説明

着色液体、及び分離液状着色組成物

【課題】 分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供する。
【解決手段】 外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用し、非極性溶媒及び着色剤を含む着色液体であって、前記着色剤が、顔料と樹脂と液媒体を含む混合物を、少なくとも減圧可能な構造を有する容器と、顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有し、前記顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした、顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いる分散過程を経た後、前記樹脂に対する貧溶媒を加えて前記顔料を前記樹脂で被覆して得た着色剤である着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電場を利用して液体を移動させる変調方式、特にエレクトロウエッティングデバイスに使用する着色液体、及び分離液状着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
外部電場を利用して液体を移動させる変調方式は、画像表示デバイス、あるいは光学シャッタ、光ピックアップ装置、液体光学レンズ等の光学素子として検討されている。これらの変調方式の代表的なものとしては、電気浸透(electroosmosis)方式、電気泳動(electrophoretic)方式、エレクトロフルイディック(electrofluidic)方式、エレクトロウエッテイング(electrowetting)方式等がある。
【0003】
この中でエレクトロウエッティング方式は、高いコントラスト比と広い視野角を有し、フロントライトやバックライトを必要としないため、消費電力のかからない画像表示デバイスとして検討がなされている。その原理は特許文献1及び2に記載されているように、「電気毛管」と呼ばれる概念に基づき、電圧の印加非印加により、非着色液体中に存在する着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小(あるいは、着色液体中に存在する非着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小)することで、着色画像を形成するものである。
【0004】
このような、分離液状の非着色液体と着色液体とからなる液体(以下、分離液状着色液体と称す)は、分離即ち混和しない必要があることから、一般に、シリコンオイル等の非極性溶媒と、水やアルコール、エチレングリコール等の極性溶媒とが使用され、そのいずれかに着色剤が添加されている。
例えば極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献3には、極性溶媒中に、カチオンとアニオンとを組み合わせた常温溶融塩を含有するイオン性液体と、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン基、水酸基、リン酸基などの官能基を有する自己分散型顔料を添加した着色液体を使用することが開示されている。また特許文献4には、特定の粘度と表面張力を有する極性溶媒中に顔料や染料を添加されてなる、特定の電気伝導度とイオン半径を有する着色液体を使用することが開示されている。
また、非極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献5には、デカン、デカリンもしくはテトラリン等の非極性溶媒中に、有機顔料および/または無機顔料、溶媒可溶性のまたは溶媒分散可能なポリマー分散剤、及び、アルデヒド樹脂またはケトン樹脂を添加した着色液体を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−39800号公報
【特許文献2】特開平10−74055号公報
【特許文献3】特開2008−203282号公報
【特許文献4】WO2011/017446号公報
【特許文献5】特表2011−510336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、使用する着色剤として、特定の分散方法により樹脂で被覆された顔料を使用することで、前記課題を解決することを見出した。
【0008】
即ち本発明は、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用する着色液体であって、
前記着色剤が、顔料と樹脂と液媒体を含む混合物を、少なくとも減圧可能な構造を有する容器と、顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有し、前記顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした、顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いる分散過程を経た後、前記樹脂に対する貧溶媒を加えて前記顔料を前記樹脂で被覆して得た着色剤である着色液体を提供する。
【0009】
また本発明は、前記記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色材としての使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(非極性溶媒)
本発明の着色液体で使用する非極性溶媒は、エレクトロウエッティングデバイスにおいて通常使用されている非極性溶媒であれば、特に限定はなく公知のものを使用できる。具体的には例えば、非水性の直鎖状および/または分枝状または環状の炭素原子数4〜30のアルカン、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、メチルシクロへキサン、特に好ましくは、デカン、ウンデカンおよびドデカンまたはこれらの任意の比率の混合物;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数1〜30のハロアルカン、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロシクロヘキサン、およびそれらの位置異性体;炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、またはこれらの任意の比率の混合物;あるいは水素添加された炭素原子数10〜22の芳香族化合物、好ましくは、テトラリン、シス−デカリンおよびトランス−デカリン、またはこれらの任意の比率の混合物、特に好ましくは、シス−デカリンおよびトランス−デカリン;
【0013】
ハロゲン化炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはジフルオロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはトリフルオロベンゼン、クロロナフタレンまたはフルオロナフタレン、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数4〜22のアルコール、好ましくは、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、またはシクロオクタノール、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状のエーテル、好ましくは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、tert−アミルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグリム、トリグリム、フラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロメチルフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、メトキシベンゼン、メチルチオベンゼン、エトキシベンゼン、およびそれらの位置異性体;
【0014】
直鎖状および/または分枝状および/または環状のケトン、好ましくは、アセトン、トリクロロアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセチルアセトン、およびそれらの位置異性体;
直鎖状および/または分枝状および/または環状のニトロアルカン、好ましくは、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロシクロへキサン、およびそれらの位置異性体;
炭素原子数6〜22のニトロ芳香族化合物、好ましくはニトロベンゼン;直鎖状および/または分枝状および/または環状のアミン、好ましくは、tert−ブチルアミン、ジアミノエタン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルアニリン、およびN、N−ジメチルアニリン、およびそれらの位置異性体;または上記溶媒の任意の比率での混合物が包含される。
中でも、デカン、ドデカン、デカリン、テトラリン、またはそれらの混合物、またはそれらの物質を主成分として含むものが特に好ましい。
【0015】
(着色剤)
本発明で使用する着色剤は、顔料と樹脂と液媒体を含む混合物を、少なくとも減圧可能な構造を有する容器と、顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有し、前記顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした、顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いる分散過程を経た後、前記樹脂に対する貧溶媒を加えて前記顔料を前記樹脂で被覆して得た着色剤である。
【0016】
(着色剤:樹脂)
本発明で使用する樹脂は特に限定はなく各種樹脂を使用することができる。例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系高分子化合物等が挙げられる。これらの樹脂は、得られる着色剤の分散安定性や長期保存安定性の観点から、親水性基と疎水性基を含むことが好ましい。親水性基や疎水性基が導入容易な樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリビニール酢酸系樹脂、ポリビニールスルフォン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ポリピロリドン樹脂、セルロース系樹脂などを挙げることができる。
【0017】
本発明においては、親水性基として酸価を導入した樹脂であると、中和剤である塩基を省することで水溶性あるいは水分散性とすることができ、後述の液媒体として水あるいは水溶性有機溶剤を使用して分散させることができる。樹脂の酸価は特に限定はないが、一般的には10〜200mg/KOHの範囲が汎用される。また樹脂の分子量としては、数平均分子量で1000〜10万の範囲が好ましい。例えば酸価を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸を共重合成分としたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂があげられる。
【0018】
このときに使用する塩基としては、例えば水酸化ナトリウム(カセイソーダ)、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン等の塩基性物質、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミンがあげられる。これらの塩基は単独あるいは組み合わせても良い。また該塩基の使用量は、樹脂の酸基に応じて適宜選択することができる。
【0019】
(着色剤:液媒体)
本発明で使用する液媒体は、前記樹脂の良溶媒であれば特に限定なく使用することができる。例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、酢酸エチルエステル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ピリジン、ピコリン、キノリン等のピリジン系溶媒、アミド類、等樹脂に合わせて選択すれば良い。これらの溶剤は、単独又は複数の組み合わせで樹脂を溶解又は分散するものがよい。
【0020】
また、前記樹脂が前記酸価を有する樹脂であれば、水または水溶性有機溶剤を使用することができる。
水溶性有機溶剤は特に限定はなく公知のものを使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0021】
中でも、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
【0022】
(着色剤:顔料)
本発明で使用する顔料は、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料の中から選ばれる少なくとも一種の顔料である。また、本発明は未処理顔料、処理顔料のいずれでも適用することができる。
【0023】
有機顔料としては、例えば、ペリレン・ペリノン系化合物顔料、キナクリドン系化合物顔料、フタロシアニン系化合物顔料、アントラキノン系化合物顔料、フタロン系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料、イソインドリノン系化合物顔料、イソインドリン系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、不溶性アゾ系化合物顔料、溶性アゾ系化合物顔料、縮合アゾ系化合物顔料、アニリンブラック顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例を挙げると、例えば次の通りである。
ペリレン・ペリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentViolet 29、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、C.I.Pigment Black 31、同32、C.I.Pigment Orange 43等の顔料が挙げられる。
キナクリドン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 19、同42、C.I.Pigment Red 122、同202、同206、同207、同209、C.I.Pigment Orange 48、同49等の顔料が挙げられる。
フタロシアニン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、C.I.Pigment Green 7、同36等の顔料が挙げられる。
アントラキノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Yellow 24、同108、C.I.Pigment Red 168、同177、C.I.Pigment Orange 40等の顔料が挙げられる。
フタロン系化合物顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138等の顔料が挙げられる。
ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37等の顔料が挙げられる。
イソインドリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 109、同110、同173、C.I.Pigment Orange 61等の顔料が挙げられる。
イソインドリン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentYellow 139、同185、C.I.Pigment Orange 66、C.I.Pigment Brown 38等の顔料が挙げられる。
ジケトピロロピロール系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentRed 254、同255等の顔料がある。
不溶性アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同97、同130、同151、同152、同154、同156、同165、同166、同167、同170、同171、同172、同174、同175、同176、同180、同181、同188、C.I.Pigment Orange 16、同36、同60、C.I.Pigment Red5、同22、同31、同112、同146、同150、同171、同175、同176、同183、同185、同208、同213、C.I.PigmentViolet 43、同44、C.I.Pigment Blue 25、同26等の顔料が挙げられる。
溶性アゾ系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 53:1、同57:1、同48等の顔料がある。
縮合アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 93、同94、同95、同128、同166、C.I.PigmentOrange 31C.I.Pigment Red 144、同166、同214、同220、同221、同242、同248、同262、C.I.Pigment Brown 41、同42等の顔料がある。
アニリンブラック顔料としては、C.I.Pigment Black 1があげられる。
【0024】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、カーボンブラック、鉄黒、チタンブラック、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー等が挙げられる。
【0025】
前記顔料の前記液媒体に対する仕込み量は、質量比で0.05〜0.5、好ましくは0.1〜0.3である。
【0026】
また、前記樹脂を使用する場合の、前記顔料と前記樹脂の含有比率は、質量比で0.1〜2.0、好ましくは0.5〜1.5である。
前記樹脂が前記比率よりも少ない場合、得られる着色液体の分散安定性が低下するおそれがあり、一方樹脂が前記比率よりも多いと、遊離樹脂が増加しデバイスとしたときに、着色液体の粘度が必要以上に増加するおそれがある。
【0027】
(着色剤:顔料分散装置)
本発明において使用する顔料分散装置は、少なくとも次の構成を有する。
(1)液媒体(分散媒に対応する)と顔料との混合物を入れる、減圧可能な構造を有する容器を有する。
(2)運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する、顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした、顔料を液媒体に分散させるメジアミルを有する。
(3)顔料を液媒体に安定分散するまで、前記(1)の容器と分散機構との間に、前記(1)の混合物を連続的に循環させる機構を有する。
【0028】
前記メジアミルとしては、公知慣用のビーズミルやボールミルがいずれも使用できるが、例えば、分散技術入門(日刊工業新聞社;小石真純、釣谷泰一著)による分類の、通過型ミル(サンドミル、連続式アトライター、パールミル、モリネックス)及びそれらの変形ミル(ビューラー製DCPミル、日本コークス工業製SCミル、井上製作所製スパイクミル、シンマルエンタープライゼス製ダイノーミルECM、浅田鉄工製ナノグレンミル等)が挙げられる。
【0029】
これらは分散メジア(ボールあるいはビーズ)の磨砕剪断力を利用して顔料の磨砕・分散を行う分散装置であるが、本発明では、減圧下でそれが行えるようにして用いる。
【0030】
中でも、顔料と液媒体との混合物が通過する、運動するメジア群を含む前記分散機構が、ベッセルの内壁に微小間隙を介して、外壁を有する回転可能なロータを有し、その微小間隙にメジアが運動可能となる様に充填されており、ロータを回転させるとともに、顔料と液媒体との混合物を、分散機構中で略栓流となる様にして通過させる様になっている環状メジアミルが、特に好ましい。
【0031】
顔料と液媒体との混合物を安定な顔料分散液とするに当たり、当該混合物を略栓流とするためには、上記に加えて、例えば、ロータ表面に、メジアに回転と衝撃力を与える突起と、当該混合物の流れ方向とは逆方向にメジアが戻される様に溝を形成する様にするのが好ましい。
【0032】
顔料と液媒体との混合物や、顔料分散液を冷却可能なように、少なくとも装置の一部に冷却構造を設けることが好ましい。具体的には、顔料と液媒体との混合物や、顔料分散液と直接接しないように、ロータ内部やベッセル外壁等に、冷却ジャケットを設けて、冷却水等の冷媒を通過させて、分散時の温度を調節する様にするのが好ましい。以下、この様な特に好ましいメジアミルをスパイクミルと称する。
【0033】
メジアミルのロータとベッセルとの微小間隙には分散のためのメジアが充填されている。本発明の分散に用いる分散メジアは、既存のものが使用可能であり、メジア径が細かいほど、密度が大きいほど、回転数が高いほど顔料の粉砕能力はアップする。分散メジアはガラスビーズやセラミックスビーズ、スチールボール、ステンレスボール、架橋樹脂ビーズなどが好ましく、顔料を微粒子にするには、なるべく細かい径のビーズが好ましい。そして、これらのメジアはメジアミルから外部には流出しない様になっている。
【0034】
本発明では、顔料と液媒体との混合物を入れる、減圧可能な構造を有する容器を有するが、顔料と液媒体との混合物を供給する供給容器、及び/又は、顔料が液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を有し、すくなくともいずれか一方から減圧を行う様にする。
【0035】
即ち、本発明では、供給容器と回収容器とを同一として、兼用容器として一つのみ用いる場合と、供給容器と回収容器とを別々に両方用いる場合とがある。前者の場合には、この一つの兼用容器から減圧を行い、後者の場合には、供給容器の圧力に対して、回収容器の圧力が負圧になる様に減圧を行うのが、好ましい。
【0036】
尚、容器に一部に超音波発信機構を設ける様にするのが、同一メジアミルを同一運転条件する場合には、より短時間で、安定な分散液が得られる点で好ましい。
【0037】
顔料を液媒体に安定分散するまで、前記各容器と分散機構との間に、顔料と液媒体との混合物を連続的に循環させる機構を設ける。この機構は、具体的には、管を設けてこれらを連結することにより、設けることが出来る。勿論、この配管部分にジャケットを設けて上記と同様に分散時の温度を調節する様にすることも出来、実際にも、そうすることが好ましい。
【0038】
メジアミルの分散が行われる部分を減圧とするには、例えば脱気をすれば良い。上記容器と管とを連結配管するならば、例えば、顔料と液媒体との混合物を入れておく、減圧可能な構造を有する容器の上方から減圧を行う様にすれば良い。
【0039】
前記分散方法を実施するに当たっての分散温度や圧力は、特に制限されるものではなく、適宜選択すれば良いが、分散温度としては、循環系を全体を1〜20℃、好ましくは1〜10℃とし、循環系の圧力は、1〜500mmHg、好ましくは1〜100mmHgとする。
【0040】
こうした顔料分散装置を用いて前記混合物を、安定な顔料分散液となるまで、繰り返し循環させて、顔料の液媒体への分散を行う。安定な分散液を得るに当たっては、予め種種の条件にて循環の途中にて適宜サンプリングを行い、必要な安定性が保たれる様な条件を見い出してから、その最適条件にて実施することが好ましい。一般的には、分散安定性が一定となり飽和するまで処理作業を行う様にするのが好ましい。
【0041】
図1は、前記顔料分散装置であって、供給タンクと回収タンクが同一であり減圧構造を有する顔料分散装置1Aを示している。黒抜き矢印は、顔料の液媒体との混合物の流れ方向を、白抜き矢印は、装置を一定温度に保つための液媒体を通過させる、ジャケット(後述)内での流れ方向を示す。
【0042】
該顔料分散装置は、脱気要素に相当する脱気用ポンプ(図示せず)と、減圧するのに必要な脱気口6を設けた供給容器兼回収容器であって減圧可能な構造を有する容器に相当するタンク4と、メジアミルと、顔料の液媒体との混合物を連続的に循環させる機構であってタンク4とメジアミルとを連結する管7とからなっている。実使用時には、脱気用ポンプと脱気口6とを管で連結して、系を減圧状態とする。
【0043】
前記タンク4の内部の側部には、超音波発信機構に相当する超音波発振器5が設けられており、一方、前記タンク4と、顔料の液媒体との混合物を供給する側の管4の外部に、ジャケットを設けて、循環系が一定の温度に保てる様な仕組みとなっている。前記タンク4の下部は前記管7により、メジアミルの入口(導入口)に連結されている。逆に、メジアミルの出口(排出口)は、前記タンク4に戻される様に前記管7により連結されており、これにより循環を行う。
【0044】
前記メジアミルの入口に対して、顔料と液媒体との混合物をより安定的に供給する際には供給ポンプ(図示せず)を設ける様にしても良い。
【0045】
前記メジアミルは、ベッセルと、ロータ3とを含み、前記ベッセルの壁2と、前記ロータ3の外壁との間に微小間隙を有しており、この間隙に、上記分散メジアが充填されている。前記ロータ3は環状であり、軸中心に回転する様になっており、顔料の液媒体との混合物を前記管7を通して前記メジアミルの入口から導入し、前記微小間隙に通過させると、前記ロータ3の回転によりメジア群が運動し、その剪断力により、顔料の液媒体への分散が生じ、入口よりもより安定な分散状態となり、前記メジアミルの出口(排出口)から前記管7へ排出される様になっている。前記メジアミルの回転や衝撃力に基づく運動量を大きくし、結果的に前記混合物に大きな剪断力が作用する様に、前記ロータ3の表面には凹凸が設けられている。
【0046】
前記ベッセルの外部にも同様に、ジャケットが設けられ、微小間隙の通過時においても、系内温度が一定の温度に保てる様な仕組みとなっている。
【0047】
こうすることにより、前記混合物や分散安定性が未だ不十分な分散液を減圧しながら循環分散が可能となる。
【0048】
図2は、本発明の供給容器と回収容器とを別々に両方有する、減圧構造を有する顔料分散装置1Bを示す。この装置1Bは、供給容器に対応する供給タンク4Aと、回収容器に対応する回収タンク4Bを有しており、各タンクには、装置1Aと同様に脱気口6と超音波発振器5がそれぞれ設けられている。また、タンク4Aとメジアミルとを連結する管7の一部分に圧力調節弁8を、タンク4Aと4Bを連結する管7の一部分に切替弁9を設けてある。
【0049】
この装置1Bの場合には、供給タンク4Aの圧力に対して、回収タンク4Bの圧力が負圧となる様にして、即ち、前記供給タンク4Aよりも前記回収タンク4Bの方がより高い減圧度となる様にして、顔料の液媒体への分散を行うのが、好ましい。
【0050】
具体的には、前記供給タンク4Aと前記回収タンク4Bを上記した様に個別に設置する場合には、前記供給タンク4A側を常圧か減圧に設定し、さらに前記供給タンク4Aの圧力に対して、前記回収タンク4Bの圧力を負圧になるようにする事により、前記メジアミル中の分散部分で減圧分散可能となる。この際の圧力調節に弁8、9を利用する。
【0051】
この時、顔料と液媒体との混合物を前記メジアミルの入口に供給するための供給ポンプを設けた場合にはそれの負荷を大幅に小さくすることが可能になり、場合によっては供給ポンプが不要となる。前記供給タンク4Aに受けた顔料と液媒体の混合物は、一度常圧に戻してから前記回収タンク4Bに戻して、顔料の液媒体への分散安定性が飽和するまで、循環させて再度繰り返し分散を行うことが可能であるが、前記回収タンク4Bの減圧度以上の吸引ポンプで前記供給タンク4Aに分散液を戻すことによって、常圧に戻すことなく分散を継続することが可能になる。
【0052】
この時、前記メジアミルは、分散部分の供給側に圧損を発生させる弁構造を設けたり、分散部分の断面積が小さく分散部分に大きな圧損が生じる様にした上記変形ミルを用いることが好ましい。
【0053】
図2の装置の場合、前記供給タンク4Aに充填された顔料と液媒体との混合物は、前記タンク4Aと前記回収タンク4Bとの圧力差によって、前記メジアミルのベッセル内に供給されるが、圧力調節弁8を絞ることによりベッセル内での負圧をコントロールすることができる。この時、前記供給タンク4Aと前記回収タンク4Bとの間の切替弁9は閉じられている。
【0054】
当該混合物の分散液が前記回収タンク4Bに回収された時点で、圧力調節弁8が閉じられ、前記供給タンク4Aと前記回収タンク4Bの減圧度を逆転して切替弁8を開放にすると、該混合物は前記供給タンク4Aから前記回収タンク4Bへ移動する。顔料と液媒体の混合物について同様の操作を繰り返すことにより、繰り返しパス分散が可能となる。分散安定性が飽和して安定な分散液となるまでは、この繰り返しで当該混合物の分散安定性はより向上する。
【0055】
尚、当該混合物のメジアミル中での流量あるいは処理量は、循環分散の場合には、供給ポンプを設けると、その供給量で処理量を決定することが出来る。パス方式においては前記供給タンク4Aと前記回収タンク4Bの減圧度の差によって処理量が決定することが出来るが、メジアミルの構造によってはローターの回転数が上がると処理量が増すものもある。例えばSCミルは、ローターの回転に伴う負圧の発生によって吸引効果が生じるためにローターの回転数が上がると処理量が増す。但し、本発明においてメジアミルとして好適なスパイクミルの構造では、回転に伴う吸引力が働かないので、圧力差が支配要因となる。
【0056】
前記顔料分散装置として、少なくとも前記回収タンク4Bの一部に超音波発振器を設置した顔料分散装置は、前記メジアミルによって減圧分散処理された分散液の分散安定性をさらに向上させる。上記装置1Bは、前記供給タンク4Aと前記回収タンク4Bの両方に超音波発振器を設けた、好ましい形態を示してある。
【0057】
また、前記顔料分散装置の循環系を一定温度に保ったり、分散により顔料と液媒体との混合物または安定な分散液が必要以上に加熱されるのを避けるに当たって、前記メジアミルの分散部分、配管、タンクの少なくとも一部を冷却構造にすることで、減圧による顔料と液媒体との混合物または安定な分散液中の揮発成分の蒸発を防止することも出来る。
【0058】
前記ジャケット構造は、顔料と液媒体との混合物または安定な分散液が接する部分になるべく広く設置されることが好ましく、また、冷却に伴う、装置各部の結露や凍結及び機械的な強度低下等の生じないような対策を行うことが好ましい。
【0059】
前記分散過程を経た後は、一部の樹脂は顔料微粒子に吸着せず、分散媒中に溶解している場合があるが、樹脂に対する貧溶媒を加えることによって,液媒体中の固体顔料の微粒子表面を,前記樹脂で被覆することが出来る。
【0060】
前記樹脂に対する貧溶媒としては、水及び/または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤を用いるのが好ましい。これは水のみであっても、前記水溶性有機溶剤の水溶液であっても良い。
【0061】
本発明において、樹脂に対して貧溶媒として作用する有機溶剤は、水の他に,例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類またはそれらのアルキルエーテル類等の水溶性有機溶剤及びそれらの水溶液がある。
【0062】
本発明における水と水溶性有機溶剤の比率は、本発明における効果を達成すれば特に規定されないが,水/有機溶媒の重量比が10/1〜1/1となるような量が好ましい。
【0063】
前述の方法により、樹脂で被覆された顔料を得ることができる。前記被覆された顔料は、液媒体の分散液となっていることから、必要に応じて、加熱乾燥、減圧留去等の方法で液媒体を除去することで、着色剤が得られる。
乾燥には、箱型乾燥機、真空乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等の公知の乾燥装置により乾燥することができる。また粉砕には、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の粉砕装置を使用することができる。
【0064】
(着色剤:配合量)
前記非極性溶媒に対する前記着色剤の添加量は1〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10重量%の範囲である。
【0065】
エレクトロウエッティング用の非極性着色液体に使用する着色剤は導電性ができるだけ低いことが望まれるが、例えばカーボンブラックや鉄黒、弁柄、クロムイエローなどの顔料は高い導電性を有するために、そのまま使用すると得られる着色液体の電気伝導度が高くなりすぎてしまう。本願で使用する着色剤は、樹脂で被覆されていることから、得られた着色液体の電気伝導度を低減させることができる。特に、顔料がカーボンブラックや鉄黒などの顔料の場合、デバイスを通過する光の明るさを変調するエレクトロウエッティング方式のデバイスに有用である。
【0066】
(その他の添加物)
本発明の着色液体には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。これらは、導電率を増加させない程度にとどめておくことが望ましい。例えば使用可能な界面活性剤としては、ポリアルキレングリコール及びそれらの誘導体等が挙げられる。また分散剤としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、polyvinyloxazolidones、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリウレタン、およびポリビニルハロゲン等が挙げられる。市販の分散剤としては、LUBRIZOL社のソルスパース、EVONIK社のTegosperse、BASF社のEFKA、ビックケミー社のDISPERBYK等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
(着色液体の製造方法)
本発明の着色液体は、公知の顔料分散体の製造方法によって得ることができる。一例を挙げると、前記着色剤、及び非極性溶媒、必要に応じ前記添加剤を加えた混合物をビーズミル等の通常の分散機を用いて前記樹脂で被覆された色素を分散することで得ることができる。また、予め、ビーズミル等の通常の分散機を用いて高濃度の分散液(ミルベース)を作製後、更に非極性溶媒で所望の粘度に混合攪拌して、希釈することで調整できる。添加剤の添加のタイミングは、種類によって分散する前や分散する後等、適宜選択することができる。
【0068】
顔料を分散させるための攪拌・分散装置としては、ビーズミルの他、たとえば超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなど、公知慣用の各種分散機を使用することができる。
【0069】
このようにして得られた着色液体の比誘電率は25未満であることが好ましい。また、低粘度である方が光変調のスイッチングにおける応答速度を向上させることができる。このためには、着色液体の粘度が25℃において300mPa・s未満、より好ましくは100mPa・s未満が好ましい。
【0070】
(極性溶媒)
本発明の分離液状着色組成物は、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する。
混和しない極性溶媒としては水、グリコール、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、ケトン、アセタール、ケタール、ラクトン類、炭酸塩、ラクタム、ウレタン(カルバメート)、尿素、ピロリジン、ピロリドン、スルホン、スルホキシド、アミド等であり、具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、1、4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1、2−ブチレンカーボネート、1、2−シクロヘキサンカーボネート、グリセリンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトン、アセトフェノン、ピリジン、ジメチルマロン酸、ジアセトンアルコール、ヒドロキシプロピルカルバメート、β−ヒドロキシエチルカルバメート、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、アセトアセトン、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテート、エチル−L−乳酸、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、4H−ピラン−4−オン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、モルホリン、N−エチルモルホリン、N −ホルミルモルホリン、β−プロピオラクトン、β−バレロラクトン、β−ヘキサラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、およびそれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0071】
これらの極性溶媒は、着色液体よりも高い比誘電率を示すことが好ましい。またより高い比誘電率を付与する目的で、極性溶媒中でイオン解離をする塩等の電解質を添加することもできる。イオンは、陽イオンであっても陰イオンであってもよい。具体的には、例えば、ピラゾリン、2−イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾリン−2−チオン、1、2、3−チアゾール、1、2、4−チアゾール、IH−テトラゾール、オキサゾリン、5−オキサゾロン、イソキサゾール、オキサゾール、2−チアゾリン、イソチアゾール、チアゾール、1、2、3−オキサジアゾすなわち、1、2、4−オキサジアゾすなわち、1、2、5 −オキサジアゾすなわち、1、3、4−オキサジアゾール、1、3、4−チアジアゾール、LH−ピリジン−2−オン、ピペラジン、ピリジジン、1、2、3−トリアジン、1、2、4−トリアジン、オキサジン、チオモルホリン、オキサジアジン、オキサチアゾン、インドリン、インドール、カルバゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、キノキサリン、フタラジン、1、5−ナフチリジン、フェナジン、ベンゾチアゾール、2H−lの1、4−ベンゾオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン等のカチオンを含む塩を使用することができる。
添加量としては、所望の比誘電率に応じて適宜選択することができる。例えば10重量%以内の範囲内で使用することができる。
【0072】
(着色剤)
前記極性溶媒は、必要に応じて着色されていてもよい。着色剤は色剤として使用されているものなら特に限定はなく、前述の着色剤として使用する有機顔料、無機顔料等が使用できる。
デバイスとして使用する場合は、前記非極性溶媒に使用する色味とは異なる色味の色素を選択することが好ましい。中でも色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好ましい。また、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、必要に応じて緑や白等に着色した液体とし、前記着色液体として黒顔料を使用した変性顔料を使用したブラック(K)に着色した液体をエレクトロウエッティングデバイスのピクセルに導入したものを使用することで、フルカラーの画像表示をさせることも可能である。
【0073】
また前記極性溶媒には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。例えば使用可能な界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体などのノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
(エレクトロウエッティング方式のデバイス)
本発明の着色液体は、外部電場を利用して着色液体を移動させるエレクトロウエッティング方式のデバイスに好適に使用可能である。特に色素として顔料を使用しているので耐光性等に優れる。中でも、画像表示デバイスに使用すること、本発明の効果である分散安定性により、長期間にわたるデバイスの安定駆動を最大限に発揮でき好ましい。
前記非導電性の着色液体を使用できるエレクトロウエッティング方式のデバイスの一例を挙げる。即ち、電極を設けた層の間に表示用空間を備え、該表示用空間には、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。
前記表示用空間の表示側の前記層は着色液体が透視できる透明等の層とされる一方、非表示側の前記層は光散乱層とされ、前記着色液体への電圧印加時に前記表示側空間に前記着色液体がエレクトロウエッティング現象で移動され或いは表示側の表面積を増大させて着色表示させる。
【0075】
前記極性溶媒中に光散乱分子を配合して光散乱流体とすると、前記非表示側の層に光散乱層を配置しない構成とすることができる。
【0076】
具体的には、表示側となる上部層と、貫通孔を有する光散乱体からなる中間層と、下部層とを備え、上部層と中間層との間に表示側上部空間、中間層と下部層との間に下部空間を設け、下部空間、貫通孔、上部空間を密閉された連通流路からなる液体貯留部とする。液体貯留部に、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。これら上下空間を前記貫通孔で連通した着色液体の通路を備え、前記着色液体への電圧の印加の有無で表示側上部空間へ着色液体をエレクトロウエッテイング方式で流入・流出させる。
流入時には光が透過せずに着色画像が表示され、流出時には光が透過し前記光散乱体の光散乱による白色表示が行われ、即ち通過する光の明るさを変調して表示が行われる。
【0077】
前記デバイスでは、上部層に電極を配置すると共に、貫通孔の内面に電極を配置した2端子構造とし、該2端子をスイッチを介して接続し、該スイッチをオン・オフすることで前記表示側の上部空間に着色液体を流入させて着色画像の表示すると共に、前記上部空間から着色流体を流出させて白色散乱画面に切り替えることができる。あるいは、前記2端子構造に代えて、3端子構造としてもよい。
前記3端子構造では、上部空間の上面あるいは/および下面に上部電極、下部空間の上面あるいは/および下面に下部電極、前記白色散乱シートの貫通孔の内面に沿って配置される共通電極を設け、共通電極と上部電極、該共通電極と下部電極に接続すると共に回路開閉手段がそれぞれ介設された上部側電源回路と下部側電源回路を備え、上部側電源回路の回路開閉手段と下部側電源回路の回路開閉手段とを交互に開閉させ、前記上部空間への前記着色液体の流入・流出が切り替えられる表示装置としてもよい。
該3端子構造とすると、上部空間への着色液体の流入・流出を上部側電源回路と下部側電源回路との交互の開閉による行うため、上部空間への着色液体の流入・流出速度を迅速に行うことができる。
【0078】
前記デバイスを前記いずれの構成としても、前記電極の導電性着色液体と接する側には誘電体層を配置することもできる。該誘電体層には、例えば、パリレンあるいは酸化アルミナを含有させ、その層厚を1〜0、1μm程度とすることが好ましい。
また、該誘電体層の表面に、電圧の印加時には親水層となる撥水膜を積層し、着色液体に撥水膜が接触する構成とすると、導電性着色液体を高速で移動あるいは表面積を増減できるため、動画表示として好適とものとできる。
【0079】
前記デバイスは、前記表示用空間を各画素毎に仕切壁で仕切り、各画素毎に用いる前記着色液体はR、G、Bのいずれかの着色液体あるいはC、M、Y、Kのいずれかの液体とし、表示用空間に着色液体が導入されて広がることにより、フルカラーの画像表示をさせ、かつ、該イオン性液体を高速移動させることで、フルカラーの動画表示を行う構成としている。
【0080】
また前記デバイスは、前記表示用空間を光が通過する前後において、R、G、BあるいはC、M、Y、Kのいずれかのカラーフィルターを形成し、さらに光変調を行う構成とすることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下実施例中にあるg、%は質量換算である。
【0082】
(実施例1)
三菱化学製のカーボンブラック「#995B」20gとスチレン−アクリル酸−メタクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13;分子量7400・酸価160)10gを、水200g、カセイソーダ1g、の混合溶液に入れ、室温で分散撹拌機を用いて3時間撹拌し予備分散液(A)を得た。
【0083】
直径0.3mmのジルコニアビーズを分散メヂアとした、井上製作所製のスパイクミルを準備し、上記で得られた予備分散液(A)を供給兼回収タンクに入れ,タンク及び配管全体を5℃に冷却しながら30mmHgに減圧して8時間連続分散を行い、樹脂で被覆して得た黒色顔料を含む黒色着色樹脂粒子分散液(A)を得た。尚、顔料分散に当たり、装置は図1に示す通りに構成した。
【0084】
得られた黒色着色樹脂粒子分散液(A)200gを、ジエチレングリコール40g、プロピレングリコールプロピルエーテル10g、水150gからなる水溶液に撹拌しながら少しずつ加え、30mmHgで4時間撹拌を行い、0.5μmフィルターを用いて減圧ろ過を行った後、80℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥粉砕して着色剤(A)を得た。
【0085】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(A)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(A)を得た。得られた着色液体(A)は流動性に優れた安定な液体であった。
【0086】
(実施例2)
三菱化学製のカーボンブラック「#995B」20gとスチレン−アクリル酸−メタクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=87.7/8.1/4.2;分子量5万・酸価93mgKOH/g)20gを、水210g、グリセリン35g、トリエタノールアミン8g、メチルエチルケトン90g、イソプロピルアルコール40gの混合溶液に入れ、室温で分散撹拌機を用いて4時間撹拌し予備分散液(B)を得た。
【0087】
直径0.3mmのジルコニアビーズを分散メヂアとした、井上製作所製のスパイクミルを準備し、上記で得られた予備分散液(B)を供給兼回収タンクに入れ、タンク及び配管全体を5℃に冷却しながら30mmHgに減圧して8時間連続分散を行い、樹脂で被覆して得た黒色顔料を含む黒色着色樹脂粒子分散液(B−1)を得た。尚、顔料分散に当たり,装置は図1に示す通りに構成した。
【0088】
得られた黒色着色樹脂粒子分散液(B−1)に30mmHgで減圧撹拌しながら、グリセリン30gと水210gの混合液を毎分5mlの速度で滴下し、その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールを留去し、さらに濃縮を行い、カーボンブラック含有量8%の黒色着色樹脂粒子分散液(B−2)を得た。
【0089】
得られた黒色着色樹脂粒子分散液(B−2)200gを、グリセリン40g、プロピレングリコールプロピルエーテル10g、水75gを加え30mmHgで4時間撹拌を行い、0.5μmフィルターを用いて減圧ろ過を行った後、80℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥粉砕して着色剤(B)を得た。
【0090】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(B)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(B)を得た。得られた着色液体(B)は流動性に優れた安定な液体であった。
【0091】
(比較例1)
実施例1で使用した予備分散液(A)をアイメックス株式会社製サンドグラインダーにて分散を行い、顔料分散液(H1)を得た。
得られた顔料分散液(H1)を通常の方法によりろ過、水洗を行った後、150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥後粉砕して、着色剤(H1)35gを得た。
【0092】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(H1)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(H1)を得た。得られた着色液体(H1)は流動性に劣り不安定な分散液であった。
【0093】
(比較例2)
実施例2で使用した予備分散液(B)をアイメックス株式会社製サンドグラインダーにて分散を行い、顔料分散液(H2)を得た。
得られた顔料分散液(H2)を通常の方法によりろ過、水洗を行った後、150℃の容器温度の真空乾燥機で5時間以上乾燥後粉砕して、着色剤(H2)35gを得た。
【0094】
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(H2)10g、3mmガラスビーズ150g、キシレン32.5gを加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5gを加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(H2)を得た。得られた着色液体(H2)は流動性に劣り不安定な分散液であった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の供給タンクと回収タンクが同一である,減圧構造を有するメジアミル。。
【図2】本発明の供給タンクの圧力に対して,回収タンクの圧力が負圧になるような減圧構造を有するメジアミル。
【符号の説明】
【0096】
1A 分散装置A
1B 分散装置B
2 ベッセルの壁
3 ローター
4 タンク
5 超音波発振器
6 脱気口
7 管
8 圧力調節弁
切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用し、非極性溶媒及び着色剤を含む着色液体であって、
前記着色剤が、顔料と樹脂と液媒体を含む混合物を、少なくとも減圧可能な構造を有する容器と、顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有し、前記顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした、顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いる分散過程を経た後、前記樹脂に対する貧溶媒を加えて前記顔料を前記樹脂で被覆して得た着色剤であることを特徴とする、着色液体。
【請求項2】
前記分散過程が、前記顔料分散装置内で前記混合物を循環させて、減圧下で前記顔料を前記液媒体に安定分散させ、前記減圧可能な容器として、前記混合物を供給する供給容器、及び前記顔料が前記液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を別々に両方有し、すくなくともいずれか一方から減圧を行い、供給容器の圧力に対して、回収容器の圧力が負圧にする分散過程である請求項1に記載の着色液体。
【請求項3】
前記樹脂に対する貧溶媒を加えて前記顔料を前記樹脂で被覆して得た後、前記貧溶媒を除去する請求項1または2に記載の着色液体。
【請求項4】
前記顔料がカーボンブラックである請求項1〜3のいずれかに記載の着色液体。
【請求項5】
前記光変調方式が、エレクトロウエッティング方式又はエレクトロフルイディック方式である請求項1〜4のいずれかに記載の着色液体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有することを特徴とする分離液状着色組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色剤としての使用。
【請求項8】
前記変調方式がエレクトロウエッティング方式である請求項7に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−105011(P2013−105011A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248588(P2011−248588)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】