流動性に優れた安定な液体であった。
【0067】
(実施例3 着色液体、及び、分離液状着色組成物)
実施例2で得られた着色剤(B)とデカリンを、表1に記載の比率で全量30gとなるように100mlのポリビンに仕込んだ。0.5mmジルコニアビース180gを更に仕込み、ペイントコンディショナーにより120分分散し、着色液体(C)を得た。得られた着色液体(C)は流動性に優れた安定な液体であった。
【0068】
10mlバイアルに、イオン交換水5g、及び、着色液体(C)0.5gを仕込み、分離液状着色組成物(C1)を得た。これを手で100回攪拌し、24時間後の分離性を目視で確認した。
同様の分離性確認を行うために、イオン交換水の代わりに、特開平10−39800号公報記載のエチレングリコールを用いて、10mlバイアルに、エチレングリコール5g、及び、着色液体(C)0.5gを仕込み、分離液状着色組成物(C2)を得た。これを手で100回攪拌し、24時間後のイオン交換水あるいはエチレングリコールと着色液体(C)との分離性を、目視で確認した。
分離の状態を下記の基準で5段階に分けて評価した。結果を表1に示す。
【0069】
5:イオン交換水もしくはエチレングリコールへの着色は見られず、界面は明瞭で二層に分離している。
4:イオン交換水もしくはエチレングリコールへの着色は見られず、界面はやや不明瞭である。
3:イオン交換水もしくはエチレングリコールへの着色が見られ、界面はやや不明瞭である。
2:イオン交換水もしくはエチレングリコールへの着色が見られ、界面は不明瞭である。
1:二層に分離しない。
【0070】
(実施例4〜6 着色液体、及び、分離液状着色組成物))
使用する着色剤、ポリイミド系樹脂(X)、及びデカリンを、表1に記載のもの及び比率(なお、表中(%)は、質量(%)を示す)で、全量30gとなるように100mlのポリビンに仕込んだ以外は実施例3と同様にして、着色液体(D)〜(F)を得た。いずれも、流動性に優れた安定な液体であった。
実施例3と同様にして分離液状着色組成物(D1)〜(F1)、及び(D2)〜(F2)を得、分離性を目視で確認した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1の結果より、実施例3〜6で得られた分離液状着色組成物(C1)〜(F1)はイオン交換水との分離性に、また、分離液状着色組成物(C2)〜(F2)は、エチレングリコールとの分離性に優れていた。特に分離液状着色組成物(C2)〜(F2)は、分散剤として機能するポリイミド系樹脂(X)を添加することでより分離性が良好となり、添加量を増やすとなお分離性が良好になるという結果が得られた。(実施例3、4、5の結果より)
【0073】
(比較例1)
実施例1で使用した樹脂50gをメチルエチルケトン50gに溶解し、さらにイオン交換水100g、水酸化カリウム4.7gを加えよく撹拌し、樹脂溶液(H1)を作成した。樹脂溶液(H1)をウォータバス温度45℃、40hPaの減圧条件でメチルエチルケトンを除去し、110.7gの樹脂溶解アルカリ水溶液(H1)を得た。得られた樹脂溶解アルカリ水溶液(H1)に水を加え撹拌し、総質量155.6gの樹脂水溶液(H1)を得た。
樹脂水溶液(H1)を24.5g、イオン交換水14.2g、ジエチレングリコール32.6g、三菱化学製のカーボンブラック「#995B」31.5gを混合撹拌し、実施例1と同様の方法でアイメックス株式会社製サンドグラインダーにて分散を行い、顔料分散液(H1)を得た。
得られた顔料分散液(H1)を通常の方法によりろ過、水洗を行った後、150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥後粉砕して、着色剤(H1)35gを得た。
【0074】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(H1)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(H1)を得た。得られた着色液体(H1)は流動性に劣り不安定な分散液であった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】プラネタリーミキサーの構成の一例を示した斜視図。
【図2】プラネタリーミキサーの一部拡大図。
【図3】プラネタリーミキサーにおける撹拌羽根の軌跡を示した説明図。
【符号の説明】
【0076】
1…撹拌槽、
4、5…撹拌羽根
6…ローター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用し、非極性溶媒及び着色剤を含む着色液体であって、前記着色剤が、少なくとも樹脂、水溶性有機溶剤、及び顔料を含む混合物を、密閉可能な撹拌槽と1軸または多軸の撹拌羽根とを備えた閉鎖型の混練機を用い、混練中の前記混合物の質量が混練前の仕込量に対して90質量%以上の範囲で維持されるように混練して得た着色剤であることを特徴とする着色液体。
【請求項2】
前記混合物が、(1)固形分比率が50質量%以上であり、且つ(2)前記水溶性有機溶剤を質量比で前記顔料の1/3以上含む、請求項1に記載の着色液体。
【請求項3】
前記混練機がプラネタリーミキサーである請求項1または2に記載の着色液体。
【請求項4】
前記顔料がカーボンブラックである請求項1〜3のいずれかに記載の着色液体。
【請求項5】
前記光変調方式が、エレクトロウエッティング方式又はエレクトロフルイディック方式である請求項1〜4のいずれかに記載の着色液体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有することを特徴とする分離液状着色組成物。
【請求項7】
着色液体がポリイミド系樹脂を含む請求項6に記載の分離液状着色組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色剤としての使用。
【請求項9】
前記変調方式がエレクトロウエッティング方式である請求項8に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−101297(P2013−101297A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285470(P2011−285470)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】