説明

着色液体、及び分離液状着色組成物

【課題】 分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供する。
【解決手段】 外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用する着色液体であって、前記着色液体が、非極性溶媒及び着色剤を含み、前記着色剤が、樹脂で被覆された色素である着色液体。前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有することを特徴とする分離液状着色組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電場を利用して液体を移動させる変調方式、特にエレクトロウエッティングデバイスに使用する着色液体、及び分離液状着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
外部電場を利用して液体を移動させる変調方式は、画像表示デバイス、あるいは光学シャッタ、光ピックアップ装置、液体光学レンズ等の光学素子として検討されている。これらの変調方式の代表的なものとしては、電気浸透(electroosmosis)方式、電気泳動(electrophoretic)方式、エレクトロフルイディック(electrofluidic)方式、エレクトロウェッティング(electrowetting)方式等がある。
【0003】
この中でエレクトロウエッティング方式は、高いコントラスト比と広い視野角を有し、フロントライトやバックライトを必要としないため、消費電力のかからない画像表示デバイスとして検討がなされている。その原理は特許文献1及び2に記載されているように、「電気毛管」と呼ばれる概念に基づき、電圧の印加非印加により、非着色液体中に存在する着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小(あるいは、着色液体中に存在する非着色液体からなる液滴を拡大ないし縮小)することで、着色画像を形成するものである。
【0004】
このような、分離液状の非着色液体と着色液体とからなる液体(以下、分離液状着色液体と称す)は、分離即ち混和しない必要があることから、一般に、シリコンオイル等の非極性溶媒と、水やアルコール、エチレングリコール等の極性溶媒とが使用され、そのいずれかに着色剤が添加されている。
例えば極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献3には、極性溶媒中に、カチオンとアニオンとを組み合わせた常温溶融塩を含有するイオン性液体と、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、スルホン基、水酸基、リン酸基などの官能基を有する自己分散型顔料を添加した着色液体を使用することが開示されている。また特許文献4には、特定の粘度と表面張力を有する極性溶媒中に顔料や染料を添加されてなる、特定の電気導電度とイオン半径を有する着色液体を使用することが開示されている。
また、非極性溶媒中に着色剤を添加する例として、特許文献5には、デカン、デカリンもしくはテトラリン等の非極性溶媒中に、有機顔料および/または無機顔料、溶媒可溶性のまたは溶媒分散可能なポリマー分散剤、及び、アルデヒド樹脂またはケトン樹脂を添加した着色液体を使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−39800号公報
【特許文献2】特開平10−74055号公報
【特許文献3】特開2008−203282号公報
【特許文献4】WO2011/017446号公報
【特許文献5】特表2011−510336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、使用する着色剤として、樹脂で被覆された色素を使用することで、前記課題を解決することを見出した。
【0008】
即ち本発明は、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用する着色液体であって、前記着色液体が、非極性溶媒及び着色剤を含み、前記着色剤が、樹脂で被覆された色素である着色液体を提供する。
【0009】
また本発明は、前記記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、前記記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色材としての使用を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、分散安定性に優れ、安定なエレクトロウエッティングデバイスを得ることのできる着色液体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(非極性溶媒)
本発明の着色液体で使用する非極性溶媒は、エレクトロウエッティングデバイスにおいて通常使用されている非極性溶媒であれば、特に限定はなく公知のものを使用できる。具体的には例えば、非水性の直鎖状および/または分枝状または環状の炭素原子数4〜30のアルカン、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、メチルシクロへキサン、特に好ましくは、デカン、ウンデカンおよびドデカンまたはこれらの任意の比率の混合物;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数1〜30のハロアルカン、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロシクロヘキサン、およびそれらの位置異性体;炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、またはこれらの任意の比率の混合物;あるいは水素添加された炭素原子数10〜22の芳香族化合物、好ましくは、テトラリン、シス−デカリンおよびトランス−デカリン、またはこれらの任意の比率の混合物、特に好ましくは、シス−デカリンおよびトランス−デカリン;
【0013】
ハロゲン化炭素原子数6〜22の芳香族化合物、好ましくは、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジクロロベンゼンまたはジフルオロベンゼン、トリクロロベンゼンまたはトリフルオロベンゼン、クロロナフタレンまたはフルオロナフタレン、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状の炭素原子数4〜22のアルコール、好ましくは、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、またはシクロオクタノール、およびそれらの位置異性体;直鎖状および/または分枝状および/または環状のエーテル、好ましくは、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−アミルメチルエーテル、tert−アミルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグリム、トリグリム、フラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロメチルフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、メトキシベンゼン、メチルチオベンゼン、エトキシベンゼン、およびそれらの位置異性体;
【0014】
直鎖状および/または分枝状および/または環状のケトン、好ましくは、アセトン、トリクロロアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセチルアセトン、およびそれらの位置異性体;
直鎖状および/または分枝状および/または環状のニトロアルカン、好ましくは、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロシクロへキサン、およびそれらの位置異性体;
炭素原子数6〜22のニトロ芳香族化合物、好ましくはニトロベンゼン;直鎖状および/または分枝状および/または環状のアミン、好ましくは、tert−ブチルアミン、ジアミノエタン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルアニリン、およびN,N−ジメチルアニリン、およびそれらの位置異性体;または上記溶媒の任意の比率での混合物が包含される。
中でも、デカン、ドデカン、デカリン、テトラリン、またはそれらの混合物、またはそれらの物質を主成分として含むものが特に好ましい。
【0015】
(着色剤:色素)
本発明で使用する着色剤は、樹脂で被覆された色素である。色素としては、顔料や染料等が挙げられるが、本発明においては、耐候性等の観点から顔料を使用することが好ましい。顔料としては、公知慣用の有機顔料あるいは無機顔料を使用することができる。
【0016】
有機顔料としては、例えば、ペリレン・ペリノン系化合物顔料、キナクリドン系化合物顔料、フタロシアニン系化合物顔料、アントラキノン系化合物顔料、フタロン系化合物顔料、ジオキサジン系化合物顔料、イソインドリノン系化合物顔料、イソインドリン系化合物顔料、ジケトピロロピロール系化合物顔料、不溶性アゾ系化合物顔料、溶性アゾ系化合物顔料、縮合アゾ系化合物顔料、アニリンブラック顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例を挙げると、例えば次の通りである。
ペリレン・ペリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentViolet 29、C.I.Pigment Red 123、同149、同178、同179、C.I.Pigment Black 31、同32、C.I.Pigment Orange 43等の顔料が挙げられる。
キナクリドン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 19、同42、C.I.Pigment Red 122、同202、同206、同207、同209、C.I.Pigment Orange 48、同49等の顔料が挙げられる。
フタロシアニン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、C.I.Pigment Green 7、同36等の顔料が挙げられる。
アントラキノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Yellow 24、同108、C.I.Pigment Red 168、同177、C.I.Pigment Orange 40等の顔料が挙げられる。
フタロン系化合物顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138等の顔料が挙げられる。
ジオキサジン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Violet 23、同37等の顔料が挙げられる。
イソインドリノン系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 109、同110、同173、C.I.Pigment Orange 61等の顔料が挙げられる。
イソインドリン系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentYellow 139、同185、C.I.Pigment Orange 66、C.I.Pigment Brown 38等の顔料が挙げられる。
ジケトピロロピロール系化合物顔料としては、例えばC.I.PigmentRed 254、同255等の顔料がある。
不溶性アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同55、同73、同74、同81、同83、同97、同130、同151、同152、同154、同156、同165、同166、同167、同170、同171、同172、同174、同175、同176、同180、同181、同188、C.I.Pigment Orange 16、同36、同60、C.I.Pigment Red5、同22、同31、同112、同146、同150、同171、同175、同176、同183、同185、同208、同213、C.I.PigmentViolet 43、同44、C.I.Pigment Blue 25、同26等の顔料が挙げられる。
溶性アゾ系化合物顔料としては、例えばC.I.Pigment Red 53:1、同57:1、同48等の顔料がある。
縮合アゾ系化合物顔料としては、例えば C.I.Pigment Yellow 93、同94、同95、同128、同166、C.I.PigmentOrange 31C.I.Pigment Red 144、同166、同214、同220、同221、同242、同248、同262、C.I.Pigment Brown 41、同42等の顔料がある。
アニリンブラック顔料としては、C.I.Pigment Black 1があげられる。
【0017】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、カーボンブラック、鉄黒、チタンブラック、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー等が挙げられる。
【0018】
また、染料としては、例えば、C.I.アシッド ブラック1、2、7、16、17、24、26、28、31、41、48、52、58、60、63、94、107、109、112、118、119、121、122、131、155、156;C.I.アシッド イエロー1、3、4、7、11、12、13、14、17、18、19、23、25、29、34、38、40、41、42、44、49、53、55、59、61、71、72、76、78、79、99、111、114、116、122、135、142、161、172、;C.I.アシッド オレンジ7、8、10、19、20、24、28、33、41、45、51、56、64;C.I.アシッド レッド1、4、6、8、13、14、15、18、19、21、26、27、30、32、34、35、37、40、42、44、51、52、54、57、80、82、83、85、87、88、89、92、94、97、106、108、110、111、114、115、119、129、131、133、134、135、143、143:1、144、152、154、155、172、176、180、184、186、187、249、254、256、289、317、318;C.I.アシッド バイオレット7、11、15、34、35、41、43、49、51、75;C.I.アシッド ブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、49、51、53、55、56、59、62、78、80、81、83、90、92、93、102、104、111、113、117、120、124、126、138、145、167、171、175、183、229、234、236、249;C.I.アシッド グリーン3、9、12、16、19、20、25、27、41、44;C.I.アシッド ブラウン4、14等の酸性染料や、
【0019】
C.I.ベイシック ブラック2.8;C.I.ベイシック イエロー1、2、11、12、14、21、32、36;C.I.ベイシック オレンジ2、15、21、22;C.I.ベイシック レッド1、2、9、12、13、37;C.I.ベイシック バイオレット1、3、7、10、14;C.I.ベイシック ブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28、29;C.I.ベイシック グリーン1、4;ベイシック ブラウン1、12等の塩基性染料や、
【0020】
C.I.ダイレクト ブラック2、4、9、11、14、17、19、22、27、32、36、38、41、48、49、51、56、62、71、74、75、77、78、80、105、106、107、108、112、113、117、132、146、154、168、171、194;I.C.ダイレクト イエロー1、2、4、8、11、12、24、26、27、28、33、34、39、41、42、44、50、51、58、72、85、86、87、88、98、100、110、127、135、141、142、144;C.I.ダイレクト オレンジ6、8、10、26、29、41、49、52、102;C.I.ダイレクト レッド1、2、4、8、9、11、13、15、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、47、48、51、59、62、63、73、75、77、80、81、83、84、85、87、89、90、94、95、99、101、108、110、145、189、197、220、224、225、226、227、230、250、254、256、257;C.I.ダイレクト バイオレット1、7、9、12、35、48、51、90、94;C.I.ダイレクト ブルー1、2、6、8、15、22、25、34、69、70、71、72、75、76、78、80、81、82、83、86、90、98、106、110、110、120、123、158、163、165、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、218、236、237、239、246、258、287;ダイレクト グリーン1、6、8、28、33、37、63、64;C.I.ダイレクト ブラウン1A、2、6、25、27、44、58、95、10、101、106、112、173、194、195、209、210、211等の直接染料や、
【0021】
C.I.リアクテブ ブラック1、3、5、6、8、12、14;C.I.リアクテブ イエロー1、2、3、13、14、15、17;C.I.リアクテブ オレンジ2、5、7、16、20、24;、リアクテブ レッド6、7、11、12、15、17、21、23、24、35、36、42、63、66、84、184;C.I.リアクテブ バイオレット2、4、5、8、9;C.I.リアクテブ ブルー2、5、7、12、13、14、15、17、18、19、20、21、25、27、28、37、38、40、41;C.I.リアクテブ グリーン5、7;リアクテブ ブラウン1、7、16等の反応性染料や、
【0022】
C.I.フード ブラック1、2;C.I.フード イエロー3、4、5;C.I.フード レッド2、3、7、9、14、52、87、92、94、102、104、105、106;C.I.フード バイオレット2;C.I.フード ブルー1、2;C.I.フード グリーン2、3等の食品用色素等が挙げられる。
【0023】
(被覆樹脂)
前記色素を被覆する樹脂としては特に限定はなく、各種樹脂を使用することができる。例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系高分子化合物等が挙げられる。また樹脂の被覆方法としても、特に限定はなく公知の方法で被覆された色素を得ることができる。例えば溶媒として水を使用する方法は、色素が顔料である場合に特に有効である。具体的な例としては、例えば、前記樹脂を溶解させた溶液中に色素を加え樹脂の溶解性を変化させて色素に樹脂を被覆させる方法や、樹脂と色素を強制混練させて色素に樹脂を被覆させる方法、色素の存在下で樹脂原料であるモノマーを反応させながら色素に樹脂を被覆させる方法等が挙げられる。
【0024】
例えば、色素表面に反応性化合物を吸着させた後、重合開始剤を加えて重合させる方法がある。具体的な例としては、高分子を構成する分子鎖(主鎖又は側鎖)中、又は分子鎖末端にメルカプト基を有するか、又は、アゾ系重合開始剤又は過酸化物系重合開始剤が化学的に結合した状態で導入された構造を有する、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸等の水溶性高分子の溶液中に顔料粒子を分散させて、顔料粒子表面に前記水溶性高分子を吸着させる第一工程、及び吸着処理された顔料粒子の水性分散液に、ビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルシアン化合物、N−置換マレイミド誘導体等のビニル単量体を加え、重合開始剤の存在下、重合を行って、顔料粒子表面に重合体層を形成させる第二工程により、樹脂で被覆された色素を得ることができる。
【0025】
また、重合性界面活性剤を使用する方法もある。具体的な例としては、水性有機溶媒および/または水中において、色素と重合性ノニオン性およびアニオン性の両方の親水性を有する重合性界面活性剤とを加えて、超音波、ボールミルあるいはサンドグラインダーなどにより分散し湿式粉砕した後に、必要に応じて粉砕処理を続けながら、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等のモノマーと重合開始剤とを加えて、40〜100℃で10〜60時間重合反応させることにより、樹脂で被覆された色素を得ることができる。
【0026】
また、顔料表面でグラフト重合させる方法もある。具体的な例としては、水性有機溶媒および/または水中において、シランカップリング処理をした顔料に、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等のモノマーを反応させることで、色素で被覆された色素を得ることができる。
【0027】
また、両性ポリマーと色素を有機溶媒中で分散後、水相に転相乳化する方法もある。具体的な例としては、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系高分子化合物であって、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子化合物の中和物と顔料とを含有する混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、もしくは水中に該有機溶媒相を投入することにより自己分散(転相乳化)させることで、樹脂で被覆された色素を得ることができる。
【0028】
また、溶媒として非水溶媒を使用する方法もある。具体的な例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、エクソン社のアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、フィリップ石油社のソルトール、出光石油化学社のIPソルベント、石油ナフサではシェル石油化学社のS.B.R.、シェルゾール70、シエルゾール71、モービル石油社のベガゾール等の非水溶媒中で、必要によりロジン処理、ポリマー処理、グラフト化処理、プラズマ処理等の方法で表面処理した色素を該非水溶媒中に微粒子状に分散して得た着色成分微粒子をシード粒子として、炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、モノクロロ酢酸、トリフロロプロピオン酸等)のビニルエステル類あるいはアリルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸の炭素数1〜4の置換されてもよいアルキルエステル類またはアミド類;スチレン誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;マレイン酸、イタコン酸の環状酸無水物;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;重合性二重結合基含有のヘテロ環化合物等の一官能性重合性単量体の少なくとも一種と、該非水溶媒に溶媒和する部分と、該非水溶媒に溶媒和しにくく、重合により生成する樹脂粒子に会合又は吸着しやすい部分を持っているような、非水溶媒中に可溶な分散安定化剤を加えた分散液を、重合開始剤の存在下に分散重合させることで、樹脂で被覆された色素を得ることができる。
【0029】
(色素:配合量)
前記非極性溶媒に対する前記色素の添加量は1〜50重量%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10重量%の範囲である。
顔料を樹脂で被覆することで、媒体中に安定に顔料分散させることができ、より色素濃度の高い着色液体とすることができる。従って樹脂で被覆された色素を使用した着色液体は、同種の顔料を使用した場合と比較すると、同じ配合量であってもより高い着色度を得ることができる。
【0030】
(その他の添加物)
本発明の着色液体には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。これらは、導電率を増加させない程度にとどめておくことが望ましい。 例えば使用可能な界面活性剤としては、ポリアルキレングリコール及びそれらの誘導体等が挙げられる。また分散剤としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、polyvinyloxazolidones、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリウレタン、およびポリビニルハロゲン等が挙げられる。市販の分散剤としては、LUBRIZOL社のソルスパース、EVONIK社のTegosperse、BASF社のEFKA、ビックケミー社のDISPERBYK等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
(着色液体の製造方法)
本発明の着色液体は、公知の顔料分散体の製造方法によって得ることができる。
一例を挙げると、前記樹脂で被覆された色素、及び非極性溶媒、必要に応じ前記添加剤を加えた混合物をビーズミル等の通常の分散機を用いて前記樹脂で被覆された色素を分散することで得ることができる。また、予め、ビーズミル等の通常の分散機を用いて高濃度の分散液(ミルベース)を作製後、更に非極性溶媒で所望の粘度に混合攪拌して、希釈することで調整できる。添加剤の添加のタイミングは、種類によって分散する前や分散する後等、適宜選択することができる。
【0032】
顔料を分散させるための攪拌・分散装置としては、ビーズミルの他、たとえば超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなど、公知慣用の各種分散機を使用することができる。
【0033】
このようにして得られた着色液体の比誘電率は25未満であることが好ましい。また、低粘度である方が光変調のスイッチングにおける応答速度を向上させることができる。このためには、着色液体の粘度が25℃において300mPa・s未満、より好ましくは100mPa・s未満が好ましい。
【0034】
(極性溶媒)
本発明の分離液状着色組成物は、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する。
混和しない極性溶媒としては水、グリコール、アルコール、ポリオール、エーテル、エステル、ケトン、アセタール、ケタール、ラクトン類、炭酸塩、ラクタム、ウレタン(カルバメート)、尿素、ピロリジン、ピロリドン、スルホン、スルホキシド、アミド等であり、具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,2−シクロヘキサンカーボネート、グリセリンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトン、アセトフェノン、ピリジン、ジメチルマロン酸、ジアセトンアルコール、ヒドロキシプロピルカルバメート、β−ヒドロキシエチルカルバメート、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、アセトアセトン、シクロヘキサノン、エチルアセトアセテート、エチル−L−乳酸、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、4H−ピラン−4−オン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、モルホリン、N−エチルモルホリン、N −ホルミルモルホリン、β−プロピオラクトン、β−バレロラクトン、β−ヘキサラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、およびそれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0035】
これらの極性溶媒は、着色液体よりも高い比誘電率を示すことが好ましい。またより高い比誘電率を付与する目的で、極性溶媒中でイオン解離をする塩等の電解質を添加することもできる。イオンは、陽イオンであっても陰イオンであってもよい。
具体的には、例えば、ピラゾリン、2−イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾリン−2−チオン、1,2,3−チアゾール、1,2,4−チアゾール、IH−テトラゾール、オキサゾリン、5−オキサゾロン、イソキサゾール、オキサゾール、2−チアゾリン、イソチアゾール、チアゾール、1,2,3−オキサジアゾすなわち、1,2,4−オキサジアゾすなわち、1,2,5 −オキサジアゾすなわち、1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、LH−ピリジン−2−オン、ピペラジン、ピリジジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、オキサジン、チオモルホリン、オキサジアジン、オキサチアゾン、インドリン、インドール、カルバゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、キノキサリン、フタラジン、1,5−ナフチリジン、フェナジン、ベンゾチアゾール、2H−lの1,4−ベンゾオキサジン、フェノキサジン、フェノチアジン等のカチオンを含む塩を使用することができる。
添加量としては、所望の比誘電率に応じて適宜選択することができる。例えば10重量%以内の範囲内で使用することができる。
【0036】
(着色剤)
前記極性溶媒は、必要に応じて着色されていてもよい。着色剤は色剤として使用されているものなら特に限定はなく、前述の被覆された色素として使用する有機顔料、無機顔料、染料等が使用できる。デバイスとして使用する場合は、前記非極性溶媒に使用する色味とは異なる色味の色素を選択することが好ましい。
中でも、色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好ましい。また、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、必要に応じて緑や白等に着色した液体とし、前記着色液体として黒顔料を使用した変性顔料を使用して、エレクトロウエッティングデバイスのピクセルに導入したものを使用することで、フルカラーの画像表示をさせることも可能であ
る。
【0037】
また前記極性溶媒には、その他、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、保存料、粘度安定剤、粉砕助剤、充填剤、沈殿防止剤、光保護剤、酸化防止剤、殺生物剤、脱気剤/消泡剤、発泡抑制剤、ベーキング防止剤等添加剤を加えても良い。例えば使用可能な界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩などのアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体などのノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
(エレクトロウエッティング方式のデバイス)
本発明の着色液体は、外部電場を利用して着色液体を移動させるエレクトロウエッティング方式のデバイスに好適に使用可能である。特に色素として顔料を使用しているので耐光性等に優れる。中でも、画像表示デバイスに使用すること、本発明の効果である分散安定性により、長期間にわたるデバイスの安定駆動を最大限に発揮でき好ましい。
前記非導電性の着色液体を使用できるエレクトロウエッティング方式のデバイスの一例を挙げる。
即ち、電極を設けた層の間に表示用空間を備え、該表示用空間には、前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。前記表示用空間の表示側の前記層は着色液体が透視できる透明等の層とされる一方、非表示側の前記層は光散乱層とされ、前記着色液体への電圧印加時に前記表示側空間に前記着色液体がエレクトロウエッティング現象で移動され或いは表示側の表面積を増大させて着色表示させる。
【0039】
前記極性溶媒中に光散乱分子を配合して光散乱流体とすると、前記非表示側の層に光散乱層を配置しない構成とすることができる。
【0040】
具体的には、表示側となる上部層と、貫通孔を有する光散乱体からなる中間層と、下部層とを備え、上部層と中間層との間に表示側上部空間、中間層と下部層との間に下部空間を設け、下部空間、貫通孔、上部空間を密閉された連通流路からなる液体貯留部とする。液体貯留部に、前記前記着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有する分離液状着色組成物が充填されている。これら上下空間を前記貫通孔で連通した着色液体の通路を備え、前記着色液体への電圧の印加の有無で表示側上部空間へ着色液体をエレクトロウエッテイング方式で流入・流出させる。
流入時には着色画像が表示され、流出時には前記光散乱体の光散乱による白色表示が行われる。
【0041】
前記デバイスでは、上部層に電極を配置すると共に、貫通孔の内面に電極を配置した2端子構造とし、該2端子をスイッチを介して接続し、該スイッチをオン・オフすることで前記表示側の上部空間に着色液体を流入させて着色画像の表示すると共に、前記上部空間から着色流体を流出させて白色散乱画面に切り替えることができる。あるいは、前記2端子構造に代えて、3端子構造としてもよい。
前記3端子構造では、上部空間の上面あるいは/および下面に上部電極、下部空間の上面あるいは/および下面に下部電極、前記白色散乱シートの貫通孔の内面に沿って配置される共通電極を設け、共通電極と上部電極、該共通電極と下部電極に接続すると共に回路開閉手段がそれぞれ介設された上部側電源回路と下部側電源回路を備え、上部側電源回路の回路開閉手段と下部側電源回路の回路開閉手段とを交互に開閉させ、前記上部空間への前記着色液体の流入・流出が切り替えられる表示装置としてもよい。
該3端子構造とすると、上部空間への着色液体の流入・流出を上部側電源回路と下部側電源回路との交互の開閉による行うため、上部空間への着色液体の流入・流出速度を迅速に行うことができる。
【0042】
前記デバイスを前記いずれの構成としても、前記電極の導電性着色液体と接する側には誘電体層を配置することもできる。該誘電体層には、例えば、パリレンあるいは酸化アルミナを含有させ、その層厚を1〜0,1μm程度とすることが好ましい。
また、該誘電体層の表面に、電圧の印加時には親水層となる撥水膜を積層し、着色液体に撥水膜が接触する構成とすると、導電性着色液体を高速で移動あるいは表面積を増減できるため、動画表示として好適とものとできる。
【0043】
前記デバイスは、前記表示用空間を各画素毎に仕切壁で仕切り、各画素毎に用いる前記着色液体はR,G,Bのいずれかの着色液体あるいはC、M、Y,Kのいずれかの液体とし、表示用空間に着色液体が導入されて広がることにより、フルカラーの画像表示をさせ、かつ、該イオン性液体を高速移動させることで、フルカラーの動画表示を行う構成としている。
【0044】
また前記デバイスは、前記表示用空間を光が通過する前後において、R,G,BあるいはC、M、Y,Kのいずれかのカラーフィルターを形成し、さらに光変調を行う構成とすることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下実施例中にある部とは、質量部を表す。
【0046】
(実施例1)
300mlビーカー中で4重量%のポリビニルアルコール水溶液(X−0381:クラレ製)125部に銅フタロシアニン顔料10部(DIC社製)をホモジナイザーで攪拌しながら添加した。添加後、該顔料分散液を55℃まで昇温し15分間攪拌を行った。
得られた顔料分散液を室温まで冷却後、13000r.p.m.で60分間遠心分離を行った。得られた顔料ウェットケーキを112.5部の蒸留水にホモジナイザーで再分散した。この顔料分散液を300mlセパラブルフラスコに移し、60℃へ昇温後、蒸留水12.5部に溶解した過硫酸アンモニウム0.0625部を添加した。その後、エチルアクリレート6部を添加し、2.5時間反応を行い、さらにスチレン10部、メチルメタクリレート4部を加え、19時間重合反応を行った。得られた顔料分散液を13000r.p.m.で60分間遠心分離を行い、凍結乾燥して、樹脂で被覆された色素である着色剤(1)の25部を得た。
次いで、250mlポリエチレン瓶に得られた着色剤(1)10部、3mmガラスビーズ150部、キシレン32.5部を加えてペイントコンディショナーにより120分分散した後、さらにキシレン67.5部を加えて、ペイントコンディショナーで5分間分散し、着色液体(1)を得た。
得られた着色液体(1)は流動性に優れた安定な分散液であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスに使用する着色液体であって、前記着色液体が、非極性溶媒及び着色剤を含み、前記着色剤が、樹脂で被覆された色素であることを特徴とする着色液体。
【請求項2】
前記色素が顔料である請求項1に記載の着色液体。
【請求項3】
前記光変調方式が、エレクトロウエッティング方式又はエレクトロフルイディック方式である請求項1または2に記載の着色液体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の着色液体、及び、前記着色液体とは混和しない極性溶媒とを含有することを特徴とする分離液状着色組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか記載の着色液体の、外部電場によって液体を移動もしくは変形させることにより、色あるいは明るさを変調する光変調方式のデバイスにおける画像を生成するための着色剤としての使用。
【請求項6】
前記変調方式がエレクトロウエッティング方式である請求項5に記載の使用。

【公開番号】特開2013−80106(P2013−80106A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219999(P2011−219999)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】